説明

消費電力抑制装置及びACアダプタ装置

【課題】 特別なコードを準備することなく電力消費を抑制し得るACアダプタ装置の提供。
【解決手段】 一次出力側接続線から供給される交流電流を直流電流に変換して二次出力側接続線を介して電気機器に供給するACアダプタの、二次出力側接続線の途中部分に、電気機器へ供給する直流電流を遮断するためのスイッチを設け、二次出力側接続線の途中部分が巻回されるフェライトコアの外装体に、スイッチの操作片を設け、外装体を、フェライトコアを外装する円筒状部と、円筒状部の外周から径方向外方へ膨出する膨出部とから構成し、二次出力側接続線の途中部分を膨出部に引込んで、膨出部に内装したスイッチを介して二分した構成の消費電力抑制装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力抑制装置及びACアダプタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力消費を抑制できるACアダプタ装置として、下記特許文献1に示す技術が提案されている。
この技術では、ACアダプタへの待機電力を一次電源側で遮断するための手元スイッチが、二次出力側接続線と平行して設けたリモコンコード上に設けられている。この構成によれば、手元スイッチを操作することでACアダプタの交流回路そのものが切断され、これによってACアダプタの待機電力の消費を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000―123930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の手元スイッチでは、ACアダプタの交流回路を切断するよう構成されてACアダプタの待機電力を抑えることができるが、この操作を、パーソナルコンピュータ(以下パソコンと称す)等のオペレータの手元で行うには、二次出力側接続線とは別のリモコンコードを準備してこれに手元スイッチを接続しなければならないという構成上の課題があった。また、パソコンを机上に置きACアダプタを床面に置くような場合で、手元スイッチをオペレータが手元で操作できるようにするためには、かなり長尺のリモコンコードを準備しなければならないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、特別なコードを準備することなく電力消費を抑制し得るACアダプタ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の消費電力抑制装置は、ACアダプタと電気機器との間に接続される直流電流供給用の接続線の途中部分に、電気機器へ供給する直流電流を遮断するためのスイッチが設けられていることを特徴としている。
上記構成において、電気機器へ供給する直流電流を遮断するためのスイッチを接続線の途中部分に設けることで、特別なコード(接続線)を要することなく、消費電力が抑制される。
【0007】
本発明の消費電力抑制装置では、接続線の途中部分が巻回されるフェライトコアの外装体に、スイッチの操作片が設けられていることを特徴としている。
上記構成において、フェライトコアを外装する外装体にスイッチの操作片を設けることにより、外装体を利用することで操作片のために特別に設置部分を設ける必要がない。
【0008】
本発明の消費電力抑制装置では、外装体はフェライトコアを外装する円筒状部と、該円筒状部の外周から径方向外方へ膨出する膨出部とから構成され、接続線の途中部分が前記膨出部に引込まれて膨出部に内装されたスイッチを介して二分されていることを特徴としている。
上記構成において、スイッチを膨出部に収納することで、スイッチとフェライトコアとの間に空気層を設けることが可能になる。
【0009】
本発明の消費電力抑制装置では、膨出部の長手方向両側に端壁がそれぞれ設けられ、円筒状部の長手方向両側に端壁がそれぞれ設けられ、円筒状部の軸方向に沿う長手方向長さに比べて膨出部の長手方向長さが短く設定されて、膨出部の一方の端壁が円筒状部の一方の端壁に対して他方の端壁側に位置をずらして配置され、操作片は膨出部の前記一方の端壁から露出して設けられていることを特徴としている。
【0010】
上記構成のように、膨出部の一方の端壁を、円筒状部の一方の端壁に対して他方の端壁側に位置をずらして配置し、操作片を膨出部の一方の端壁から露出して設けていることで、操作片を操作するオペレータの手指の位置決めがし易く、操作片の操作がし易い。
【0011】
本発明の消費電力抑制装置では、膨出部の他方の端壁側に、円筒状部側ほど一方の端壁から離れるよう傾斜する斜壁が設けられていることを特徴としている。
上記構成において、斜壁に手指をあてて操作片に別の手指をあてて膨出部を手指で挟持することで、操作片の操作を安定して行うことが可能である。
