説明

液体処理装置および液体供給方法

【課題】流路構造体を有する液体処理装置において、流路構造体の内部への液体の導入時に、液体の内部に気泡が発生することを防止する。
【解決手段】液体処理装置1は、導入口から排出口に至る微細流路が形成されたマイクロリアクタ2、マイクロリアクタ2の導入口および排出口にそれぞれ接続される供給管31および排出管41、薬液を供給管31を介してマイクロリアクタ2へと供給する送液ポンプ32、並びに、排出管41に接続される減圧ポンプ43を備える。マイクロリアクタ2の内部への薬液の導入時には、制御部12が送液ポンプ32および/または減圧ポンプ43を駆動制御して、供給管31内の薬液の第1圧力と排出口におけるガスの第2圧力との差が薬液の内部にて気泡が発生しない圧力差以下に維持される。これにより、液体処理装置1では薬液の内部における気泡の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造体に所定の液体を流して前記液体に処理を行う液体処理装置、および、液体処理装置において流路構造体の内部へと液体を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学合成反応や生化学反応等の分野において、微量の試料流体に処理を行う(例えば、熱を付与したり、光を照射して反応させる)ための微小容器として、微細流路が設けられた流路構造体であるマイクロリアクタが利用されている。マイクロリアクタでは、一定条件下にてマイクロリットルオーダの微量の原料に処理を行うことが容易に実現され、また、不純物の混入が抑制されるとともに安全性も確保されることが知られている。なお、一般的なマイクロリアクタは、主面に微細な溝が形成された基板に他の部材を重ね合わせることにより形成される。
【0003】
ところで、マイクロリアクタでは、処理対象の薬液に溶解していた空気が析出し、流路の壁面に気泡として付着して滞留することにより、マイクロリアクタ内に薬液を安定して供給することができず、薬液の反応がばらついてしまうことがある。通常、マイクロリアクタの微細流路では薬液の流速は遅くされるとともに、流路に垂直な断面において壁面に付着した気泡が占める面積に比べて気泡の壁面との接触面積は大きいため、気泡を壁面から剥離して押し流すことは容易ではない。そこで、特許文献1では、マイクロリアクタ内に微細流路から分岐するとともに、水不透過性かつ気体透過性を有する脱気隔壁が分岐点にて設けられる分岐路を形成し、分岐路内を減圧することにより微細流路内の液体を脱気する技術が開示されている。
【0004】
なお、特許文献2では、マイクロリアクタにおいて、複数の供給部からそれぞれ供給される複数の流体を、別途設けられる吸引部からの吸引により共通の共通部へと流入させる技術が開示されており、特許文献3では、高濃度オゾン水製造装置において、マイクロリアクタ内のオゾンガスの圧力を調整することにより、高濃度のオゾン水を製造する技術が開示されている。また、特許文献4では、マイクロリアクタの内部において第2の流路から分岐する第3の流路を介して第1の流路へと液体を送出する際に、第2の流路と第1の流路との気圧の差を所定の圧力範囲に維持しつつ、第2流路において空気にて押し出すようにして液体を送出することにより、第3の流路の入口へと空気の相が到達したときに、液体の第1の流路への流入を停止しつつ第2の流路内の空気が第1の流路へと混入することを防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−18271号公報
【特許文献2】特開2002−236131号公報
【特許文献3】特開2003−210956号公報
【特許文献4】特開2005−17057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マイクロリアクタ内において、薬液の流路の壁面の状態が粗い場合や、流路が分岐している場合等に、ポンプにて押し込むようにして薬液をマイクロリアクタの内部に導入するときには、薬液の流れが乱れて薬液の先端部の界面近傍におけるガス(例えば、空気)が薬液に取り込まれてしまう。すなわち、薬液に溶解していた空気が気泡として発生する以外にも、ガスが薬液内に気泡として取り込まれて気泡が微細流路内にて滞留してしまうことがあり、この場合も同様に、マイクロリアクタ内に薬液を安定して供給して処理を行うことが困難となる。ガスが気泡として取り込まれることを抑制するために、薬液を低速にてマイクロリアクタ内に導入することも考えられるが、薬液のマイクロリアクタ内への導入に長時間を要してしまう。