説明

液体で充填され且つ膜で密閉された筐体を製造するための改良された方法

本発明は、少なくとも1種の液体で充填され且つ少なくとも1つの膜で閉鎖された少なくとも1つの閉鎖筐体が設けられたデバイスを作製する方法であって、
a)液体状態の少なくとも1つの所定の材料を支持体(100)上に堆積する段階と、
b)所定の材料(130)を少なくとも部分的に凝固させるかまたはゲル状態にする段階と、
c)膜及び支持体が、所定の材料で充填された少なくとも1つの閉鎖筐体を形成するように、凝固した材料上に膜を作製する段階と、
d)閉鎖筐体中で所定の材料が再度液化するように、所定の材料(130)を融解させる段階と、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の空洞、または液体で充填され且つ膜で少なくとも部分的に閉鎖された筐体を備えるデバイスの作製に関する。
【0002】
光学レンズもしくは光学ガラス、またはガラスもしくはレンズの母型を作製する光学分野、あるいはアクチュエータ、センサまたはスイッチを作製するMEMSもしくはNEMS(マイクロまたはナノシステム、エレクトロメカニカルシステム用MEMS/NEMS)などの分野、生物医学分野におけるマイクロ流体デバイスにも適用することができる。
【0003】
本発明は特に、そのような筐体を閉鎖する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
特定の用途、特に光学用途では、数μmから数百μm程度の臨界寸法を有する筐体または空洞において、いわゆる「機能性液体」である液体を密閉封止することが求められる。
【0005】
これらの微細空洞は様々な方法によって得られ、特に基板のマイクロマシニング、ならびに1つ以上の層を堆積して、エッチング及びフォトリソグラフィによって構造化する方法がある。
【0006】
「機能性液体」とは、例えば光学特性など、特定の性質のために選択された1つ以上の物質から生成された液体を意味する。
【0007】
特許文献1では、基板上に堆積された液体を弾性膜で被覆することによって、液体で充填され且つ閉鎖された可撓性筐体を作製することが提案されている。
【0008】
この方法では、一般的にパリレン(登録商標)と称される弾性材料ポリパラキシリレンの低圧堆積によって液体上に弾性膜が直接形成される。この材料は、室温で重合して堆積される表面に従って均一な層を形成する。
【0009】
このような閉鎖方法が実施される圧力が原因で、この方法は、膜を形成する間に液体が蒸発する傾向にあるという大きな欠点を有する。
【0010】
さらに、堆積された材料の液体への混合または化学反応が生じ易いという別の著しい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1,672394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前述の欠点を有さず、液体が充填された空洞の閉鎖を効果的且つ工業的な方法で行うことを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも1種の液体で充填され且つ少なくとも1つの膜で閉鎖された少なくとも1つの閉鎖筐体が設けられたデバイスを作製する方法であって、
a)液体状態の少なくとも1つの所定の材料を支持体上に堆積する段階と、
b)前記所定の材料を少なくとも部分的に凝固させるかまたはゲル状態にする段階と、
c)膜及び支持体が、前記所定の材料で充填された少なくとも1つの閉鎖筐体を形成するように、前記凝固した材料上に膜を作製する段階と、
d)閉鎖筐体中で前記所定の材料が再度液化するように、前記所定の材料を融解させる段階と、
を含む方法に関する。
【0014】
膜は、弾性材料を堆積することによって形成され得る。
【0015】
実施形態によると、弾性材料は、ポリパラキシリレン及び/またはその誘導体をベースとするものであってよく、この材料の群はパリレンとして知られている。
【0016】
膜を形成するために使用される材料は、低圧で堆積されなければならないかまたは堆積され得る。「低圧」で堆積するとは、堆積が1から500mTorrの間の圧力または10から50mTorrの間に含まれる圧力で行われることを意味する。
【0017】
凝固した液体材料上またはゲル上に膜を堆積することによって、液体が蒸発するという問題を防ぐことができる。
【0018】
膜の堆積は、−196℃から80℃の間、または−30℃から40℃の間に含まれる温度で実施され得る。
【0019】
