説明

液中調査機器の照明方法と液中調査機器

【課題】液中調査機器の姿勢とは別にカメラの視界を変更できると共に、照明機器の数を減少でき、液中調査機器の機体の流体抵抗の増加及び重量の増加を抑制し、制御も単純化できる液中調査機器の照明方法及び液中調査機器を提供する。
【解決手段】液封状態の中で調査する液中調査機器20において、液中調査機器20の機体21の一部又は全部に形成した透明な壁21aa、21abの内側に、カメラ25と照明機器26を配置して、照明機器26の照明方向をカメラ25の視界の方向と連動させて変更して照明を行う。更には、液中調査機器20の透明な壁21aa,21abのカメラ25の撮影視界とする部分21aaと照明光が透過する部分21abとの間に、光を通さない隔壁21bを設けて、透明な壁21aa,211b内部における光の伝播を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道本管等の液密部分における調査に際して、液密部分に投入される液中調査機器(調査用水中ロボット)におけるカメラの視界を照明する際に、照明の光による不具合がカメラに生じないようにした液中調査機器の照明方法と液中調査機器に関する。
【背景技術】
【0002】
水道本管の管内を調査する場合には、管内は送水のために約1MPaにもなる圧力が加わっており、調査時には管内の水が外部に漏れないように水密を保ったまま調査する必要がある。また、原子炉関連施設や化学工場等では、外部に漏れると環境汚染の問題を生じるような液体を扱っている部分での調査においては、調査部分の液体が外部に漏れない液密状態で調査する必要がある。
【0003】
例えば、水道本管の管内を調査する場合に、水道本管から上向きに分岐し、空気弁等が設けられている枝管の空気弁を外し、この枝管から、カメラ、カメラ用の照明灯、移動用のプロペラ等を装備し、ケーブルでデータや動力を送信する管内調査機器(調査用水中ロボット)を水道本管に挿入して、この管内調査機器によって検査を行っている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0004】
この調査では、枝管に設けられた補修弁を閉弁して、枝管から空気弁等を取り外し、枝管に管内調査機器を内部に収容した挿入管を取り付ける。この挿入管を取り付けた後、補修弁を開弁して水密状態とした上で、管内調査機器に連結されたケーブルを繰り出しながら、管内調査機器を水道本管内に挿入し、更に、ケーブルを繰り出しながら管内調査機器を水道本管内の所定の範囲を移動させて、水道本管内の調査を行う。調査を終了したら、ケーブルを引き込んで管内調査機器を水道本管内から挿入管に引き込む。その後、補修弁を閉弁し、挿入管を取り外し、枝管に空気弁などを取り付けて、補修弁を必要に応じて開弁し、元の状態に戻して一連の作業を終了する。
【0005】
この挿入管は、調査時に水道本管を断水させないための不断水挿入装置と呼ばれる水密装置であり、水道本管の高い水圧に抗して水密状態を保つ。この挿入管は、ケーブル挿入部とケーブル送り出し部を備えて形成されている。このケーブル挿入部を経由して、ケーブルは挿入管の外部に導かれて、端末部分が計測及び制御装置に連結されている。
【0006】
これらの従来技術においては、カメラで管路内壁面の点検を実施するために、管内調査機器の前部や側部において、管内調査機器の機体を構成する透明な壁の内側にカメラと照明機器を配置しており、スラスタ等により、管内調査機器の方向を変更することによりカメラの視界を変更している。
【0007】
しかしながら、この照明方法では、カメラの視界を変更するために管内調査機器の姿勢を変更することになるが、管内には水流がある場合が多く、姿勢変更や変更した状態での姿勢維持のための姿勢制御用機器と電力と姿勢制御等が必要となるという問題がある。
【0008】
また、海底や湖底などを調査する水中ロボットなどでは、カメラを旋回するための機構を設けると共に、水中ロボットの機体の外部に複数の方向を向いた照明機器を設けて、旋回した観察カメラの方向に合った照明機器を点灯させることで、撮影を実施している。
【0009】
しかしながら、この照明方法では、水中ロボットの機体の外部に多数の照明機器を取り付ける必要があるため、機体の流体抵抗が大きくなるという問題や、水中ロボットの重量が増加するという問題や、電力節約のためのカメラの視界方向の変化に合わせて照明機器の点灯を切り替える回路や制御が必要になるという問題がある。
【0010】
