説明

液体中の細菌の検出

飲料水、液体状の食物、飲み物、また、尿、脊髄液、羊水のような生物学的な液体のような、溶液、乳剤、懸濁液の形態をとる、水を含む液体中の細菌を光の散乱を測定して検出する方法。細菌を含むと思われる液体はまず予想の細菌より寸法の大きい粒子を除去するため濾過される。他の濾過方法は検査液の異なる構成物を除去するため追加して使用される。イオン交換クロマトグラフィーはそのような方法である。細菌による汚染の確認とそのレベルの算出は測定された散乱分布と予め格納された較正散乱分布とを合致させることでおこなわれる。光散乱測定に適したキュベットユニットを含む、測定を実行するシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に体液の分析に関する。本発明は特に細菌の存在に関する尿の光学的検査、光散乱測定および濾過に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液、乳剤、懸濁液のような水を含む液体は生物学的状況においてごく普通である。これらの水を含む液体は、人や動物が消費するため携行できる水、液状の食品、飲み物、尿、羊水、脊髄液を含む。このような液体は細菌の存在を時々検査される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
尿道感染をスクリーニングする検査ストリップは市販されている。このようなストリップは二つの異なるパッドに埋め込まれた特定の試薬を含む。一つのパッドはサンプルに白血球エステラーゼの存在を検査する試薬を含む。もう一つのパッドは亜硝酸菌の存在を検査するため、亜硝酸塩の分析をする試薬を含む。細菌感染の検出は、着色したパッドを目盛りつきカラーチャートの色の等級と比較して実施される。欧州公開特許公報番号0320154は、同様なアプローチに基づく尿のスクリーニング方法を開示している。この方法は特定の試薬と混合した尿サンプルの一部の上で、少なくとも二つの分割した分析の実行を含む。一つの分析は白血球の存在を検出し、もう一つは亜硝酸塩のような細菌に生成される化合物の存在を検出する。しかし上記の方法は、含まれる特定の試薬により検出できるものを生成しない細菌は検出できない。これらの方法はテストサンプルの比較的高濃度の細菌濃度に基づいており、そのためこのようなスクリーニングプロセスは感度が不十分の傾向があり、比較的特異度が低い傾向にある。さらにこれらのスクリーニング方法は患者のうちの特定の人に限られる;例えば子供や妊婦には適用すべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、サンプル液体を濾過して細菌より大きな粒子を除去し、前記サンプル液体を平行光線で照明し、前記サンプル液体による散乱光の強度を少なくとも1点で測定し、前記散乱光をキャリブレーションスケールと比較するステップを含む液体中の細菌を検出する方法である。
【0005】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、前記液体の第二サンプルを濾過して前記細菌より小さい予め定められた限界より大きい粒子を除去し、前記第二サンプル液体を平行光線で照明し、前記第二サンプル液体による散乱光の強度を少なくとも1点で測定し、前記散乱光をキャリブレーションスケールと比較することを更に含む方法である。
【0006】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、散乱分布を前記測定強度と関連づける方法である。
【0007】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、前記関連づけられた散乱分布を、予め格納された較正散乱分布および予め格納された較正散乱分布の一次結合からなる項目の表から選択された項目と合致させることを更に含む方法である。
【0008】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、前記平行光線を偏光させることを含む方法である。
【0009】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、前記測定が少なくとも1つの波長に関しておこなわれる方法である。
【0010】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、前記照明が少なくとも1つのレーザーダイオードでおこなわれる方法である。