その温度以下で空洞中に存在する材料がゲル化可能であるか、または部分的にもしくは完全に凝固可能となる温度、及びその温度以上で作製されたデバイスが劣化する恐れがある温度に応じて堆積温度を調節することができる。
【0020】
所定の材料が固体状態を維持する温度でパリレンを堆積することによって、従来の液体上で行われていた堆積と比較して高い堆積速度を得ることが可能となる。
【0021】
所定の材料は、例えばペンチルチアノビフェニル(5CB)などの液晶、例えばイミダゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム塩などのイオン性液体、例えばExxon Chemical社製造のIsopar(登録商標)などの鉱物油、印刷インク(インクジェットタイプまたはいわゆる「オフセット」タイプ)に使用される油、シリコーン油、例えばオルガノゲル系などの液体及びゲル化剤ベースの熱可逆性ゲルから選択され得る。
【0022】
所定の材料を融解または液体状態へと変換する段階は、室温または−20℃から80℃の間に含まれる温度で実施され得る。
【0023】
この段階は、空洞中に存在する材料の融解温度より高い数℃から10℃の温度で実施してもよい。
【0024】
所定の材料を再度融解または液体状態へと変換する温度は、作製されたデバイス全体を分解しない温度に選択される。
【0025】
実施形態によると、支持体は複数の分離された空洞を含み得る。
【0026】
この場合、段階a)は、少なくとも1つの空洞を前記所定の材料で充填する段階を含むことができ、段階c)において形成された膜と空洞とが前記所定の材料で充填された複数の分離された閉鎖筐体を形成する。
【0027】
別の可能性によると、段階a)は、少なくとも1つの空洞を前記所定の材料で充填し、少なくとも1つの空洞を別の所定の液体材料で充填する段階を含み、段階b)が前記別の所定の材料を少なくとも部分的に凝固する段階をさらに含むことがで、段階c)において形成された膜と空洞とが異なる液体で充填された複数の閉鎖筐体を形成する。
【0028】
本発明のその他の特徴及び利点は、例示の目的で与えられ、限定することのない添付の図面を参照して以下の発明の詳細な説明を読むことでより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】本発明による例示的方法を図示する。
【図1B】本発明による例示的方法を図示する。
【図1C】本発明による例示的方法を図示する。
【図1D】本発明による例示的方法を図示する。
【図1E】本発明による例示的方法を図示する。
【図1F】本発明による例示的方法を図示する。
【図1G】本発明による例示的方法を図示する。
【図1H】本発明による例示的方法を図示する。
【図2A】別の実施形態を図示する。
【図2B】別の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1つの図面から別の図面へと容易に移動できるように、異なる図面の同一、類似または等価の部分には同一の参照符号を付す。
【0031】
図面をより分かりやすくするために、図面に図示された異なる部分が同一の縮尺で示されているとは限らない。
【0032】
ここで、少なくとも1つの液体で充填され、少なくとも1つの膜で閉鎖された1つ以上の筐体を含むデバイスを作製するための本発明による例示的方法について、図1A〜1Hとあわせて説明する。
【0033】
初めに、1つ以上の空洞120または容器120または筐体120を平面支持体110上に設ける。空洞120の各々は、1つ以上の薄層に形成された壁部によって横方向に画定され、底部は支持体の層によって画定される。空洞120の壁部110は、基板の面において空洞に、例えば円形、楕円、正方形、長方形、多角形または星形などの形状を与えるように分布され得る。空洞120を分離する壁部110は、密封を確実なものとする。
【0034】
支持体100は透明であってよく、例えばガラス平板、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック材料層の形態であってよい。
【0035】
1つの可能性によると(図1A)、支持体100は、その上に1つ以上の薄層104が形成された、例えばガラスのような基板102で形成することができる。薄層104は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような可撓性材料の少なくとも1つの層である。層104を基板102と接着するために、例えばアクリレートのような中間接着層を任意で設けてもよい。
【0036】
空洞120は、支持体100上に層106を堆積し、次いで壁部110の位置を定めるように該層106をエッチングすることによって作製することができる。空洞120が画定される層106は、例えば感光性樹脂とすることができる。空洞120の作製には、1つのフォトリソグラフィ段階を少なくとも含み得る。
