液体の塗布及び乾燥方法
【課題】装置を小型化し、積層塗布が可能な生産効率の高い液体の塗布及び乾燥方法を提供する。
【解決手段】シート状基材を循環移動体上に配置する配置工程(S2)と、該循環移動体を移動させ該基材に液体を塗布する塗布工程(S5,S7)と、該循環移動体を複数回回転させることにより該液体を乾燥させる回転乾燥工程(S6)とを有する液体の塗布及び乾燥方法。
【解決手段】シート状基材を循環移動体上に配置する配置工程(S2)と、該循環移動体を移動させ該基材に液体を塗布する塗布工程(S5,S7)と、該循環移動体を複数回回転させることにより該液体を乾燥させる回転乾燥工程(S6)とを有する液体の塗布及び乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の塗布及び乾燥方法に関し、さらに詳細には、循環移動体に配置された枚葉シートに液体を塗布し乾燥させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブを循環移動体に吸着させ、移動するウェブに液体を塗布する方法がある(例えば特許文献1参照。)。この方法によれば多孔質や通気性のウェブに液体を塗布し循環移動体をバキュームしてウェブの多孔部に液体を充填しやすくしている。昨今、この方法を用いて細孔の基材に電解質溶液を充填し、乾燥させて高機能な燃料電池電解質膜を製造する方法が試みられている。
【0003】
また昨今、燃料電池の開発が進みウェブ状の電解質膜に液状の電極インクを塗布し乾燥させてMEA(電解質膜−電極アッセンブリ)を自動的に製造する方法が所望されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。電解質膜に直接電極インクを塗布し乾燥させてMEAを製造する方法は、電解質膜と電極層との界面抵抗が極めて低いことから他の工法と比較して性能向上につながり理想的な電極形成方法として注目されている。
【0004】
ところが電解質膜は湿気でも変形し、電極インクの溶媒ですぐ膨潤してしまう課題をかかえている。この課題を解決する方法として加熱吸着プレートで枚葉タイプの電解質膜を吸着させて電極インクを塗布しMEAを作成する方法が提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。この方法は、人手によって電解質膜を吸着プレートへ吸着させたり取り外したりするいわゆるバッチ方式の方法である。また、この方法は、自動化製造には向かない方式であった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−76220号公報
【特許文献2】特開2001−70863号公報
【特許文献3】特開2004−351413号公報
【特許文献4】特開2004−63780号公報
【特許文献5】特表平5−507583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載された技術は、巻取りフィルム(ウェブ)タイプの電解質膜を循環移動体に吸着させ液状電極インクを塗布し吸着している間に乾燥させる方式なので、アノード及びカソードを同一ラインで塗布乾燥できる特徴を有している。生産性が高い反面、性能向上の目的で複数回塗り重ねるため装置が大型になり設備金額が高くなる問題をかかえていた。60kW〜90kWの燃料電池自動車用MEAは1セル当り面積も広く、スタックあたり数百セットのセルが必要になるので大型で生産性の高い設備が必要になる。コジェネレーションも一台当り1kW〜数kWで同様に類似した設備が必要になる。
ところが、DMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)用途のモバイル分野では一台当り1W〜20数W程度でMEAの一枚当りの電極も数センチメートル×数センチメートルと極めて小面積である。
ところが、どのマーケットでも生産スピードは遅くても、品質面から自動化は求められていた。
また、スロットノズルによる塗布であって電極インクの粘度が低い場合は単位時間当りの流量が多くなるのでウェブスピードを速くして塗布する必要があった。複数回の塗布が必要で回数が多くなるほど循環移動体も大型にする必要があった。
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、小型の循環移動体を使用して枚葉タイプであっても比較的長尺のシートにも液体を積層して塗布し乾燥することができる安価で省スペースの装置を提案することにある。
【0007】
本発明は、枚葉シートに液体を塗布し乾燥する方法を提供することを目的とする。
本発明は、塗布及び乾燥装置を小型化し、生産効率の高い液体の塗布及び乾燥方法を提供することを目的とする。前記特許文献5に於いて例えば幅300mm×長さ900mmのシート状の電解質膜を加熱吸着プレートに吸着させて電極インクを塗布する場合、加熱吸着プレートは温度分布からして幅450mm×長さ1050mmが必要であった。また、スプレイノズルのトラバース長さは900mmの長さをカバーする必要があるので1m/秒のトラバーススピードを安定して維持するには1200mmが必要であった。また、トラバーススピードを上げて生産性を上げようとしても1.5m/秒が装置の剛性面と耐久性の面から限界であったし、スピードを上げれば上げるほどスプレイ流が煽られ粒子が飛散し清掃が大変であった。また、防爆構造上テーブルも直交方向にピッチ送りのトラバースが必要でテーブルの重さもあってテーブル型装置は大型化していた。一方、スロットノズルを使用した場合、テーブルを加熱すると大型金属プレートの平面度をミクロンオーダーで維持することは不可能であった。ましてや吸着構造を持たせた場合は更に難しかった。そのため10μm前後の塗膜を安定的に得ることはできなかった。
本発明は、一つのノズルで、効率的に積層塗布することができる液体の塗布及び乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する為に本発明では次のような液体の塗布及び乾燥方法とした。例えば、前記テーブル型装置を循環移動体に置き換えると直径300mm、面長320mmのロールでよく、ピッチ送りのトラバース長さも320mmでよい。スプレイノズルのトラバーススピードは循環移動体の周速に対比させることができる。100RPMで1.57m/秒に相当し、200RPMにするとトラバース機構では不可能である3m/秒を越すことができる。回転機構なので装置の振動も無く小型にすることができる。更に、図1の機構を用いることにより飛散粒子は局所捕集できるのでスプレイ方法を採用しても装置はより小型にできる。また、スプレイであっても通常の低速トラバーススピード(0.3m/秒)の10倍以上の生産スピードにすることができる。
一方、スロットノズルを使用する場合であってもロールは加温しても真円度をプラスマイナス1μm以内にすることは業界では難しい技術ではない。また、液体の使用粘度範囲も広いが以下を考慮する必要がある。5000mPa・s〜20000mPa・sの粘度の場合は1〜2m/min.のスピードで20μmのウェット膜を塗布することが可能であるが、粘度が50〜200mP・sの低粘度の場合はスピードを15m/min.以上にする必要がある。燃料電池の電極インクは固形分が7−15wt%で乾燥塗膜が10μm程度であるのでウェット10μmなら10回、20μmなら乾燥させながら5回積層させると良いことになる。
本発明では次のような液体の塗布及び乾燥方法とした。
シート状基材(P)を循環移動体(2)上に配置する配置工程(S2)と、該循環移動体を回転させながら該基材に液体を塗布する塗布工程(S5,S7)と、該循環移動体を複数回回転させることにより該液体を乾燥させる回転乾燥工程(S6,S21,S22,S23,S42,S44)とを有する液体の塗布及び乾燥方法。
また、本発明では次のような液体の塗布及び乾燥方法としてもよい。
シート状基材(P)を循環移動体(2)に配置する配置工程(S2)と、該循環移動体を移動させて該基材に少なくとも一つの塗布装置(3)により液体を塗布する塗布工程(S5,S7)と、該液体の乾燥を促進させる乾燥工程(S3,S9)と、前記塗布工程と前記乾燥工程を繰り返すことにより複数回の積層塗布を行う積層塗布工程(S6,S23,S44)とを有する液体の塗布及び乾燥方法。
該基材に塗布された液体を冷,温風/熱風/輻射熱/循環移動体の加熱手段による伝熱の少なくとも一つにより乾燥させる乾燥工程(S3,S9)を有するとよい。
前記配置工程は、該循環移動体に該基材を真空吸着させる吸着工程を有するとよい。
前記塗布工程の前に該基材を加熱する基材加熱工程を有するとよい。
前記配置工程は、該循環移動体と該基材との間に通気性部材を配置する工程を有するとよい。
前記配置工程は、該基材上にマスキング部材を配置する工程を有するとよい。
該基材は、電解質膜であるとよい。
該液体は、電極インクであるとよい。
前記塗布工程は、スロットノズル(33)から液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程を有するとよい。
前記塗布工程は、スプレイノズル(3)から液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程を有するとよい。
