説明

消火設備

【課題】消火時に外部の延焼を招くことなく確実に消火を行うことを可能とする。
【解決手段】アスファルト再生プラントは、回転可能なドラム10の一端にバーナー14を配置し、ドラム10内に搬入されたアスファルト舗装廃材をバーナー14により過熱して再生する。ガス消火装置26は火災時にドラム10内にガスヘッド32から消火ガスを放出して窒息消火する。同時に水消火設備28がドラム10の外表面に加圧供給された水を水ヘッド56から噴霧して冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム内に搬入されたアスファルト舗装廃材をバーナーにより過熱して再生するアスファルト再生プラントの火災を消火する消火設備に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト舗装廃材を再生するアスファルト再生プラントにあっては、回転するドラムの一端にバーナーを配置し、ドラム内に搬入されたアスファルト舗装廃材をバーナーにより過熱して再生する処理を行っている(特許文献1,2)。
【0003】
しかし、アスファルト舗装廃材をバーナーの熱で高温に加熱しすぎるとアスファルトが発火して火災が発生する。一度火災が発生すると油分を含むアスファルトを消火することは非常に困難となり、消火に手間取るとプラント全体に火災が拡大してしまう事態を招きかねない。そこで、アスファルト再生プラントを対象とした火災消火方法と装置が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−202903号公報
【特許文献2】特開平10−77603号公報
【特許文献3】特開平6−316905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アスファルト再生プラントを対象とした従来の消火装置にあっては、アスファルトが入っているドラム内に消火ヘッドから水を噴霧して消火しているが、ドラムが完全に密閉されればよいが、完全に密閉されなければ、水の噴霧により油分を有するアスファルトが流れて外部に漏れ出し、火災の延焼を起こす恐れがある。
【0006】
本発明は、消火時に外部の延焼を招くことなく確実に消火を行うことを可能とするアスファルト再生プラントの消火設備を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転可能なドラムの一端にバーナーを配置し、ドラム内に搬入されたアスファルト舗装廃材をバーナーにより過熱して再生するアスファルト再生プラントの火災を消火する消火設備に於いて、
火災時にドラム内に消火ガスを放出して窒息消火するガス消火装置と、
火災時にドラムの外表面に加圧供給された水を噴霧して冷却する水消火設備と、
を設けたことを特徴とする。
【0008】
ここで、水消火設備は、ドラムの周囲に、ドラムの外表面に噴霧された水を溜めてドラムの一部を浸漬させる受水槽を配置する。
【0009】
また、ガス消火設備は消火ガスとして窒素ガスまたは二酸化炭素ガスを放出する。
【0010】
また、ガス消火設備は、ドラムのアスファルト回収側に連設された貯蔵タンク内にガスヘッドを配置して消火ガスを放出し、貯蔵タンクを経由してドラム内に消火ガスを充満させる。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、火災時にドラム内部に消火ガスを入れて窒息作用により消火を行い、同時に、ドラムの外表面に水を噴霧してドラムの周囲を水で覆うことで冷却して消火を行い、窒息作用と冷却作用によって確実に消火を行うことができる。
【0012】
また、ドラム内に水は入れないことから水の噴霧により油分を有するアスファルトが流れて外部に漏れて、火災の延焼を起こすことを確実に防止できる。
【0013】
また、ドラム内に消火ガスを噴出する消火時には、ドラム及びこれに連設した貯蔵タンク等の内部を密閉させるか、爆発しない程度に排気装置を使って排気させ、これによって消火ガスによる窒息作用を充分に発揮できる。
【0014】
また、ドラム外表面の水噴霧は上下横どこから噴霧しても良く、更に、ドラム周りに受水槽を配置して噴霧した水を溜めることで、ドラム表面の一部を水に浸けて効率良く冷却することができる。