【0037】
別の可能性によると、空洞120は、支持体上に層106を形成し、次いで層106上にプレスされる突出パターンを備えた型でスタンピングすることによって空洞120の位置を決める方法で形成することができる。
【0038】
別の方法では、基板102上にポリマー材料の層106を堆積し、次いでマスクを介して例えばO、SF及び/またはCHFタイプのフッ化ガスの混合ガスによる高濃度プラズマエッチングまたはRIEによって該層106を局部的にエッチングすることができる。
【0039】
別の可能性によると、層106は、例えばエッチングによって空洞120が事前に作成されたポリマー材料層を基板102上に積層することによって形成することもできる。
【0040】
壁部110の寸法及び位置は、目的とするデバイスの用途によって変更される。光学用途、特にレンズの作製の場合、壁部110は、支持体100を横切る光線の経路上に、いかなる摂動ももたらさないかまたは無視できる程度もしくは目に見えない程度の摂動しかもたらさないことを意図された形状に形成され得る。壁部110は、透明樹脂を基に形成することができ、そのパターンはフォトリソグラフィによって、例えば文献「ORMOCER(登録商標) for Optical Interconnection Technology」, R.Buestrich, F.Kahlenberg, M.Popall et al., Journal of Sol−Gel Science and Technology 20, 181−186, 2001に記載されたORMOCER系樹脂で形成することができる。
【0041】
空洞120を分離する壁部110は、基板または支持体の主面に平行な方向に定義された厚さeを有し、例えば0.1μmから5μmの間、または1から3μmの間の厚さを有し得る。
主面は、図1Aで定義された直交座標系
【0042】
【数1】

の面
【0043】
【数2】

に平行な面である。
【0044】
壁部110は、高さHを有し、例えば5から50μmの間、または10から30μmの間の高さを有し得る。
高さHは、図1Aにおいて定義された直交座標系
【0045】
【数3】

のベクトル
【0046】
【数4】

に平行な方向である。
【0047】
空洞120は、直径または辺または長さDを有し、例えば5μmから500μmの間、または50μmから300μmの間の長さを有し得る。
直径または辺または長さDは、直交座標系
【0048】
【数5】

の面
【0049】
【数6】

に平行な方向である。
【0050】
次に図1Bを参照すると、所定の液体材料または複数の所定の液体で空洞120を充填する段階が行われる。光学デバイスの用途の場合、所定の材料は「機能性液体」と呼ばれる液体、すなわち特定の性質、例えば屈折率、吸光度、偏光性、電気または光刺激に対する反応などによって選択される液体とすることができる。
【0051】
所定の液体材料は、例えば−20℃程度の温度で凝固可能な酢酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとすることができる。
【0052】
別の実施例によると、所定の材料は、−40℃程度の温度で凝固可能なPlough社製造のNujol(登録商標)タイプのパラフィンオイルとすることができる。
【0053】
さらに別の実施例によると、所定の材料は、20℃から40℃の間に含まれる温度でゲル化またはゲルの形態に変形可能である、1−オクタノール中に2,3−ビス−n−デシルオキシアントラセン(DDOA)を混合したものとすることができる。
【0054】
ゲルとは、コロイド物質の凝固から生じる物体または連続液体層を取り囲む連続固体格子を意味する。
【0055】
充填段階は、空洞120の内部に向けられ、液体材料130を数ピコリットル程度であり得る量の液滴132またはジェットとして発射する装置Eによって行うことができる。液体は、数ピコリットルから数百ピコリットル程度の少量の局在化に適合する技術で供給することができる。空洞を充填するために、使用される装置Eは、インクジェットで分配する技術と同様の液体を分配する技術を適用することができる。液体材料130は、空洞を部分的にまたは完全に充填し得る。空洞の完全な充填は、壁部110の頂部112に達するまで、または壁部110の頂部112をわずかに超えるように行うことができる。
【0056】
実施形態によると、1つ以上の空洞120は、目的の用途に応じて調節された割合の複数の液体の混合物で充填され得る。例えば、光学用途では、異なる染料を含む2つ以上の液体を提供することによって、充填する液体の各々の量を変化させて空洞内の光学濃度または吸光度を調節することができる。