【0012】
本発明のACアダプタ装置は、上記いずれかの構成の消費電力抑制装置を備えることを特徴としている。
このACアダプタ装置によれば、電気機器の不使用時における消費電力を抑えることが可能になる。
【0013】
本発明のACアダプタ装置では、ACアダプタと直流電流供給用の接続線が電気的かつ構造的に一体に構成され、AC電源とACアダプタとを電気的に接続する接続線が、ACアダプタに着脱自在に設けられていることを特徴としている。
上記構成のように、AC電源とACアダプタとを電気的に接続する接続線をACアダプタに着脱自在とした構成によれば、ACアダプタに設けたポートに、端部を独自の形態とした接続線を選択してこれをACアダプタのポートに接続することが可能になり、使用者ごとの対応性を向上させられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の消費電力抑制装置によれば、電気機器へ供給する直流電流を遮断するためのスイッチを、接続線の途中部分に設けた構成としているから、消費電力を抑制するためのスイッチを設けるために特別なコードを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示すACアダプタ装置の使用状態を示す斜視図
【図2】同じく消費電力抑制装置の操作片を含む外装体の後方からの斜視図
【図3】同じく消費電力抑制装置の前方からの斜視図
【図4】同じく消費電力抑制装置の背面図
【図5】同じく平面図
【図6】同じく一方側(右側)からの側面図
【図7】同じく底面図
【図8】同じく正面図
【図9】同じく内部構造の一部を省略した長手方向を表す中央断面図
【図10】同じく内部構造の一部を省略した幅方向を表す前方からの断面図
【図11】同じく外装体の一部(後側一部)を省略した断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るACアダプタ装置を、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態を示すACアダプタ装置の使用状態を示す斜視図、図2はACアダプタ装置に備えられた消費電力抑制装置の、操作片を含む外装体の後方からの斜視図、図3は同じく前方からの斜視図、図4〜図8はそれぞれ操作片を含む外装体の六面図のうちの一図である。
また図9は長手方向を表す中央断面図、図10は幅方向を表す前方からの断面図、図11は外装体の一部(後側)を省略した断面斜視図である。
【0017】
図1に示すように、この実施形態におけるACアダプタ装置は、ACアダプタ2と、一次出力側接続線(一次出力側コード)5と、二次出力側接続線(二次出力側コード)6と、二次出力側接続線6上に設けられた消費電力抑制装置1とから構成され、消費電力抑制装置1は、操作部1Aを備えている。
【0018】
ACアダプタ2の一側には、AC電源に接続される一次出力側接続線5が着脱自在に接続され、ACアダプタ2の他側には、直流電流をノート型のパソコン4に供給するための二次出力側接続線6が電気的、構造的に一体に接続されてACアダプタ2と二次出力側接続線6とは組品3とされている。
【0019】
消費電力抑制装置1の操作部1Aは、二次出力側接続線6の途中で且つパソコン4に近い側に設けられており、二次出力側接続線6の他端側には、パソコン4の接続ポートに接続されるプラグ9が設けられている。
なお、ACアダプタ2は、一次出力側接続線5から供給される電力を直流に変換して二次出力側接続線6に供給する機能を有する。
【0020】
図9に示すように、二次出力側接続線6の途中にフェライトコア7が電気的に接続されている。この場合の接続とは、二次出力側接続線6を円筒状のフェライトコア7の内部に通過させるように巻回することである。
【0021】
消費電力抑制装置1の操作部1Aは、パソコン4へ供給する直流電流を遮断するためのスイッチ8と、円筒状のフェライトコア7およびスイッチ8を囲繞する外装体10を有する。
図2〜図8に示すように、外装体10は、フェライトコア7を外装する円筒状部11と、円筒状部11の外周から径方向外方へ膨出する膨出部12とから、合成樹脂により一体的に形成されている。
円筒状部11の両側は開口13,14とされており、それぞれの開口13,14には二次出力側接続線6の被覆ブッシュ15,16が嵌合されている(図9参照)。円筒状部11の内周面にはフェライトコア7をその外周下部で保持する保持片17が形成されている。
【0022】
膨出部12は、天壁18と、左右の側壁20,21と、斜壁(前壁、すなわち一方の端壁に相当する)23と、後壁(他方の端壁に相当する)22とを有している。天壁18、左右の側壁20,21、斜壁23、後壁22、天壁18、の何れもが平板状の壁として形成されている。特に斜壁23は膨出部12の左右方向(例えば図8における左右方向)全域にわたって形成されている。また、斜壁23は円筒状部11側(下方側)ほど後壁22から離れるよう傾斜しており、その下端部は円筒状部11の前壁(一方の端壁に相当する)24に連続している。
