説明

消火設備

【課題】 放射後の泡消火剤等の廃棄処理に手間がかかるという問題点を解決する。
【構成】 流水検知装置6が設けられた本管22と、その本管の基端側に設けられ、原液タンク5や混合器3などを有する消火薬剤源Cとを備えた消火設備において、発泡試験を手軽に行える試験装置Sを設けた。
試験装置Sは、本管22から分岐した試験用配管24に、常時は閉じた試験弁26を介して試験用の開放型ヘッド28を接続するようにして構成される。
そして、オリフィス32を有する排水配管34を試験用配管24に分岐して接続し、試験用配管24に圧力計29を設けた。また、本管22の流水検知装置6の二次側に二次側配管8を設け、その二次側配管に泡ヘッド又は泡噴霧ヘッドを接続したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐車場には、油火災に備えて泡消火設備が設置されている。この泡消火設備を特許文献1を参照して説明する。図2は従来の泡消火設備のシステム図である。図2において、7は一斉開放弁で、一次室9、二次室10及びシリンダ室12を備えている。各室9、10、12は弁体11によって仕切られている。一斉開放弁7の二次室10には、複数の泡ヘッド16が取り付けられた消火用配管17が接続される。またシリンダ室12には、複数の感知ヘッド13が取り付けられた感知用配管14が接続され、感知用配管14の末端には手動起動弁18が設けられている。20は手動起動弁18と並列に設けられた安全弁である。なお、この安全弁20は、特許文献1の発明の主要構成部分であり、通常の設備には設けられていない。
【0003】
一斉開放弁7の一次室9には、配管8を介して消火薬剤源が接続されている。消火薬剤源は、水槽1、ポンプ2、原液タンク5及び混合器3から構成され、配管8に設けた混合器3により、水槽1からの水と原液タンク5からの泡原液が混合される。なお、4は圧力タンク、6は流水検知装置である。
【0004】
このような設備では、火災の発生により感知ヘッド13が開放すると、感知用配管内14の減圧により一斉開放弁7が開放し、泡ヘッド16側に消火液としての泡水溶液が流出し、泡ヘッド16から泡が放出される。
【0005】
そして配管内の圧力低下を圧力タンク4に取り付けられた図示しない圧力スイッチが検知すると、図示しない制御盤によりポンプ2が起動され、水槽1の水と原液タンク5の泡原液が、混合器3により所定の比率で混合され、泡水溶液が泡ヘッド16に供給されて、火災を消火する。なお、泡水溶液が二次側配管8内を流れると、流水検知装置6がその流れを検知して、図示しない制御盤に流水信号を出力する。
【特許文献1】特開平8−89594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この泡消火設備では、竣工時や設置後定期的に、法令で定める点検を行わねばならない。点検内容は、実際に泡ヘッドから泡を放出させて、泡の発泡倍率や泡水溶液の混合比の測定を行う。この際、一斉開放弁7毎の区画に一斉放射試験を行うため、10個前後の泡ヘッド16から泡消火剤が放出されることになる。
【0007】
このため、点検時には、実際に泡を放出するため、駐車場内の養生を広範囲に渡り事前に実施する必要があり、また、車の一時移動や駐車制限等を行わねばならなかった。また、放射量が多いため、放射後の泡消火剤等の廃棄処理に手間がかかるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、流水検知装置が設けられた本管と、該本管の基端側に設けられ、原液タンクや混合器などを有する消火薬剤源とを備えた消火設備において、本管から分岐した試験用配管に、常時は閉じた試験弁を介して試験用の開放型ヘッドを接続し、試験用配管に分岐して排水配管を接続したことを特徴とするものである。
【0009】
また、排水配管にオリフィスを設け、試験用配管に圧力計を設けたことを特徴とするものである。更に、本管の流水検知装置の二次側に二次側配管を設け、該二次側配管に泡ヘッド又は泡噴霧ヘッドを接続したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、泡式の消火設備において、本管から分岐した試験用配管に、常時は閉じた試験弁を介して試験用の開放型ヘッドを備えたので、試験用の開放型ヘッドが設置されたコンパクトなスペースで設備の試験を行うことができる。また試験時には、泡又は泡水溶液は、ヘッド1個分しか放出されないため、放出後のエリアが狭く廃棄処理の手間がかからない。
