説明

浸透性感圧性接着剤

本発明は、極性可塑化油及び極性ポリエチレンコポリマーを含む感圧性で熱溶融加工可能な接着剤組成物、並びに本発明による接着剤組成物を含む層状接着剤構造体及び医療装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性可塑化油及び極性ポリエチレンコポリマーを含む感圧性で熱溶融加工可能な接着剤組成物、並びに本発明による接着剤組成物を含む層状接着剤構造体及び医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧性接着剤は、長い間、ストーマ装具、包帯(創傷包帯を含む)、創傷ドレナージ帯具、尿を回収するための装置、整形器具及び皮膚用プロテーゼのような、医療装置を貼付するために用いられている。
【0003】
親水性粒子又は吸収剤を含有する親水コロイド接着剤は、接着剤バルクに水分を吸収し、状態が飽和したとき水分を透過するものであるが、皮膚へ医療装置を貼付するのに有用な感圧性接着剤の周知の群の1つである。しかしながら、親水コロイド接着剤中の水分の保持は、膨潤、凝集力の喪失、及び崩壊のような、接着剤に変化をもたらす場合がある。他方、非吸収性接着剤は、皮膚と接着剤との間に過剰な水分を捕捉して、接着力の低下及び皮膚の浸軟をもたらす恐れがある。
【0004】
皮膚の繊細な性質のために、感圧性接着剤が良好かつ皮膚に優しい接着剤として機能できる条件は狭い。一方では、接着剤は医療装置を皮膚に貼付できるべきであり、そして装置が着用中落ちてはならず、他方では、皮膚からの医療装置の取り外しが、皮膚に損傷を与えてはならない。
【0005】
医療用途では、感圧性接着剤を通じた水蒸気透過性が高いことが望ましい。しかしながら、皮膚に接触する用途に好適である、高水蒸気透過性を有する感圧性接着剤の利用可能性は限られている。
【0006】
現在皮膚への接着用に用いられている水蒸気透過性感圧性接着剤は、主にシリコーン、PU及びアクリル型接着剤である。
【0007】
アクリルを主成分とする感圧性接着剤は、通常、溶媒型であり、毒性残留物及び悪臭の原因となるモノマーを含む場合がある。これらの接着剤は、水分を吸収する親水コロイドのような親水性成分を組み込んでもよい。しかしながら、親水性成分の含有量及びそれによる水分の吸収は、接着剤の特性を変化させ、膨潤及び接着力の低下が最も望ましくない作用である。このようなアクリル型接着剤の着用時間は、典型的には、これらの作用により短い。
【0008】
シリコーン接着剤は、比較的高価であり、比較的低い水分透過性を有し、この低い水分透過性が通気性に関する問題を引き起こす。また、水分が皮膚と接着剤との間に蓄積すると、接着力が損なわれる場合がある。更に、シリコーンと他の有機材料(例えば、ポリマー)との適合性は限定されており、これは性能強化添加剤とのブレンド安定性、及び別の化学組成の補強材への接着力に影響を及ぼす。
【0009】
シリコーン又はポリウレタンを主成分とする感圧性接着剤は、典型的には、加工中に不可逆的架橋反応を受ける熱硬化性材料である。
【0010】
SIS及びPIBのような無極性ポリマーを主成分とする接着剤は、医療用接着剤の技術分野で周知である。例えば、国際公開第99/11302号には、SIS、PIB及び親水コロイドを主成分とする医療用途のための接着剤について記載されており、米国特許第4551490号には、SIS/SI、PIB/ブチルゴム、粘着付与剤、鉱物油、及び親水コロイドを含有する接着剤について記載されている。
【0011】
エチレンコポリマーは、例えば、包装及びラベル用の熱溶融型接着剤で用いられることが多い。これらの目的のために用いられるEVAは、最大40%の酢酸ビニルを含有する従来のEVA型である、すなわち、ポリマーは比較的無極性である。
【0012】
40%を超える酢酸ビニルを有するEVAを含有する接着剤についても記載されている。
【0013】
米国特許第4477325号には、EVA、PIB及び水吸収性粒子又はポリマーで形成されている皮膚保護組成物について記載されている。EVAは、25〜65重量%の酢酸ビニルを含有してもよい。
【0014】
米国特許第6933342号には、トリブロックコポリマー(スチレン−ジエン−スチレン)、テルペン樹脂、液体、及びEVAポリマー(EVAポリマーは、好ましくは50重量%を超える酢酸ビニル含有量を有する)について記載されている。
【0015】
米国特許第6225520号には、例えば、EVA等のエチレンコポリマー、固体粘着付与樹脂、液体粘着付与樹脂、抗酸化剤、及び所望により希釈剤を含有する接着剤について記載されている。EVAポリマーは、15〜65重量%の酢酸ビニル含有量を示す。本発明は、ラベル、及び皮膚に接触するテープを含むテープのための接着剤に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記接着剤は全て、無極性成分を含有するという不利点を有し、水透過性を有しない又は水透過性の低い接着剤マトリックス(親水コロイドを含まない接着剤)を生じさせる。接着剤を皮膚に接触する用途で用いなくてはならない場合、水分を処理できる必要がある。上記材料の種類を皮膚接着剤として用いるとき、大量の吸収性粒子を添加して水分を処理することが多い。
【0017】
大量の粒子の添加は、比較的硬質な接着剤材料をもたらし、これは粘着力を低下させ、耐久性を弱め、皮膚の剥脱を導くことが多い。この種の皮膚の損傷を避けるために、皮膚表面で発生した水分を処理できる浸透性接着剤材料を用いることが有利である場合がある。これにより、親水コロイドを添加する必要がなくなるか、又は親水コロイドの添加は少量でよい。
【0018】
極性エチレンコポリマー及び極性油又は極性油の組み合わせを主成分とする感圧性接着剤は、優れた皮膚接着剤を提供することが見出されている。
【0019】
また、これらの接着剤は、それらを通気性かつ非常に皮膚に優しくする非常に高い水蒸気透過速度を有する。これらの接着剤の高い水蒸気透過性は、医療装置を長期間、例えば数日間皮膚上に着用しなければならない場合、特に有利である。
【0020】