【0015】
また、ドラム内にガスヘッドを配置せずに、ドラム内に通ずる貯蔵タンクにヘッドを配置して消火ガスを放出し、貯蔵タンクを介してドラム内に消火ガスを充満させることで、バーナーからの熱風によるガスヘッドの損傷を防止し、確実にドラム内に消火ガスを入れることができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるアスファルト再生プラントの消火設備の実施形態を示した説明図
【図2】ヘッドから噴霧した水により冷却するドラムに対する受水槽の配置を示した説明図
【図3】ドラムに対する水ヘッドの配置の他の実施形態を示した説明図
【図4】本発明における水消火装置の他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明によるアスファルト再生プラントの消火設備の実施形態を示した説明図である。
【0018】
図1において、アスファルト再生プラントは、機台12上に図示しないモータにより駆動されるローラ16を介して回転可能にドラム10を配置しており、ドラム10の右側にはドラム10内に火炎を吹き込んで加熱するバーナー14が配置され、また、破砕されたアスファルト舗装廃材を搬入するコンベア18が配置されている。
【0019】
ドラム10の左側には貯蔵タンク20が配置され、ドラム10のバーナー14による過熱で再生されたアスファルトを回収して貯蔵している。また、貯蔵タンク20の上部は集塵機22に接続され、アスファルト舗装廃材の加熱で発生したダストや排ガスを回収除去して大気に放出するようにしている。貯蔵タンク20には熱電対を用いた温度計24が設置され、内部温度を監視できるようにしている。
【0020】
アスファルト再生処理は、ドラム10を回転させた状態で、バーナー14によりドラム12内に火炎を送り込み、コンベア18によりアスファルト舗装廃材をドラム10内に搬入する。ドラム10の内周壁には羽根が形成されており、搬入された廃材は羽根により掻き揚げられて転動しながら出口側に送られ、その間にバーナー14からの火炎による熱風を受けて加熱され、溶融したアスファルトを貯蔵タンク20に回収する。
【0021】
本実施形態の消火設備として、ガス消火装置26と水消火装置28が設けられる。ガス消火設備26は、消火ガスとして窒素ガス又は二酸化炭素ガスを収納したガスボンベなどの貯蔵容器30を複数本配置し、アスファルト再生プラントの貯蔵タンク20の内部にガスヘッド32を配置し、貯蔵容器30とガスヘッド32との間をガス配管34により接続している。
【0022】
貯蔵容器30に対しては起動装置36が設けられる。起動装置36は起動用加圧ガスを収納した容器と制御信号により開放する起動弁を備え、起動用の高圧ガスを貯蔵容器30に供給して容器弁を開くようにしている。
【0023】
ガス配管34の途中には仕切弁38が設けられ、仕切弁38に対してはリミットスイッチなどによる開閉検出器40が設けられ、仕切弁38の開閉状態を消火制御盤60で判断できるようにしている。また仕切弁38の2次側には圧力スイッチ42が設けられ、起動装置36の動作で貯蔵容器30から消火ガスをガスヘッド32に供給した時のガス圧を検出して消火制御盤60で消火ガスの放出が確認できるようにしている。
【0024】
ガスヘッド32を内部に配置した貯蔵タンク20はドラム10内に通じており、ガスヘッド32から放出した消火ガスは、貯蔵タンク20を経由してドラム10内に入るようになる。ここでドラム10内に直接ガスヘッドを配置するとバーナー14からの熱風に晒されて損傷する可能性が高いことから、本実施形態では、雰囲気温度の低い貯蔵タンク20内に配置することで、ガスヘッド32の損傷を防ぎ、確実に消火ガスを放出できるようにしている。
【0025】
次に水消火装置28を説明する。水消火装置28は、水源水槽46に貯留した水を加圧供給するポンプ44を配置し、ポンプ44はポンプ制御盤50により制御されるモータ48により駆動される。アスファルト再生プラントのドラム10の周囲には複数の水ヘッド56が配置されている。水ヘッド56は本実施形態にあっては、ドラム10の上部の長手方向に配列しているが、ドラム10の上下左右のいずれの位置であっても良い。
【0026】