前記多層塗布工程は、スロットノズルから液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程と、スプレイノズルから液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程とを有するとよい。
前記スプレイ塗布工程は、該循環移動体の一周内の塗布終了ごとにスプレイノズルを横断方向に移動させる行程(S31,S32,S45)を有するとよい。
前記スプレイ塗布工程は、スプレイ塗布とスプレイ塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程(S22)を有するとよい。
前記吐出塗布工程は、一つのスロットノズルを間欠的に動作させることにより、複数の塗布領域に液体を塗布する工程を有するとよい。
前記吐出塗布工程は、吐出塗布と吐出塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程を有するとよい。
上記の液体の塗布及び乾燥方法を使用して電解質膜に電極インクを塗布することにより膜−電極アッセンブリを形成してもよい。
上記のように形成された膜−電極アッセンブリを使用した高分子電解質形燃料電池又はダイレクトメタノール型燃料電池を製造してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布及び乾燥装置を小型化し、高い生産効率でもって、枚葉シートに液体を塗布し乾燥することができる。
本発明のよれば、液体の乾燥を促進させることができる。
本発明によれば、一つのノズルで、液体を効率的に基材上に積層塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0011】
(塗布及び乾燥装置)
図1は、実施例1の液体の塗布及び乾燥装置1の概略構成図である。
塗布及び乾燥装置1は、矢印Aで示す方向に回転可能な循環移動体2と、液体を塗布するための塗布装置としてのスプレイノズル3と、塗布面の近くに空気の流れを形成するための送風装置4とからなる。
【0012】
循環移動体2の上には、裁断された枚葉紙タイプの基材Pが配置されている。基材Pは、例えば、シート状薄膜、通気性基材、離型フィルム、燃料電池ガス拡散用基材、燃料電池用電解質膜、色素増感太陽電池の電極形成用ベースフィルムなどであってもよい。基材Pは、適宜の手段により循環移動体2の周囲表面上に取り付けられる。基材Pの循環移動体への固定はテープによる貼り付け固定などいかなる手段であってもよいが、本実施例においては、基材Pを循環移動体2の周囲表面上に真空吸着する手段を使用した。すなわち、循環移動体2は、通気性を有する円筒状ドラムからなり、真空装置(不図示)によってドラム内部を真空にする。これによって、基材Pを循環移動体2の表面に吸着固定する。
【0013】
基材Pを吸着した循環移動体2が回転すると、スプレイノズル3は、液体を基材Pへ塗布する。スプレイノズル3からスプレイされる液体は、例えば、塗料、接着剤、燃料電池電極インク、電解質溶液などであってもよい。
基材Pに付着しなかった過剰の液体噴霧は、矢印Fで示す空気の流れに乗って排気口5を通して排気処理装置へ送られる。
【0014】
基材Pに塗布された液体は、矢印Aで示す方向へ移動して、送風装置4へ送られる。送風装置4からの空気の流れは、液体から溶媒を蒸発させ液体の乾燥を促進する。溶媒は、矢印Gで示す空気の流れに乗って排気口6を通して排気処理装置へ送られる。送風装置4は、温風あるいは熱風を送風してもよい。
【0015】
なお、循環移動体2に、加熱用の熱媒体を通すための油穴(不図示)を設けて、循環移動体2を加熱するようにしてもよい。循環移動体2の表面からの熱伝達により基材Pを加熱して液体の乾燥を促進する。
あるいは、光照射、輻射熱などを利用して液体の乾燥を促進させてもよい。
【0016】
過剰液体噴霧の排気口5と熱風用の排気口6とは、隔壁7及び8により隔てられている。隔壁7と隔壁8の間の空間9は、大気に通じている。このように、排気口5と6とを隔離している理由は、過剰液体噴霧が熱風により発火することを防止するためである。
【0017】
(マスキングシート)
基材Pの上にマスキングシートを配置してもよい。マスキングシートは、液体を塗布したい領域の形状に合わせた開口を有する。マスキングシートを基材Pの上に配置して、液体をスプレイすれば、所望形状の塗布パターンを正確に基材Pに塗布することができる。
【0018】
(下敷きシート)
基材Pと循環移動体2との間に通気性基材としての下敷きシートを配置してもよい。下敷きシートを使用することにより、飛散した液体による循環移動体2の汚れを防止すると伴に、飛散した液体を下敷きシートに付着させて回収することができる。
【0019】
(塗布及び乾燥方法)
図2は、実施例1による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。
液体の塗布及び乾燥工程を開始すると(ステップS1)、循環移動体2に基材Pを配置する(ステップS2)。基材Pは、真空吸着により循環移動体2の表面に吸着される。送風装置4を駆動して、送風を開始する(ステップS3)。循環移動体2を回転させ(ステップS4)、スプレイノズル3から液体を基材Pへ塗布する(ステップS5)。
【0020】
液体の塗布を開始してから循環移動体2が1回転すると、一つの塗膜層が基材Pの上に形成される。循環移動体2が2回転すると、さらにその上に塗膜層が形成されて、二層の塗膜層が形成される。このようにして、循環移動体2を10回転すれば、十層の積層塗膜が形成され、20回転すれば、二十層の積層塗膜が形成される。ステップS6で、循環移動体2が所定の回転数の回転を終了したかどうかを判断する。循環移動体2が所定の回転数を終了したならば、液体の塗布を終了する(ステップS7)。これによって、基材Pの上に所望数の層の塗膜が形成される。
【0021】
循環移動体2の回転を停止して(ステップS8)、送風装置4を停止する(ステップS9)。循環移動体2から基材Pを取り外して(ステップS10)、液体の塗布及び乾燥工程を終了する(ステップS11)。
【0022】
本実施例によれば、一つのスプレイノズルで、複数層の塗膜層を形成することができる。
【実施例2】
【0023】
(空回転)
実施例2では、液体の乾燥を促進するために、液体の塗布工程の間に循環移動体の空回転工程を設けた。例えば、スプレイノズル3から液体を塗布しながら循環移動体2を一回転して一層目の液膜層を形成した後、スプレイノズル3を停止して循環移動体2を十回転だけ回転させる(本明細書において、以下、この回転を「空回転」という。)。空回転をすることにより、液膜の乾燥を促進させることができる。その後、再び、スプレイノズル3から液体を塗布して二層目の液膜層を形成する。
【0024】
図3は、実施例2による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。図2に示した実施例1と同様の工程には、同様の参照符号を付して説明を省略する。以下、異なる点のみを説明する。
【0025】
ステップS5で液体の塗布を開始した後、循環移動体2が第一所定回数の回転を終了したかどうかを判断する(ステップS21)。第一所定回数は、連続して塗布する液膜の層の数である。すなわち、一層の液膜を塗布した後に空回転をする場合には第一所定回数は1であり、二層の液膜を連続して塗布した後に空回転する場合には第一所定回数は2である。例えば、液膜を一層塗布する毎に空回転する場合には循環移動体2が一回転すると液体の塗布を終了する(ステップS7)。
【0026】
ステップS22では、循環移動体2が第二所定回数の回転を終了したかどうかを判断する。第二所定回数は、循環移動体2の空回転の回数である。すなわち、五回だけ空回転をする場合には第二所定回数は5であり、十回だけ空回転をする場合には第二所定回数は10である。循環移動体2の空回転の回数が第二所定回数に達したならば、ステップS23へ進む。
【0027】
ステップS23では、循環移動体2が第三所定回数の回転を終了したかどうかを判断する。第三所定回数は、所望の積層数の塗膜が形成されたかどうかを判断するためのものである。本実施例においては、所望の積層数の塗膜を形成するために必要なステップS5からS23の繰り返し数を第一所定回数と第二所定回数との和に掛けた数である。例えば、一層塗布するごとに五回空回りする場合において、5層の積層塗布をするためには、5×(1+5)=30であるから第三所定回数は30となる。なお、ステップS5からS23の繰り返し数を入力して所望の積層数を得るように動作を変更してもよいことはもちろんである。
【0028】
循環移動体2が第三所定回数の回転を終了していないときは(ステップS23)、ステップS5へ戻って、ステップS5からS23の工程を繰り返す。第三所定回数の回転を終了したときは、ステップS8へ進み、以降は実施例1と同様にして液体の塗布及び乾燥工程を終了する。
【0029】
実施例2によれば、循環移動体の空回転をすることにより、液体の乾燥を促進することができる。
【実施例3】
【0030】
(トラバース)
図4は、実施例3の液体の塗布及び乾燥装置の平面図である。図1に示した実施例1と同様の構成要素については同じ参照符号を付して説明を省略する。