これに対処するために、調査機器の一部を、例えばアクリル等の透明な壁で形成して、この透明な壁の内部にカメラと連動して照明の方向を変更する照明機器を設けた場合には、この透明な壁の中を照明機器からの光が連続反射して、カメラの視界に入り、この反射光により撮影に支障が生じるという問題が生じる。
【特許文献1】特開2007−91169号公報
【特許文献2】特開2003−43377号公報
【特許文献3】特開平10−221257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、液中調査機器の姿勢とは別にカメラの視界を変更できると共に、照明機器の数を減少でき、液中調査機器の機体の流体抵抗の増加及び重量の増加を抑制し、制御も単純化できる液中調査機器の照明方法及び液中調査機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の液中調査機器の照明方法は、液封状態の中で調査する液中調査機器の照明及び撮影方法において、液中調査機器の機体の一部又は全部に形成した透明な壁の内側に、カメラと照明機器を配置して、照明機器の照明方向をカメラの視界の方向と連動させて変更して照明を行うことを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、液中調査機器の姿勢とは別にカメラの視界を変更できると共に、照明機器の数を減少でき、液中調査機器の機体の流体抵抗の増加及び重量の増加を抑制でき、更に、液中の姿勢変更や姿勢維持制御よりも、カメラの方向変更の制御の方が単純なので、制御も単純化できる。
【0014】
上記の液中調査機器の照明方法において、前記液中調査機器の前記透明な壁のカメラの撮影視界とする部分と照明光が透過する部分との間に、光を通さない隔壁を設けて、前記透明な壁内部における光の伝播を防止する。これにより、この透明な壁の中を照明機器からの光が連続反射して、カメラの視界に入り、この反射光により撮影に支障が生じるという問題を解決できる。
【0015】
上記の液中調査機器の照明方法において前記カメラが液中調査機器の側方を撮影するようにする。この側方撮影は管内の調査を行う場合に多く、この場合には、調査対象となる管壁が、液中調査機器の直近にあるため、照明機器をカメラのすぐ横に配置する必要があるので、特に、上記の方法の効果を生かすことができる。
【0016】
そして、上記の目的を達成するための液中調査機器は、液封状態の中で調査する液中調査機器において、液中調査機器の機体の一部又は全部を透明な壁で形成すると共に、この透明な壁の内側に、カメラと照明機器を同一の方向変換部材に配置して、カメラの視界の方向と照明機器の照明方向とを同時に変更するように構成する。
【0017】
この構成によれば、液中調査機器の姿勢とは別にカメラの視界を変更できると共に、照明機器の数を減少でき、液中調査機器の機体の流体抵抗の増加及び重量の増加を抑制でき、更に、制御も単純化できる。
【0018】
上記の液中調査機器において、前記液中調査機器の前記透明な壁において、カメラの撮影視界とする部分と照明光が透過する部分との間に前記透明な壁内部における光の伝播を防止するための光を通さない隔壁を設けて構成する。この構成により、透明な壁に反射光の縁切り部分を設けることができるので、この透明な壁の中を照明機器からの光が連続反射して、カメラの視界に入ることを防止できる。
【0019】
また、上記の液中調査機器において、前記カメラが液中調査機器の側方を撮影するように配置して構成される。この構成により、調査対象となる管壁が液中調査機器の直近にあって、照明機器をカメラのすぐ横に配置する必要があるような場合には、例えば、管内調査等の場合に、特に、上記の構成の効果を生かすことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液中調査機器の照明方法及び液中調査機器によれば、液中調査機器の姿勢とは別にカメラの視界を変更できると共に、照明機器の数を減少でき、液中調査機器の機体の流体抵抗の増加、重量の増加を抑制し、制御も単純化できる。
【0021】
更に、液中調査機器の透明な壁のカメラの撮影視界とする部分と照明光が透過する部分との間に、光を通さない隔壁を設けて、透明壁内部における光の伝播を防止することにより、この透明な壁の中で連続反射する光による撮影の支障とを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る液中調査機器の照明方法及び液中調査機器の実施の形態について説明する。ここでは、水道本管の調査を例にして説明するが、本発明はこれに限定されず、他の液封状態の中で調査する液中調査機器の照明方法と液中調査機器に適用できる。
【0023】
