説明

液体を圧力下の溶融物質内に導入する方法及び装置

【課題】
【解決手段】液体を圧力下の溶融物質内に導入する方法及び装置1が記載されている。かかる方法及びかかる装置1は、少なくとも1つの導体4を備えるケーブル要素にて被覆層5、6、7を形成するのに特に適しているが、これにのみ限定されるものではなく、上記層5、6、7は、絶縁性液体を内蔵する連続相を形成する押出し成形した熱可塑性ポリマーを備え、また、例えば、送電及び(又は)分電用の電気ケーブル3を製造するときに使用可能である。該方法は、液体を溶融物質の圧力よりも高い所定の圧力にするステップと、液体を複数の貯蔵タンク12内に供給するステップと、複数の貯蔵タンク12とそれぞれ流体的に連通した複数の射出装置13により上述した所定の圧力に等しい射出圧力にて液体を溶融物質内に射出するステップとを備えている。望ましくは、このことは、溶融物質内での液体の可能な限り均一な分散を保証しつつ、技術的に簡単な要領にて且つ低コストにて実質的に連続的な液体の吐出を実現することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その第一の面において、液体を圧力下の溶融物質中に導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書及び特許請求の範囲において、「液体」という語は、例えば、少なくとも1つの液体中に分散させた少なくとも1つの固体成分の不均一な混合体のような、少なくとも1つの液体成分を備え、回路を詰まらせる程、又は、製品の所定の流量を過度に減少させることにより、何れの場合でもその工程を危険にするような程度まで析出を生じさせることなく、循環回路中を流れることのできる均一な又は不均一な製品を表現するために使用される。換言すれば、固体―液体の不均一な混合体の場合、固体成分は、液体成分の流体力学的性質を実質的に変化させず且つ、過度の析出現象を伴わないような量にて存在する。
【0003】
本発明は、その第二の面において、液体を圧力下の溶融物質中に導入する装置に関する。
説明の目的のため、圧力(典型的に、少なくとも約1MPa(約10バール)以上)を受ける溶融物質の状態は、例えば、いわゆる低電圧型(低電圧とは、約1kV以下の電圧を表す)、中電圧型(中電圧とは、約1kVないし約30kVの範囲の電圧を表す)、又は高電圧型(高電圧とは、約30kV以上の電圧を表す)の送電及び(又は)分電用ケーブルの被覆層の押出し成形過程にて見ることができる。
【0004】
説明の目的のため、上述した被覆層は、電気ケーブルの絶縁層に対して半径方向内方及び外方位置にそれぞれ配置された絶縁層及び(又は)1つ又は双方の半導層とすることができる。
【0005】
被覆層が絶縁層である場合、被覆層は、導体又は半導層の何れかに堆積されて導体に対する半径方向外方位置にて導体を被覆する。絶縁層に関して、これは、例えば、誘電性液体を内蔵する連続相を形成する押出し成形した熱可塑性ポリマーと、又は、例えば、有機質過酸化物を添加することにより半径方向に架橋結合された押出し成形ポリマーとから成るものとすることができる。半導層に関して、これらは、上述した絶縁層と同一の組成を有し、また、層に対し望ましい半導性の機能を付与し得るよう適宜な電導性フィラーを更に含むことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送電及び(又は)分電用の電気ケーブルは、既知であり、該ケーブルには、少なくとも1つの被覆層が設けられており、該被覆層は、例えば、熱可塑性ポリマーと、例えば、絶縁材料の層に対し十分な電気的性質、特に、誘電強度を付与するのに適した誘電性液体のような、液体とを備える型式の押出し成形した被架橋結合型の絶縁材料にて製造される。
【0007】
被覆が絶縁型式のものであり、また、液体が誘電性液体である場合、適合すべき1つの条件は、中電圧及び(又は)低電圧の送電及び(又は)分電用の電気ケーブルの絶縁性被覆の全厚さに亙って誘電性液体を均一に分配しなければならないという容易でないことである。誘電性液体が重合系物質を亙って均一に分配されないならば、事実上、生成されるケーブルは、予定したものに比して低電位の領域、すなわち、誘電強度が所望の程度よりも小さい領域を有し、このため、かかる領域は、放電の打撃が生じる可能性のある箇所となる。更に、重合系物質内での誘電性液体の不均一な分配は、通常、誘電性液体中に存在する酸化防止剤を不均一に分配することにもなる。このため、かかる場合、ケーブルは、老化現象をより受け易く、また、特に、高い作動温度時(典型的に、80ないし90℃以上)、時間と共に、実質的に一定の性能、従って、所望の信頼性を保証することができない。
【0008】
国際出願公開WO99/13477号には、ケーブルの被覆層が開示されており、このケーブルの被覆層は、固体の重合系構造体中にて可動の内部侵入相を形成する、誘電性液体を内蔵する連続相を形成する熱可塑性ポリマーから成る絶縁性材料で出来ている。熱可塑性ポリマーと誘電性液体との間の重量比は、95:5ないし25:75の範囲にある。絶縁性材料は、例えば、押出し成形機により、熱可塑性ポリマーの物質と誘電性液体とを不連続又は連続的な要領にて熱混合させるステップを提供する方法により製造することができる。特に、かかるポリマーをかかる液体と熱混合するステップの後、生成する混合体は、冷却し且つ室温にて粒状化して押出し成形機内に導入する。このように、押出し成形により半径方向内側の半導層に対して半径方向外方位置に配置された絶縁材料層が製造される。その後、絶縁材料層は、半径方向外側の半導層、金属スクリーン及び外側シースによって被覆して電気ケーブルを完成させる。
【0009】
重合系物質が構成する材料は、熱可塑性材の形態及び架橋結合した形態の双方にて使用することができる。熱可塑性ポリマーには、次のもの、すなわち、ポリオレフィン、酢酸ポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリアミド及びポリアミンが含まれる。特に、低結晶化度を有するポリマーを使用することが提案される。誘電性液体は、低又は高粘度を有する合成油又は鉱物油、特に、ポリイソブチレン、ナフテン系、ポリ芳香族、アルファ−オレフィン又はシリコーン油であることが好ましい。
【0010】
国際出願公開WO02/47092号には、誘電性液体を含む少なくとも1つの重合系被覆層を有するケーブルを製造する方法が開示されている。かかるケーブルは、誘電性液体と混合させた熱可塑性ポリマーを備える熱可塑性材料の物質を押出し成形するステップと、その後、誘電性液体が添加された熱可塑性材料をスタティックミキサーに通すステップとを提供する方法により得られる。
【0011】
米国特許出願明細書2002/0167103号には、例えば、硬化剤、染料、軟化剤、フィラー又は補強添加剤のような液体添加剤を例えば、溶融熱可塑性材料のような、圧力下の流体媒質から成る溶融物質中に導入する方法及び装置が開示されている。特に、かかる特許出願明細書に記載された1つの好ましい実施の形態に従い、液体は、溶融熱可塑性材の物質の圧力よりも高い所定の圧力とされ、次に、液体を供給する管内に供給され、ここから、液体を供給する管と流体的に連通した圧力下の貯蔵タンクに貯蔵される。最後に、液体は、上述した所定の圧力に等しい射出圧力にて溶融熱可塑性材の物質中に射出される。特に、物質は、押出し成形機内に受容され、液体は、サーボ制御式の電気駆動システムにより電気的に駆動される複数の射出装置によりその内部に射出される。このため、圧力下の溶融熱可塑性の物質中への液体の導入は、射出することで行われ且つ、液体を霧化し、その後、液体と溶融物質との効果的な混合を許容する。更に、貯蔵タンクの存在のため、圧力の発生と液体の射出とを切り離すことができ、これに伴って射出すべき液体の圧力の変動を抑制することができる。
【0012】
かかる効果が実現されるにも拘らず、米国特許出願明細書2002/0167103号に開示された方法及び装置には、例えば、射出装置による液体の連続的な吐出を保証するのに必須であるサーボ制御式電気駆動システムの複雑さ及びコストのような多数の短所がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した先行技術の短所を解消するため、当該出願人は、液体を圧力下の溶融物質内に可能な限り均一に分散することを保証しつつ、技術的に簡単な要領にて且つ低コストにて液体を溶融物質中に実質的に連続的に吐出し且つ導入することを保証することのできる、液体を圧力下の溶融物質中に導入する方法及び装置を提供する必要性を確認した。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、「液体を圧力下の溶融物質中に実質的に連続的に吐出し且つ導入する」という表現は、感得し得る妨害なくして、液体が溶融物質中にそれぞれ吐出され、又は導入されることを示すために使用する。例えば、同一の射出装置による2回の連続的な吐出の間にて経過する時間は、全体として、数千分の1秒よりも短い。