また、特許文献1の手法を用いる場合であっても、マイクロリアクタ内への薬液の導入時に上記のようにガスが薬液に気泡として取り込まれることを防止することはできない。さらに、マイクロリアクタの微細流路に光を照射して薬液に処理を行う場合等、マイクロリアクタおよびその周囲の構造が複雑となる場合には、特許文献1の手法を採用することが困難となる。したがって、マイクロリアクタ内に薬液を適切に供給することが可能な新規な手法が必要となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、流路構造体を有する液体処理装置において流路構造体内に液体を適切に供給することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、流路構造体に所定の液体を流して前記液体に処理を行う液体処理装置であって、導入口から排出口に至る微細流路が内部に形成された流路構造体と、前記導入口に接続される供給管と、所定の液体を前記供給管を介して前記流路構造体へと供給する送液機構と、前記排出口に接続される排出管と、前記排出管に接続される減圧機構と、前記供給管における流体の第1圧力を取得する第1圧力計と、前記排出口における流体の第2圧力を取得する第2圧力計と、前記流路構造体の内部へと液体を供給する際に、前記送液機構および/または前記減圧機構を駆動制御することにより前記第1圧力と前記第2圧力との差を制御する制御部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体処理装置であって、前記制御部が、前記流路構造体の内部への液体の導入時において、前記第1圧力と前記第2圧力との差を前記液体の内部にて気泡が発生する圧力差以下に維持する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体処理装置であって、前記制御部が、前記流路構造体の内部への液体の導入直前から導入が完了するまで、前記第1圧力と前記第2圧力との差を前記液体の内部にて気泡が発生する圧力差以下に維持する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記供給管にバルブが設けられており、前記第1圧力計が、液体が前記バルブを通過する前の前記バルブが閉じられた閉塞状態において、前記バルブの前記送液機構側のガスの圧力を前記第1圧力として取得し、前記制御部が、予め前記供給管の前記第1圧力計と前記送液機構との間の位置まで液体を導入しておき、前記閉塞状態にて前記減圧機構を駆動することにより、前記第2圧力を前記第1圧力よりも低くし、その後、前記バルブを開いて前記バルブの前記送液機構側を減圧するとともに前記送液機構を能動化する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の液体処理装置であって、前記閉塞状態から前記バルブが開放される直前の前記第1圧力と前記第2圧力との差が、0.9気圧以下である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の液体処理装置であって、前記バルブの開放開始後2秒以内に前記供給管内における前記液体の先端部の界面近傍の減圧が完了する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記第1圧力計の前記送液機構側において液体を脱気する脱気モジュールをさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記送液機構により前記流路構造体に供給される前の液体を貯溜する液体供給タンクと、前記流路構造体の内部への液体の導入時に、前記流路構造体の内部へと流入する液体の温度を前記液体供給タンク内における前記液体の温度よりも低くする液体温調部とをさらに備える。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記流路構造体の内部へと流入する液体の流量を調整する流量調整部をさらに備える。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記流路構造体の内部へと液体を供給する際に前記流路構造体に振動を付与する振動付与部をさらに備える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記流路構造体の温度を調整する構造体温調部をさらに備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記流路構造体に光を照射する光照射部をさらに備え、前記流路構造体の少なくとも一部において、前記光照射部からの光が内部の前記微細流路まで導かれる。