スプレイノズル3は、支持棒22に取り付けられ、矢印Xで示す方向に移動可能である。矢印Xで示す方向は、循環移動体2の軸線方向に沿う方向である。本明細書において、矢印Xで示す方向へのスプレイノズル3の移動を「トラバース」という。
【0031】
以下に、実施例3による液体の塗布及び乾燥方法を説明する。
図5は、実施例3による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。図2に示した実施例1と同様の工程には、同様の参照符号を付して説明を省略する。以下、異なる点のみを説明する。
【0032】
ステップS5で液体の塗布を開始した後、あるいはそれと同時に、スプレイノズル3のトラバースを開始する。スプレイノズル3をトラバースすることは、幅広の基材Pに対して、パターン幅の狭いスプレイノズルで塗布する場合に有利である。
【0033】
循環移動体2が所定回数の回転を終了したら(ステップS6)、スプレイノズル3のトラバースを終了する(ステップS32)。ステップS7へ進み液体の塗布を終了し、以降は実施例1と同様にして液体の塗布及び乾燥工程を終了する。
【0034】
トラバースする距離は、基材Pの一端部から他端部までの距離であってもよいし、所望の塗布領域の幅だけであってもよい。また、スプレイノズル3のトラバースの往路だけで液体を塗布してもよいし、往路と復路の両方で液体を塗布してもよい。
【実施例4】
【0035】
実施例3においては、循環移動体の回転に連動して連続してスプレイノズル3をトラバースした。これにたいして、実施例4では、第四所定回転数ごとに間欠的にスプレイノズル3をトラバースする。
【0036】
以下に、実施例4による液体の塗布及び乾燥方法を説明する。
図6は、実施例4による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。図2に示した実施例1と同様の工程には、同様の参照符号を付して説明を省略する。以下、異なる点のみを説明する。
【0037】
ステップS5で液体の塗布を開始した後、所定のタイミングで液体の塗布を終了する(ステップS41)。所定のタイミングは、任意に設定することができるが、実施例4においては、循環移動体2が一回転する少し手前のタイミングとして説明する。
【0038】
ステップS42で、循環移動体2が第四所定回転数の回転を終了したかどうかを判断する。第四所定回転数は、スプレイノズル3のトラバースとトラバースの間に回転する循環移動体の回転数である。第四所定回転数は、必要に応じて任意に設定することができる。第四所定回転数を2回転以上に設定した場合には、ステップS5へ戻る。本実施例においては、第四所定回転数を1回転としたので、ステップS43へ進む。
【0039】
ステップS43では、循環移動体2の回転を停止する。次に、ステップS44で、循環移動体2が所定回数の回転を終了したかどうかを判断する。この所定回数は、トラバースの回数や塗膜の積層数などに基づいて設定される。所定回転数の回転を終了していない場合には、スプレイノズル3を所定距離Dだけトラバースする(ステップS45)。そして、ステップS4へ戻って、循環移動体2の回転を開始して、ステップS4からステップS45の工程を所定回数の回転が終了するまで繰り返す。
【0040】
循環移動体2の所定回数の回転が終了したときは(ステップS44)、ステップS9へ進み送風を停止して、以降は実施例1と同様にして液体の塗布及び乾燥工程を終了する。
【0041】
図6に示す実施例4においては、スプレイノズル3を所定距離Dだけトラバースする際に、循環移動体2の回転を一旦停止している。しかし、本発明は、これに限らず、ステップS43を省略してもよい。この場合には、ステップS45でスプレイノズル3を所定距離Dだけトラバースした後、ステップS5へ進んで液体の塗布を開始するようにする。また、循環移動体2の所定回数の回転が終了したときに(ステップS44)、循環移動体の回転を停止してから、ステップS9へ進むようにする。
【0042】
図7は、実施例4の液体の塗布及び乾燥方法により塗布された塗膜を示す模式図である。
図7(a)及び図7(b)は、スプレイノズル3をトラバースする所定距離Dとスプレイノズル3のパターン幅Wがほぼ等しい場合の塗膜Mを模式的に示している。図7(a)は、説明のために展開した基材Pの平面図であり、図7(b)は側面図である。塗膜Mは、基材Pに均一に塗布されている。
図7(c)及び図7(d)は、スプレイノズル3をトラバースする所定距離Dがスプレイノズル3のパターン幅Wよりも小さい場合の塗膜Mを模式的に示している。図7(c)は、説明のために展開した基材Pの平面図であり、図7(d)は側面図である。この場合においても、塗膜Mは、基材Pにほぼ均一に塗布されることがわかる。
【0043】
実施例4においても、塗膜を積層して塗布することができる。図7(e)は、第一層の塗膜M1の上に塗布された第二層の塗膜M2を示している。積層塗布する場合には、第一層の塗膜M1と第二層の塗膜M2とを距離Eだけオフセットすることもできる。このように塗布することにより、より均一に塗膜を塗布することができる。
【実施例5】
【0044】
(間欠塗布)
本発明のスプレイノズル3は、連続塗布のみならず、間欠塗布するように制御することができる。液体を間欠塗布することにより、円周方向に間隔を空けた塗布パターンを形成することができる。
さらに、前記したトラバースと組み合わせることにより、図8に示すような塗布パターンを得ることができる。
図8(a)に示す塗布パターンは、スプレイノズル3を時間Tだけ停止した間欠塗布と、所定距離Dだけスプレイノズルをトラバースすることにより得られる。パターン幅Wのスプレイノズル3で、回転方向Aに沿って間欠塗布する。循環移動体2が一回転したならば、スプレイノズル3を矢印Xで示す方向に所定距離Dだけトラバースする。スプレイノズル3は、回転方向Aに沿って間欠塗布する。このように、間欠塗布とトラバースとを組み合わせることにより、図8(a)に示す塗布パターンを得ることができる。
【0045】
図8(b)に示す塗布パターンは、二つの所定距離DとD1のトラバースにより、積層塗布することにより得られる。すなわち、パターン幅Wのスプレイノズル3で、回転方向Aに沿って、スプレイノズル3を時間Tだけ停止した間欠塗布をする。循環移動体2が一回転したならば、スプレイノズル3を矢印Xで示す方向に所定距離Dだけトラバースする。スプレイノズル3は、回転方向Aに沿って間欠塗布する。この間欠塗布と所定距離Dのトラバースとを所定回数だけ繰り返した後、スプレイノズル3を矢印Xで示す方向に所定距離D1だけトラバースする。そして、上記工程を繰り返すことにより、図8(b)に示す塗布パターンを得ることができる。所定距離D1は、所定距離Dよりも大きく、パターン幅Wよりも大きい。
図8(c)に示す塗布パターンは、特許文献3に開示されているように循環移動体の回転を間欠的に停止させ、停止しているときにスプレイノズル3を矢印Xで示す方向にトラバースさせながらスプレイする。このトラバースの際に、時間T1はスプレイを停止して未塗布部を設けながら塗布する。トラバース終了後、スプレイのピッチ分だけ循環移動体2を所定距離Sだけ回転移動させ、前記と同じようにトラバースさせながら塗布をおこなう。以後、トラバースを所定回数繰り返し、塗布パターンMが所望する長さLになったら、時間T2分間欠回転させた後再度トラバースしながら塗布を行う。乾燥させながら一周したらオフセットをかけて塗布作業を繰り返し行う。所望する積層状態になるまで塗布と乾燥を行うことができる。スプレイは塗布幅W1の間パルス的に行うこともできる。
【0046】
なお、図8(a)、図8(b)、及び図8(c)に示すような塗布パターンを得る場合には、マスキングシートを基材Pの上に配置することにより、より正確なパターンを塗布することができる。
【実施例6】
【0047】
(スロットノズル)
実施例1〜実施例5においては、液体の塗布装置としてスプレイノズル3を使用した。しかし、本発明は、スプレイノズルに限定されるものではなく、スロットノズルを使用することができる。スロットノズルを使用することにより、図8(a)に示した塗布パターンをより簡単に形成することができる。
【0048】
図9は、実施例6の液体の塗布及び乾燥装置31の概略構成図である。図10は、実施例6の液体の塗布及び乾燥装置31の平面図である。図11は、スロットノズル33の概略構成図である。
【0049】
図9において、図1に示した実施例1と同様の構成については、同じ参照符号を付して説明を省略する。循環移動体2は、矢印Bで示す方向に回転する。循環移動体2には、基材Pが配置されている。スロットノズル33は、基材33に接触している。
【0050】
図11(a)に示すように、スロットノズル33には、液体を通す通路34と、シム35と、横溝36が設けられている。シム35は、図11(b)に示すように、複数の切り取り部35aが設けられている。通路34は、横溝36を介して複数の切り取り部35aと連通している。液体は、通路34から横溝36を通って複数の切り取り部35aへ流れ、矢印Cで示すように、スロットノズル33から吐出される。
【0051】
これによって、図10に示すように、複数の塗布パターンMを形成することができる。スロットノズル33を間欠的に動作させれば、図8(a)に示した塗布パターンを簡単に形成することができる。