【0015】
当該出願人は、液体を複数の貯蔵タンクに、好ましくは、圧力下にて、供給し且つ、液体を溶融物質の圧力よりも高い圧力、好ましくは、約3MPa(約30バール)ないし約150MPa(約1500バール)の圧力にて射出することにより、全体として約1MPa(約10バール)ないし約140MPa(約1400バール)の圧力下の溶融物質中に液体を実質的に連続的な要領にて導入することが可能であることが分かった。
【0016】
換言すれば、当該出願人は、圧力下の少なくとも2つの貯蔵タンクを提供し且つ、少なくとも多数の射出装置を提供することにより、すなわち、液体の圧力を形成するステップ及び液体を互いに独立的に射出するステップのみではなく(この効果のためには、単一の貯蔵タンクを提供すれば十分であろう)、少なくとも2つの射出装置を互いに独立的に使用することにより、実質的に連続的な要領にて且つ、複雑で且つ高価な駆動手段を必要とせずに、液体を圧力下の溶融物質中に導入することを保証することが可能であることが分かった。
【0017】
このため、本発明は、その第一の面に従い、液体を圧力下の溶融物質中に導入する方法であって、
a)上記液体を上記溶融物質の圧力より高い所定の圧力にするステップと、
b)上記液体を複数の貯蔵タンクに供給するステップと、
c)上記複数の貯蔵タンクとそれぞれ流体的に連通した複数の射出装置により上記液体を上記所定の圧力よりも高い射出圧力にて上記物質中に射出するステップとを備える上記方法に関する。
【0018】
圧力下の溶融物質内に射出すべき液体は、その液体自体を射出するステップの前に複数の貯蔵タンク内に貯蔵されるため、溶融物質内に導入すべき液体の圧力を形成するステップ及び液体を溶融物質中に射出するステップは、独立的であり、このことは、溶融物質に加わる圧力値に依存して、高圧、例えば、70MPa(700バール)程度以上の圧力にて液体を溶融物質中に導入することを望ましいように許容する。
【0019】
かかる液体の射出圧力値にて、すなわち霧化、すなわち小さい液滴の形態にて微細に分散された状態となることが望ましい圧力にて、液体を溶融物質と混合させるその後のステップ、すなわち、以下により詳細に説明する本発明の方法の好ましい実施の形態に従って提供される混合ステップが望ましいように改良される。
【0020】
更に、溶融物質中に導入すべき圧力下の液体リザーバとして機能する複数の液体貯蔵タンクを提供し、また、それぞれ流体的に連通した相応する複数の射出装置を提供するため、米国特許出願明細書2002/0167103号に開示された装置にて採用される電気型駆動手段のような巧緻な駆動手段を提供することを必要とせずに、液体を圧力下の溶融物質内に実質的に連続的に且つ十分に計量供給される要領にて導入することが望ましいように可能である。米国特許出願明細書2002/0167103号に開示された方法及び装置は、実際上、電気式駆動システムを提供することによってのみ作動可能である。かかる電気式駆動システムに置換して所定の閾値圧力にて簡単な較正に基づく機械的な型式のより複雑でない駆動システムを使用するならば、射出装置は、全て同一の圧力にて供給し、従って、所定の時点にて、射出装置は貯蔵タンク内に貯蔵された液体の圧力値が所定の閾値圧力値よりもそれぞれ高いか又は低いかに依存して全て開放し又は全て閉じられ、何らかの時間範囲にて液体の吐出が停止し、また、液体を熱可塑性物質中に射出する過程の連続性が中断し、このため、圧力下の溶融物質内での液体添加剤の分配が不十分で且つ不均一となる。他方、本発明の方法及び装置は、圧力下の複数の貯蔵タンクが存在するため、技術的に簡単な要領にて、例えば、本発明の方法の1つの好ましい実施の形態に従って、例えば各射出装置に対し、圧力下の溶融物質に加わる圧力にも高い所定の閾値圧力にて較正されたばねを使用することにより、液体の射出を機械的に駆動することが望ましいように可能となる。更に、互いに独立的な複数の射出装置により液体を射出するステップを提供するため、本発明の方法は、上記複数の貯蔵タンクの少なくとも1つの貯蔵タンク内の液体の圧力が実質的に連続的な要領にて所定の閾値圧力よりも高いことを許容する。このような要領にて、実質的に各時点にて、少なくとも1つの射出装置が液体を溶融物質中に射出する作用可能な状態にある。
【0021】
液体と上述した溶融物質との間の重量比は、約1:99ないし約25:75、好ましくは、約2:98ないし約20:80、更により好ましくは、3:97ないし約15:85であることが好ましい。
【0022】
本発明の方法の1つの好ましい実施の形態に従い、上述した液体は誘電性液体であり、この誘電性液体は、誘電材を内蔵する物質が電気ケーブルの被覆層を形成することを目的とする場合、物質、例えば、重合系物質に対し、特に望ましい特性である、必要とされる誘電強度を望ましいように付与する。その化学物理的性質のため、誘電性液体は、液体が流れる全回路に沿って望ましい自己潤滑作用を発揮する。
【0023】
このため、特に、本発明の1つの好ましい実施の形態は、低電圧、中電圧又は高電圧の送電及び(又は)分電用の電気ケーブルの被覆層を形成するため、誘電性液体を圧力下の溶融物質中に導入することを可能にし、上記層は、ポリマー、より好ましくは、熱可塑性ポリマーを備えることが好ましく、誘電性液体を内蔵する連続相を形成するものとする。
【0024】
上述した被覆層は、ケーブルの絶縁層とするか、又は、適宜な導電性フィラーを追加することにより、ケーブルの絶縁層に対してそれぞれ半径方向内方位置及び外方位置に配置された1つ又は双方の半導層とすることができる。
【0025】
例えば、誘電性液体は、次の群から、すなわち、例えば脂肪族(例えば、パラフィン性)油、ナフテン系油、芳香族油、ポリ芳香族油、混合した脂肪族及び芳香族油のような鉱物油であって、選択的に、酸素、窒素及び硫黄から選ばれた少なくとも1つのヘテロ原子を含む上記鉱物油と、流動パラフィンと、例えば、大豆油、亜麻仁油、ひまし油のような植物油と、オリゴマー芳香族ポリオレフィンと、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスのようなパラフィン性ワックスと、例えば、シリコーン油、アルキルベンゼン(例えば、ジベンジルトルエン、ドデシルベンゼン、ジオクチルベンジルトルエン)、芳香族エステル(例えば、ペンタエリスロール(pentaerythrol)のテトラエステル(tetraesther)、セバシン酸のエステル、フタル酸エステル)、オレフィンオリゴマー(例えば、選択的に水素化したポリブテン又はポリイソブテン)のような合成油と、及びこれらの混合体とを含む群から選ぶことができる。
【0026】
芳香族、パラフィン及びナフタリン系油が特に好ましい。
本発明を実施するときに使用されることが好ましい誘電性液体は、8以下、より好ましくは、3.5以下の誘電定数を有することが好ましい、芳香族及び(又は)脂肪族油である。かかる誘電定数の好ましい値は、標準IEC247(1978年版)に従って25℃にて測定したときの誘電定数を意味する。
【0027】
好ましくは、誘電性液体は、次の群、すなわち、
(i)当該出願人の名による欧州特許出願明細書1 295 301号に記載されたように、アリール炭素原子数と炭素原子の総数との間の比が0.6以上、好ましくは、0.7以上の少なくとも3つの非溶融芳香族環を有するアルキルアリール炭化水素、
(ii)当該出願人の名による国際出願公開WO02/27731号に記載されたように、1ないし30の炭素原子、特に1ないし24の炭素原子を有する少なくとも1つの線形又は分枝炭化水素基にて置換されず又は置換されたジフェニルエーテル、
(iii)(i)及び(ii)の混合体から選ばれるものとする。
【0028】
更により好ましくは、誘電性液体は、誘電性液体の全重量に対して重量比にて10%以上の量の少なくとも3つの非溶融芳香族環を有する少なくとも1つのアルキルアリール炭化水素を備えるものとする。
【0029】
本発明に従って使用可能であるクラス(i)に属するアルキルアリール炭化水素の例は、ベンジルトルエン、ベンジルキシレン、(メチルベンジル)トルエン、(メチルベンジル)キシレン、ジベンジルトルエン、ジベンジルキシレン、ジ(メチルベンジル)トルエン、ジ(メチルベンジル)キシレン及び同様のもの又はこれらの混合体である。
【0030】
本発明に従って使用可能であるクラス(ii)に属するジフェニルエーテルの例は、フェニルトルイルエーテル、2,3´−ジトルイルエーテル、2,2´−ジトルイルエーテル、2,4´−ジトルイルエーテル、3,3´−ジトルイルエーテル、3,4´−ジトルイルエーテル、4,4´−ジトルイルエーテル、オクタデシルジフェニルエーテル及び同様のもの又はこれらの混合体である。