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記減圧機構が、気体および液体のいずれに対しても吸引可能なポンプである。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記流路構造体から前記排出管への液体の流出を検出する液体検出部と、前記排出管から排出される液体を貯留する液体収容タンクとをさらに備え、前記排出管が、前記液体検出部による検出位置よりも前記液体収容タンク側にて分岐して前記減圧機構に接続される分岐路と、前記排出口から前記減圧機構に至る経路と前記排出口から前記液体収容タンクに至る経路とを切り替える切替弁とを有し、前記制御部が、前記液体検出部により液体の流出が検出された直後に前記切替弁を制御して前記液体を前記液体収容タンクへと導く。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の液体処理装置であって、それぞれが、前記流路構造体、前記供給管、前記排出管、前記第1圧力計および前記第2圧力計を備える複数の処理ユニットを備え、前記複数の処理ユニットの複数の供給管が結合されて前記送液機構に接続され、前記複数の処理ユニットの複数の排出管が結合されて前記減圧機構に接続される。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の液体処理装置であって、それぞれが、前記送液機構、前記流路構造体、前記供給管、前記排出管、前記第1圧力計および前記第2圧力計を備える複数の処理ユニットを備え、前記複数の処理ユニットが直列に接続され、互いに隣接する2つの処理ユニットにおいて、下流側の処理ユニットの前記供給管に接続された前記送液機構が、上流側の処理ユニットの前記排出管に接続された前記減圧機構としての動作を行い、最下流の処理ユニットの前記排出管に前記減圧機構が別途接続される。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項1ないし16のいずれかに記載の液体処理装置であって、前記流路構造体が、直列または並列にて接続される複数の流路構造体であり、前記複数の流路構造体の温度が個別に調整される。
【0024】
請求項18に記載の発明は、導入口から排出口に至る微細流路が内部に形成された流路構造体と、前記導入口に接続される供給管と、所定の液体を前記供給管を介して前記流路構造体へと供給する送液機構と、前記排出口に接続される排出管と、前記排出管に接続される減圧機構と、前記供給管における流体の第1圧力を取得する第1圧力計と、前記排出口における流体の第2圧力を取得する第2圧力計とを備える液体処理装置において、前記流路構造体の内部へと液体を供給する液体供給方法であって、前記流路構造体の内部へと液体を送出する工程と、前記液体を送出する工程にほぼ並行して前記送液機構および/または前記減圧機構を駆動制御することにより前記第1圧力と前記第2圧力との差を制御する工程とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、流路構造体の内部へと液体を供給する際に第1圧力と第2圧力との差を制御することにより、流路構造体内に液体を適切に供給することができる。
【0026】
また、請求項2の発明では、流路構造体の内部への液体の導入時において、第1圧力と第2圧力との差を液体において気泡が発生する圧力差以下に維持することにより、液体の先端部の圧力と先端部の界面近傍のガスの圧力との差を液体において気泡が発生する圧力差以下として、液体内に気泡が発生することを防止することができる。
【0027】
また、請求項4の発明では、流路構造体の内部に液体を導入する直前に液体の先端部の下流側のガスを減圧することにより、流路構造体の内部への液体の導入時に、液体の先端部の界面近傍におけるガスが液体内に気泡として取り込まれることを抑制することができる。
【0028】
また、請求項7の発明では、液体中に溶解する気体の量を減少させることにより液体内に気泡が発生することを防止することができ、請求項8の発明では、液体における気体の溶解度を上昇させることにより、流路構造体内において液体中に気泡が発生することを防止することができる。
【0029】