最初に、この液中調査機器の照明方法及び液中調査機器が使用される水道管内点検システム1について説明する。図1に示すように、水道本管10を断水させずに、300m〜1000m程度の長い距離にわたって、水中点検ロボットである管内調査機器20を使用して、水道本管10の内部の状況や腐食の状況や継ぎ手11部分のずれ等を点検するシステムである。なお、水道管の調査対象としては、500mmφ〜1000mmφ程度で水圧が1MPa程度の水道本管(上水道の配水本管)のみならず、200mmφ程度で水圧が0.3MPa程度の一般ユーザーへ直接接続されている配管等も含まれる。また、ここでいう水道本管とは、水の供給元(浄水場等)と利用先の間にある配管のことをいい、枝管とは、本管から上方に分岐する管で、上方に空気弁、消化栓などを取り付ける管のことをいう。
【0024】
このシステム1は、液中調査機器である管内調査機器20と、この管内調査機器20を水道本管10に挿入するための挿入回収装置30と、映像データや制御データの送受信用と電力伝達用のケーブル41,42,43,44と、管内調査機器20と挿入回収装置30を操縦、制御、モニター、記録のための制御及び監視装置50から構成される。この制御及び監視装置50には、データ保存やデータ解析等の機能を持たせてもよい。
【0025】
管内調査機器20との制御用信号、動力、データ等の送受信は第1接続ケーブル41と第1水中ケーブル42を介して行い、挿入回収装置30との制御用信号、動力の送受信は第2接続ケーブル43と第2水中ケーブル44を介して行う。これらのケーブル41、42、43、44は、電気信号と電力の複合ケーブルで形成される。
【0026】
図1〜図3に示すように、挿入回収装置30は、水道を止めない状態で、即ち、断水しない状態のままで、管内調査機器20を水道本管10の内部に挿入して送り出しを行い、調査後に、この管内調査機器20を回収するための装置である。この挿入回収装置30は、挿入管31とその上部に接続する巻き取り装置格納部材32とから構成され、挿入管31の下部は、水道本管10の分岐部位の補修弁14の上に着脱できるように下部フランジ31aを有し、上部は巻き取り装置格納部材32に接続する上部フランジ31bを有して形成される。また、挿入管31の下部側に水抜き用のコック31cと覗き窓31d(透明アクリル板)を設けてある。この覗き窓31dは、管内調査機器20を収納した格納部材34を引き上げた時に、格納部材34の後部を確認できる位置に設けられる。この覗き窓31dから、格納部材34の後部を確認した後に、補修弁14を閉じることで、格納部材34を補修弁14で挟んで傷つけることを防止している。
【0027】
巻き取り装置格納部材32は、水道本管10の水圧に耐えることができる水密(液密)区画の第1ケース32aと非水密区画の第2ケース32bを有して構成され、更に、第1ケース32aの上部には、レバー36aを持つ挿入ロッド36が出入りするロッド挿入部32cと第2接続ケーブル43と第2水中ケーブル44の接続部となる第2防水コネクタ32dが設けられ、第1ケース32aの下部には、第1水中ケーブル42を案内するガイドローラー32eが設けられる。
【0028】
この挿入ロッド36は、格納部材34を挿入管31から水道本管10内に移動させ、また、逆に水道本管10内から挿入管31に移動させるために、格納部材34を上下させるためのロッドであり、上下移動ができるように構成される。
【0029】
更に、巻き取り装置格納部材32には、第1水中ケーブル42の繰り出しと巻き取りを行う巻き取り装置33が設けられる。この巻き取り装置33は、非水密区画の第2ケース32b内部の巻上げ用モータ33bにより、回転軸33cの回転により、水密区画の第1ケース32aの内部に設けられたケーブルドラム33aを回転させると共に、このケーブルドラム33aの回転と同期してケーブルシフター33dのガイドローラー33eを横移動させながら、第1水中ケーブル42を巻き取る。また、ケーブルドラム33aの回転をフリーにすることにより、第1水中ケーブル42を管内調査機器20の移動に従って繰り出す。また、回転板とエンコーダ等で形成される回転メータ33fによりケーブルドラム33aの回転を検出して制御に使用する。第1水中ケーブル42からの電気信号と動力はスリップリング33gを経由して第1コネクタ33hに導かれる。
【0030】
これらの構成で、ケーブルドラム33aとケーブルシフター33dとガイドローラー33eは水密区画の第1ケース32aの内部に収納し、一方、巻き上げ用モータ33b、回転メータ33f、スリップリング33gなどは非水密区画の第2ケース32bに設けて、ケーブルドラム33aの回転軸部分33cで水密する。回転軸部分33cでの水密機構は周知の技術で、従来技術のようなケーブルが出入りする部分の水密機構に比べて容易に形成することができる。