【0031】
本発明の方法を実施するために使用されることが好ましい誘電性液体は、液体が圧力下の溶融物質を通じて迅速に分散し、このため、その外方への移行を回避し、これと同時に、液体が重合系材料内に容易に供給され且つ混合されることを保証し得るよう所定の粘度を有する。好ましくは、誘電性液体は、標準ISO3104(1997年7月のISO3104/AC1)に従って20℃にて測定したとき、約1ないし約500mm/秒、より好ましくは、約5ないし約100mm/秒の範囲の動粘度を有するものとする。
【0032】
本発明の更に好ましい実施の形態に従い、誘電性液体は、標準IEC628(1985年第12版)に従って測定したとき、約5mm/分以上、より好ましくは、約50mm/分以上の水素吸収能力を有する。
【0033】
好ましくは、本発明の方法を実施するのに適した誘電性液体に対し、液体の重量に対して重量比にて好ましくは、1%以下の量にてエポキシ樹脂を添加することができ、該樹脂は、電界の下、イオンの移行速度を減少させ、従って、絶縁性材料の誘電喪失を減少させるという主たる機能を果たすものと考えられる。
【0034】
本発明に従った方法を実施するため、物質が重合系材料を備えるとき、例えば、物質の望ましくない老化現象に反作用することを目的とする酸化防止剤、加工助剤、水トリー防止添加剤及び同様のもののようなその他の従来の成分をこの材料に添加することができる。
【0035】
この目的に適した従来の酸化防止剤は、例えば、ジステアリル−チオプロピオン酸塩及びペンタエリスリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩]及び同様のもの又はこれらの混合体である。
【0036】
重合系基に添加することのできる加工助剤は、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、パラフィン系ワックス、及び同様のもの又はこれらの混合体である。
【0037】
半導層を形成しなければならない場合、例えば、炭素黒のような導電性フィラーを重合系材料に対し半導性特徴を付与するような量、すなわち室温にて5Ωm以下の抵抗が得られるような量にて重合系材料中に分散させる。かかる量は、混合体の全重量に対して重量比にて約5%ないし約80%、より好ましくは、約10%ないし約50%の範囲にあることが好ましい。
【0038】
同一型式の重合系材料が絶縁層及び半導層の双方に対して使用されるとき、中電圧又は高電圧ケーブルの製造時に有利な効果が実現され、それは、同一型式の重合系材料を使用することは、隣接する層の間にて最適な接着状態、従って電界、従って部分的放電の危険性が高い箇所である、絶縁層と内側半導層との間の境界面にてより優れた電気的振る舞いを保証することになるからである。
【0039】
この説明は、主として、中電圧又は高電圧電力の送電及び(又は)分電用のケーブルの製造に重点を置くものであるが、本発明に従った方法は、全体として、電気装置の絶縁性被覆を製造するため実施することができる。特に、該方法は、例えば、低電圧ケーブル、電気通信ケーブル、電力/電気通信混用ケーブルのような異なる型式のケーブルを製造し、又は例えば、端子又は継手に対する弾性的スリーブのような、電線を製造するときに使用される付属品の構成要素を製造するため実施することができる。
【0040】
本発明の1つの好ましい実施の形態に従い、圧力下の溶融物質は、例えば、熱可塑性ポリマーのような少なくとも1つのポリマーを備え、また、より好ましくは、かかる可塑性ポリマーは、溶融状態で且つ、圧力下にある、少なくとも1つのポリオレフィンを備えるものとする。
【0041】
好ましくは、かかるポリオレフィンは、標準ASTM D790−91に従い室温にて測定したとき、約30ないし約1400MPa、より好ましくは、約60ないし約1000MPaの範囲の曲げ弾性率を有するものとする。
【0042】
好ましくは、上述したポリオレフィンは、標準ASTM D1238−90b(1990年12月)に従って21.6Nの負荷にて230℃で測定したとき、約0.05ないし約10.0dg/分、より好ましくは、約0.5ないし約5.0dg/分の範囲のメルトフローインデックス(MFI)を有するものとする。
【0043】
この目的に適したポリオレフィンは、次の群、すなわち、
(a)全体として約0.93g/cmないし約0.96g/cmの範囲の密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、
(b)エチレンと、ポリプロピレン以外のα−オレフィンとを備える群から選ばれた少なくとも1つのオレフィンコモノマーを有するプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーであって、約140℃以上、好ましくは、約145℃ないし約170℃の範囲の融点、約30ないし約100J/g、好ましくは、約30ないし85J/gの範囲の溶融エンタルピーを有する上記プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーの群から選ばれることが好ましい。
【0044】
オレフィンコモノマーを有するプロピレンコポリマーが使用される場合、オレフィンコモノマーは、約15%モル以下、より好ましくは、約10%モル以下の量にて存在することが好ましい。オレフィンモノマーは、分子式CH=CH−Rのエチレン又はα−オレフィンの何れかであることが好ましく、ここでRは、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−エセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及び同様のもの又はこれらの組み合わせを備える群から選ばれた、2ないし10の炭素原子を有する、線形又は分枝アルキルである。プロピレン/エチレンコポリマーであることが特に好ましい。
【0045】
本発明の方法の特に好ましい実施の形態に従い、熱可塑性ポリマーは、次の群、すなわち、
(1)エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィンから成る群から選ばれた少なくとも1つのオレフィンコモノマーを備え、好ましくは、約30ないし約900MPaの範囲、より好ましくは、50ないし400MPaの範囲の曲げ弾性率を有するプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマー、
(2)プロピレン系熱可塑性相と、α−オレフィン、好ましくは、プロピレンを有する共重合化したエチレン系エラストマー相とを備え、エラストマー相が不均一なコポリマーの総重量に対して重量比にて少なくとも45%の量にて存在する、不均一なコポリマーから選ばれたポリオレフィンである。
【0046】
クラス(1)に属するホモポリマー又はコポリマーは、単相の微細構造体を示す、すなわち、1ミクロン以上の寸法の分子領域内に分散された不均一相は実質的に存在しない。かかる材料は、実際上、不均一な重合系材料に典型的である光学的現象を受けず、特に、かかる材料は、局所的機械的応力のため、材料が高透明度であり且つ低応力白化であることを特徴とする。
【0047】
上記クラス(1)内にて、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィンから選ばれた少なくとも1つのオレフィンコモノマーを有するプロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーであることが特に好ましく、上記ホモポリマー又はコポリマーは、
約140℃ないし約165℃の範囲の融点、
約30J/gないし約80J/gの範囲の溶融エンタルピー、
重量比にて約12%以下、好ましくは、重量比にて約1%ないし約10%の範囲の量にて沸騰するジエチルエーテル内にて溶融可能であり、約4J/g以下、好ましくは、約2J/g以下の溶融エンタルピーを有する部分と、
重量比にて約15%ないし約60%の範囲、好ましくは、重量比にて約20%ないし約50%の範囲の量にて沸騰するn−ヘプタン内にて溶融可能であり、約10J/gないし約40J/gの範囲、好ましくは、約15J/gないし約30J/gの範囲の溶融エンタルピーを有する部分と、
重量比にて約40%ないし約85%の範囲、好ましくは、重量比にて約50%ないし約80%の範囲の量にて沸騰するn−ヘプタン内にて溶融不能であり、約45J/g以上、好ましくは、約50J/gないし約95J/gの範囲の溶融エンタルピーを有する部分とを含む。
【0048】
これらの材料及びケーブルを被覆するためのその使用に関する更なる詳細は、当該出願人の名による欧州特許出願明細書1 230 647号に記載されている。