また、請求項10の発明では、流路構造体の内部へと液体を供給する際に、万一、液体内に気泡が発生したり、ガスが気泡として液体内に取り込まれることにより流路構造体の微細流路の壁面に気泡が付着して残留する場合であっても、流路構造体に振動を付与することにより、当該気泡を剥離して除去することができる。
【0030】
また、請求項11および17の発明では、液体処理装置において流路構造体の温度に依存する処理を行うことができ、請求項12の発明では、液体処理装置において光の照射を伴う処理を行うことができる。
【0031】
また、請求項13の発明では、液体処理装置の構成を簡素化することができ、請求項14の発明では、液体が減圧機構に流入することを防止することができる。
【0032】
また、請求項15の発明では、液体処理装置における液体の処理量を増大することができ、請求項16の発明では、直列に接続される複数の流路構造体のそれぞれにおいて異なる処理を行いつつ、薬液を複数の流路構造体に容易に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る液体処理装置1の構成を示す図である。液体処理装置1は、微小流路が内部に形成された流路構造体に所定の薬液を流して薬液に処理を行うものである。
【0034】
図1の液体処理装置1は、本体11および本体11に接続される制御部12を備える。本体11は、導入口から排出口に至る微細流路が内部に形成された流路構造体であるマイクロリアクタデバイス(以下、単に「マイクロリアクタ」という。)2を備え、マイクロリアクタ2の導入口にはバルブ311を有する供給管31が接続される。供給管31のマイクロリアクタ2とは反対側には送液ポンプ32が接続され、送液ポンプ32により薬液供給タンク33に貯溜された薬液が、供給管31を介してマイクロリアクタ2内へと供給される。また、マイクロリアクタ2の排出口には排出管41が接続され、排出管41のマイクロリアクタ2とは反対側には排出管41から流出する気体および液体を分離可能な気液分離部42が設けられる。気液分離部42は閉塞された空間を形成する生成物収容タンク421を有し、生成物収容タンク421の上部には減圧ポンプ43に接続される排気管431が設けられる。排気管431には大気開放される分岐路432が切替弁433を介して設けられ、切替弁433により減圧ポンプ43による生成物収容タンク421内の減圧と、分岐路432からの生成物収容タンク421内の大気開放とが切り替えられる。切替弁433により減圧ポンプ43と生成物収容タンク421とが連通する状態において、減圧ポンプ43は、排気管431および生成物収容タンク421を介して排出管41に接続される。
【0035】
供給管31においてバルブ311の上流側(すなわち、送液ポンプ32側)には供給管31内の流体の圧力(以下、「第1圧力」という。)を取得する第1圧力計51が設けられる。また、排出管41には排出管41内の流体の圧力(以下、「第2圧力」という。)を取得する第2圧力計52が設けられ、第2圧力計52の下流側(すなわち、気液分離部42側)には、排出管41内の流体の流量を取得する流量計(例えば、差圧式流量計、カルマン式流量計、あるいは、超音波式流量計等)411が取り付けられる。第1および第2圧力計51,52のそれぞれにて取得される第1および第2圧力、並びに、流量計411にて取得される流量は制御部12に出力される。なお、第1および第2圧力計51,52のそれぞれは気体および液体の圧力が取得可能なものとされる。
【0036】
図1に示すように、マイクロリアクタ2の近傍には、マイクロリアクタ2に超音波振動を付与する振動付与部61、マイクロリアクタ2の温度を調整するリアクタ温調部62、および、電力供給部631に接続されるとともにマイクロリアクタ2に向けて所定の波長の光(例えば、紫外線)を照射する光照射部63が設けられる。光照射部63には照度計632が設けられており、光照射部63からの光の強度が一定となるように、照度計632の出力に応じて電力供給部631から光照射部63へと供給される電力(実際には、インバータ出力)が調整される。なお、振動付与部61としてモータを有するものが設けられ、モータの回転により生じる振動(もしくは流体を用いた機械的な振動)がマイクロリアクタ2に付与されてもよい。この場合、振動付与部61では実質的に磁気を用いてマイクロリアクタ2に振動が付与されることとなる。
【0037】