【0057】
デバイスの例示的応用によると、少なくとも1つの活性成分を供給するように提供され得る。この場合、空洞の充填は、活性分子及び溶媒を含む液体で行われ得る。活性分子の濃度または量は、空洞120に応じて変化し得る。その結果、デバイスの空洞間で活性成分濃度に変化がもたらされ得る。活性成分は、薬剤の組成に入り、薬力学または治療特性に関与する物質とすることができる。
【0058】
別の実施形態(図2A)によると、複数の空洞120は、空洞毎に異なる液体130、134、136で充填され得る。これは、空洞に互いに異なる光学特性を与える場合に、デバイスの光学用途にも適用することができる。
【0059】
別の実施形態(図2B)によると、ある空洞から別の空洞まで異なる量の液体が適用され得る。
【0060】
液体材料130は、有機溶媒を含み得る。1実施例によると、使用される溶媒は、グリコールエーテルDowanol TPM(トリプロピレングリコールメチルエーテル)とすることができる。
【0061】
次に、空洞120中に存在する液体材料130の凝固(図1C)が実施される。
【0062】
凝固は、空洞中に存在する液体または液体材料130の少なくとも上部が固体状態へと変換されるような部分的、または完全なものとすることができる。
【0063】
空洞120中に存在する液体または液体材料130を凝固させるために、液体の冷却が行われる。この場合、空洞120中に存在する液体材料130の飽和圧力が得られる温度、または複数の液体が存在する場合には空洞120中に存在する液体の最小の飽和圧力値が得られる温度より少なくとも低いかまたは同等の温度まで液体を冷却する。
【0064】
例えば空洞を充填する液体材料130が酢酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムであるような場合、凝固を実施するために液体は−20℃未満の温度まで冷却され得る。
【0065】
例えば凝固材料130が潤滑タイプの鉱物油であるような場合、凝固を実施するために液体は−40℃未満の温度まで冷却され得る。
【0066】
別の方法によると、凝固段階は所定の充填材料をゲルへと変換する段階と置き換えられ得る。この場合、空洞を充填する所定の材料は、ゲルへと変換可能な材料またはゲル化成分を含む混合物を形成可能な材料である。例示的混合物は、1−オクタノール中で2,3−ビス−n−デシルオキシアントラセン(DDOA)と形成され得る。例えば、生物有機体における活性成分の塩析では、使用された混合物に応じて、20から40℃の間でゲルの出現が起こり得る。その結果、後続の空洞を閉鎖するための膜の堆積は、室温でもたらされ得る。この場合、空洞120を充填するゲルは、該温度40℃を超える温度で液体状態へと戻り得る。
【0067】
1つの可能性によると、冷却段階は、続いて閉鎖層が膜状に形成される堆積チャンバ内で実施することができ、該膜は弾性または可撓性とすることができる。
【0068】
この場合、デバイスの冷却システムは堆積チャンバ内に提供される。このようなシステムは、例えば白金及びペルチェ効果モジュールまたは液体窒素循環システムを備えたサンプルホルダを含み得る。
【0069】
ヘリウムまたは伝熱ガスで支持体100の背面を冷却する技術を適用することもできる。
【0070】
冷却は、伝熱流体が循環される筐体によってもたらされることができ、堆積チャンバは液体130方向への中性ガスで加圧される。
【0071】
凝縮現象を防ぐために、堆積チャンバ内に真空ポンプシステムを設けることもできる。
【0072】
支持体100を堆積チャンバ内に室温で配置し、まず初めに液体方向に乾燥中性ガスを大気圧に近い圧力で導入する。凝固を実施するために、次いで所望の凝固を得るための冷却を実施する。凝固は部分的、表面部、または完全なものとすることができる。
【0073】
このため、堆積チャンバは−20℃または−30℃程度の温度まで冷却され得る。このような範囲内の温度により、例えば酢酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、メチル硫酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、またはチオシアン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムのような標準イオン性液体は凝固される。これらの温度の値は目安として与えられるものであり、チャンバまたは基板ホルダの温度は空洞中に存在する液体が部分的にまたは完全に凝固するように適応させる。