【0011】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、前記濾過の前に、化学的および生物化学的試薬を含む試薬群から選択された少なくとも1つの試薬を、前記サンプル液体に更に加えることを含む方法である。
【0012】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、酸性化、アルカリ性化、クロマトグラフィーによる分離、それらの組み合わせを含む反応の群から選択された反応により、前記サンプル液体を反応させることを更に含む方法である。
【0013】
本発明の液体中の細菌を検出する方法は、70℃までの加熱、2℃までの冷却を含む手段の群から選択された手段により、前記サンプル液体の物理状態を変化させることを更に含む方法である。
【0014】
本発明のキュベットユニットは、少なくとも1つのキュベットは、少なくとも規定の波長範囲の光に透明な少なくとも1つの窓を含み、前記窓の表面粗さ値の二乗平均平方根は1ナノメーターを超えず、前記窓内の屈折率ばらつきは0.0001を超えないキュベットユニット(CU)である。
【0015】
本発明のキュベットユニットは、少なくとも1つのキュベットは、少なくとも規定の波長範囲の光に透明な少なくとも1つの窓を含み、前記窓の幅は500μmを超えないキュベットユニット(CU)である。
【0016】
本発明のキュベットユニットは、遮光手段が少なくとも1つの窓に配置されているCUである。
【0017】
本発明のキュベットユニットは、少なくとも1つの前記キュベットに絞りの開口部が配置されているCUである。
【発明の効果】
【0018】
臨床細菌学実験室では、分析サンプルの大部分が尿サンプルである。尿サンプルの通常の分析は顕微鏡観察と培養を含み、熟練したオペレーターを必要とし、時間と資源を消費する。そのため高価で時間のかかる分析方法のかなりの部分を除くことができる、安価で速いスクリーニング方法は有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の詳細な記載)
本発明のシステムは、水、溶液、ゲル、乳剤、懸濁液、液状の食品、飲み物、尿、脊髄液、羊水、血清のような水を含む液体中の細菌を検出する方法を提供する。本発明によるシステムの実施態様の記述において、本発明による細菌の検出システムの概略を示す図1を最初に参照する。システムは、検査液体のサンプルを光学的に検査する光学ユニット2からなる。光学ユニットにリンクしたプロセッサー4は測定と計算を実行し、光学ユニット2を作動させる。ユーザーインターフェースユニットは、図示しないが、プロセッサー4にリンクし、通常、測定結果とオペレーターへの指示を表示するディスプレイとデータを入力するキーボードからなる。パワーサプライは、図示しないが、光学ユニットとオペレーターインターフェースユニット、プロセッサーに電力を供給する。
【0020】
(光学ユニット)
光学ユニット2は、光ビームを生成する光源5を含む。光ビームはコリメータ6により平行にされる。単レンズまたは組み合わせレンズからなる集光レンズ7は、検査する液体サンプルからの光を受光ユニット8に集光する。取り付け可能な、液体のサンプルを保持したキュベットユニット(CU)9が、コリメータ6と集光レンズ7の間に置かれる。CUのいくつかの別の構造的な特徴を以下に述べる。一般的にキュベットという言葉は、以後、液体サンプルを保持でき、光学ユニット内に取り付けられる透明な容器を意味する。
【0021】
光線10は光源5から放射された照明ビームをあらわす。光ビームは、単レンズまたは組み合わせレンズ12からなるコリメータ6と開口部14を含む絞りにより平行にされる。光線16であらわされる平行にされた光のビームは窓18とキュベット内の液体を通り抜ける。遮光手段19は、直接の照明光が受光ユニット8を貫通することを防ぐ。液体中の散乱光は、窓18Aの遮光されていない部分を通してキュベット9から出現する光線20であらわされる。散乱光は、更に、単レンズまたは組み合わせレンズからなる集光レンズ7により、受光ユニット8内に取り付けられた検出器22の面に焦点を結ぶ。コリメート手段は図示しないが、コリメートCU9、遮光手段19、絞り14内の開口部を提供する。受光ユニット8は、検出器22と結合し、信号増幅、サンプリング、デジタル化、中間データ格納、タイミングを供給する電子回路24を含む。受光ユニット8により集められた光の測定強度に関連するデータは、以下に述べる後処理のため、更にプロセッサー4に伝達される。