【0011】
また排水配管にオリフィスを設け、試験配管に圧力計を設けたので、圧力計の値を確認しながら、試験弁の開度を調整することで、配管内を流れる流量を把握でき、混合器を流れる流量が適正であるかを確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の消火設備を説明するためのシステム図である。図1の消火設備において、図2で説明した消火設備と異なる点は、試験装置Sを設けた点である。この試験装置S以外の部分は、従来で説明したものと同じであり、これら従来と同じ部分には同じ符号を付けて説明を省略する。
【0013】
22は流水検知装置6が設けられた本管で、本管22の基端側には消火薬剤源Cが設けられる。消火薬剤源Cは、原液タンク5、混合器3、ポンプ2及び水槽(図示せず)から構成される。そして、本管22において、消火薬剤源Cと流水検知装置6との間には、試験装置Sが設けられる。
【0014】
続いて、試験装置Sの構成について説明する。本管22には試験用配管24が分岐して設けられる。試験用配管24には、常時は閉じた試験弁26を介して試験用の開放型ヘッド28(以下、試験用ヘッド28と呼ぶ)が接続されている。また、試験用配管24には、オリフィス32を有する排水配管30が分岐して接続され、この排水配管30は更に排水本管34に接続され、また排水本管34は流水検知装置6にも接続されている。なお、29は試験用配管24に設けた圧力計で、点検者が視認できる取付高さ位置に設けられる。また、試験弁26を開放させた試験時において、混合器3における適正な流量が得られるように、オリフィス32は一例として、0.25MPaの圧力で、80L/minの流量があるものが使用される。
【0015】
ここで、試験用ヘッド28は、防護区画に設置された泡ヘッド16と同じものが使用される。試験用ヘッド28(試験装置S)は駐車場などにおいて、駐車スペースなどがない隅の方に設けられる。また試験用ヘッド28の取付高さは、適宜調整可能であるが、通常の泡ヘッド16の取付高さよりも低く、成人の身長以下、例えば床面から180〜120cm程度の取付高さで設置することが好ましい。
【0016】
なお、本管22の流水検知装置6の二次側には、二次側配管8が設けられる。図1においては、二次側配管8の先端側には、従来例と同様に、一斉開放弁7及び泡ヘッド16などからなる薬剤放射部を接続したものを図示してあるが、この薬剤放射部は閉鎖型ヘッドからなる泡噴霧ヘッドで構成してもよい。なお、この場合にも、試験用ヘッド28には、図1で使用したものと同じ開放型の泡ヘッドが使用される。
【0017】
次に本消火設備における試験の方法について説明する。まず試験開始にあたって、試験弁26を開放する。そうすると、本管22内の泡水溶液が、試験用配管24を通って試験用ヘッド28から放射される。この際、同時に泡水溶液の一部は、オリフィス32を介した排水配管30にも流れ、排水本管34から直接雑排水槽等に排水される。なお、試験弁26を開放しても、手動起動弁18が開放するわけではないので、一斉開放弁7は開放しないので、泡消火剤が放出されるのは試験装置Sのある箇所だけである。
【0018】
試験用ヘッド28より放射された泡消火剤を、計量用の器具などを使用して採取し、発泡倍率、混合比等が適正であるかの確認を行う。この際、試験用ヘッド28が、駐車場などにおいて、駐車スペースなどがない隅の方に設けられていれば、駐車中の車を移動させることなく、設備の試験を行うことができる。また、試験用ヘッド28の取付高さを、成人の身長以下の取付高さで設置しておけば、床面における泡の放射される面積が小さくなり、試験後の処理が容易となるばかりでなく、泡の採取にも都合が良い。このように本消火設備では、試験用ヘッド28及び試験用配管24の設置された省スペースで試験を行うことが可能となる。
【0019】