【0052】
積層塗布の場合には、循環移動体2を複数回回転させて、塗膜の上に、液体を順次塗布する。前記したように空回転を行えば、液膜の乾燥を促進させることができる。
【0053】
本発明は、基材Pを循環移動体2に取り付けるために、真空吸着ドラムを使用したが、本発明はこれに限らず、締め付けバンド、固定爪などで基材Pを循環移動体2に固定してもよい。
【0054】
本発明によれば、例えば、図2、図3、図5、及び図6に示したフローチャートにおいて、送風を開始し(ステップS3)、且つ循環移動体の回転を開始(ステップS4)した後、液体の塗布を開始する(ステップS5)前に、送風装置からの熱風により基材を加熱する基材加熱工程を設けてもよい。これにより、液体の乾燥を促進することができる。
【0055】
上記実施例においては、ノズルを一つのみ記載して説明したが、本発明はこれに限らず、複数のノズルを使用することができる。例えば、複数のスプレイノズルを循環移動体の回転方向に沿って並べれば、一回転で積層塗布することができる。また、複数のスプレイノズルを循環移動体の軸線方向に沿って並べれば、トラバースの回数を減少させることができる。
また、スロットノズルとスプレイノズルを組み合わせて使用することもできる。この場合は、スプレイノズルをスロットノズルの下流側に配置するとよい。スプレイノズルは非接触タイプのノズルであるのに対して、スロットノズルは接触タイプのノズルであるからである。
【0056】
本発明の方法により、電解質膜に電極インクを塗布すれば、燃料電池用の膜−電極アッセンブリ(MEA)を形成することができる。本発明の方法は、特に、PEFC(高分子電解質形燃料電池)及びDMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)のMEAを形成するのに適している。
【0057】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
例えば、本発明における液体の塗布は、粒子化塗布であっても液膜塗布であってもよい。
粒子化塗布としては、エアレススプレイ、エアスプレイ、遠心霧化、超音波、バブラー、インクジェット、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。スプレイ方式としては、特表平8−501974号公報又は特開平6−170308号公報に記載されているコントロールコート法も適用できる。
液膜塗布としては、ロールコート、スクリーンコート、リバースコート、スロットノズルコート、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
また、本発明におけるスプレイノズルは、液体を粒子化させるタイプであっても、液体を膜状に付与するタイプであってもよい。前記液体を粒子化させるタイプのものとして本出願人の日本法人であるノードソン株式会社が出願した特開平6−86956号公報に記載されているような貫通型多孔性シートの孔に一旦充填された液体を液化ガス等で圧出させて微粒化させウェブ7に転移させて塗布する、所謂スクリーンスプレイ方式を用いてもよい。スロットノズルは、液体を所定のパターンで液膜状に吐出するタイプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1の液体の塗布及び乾燥装置の概略構成図。
【図2】実施例1による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図3】実施例2による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図4】実施例3の液体の塗布及び乾燥装置の平面図。
【図5】実施例3による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図6】実施例4による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図7】実施例4の液体の塗布及び乾燥方法により塗布された塗膜を示す模式図。
【図8】実施例5の塗布パターンを示す図。
【図9】実施例6の液体の塗布及び乾燥装置の概略構成図。
【図10】実施例6の液体の塗布及び乾燥装置の平面図。
【図11】スロットノズルの概略構成図。
【符号の説明】
【0059】
1 液体の塗布及び乾燥装置
2 循環移動体
3 スプレイノズル
4 送風装置
5,6 排気口
7,8 隔壁
9 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の塗布及び乾燥方法に関し、さらに詳細には、循環移動体に配置された枚葉シートに液体を塗布し乾燥させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブを循環移動体に吸着させ、移動するウェブに液体を塗布する方法がある(例えば特許文献1参照。)。この方法によれば多孔質や通気性のウェブに液体を塗布し循環移動体をバキュームしてウェブの多孔部に液体を充填しやすくしている。昨今、この方法を用いて細孔の基材に電解質溶液を充填し、乾燥させて高機能な燃料電池電解質膜を製造する方法が試みられている。
【0003】
また昨今、燃料電池の開発が進みウェブ状の電解質膜に液状の電極インクを塗布し乾燥させてMEA(電解質膜−電極アッセンブリ)を自動的に製造する方法が所望されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。電解質膜に直接電極インクを塗布し乾燥させてMEAを製造する方法は、電解質膜と電極層との界面抵抗が極めて低いことから他の工法と比較して性能向上につながり理想的な電極形成方法として注目されている。
【0004】
ところが電解質膜は湿気でも変形し、電極インクの溶媒ですぐ膨潤してしまう課題をかかえている。この課題を解決する方法として加熱吸着プレートで枚葉タイプの電解質膜を吸着させて電極インクを塗布しMEAを作成する方法が提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。この方法は、人手によって電解質膜を吸着プレートへ吸着させたり取り外したりするいわゆるバッチ方式の方法である。また、この方法は、自動化製造には向かない方式であった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−76220号公報
【特許文献2】特開2001−70863号公報
【特許文献3】特開2004−351413号公報
【特許文献4】特開2004−63780号公報
【特許文献5】特表平5−507583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載された技術は、巻取りフィルム(ウェブ)タイプの電解質膜を循環移動体に吸着させ液状電極インクを塗布し吸着している間に乾燥させる方式なので、アノード及びカソードを同一ラインで塗布乾燥できる特徴を有している。生産性が高い反面、性能向上の目的で複数回塗り重ねるため装置が大型になり設備金額が高くなる問題をかかえていた。60kW〜90kWの燃料電池自動車用MEAは1セル当り面積も広く、スタックあたり数百セットのセルが必要になるので大型で生産性の高い設備が必要になる。コジェネレーションも一台当り1kW〜数kWで同様に類似した設備が必要になる。
ところが、DMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)用途のモバイル分野では一台当り1W〜20数W程度でMEAの一枚当りの電極も数センチメートル×数センチメートルと極めて小面積である。
ところが、どのマーケットでも生産スピードは遅くても、品質面から自動化は求められていた。
また、スロットノズルによる塗布であって電極インクの粘度が低い場合は単位時間当りの流量が多くなるのでウェブスピードを速くして塗布する必要があった。複数回の塗布が必要で回数が多くなるほど循環移動体も大型にする必要があった。
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、小型の循環移動体を使用して枚葉タイプであっても比較的長尺のシートにも液体を積層して塗布し乾燥することができる安価で省スペースの装置を提案することにある。
【0007】
本発明は、枚葉シートに液体を塗布し乾燥する方法を提供することを目的とする。
本発明は、塗布及び乾燥装置を小型化し、生産効率の高い液体の塗布及び乾燥方法を提供することを目的とする。前記特許文献5に於いて例えば幅300mm×長さ900mmのシート状の電解質膜を加熱吸着プレートに吸着させて電極インクを塗布する場合、加熱吸着プレートは温度分布からして幅450mm×長さ1050mmが必要であった。また、スプレイノズルのトラバース長さは900mmの長さをカバーする必要があるので1m/秒のトラバーススピードを安定して維持するには1200mmが必要であった。また、トラバーススピードを上げて生産性を上げようとしても1.5m/秒が装置の剛性面と耐久性の面から限界であったし、スピードを上げれば上げるほどスプレイ流が煽られ粒子が飛散し清掃が大変であった。また、防爆構造上テーブルも直交方向にピッチ送りのトラバースが必要でテーブルの重さもあってテーブル型装置は大型化していた。一方、スロットノズルを使用した場合、テーブルを加熱すると大型金属プレートの平面度をミクロンオーダーで維持することは不可能であった。ましてや吸着構造を持たせた場合は更に難しかった。そのため10μm前後の塗膜を安定的に得ることはできなかった。