ポンプ44と水ヘッド56との間は水配管52により接続され、水配管52の途中に減圧式一斉開放弁などの開閉制御弁54を設けている。更に、ドラム10の下部に受水槽62が配置されている。
【0027】
図2はドラム10に対する受水槽62の配置を示した説明図であり、ドラム10の下部が受水槽62の中に位置するように配置している。このため水ヘッド56から噴霧した水は受水槽62に溜り、溜まった水にドラム10が浸漬することで高い冷却効率を得るようにしている。受水槽62はドラム10の長手方向を全てカバーする長さとして、一台の受水槽でドラム10全てを冷却するようにしても良い。
【0028】
ガス消火装置26及び水消火装置28は消火制御盤60により制御される。消火制御盤60に対してはドラム10の近傍は設置された手動起動装置58が信号線接続されている。
【0029】
消火制御装置60は制御部としてプロセッサを内蔵しており、プロセッサによるプログラムの実行で消火制御を行う。消火制御装置60による消火制御は、ドラム10内で火災が発生した時の手動起動装置58の操作による起動信号を受信して開始される。
【0030】
消火制御装置60による消火制御は起動装置36に制御信号を出力して動作し、起動高圧ガスを貯蔵容器30に供給して容器弁を開放し、ガス配管34に消火がスを供給し、貯蔵タンク20のガスヘッド32から消火ガスをタンク内に放出させる。貯蔵タンク20内に放出された消火がスは更に火災を起こしているドラム10内に入り、消火ガスを充満させる。
【0031】
この消火ガスの放出時には、ドラム10の入口側を閉鎖して内部を密閉状態とし、ガスヘッド32から放出した消火ガスが漏れないようにするか、ドラム10内の熱による消火ガスの膨張で爆発を起こさない程度に集塵装置22の排気運転を行って排気させる。このようにドラム10内に消火ガスを充満させることで窒息作用による消火を行う。
【0032】
ここで、仕切弁38が閉鎖されている状態で消火制御盤60がガス消火装置26を起動した場合、開閉検出器40からの閉鎖検出信号に基づき仕切弁38が閉鎖状態にあることを警報する。また、ガス消火装置26の起動によりガス配管34に消火ガスが供給されると圧力スイッチ42から圧力検出信号が得られ、消火ガスの放出を確認表示する。
【0033】
また消火制御装置60は同時に水消火装置28のポンプ制御盤50に起動信号を送り、モータ48を駆動してポンプ44の運転を開始し、水配管52に水源水槽46からの水を加圧供給する。同時に消火制御装置60は開閉制御弁54に開制御信号を送って開放する。
【0034】
このためポンプ44から加圧供給された水はドラム10の周囲に配置された水ヘッドに供給され、ドラム10の外表面に水を噴霧し、ドラム10の周囲を噴霧した水で覆う。この水ヘッド56からの水の噴霧によって内部で火災を起こしているドラム10が冷却され、内部温度を下げる冷却作用により火災を消火させる。
【0035】
また水ヘッド56から噴霧された水はドラム10の下部に設置した受水槽62に流れ込んで溜り、ドラム10の下部が受水槽62に溜まった水に漬けられ、更に効率良く冷却される。通常回転しているドラム10は、電気的な供給を遮断するため、また消火により冷却されて固形化したアスファルトがドラム内で回転するのを防止するために、ドラムの回転を停止させる。当然、消火装置の起動、あるいは本プラントに配置した火災報知設備の火災感知に連動してバーナー14を停止する。
【0036】
そして、ドラム10内に入れた消火ガスによる窒息作用と、水ヘッド56からの水の噴霧によるドラム10の冷却作用により、外部に延焼することなく、火災の初期段階で確実にドラム10内の火災を消火することができる。
【0037】
図3はアスファルト再生プラントのドラムに対する水ヘッドの配置の他の実施形態を示した説明図である。
【0038】
図3(A)は、ドラム10を平面で示しており、ドラム10の両側に複数の水ヘッド56を配置して水を噴霧する。
【0039】
図3(B)は、ドラム10を平面で示しており、ドラム10の中央に両端に向けて2h複数の水ヘッド56を背合せに配置して水を噴霧する。
【0040】
図3(C)は、ドラム10の断面を示しており、ドラム10の下部両側に斜め上向きに水ヘッド56を配置し、ドラム10の下部から水を噴霧する。