床面を汚さないようにするため、発泡された泡の採取には、床に置いた採取用のマスと試験用ヘッド28とをビニールなどでできた筒状のシューターで両者を接続して、泡をマス内に集めるようにしてもよい。
【0020】
なお、試験弁26の開放度合いが小さい、試験用ヘッド28から放射される流量だけでは、混合器3を通過する流量が少なく、適正な混合比を得ることができない場合がある。そこで、圧力計29の値を確認しながら、試験弁26の開度調整を行って流量調整を行い、適正な流量を得るようにする。ここで、試験弁26の開放度合いにより、圧力調整は可能であるが、そのときの試験弁26の開度(流過口径)はわからないため実際に流れている流量を計測(計算)することができない。
【0021】
そこで重要となるのが、排水配管30に設けたオリフィス32の存在である。オリフィス32を介することにより、一定の流過口径となるため、圧力計29の圧力値を読むことにより、そこに流れている流量を把握することが可能となる。より具体的に説明すると、配管を流れる流量をQ、圧力をPとすると、流量Qと圧力Pの間には、次式が成立する。
【0022】
Q=K√P (Kは口径によって定まる定数である)
このとき、排水配管30にオリフィス32を設置することで、K値を一定の値に固定することが可能となり、圧力Pの値により流量Qを特定することが可能となるのである。
【0023】
本実施の形態においては、本管22において、流水検知装置6の一次側から試験用配管24を分岐させて接続しているので、試験弁26を開放させても流水検知装置6には消火剤が流れることはない。このため流水検知装置6を不用意に動作させずに済むので、試験上都合が良い。
【0024】
また本実施の形態においては、オリフィスを設けたが、オリフィスを設けずに、排水配管自体の配管径によって、流れる流量を適正なものとするように設計してもよい。また圧力計を設けて試験弁の開放度合いを調整するようにしたが、予め適正な混合比の流量が得られる試験弁の開放位置を定め、その開放位置に目印をつけておくようにしてもよい。
【0025】
なお、試験弁は点検業者以外の人が勝手に操作しないようにするため、試験装置Sは施錠された扉を有する点検スペース内に設けることが望ましい。またこの点検スペースは流水検知装置が設けられる場所と一緒にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の消火設備のシステム図である。
【図2】従来の消火設備のシステム図である。
【符号の説明】
【0027】
1 水槽、 2 ポンプ、 3 混合器、 4 圧力タンク、
5 原液タンク、 6 流水検知装置、 7 一斉開放弁、 8 二次側配管、
9 一次室、 10 二次室、 11 弁体、 12 シリンダ室、
13 感知ヘッド、 14 感知用配管、 16 泡ヘッド、
17 消火用配管、 18 手動起動弁、 20 安全弁、 22 本管、
24 試験用配管、 26 試験弁、 28 試験用ヘッド、 29 圧力計、
30 排水配管、 32 オリフィス、 34 排水本管、tt

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水検知装置が設けられた本管と、該本管の基端側に設けられ、原液タンクや混合器などを有する消火薬剤源とを備えた消火設備において、
前記本管から分岐した試験用配管に、常時は閉じた試験弁を介して試験用の開放型ヘッドを接続し、
前記試験用配管に分岐して排水配管を接続したことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記排水配管にオリフィスを設け、前記試験用配管に圧力計を設けたことを特徴とする請求項1記載の消火設備。
【請求項3】
前記本管の流水検知装置の二次側に二次側配管を設け、該二次側配管に泡ヘッド又は泡噴霧ヘッドを接続したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−55454(P2006−55454A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241716(P2004−241716)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】