【0031】
また、この挿入回収装置30の挿入管31には、管内調査機器20を格納する格納部材34が配置され、格納部材34の後方には、第1水中ケーブル42を繰り出すための繰り出しローラー34aが設けられている。この繰り出しローラー34aは挿入ロッド先端部35に設けられた繰り出しローラー用モータ35aからフレキシブルジョイント35b経由で回転駆動される。この繰り出しローラー用モータ35aへの制御信号と動力の伝達のために、第2水中ケーブル44が設けられ、この第2水中ケーブル44で、第2防水コネクタ32dと、挿入ロッド先端部35の繰り出しローラー用モータ35aを連結する。この第2水中ケーブル44は、挿入ロッド先端部35の上下動にしたがって伸縮するように、カールコード等で形成される。
【0032】
また、格納部材34はその後部が、屈曲部材となるケーブルベア34bで挿入ロッド先端部35に接続し、この挿入ロッド先端部35は、挿入ロッド36の下端に固定されて、挿入ロッド36の上下動と共に、挿入管31の内部を上下動する。挿入ロッド36が上端にあるときは、図2及び図3に示すように、格納部材34は管内調査機器20を内部に格納した状態で、挿入管31の下端側の内部にあり、挿入ロッド先端部35もその上にある。一方、挿入ロッド36が下端にあるときは、図1に示すように、格納部材34は挿入管31から押し出されて水道本管10の中にあり、挿入ロッド先端部35は挿入管31の下端側の内部にある。
【0033】
この挿入ロッド先端部35と格納部材34を連結するケーブルベア34bは屈曲部材であり、格納部材34が挿入管31の管軸方向と水道本管10の管軸方向の両方を向くことができるようにする部分であり、複数の関節を有して構成される。この関節は、両側の関節要素部材をピン結合部で連結し、隣接する関節要素部材が相対的にピン結合部周りに所定の角度分だけ回動できるように構成する。このケーブルベア34bを関節で形成することにより、曲がり方向や曲がりの前後の形状を固定することができるので、格納部材34を移動させる時に揺れや振動が少なくなる。また、関節を複数にすることにより、屈曲部材の曲がりを滑らかにすることができ、水道本管10内の流れが大きい場合でも曲がり易く、また、直線状態に戻り易くなる。
【0034】
図4〜図8に示すように、管内調査機器(水中調査ロボット)20は、機体(本体)21に後部の移動用のスラスタ22、前部の姿勢安定用フィン23を装備し、更に、前部に一つ、後部に左右一対の計3つの浮力調整装置24を備えている。
【0035】
そして、本発明においては、管内調査機器(液中調査機器)20の機体21の一部を透明な壁21aa,21abで形成すると共に、この透明な壁21aa,21abの内側に、観察カメラ(カメラ)25とカメラ用のLED照明灯(照明機器)26を同一のカメラ旋回装置27の方向変換部材27aに配置して、旋回駆動装置27bによって旋回される方向変換部材27aの方向変更により、観察カメラ25の視界の方向とLED照明灯26の照明方向とを同時に変更するように構成する。
【0036】
この構成により、管内調査機器20の姿勢とは別に観察カメラ25の視界を変更できると共に、LED照明灯26の数を減少でき、管内調査機器20の機体21の流体抵抗の増加及び重量の増加を抑制でき、更に、制御も単純化できる。
【0037】
この観察カメラ25は側方を向いて配置され、水道本管10の内壁や継ぎ手11を観察する。また、管内調査機器20の透明な壁21aa,21abにおいて、観察カメラ25の撮影視界とする部分21aaとLED照明灯26の照明光が透過する部分21abとの間に、透明な壁21aa,21abの内部における光の伝播を防止するための光を通さない断面T字型のリング状の隔壁21bを設ける。この構成により、透明な壁21aa,21abに反射光の縁切り部分21bを設けることができるので、この透明な壁21aa,21abの中をLED照明灯26からの光が連続反射して、観察カメラ25の視界に入ることを防止できる。また、この構成により、調査対象となる管壁が管内調査機器20の直近にあるような場合に対応して、LED照明灯26を観察カメラ25のすぐ横に配置することができるようになる。
【0038】
なお、ここでは、管内の点検装置として断面形状が略円形の管内調査機器20を示しているため、反射光縁切部21bはリング状として説明したが、別形状でもかまわない。例えば、透明な壁21aを円筒状とせず、窓状に壁面の一部として仕切って照明及び撮影を可能とし、その窓状の透明な壁21aの照明光が透過する部分21abと観察カメラ25の撮影視界とする部分21aaとの光の伝播を防止するために、例えば、平面形状で見て直線の光を通さない隔壁21bを設ける。この隔壁21bは直線状でなくても任意の曲線でもかまわない。