本発明は、一つのノズルで、効率的に積層塗布することができる液体の塗布及び乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する為に本発明では次のような液体の塗布及び乾燥方法とした。例えば、前記テーブル型装置を循環移動体に置き換えると直径300mm、面長320mmのロールでよく、ピッチ送りのトラバース長さも320mmでよい。スプレイノズルのトラバーススピードは循環移動体の周速に対比させることができる。100RPMで1.57m/秒に相当し、200RPMにするとトラバース機構では不可能である3m/秒を越すことができる。回転機構なので装置の振動も無く小型にすることができる。更に、図1の機構を用いることにより飛散粒子は局所捕集できるのでスプレイ方法を採用しても装置はより小型にできる。また、スプレイであっても通常の低速トラバーススピード(0.3m/秒)の10倍以上の生産スピードにすることができる。
一方、スロットノズルを使用する場合であってもロールは加温しても真円度をプラスマイナス1μm以内にすることは業界では難しい技術ではない。また、液体の使用粘度範囲も広いが以下を考慮する必要がある。5000mPa・s〜20000mPa・sの粘度の場合は1〜2m/min.のスピードで20μmのウェット膜を塗布することが可能であるが、粘度が50〜200mP・sの低粘度の場合はスピードを15m/min.以上にする必要がある。燃料電池の電極インクは固形分が7−15wt%で乾燥塗膜が10μm程度であるのでウェット10μmなら10回、20μmなら乾燥させながら5回積層させると良いことになる。
本発明では次のような液体の塗布及び乾燥方法とした。
シート状基材(P)を循環移動体(2)上に配置する配置工程(S2)と、該循環移動体を回転させながら該基材に液体を塗布する塗布工程(S5,S7)と、該循環移動体を複数回回転させることにより該液体を乾燥させる回転乾燥工程(S6,S21,S22,S23,S42,S44)とを有する液体の塗布及び乾燥方法。
また、本発明では次のような液体の塗布及び乾燥方法としてもよい。
シート状基材(P)を循環移動体(2)に配置する配置工程(S2)と、該循環移動体を移動させて該基材に少なくとも一つの塗布装置(3)により液体を塗布する塗布工程(S5,S7)と、該液体の乾燥を促進させる乾燥工程(S3,S9)と、前記塗布工程と前記乾燥工程を繰り返すことにより複数回の積層塗布を行う積層塗布工程(S6,S23,S44)とを有する液体の塗布及び乾燥方法。
該基材に塗布された液体を冷,温風/熱風/輻射熱/循環移動体の加熱手段による伝熱の少なくとも一つにより乾燥させる乾燥工程(S3,S9)を有するとよい。
前記配置工程は、該循環移動体に該基材を真空吸着させる吸着工程を有するとよい。
前記塗布工程の前に該基材を加熱する基材加熱工程を有するとよい。
前記配置工程は、該循環移動体と該基材との間に通気性部材を配置する工程を有するとよい。
前記配置工程は、該基材上にマスキング部材を配置する工程を有するとよい。
該基材は、電解質膜であるとよい。
該液体は、電極インクであるとよい。
前記塗布工程は、スロットノズル(33)から液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程を有するとよい。
前記塗布工程は、スプレイノズル(3)から液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程を有するとよい。
前記多層塗布工程は、スロットノズルから液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程と、スプレイノズルから液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程とを有するとよい。
前記スプレイ塗布工程は、該循環移動体の一周内の塗布終了ごとにスプレイノズルを横断方向に移動させる行程(S31,S32,S45)を有するとよい。
前記スプレイ塗布工程は、スプレイ塗布とスプレイ塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程(S22)を有するとよい。
前記吐出塗布工程は、一つのスロットノズルを間欠的に動作させることにより、複数の塗布領域に液体を塗布する工程を有するとよい。
前記吐出塗布工程は、吐出塗布と吐出塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程を有するとよい。
上記の液体の塗布及び乾燥方法を使用して電解質膜に電極インクを塗布することにより膜−電極アッセンブリを形成してもよい。
上記のように形成された膜−電極アッセンブリを使用した高分子電解質形燃料電池又はダイレクトメタノール型燃料電池を製造してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布及び乾燥装置を小型化し、高い生産効率でもって、枚葉シートに液体を塗布し乾燥することができる。
本発明のよれば、液体の乾燥を促進させることができる。
本発明によれば、一つのノズルで、液体を効率的に基材上に積層塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0011】
(塗布及び乾燥装置)
図1は、実施例1の液体の塗布及び乾燥装置1の概略構成図である。
塗布及び乾燥装置1は、矢印Aで示す方向に回転可能な循環移動体2と、液体を塗布するための塗布装置としてのスプレイノズル3と、塗布面の近くに空気の流れを形成するための送風装置4とからなる。
【0012】
循環移動体2の上には、裁断された枚葉紙タイプの基材Pが配置されている。基材Pは、例えば、シート状薄膜、通気性基材、離型フィルム、燃料電池ガス拡散用基材、燃料電池用電解質膜、色素増感太陽電池の電極形成用ベースフィルムなどであってもよい。基材Pは、適宜の手段により循環移動体2の周囲表面上に取り付けられる。基材Pの循環移動体への固定はテープによる貼り付け固定などいかなる手段であってもよいが、本実施例においては、基材Pを循環移動体2の周囲表面上に真空吸着する手段を使用した。すなわち、循環移動体2は、通気性を有する円筒状ドラムからなり、真空装置(不図示)によってドラム内部を真空にする。これによって、基材Pを循環移動体2の表面に吸着固定する。
【0013】
基材Pを吸着した循環移動体2が回転すると、スプレイノズル3は、液体を基材Pへ塗布する。スプレイノズル3からスプレイされる液体は、例えば、塗料、接着剤、燃料電池電極インク、電解質溶液などであってもよい。
基材Pに付着しなかった過剰の液体噴霧は、矢印Fで示す空気の流れに乗って排気口5を通して排気処理装置へ送られる。
【0014】
基材Pに塗布された液体は、矢印Aで示す方向へ移動して、送風装置4へ送られる。送風装置4からの空気の流れは、液体から溶媒を蒸発させ液体の乾燥を促進する。溶媒は、矢印Gで示す空気の流れに乗って排気口6を通して排気処理装置へ送られる。送風装置4は、温風あるいは熱風を送風してもよい。
【0015】
なお、循環移動体2に、加熱用の熱媒体を通すための油穴(不図示)を設けて、循環移動体2を加熱するようにしてもよい。循環移動体2の表面からの熱伝達により基材Pを加熱して液体の乾燥を促進する。
あるいは、光照射、輻射熱などを利用して液体の乾燥を促進させてもよい。
【0016】
過剰液体噴霧の排気口5と熱風用の排気口6とは、隔壁7及び8により隔てられている。隔壁7と隔壁8の間の空間9は、大気に通じている。このように、排気口5と6とを隔離している理由は、過剰液体噴霧が熱風により発火することを防止するためである。
【0017】
(マスキングシート)
基材Pの上にマスキングシートを配置してもよい。マスキングシートは、液体を塗布したい領域の形状に合わせた開口を有する。マスキングシートを基材Pの上に配置して、液体をスプレイすれば、所望形状の塗布パターンを正確に基材Pに塗布することができる。
【0018】
(下敷きシート)
基材Pと循環移動体2との間に通気性基材としての下敷きシートを配置してもよい。下敷きシートを使用することにより、飛散した液体による循環移動体2の汚れを防止すると伴に、飛散した液体を下敷きシートに付着させて回収することができる。
【0019】
(塗布及び乾燥方法)
図2は、実施例1による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。
液体の塗布及び乾燥工程を開始すると(ステップS1)、循環移動体2に基材Pを配置する(ステップS2)。基材Pは、真空吸着により循環移動体2の表面に吸着される。送風装置4を駆動して、送風を開始する(ステップS3)。循環移動体2を回転させ(ステップS4)、スプレイノズル3から液体を基材Pへ塗布する(ステップS5)。
【0020】