驚くべきことに、本発明による接着剤は、柔軟性、たわみ性、着用時の安全性及び快適性、アクリル型接着剤に比べて低い毒性、並びにシリコン接着剤に比べて良好な水分透過性を提供することが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一般に、本発明の実施で用いることができるポリマーは、エチレンと極性モノマーとのコポリマーである。コポリマーは、典型的には、約70%未満のエチレンを含み、50g/m2/日を超える水蒸気透過性、及び2g/10分未満のメルトフローインデックス(190℃/21.1N)を有する。メルトフローインデックスは、ISO1133及びASTM D1238に掲載されている方法により測定できる。このようなポリマーの例は、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー及びエチレンと酢酸ブチルとのコポリマーである。特に好ましいのは、約40%(w/w)を超える酢酸ビニル、2g/10分未満のメルトフローインデックス(190℃/21.1N)、及びMVTR試験法に従って測定したとき、150μmのシートについて50g/m2/日を超える水蒸気透過性を有する、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーである。
【0022】
一般に、本発明で用いてよい極性油は、ポリマーの極性ドメインに良好な溶解性を有する、すなわち、ポリマーの引張強度を過度に犠牲にすることなく柔軟性を提供する。良好な水蒸気浸透性を支持することができる油が好ましい。このような油の例は、植物油及び動物油並びにこれらの誘導体である。好ましい極性油はエステル、エーテル及びグリコールであり、特に好ましいのはポリプロピレンオキシド、例えば、アルファ−ブトキシ−ポリオキシプロピレンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
現在、低いメルトフローインデックスを有するポリマーが適切な極性油及び所望により他の成分とともに配合されるとき、乾燥粘着性及び引き剥がし性、並びに良好な水蒸気浸透性を有する熱溶融型接着剤は、極性エチレンコポリマーの使用により得られることが発見されている。
【0024】
本発明の接着剤は、それを種々の用途で有用にする独特の特性を呈する。良好な皮膚への接着力、高い水蒸気透過速度、及び放射線滅菌に対する耐性のような特性である。これらの特性により、本発明の接着剤は、多くの用途に適する接着剤となり、糞便管理装置、創傷ケア装具及び失禁用装置のような医療用途に特に適する接着剤となる。
【0025】
本発明の通気性接着剤は、例えば、医療用テープ、バンドエイド及びパッド、発泡体又は針の固定のための接着剤として、固定用途に用いることができ、良好な接着性、高い通気性及び滅菌耐性を提供する。
【0026】
本発明の接着剤は、従来の親水コロイド含有接着剤のように配合でき、改善された水分処理特性及び改善された滅菌耐性を提供する。
【0027】
本発明の接着剤は水蒸気透過速度が高いことにより、1層を超える接着剤層を有する積層装置構造体にとって非常に好適になる。非吸収性基材が接触する装置の例では、層を吸収性バルク接着剤層と組み合わせて、粘着性及び耐久性と良好な吸収性を組み合わせる。
【0028】
本発明の1つの実施形態では、感圧性で熱溶融加工可能な接着剤組成物は、最終接着剤の10%(w/w)を超える含有量の極性可塑化油又は極性可塑化油の組み合わせ、及び少なくとも1つの極性ポリエチレンコポリマーを含み、前記ポリエチレンコポリマーの含有量は、最終接着剤の10〜50%(w/w)であり、前記ポリエチレンコポリマーは2g/10分を下回るメルトフローインデックス(190℃/21.1N)を有する。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、感圧性で熱溶融加工可能な接着剤組成物は、最終接着剤の10%(w/w)を超える含有量の極性可塑化油又は極性可塑化油の組み合わせ、及び少なくとも1つの極性ポリエチレンコポリマーを混合することにより生成され、前記ポリエチレンコポリマーの含有量は、最終接着剤の10〜50%(w/w)であり、前記ポリエチレンコポリマーは2g/10分を下回るメルトフローインデックス(190℃/21.1N)を有する。
【0030】
本発明の実施形態では、連続型の最終接着剤は、MVTR試験法に従って測定したとき、150μmの接着剤シートについて、少なくとも100g/m2/日の水蒸気透過速度を呈する。
【0031】
接着剤組成物で用いられる主なポリマーは、エチレンコポリマーである。コポリマーは、高い水浸透性を得るために、かなりの量の極性成分を含有すべきである。好ましくは、コポリマーのエチレン部分は、接着剤の凝集力を保証する結晶質領域を形成することができる。
【0032】
本発明の1つの実施形態では、極性ポリエチレンコポリマーは、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素、エチレン酢酸ブチル、エチレンビニルアルコール、エチレンアクリル酸ブチル、エチレンアクリル酸ブチル一酸化炭素、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0033】
好ましくは、極性ポリエチレンコポリマーはエチレン酢酸ビニルである。
【0034】
極性ポリマーとは、MVTR試験法に従って測定したとき、150μmのフィルムについて、50g/m2/日を超える水透過性を有するポリマーを意味する。
【0035】
この発明の1つの目的は、熱溶融加工することができ、かつ通常の使用条件でそれほど残留物を残すことなく除去できる接着剤である水浸透性接着剤を提供することである。
【0036】
本発明の実施形態では、エチレン酢酸ビニルは、少なくとも40%(w/w)の酢酸ビニル、好ましくは40〜80%(w/w)の酢酸ビニル含有量を有する。
【0037】
接着剤組成物は、ダールキスト(Dahlquist)基準を満たすべきである。好ましくは、弾性率は100000Pa未満であるべきであり、非常に柔軟性があり、皮膚に優しく、かつ快適な接着剤では、弾性率(G’)は、32℃及び1HzでDMAにより測定したとき最低1〜30kPa程度であり得る。
【0038】
着用するのが快適な皮膚に優しい材料を確保するために、接着剤ができる限り柔軟であることが非常に重要である。柔軟性材料を得るために、ポリマー含有量は、できる限り低くなるべきである。極性ポリエチレンコポリマーの最大ポリマー含有量は、最終接着剤の50%(w/w)を超えるべきではない。