【0022】
システムに適した光源は次のものである:白熱電球、ガス放電灯、スパーク/アークランプ;固体デバイス、LED、レーザー、近赤外線から軟紫外線の範囲で動作するレーザー光源。システムの感度に規定された最小必要条件を超える照明パワーを放出できる光源が望ましい。特定の波長バンドだけを通す遮断フィルタをコリメータレンズ7の隣に配置してもよく、偏光デバイスも使用される。本発明の検出器は、通常、光源の波長、波長のバンド、波長の範囲で機能する、モノリシック単検出器、複数の検出器、モノリシック検出器配列である。面全体で散乱光の強度測定のできる、複数の検出器、モノリシック検出器配列が望ましい。
【0023】
本発明の好適な実施態様によるキュベットの概略を示す図2を参照する。キュベット40は、キュベットの両側に配置された透明な窓42、42Aをもつ。絞り46の開口部はキュベット内の窓42の近くに配置される。遮光手段48は窓42Aに絞り46と同軸に配置される。平行にされた光のビームは光線50であらわされる。窓42を通過後、軌道に沿って散乱した光線52は絞り46に遮られる。
【0024】
本発明の好適な実施態様によるシステムの光学ユニットの概略を示す図3を参照する。ビームスプリットデバイス60は、コリメータレンズ62とキュベット66の窓64の間に置かれる。二本の平行にされたビームがビームスプリットデバイス60から放射される。第一ビームはキュベット66に向かう。第一ビームに垂直な第二ビームはレフレクタ72で反射され、第一ビームと平行にキュベット66Aに向かう。各キュベット66、66Aからの光はデュアルレシーバーユニット74の各パートに焦点を結ぶ。
【0025】
本発明の他の実施態様による液体中の細菌の検出システムは2個のレーザーダイオードのような2つの光源を用いる。このシステムでは上記のビームスプリッタ、レフレクタは不要である。レーザーダイオードの波長は互いに異なるかもしれない。本発明の好適な実施態様では図3に示す遮光手段78を用いてもよく、それによって蛍光測定の感度を増すことができる。
【0026】
(キュベットユニット)
本発明の好適な実施態様によるキュベットユニット(CU)の等角図と分解図をそれぞれ示す図4A、図4Bを参照する。CU80は、光源に面するCUの側面に配置された窓82と、反対側の側面に配置された平行窓82AをもつCUハウジング内に配置された1個のキュベットからなる。入口孔86をもつ濾過手段84を、CUカバー89に取り付けられたCUの入口孔88に結合してもよい。規定の大きさ以上の粒子を除去するカットオフフィルタは、図示しないが、濾過デバイス84内に取り付けられる。
【0027】
通常CUとフィルタデバイスは、使い捨てボトルや容器に普通に用いられる、プラスチック樹脂のような材料で作られる。好ましくはキュベットは分析にかけられる特定の液体と両立可能な、つまり液体がキュベットの材料構成を変化させず、逆にキュベットが検査する液体を変化させる影響を与えないような、材料で作られる。例えば窓は通常光学レンズの製造に用いられるプラスチック、ガラス、石英で作られる。窓の屈折率の一様性、すなわち窓内での屈折率のばらつきは0.0001を超えない。窓の表面粗さの二乗平均平方根値は1ナノメーターを超えない。スクラッチ/ディグ数が40/20かそれ以下で規定される光学的品質をもつ表面の窓が好ましい。本発明によると、幅が0.5mmを超えないプラスチック、ガラス製の窓は実現可能な例である。窓のバルクの光学的均一性や表面の粗さは、散乱光の測定強度のSN比に、したがってシステムの感度に影響する。
【0028】
本発明の別の実施態様によるデュアルキュベット構成をもつCUの、2つの断面をそれぞれ示す図4C〜4Dを参照する。このCUは尿のような液体の検査に特に適している。各キュベット内の各サンプルに2つの異なる前処理をおこなうことにより、以下に詳しく述べるように、一方は他方に対して参照サンプルとなる。CU90は、側壁の1つに沿って相互に接着された一対のキュベット92、92Aからなる。CU90は、開口93からなる共通の入口と、サンプルを受け取るため両キュベットの上に位置するスペース94とをもつ。フィルタ95、95Aは異なるカットオフ閾値をもってもよく、各キュベットの入口に配置される。図4DにこのCUの断面図が、図4Cに指示されたように示される。フィルタ95は入口96に配置される。絞り98の開口部は窓97の近くに配置され、反対側の窓97Aの内面に配置された遮光手段99と同軸である。キュベット92Aも同様に、窓、フィルタ、絞りの開口部、遮光手段をそれぞれ備える。