また、膨出部12の後方は開放されており、この場合、後壁22を構成している部分は、外装体10とは別体の、後述のスイッチボックス26の後壁を代用としている。スイッチボックス26の後壁は、天壁18に固定されるスイッチボックス26の本体に比べて拡大された面積を有しており、膨出部12の後方端面に、後方から当接されている。
【0023】
膨出部12の左右幅は円筒状部11の径に等しく設定され、膨出部12の長さ(図6、図9における左右方向の長さ)は、円筒状部11の長さに比べて短く設定されている。
膨出部12の後壁22は、円筒状部11の後壁(他方の端壁に相当する)25に比べて前方に位置ずれして配置されている。
【0024】
天壁18の裏面に、内部にスイッチ回路を有する前記スイッチボックス26が固着されている。この構成により、フェライトコア7とスイッチボックス26との間に隙間(空気層)が設けられた構成となっている。
なお、外装体10は幅方向中心で二つ割りされたものを組合せて構成されている。
【0025】
スイッチボックス26は、スイッチ回路をオン・オフするための操作片27が、膨出部12の後壁22から露出するよう設けられている。ここに用いられているスイッチ構造は、ロッカースイッチと呼ばれるもので、操作片27は不図示の縦軸回りに回動自在な切替操作片であり、左右何れか一方側を押圧することで、クリック感をもって他方側が後壁22から突出し、他方側を押圧することで一方側が後壁22から突出するよう構成されている。
ACアダプタ2側(後方側)から開口14を通して外装体10の内部に導入された二次出力側接続線6は、外装体10の内部において前記スイッチ回路を介して二分されている。
すなわち、外装体10の内部に導入された二次出力側接続線6は、一旦フェライトコア7に巻かれて前記スイッチ回路の入力側端子31に接続され、前記スイッチ回路の出力側端子30から前側の開口13を通してパソコン4側に導出される構成となっている。
【0026】
なお、図1に示すように、ACアダプタ2の後方側(AC電源側)には、AC電源に接続される一次出力側接続線5の接続ポート32が設けられている。
【0027】
上記構成において、パソコン4の接続ポートに二次出力側接続線6のプラグ9を接続し、ACアダプタ2の接続ポート32に一次出力側接続線5を接続し、またAC電源に一次出力側接続線5を接続する。このようにすることにより、操作片27がオンの姿勢にあれば、パソコン4に装着されたバッテリーに充電がなされる。
このとき、二次出力側接続線6の途中にはフェライトコア7が接続されているから、直流電流に伴うノイズが除去され、バッテリーの寿命を確保することができる。
【0028】
ところで、一般的に、バッテリーはその容量を常に充分に満たしておくよりも、容量が減った時点で充分に充電するほうが、寿命が長くなる。そこで、本発明の実施形態では、二次出力側接続線6の途中に、操作部1Aを設けてバッテリー(パソコン本体)への直流電流の供給を遮断するスイッチ8(操作片27)を、二次出力側接続線6の途中で且つパソコン4に近い側に設けている。
このため、スイッチ8のオン・オフ操作をオペレータが手元の操作片27の操作で行うことができる。換言すれば、プラグ9をパソコンから抜く作業や一次出力側接続線5をAC電源から抜くという作業を必要とせず、バッテリーの寿命を確保することができる。
【0029】
また、パソコン4(パソコン本体)への電力の供給を手元の操作片27を操作することで行うこともできる。
パソコン4での入力作業が終了した場合や、長時間の中断でパソコン4に電力を供給する必要がなくなった場合では、パソコン4をシャットダウンすることが一般的に行われる。ここで、AC電源にパソコン4が接続されたままでは、待機電力が発生している。しかしながらこの待機電力は不要な電力である場合がほとんどである。そこで、例えばパソコン4をシャットダウンした後に、操作片27を手元で操作してスイッチ8をオフにする。これによって、パソコン4への待機電力を遮断することができる。
【0030】
要するに、バッテリーを含め、パソコン4への電力の供給が不要な場合には、プラグ9を引き抜いたり、AC電源から一次出力側接続線5を引き抜いたりする作業を要することなく、操作部1Aに設けた操作片27を手元で操作してスイッチ8をオフにすることで、不要な電力供給を抑えることができ、便利に使用することができる。
バッテリーの蓄電容量が少ない場合には、やはりオペレータがその手元で操作片27を操作してスイッチ8をオンにすれば、ACアダプタ2からパソコン4側へ直流電流が供給されて、バッテリーへの充電が行われ、また、充電を行いつつパソコン4の操作を行うことができる。