液体の塗布を開始してから循環移動体2が1回転すると、一つの塗膜層が基材Pの上に形成される。循環移動体2が2回転すると、さらにその上に塗膜層が形成されて、二層の塗膜層が形成される。このようにして、循環移動体2を10回転すれば、十層の積層塗膜が形成され、20回転すれば、二十層の積層塗膜が形成される。ステップS6で、循環移動体2が所定の回転数の回転を終了したかどうかを判断する。循環移動体2が所定の回転数を終了したならば、液体の塗布を終了する(ステップS7)。これによって、基材Pの上に所望数の層の塗膜が形成される。
【0021】
循環移動体2の回転を停止して(ステップS8)、送風装置4を停止する(ステップS9)。循環移動体2から基材Pを取り外して(ステップS10)、液体の塗布及び乾燥工程を終了する(ステップS11)。
【0022】
本実施例によれば、一つのスプレイノズルで、複数層の塗膜層を形成することができる。
【実施例2】
【0023】
(空回転)
実施例2では、液体の乾燥を促進するために、液体の塗布工程の間に循環移動体の空回転工程を設けた。例えば、スプレイノズル3から液体を塗布しながら循環移動体2を一回転して一層目の液膜層を形成した後、スプレイノズル3を停止して循環移動体2を十回転だけ回転させる(本明細書において、以下、この回転を「空回転」という。)。空回転をすることにより、液膜の乾燥を促進させることができる。その後、再び、スプレイノズル3から液体を塗布して二層目の液膜層を形成する。
【0024】
図3は、実施例2による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。図2に示した実施例1と同様の工程には、同様の参照符号を付して説明を省略する。以下、異なる点のみを説明する。
【0025】
ステップS5で液体の塗布を開始した後、循環移動体2が第一所定回数の回転を終了したかどうかを判断する(ステップS21)。第一所定回数は、連続して塗布する液膜の層の数である。すなわち、一層の液膜を塗布した後に空回転をする場合には第一所定回数は1であり、二層の液膜を連続して塗布した後に空回転する場合には第一所定回数は2である。例えば、液膜を一層塗布する毎に空回転する場合には循環移動体2が一回転すると液体の塗布を終了する(ステップS7)。
【0026】
ステップS22では、循環移動体2が第二所定回数の回転を終了したかどうかを判断する。第二所定回数は、循環移動体2の空回転の回数である。すなわち、五回だけ空回転をする場合には第二所定回数は5であり、十回だけ空回転をする場合には第二所定回数は10である。循環移動体2の空回転の回数が第二所定回数に達したならば、ステップS23へ進む。
【0027】
ステップS23では、循環移動体2が第三所定回数の回転を終了したかどうかを判断する。第三所定回数は、所望の積層数の塗膜が形成されたかどうかを判断するためのものである。本実施例においては、所望の積層数の塗膜を形成するために必要なステップS5からS23の繰り返し数を第一所定回数と第二所定回数との和に掛けた数である。例えば、一層塗布するごとに五回空回りする場合において、5層の積層塗布をするためには、5×(1+5)=30であるから第三所定回数は30となる。なお、ステップS5からS23の繰り返し数を入力して所望の積層数を得るように動作を変更してもよいことはもちろんである。
【0028】
循環移動体2が第三所定回数の回転を終了していないときは(ステップS23)、ステップS5へ戻って、ステップS5からS23の工程を繰り返す。第三所定回数の回転を終了したときは、ステップS8へ進み、以降は実施例1と同様にして液体の塗布及び乾燥工程を終了する。
【0029】
実施例2によれば、循環移動体の空回転をすることにより、液体の乾燥を促進することができる。
【実施例3】
【0030】
(トラバース)
図4は、実施例3の液体の塗布及び乾燥装置の平面図である。図1に示した実施例1と同様の構成要素については同じ参照符号を付して説明を省略する。
スプレイノズル3は、支持棒22に取り付けられ、矢印Xで示す方向に移動可能である。矢印Xで示す方向は、循環移動体2の軸線方向に沿う方向である。本明細書において、矢印Xで示す方向へのスプレイノズル3の移動を「トラバース」という。
【0031】
以下に、実施例3による液体の塗布及び乾燥方法を説明する。
図5は、実施例3による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。図2に示した実施例1と同様の工程には、同様の参照符号を付して説明を省略する。以下、異なる点のみを説明する。
【0032】
ステップS5で液体の塗布を開始した後、あるいはそれと同時に、スプレイノズル3のトラバースを開始する。スプレイノズル3をトラバースすることは、幅広の基材Pに対して、パターン幅の狭いスプレイノズルで塗布する場合に有利である。
【0033】
循環移動体2が所定回数の回転を終了したら(ステップS6)、スプレイノズル3のトラバースを終了する(ステップS32)。ステップS7へ進み液体の塗布を終了し、以降は実施例1と同様にして液体の塗布及び乾燥工程を終了する。
【0034】
トラバースする距離は、基材Pの一端部から他端部までの距離であってもよいし、所望の塗布領域の幅だけであってもよい。また、スプレイノズル3のトラバースの往路だけで液体を塗布してもよいし、往路と復路の両方で液体を塗布してもよい。
【実施例4】
【0035】
実施例3においては、循環移動体の回転に連動して連続してスプレイノズル3をトラバースした。これにたいして、実施例4では、第四所定回転数ごとに間欠的にスプレイノズル3をトラバースする。
【0036】
以下に、実施例4による液体の塗布及び乾燥方法を説明する。
図6は、実施例4による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャートである。図2に示した実施例1と同様の工程には、同様の参照符号を付して説明を省略する。以下、異なる点のみを説明する。
【0037】
ステップS5で液体の塗布を開始した後、所定のタイミングで液体の塗布を終了する(ステップS41)。所定のタイミングは、任意に設定することができるが、実施例4においては、循環移動体2が一回転する少し手前のタイミングとして説明する。
【0038】
ステップS42で、循環移動体2が第四所定回転数の回転を終了したかどうかを判断する。第四所定回転数は、スプレイノズル3のトラバースとトラバースの間に回転する循環移動体の回転数である。第四所定回転数は、必要に応じて任意に設定することができる。第四所定回転数を2回転以上に設定した場合には、ステップS5へ戻る。本実施例においては、第四所定回転数を1回転としたので、ステップS43へ進む。
【0039】
ステップS43では、循環移動体2の回転を停止する。次に、ステップS44で、循環移動体2が所定回数の回転を終了したかどうかを判断する。この所定回数は、トラバースの回数や塗膜の積層数などに基づいて設定される。所定回転数の回転を終了していない場合には、スプレイノズル3を所定距離Dだけトラバースする(ステップS45)。そして、ステップS4へ戻って、循環移動体2の回転を開始して、ステップS4からステップS45の工程を所定回数の回転が終了するまで繰り返す。
【0040】
循環移動体2の所定回数の回転が終了したときは(ステップS44)、ステップS9へ進み送風を停止して、以降は実施例1と同様にして液体の塗布及び乾燥工程を終了する。
【0041】
図6に示す実施例4においては、スプレイノズル3を所定距離Dだけトラバースする際に、循環移動体2の回転を一旦停止している。しかし、本発明は、これに限らず、ステップS43を省略してもよい。この場合には、ステップS45でスプレイノズル3を所定距離Dだけトラバースした後、ステップS5へ進んで液体の塗布を開始するようにする。また、循環移動体2の所定回数の回転が終了したときに(ステップS44)、循環移動体の回転を停止してから、ステップS9へ進むようにする。
【0042】
図7は、実施例4の液体の塗布及び乾燥方法により塗布された塗膜を示す模式図である。
図7(a)及び図7(b)は、スプレイノズル3をトラバースする所定距離Dとスプレイノズル3のパターン幅Wがほぼ等しい場合の塗膜Mを模式的に示している。図7(a)は、説明のために展開した基材Pの平面図であり、図7(b)は側面図である。塗膜Mは、基材Pに均一に塗布されている。
図7(c)及び図7(d)は、スプレイノズル3をトラバースする所定距離Dがスプレイノズル3のパターン幅Wよりも小さい場合の塗膜Mを模式的に示している。図7(c)は、説明のために展開した基材Pの平面図であり、図7(d)は側面図である。この場合においても、塗膜Mは、基材Pにほぼ均一に塗布されることがわかる。
【0043】
実施例4においても、塗膜を積層して塗布することができる。図7(e)は、第一層の塗膜M1の上に塗布された第二層の塗膜M2を示している。積層塗布する場合には、第一層の塗膜M1と第二層の塗膜M2とを距離Eだけオフセットすることもできる。このように塗布することにより、より均一に塗膜を塗布することができる。
【実施例5】
【0044】
(間欠塗布)
本発明のスプレイノズル3は、連続塗布のみならず、間欠塗布するように制御することができる。液体を間欠塗布することにより、円周方向に間隔を空けた塗布パターンを形成することができる。
さらに、前記したトラバースと組み合わせることにより、図8に示すような塗布パターンを得ることができる。