【0029】
(検査)
一般的に検査は次の3つの主ステップを含む:(1)前処理ステップ;(2)測定ステップ;(3)後処理ステップ。
【0030】
(1)前処理
尿は通常、液の屈折率と異なる屈折率をもつ塩の結晶、生物学的高分子、細胞のような微小粒子を含んでいる。このためこのような粒子は細菌に付随する散乱の読みとりを妨害するおそれがある。他の生物学的液体は多くの妨害するような構成物を含みがちである。本発明によれば、前処理ステップはサンプルから望ましくない構成物、通常、しかし常にではない、細菌より大きい寸法の粒子を除くのが目的である。前処理プロセスのステップは次を含む:単純な大きさによる除去、イオン交換クロマトグラフィー;酸性化、アルカリ性化、加熱;冷却による化学的沈殿;これらの組み合わせ。
【0031】
再び図4Cを参照する。フィルタ95、95Aはそれぞれキュベット92、92Aの入口に配置される。各々のカットオフリミットは、カットオフリミットより小径の粒子を通過させる。例えば、約5μmの大きさの細菌のいる尿のスクリーニングにおいて、本発明の好適な実施態様によると、フィルタ95は5μm以下の粒子を通過させ、フィルタ95Aは1μm以下の粒子を通過させる。尿サンプルは加圧され、開口部93を通ってキュベット92、92Aに入る。加圧はシリンジのようなインジェクタでおこなわれる。加圧された尿はスペース94から両キュベットへ、対応するフィルタを通って入る。その結果、キュベット92は尿と、濃度レベルが原細菌濃度レベルとほぼ同じ細菌を保持する。一方キュベット92Aは、カットオフフィルタが小さいのでほとんど細菌を含まないで、主に他のキュベットにも在る結晶のような他の散乱粒子を含む。
【0032】
検査する液体と潜在的に反応させるため、試薬を、CUに入れる前に、またはCU内に加えることもできる。このような試薬は、細菌または液体中の他の構成物との化学的ないし生化学的反応に潜在的に影響を与える、化学的ないし生化学的反応体からなる。このような反応の生成物は、細菌と他の粒子状物質の区別を可能にする、特定の光学的特徴をもつ。あるいはこのような試薬は生物学的化合物や有機細胞のような他の粒子と、粒子の集合および沈殿のため、化学的ないしは生化学的に作用可能である。
【0033】
(2)測定
引き続いて分析すべき液体を保持したCUは光学ユニットに取り付けられる。通常、測定は光源と受光ユニットのスイッチをONすることで始まる。次に光の強度が検出器平面内の異なる点で測定される。異なる後処理技法に対応したいくつかの測定手順がふさわしい。例えば、液体中の粒子で散乱した光の角度パワー密度が、照明ビームの波長や偏光角と無関係に、または関数として測定される。細菌を含む液体サンプルと含まない液体サンプルの散乱分布は、特定の角度において実質的に異なる。この差は照明光の波長が赤外線に近い領域に近づくか、またはその領域に入るかすると強調される。同様に細菌により生じるように、異なる偏光は異なる散乱パターンをもたらす。
【0034】
(3)後処理
散乱は方位角と仰角の値で定義される。測定された散乱分布関数は基本的には、検出器の平面に衝突する光の強度が、対応するピクセルの信号レベルによりあらわされる三次元関数である。散乱分布は、特定の方位角の選択または平均化により得られる。与えられた方位角に沿う散乱分布は、検出器の平面を横切る対応する方向に沿って測定された散乱光の角度分布に似ている。平均化された散乱分布は、方位角の特定の範囲全体の、測定された角度分布関数を平均化することにより得られる。
【0035】
一般に、本発明の後処理ステップでは、キャリブレーションスケールと測定値、または測定値から導かれた値との比較がされる。これはいくつかの方法のうちの一つでなされる。本発明による後処理プロセス技法の一例を以下説明する。この技法は、照明光の波長と偏光に依存しない散乱の測定に適切である。粗いフィルタで濾過されたため細菌を含むと考えられる尿の予備サンプルの角度強度分布は、細かいフィルタで濾過された同じ尿の第二サンプルの分布と比較される。第二測定分布はカーブフィッティング法により、予め格納された無菌の尿サンプルの角度強度分布のレベルと同一となるように、較正ないし正規化される。次に第一サンプルの現測定分布が、同じ正規化ファクターを用いて正規化される。正規化された第一分布は、規定の細菌を規定の濃度含んだ尿の、予め格納された一連の散乱分布と比較される。予め格納された、汚染された尿と汚染されていない尿とに対応する分布間に通常存在する差の傾向が、サンプルの測定分布との間の差と一致するとき、尿は細菌で汚染されていると定義される。汚染のレベルは、カーブフィッティングにより最も測定分布によく合う、予め格納された分布の規定の細菌濃度として計算される。