クラス(2)に属する不均一なコポリマーは、次のもの、すなわち(i)エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィンから選ばれた少なくとも1つのオレフィンコモノマーを少量、選択的に保持するプロピレンと、次に、(ii)α−オレフィン、特にプロピレンとのエチレン混合体であり、選択的に、少量のジエンを含む上記混合体とのブロック共重合化により得られた熱可塑性エラストマーである。このクラスの製品は、一般に、「リアクター熱可塑性エラストマー」という名称でも既知である。
【0049】
上記のクラス(2)にて、特に好ましいものは、エラストマー相がエチレンとプロピレンとの間に、エラストマー相の重量に対して重量比にて約15%ないし約50%のエチレンと、重量比にて約50%ないし85%のプロピレンとを備えるエラストマー的コポリマーから成る、不均一なコポリマーである。これらの材料及びそのケーブルの被覆のための使用に関する更なる詳細は、当該出願人の名による国際出願公開WO00/41187号に記載されている。
【0050】
クラス(1)の製品は、例えば、ハンツマンポリマーコーポレーション(Huntsman Polymer Corp)からレックスフレックス(Rexflex(登録商標名))という商標名にて商業的に入手可能である。
【0051】
クラス(2)の製品は、例えば、モンテル(Montell)からハイファックス(Hifax(登録商標名))という商標名にて商業的に入手可能である。
上述した基熱可塑性ポリマーは、低結晶度を有し、また、全体として、約30J/g以下の溶融エンタルピーを有し、材料の可撓性を増大させるという主たる機能を発揮するポリマーとの機械的混合体にて使用することができる。低結晶度を有するポリマーの量は、熱可塑性材料の全重量に対して重量比にて約70%以下、より好ましくは、重量比にて約20%ないし約60%の範囲にあることが好ましい。
【0052】
好ましくは、低結晶度のポリマーは、3ないし12の炭素原子を有するα−オレフィン、選択的に、ジエンとのエチレンコポリマーであるものとする。好ましくは、α−オレフィンは、プロピレン、1−へキセン及びオクテンから成る群から選ばれるのとする。ジエンコモノマーが存在する場合、該α−オレフィンは、全体として4ないし20の炭素原子を有し且つ、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン又は1,6−オクタジエンのような共役結合し又は非共役結合の線形ジオレフィン及び同様のもの又はそれらの混合体、例えば、1,4−シクロヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンのような単環式又は多環式ジエンから成る群から選ばれるものであることが好ましい。
【0053】
特に好ましいエチレンコポリマーとして、
(i)次の単環式組成、すなわち、35ないし90%モルのエチレン、10ないし65%モルのα−オレフィン、好ましくは、プロピレン、0ないし10%モルのジエン、好ましくは、1,4−ヘキサジエン又は5−エチリデン−2−ノルボルネンを有するコポリマー(EPR及びEPDMゴムはかかるクラスに属する);
(ii)次の単環式組成、すなわち、75ないし97%モル、好ましくは、90ないし95%モルのエチレン、3ないし25%モル、好ましくは、5ないし10%モルのα−オレフィン、0ないし5%モル、好ましくは、0ないし2%モルのジエンを有するコポリマー(例えばダウ・デュポンエラストマー(Dow−DuPont Elastomers)からの製品インゲージ(Engage(登録商標名))のようなエチレン/オクテンコポリマーのような)がある。
【0054】
本発明の方法の1つの代替的な実施の形態に従い、液体は、押出し成形したポリマーをラジカル架橋結合することを目的とする有機系過酸化物(例えば、過酸化ジクミル)である。
【0055】
このようにして、低電圧、中電圧又は高電圧電力を実質的に連続的な要領にて送電し及び(又は)分電する電気ケーブルの被覆層を製造することが望ましいように可能となり、かかる被覆層は、その後のポリマーのラジカル架橋結合のため有機質過酸化物を内蔵する押出し成形したポリマーから成っている。好ましくは、押出し成形ステップの後、架橋結合ステップが提供される場合、架橋結合重合系材料は、ポリオレフィン系、特に、架橋結合ポリエチレン(XLPE)又はエチレン/プロピレンエラストマー的コポリマー(EPR)又はエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)であり、これらも架橋結合されることが好ましい。
【0056】
本発明の方法の1つの好ましい実施の形態に従い、溶融物質の圧力は、約1MPa(約10バール)ないし約140MPa(約1400バール)の範囲にあるものとする。
好ましくは、液体を溶融物質の圧力よりも高い所定の圧力に上昇させる上述したステップa)は、少なくとも1つのポンプ、より好ましくは、例えば、圧力下の複数の貯蔵タンクとそれぞれ流体的に連通し、好ましくは、液体を供給するそれぞれの複数の管を介して例えば、ピストン装置のような複数の圧送装置を備える往復運動型定容量形ポンプにより実行されるものとする。
【0057】
このようにして、ポンプの回転数に及び(又は)圧送装置に入る液体の量を変化させることを許容する加速装置に位置に作用することにより、本発明の方法を多岐に亙る用途にて実行することが望ましいように可能となり、この方法は、ポリマー中に導入すべき液体の性質及び粘度の関数として変更可能である。
【0058】
本発明の方法の1つの好ましい実施の形態に従い、用途の必要条件に依存して液体が異なる時点にて異なる圧送装置により圧送されるような要領にて上述した圧送装置をずらして配置するステップを提供することができる。
【0059】
本発明の方法の1つの好ましい実施の形態に従い、液体を供給する上述したステップb)は、液体を供給する少なくとも1対の管を通して液体を圧力下の複数の貯蔵タンクの貯蔵タンクの各々に供給することにより実行される。換言すれば、供給管は対にてまとめ、各対の供給管がそれぞれの貯蔵タンクと関係付けられるようにすることが好ましい。このため、貯蔵タンクの各々には、相応する対の供給管と流体的に連通した2つの入口と、少なくとも1つの射出装置と流体的に連通した少なくとも1つの出口とが設けられることが好ましい。このような要領にて、ポンプの圧送装置を対にてまとめることが望ましいように可能となり、このことは、液体の圧力が降下したときでさえ、同時に作用する、まとめた圧送装置に属する2つのピストンが貯蔵タンクに供給することを許容する。その結果、その後の射出のため十分な量の液体が常に貯蔵タンク内に存在することになり、このことは、実質的に連続的な吐出及びその後に、液体を溶融物質中へ実質的に連続的に導入することを許容する。
【0060】
好ましくは、液体を溶融物質中に射出する上述したステップc)は、溶融物質に対し約1MPa(約10バール)ないし約140MPa(約1400バール)の範囲の圧力が加わるとき、約3MPa(約30バール)ないし約150MPa(約1500バール)の範囲の射出圧力にて、溶融物質に対し約30MPa(約300バール)ないし約90MPa(約900バール)の範囲の圧力が加わるとき、約40MPa(約400バール)ないし約100MPa(約1000バール)の範囲の射出圧力にて、及び溶融物質に対し約40MPa(約400バール)ないし約65MPa(約650バール)の範囲の圧力が加わるとき、約50MPa(約500バール)ないし約75MPa(約750バール)の範囲の射出圧力にて、実行されるものとする。
【0061】
好ましくは、液体を圧力下の溶融物質中に射出するステップc)は、機械的に駆動されるものとする。
かかる特徴のため、圧力下の所定の貯蔵タンク内の液体の圧力が溶融物質に加わる圧力よりも高く且つ、好ましくは、液体を霧化するのを許容する所定の閾値圧力を超えるとき、液体が圧力下の溶融物質中に導入されるような要領にて、各射出装置の開放が簡単で且つ、コスト効果的な仕方にて望ましいように駆動される。
【0062】
好ましくは、流体を射出するステップc)は、所望の射出圧力に等しい所定の閾値圧力にて較正されたばねによりその開放が駆動される機械型式の複数の射出装置によって実行されるものとする。
【0063】
本発明の方法の1つの代替的な実施の形態に従い、流体を射出する上述したステップc)は、例えば、特に、貯蔵タンクの各々における開放時点及びその持続時間を設定するため、電気式弁を駆動するのに適した電子式制御装置により作動される複数の電気式弁を提供することにより、電気式に駆動されるものとする。
【0064】
好ましくは、本発明の方法は、液体を圧力下の溶融物質と混合させるステップを更に備えるものとする。