【0041】
勿論、図3(A)〜(C)を組み合わせた水ヘッド56の配置としても良い。
【0042】
図4は本発明の消火設備で使用する水消火装置の他の実施形態を示した説明図である。図4の水消火装置28は、アスファルト再生プラントのドラム10より高い位置に貯水タンク64を設置している。貯水タンク64はドラム10内の火災に対し充分に冷却可能な量の水を溜めるタンク容量としている。貯水タンク64から引き出した水配管66は開閉制御弁68を介して例えばドラム10の上部に配置した複数の水ヘッド56に接続している。
【0043】
開閉制御弁88はドラム10の火災時に図1に示した消火制御盤60からの制御信号により開制御され、貯水タンク64に溜めていた水を水配管66により水ヘッド56に供給してドラム10に散布し、冷却する。
【0044】
このような水消火装置28によれば、図1のポンプ設備を使用した水消火設備に比べ装置構成が簡単となり、設備コストを低減できる。
【0045】
なお、上記の実施形態にあっては、運転要員が火災と判断して現場の手動起動装置58操作してガス消火装置26及び水消火設備28を起動する場合を例にとっているが、消火制御装置60に設けている起動釦などを操作して起動しても良い。またドラム10内などに設置した温度センサからの検出信号から所定の火災温度を超えたこと判定して自動的にガス消火装置26及び水消火設備28を起動するようにしても良い。
【0046】
また、ガス消火装置26と水消火設備28を別々に起動停止できるようにし、火災の状況に応じていずれか一方の消火装置を起動するか、又は、一方の消火装置を起動した後に他方の消火装置を起動するといったタイムラグを設けた順次起動を行っても良い。
【0047】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0048】
10:ドラム
12:機台
14:バーナー
16:ローラ
18:コンベア
20:貯蔵タンク
22:集塵機
24:温度計
26:ガス消火装置
28:水消火装置
30:貯蔵容器
32:ガスヘッド
34:ガス配管
35:安全装置
36:起動装置
38:仕切弁
40:開閉検出器
42:圧力スイッチ
44:ポンプ
46:貯水槽
48:モータ
50:ポンプ制御盤
52:水配管
54:開閉制御弁
56:水ヘッド
58:手動起動装置
60:消火制御盤
62:受水槽
64:貯水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なドラムの一端にバーナーを配置し、前記ドラム内に搬入されたアスファルト舗装廃材を前記バーナーにより過熱して再生するアスファルト再生プラントの火災を消火する消火設備に於いて、
火災時に前記ドラム内に消火ガスを放出して窒息消火するガス消火装置と、
火災時に前記ドラムの外表面に加圧供給された水を噴霧して冷却する水消火設備と、
を設けたことを特徴とする消火設備。

【請求項2】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記水消火設備は、前記ドラムの周囲に、前記ドラムの外表面に噴霧された水を溜めてドラムの一部を浸漬させる受水槽を配置したことを特徴とする消火設備。

【請求項3】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記ガス消火設備は消火ガスとして窒素ガスまたは二酸化炭素ガスを放出することを特徴とする消火設備。

【請求項4】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記ガス消火設備は、前記ドラムのアスファルト回収側に連設された貯蔵タンク内にガスヘッドを配置して消火ガスを放出し、前記貯蔵タンクを経由して前記ドラム内に消火ガスを充満させることを特徴とする消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−216118(P2010−216118A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62452(P2009−62452)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】