【0036】
尿のような液体中の細菌を検出するための、参照散乱分布のセットは、本発明の好適な実施態様により、次のように準備される。細菌のいない種々の尿が収集される。これらの各サンプルは、規定の細菌をそれぞれ規定の濃度で添加するいくつかの別個のサブサンプルに分割される。各尿サンプルについて角度散乱分布が測定され記録される。記録された角度分布関数は、細菌の汚染レベルによりグループ分けされる。標準角度散乱分布の参照セットは、各較正済み細菌濃度レベルに対応したアンサンブル平均を取ることで実現される。較正済み散乱分布はこれらの標準角度散乱分布関数から上記の通り導かれる。細菌の濃度レベルは、ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)、(CFU/ml)で測定される。1個の細菌は以後CFUと称する。
【0037】
細菌の検出は、本発明の実施態様により、細菌を添加された尿の較正済み散乱分布の一次結合と、感染していない較正済み散乱分布を、測定された散乱分布と比較することで成し遂げられる。較正済み散乱分布の一次結合は、式:S(x)=A(x)+B(x)で与えられる。ここで
xは散乱角;
(x)は、xの関数としての一次結合のi次の結果;
(x)は、xの関数としての汚染されていない較正済み散乱分布;
(x)は、細菌または細菌の規定の混合物により汚染されたxの関数としての較正済み散乱分布のi次の較正済み散乱分布、インデックスiは規定の細菌濃度。
【0038】
、Bはパラメーターで、その値はi次の一次結合の測定分布へのカーブフィッティングで決定される。カーブフィッティングは、各値xでの測定分布とi次の一次結合分布との間の差の二乗の和を、パラメーターA、Bを変化させて最小とすることで実現される。j次の一次結合がベストフィットが得られるとして選択される。このサンプルから導かれた細菌汚染のレベルは、j次の較正済み散乱分布と同一である。
【0039】
測定手順と後処理技法が、以下、実施例で更に述べられる。
【0040】
(実施例1)
角度散乱分布の模擬的な分析をおこなった。細菌と同じ誘電率で直径2〜4μmの球を含む尿の合成モデルがつくられた。塩の粒子は半径1μm以下で同じ誘電率の球であらわされる。計算は散乱のミー理論に基づく[H.C. van de Hulst. "Light scattering by small particles",
John Wiley & Sons publishing, NY, 1957]。上述の2種の粒子を含む懸濁液の、計算された角度散乱分布関数のプロットを示す図5を参照する。曲線101は細菌をあらわす粒子の懸濁液による散乱光の強度をあらわす。曲線102は尿中の結晶塩粒子をあらわす小粒子による散乱光の強度に対応する。強度は対数目盛で示され、極座標対散乱角であらわされる。大きい粒子は主に小角度散乱であるのに対し、小さい粒子からの散乱は比較的広い角度の分布をもち、0°を中心とするかなりの散乱角度範囲で強度は僅かに変化する。
【0041】
(実施例2)
光源が規定の波長と強度のレーザーダイオードで、1つのキュベットをもつCUのシステムを用いて以下の測定をおこなった。細菌を含む尿の精巧なモデルが用意され、図1を再び参照して、システムの寸法配置は以下を用いた:
1)細菌の寸法は文献により定義する。
2)細菌は液体サンプルの照明された体積部分にランダムに分散している。
3)モデルの光源は、実際の測定に使用されるシステムの光源と同じ特性のレーザーダイオードである。
4)各単一の細菌による散乱光の角度強度は上記のミー散乱モデルにより計算される。
5)散乱光は、実際の測定に使用される光学ユニットのモデルを用いて光学的に追跡される。
6)散乱光のパワー密度は検出器の平面で計算される。
【0042】
2つの典型的な尿のサンプルの、散乱光の強度対散乱角度のプロットを示す図6Aを参照する。曲線110は光反射鏡を考慮したキュベットの総合透過率を示す。曲線114は、大腸菌に10CFU/mlの濃度で汚染された典型的な尿サンプルの、測定された散乱分布を示す。曲線116は同じ尿サンプルの、全強度が測定分布で正規化された、計算による分布を示す。
【0043】