【0039】
この管内調査機器20は水中で浮き沈みしない中性浮力に重量を調整されてから水道本管10内に投入される。この管内調査機器20のスラスタ22の動力源であるモータ28、浮力調整装置24、カメラ旋回装置27等の制御用の信号や、動力や、観察カメラ25で得られたデータの信号は、後部に連結されている第1水中ケーブル42で送受信する。この第1水中ケーブル42は、その一端側は管内調査機器20の後部に接続されているが、他端側は、スリップリング33gに接続されると共に、巻き取り装置33のケーブルドラム33aに巻き取られる。
【0040】
この第1水中ケーブル42は、管内調査機器20に接続するため、浮き沈みしない中性浮力を持つように、比重を調整される。しかしながら、水圧が高いと水中ケーブル42が圧縮されて比重が変化するので、管内調査機器20の浮き沈みやトリム(前後傾斜)が生じる。この変化に対しては、浮力調整装置24で浮力体を本体から出入りさせることにより、その部位の浮力を増減して浮心位置を変更し、これにより、浮力と姿勢を調整することで対応する。
【0041】
制御及び監視装置50は、図1に示すように、管内調査機器20や挿入回収装置30の操縦及び制御を行う操縦装置51、TVモニター52、映像記録装置53、電源制御装置54等を制御装置ラック55に設けて構成される。この操縦装置51は有線又は無線で操作員の手元で操作できるように構成される。
【0042】
第1接続ケーブル41で、制御及び監視装置50と挿入回収装置30の巻き取り装置の信号取り出し部である第1コネクタ33hとの間の大気中部分を接続する。また、第2接続ケーブル43で、制御及び監視装置50と挿入回収装置30の第2防水コネクタ32dとを接続し、第2水中ケーブル44経由で、繰り出しローラー用モータ35aへの制御信号と動力を伝達する。
【0043】
次に、上記の水道管内点検システム1の運用方法について説明する。図1に示すように、水道本管10の点検にあたっては、マンホールの蓋13を外して、補修弁14を閉じた後、マンホール12に設置されている消火栓または空気弁(図示しない)を取り外す。そして、補修弁14の上に挿入回収装置30を取り付けて、補修弁14を開く。
【0044】
その後、挿入ロッド36を下側に押し下げて、挿入回収装置30の挿入管31から管内調査機器20を水道管本10内に送り出す。この送り出しは、挿入管31に挿入されていた格納部材34を管内調査機器20を内部に格納した状態で、水道本管10内に挿入すると、格納部材34は、水道本管10内の水流によって、水流方向に向けられて水流と略平行の状態となる。この状態では、格納部材34と挿入ロッド先端部35との間を連結するケーブルベア34bは略直角に曲がっている。なお、水流が無い時は、ケーブルベア34bを強制的にまげる。
【0045】
格納部材34が水流と略平行な状態になったら、繰り出しローラー34aを繰り出しローラー用モータ35aで回転駆動して、第1水中ケーブル42を繰り出す。この時は、ケーブルドラム33aの回転をフリーにする。水流が大きい時は、管内調査機器20は流されて、第1水中ケーブル42の繰り出し量に応じた位置に到達し、水流が小さいときはモータ28によりスラスタ22を回転させて推進力を発生し、この推進力により、第1水中ケーブル42の繰り出し量に応じた位置に到達する。
【0046】
この第1水中ケーブル42の繰り出し量により、管内調査機器20を水道本管10の任意の調査位置に移動させて、水道本管10の内壁や継ぎ手11等を、カメラ旋回装置27の制御により視野を変更しながら、LED照明灯26の照明のもとで、観察カメラ25で撮影する。地上では、操作員が、第1水中ケーブル42、第1接続ケーブル41を通して地上に設置した制御及び監視装置50のTVモニター52で水道本管10内を見ながら、管内調査機器20を操縦し映像を記録する。また、必要に応じて、浮力調整装置24を使用して上昇下降と姿勢制御を行う。
【0047】
調査が終了すると、巻き上げ用モータ33bを駆動して、ケーブルドラム33aを回転して第1水中ケーブル42を巻き取る。この巻き取り時には、必要に応じて、繰り出しローラー34aを逆回転させて巻き取りを促進する。この巻き取りにより第1水中ケーブル42の先端に接続している管内調査機器20は引っ張り込んで格納部材34内に格納する。この格納時点でケーブルドラム33aの回転を停止する。
【0048】