【0039】
好ましくは、接着剤で用いられる極性ポリエチレンコポリマーは、2g/10分(190℃/21.1N)を下回るメルトフローインデックス(MFI)が得られる水準の分子構造を有するべきである。メルトフローインデックスは、ISO1133及びASTM D1238に掲載されている方法により測定できる。
【0040】
高分子量及び低MFIを有するポリマーを使用する利点は、高分子量ポリマーが、接着剤に対して十分高い凝集力を確保できることである。
【0041】
最終接着剤の含有量とは、接着剤組成物に用いられる成分の合計重量に対する、その成分の重量の百分率を意味する。
【0042】
本発明の実施形態では、極性ポリエチレンコポリマーの含有量は、最終接着剤の10〜45%(w/w)、好ましくは15〜30%である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、極性ポリエチレンコポリマーは、250000g/モルを超える分子量を有する。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、接着剤組成物は、最終接着剤の20〜70%(w/w)、好ましくは40〜65%の含有量の極性可塑化油又は極性可塑化油の組み合わせを含む。
【0045】
一般に、本発明に用いてよい極性油は、ポリマーの極性ドメインに対して良好な溶解性を有するものである。すなわち、ポリマーの引張強度を過度に犠牲にすることなく柔軟性を提供する。良好な水蒸気浸透性を支持することができる油が好ましく、ポリマーと油の50:50の混合物は、少なくとも100g/m2/日の水蒸気透過速度を有するべきである。このような油の例は、植物油及び動物油並びにこれらの誘導体である。好ましい極性油はエステル、エーテル及びグリコールであり、特に好ましいのはポリプロピレンオキシド、例えば、アルファ−ブトキシ−ポリオキシプロピレンである。
【0046】
最適な柔軟性及び皮膚への優しさを得るために、好ましい接着剤は、約50%以上の可塑化油を含有するべきである。
【0047】
本発明の1つの実施形態では、接着剤組成物は極性可塑化油を含み、前記極性可塑化油は、液体ロジン誘導体、芳香族オレフィンオリゴマー、植物油及び動物油並びに誘導体から成る群から選択され、好ましい極性油は、エステル、エーテル及びグリコールであり、特に好ましいのは、アルファ−ブトキシ−ポリオキシプロピレンのようなポリプロピレンオキシドである。
【0048】
更に、ポリプロピレンオキシド油は、接着剤組成物の高浸透性に寄与する。
【0049】
本発明による接着剤組成物の幾つかは、凝集性を与える主なポリマーに加えて、微量の追加ポリマーを含有する。この又はこれらの追加ポリマーは、粘着力を得るために添加される。これらの追加ポリマーは任意であり、全ての目的のために必須ではない。
【0050】
本発明の1つの実施形態では、接着剤組成物は、低分子量ポリマーをさらに含む。すなわちMFI>2である。
【0051】
多くの水分が接着剤と皮膚との間に存在するとき、接着剤に対する低分子量(Mw)ポリマーの添加は、有利になり得る。
【0052】
好ましくは、極性ポリエチレンコポリマー及び追加ポリマー(油、粘着付与樹脂等を含まない)を含む、合計ポリマー含有量は、最終接着剤の50%(w/w)を超えるべきではない。
【0053】
粘着付与樹脂、可塑剤及びワックスのような追加成分を組成物に添加してよい。
【0054】
本発明の1つの実施形態では、接着剤組成物は、天然、変性、又は合成樹脂のような粘着付与樹脂、好ましくは、ロジン、ロジンエステル、水素化ロジン、水素化ロジンエステル、及びこのような極性樹脂の誘導体又は純芳香族モノマー樹脂のような極性樹脂を更に含む。
【0055】
接着剤の粘着力を制御するために、すなわち、弾性率を低下させ、ガラス転移温度を上昇させるために、粘着付与樹脂を添加できる。
【0056】
粘着付与樹脂の含有量は、最終接着剤の0〜40%(w/w)である。好ましくは、接着剤は実質的に樹脂を含まない。接着剤組成物が樹脂を含有するとき、粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは最終接着剤の0.1〜40%(w/w)であり、より好ましくは最終接着剤の10〜20%(w/w)である。
【0057】
本発明の1つの実施形態では、接着剤組成物は、最終接着剤の50%(w/w)を超える含有量の極性可塑化油及び樹脂を含む。
【0058】
本発明の1つの実施形態では、接着剤組成物は、鉱物油、クエン酸塩油、パラフィン油、フタル酸エステル、アジピン酸エステル(例えば、DOA)、及び液体若しくは固体樹脂から成る群から選択される追加の可塑剤を更に含む。
【0059】
本発明の別の実施形態では、接着剤組成物は、ポリエチレンワックスを更に含む。
【0060】
他の成分を補助効果のために添加してもよい。これは、抗酸化剤及び安定剤、レオロジー改質のための充填剤、又はビタミンE若しくはイブプロフェンのような活性成分でよい。
【0061】
本発明の別の実施形態では、接着剤組成物は、抗酸化剤、安定剤、充填剤、顔料、流れ調整剤、及び活性成分から成る群から選択される他の成分を更に含む。
【0062】
本発明の1つの好ましい実施形態では、接着剤組成物は極性活性成分を含む。
【0063】
本発明による接着剤は、ベータ滅菌に対して耐性を有し、これは合理的な水準でのベータ滅菌中に著しく分解しない又は特性を変化させないことを意味する。
【0064】
本発明の1つの実施形態では、ベータ滅菌された接着剤組成物は、本発明による感圧性接着剤組成物を主成分とする。
【0065】
吸収性材料を形成するために、吸収性粒子又はポリマーとして、塩及び/又は親水コロイドを組成物に添加できる。
【0066】
塩は、水溶性塩であってもよく、無機塩又は有機塩であってもよい。
【0067】
本発明の1つの実施形態によると、接着剤組成物は、限定されるものではないが、NaCl、CaCl2、K2SO4、NaHCO3、Na2CO3、KCl、NaBr、NaI、KI、NH4Cl、AICl3及びこれらの混合物の群から選択される水溶性無機塩、好ましくはNaClを含む。
【0068】
本発明の別の実施形態によると、接着剤組成物は、限定されるものではないが、CH3COONa、CH3COOK、COONa、COOK及びこれらの混合物の群から選択される水溶性有機塩を含む。