【0074】
凝固段階の最後には、空洞中に配置された所定の材料は固体140の形態かまたは表面が固体である。
【0075】
次に、壁部110の頂部112上及び凝固されたかまたはゲルへと変換された所定の材料140の表面上への閉鎖層150の堆積(図1D及び1E)が実施される。閉鎖層150は、弾性材料をベースとし得る可撓性膜として提供され、液体で充填された閉鎖空洞または閉鎖筐体を形成する。該閉鎖層または膜により、空洞の密封がもたらされ得る。膜は特に、湿気、酸及び溶媒へのバリアであり、任意で電気絶縁層を形成するように設けられる。
【0076】
閉鎖層150の材料152は、パリレンとしても知られているポリパラキシリレンとすることができる。このような材料は、室温で重合し、堆積される表面の形状と一致するように適当に形成され得る。
【0077】
堆積される材料の厚さは均一であり、用途に応じて数ナノメートルから数マイクロメートルの間、例えば約100ナノメートルから数十マイクロメートル、例えば0.2μmから5μmの間に含まれる厚さを有し得る。
【0078】
閉鎖することを目的としたパリレンの堆積には、連続、柔軟、無色、且つ透明で薄く、優れた保護特性を有する膜が得られる可能性を与えるという利点があり、パリレンは不浸透性であり、浸食環境、溶媒及び気体に対して耐性を有する。
【0079】
堆積は、例えばCVD(化学気相成長)堆積法などのように気相で実施することができる。
【0080】
閉鎖層150の材料152の堆積は、1から500mbarの間に含まれる圧力または一次真空(primary vacuum)の下で実施され得る。そのような圧力では、充填液体は通常蒸発する傾向にある。本発明の場合、空洞120を充填する液体130は少なくとも部分的に凝固しているかまたはゲルへと変換されているため、蒸発現象は発生しない。
【0081】
パリレン層の形成は標準の条件下で達成することができ、ジパラキシリレンの熱分解が事前に680℃で行われ、次いで所定の材料が固体状態を維持する温度でサンプルの表面においてパラキシリレンモノマーの重合が行われる。所定の凝固材料が、例えば酢酸ブチル−3−メチルイミダゾリウム、メチル硫酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、またはチオシアン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである場合、所定の凝固材料が固体状態を維持し得る場合に堆積は−30℃から−20℃の間に含まれる温度で実施され得る。
【0082】
パリレン堆積がなされるべき部分の温度が得られるとすぐに堆積チャンバ内に真空を供給してよい。
【0083】
次に、パリレン堆積が行われることによって膜が形成されると、凝固材料140を液体状態130へと戻すために堆積チャンバの温度を再度上昇させる。デバイス周囲の温度は例えば室温まで戻され得る。材料130が融解すると、液体で充填された閉鎖空洞120が形成される。その結果、弾性材料膜及び支持体100の壁部110によってそれぞれ部分的に閉鎖された複数の液体筐体を含むデバイスが作製される。
【0084】
閉鎖層150の上部に1つ以上の追加の層160を形成してもよい(図1H)。1つ以上の追加の層160が作製される。このような追加の層を作製するために、例えば積層によって堆積または転写が実施され得る。追加の層は、弾性材料の膜とすることができ、例えば層104と同一の材料であってよく、例えばPET系材料であってよい。
【0085】
次いで、1つ以上の機能層(参照符号170のブロックで図示)、例えば反射防止特性、または固いワニス、防汚性または耐磨耗性または耐衝撃性を有する層で層160を被覆することができる。
【0086】
基板102に関しては、維持するかまたは別の方法では可撓性材料層104から分離され得る。
【0087】
特定の応用では、例えば個別の光学レンズを作製し、閉鎖された空洞120を互いに分離することができる。その結果、液体で充填された閉鎖筐体は、分離されるかまたは区別される。
【0088】
このような分離は、例えばレーザーで行うことができ、超音波または少なくとも1つの切断器具によって行うこともできる。
【0089】
前述の方法は、パリレン以外の材料の堆積にも適用することができ、例えばポリ(1,3,5−トリビニルトリメチルシクロトリシロキサン)(ポリ(V3D3))などの透明材料があり、iCVD(initiated CVD)によって堆積することができる。これは、文献「Biomacromolecules」,2007,8,2564−2570に開示されている。堆積圧力が350から450mTorrに含まれる場合、堆積温度は35℃程度とすることができる。このような圧力及び温度では、空洞120を充填するための材料として、広範囲の液体を使用することができる。