この後、ケーブルドラム33aを回転しながら、挿入ロッド36を上昇させて、管内調査機器20を格納した格納部材34を、挿入管31に引き込む。このとき、屈曲部材であるケーブルベア34bは曲がっていた状態から真直ぐになって、挿入管31内に引き込まれる。挿入ロッド36が上端に達した状態では、格納部材34は、完全に挿入管31内にあるので、補修弁14を閉じて、水抜き用のコック31cを開けて、挿入回収装置30内の水を抜いた後に、挿入回収装置30を取り外す。その後、消火栓または空気弁(図示しない)を元通りに設置してから、補修弁14を元通りにする。その後、マンホールの蓋13を閉めて調査を終了する。
【0049】
上記の水道管内点検システム1における液中調査機器の照明方法及び液中調査機器によれば、管内調査機器20の姿勢とは別に観察カメラ25の視界を変更できると共に、LED照明灯26の数を減少でき、管内調査機器20の機体21の流体抵抗の増加と重量の増加を抑制でき、制御も単純化できる。
【0050】
更に、管内調査機器20の透明な壁21aa,21abの観察カメラ25の撮影視界とする部分21aaと照明光が透過する部分21abとの間に、光を通さない隔壁21bを設けて、透明壁21aa,21ab内部における光の伝播を防止することにより、この透明な壁21aa,21abの中で連続反射する光による撮影の支障とを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態における液中調査機器へのケーブル繰り出し機構及び液中調査機器へのケーブル繰り出し方法を用いる水道管内点検システムの構成を示す図である。
【図2】液中調査機器へのケーブル繰り出し機構を示す挿入回収装置の構成を示す正面断面図である。
【図3】液中調査機器へのケーブル繰り出し機構を示す挿入回収装置の構成を示す側断面図である。
【図4】管内調査機器の側面図である。
【図5】管内調査機器の平断面図である。
【図6】観察カメラとLED照明灯部分の拡大平断面図である。
【図7】管内調査機器の正面図である。
【図8】管内調査機器の背面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 水道管内点検システム
10 水道本管
11 継ぎ手
14 補修弁
20 管内調査機器
21 機体
21aa 透明な壁(観察カメラの撮影視界とする部分)
21ab 透明な壁(LED照明灯の照明光が透過する部分)
21b 光を通さない隔壁(反射光の縁切り部分)
25 観察カメラ(カメラ)
26 LED照明灯(照明機器)
27 カメラ旋回装置
27a 方向変換部材
27b 旋回駆動装置
30 挿入回収装置
31 挿入管
32 巻き取り装置格納部材
50 制御及び監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液封状態の中で調査する液中調査機器の照明及び撮影方法において、液中調査機器の機体の一部又は全部に形成した透明な壁の内側に、カメラと照明機器を配置して、照明機器の照明方向をカメラの視界の方向と連動させて変更して照明を行うことを特徴とする液中調査機器の照明方法。
【請求項2】
前記液中調査機器の前記透明な壁のカメラの撮影視界とする部分と照明光が透過する部分との間に、光を通さない隔壁を設けて、前記透明な壁内部における光の伝播を防止することを特徴とする請求項1記載の液中調査機器の照明方法。
【請求項3】
前記カメラが液中調査機器の側方を撮影することを特徴とする請求項1又は2に記載の液中調査機器の照明方法。
【請求項4】
液封状態の中で調査する液中調査機器において、液中調査機器の機体の一部又は全部を透明な壁で形成すると共に、この透明な壁の内側に、カメラと照明機器を同一の方向変換部材に配置して、カメラの視界の方向と照明機器の照明方向とを同時に変更するように構成したことを特徴とする液中調査機器。
【請求項5】
前記液中調査機器の前記透明な壁において、カメラの撮影視界とする部分と照明光が透過する部分との間に前記透明な壁内部における光の伝播を防止するための光を通さない隔壁を設けたことを特徴とする請求項4記載の液中調査機器。
【請求項6】
前記カメラが液中調査機器の側方を撮影するように配置されたことを特徴とする請求項4又は5に記載の液中調査機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−244418(P2009−244418A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88721(P2008−88721)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】