【0031】
操作片27をオペレータが手元で操作するとき、例えば斜壁23に親指をあてがい、人差指や中指で操作片27をオン・オフ操作すれば、操作部1Aを机上で安定させた状態で行うことができる。あるいは、例えば人差指を斜壁23にあてがい、親指で操作片27をオン・オフ操作することでも、オペレータは消費電力抑制装置1の操作部1Aを机上で安定させた状態で、手元で操作することができる。
そして、膨出部12の後壁22は、円筒状部11の後壁25に比べて前方に位置ずれして配置されているから、操作片27を手指で操作する際に、円筒状部11の被覆ブッシュ16が邪魔にならず、操作片27の操作がし易い。
【0032】
以上のように本発明の消費電力抑制装置1によれば、操作部1Aを二次出力側接続線6の途中に設けているので、スイッチ8のために特別な電源コードを設ける必要がない。
また、操作部1Aは、フェライトコア7を外装している部材を加工して外装体10とし、外装体10にスイッチ8(スイッチボックス26)および操作片27を取付けているので、スイッチ8を設けるために別な部材を設ける必要がない。
しかもオペレータがプラグ9等を引抜くという面倒な動作を要せず、手元で操作片27をオン・オフ操作するという簡単な動作で、パソコン4の待機電力を抑制して省エネルギーに貢献することができ、さらにはバッテリーの寿命を確保することができる。
また、AC電源とACアダプタ2とを電気的に接続する一次出力側接続線5をACアダプタ2に着脱自在とした構成であるから、ACアダプタ2の接続ポート32に、端部を独自の形態とした一次出力側接続線5を選択してこれをACアダプタ2の接続ポート32に接続することが可能になり、使用者ごとの対応性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1…消費電力抑制装置、1A…操作部、2…ACアダプタ、3…組品、4…パソコン、5…一次出力側接続線、6…二次出力側接続線、7…フェライトコア、8…スイッチ、10…外装体、11…円筒状部、12…膨出部、13,14…開口、15,16…被覆ブッシュ、18…天壁、20,21…側壁、22…後壁、23…斜壁、24…前壁、25…後壁、26…スイッチボックス、27…操作片、30…入力側端子、31…出力側端子、32…接続ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACアダプタと電気機器との間に接続される直流電流供給用の接続線の途中部分に、電気機器へ供給する直流電流を遮断するためのスイッチが設けられていることを特徴とする消費電力抑制装置。
【請求項2】
接続線の途中部分が巻回されるフェライトコアの外装体に、スイッチの操作片が設けられていることを特徴とする請求項1記載の消費電力抑制装置。
【請求項3】
外装体はフェライトコアを外装する円筒状部と、該円筒状部の外周から径方向外方へ膨出する膨出部とから構成され、接続線の途中部分が前記膨出部に引込まれて膨出部に内装されたスイッチを介して二分されていることを特徴とする請求項2記載の消費電力抑制装置。
【請求項4】
膨出部の長手方向両側に端壁がそれぞれ設けられ、円筒状部の長手方向両側に端壁がそれぞれ設けられ、円筒状部の軸方向に沿う長手方向長さに比べて膨出部の長手方向長さが短く設定されて、膨出部の一方の端壁が円筒状部の一方の端壁に対して他方の端壁側に位置をずらして配置され、操作片は膨出部の前記一方の端壁から露出して設けられていることを特徴とする請求項3記載の消費電力抑制装置。
【請求項5】
膨出部の他方の端壁側に、円筒状部側ほど一方の端壁から離れるよう傾斜する斜壁が設けられていることを特徴とする請求項4記載の消費電力抑制装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載の消費電力抑制装置を備えることを特徴とするACアダプタ装置。
【請求項7】
ACアダプタと直流電流供給用の接続線が電気的かつ構造的に一体に構成され、AC電源とACアダプタとを電気的に接続する接続線が、ACアダプタに着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項6記載のACアダプタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−187519(P2010−187519A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−145374(P2009−145374)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(393010318)エレコム株式会社 (27)
【Fターム(参考)】