【0069】
接着剤は、装置内で粒子無しで用いることができ、これは吸収性よりもむしろ透過性に依存する。
【0070】
従来のHC接着剤と同様に、マイクロコロイドを含む、大部分の液体吸収性ポリマー粒子を用いることができる。浸透性接着剤の特別な利点は、表面フィルムが吸収を完全に遮断しないことである。
【0071】
より具体的には、親水コロイドは、グアーガム、ローカストビーンガム(LBG)、ペクチン、アルギン酸塩、ジャガイモデンプン、ゼラチン、キサンタン、カラヤゴム、セルロース誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなカルボキシメチルセルロースの塩類)、ナトリウムデンプングリコレート、ポリビニルアルコール及び/又はポリエチレングリコールでよい。
【0072】
マイクロコロイド粒子は、当該技術分野において周知であり、例えば、国際公開第02/066087号には、マイクロコロイド粒子を含む接着剤組成物が開示されている。マイクロコロイド粒子は、20マイクロメートル未満の粒径を有してよい。
【0073】
また、本発明は、上記のような感圧性接着剤組成物を含む医療装置に関する。
【0074】
本発明による接着剤組成物を含む医療装置は、ストーマ装具、包帯(創傷包帯を含む)、創傷ドレナージ帯具、皮膚保護帯具、尿を回収するための装置、整形器具又はプロテーゼ(例えば、胸部プロテーゼ)、糞便管理装置、及び測定機器又は電池等の電源のような電子装置であってもよい。
【0075】
また、医療装置は、医療装置若しくは医療装置の一部を皮膚に固定するための、又は皮膚に貼付された医療装置の周りを密閉するための、テープ(例えば、弾性テープ又はフィルム)、又は包帯若しくは帯具であってもよい。
【0076】
医療装置は、その最も単純な構造では、本発明による感圧性接着剤組成物の層及び裏材層を含む接着剤構造体でよい。
【0077】
裏材層は、好適には弾性であり(低い弾性率を有する)、接着剤構造体が皮膚の動きに適合し、使用時に快適性をもたらすことを可能にする。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、裏材は、接着剤と裏材との間の接着力を強めるために構造化表面を有する。特に好ましいのは、溶融した接着剤が浸透でき、例えば、不織布及び不織布フィルム積層体と機械的連動を生み出せる裏材である。
【0079】
本発明により用いられる裏材層の厚さは、用いられる裏材の種類に依る。例えば、ポリウレタンフィルムのようなポリマーフィルムでは、全厚は10〜100μm、好ましくは10〜50μm、最も好ましくは約30μmでよい。
【0080】
本発明の1つの実施形態では、裏材層は非蒸気透過性である。
【0081】
本発明の別の実施形態では、裏材層は水蒸気浸透性であり、500g/m2/24時間を超える水蒸気透過速度を有する。この場合、本発明の接着剤構造体は、良好な水分透過速度を提供でき、構造体を通して、かつ皮膚から離れて大量の水分を輸送することができる。接着剤層の化学的組成及び物理的構造、並びに裏材層の化学的及び物理的構造の両方が、水蒸気浸透性に影響を与える。物理的構造に関して、裏材層は連続(穴、孔、へこみがない、水蒸気浸透性に影響を与える粒子又は繊維が添加されていない)又は不連続(穴、孔、へこみを有する、水蒸気浸透性に影響を与える粒子又は繊維が添加されている)でよい。
【0082】
裏材層の水蒸気透過速度は、好適には500g/m2/24時間を超え、最も好ましくは1000g/m2/24時間を超え、更により好ましくは3000を超え、最も好ましくは10,000を超える。
【0083】
本発明の別の実施形態では、層状接着剤構造体は裏材層及び本発明による感圧性接着剤組成物の少なくとも1層を含む。
【0084】
本発明による接着剤は、化学的又は機械的に、多数の方法で発泡させて発泡型接着剤にすることができる。
【0085】
化学発泡剤又は接着製剤自体に添加される他の物質は、種々の機序により気泡を発生させることができる。これらの機序としては、化学反応、物理的変化、熱分解又は化学分解、分散相の浸出、低沸点物質の揮発、又はこれらの方法の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
商業的に既知である化学発泡剤のいずれを用いてもよい。化学発泡剤は、分解前後の両方で、好適には無毒性であり、皮膚に優しく、環境的に安全である。
【0087】
接着剤混合物に添加される化学発泡剤の量は、約0.01重量%〜約90重量%の範囲でよく、実用的な範囲としては約1重量%〜約20重量%が挙げられる。添加される気体の量は、候補混合物から発生する気体の量を測定し、最終生成物に必要な発泡の量を算出することにより決定でき、発泡プロセス中において大気中へと失われる気体の量から経験的に調節される。
【0088】
本発明の発泡型接着剤を形成する別の方法は、接着剤塊を泡沫状に泡立てて、発泡型構造体を形成するのと同様に、物理発泡剤を添加するために機械的プロセスを用いる方法である。接着剤の製造プロセス中に、空気、窒素、二酸化炭素若しくは他の気体、又は低沸点揮発性液体を組み込む工程を伴うプロセスを含む多くの方法が可能である。
【0089】
いくつかの医療装置では、接着剤が高い水分透過速度を有することが重要である。一方では、水吸収能はそれ程重要ではない。これは(例えば、顔に使用するための)非常に薄い包帯、包帯に組み込まれた吸収性要素又はパッドを有する創傷包帯、傷口又は創傷が存在しない皮膚上に用いられる皮膚保護帯具等の場合である。
【0090】
これらの用途では、接着剤は、好ましくは、高い水蒸気透過速度を有するが、高吸収能を有することは必ずしも必須ではない。特定の水吸収能は、発汗が多い場合、緩衝剤として機能することもできる。しかしながら、高い水吸収能は、例えば、水洗又はシャワー中の接着剤の水耐性も低下させる。創傷からの浸出液の吸収は、別々の吸収性要素によって処理してよく、したがって、多くの場合には、接着剤の水蒸気透過速度は水吸収能より重要である。
【0091】
したがって、1つの実施形態によると、本発明は、顔に使用するための非常に薄い包帯、包帯に組み込まれた吸収性要素若しくはパッドを有する創傷包帯、又は傷口若しくは創傷が存在しない皮膚上に用いられる皮膚保護帯具に関する。
【0092】