【0090】
ポリ(1,3,5−トリビニルトリメチルシクロトリシロキサン)(ポリ(V3D3))は、当初液体である所定の材料130が固体状態を維持し得る圧力及び温度で堆積され、大気圧及び外気温で液体状態へと戻ることが可能である。
【0091】
本発明による方法は、光学レンズ、またはレンズの母型の作製に使用することができる。この場合、前記閉鎖層は、先に説明したように事前に凝固されたかまたはゲルへと変換され、堆積後に液体状態へと戻り前記筐体の前記液体を形成する材料の上に堆積することによって形成されたパリレン層とすることができる。
【符号の説明】
【0092】
100 支持体
102 基板
104 層
106 層
110 壁部
112 頂部
120 空洞
130、134、136 液体材料
140 凝固した液体材料
150 閉鎖層
152 閉鎖層の材料
160 追加の層
170 機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の液体で充填され且つ少なくとも1つの膜で閉鎖された少なくとも1つの閉鎖筐体が設けられたデバイスを作製する方法であって、
a)液体状態の少なくとも1つの所定の材料を支持体(100)上に堆積する段階と、
b)前記所定の材料(130)を少なくとも部分的に凝固させる段階と、
c)前記膜及び前記支持体が、前記所定の材料で充填された少なくとも1つの閉鎖筐体を形成するように、低圧堆積によって前記凝固した材料上に膜を作製する段階と、
d)前記閉鎖筐体中で前記所定の材料が再度液化するように、前記所定の材料(130)を融解させる段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記膜を形成する前記材料が弾性材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜を形成する前記材料がポリパラキシリレン及び/またはその少なくとも1つの誘導体をベースとする材料である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1から500mTorrの間の圧力または工業的真空で前記堆積を実施する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
−196℃から80℃の間に含まれる温度で前記堆積を実施する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持体が複数の分離された空洞を含み、段階a)が少なくとも1つの空洞を前記所定の材料(130)で充填する段階を含み、段階c)において形成された前記膜と前記空洞とが前記所定の材料で充填された複数の分離された閉鎖筐体を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持体が複数の分離された空洞を含み、段階a)が少なくとも1つの空洞を前記所定の材料で充填し、少なくとも1つの空洞を別の所定の液体材料で充填する段階を含み、段階b)が前記所定の材料(130、230)を少なくとも部分的に凝固する段階をさらに含み、段階c)において形成された前記膜と前記空洞とが異なる液体で充填された複数の閉鎖筐体を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の材料が、液晶、イオン性液体、鉱物油、印刷インク油、シリコーン油、液体及びゲル化剤ベースの熱可逆性ゲルの中から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図1G】
image rotate

【図1H】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate


【公表番号】特表2011−525997(P2011−525997A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515366(P2011−515366)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057870
【国際公開番号】WO2010/003821
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【出願人】(507229319)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック) (37)
【Fターム(参考)】