細菌を添加した尿を用いた、散乱強度の測定と計算の角度分布の比較が対応して示された図6Bを参照する。測定は、上記の実施例1で説明したのと同じ光学ユニットと単一キュベットのCUの構成を用いて実施した。シミュレートされた散乱強度は、精巧なモデルと一致する、2〜4μmの間に統計的に分布した細菌について計算された。モデルの塩粒子は0〜1.5μmの間に、測定値と合致して統計的に分布する。曲線118と119は、細菌をもつ尿を用いた散乱角度の関数として、それぞれシミュレートと測定の信号強度をあらわす。曲線120と121は細菌を含まない尿のシミュレートと測定の散乱分布をそれぞれ示す。
【0044】
(実施例3)
光散乱測定が上記の実施例2と同じ光学ユニットとCUを用い、異なる細菌濃度レベルの細菌を添加した、いくつかの尿サンプルについておこなわれた。細菌濃度は従来技術により培養を用いて別々に較正された。細菌濃度レベルがそれぞれ10、10、10、10CFU/mlの、汚染された尿の典型的な角度散乱分布関数が示された図7A〜7Dを参照する。散乱分布は、広い方位角範囲について平均化することにより、これらの典型的な分布関数から導かれた。図8に、図7A〜7Dの測定された角度分布関数に対応する散乱分布を比較するグラフが示される。プロット123、124、125、126は、それぞれ図7A〜7Dと同じ細菌濃度レベルの、汚染された尿の散乱分布をあらわす。
【0045】
大腸菌で汚染されたことの知られた典型的な尿サンプルが、上述と同じ光学測定デバイスと単一キュベットのCUの構成を用いて、細菌が存在するかどうか検査された。散乱分布が測定され、上述の本発明の好適な実施態様による細菌の検出が上述のようにおこなわれた。この尿サンプルの、1セットの較正された分布の2つの較正された散乱分布と、測定および適合させた散乱分布が対応して示された図9を参照する。曲線130は汚染されていない尿の較正された散乱分布をあらわす。曲線132は規定の細菌濃度レベルの汚染された尿の較正された散乱分布をあらわす(塩の粒子は存在しない)。曲線134は検査サンプルに適合する散乱分布をあらわす。曲線136は検査したサンプルの測定された散乱分布をあらわす。散乱角度の広い範囲で、かなり高いレベルで合致が見られる。この検査サンプルで検出された細菌の濃度レベルは参照レベルから数%逸脱する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による、液体中の細菌を検出するシステムの概略説明図。
【図2】本発明の好適な実施態様によるキュベットの概略断面図。
【図3】本発明の好適な実施態様による、液体中の細菌を検出するシステムの光学ユニットの概略断面図。
【図4A】本発明の好適な実施態様によるキュベットユニットの等角図。
【図4B】図4Aに示されたキュベットユニットの分解図。
【図4C】本発明の他の好適な実施態様によるキュベットユニットの断面図。
【図4D】図4Cに示されたキュベットユニットの分解図。
【図5】異なる大きさの2個の粒子による散乱光の、シミュレートされた角度強度分布の極座標プロット。
【図6A】細菌を添加した典型的な尿の、シミュレーションと測定の散乱分布を比較したグラフ。
【図6B】図6Aの散乱分布に対する、細菌と塩粒子の効果のシミュレーションと測定の比較のグラフ。
【図7A】測定値が10CFU/mlの細菌を含む典型的な尿サンプルについて測定された角度散乱分布。
【図7B】10CFU/mlを含む典型的な尿サンプルについて測定された角度散乱分布。
【図7C】10CFU/mlを含む典型的な尿サンプルについて測定された角度散乱分布。
【図7D】10CFU/mlを含む典型的な尿サンプルについて測定された角度散乱分布。
【図8】図7A〜図7Dに示された各々の尿サンプルの、測定散乱分布と計算による適合散乱分布を比較したグラフ。
【図9】細菌を含む典型的な尿サンプルの、測定および適合させた散乱分布を比較したグラフ。
【符号の説明】
【0047】
2 光学ユニット
4 プロセッサー
5 光源
6 コリメータ
7 集光レンズ
8 受光ユニット
9 キュベットユニット
10 光線
12 レンズ
14 開口部
16 光線
18 窓
18A 窓
19 遮光手段
20 光線
22 検出器
24 電子回路
40 キュベット
42 窓
42A 窓
46 絞り
48 遮光手段
50 光線
52 光線
60 ビームスプリットデバイス
62 コリメータレンズ
64 窓
66 キュベット
66A キュベット
72 レフレクタ
74 デュアルレシーバーユニット
78 遮光手段
80 CU
82 窓
82A 平行窓