更なる実施形態によると、本発明は、接着剤層の厚さが最も厚い箇所で50〜250μmである、例えば、薄い接着性包帯のような上記医療装置に関する。したがって、接着剤層は、変動する厚さを有するか、又は50〜250μmの値から選択される均一な厚さを有してもよい。
【0093】
本発明の包帯は、好ましい実施形態では、創傷包帯が創傷部位上の水分環境を一定に維持し、同時に創傷の周囲の皮膚の浸軟を避けるように、体液、特に創傷浸出液を取り込むための吸収性パッドを含む。
【0094】
本発明の更に別の実施形態によると、医療装置は、吸収性パッドを含み、かつ接着剤層の厚さが最も厚い箇所で50〜300μmである、上記のような創傷包帯である。したがって、接着剤層は、変動する厚さを有してもよく、又は50〜300μmの値から選択される均一な厚さを有してもよい。
【0095】
吸収性パッドは、創傷若しくは皮膚と接触する接着剤層の表面に、又は接着剤層と裏材との間に位置してよい。
【0096】
本発明の包帯用のパッド材料として使用するための好適な発泡体材料は、例えば、ポリエチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリアルキレンオキシド及び/又はポリアルキレンオキシドシロキサン発泡体である。
【0097】
吸収性パッドは、体液、特に創傷浸出液を吸収する高い能力を有する親水コロイド、超吸収体、又は発泡体、又は天然若しくは合成材料を含んでよい。吸収性パッドは、浸出液分配材料を含んでもよい。これにより、創傷の真上に位置していない吸収性層の領域を利用することが可能になるだけでなく、吸収性層の湿潤表面が拡大し、それにより裏材層を通じた蒸発が強化されるであろう。
【0098】
吸収性層の吸収能を最適化するために、吸収性パッドは、異なる吸収特性の層を含む1層以上の層(例えば、多層)の形態でよい。吸収性パッドは、例えば、粒子が組み込まれている、マトリックス構造の形態でよい。吸収性パッドが、吸収した浸出液を分配することができる材料を含むとき、包帯の吸収能を完全に利用することができる。
【0099】
吸収性パッドは、それ自体創傷ケア装置で用いるのに好適であることが知られている任意の吸収性材料、例えば、ポリアクリレート、CMC、セルロース若しくはこれらの誘導体、ゴム、発泡体若しくはアルギン酸塩の粒子又は繊維を含んでよい。本発明の包帯は、例えば、裏材の1つの表面の一部又は全体に接着剤を積層又は染料流延又は延展する等のような裏材上に接着剤材料を適用するための、それ自体既知である手法で形成してよい。
【0100】
所望により、本発明の包帯は、適用前又は適用中に取り除かれる1つ以上の剥離ライナ、又はカバーフィルムにより、部分的に又は完全に被覆される。保護カバー又は剥離ライナは、例えば、シリコーン処理した紙でよい。それは包帯と同じ外形を有する必要はなく、保護カバーのより大きなシートに多くの包帯を取り付けてよい。剥離ライナは、医療装置用剥離ライナとして有用であることが知られている任意の材料でよい。
【0101】
保護カバーは、本発明の包帯の使用中に存在せず、それ故に本発明の本質的な部分ではない。更に、本発明の包帯は、接着剤層に触れることなく皮膚に包帯を適用するための、それ自体既知である1つ以上の「非接触」グリップを含んでよい。このような非接触グリップは、包帯の適用後には存在しない。より大きな包帯の場合、2つ又は3つ、更には4つの「非接触」グリップを有することが好適である。
【0102】
創傷包帯が、創傷部位上の水分環境を一定に維持できるように、体液、特に創傷浸出液を取り込むための吸収性パッド又は要素を含む包帯は、国際公開第02/05737号、米国特許第5,086,764号、欧州特許第641553号、国際公開第91/01706号及び欧州特許第236104号に記載されている。本発明による接着剤は、これらの既知の包帯のいずれかに含まれる接着剤に取り替えてもよい。
【0103】
医療装置の接着剤部の柔軟性は、接着剤の面取り(bevelling)又はパターン化のような、装置のデザインにより達成されることが多い。
【0104】
本発明の包帯又は接着剤シートは、着用時間を低減している包帯の縁部が「丸まる(rolling-up)」危険性を低減するために、面取りされた縁部を有してよい。面取りは、例えば、欧州特許第0264299号又は米国特許第5,133,821号に開示されているように、それ自体既知である態様で不連続的に又は連続的に実施してよい。
【0105】
別の態様では、本発明は、上記のような接着剤構造体を含むストーマ装具用ウエハー(wafer)に関する。
【0106】
本発明のストーマ装具は、2つの部分から成る装具の一部を形成するウエハーの形態であるか、又は瘻孔から出てくる物質を回収するための回収バッグを含む一体型装具の形態であってもよい。例えば、結合リングを用いる機械的カップリングによって、又は接着剤フランジの使用によって、それ自体既知である任意の態様により個別の回収バッグをウエハーに取り付けてよい。
【0107】
また、本発明のストーマ装具用のウエハーは、典型的には、水蒸気浸透性及び不透水性補強材と、上述のような剥離ライナとを含む。
【0108】
本発明のストーマ装具は、ストーマ装具の調製に従来より用いられている材料から、それ自体既知である態様で形成してよい。
【0109】
有利な特性を有する装置は、積層された構造体で、本発明の浸透性接着剤を用いて得てよい。
【0110】
本発明の1つの実施形態では、構造体は、水吸収性接着剤の少なくとも1つの層を更に含む。
【0111】
極限条件下で、例えば、大量の発汗による高水分負荷下で、非常に良好な接着性を有する装置は、水吸収性接着剤と皮膚との間に、本発明の浸透性であるが非吸収性である接着剤(親水性充填剤を含まない)の層、好ましくは薄層を配置することにより得てよい。この方法では、接着剤がかなりの量の水を吸収した後でさえ良好な接着力を維持できる。
【0112】
水吸収性を過剰に犠牲にすることなく、接着剤は瘻孔からの湿潤性流体に対して耐性を有することができるから、ストーマ装具と接続して本発明による吸収性接着剤構造体を用いることが特に有利である。したがって、腐食性瘻孔流体から有効に皮膚を保護し、同時に接着剤と皮膚との間に健康な非腐食性微環境を提供する装置を製造することが可能である。
【0113】
更なる実施形態では、本発明は、本発明による接着剤構造体を含む胸部プロテーゼのような、ユーザの皮膚に接着する種類のプロテーゼに関する。