好ましくは、液体は、圧力下の重合系溶融物質中に導入され、また、液体を射出するステップは、圧力下の溶融物質が受容される押出し成形機内にて実行されるものとする。本発明の方法のかかる1つの好ましい実施の形態に従い、液体は、重合系物質が溶融状態にある、すなわち、既に可塑化されている押出し成形機の領域内にて押出し成形機内に射出することにより、重合系物質中に導入される。
【0065】
好ましくは、液体の射出は、押出し成形機に沿った重合系物質の経路に対して押出し成形機の端部領域内にて生じるものとする。この解決策は、押出し成形ステップのため、液体が導入される溶融物質と液体とを混合させることと、液体を正確に計量供給し且つ、物質が押出し成形機の端部領域内にて完全に溶融状態にあるため、ポリマー内にて液体の最適な分配を実現することとの双方を許容する。
【0066】
望ましくは、これと同時に、液体を既に可塑化されたポリマー内に添加することは、押出し成形過程の安定性に影響を与えない。これと反対に、すなわち、液体の導入が最初の押出し成形ステップにて実行される場合、ポリマーが未だ溶融していないとき、液体により行なわれる潤滑作用のため、押出し成形機内にて材料の不規則な動きが生じる可能性がある。
【0067】
好ましくは、液体を射出する上述したステップc)は、物質が溶融状態にある押出し成形機内の領域内にて所定の角度だけ斜めにずらした複数の射出箇所にて実行されるものとする。
【0068】
これと代替的に、又は、上述したように射出箇所を斜めにずらすことと組み合わせて、液体を射出する上述したステップc)は、物質が溶融状態にある押出し成形機の領域内にて所定の距離だけ長手方向にずらした複数の射出箇所にて実行される。
【0069】
換言すれば、上記の長手方向にずらした射出箇所は、押出し成形機本体を画成する円筒状面の同一の母線に属し又は押出し成形機本体を画成する円筒状面の異なる母線に属するものとすることができる。
【0070】
このような要領にて、適宜に隔てられた、物質の少なくとも2つの別個の箇所内にて液体を圧力下の溶融物質中に導入し、これにより溶融物質中での液体の分配を促進することが望ましいように可能となる。
【0071】
1つの好ましい実施の形態に従い、本発明の方法は、例えば、圧送装置を損傷させ且つ(又は)液体の循環回路を詰まらせる可能性のある析出物の形成の原因となる、液体中に存在する全ての外部の汚染物質を運び去るべく液体を予備的にろ過するステップを更に備えている。
【0072】
好ましくは、該方法は、液体を所定の温度、好ましくは、約70℃ないし約80℃に保つステップを更に備えるもののとする。
この好ましい温度範囲は、特に、液体が誘電性液体である場合に、適しているが、これにのみ限定されるものではない。通常、事実上、誘電性液体は、鉱物油を備えており、室温にて固体粉体の形態をした酸化防止物質又はその他の添加剤がこの鉱物油に添加される。酸化防止粉体が溶融するのを許容し且つ、その後の望ましくないその析出を回避するため、液体は、予備的に加熱し且つ、その後に、酸化防止粉体の析出温度以上の温度、好ましくは、70ないし80℃の上述した温度範囲内の温度に保つことが好ましい。
【0073】
液体が過酸化物である場合、酸化防止物質を添加することに加えて、又は、室温にて固体状態にある物質の場合、過酸化物自体は室温にて固体である。このため、かかる場合でも、過酸化物及び可能な添加物の双方を液体相に保ち得るよう温度を上昇させることが好ましい。
【0074】
溶融物質中に導入すべき液体の性質に関係なく、液体を加熱するステップは、液体の粘度を低下させ且つ、このため、その流動特性の改良を望ましいように許容する。
本発明は、その第二の面に従い、液体を圧力下の溶融物質中に導入する装置であって、
a)上記液体を溶融物質の圧力よりも高い所定の圧力にする少なくとも1つのポンプと、
b)上述した少なくとも1つのポンプと流体的に連通した複数の液体貯蔵タンクと、
c)液体を上述した所定の圧力に等しい射出圧力にて物質中に射出すべく上述した複数の貯蔵タンクとそれぞれ流体的に連通した複数の射出装置と、を備える上記装置に関するものである。
【0075】
好ましくは、ポンプは、それぞれの複数の供給管を介して上述した複数の貯蔵タンクと流体的に連通した複数の圧送装置を備える往復運動型の定容積形ポンプであるものとする。
【0076】
好ましくは、供給管は、複数の対にて配置され、各対の供給管の各々は、それぞれ1対のポンプの圧送装置と、好ましくは、圧力下の複数のタンクの貯蔵タンクの各々と液体的に連通するものとする。
【0077】
説明の目的のため、ポンプは、6つの圧送装置を備えることができ、これらの圧送装置は、好ましくは、対にて連結された多数の供給管を介して、3つの射出装置とそれぞれ流体的に連通した圧力下の3つの独立的な貯蔵タンクと流体的に連通している。
【0078】
1つの好ましい実施の形態に従い、射出装置の各々は、少なくとも1つの吐出ノズルを備えている。少なくとも1つの射出装置が複数の吐出ノズルを備えるとき、液体を圧力下の溶融物質中に吐出する箇所の数が望ましいように増大する。
【0079】
本発明の装置の1つの好ましい実施の形態に従い、圧力下の複数の貯蔵タンクを提供するため、射出装置は、機械的型式のものであることが望ましい。かかる特徴のため、本発明の装置は、技術的に簡単で且つ経済的に有益な要領にて液体を圧力下の溶融物質中に導入することが可能である。
【0080】
好ましくは、射出装置は、所望の射出圧力に等しい所定の圧力、好ましくは約3MPa(約30バール)ないし約150MPa(約1500バール)の範囲の圧力にて較正されたばねによって駆動されるものとする。
【0081】
かかる特徴のため、液体の圧力が溶融物質に加えられる圧力よりも高い上述した所定の圧力を超えるとき、射出装置は開放して液体を圧力下の溶融物質中に導入する。
本発明の装置の1つの代替的な実施の形態に従い、上述した射出装置は、例えば、電気式弁の形態をした電気式のものである。射出装置が電気式のものであるとき、射出装置は、電子式制御装置により駆動されることが好ましい。
【0082】
好ましくは、上述した複数の射出装置は、物質が溶融状態にあるとき、すなわち、好ましくは、押出し成形機に沿ったポリマーの経路に対して押出し成形機の端部領域内にて既に可塑化されているとき、押出し成形機の領域にて押出し成形機と関係付けられるようにする。
【0083】
好ましくは、本発明の装置は、互いに斜めにずらして配置された複数の射出装置を備えるものとする。かかる要領にて、液体を別個の箇所にて溶融物質中に導入することが可能となる。
【0084】
更により好ましくは、本発明の装置は、互いに120°斜めにずらして配置された3つの射出装置を備えるものとする。
射出装置を斜めにずらして配置することと代替的に又はかかる配置と組み合わせて、射出装置は、押出し成形機の長手方向伸長距離だけ、従って、特に、物質が溶融状態にある押出し成形機の部分の長手方向伸長距離の関数として決定される所定の距離だけ長手方向に隔てることができる。
【0085】
1つの好ましい実施の形態に従い、本発明の装置は、ポンプの上流にて、適宜な加圧装置により、所定の圧力、好ましくは、約0.1MPa(約1バール)ないし0.5MPa(約5バール)に等しい圧力に維持された、ポンプに供給するタンクを備え、本発明の装置のポンプに対し十分に最小の供給圧力を望ましいように保証し得るようにする。
【0086】
本明細書及び特許請求の範囲において、「上流」「下流」という語は、最初に、及びそれぞれ最後に、本発明の装置にて使用される構成要素が通過する、すなわち、溶融物質又は場合に応じて内部に導入すべき液体が通過する本発明の装置の部分を表示するために使用する。
【0087】
好ましくは、本発明の装置は、ポンプを望ましくない閉塞現象から保護し得るよう供給タンクとポンプとの間に配置されフィルタを更に備えており、かかる望ましくない閉塞現象は、液体の不十分な加熱に起因し又は供給タンク内に存在するであろう外部物質に起因して析出する可能性がある液体に添加された粉体によって生じ、また、この要領にて、ポンプの規則的な作動を保証し得るようにする。
【0088】
1つの好ましい実施の形態に従い、本発明の装置は、ポンプに供給するタンクの上流に、予装填タンクを更に備えており、該予装填タンクは、加圧装置が設けられており且つ、ポンプに供給する上述したタンクと流体的に連通している。
【0089】
このような要領にて、ポンプに供給するタンク内への液体の適宜な装填方法により、ポンプに供給するタンクを常に圧力下にて維持し、このため、ポンプの正確な供給を保証することが望ましいように可能となる。好ましくは、かかる液体の装填方法は、液体を予装填タンク内に導入するステップと、かかるタンクを閉じるステップと、該タンクに対し加圧装置によって、例えば約0.2MPa(約2バール)ないし約0.25MPa(約2.5バール)の範囲の所定の圧力を加えるステップと、予装填タンクをポンプに供給するタンクと流体的な連通状態に配置するステップと、予装填タンクの中身をポンプに供給するタンクに移送するステップと、2つのタンク間の流体的な連通状態を遮断するステップと、予装填タンクの圧力を解放するステップと、ポンプに供給するタンクに対し、例えば約0.2MPa(約2バール)ないし約0.25MPa(約2.5バール)の範囲の圧力を加えるステップとを備えるものとする。