図8(a)に示す塗布パターンは、スプレイノズル3を時間Tだけ停止した間欠塗布と、所定距離Dだけスプレイノズルをトラバースすることにより得られる。パターン幅Wのスプレイノズル3で、回転方向Aに沿って間欠塗布する。循環移動体2が一回転したならば、スプレイノズル3を矢印Xで示す方向に所定距離Dだけトラバースする。スプレイノズル3は、回転方向Aに沿って間欠塗布する。このように、間欠塗布とトラバースとを組み合わせることにより、図8(a)に示す塗布パターンを得ることができる。
【0045】
図8(b)に示す塗布パターンは、二つの所定距離DとD1のトラバースにより、積層塗布することにより得られる。すなわち、パターン幅Wのスプレイノズル3で、回転方向Aに沿って、スプレイノズル3を時間Tだけ停止した間欠塗布をする。循環移動体2が一回転したならば、スプレイノズル3を矢印Xで示す方向に所定距離Dだけトラバースする。スプレイノズル3は、回転方向Aに沿って間欠塗布する。この間欠塗布と所定距離Dのトラバースとを所定回数だけ繰り返した後、スプレイノズル3を矢印Xで示す方向に所定距離D1だけトラバースする。そして、上記工程を繰り返すことにより、図8(b)に示す塗布パターンを得ることができる。所定距離D1は、所定距離Dよりも大きく、パターン幅Wよりも大きい。
図8(c)に示す塗布パターンは、特許文献3に開示されているように循環移動体の回転を間欠的に停止させ、停止しているときにスプレイノズル3を矢印Xで示す方向にトラバースさせながらスプレイする。このトラバースの際に、時間T1はスプレイを停止して未塗布部を設けながら塗布する。トラバース終了後、スプレイのピッチ分だけ循環移動体2を所定距離Sだけ回転移動させ、前記と同じようにトラバースさせながら塗布をおこなう。以後、トラバースを所定回数繰り返し、塗布パターンMが所望する長さLになったら、時間T2分間欠回転させた後再度トラバースしながら塗布を行う。乾燥させながら一周したらオフセットをかけて塗布作業を繰り返し行う。所望する積層状態になるまで塗布と乾燥を行うことができる。スプレイは塗布幅W1の間パルス的に行うこともできる。
【0046】
なお、図8(a)、図8(b)、及び図8(c)に示すような塗布パターンを得る場合には、マスキングシートを基材Pの上に配置することにより、より正確なパターンを塗布することができる。
【実施例6】
【0047】
(スロットノズル)
実施例1〜実施例5においては、液体の塗布装置としてスプレイノズル3を使用した。しかし、本発明は、スプレイノズルに限定されるものではなく、スロットノズルを使用することができる。スロットノズルを使用することにより、図8(a)に示した塗布パターンをより簡単に形成することができる。
【0048】
図9は、実施例6の液体の塗布及び乾燥装置31の概略構成図である。図10は、実施例6の液体の塗布及び乾燥装置31の平面図である。図11は、スロットノズル33の概略構成図である。
【0049】
図9において、図1に示した実施例1と同様の構成については、同じ参照符号を付して説明を省略する。循環移動体2は、矢印Bで示す方向に回転する。循環移動体2には、基材Pが配置されている。スロットノズル33は、基材33に接触している。
【0050】
図11(a)に示すように、スロットノズル33には、液体を通す通路34と、シム35と、横溝36が設けられている。シム35は、図11(b)に示すように、複数の切り取り部35aが設けられている。通路34は、横溝36を介して複数の切り取り部35aと連通している。液体は、通路34から横溝36を通って複数の切り取り部35aへ流れ、矢印Cで示すように、スロットノズル33から吐出される。
【0051】
これによって、図10に示すように、複数の塗布パターンMを形成することができる。スロットノズル33を間欠的に動作させれば、図8(a)に示した塗布パターンを簡単に形成することができる。
【0052】
積層塗布の場合には、循環移動体2を複数回回転させて、塗膜の上に、液体を順次塗布する。前記したように空回転を行えば、液膜の乾燥を促進させることができる。
【0053】
本発明は、基材Pを循環移動体2に取り付けるために、真空吸着ドラムを使用したが、本発明はこれに限らず、締め付けバンド、固定爪などで基材Pを循環移動体2に固定してもよい。
【0054】
本発明によれば、例えば、図2、図3、図5、及び図6に示したフローチャートにおいて、送風を開始し(ステップS3)、且つ循環移動体の回転を開始(ステップS4)した後、液体の塗布を開始する(ステップS5)前に、送風装置からの熱風により基材を加熱する基材加熱工程を設けてもよい。これにより、液体の乾燥を促進することができる。
【0055】
上記実施例においては、ノズルを一つのみ記載して説明したが、本発明はこれに限らず、複数のノズルを使用することができる。例えば、複数のスプレイノズルを循環移動体の回転方向に沿って並べれば、一回転で積層塗布することができる。また、複数のスプレイノズルを循環移動体の軸線方向に沿って並べれば、トラバースの回数を減少させることができる。
また、スロットノズルとスプレイノズルを組み合わせて使用することもできる。この場合は、スプレイノズルをスロットノズルの下流側に配置するとよい。スプレイノズルは非接触タイプのノズルであるのに対して、スロットノズルは接触タイプのノズルであるからである。
【0056】
本発明の方法により、電解質膜に電極インクを塗布すれば、燃料電池用の膜−電極アッセンブリ(MEA)を形成することができる。本発明の方法は、特に、PEFC(高分子電解質形燃料電池)及びDMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)のMEAを形成するのに適している。
【0057】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
例えば、本発明における液体の塗布は、粒子化塗布であっても液膜塗布であってもよい。
粒子化塗布としては、エアレススプレイ、エアスプレイ、遠心霧化、超音波、バブラー、インクジェット、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。スプレイ方式としては、特表平8−501974号公報又は特開平6−170308号公報に記載されているコントロールコート法も適用できる。
液膜塗布としては、ロールコート、スクリーンコート、リバースコート、スロットノズルコート、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
また、本発明におけるスプレイノズルは、液体を粒子化させるタイプであっても、液体を膜状に付与するタイプであってもよい。前記液体を粒子化させるタイプのものとして本出願人の日本法人であるノードソン株式会社が出願した特開平6−86956号公報に記載されているような貫通型多孔性シートの孔に一旦充填された液体を液化ガス等で圧出させて微粒化させウェブ7に転移させて塗布する、所謂スクリーンスプレイ方式を用いてもよい。スロットノズルは、液体を所定のパターンで液膜状に吐出するタイプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1の液体の塗布及び乾燥装置の概略構成図。
【図2】実施例1による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図3】実施例2による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図4】実施例3の液体の塗布及び乾燥装置の平面図。
【図5】実施例3による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図6】実施例4による液体の塗布及び乾燥方法の手順を示すフローチャート。
【図7】実施例4の液体の塗布及び乾燥方法により塗布された塗膜を示す模式図。
【図8】実施例5の塗布パターンを示す図。
【図9】実施例6の液体の塗布及び乾燥装置の概略構成図。
【図10】実施例6の液体の塗布及び乾燥装置の平面図。
【図11】スロットノズルの概略構成図。
【符号の説明】
【0059】
1 液体の塗布及び乾燥装置
2 循環移動体
3 スプレイノズル
4 送風装置
5,6 排気口
7,8 隔壁
9 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材を循環移動体上に配置する配置工程と、
該循環移動体を移動させ該基材に液体を塗布する塗布工程と、
該循環移動体を複数回回転させることにより該液体を乾燥させる回転乾燥工程とを有することを特徴とする液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項2】
シート状基材を循環移動体に配置する配置工程と、
該循環移動体を移動させて該基材に少なくとも一つの塗布装置により液体を塗布する塗布工程と、
該液体の乾燥を促進させる乾燥工程と、
前記塗布工程と前記乾燥工程を繰り返すことにより複数回の積層塗布を行う積層塗布工程とを特徴とする液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項3】