【0114】
また、本発明は、上記のような接着剤構造体を含む尿回収装置に関する。
【0115】
本発明による尿回収装置は、尿鞘(uri-sheath)の形態でよい。
【0116】
上述のように、医療装置はまた、例えば、装置又は装置の一部を皮膚に固定するための医療用テープであってもよい。
【0117】
また、本発明による医療装置は、ECG(心電図)、EMG(筋電図)、EEG(脳波記録)、血中グルコース、脈拍、血圧、pH及び酸素を測定するのに有用な装置のような、皮膚に貼付する測定機器又は治療機器であってもよい。
【0118】
このような測定機器は、当該技術分野において既知であり、通常、それらは感圧性接着剤により皮膚に貼付される。
【0119】
このような装置の例は、例えば、国際公開第03/065926号、米国特許第5,054,488号、米国特許第5,458,124号、米国特許第6,372号、米国特許第6,385号、国際公開第99/59465号及び米国出願第2003/0009097号に記載されている。本発明による接着剤構造体は、これらの装置を皮膚に貼付するために用いられる接着剤構造体に取り替えてもよい。
【0120】
本発明の別の実施形態では、接着剤は、肛門周囲の皮膚にバッグ又は別の回収装置を貼付する、糞便回収装置の一部である。
【0121】
本発明の1つの実施形態では、医療装置は、ベータ滅菌された医療装置である。
【実施例】
【0122】
実験室的方法
方法1:混合
Brabender OHG(ドイツ、デュースブルグ(Duisburg))製のBrabender mixer(約60グラムを収容する)又はLinden Maschinenfabrik(ドイツ、マリエンハイデン(Marienheiden))製のHerrmann Linden LK II 0,5(約600グラムを収容する)内で接着剤を混ぜ合わせた。ミキサー中のチャンバ温度は約120℃であり、接着剤は50〜60rpmで混ぜ合わせた。
【0123】
予混合物を各ポリマーから形成した。ポリマーをミキサーに加え、ミキサーを起動した。ポリマーが溶融し、滑らかな表面を有したとき、数mLから始めて、その後に量を増やしながら、油を数段階に分けてゆっくりと添加した。既に添加した部分がポリマーとよく混合されてから、油の次の部分を添加した。
【0124】
Levamelt/PPO接着剤では、予混合物中のLevameltとPPOとの比は、典型的にはおよそ1:1であった。
【0125】
ポリマー及び油の予混合物から接着剤を構成した。予混合物を処方に用いる場合は、予混合物は樹脂及び/又は高MFIポリマーとともにミキサーに加えた。ミキサーを起動し、ポリマーが溶融し、滑らかな表面を有したとき、数mLから始めて、その後量を増やしながら、追加の油を数段階に分けてゆっくりと添加した。
【0126】
処方が親水性コロイド又は塩を含む場合、これらを接着剤に添加し、およそ15分間混合した。
【0127】
方法2:予備架橋Levaprenの機械的分解
場合によっては、例えば、Levapren VPKA8857を用いるとき、予め架橋されているEVAの機械的分解を実施することが必要であった。冷Hermann Linden LK II 0,5ミキサー中でポリマーを約10時間混合し、ポリマー鎖を機械的に破壊した。加熱システムのスイッチを入れず、混合速度を低く、約20rpmに維持して、ポリマーに対する最適な機械的作用を確保することに留意するのが重要である。ポリマーの破壊の次に、処理されたポリマーの熱成形フィルムの目視検査を行なった。残っているポリマーゲル−塊がほんの少量になるまで、機械的処理を続けた。
【0128】
方法3:ガンマ線照射
約1キロのポリマーをプラスチックバッグに入れた。バッグを密封し、ガンマ線供給業者、例えば、BGS Beta−Gamma Service(ドイツ、ヴィール(Wiehl))に送った。ポリマーに特定のガンマ線量、例えば、30kGyを照射した。ガンマ照射はポリマーの分子量を増加させる。ポリマーが戻ってきたら、油と混合して、上記のような予混合物を得た。
【0129】
方法4:水蒸気透過速度(MVTR)の決定
MVTRは、反転カップ法(inverted cup method)を用いて、24時間にわたってグラム/平方メートル(g/m2)で測定した。
【0130】
開口部を有する水及び水蒸気不浸透性である容器又はカップを用いた。20mLの生理食塩水(脱塩水中0.9%NaCl)を容器内に入れ、開口部を試験接着剤フィルムで密封した。容器を電気的に加熱した湿潤箱に入れ、水が接着剤に接触するように、容器又はカップを逆さまに置いた。箱を37℃及び相対湿度(RH)15%に維持した。容器の重量喪失は、時間の関数として得られた。重量喪失は、接着剤フィルムを通して透過した水蒸気の蒸発によるものであった。この差を用いて、水蒸気透過速度又はMVTRを算出した。MVTRは、カップの開口部の面積で除した、時間当たりの重量喪失(g/m2/24時間)として算出した。材料のMVTRは、材料の厚さの一次関数であった。したがって、材料を特徴付けるためにMVTRを報告するとき、MVTRを報告する材料の厚さを示すことが重要であった。我々は基準として150μmを用いた。より薄い又はより厚い試料を測定する場合、MVTRは150μmの試料に対応するように報告した。したがって、試料の厚さと試料のMVTRの間の線形接続により、MVTRが10g/m2/24時間であると測定された300μmの試料は、150μmの試料ではMVTR=20g/m2/24時間であると報告された。
【0131】
最終的には、この用法を用いることにより、我々は、支持PUフィルムを用いることにより誤差を取り込んだことに留意した。接着剤/フィルム積層体は連続する2つの抵抗力の系であるという事実を利用して、誤差を除いた。フィルム及び接着剤が均質であるとき、透過速度は、
1/P(測定)=1/P(フィルム)+1/P(接着剤)
として表すことができる。
【0132】
したがって、フィルム浸透性及び接着剤の厚さを知ることにより、以下の式:
P(接着剤)=d(接着剤)/150マイクロメートル×1/(1/P(測定)−1/P(フィルム))
(式中、d(接着剤)は実際に測定した接着剤の厚さであり、P(フィルム)は接着剤無しのフィルムのMVTRであり、P(測定)は実際に測定したMVTRであった)
を用いて接着剤(P(接着剤))の真の浸透性を算出することが可能であった。