【0090】
ポンプの上流にて上述した圧力下の2つのタンクを使用することの1つの代替例として、ポンプに対する液体の連続的で且つ効果的な供給を保証することのできる、前置ポンプをポンプの上流にて使用することができる。望ましいことに、圧力下のタンクの1つの代替例としてポンプの上流に前置ポンプを使用することは、雰囲気圧力にてタンクを使用することを可能にし、従ってかかるタンクはより経済的である。
【0091】
予装填タンクに入る液体又は後者の代替的な実施の形態に従い、前置ポンプに入る液体中に望ましくない外部の汚染物質が存在するのを回避するため、装置は、予装填タンク又はそれぞれ前置ポンプの入口にフィルタを更に備えることが好ましい。
【0092】
1つの好ましい実施の形態に従い、該装置は、少なくとも1つのポンプ、複数の供給管、複数の貯蔵タンク、複数の射出装置及び存在するならば、予装填タンク及びポンプに供給するタンクと熱交換関係にある加熱装置を更に備えている。
【0093】
例えば、ポンプに供給するタンク及び予装填タンクには、その内部に加熱コイルが収容されたそれぞれのジャケットを設けることができる一方、ポンプ、圧送装置、循環管及び射出装置は、恒温状態の環境内に配置することができる。
【0094】
本発明の更なる特徴及び有利な効果は、本発明に従って液体を圧力下の溶融物質中に射出する方法の幾つかの好ましい実施の形態に関する説明から一層良く明らかになるであろうし、この説明は、説明のためであり且つ、非限定的な目的のため、上記方法を実施する装置を示す添付図面に関して説明するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
図1のスキームを参照すると、本発明に従って液体を圧力下の溶融物質内に導入する装置は、全体として参照番号1で示されている。説明の目的のため、以下により詳細に説明するように、押出し成形機2と適宜に関係した装置1は、送電及び(又は)分電用の電気ケーブルの被覆層を形成することを目的とする。
【0096】
図2には、特に中電圧又は高電圧に適した、かかる電気ケーブルが全体として参照番号3で示されている。かかる図面において、ケーブル3は、半径方向最内方位置から半径方向最外方位置迄、導体4と、半径方向内側の半導層5と、絶縁層6と、半径方向外側半導層7と、金属スクリーン8と、外側保護シース9とを備えている。
【0097】
図2に示した導体4は、銅又はアルミニウムで出来たものであることが好ましいコンパクトな金属要素(ロッド)から成っている。これと代替的に、導体4は、従来の技術に従って共に撚った金属又はアルミニウムで出来たものあることが好ましい少なくとも2つの金属線を備えるようにしてもよい。導体4の断面積は、所定の電圧にて送電される電流に従って決定される。好ましくは、低電圧、中電圧又は高電圧の送電及び(又は)分電用のケーブルの場合、かかる面積は、16mmないし1000mmの範囲にあるものとする。
【0098】
絶縁層6、半径方向内側半導層5及び半径方向外側半導層7から選ばれた少なくとも1つの被覆層は、誘電性液体を内蔵する連続相を形成する押し出し成形した熱可塑性ポリマーを備えている。図2に示したケーブル3の実施の形態に従い、かかる3つの層5、6、7の全ては、例えば、ジベンジルトルエンのような、その内部に分散させた誘電性液体を保持する、好ましくは、ポリプロピレンである熱可塑性重合系材料を実質的に備えている。ポリプロピレン及びジベンジルトルエンに加えて、半径方向内側半導層5及び半径方向外側半導層7は、上記層に対し半導性の特徴を付与し得るような量にて、例えば、炭素黒のような導電性フィラーを更に保持している。
【0099】
金属スクリーン8は、半径方向外側半導層7に対して半径方向外方位置に配置された導電性材料から成っており、また、図2に示した実施の形態に従い、管の形態の形状とされたアルミニウム、又はこれと代替的に、銅にて出来たものであるものが好ましい連続的金属シートから成ることが好ましく、該管の周端縁は、ケーブル自体の必要な気密性を保証し得るよう共に溶接し又は接着されるようにする。これと代替的に、金属スクリーンは、外側半導層7に対して半径方向外方の位置にてら旋状に巻かれた複数の金属線又は金属帯から成るものとしてもよい。
【0100】
このように、金属スクリーン8は、例えば、非架橋結合ポリエチレン(PE)のような熱可塑性材料から成るものが好ましい保護シース9によって被覆される。
ケーブル3には、図2に図示しない保護シース9に対して半径方向内方位置に配置された保護構造体を設けることもでき、かかる保護シースは、ケーブル3を衝撃及び(又は)圧縮から機械的に保護するという主たる機能を実行することを目的とする。かかる保護構造体は、例えば、国際出願公開明細書WO98/52197号に記載されている金属外装か又は押出し成形した重合系材料層の何れかとすることができる。
【0101】
液体を圧力下の溶融物質内に射出する装置1に関して完全に説明する目的のため、例えば、図2に示した電気ケーブル3の絶縁層6を形成することを目的とする、ポリプロピレンのような、圧力下の溶融物質内に例えば、ジベンジルトルエンのような誘電性液体を射出することに関してこの装置を説明する。
【0102】
本発明に従い、装置1は、液体を溶融物質の圧力よりも高い所定の圧力にする、概略図で示し且つ参照番号10で表示したポンプを備えている。溶融物質に対し約10MPa(約100バール)ないし約60MPa(約600バール)の範囲の圧力が加わったとき、液体は、約20MPa(約200バール)ないし約70MPa(約700バール)の範囲の圧力となることが好ましい。
【0103】
更に、本発明に従い、装置1は、複数の液体貯蔵タンク12を更に備えており、該貯蔵タンクは、圧力下にあり且つ、ポンプ10と流体的に連通しており、また、上述した所定の圧力に等しい射出圧力、すなわち例えば、約20ないし70MPa(約200ないし700バール)に等しい圧力にて液体を物質中に射出すべく複数の貯蔵タンク12とそれぞれ流体的に連通した複数の射出装置13を更に備えている。
【0104】
液体は、溶融物質に加えられる圧力よりも何れの場合でも高い射出圧力値にて望ましいよう射出することができ、それは、圧力下の液体リザーバを望ましいように構成する圧力下の貯蔵タンク12が設けられるためである。
【0105】
図1に示した好ましい実施の形態に従い、ポンプ10は、往復運動型定容積形ポンプであり、該ポンプは、複数の、図示した実施の形態にて、3対にて配置された6つの圧送装置14を備えており、これらの圧送装置は、3対にて相応するように配置された6つの供給管11を介して3つのそれぞれの射出装置13に接続された3つの貯蔵タンク12と流体的に連通している。圧送装置14の各々は、それ自体既知の要領にて、a)ポンプ10の軸と一体のカムによってその動きが決定される、図示しないピストンと、b)その寸法が適宜に調節可能である、図示しない吸引ポートと、c)所定の寸法の、図示しない吐出ポートとを備えている。
【0106】
ポンプ10は、液体を約20MPa(約200バール)ないし約70MPa(約700バール)の範囲の所定の圧力にて且つ約0.5kg/時ないし約100kg/時の範囲の流量にて圧送することができる。
【0107】
図1の好ましい実施の形態に従い、射出装置13は、機械的型式のものである。射出装置13の各々は、誘電性液体を圧力下の溶融物質内に射出する少なくとも1つの吐出ノズル15を備えている。
【0108】
好ましくは、射出装置13は、それ自体従来型式であり且つ図示せず、かかる所定の圧力を上回ったならば、射出装置13の開放を駆動し得るよう上述した射出圧力に等しい所定の圧力にて較正されたばねによって駆動されるものとする。
【0109】
図1に示すように、図2の電気ケーブル3の絶縁層6を製造するため、重合系物質が溶融状態にある、すなわち既に可塑化されたその領域内にて液体を押出し成形機2内に射出するような要領にて3つの射出装置13が配置されている。かかる目的のため、図1に概略図的に示すように、3つの射出装置13が押出し成形機2に沿って溶融物質の経路に対し押出し成形機2の端部領域内に配置され、好ましくは、互いに120°だけ斜めにずらした位置に配置されている。
【0110】
装置1の図示した好ましい実施の形態に従い、該装置は、ポンプ10の上流に、ポンプ10に供給するタンク16を更に備えており、該タンクは、適宜な加圧装置(例えば、従来の窒素シリンダのような)を使用することにより、例えば、約0.1ないし0.5MPa(約1ないし5バール)の所定の圧力に保たれ、液体を供給する管17を介してポンプ10と流体的に連通している。