84 濾過手段
86 入口孔
88 入口孔
89 CUカバー
90 CU
92 キュベット
92A キュベット
93 開口
94 スペース
95 フィルタ
95A フィルタ
96 入口
97 窓
97A 窓
98 絞り
99 遮光手段
101 曲線
102 曲線
110 曲線
114 曲線
116 曲線
118 曲線
119 曲線
120 曲線
121 曲線
123 プロット
124 プロット
125 プロット
126 プロット
130 曲線
132 曲線
134 曲線
136 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液体を濾過して細菌より大きな粒子を除去し、
前記サンプル液体を平行光線で照明し、
前記サンプル液体による散乱光の強度を少なくとも1点で測定し、
前記散乱光をキャリブレーションスケールと比較するステップを含む液体中の細菌を検出する方法。
【請求項2】
前記液体の第二サンプルを濾過して前記細菌より小さい予め定められた限界より大きい粒子を除去し、
前記第二サンプル液体を平行光線で照明し、
前記第二サンプル液体による散乱光の強度を少なくとも1点で測定し、
前記散乱光をキャリブレーションスケールと比較することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
散乱分布を前記測定強度と関連づける、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記関連づけられた散乱分布を、予め格納された較正散乱分布および予め格納された較正散乱分布の一次結合からなる項目の表から選択された項目と合致させることを更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記平行光線を偏光させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定が少なくとも1つの波長に関しておこなわれる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記照明が少なくとも1つのレーザーダイオードでおこなわれる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記濾過の前に、化学的および生物化学的試薬を含む試薬群から選択された少なくとも1つの試薬を、前記サンプル液体に更に加えることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸性化、アルカリ性化、クロマトグラフィーによる分離、それらの組み合わせを含む反応の群から選択された反応により、前記サンプル液体を反応させることを更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
70℃までの加熱、2℃までの冷却を含む手段の群から選択された手段により、前記サンプル液体の物理状態を変化させることを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのキュベットは、少なくとも規定の波長範囲の光に透明な少なくとも1つの窓を含み、前記窓の表面粗さ値の二乗平均平方根は1ナノメーターを超えず、前記窓内の屈折率ばらつきは0.0001を超えないキュベットユニット(CU)。
【請求項12】
少なくとも1つのキュベットは、少なくとも規定の波長範囲の光に透明な少なくとも1つの窓を含み、前記窓の幅は500μmを超えないキュベットユニット(CU)。
【請求項13】
遮光手段が少なくとも1つの窓に配置されている請求項11又は12のいずれかに記載のCU。
【請求項14】
少なくとも1つの前記キュベットに絞りの開口部が配置されている請求項11又は12のいずれかに記載のCU。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−510161(P2008−510161A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526700(P2007−526700)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000884
【国際公開番号】WO2006/018839
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507048857)
【Fターム(参考)】