【0133】
方法5:引き剥がし損傷モードの決定
引き剥がし損傷モードは、皮膚から好適な試料を剥がすことにより決定した。
【0134】
引き剥がし損傷モード、すなわち、接着剤の接着又は凝集破壊を視覚的に観察した。なぜなら凝集破壊した接着剤は、取り除くときに基材上に残留物を残す可能性が高いため、凝集破壊は好ましくなかった。
【0135】
2枚の剥離ライナの間で約200マイクロメートルの接着剤フィルムを熱成形することにより、試験試料を調製した。前記接着剤フィルムをBBA Fiberweb製の80gsmの弾性不織布(Dreamex、CS9540002、80gsm)上にトランスファーコーティングし、100℃で約5分間熱処理して、接着剤をNWに十分結合させた。幅1cmの試験片を、不織布の低弾性率軸に沿って切断した。
【0136】
試験片を前腕の下面に適用し、約2時間放置してから剥がした。結果を、接着剤又は凝集引き剥がし損傷モードとして報告した。
【0137】
方法6:DMA並びにG’及びtan(δ)の決定
G’及びtan(δ)のパラメータを以下のように測定した。接着剤を厚さ1mmのプレートに押しつけた。直径25mmの円形試料を切り抜き、Thermo Electron社製のRheoStress RS600レオメータに入れた。適用した形状は平行な25mmのプレートであり、変形を1%に固定して、測定値が線形状態になることを確保した。測定は32℃で行った。
【0138】
【表1】

【0139】
結果
[実施例1]様々なEVAポリマーの浸透性
約100℃で温間プレスした原料ポリマーを熱成形することによりフィルムを調製し、MVTRを測定した(方法4)。
【0140】
【表2】

【0141】
低VAを有するEVAポリマーは、低MVTRを有し、したがって、浸透性で熱溶融加工可能な感圧性接着剤のためのベースポリマーはそれほど好適ではなくなる。更に、かなり疎水性である油及び樹脂のみが、低VA EVAに適合し、したがって、得られる接着剤は低浸透性を有するであろう。
【0142】
[実施例2]様々なMFI指数を有するEVAポリマーを主成分とする様々な接着剤の引き剥がし性及び浸透性
方法1、2及び3に従って以下の接着剤を熱溶融混合した。引き剥がし損傷モードを方法5に従って決定した。
【0143】
【表3】

【0144】
この例は、MFI<2のポリマーで製造された接着剤が、接着力と凝集力との間の比が著しく改善されている、すなわち、剥がしたときに、僅かに又は全く基材上に残留物が残らないことを示す。MFI>2のポリマーのみで形成された接着剤は、凝集的に損傷する傾向を有し、したがって、取り除いたときに許容できない量の残留物が残る。
【0145】
[実施例3]高い及び低い樹脂含有量を有する接着剤の浸透性
4種の接着剤を、方法1、2及び3に従って配合した。
【0146】
【表4】

【0147】
接着剤を、PUフィルム(Bioflex 130)と剥離ライナとの間で約250マイクロメートルに熱成形した。透過速度を方法4に従って測定した。
【0148】
【表5】

【0149】
この例は、本発明による接着剤が多少の粘着付与樹脂を含有してよいが、一般にそれは透過性を低下させることを示す。約50%を下回る水準は許容できると思われるが、好ましくは更に低い水準であるべきである。
【0150】
[実施例4]本発明による接着剤
以下の表は、本発明並びに方法1、2及び3に従って調製した接着剤組成物の例を示す。
【0151】
【表6】

【0152】
引き剥がし損傷モード、透過率及び弾性率のような重要な性能特性は、全て本発明による接着剤の基準に従うことに留意されたい。
【0153】
[実施例5]滅菌耐性
【0154】
【表7】

【0155】
【表8】

【0156】
接着剤を、方法1に従って調製し、1mmのシートに熱成形して、0、17.5KGy及び2×17.5KGyの線量でベータ線滅菌するために送った。DMAを方法6に従って実施した。
【0157】
【表9】

【0158】
結果は、ベータ滅菌が機械的特性に全く又は非常にわずかな変化しかもたらさず、G’及びtan(δ)は一定であり、実験誤差の範囲内であり、すなわちポリマー主鎖は著しく架橋又は破壊されないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終接着剤の10%(w/w)を超える含有量の極性可塑化油又は極性可塑化油の組み合わせ、及び少なくとも1つの極性ポリエチレンコポリマーを含む感圧性で熱溶融加工可能な接着剤組成物であって、前記ポリエチレンコポリマーの含有量が最終接着剤の10〜50%(w/w)であり、前記ポリエチレンコポリマーが2g/10分を下回るメルトフローインデックス(190℃/21.1N)を有する、感圧性接着剤組成物。
【請求項2】
最終接着剤の10%(w/w)を超える含有量の極性可塑化油又は極性可塑化油の組み合わせ、及び少なくとも1つの極性ポリエチレンコポリマーを混合することにより形成される感圧性で熱溶融加工可能な接着剤組成物であって、前記ポリエチレンコポリマーの含有量が最終接着剤の10〜50%(w/w)であり、前記ポリエチレンコポリマーが2g/10分を下回るメルトフローインデックス(190℃/21.1N)を有する、感圧性接着剤組成物。
【請求項3】
連続型の前記最終接着剤が、MVTR試験法に従って測定したとき、150μmの接着シートに対して少なくとも100g/m2/日の水蒸気透過速度を呈する、請求項1又は2に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項4】
前記極性ポリエチレンコポリマーが、エチレン酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル一酸化炭素、エチレン酢酸ブチル、エチレンビニルアルコール、エチレンアクリル酸ブチル、エチレンアクリル酸ブチル一酸化炭素、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項5】
前記極性ポリエチレンコポリマーがエチレン酢酸ビニルである、請求項4に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項6】
前記エチレン酢酸ビニルが、少なくとも40%(w/w)の酢酸ビニル含有量、好ましくは40〜80%(w/w)の酢酸ビニル含有量を有する、請求項5に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項7】