【0111】
更に、装置1は、供給タンク16とポンプ10との間に配置されたそれ自体従来型式の図示しないフィルタを更に備えることが好ましい。
装置1は、図1に示した実施の形態において、供給タンク16の上流に、予装填タンク18を更に備えており、該予装填タンクは、遮断弁23が設けられた接続管19を介して供給タンク16と流体的に連通している。
【0112】
外部の汚染物質ような、望ましくない物質が通るのを防止するため、予装填タンク18の入口に、それ自体従来型式の図示しないフィルタが配置されている。
好ましくは、本発明の装置1の上述した構成要素の各々は、それ自体従来型式の図示しない適宜な加熱装置と熱交換関係にあり、該加熱装置は、液体を装置1の回路に沿って加熱し、通常、誘電性液体に添加されて、予装填タンク18、及び(又は)ポンプ10に供給するタンク16及び(又は)ポンプ10及び(又は)供給管11及び(又は)射出装置13を詰まらせる可能性のある、酸化防止剤の望ましくない析出を回避することを目的とする。
【0113】
例えば、ポンプ10に供給するタンク16及び予装填タンク18には、それぞれのジャケットが設けられており、該ジャケット内に図示しない加熱コイルが収容される一方、ポンプ10、圧送装置14、回路管11及び射出装置13は、それ自体従来型式の図示しない恒温型チャンバ内に収納することができる。
【0114】
それ自体従来型式の押出し成形機2は、概略図的に且つ部分断面図にて示され射出装置13の上流にて押出し成形機部分2内に受容された、全体として参照番号30で示した、押出し成形される材料を示し、また、既に誘電性液体が射出された、全体として参照番号40で示した押出し成形した材料を示し、この材料は、射出装置13の下流にて押出し成形機部分内に受容される。
【0115】
特に、押出し成形機2は、実質的に円筒状本体20を備えており、該円筒状本体内にて、適宜なモータ手段21によって図示しないスクリューが回転し、例えば、約10MPa(約100バール)ないし約60MPa(約600バール)の範囲の圧力が加えられる重合系物質を処理し且つ可塑化することを目的とする。
【0116】
押出し成形機2は、重合系材料を押出し成形機2自体内に供給する、図示しないホッパーと、押出し成形ヘッド22とを備えており、該押出し成形ヘッドの生産物にて、図示した実施の形態に従い、電気ケーブル3の絶縁層6が得られる。図示した好ましい実施の形態において、押出し成形ヘッド22には、内側半導層5によって被覆された導体4を受容することを目的とする通路25が設けられる。上記通路25は、押出し成形機2の長手方向に対し実質的に垂直に、すなわち押出し成形機2内の物質の移送方向に対し垂直な方向に配置されている。
【0117】
上述した装置に関して、液体を圧力下の溶融物質内に導入するための本発明に従った方法の第一の実施の形態は、次のステップを含む。
外部の汚染物質が望ましくないように入るのを回避するため、液体は、好ましくは予装填タンク18の入口にて予備的にろ過される一方、例えば、液体に添加された、酸化防止機能を有することが可能な固体添加剤が溶融するのを許容し且つ、その望ましくない析出を回避するため、ポンプ10に供給するタンク16のジャケット及び予装填タンク18のジャケット内に設けられた上述した加熱コイルにより及びポンプ10、圧送装置14、回路管11及び射出装置13を収納する上述した恒温チャンバによって、液体は、例えば、約70℃ないし約80℃の範囲の所定の温度に保たれることが望ましい。
【0118】
本発明の方法のステップの準備として、更に、ポンプ10の入口にて十分に最小の供給圧力を保証することを目的とする、液体を装置1内に装填する次の手順が実行されることが好ましい。液体を予装填タンク18内に導入した後、この予装填タンクは閉じ且つ、例えば、約0.2ないし約0.25MPa(約2ないし約2.5バール)の範囲の所定の圧力を加える。その後、予装填タンク18は、捕捉弁23を開くことにより、ポンプ10に供給するタンク16と流体的に連通させる。予装填タンク18の中身は、ポンプ10に供給するタンク16に移送し、遮断弁23を閉じることにより、2つのタンク18、16の間の流体連通状態を遮断し、予装填タンク18の圧力を解放し、ポンプ10に供給するタンク16に対し、例えば、約0.2ないし約0.25MPa(約2ないし2.5バール)の範囲の圧力を加える。
【0119】
本発明の方法の第一のステップにおいて、液体は、ポンプ10により、特に、その圧送装置14により、例えば、約20MPa(約200バール)ないし約70MPa(約700バール)の範囲の所定の圧力にされる。
【0120】
本発明の方法の第二のステップにおいて、液体は、6つの供給管11を介して圧力下の3つの貯蔵タンク12に供給される。
より具体的には、図1に示した好ましい実施の形態に従い、液体は、1対の供給管11を介して圧力下の各貯蔵タンク12に供給される。貯蔵タンク12に供給された液体はその内部に貯蔵される。
【0121】
ポンプ10により発生された圧力は、圧力下の複数の貯蔵タンク12内に貯蔵されるため、液体の圧力を形成するステップ及び液体を射出するステップは、望ましいように独立的とされる。液体の圧力を形成するステップが液体を射出するステップから独立しているため、ポンプ10の圧送に起因する圧力変動及び射出装置13の開放に起因する振動の双方は、望ましいように減衰され、これにより以下により詳細に説明するように、貯蔵された液体を高圧にて射出することが可能となる。
【0122】
本発明の方法の更なるステップにおいて、液体は、物質の圧力よりも高い射出圧力にて、特に、複数の射出装置13により、また、かかる好ましい値の範囲内の圧力にて較正された上述したばねのため、約20MPa(約200バール)ないし約70MPa(約700バール)の範囲にあることが好ましい射出圧力にて圧力下の溶融物質内に射出される。
【0123】
複数の貯蔵タンク12を設け且つ、それぞれの複数の射出装置13を設けるため、射出装置13は、互いに望ましいように独立的とされ、このことは、複雑で且つ高価な電気式駆動装置を使用することを必要とせずに、上述した高い圧力値を維持しつつ、液体を少なくとも1つの射出装置13に対し実質的に連続的に吐出し且つ、液体を溶融物質内にて実質的に連続的に計量供給することを保証することが可能となる。
【0124】
液体を圧力下の溶融物質内に射出する上述したステップの後、液体は、押出し成形機2のスクリューが存在するため、物質と混合され、その内部に混合した液体を内蔵する物質は、内側半導層5に押出し成形され、導体4及び内側半導層5を備える、このようにして製造されたケーブルは、押出し成形ヘッド22の通路25に沿って予備的に移送される。
【0125】
図示した実施例に従い、このため、本発明の方法は、絶縁層6を実質的に連続的な要領にて電気ケーブル3の半径方向内側半導層5上に形成することを許容する。
その後、本発明の方法を実行して、このようにして得られた電気ケーブル要素3の絶縁層6上に半径方向外側半導層7を形成することもできる。
【0126】
次に、詳細に説明しない従来の工程の過程に従って金属スクリーン8及び外側シース9を提供することにより、図2の電気ケーブル3が完成する。
説明の目的のため、上述した本発明の方法に従い、6%に等しい率にてジベンジルトルエンを内蔵するポリプロピレン(特に、ベーゼル(Besell)S.p.A.が販売するハイファックス(HIFAX)7320XEP)で出来た絶縁性被覆層を実質的に連続的な要領にて製造した。約150mmに等しい断面積を有する銅で出来た導電性要素と、約0.5mmに等しい厚さを有する重合系ポリプロピレン系材料で出来た半径方向内側半導層とを備えるものとなった。
【0127】
上述した絶縁層は、約20MPa(200バール)にて溶融ポリプロピレン物質を受容した成形機内に3つの射出装置により約60g/分の流量及び約30MPa(300バール)の射出圧力にてジベンジルトルエンを射出することにより、約3m/分の速度にて製造した。かかる誘電性液体の流量値及び射出圧力値を得るため、340rpmに設定した6つの圧送装置を有する90ccの往復運動型定容積形ポンプを使用した。
【0128】
絶縁層を形成するため使用した押出し成形機は、45mmのシリンダ直径と、20のL/D比(長さ/直径)を有するものとした。押出し成形機のスクリューの回転数は44.4rpmとした。
【0129】
このようにして得られた絶縁層の厚さは4.5mmであった。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明に従って液体を圧力下の溶融物質中に射出する装置の部分断面図とした斜視図である。