該基材に塗布された液体を冷、温風/熱風/輻射熱/循環移動体の加熱手段による伝熱の少なくとも一つにより乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項4】
前記配置工程は、該循環移動体に該基材を真空吸着させる吸着工程を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項5】
前記塗布工程の前に該基材を加熱する基材加熱工程を有することを特徴とする請求項1乃至4に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項6】
前記配置工程は、該循環移動体と該基材との間に通気性部材を配置する工程を有することを特徴とする請求項1乃至5に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項7】
前記配置工程は、該基材上にマスキング部材を配置する工程を有することを特徴とする請求項1乃至6に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項8】
該液体は、電極インクであることを特徴とする請求項1乃至7に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項9】
該基材は、電解質膜であることを特徴とする請求項1乃至8に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項10】
前記塗布工程は、スロットノズルから液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項11】
前記塗布工程は、スプレイノズルから液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項12】
前記積層塗布工程は、スロットノズルから液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程と、スプレイノズルから液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程とを有することを特徴とする請求項2に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項13】
前記スプレイ塗布工程は、該循環移動体の一周内の塗布終了ごとにスプレイノズルを横断方向に移動させる行程を有する請求項11又は12に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項14】
前記スプレイ塗布工程は、スプレイ塗布とスプレイ塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程を有する請求項11又は12に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項15】
前記吐出塗布工程は、一つのスロットノズルを間欠的に動作させることにより、複数の塗布領域に液体を塗布する工程を有する請求項10又は12に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項16】
前記吐出塗布工程は、吐出塗布と吐出塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程を有する請求項10,12又は15に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項17】
請求項1乃至16に記載の液体の塗布及び乾燥方法を使用して電解質膜に電極インクを塗布することにより膜−電極アッセンブリを形成することを特徴とする膜−電極アッセンブリ形成方法。
【請求項18】
請求項17に記載の膜−電極アッセンブリ形成方法により形成された膜−電極アッセンブリを使用した高分子電解質形燃料電池又はダイレクトメタノール型燃料電池を製造する燃料電池製造方法。
【請求項1】
シート状基材を循環移動体上に配置する配置工程と、
該循環移動体を移動させ該基材に液体を塗布する塗布工程と、
該循環移動体を複数回回転させることにより該液体を乾燥させる回転乾燥工程とを有することを特徴とする液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項2】
シート状基材を循環移動体に配置する配置工程と、
該循環移動体を移動させて該基材に少なくとも一つの塗布装置により液体を塗布する塗布工程と、
該液体の乾燥を促進させる乾燥工程と、
前記塗布工程と前記乾燥工程を繰り返すことにより複数回の積層塗布を行う積層塗布工程とを特徴とする液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項3】
該基材に塗布された液体を冷、温風/熱風/輻射熱/循環移動体の加熱手段による伝熱の少なくとも一つにより乾燥させる乾燥工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項4】
前記配置工程は、該循環移動体に該基材を真空吸着させる吸着工程を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項5】
前記塗布工程の前に該基材を加熱する基材加熱工程を有することを特徴とする請求項1乃至4に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項6】
前記配置工程は、該循環移動体と該基材との間に通気性部材を配置する工程を有することを特徴とする請求項1乃至5に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項7】
前記配置工程は、該基材上にマスキング部材を配置する工程を有することを特徴とする請求項1乃至6に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項8】
該液体は、電極インクであることを特徴とする請求項1乃至7に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項9】
該基材は、電解質膜であることを特徴とする請求項1乃至8に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項10】
前記塗布工程は、スロットノズルから液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項11】
前記塗布工程は、スプレイノズルから液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程を有することを特徴とする請求項1乃至9に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項12】
前記積層塗布工程は、スロットノズルから液体を吐出して該基材に該液体を塗布する吐出塗布工程と、スプレイノズルから液体をスプレイして該基材に該液体を塗布するスプレイ塗布工程とを有することを特徴とする請求項2に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項13】
前記スプレイ塗布工程は、該循環移動体の一周内の塗布終了ごとにスプレイノズルを横断方向に移動させる行程を有する請求項11又は12に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項14】
前記スプレイ塗布工程は、スプレイ塗布とスプレイ塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程を有する請求項11又は12に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項15】
前記吐出塗布工程は、一つのスロットノズルを間欠的に動作させることにより、複数の塗布領域に液体を塗布する工程を有する請求項10又は12に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項16】
前記吐出塗布工程は、吐出塗布と吐出塗布との間に該循環移動体を一回転以上回転させる工程を有する請求項10,12又は15に記載の液体の塗布及び乾燥方法。
【請求項17】
請求項1乃至16に記載の液体の塗布及び乾燥方法を使用して電解質膜に電極インクを塗布することにより膜−電極アッセンブリを形成することを特徴とする膜−電極アッセンブリ形成方法。
【請求項18】
請求項17に記載の膜−電極アッセンブリ形成方法により形成された膜−電極アッセンブリを使用した高分子電解質形燃料電池又はダイレクトメタノール型燃料電池を製造する燃料電池製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−196093(P2007−196093A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14998(P2006−14998)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】
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