前記極性ポリエチレンコポリマーの含有量が、最終接着剤の10〜45%(w/w)、好ましくは15〜30%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項8】
前記極性ポリエチレンコポリマーが250000g/モルを上回る分子量を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項9】
前記極性可塑化油が、液体ロジン誘導体、芳香族オレフィンオリゴマー、植物及び動物油並びに誘導体の群から選択され、好ましい極性油がエステル、エーテル及びグリコールであり、特に好ましいのが、アルファ−ブトキシ−ポリオキシプロピレンのようなポリプロピレンオキシドである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項10】
前記極性可塑化油の含有量が、最終接着剤の20〜70%(w/w)、好ましくは40〜60%である、請求項9に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項11】
前記組成物がMFI>2(190℃/21.1N)のポリマーを更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項12】
前記組成物が、天然、変性又は合成樹脂のような粘着付与樹脂、好ましくはロジンエステル及びその誘導体、又は純芳香族モノマー樹脂のような極性樹脂を更に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項13】
前記粘着付与樹脂の含有量が、最終接着剤の0.1〜40%(w/w)、好ましくは10〜20%である、請求項12に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項14】
前記組成物が、鉱物油、クエン酸塩油、パラフィン油、フタル酸エステル、アジピン酸エステル(例えば、DOA)、及び液体又は固体樹脂の群から選択される追加の可塑剤を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項15】
前記組成物がポリエチレンワックスを更に含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項16】
前記組成物が、抗酸化剤、安定剤、充填剤、顔料、流れ調整剤、及び活性成分の群から選択される他の成分を更に含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項17】
前記他の成分が極性活性成分である、請求項16に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項18】
前記組成物が、親水性コロイドのような吸収性粒子を更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項19】
親水性コロイドの量が、全組成物の50%w/wを下回る、請求項18に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項20】
前記組成物が塩を更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項21】
前記水溶性無機塩が、NaCl、CaCl2、K2SO4、NaHCO3、Na2CO3、KCl、NaBr、NaI、KI、NH4Cl、AICl3及びこれらの混合物の群から選択され、好ましくはNaClである、請求項20に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項22】
前記水溶性無機塩がCH3COONa、CH3COOK、COONa、COOK及びこれらの混合物の群から選択される、請求項20に記載の感圧性接着剤組成物。
【請求項23】
接着剤組成物が請求項1〜22のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物である、ベータ滅菌された接着剤組成物。
【請求項24】
裏材層及び請求項1〜22のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物の少なくとも1つの層を含む、層状接着剤構造体。
【請求項25】
前記構造体が、水吸収性接着剤の少なくとも1つの層を更に含む、請求項24に記載の層状接着剤構造体。
【請求項26】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物の層が、水吸収性接着剤の層と皮膚との間に存在する、請求項25に記載の層状接着剤構造体。
【請求項27】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の感圧性接着剤組成物及び裏材層を含む、医療装置。
【請求項28】
前記裏材層が非蒸気浸透性である、請求項27に記載の医療装置。
【請求項29】
前記裏材層が水蒸気浸透性であり、500g/m2/24時間を上回る水蒸気透過速度を有する、請求項27に記載の医療装置。
【請求項30】
前記医療装置が、包帯、ストーマ装具、プロテーゼ、例えば、胸部プロテーゼ、尿回収装置、糞便管理装置、測定機器若しくは治療機器、医療用テープ、又は皮膚上の医療装置の周りを密閉するための包帯若しくは帯具である、請求項27〜29のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項31】
前記医療装置がベータ滅菌された医療装置である、請求項27〜30のいずれか一項に記載の医療装置。

【公表番号】特表2010−532397(P2010−532397A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513655(P2010−513655)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050146
【国際公開番号】WO2009/006901
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】