【図2】図1の装置により形成された被覆層が設けられた送電及び(又は)分電用のケーブルの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を圧力下の溶融物質内に導入する方法において、
a)前記液体を前記溶融物質の圧力よりも高い所定の圧力にするステップと、
b)前記液体を複数の貯蔵タンク(12)に供給するステップと、
c)前記複数の貯蔵タンク(12)とそれぞれ流体的に連通した複数の射出装置(13)により前記液体を前記所定の圧力に等しい射出圧力にて前記物質内に射出するステップとを備える、液体を圧力下の溶融物質内に導入する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記液体と前記溶融物質との間の重量比は、1:99ないし25:75の範囲にある、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記液体は誘電性液体である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記溶融物質は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを備える、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記熱可塑性ポリマーは、少なくとも1つのポリオレフィンを備える、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、溶融物質の圧力は、約1MPa(約10バール)ないし約140MPa(約1400バール)である、方法。
【請求項7】
請求項1又は6に記載の方法において、前記液体が上昇され且つ前記液体が射出されるときの前記所定の圧力は、3MPa(30バール)ないし150MPa(1500バール)の範囲にある、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記液体を所定の圧力にする前記ステップ(a)は、少なくとも1つのポンプ(10)によって実行される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記ポンプ(10)は、複数の供給管(11)を介して前記複数の貯蔵タンク(12)とそれぞれ流体的に連通する複数の圧送装置(14)を備える往復運動型定容積形ポンプである、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、液体を供給する前記ステップ(b)は、前記液体を少なくとも1対の液体供給管(11)を介して前記複数の貯蔵タンク(12)の各々の貯蔵タンク(12)に供給することにより実行される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、液体を射出する前記ステップc)は、機械的に駆動される、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、液体を射出する前記ステップc)は、その内部に前記溶融物質が受容される押出し成形機(2)内に実行される、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記液体を前記押出し成形機(2)内の前記溶融物質内と混合させるステップを更に備える、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記押出し成形機(2)は、溶融物質の層を少なくとも1つの導電性要素(4)を備える送電及び(又は)分電用の電気ケーブル要素(3)に押出し成形することを目的とする、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、液体を射出する前記ステップc)は、その内部にて前記物質が溶融状態にある押出し成形機(2)の領域内で所定の角度だけ斜めにずらして配置した複数の射出箇所にて実行される、方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、液体を射出する前記ステップc)は、その内部にて前記物質が溶融状態にある押出し成形機(2)の領域内で所定の距離だけ長手方向にずらして配置した複数の射出箇所にて実行される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記液体をろ過する準備的なステップを更に備える、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記液体を所定の圧力に保つステップを更に備える、方法。
【請求項19】
液体を圧力下の溶融物質内に導入する装置(1)において、
a)前記液体を前記溶融物質の圧力よりも高い所定の圧力にする少なくとも1つのポンプ(10)と、
b)前記少なくとも1つのポンプ(10)と流体的に連通した複数の液体の貯蔵タンク(12)と、
c)前記液体を前記所定の圧力に等しい射出圧力にて前記溶融物質内に射出すべく、前記複数の貯蔵タンク(12)とそれぞれ流体的に連通した複数の射出装置(13)とを備える、液体を圧力下の溶融物質内に導入する装置(1)。
【請求項20】
請求項19に記載の装置(1)において、前記ポンプ(10)は、それぞれの複数の供給管(11)を介して前記複数の貯蔵タンク(12)と流体的に連通する複数の圧送装置(14)を備える往復運動型定容積形ポンプである、装置(1)。
【請求項21】
請求項20に記載の装置(1)において、前記供給管(11)は、複数の対にて配置され、前記対の供給管(11)の各々は、それぞれの対の圧送装置(14)及び前記複数の貯蔵タンク(12)の1つのタンク(12)と流体的に連通する、装置(1)。
【請求項22】
請求項19に記載の装置(1)において、前記射出装置(13)は機械的型式のものである、装置(1)。
【請求項23】
請求項22に記載の装置(1)において、前記射出装置(13)は、前記射出圧力にて較正されたばねによって駆動される、装置(1)。
【請求項24】
請求項19に記載の装置(1)において、前記複数の射出装置(13)は、前記液体を押出し成形機(2)内に射出することを目的とする、装置(1)。
【請求項25】
請求項24に記載の装置(1)において、前記射出装置(13)は、その内部にて前記物質が溶融状態にある押出し成形機(2)の領域内で所定の角度だけ斜めにずらして配置した複数の射出箇所に配置される、装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置(1)において、互いに120°だけ斜めにずらして配置された3つの射出装置(13)を備える、装置(1)。
【請求項27】
請求項24又は25に記載の装置(1)において、前記射出装置(13)は、その内部にて前記物質が溶融状態にある押出し成形機(2)の領域内で所定の距離だけ長手方向にずらして配置した複数の射出箇所に配置される、装置。
【請求項28】
請求項19に記載の装置(1)において、所定の圧力に保たれた、ポンプ(10)に供給するタンク(16)を更に備える、装置(1)。
【請求項29】
請求項28に記載の装置(1)において、供給タンク(16)の前記所定の圧力は、0.1MPa(1バール)ないし0.5MPa(5バール)の範囲にある、装置(1)。
【請求項30】
請求項28に記載の装置(1)において、前記供給タンク(16)と前記ポンプ(10)との間に配置されたフィルタを更に備える、装置(1)。
【請求項31】
請求項28に記載の装置(1)において、ポンプ(10)に供給すべく前記タンク(16)と流体的に連通した予装填タンク(18)を更に備える、装置(1)。
【請求項32】
請求項31に記載の装置(1)において、前記予装填タンク(18)の入口にフィルタを更に備える、装置(1)。
【請求項33】
請求項19に記載の装置(1)において、前記少なくとも1つのポンプ(10)、前記複数の貯蔵タンク(12)及び前記複数の射出装置(13)と熱交換関係にある加熱装置を更に備える、装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−528302(P2007−528302A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510125(P2005−510125)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/IT2003/000704
【国際公開番号】WO2005/042226
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506006153)プリスミアン・カビ・エ・システミ・エネルジア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (10)
【Fターム(参考)】