図2はマイクロリアクタ2を示す平面図であり、図3はマイクロリアクタ2近傍の構成を示す縦断面図である。図2に示すように、マイクロリアクタ2には前述の導入口21および排出口22が形成されており、導入口21および排出口22は図2中のXY平面に平行な断面が略三角形となるマイクロリアクタ2の内部の導入部211および排出部221にそれぞれ接続する(図2中では、破線にてマイクロリアクタ2内の流路を図示している。)。導入部211と排出部221との間には、X方向に伸びる複数の微細流路23が形成される。微細流路23の断面は、例えば幅および高さが1mmの矩形とされる。なお、図3では5個の微細流路23のみを図示しているが、実際には、図2に示すように多数の微細流路23が形成されている。
【0038】
図3に示すように、マイクロリアクタ2は金属にて形成される板状のリアクタ本体24を有し、リアクタ本体24の図3中の(+Z)側の面(上面)には、それぞれが1つの微細流路23の底面および側面を形成するとともにX方向に伸びる複数の溝部241が形成される。リアクタ本体24の上面には光を拡散して透過する拡散板25が取り付けられ、拡散板25の外縁部において、拡散板25とリアクタ本体24との間にはOリング26が設けられる。拡散板25はテフロン(登録商標)樹脂にて形成され、溝部241の(+Z)側の開口が拡散板25により閉塞されて微細流路23が構成される。マイクロリアクタ2では、拡散板25のリアクタ本体24とは反対側にガラス板64が設けられ、光照射部63から出射される光はガラス板64および拡散板25を介して内部の微細流路23まで均一に導かれる。本実施の形態では微細流路23の全体に光が照射されるが、マイクロリアクタ2の設計や薬液に対する処理によっては、マイクロリアクタ2の一部においてのみ光照射部63からの光が微細流路23に導かれてもよい。すなわち、液体処理装置1では、マイクロリアクタ2の少なくとも一部において、光照射部63からの光が内部の微細流路23まで導かれる。
【0039】
また、マイクロリアクタ2の(−Z)側にはリアクタ温調部62の熱交換器621がマイクロリアクタ2の下面に当接して設けられ、ガラス板64、マイクロリアクタ2および熱交換器621は固定部65によりZ方向に挟持される。熱交換器621には外部にて温調された熱媒体の流路が形成されており、マイクロリアクタ2では、例えば微細流路23内で薬液の反応熱が生じる場合に、発生した熱が金属にて形成されるリアクタ本体24を介して熱交換器621にて吸収される。なお、リアクタ温調部62は熱交換器621を有するもの以外に、温度センサを有するとともに温度コントロールが可能なヒータやペルチェ素子をマイクロリアクタ2に当接して有するもの、あるいは、マイクロ波やレーザを用いてマイクロリアクタ2を加熱するもの等とされてもよい。また、液体状の熱媒体が保持される容器内にマイクロリアクタ2を浸漬し、熱媒体を外部で温調しつつ循環したり、容器内にて熱媒体をヒータやペルチェ素子にて直接温調して、マイクロリアクタ2の温度が調整されてもよい。さらに、マイクロリアクタは金属以外に、ガラス、セラミック、シリコン、樹脂等、有機材料または無機材料を問わず様々な材料にて形成されてよい。
【0040】
図3のマイクロリアクタ2では拡散板25が弾性変形することにより、拡散板25とリアクタ本体24との良好な密着性が実現され、ある微細流路23を流れる液体が他の微細流路23やマイクロリアクタ2の外部へと漏出することが防止される。また、マイクロリアクタ2ではOリング26も併用されることにより、仮に粘度の高い液体を高圧にして微細流路23内を流す場合であっても、液体が外部に漏れることが防止される。
【0041】
図1の液体処理装置1では、本体11の各構成(送液ポンプ32、第1圧力計51、バルブ311、振動付与部61、リアクタ温調部62、光照射部63、第2圧力計52、流量計411、切替弁433および減圧ポンプ43)が制御部12に接続され、制御部12の制御の下、マイクロリアクタ2内に薬液を流して薬液に対して所定の処理が行われる。
【0042】
次に、液体処理装置1がマイクロリアクタ2に所定の薬液を流して薬液に処理を行う際の動作について図4を参照しながら説明を行う。なお、実際には、薬液に対する処理に係る所定の条件を取得するために事前準備としての実験が行われるが、この事前準備の詳細については液体処理装置1における薬液に対する処理の説明後に詳述する。また、以下の説明において、供給管31からマイクロリアクタ2を介して排出管41へと至る薬液の流路を薬液経路と総称する。
【0043】
液体処理装置1では、例えば、薬液供給タンク33において大気圧下にて薬液が貯溜され、鉛直方向に関して薬液供給タンク33の液面よりも下方に送液ポンプ32が配置されるとともに、液面よりも上方にバルブ311が配置されており、バルブ311を開放するとともに切替弁433を分岐路432側に開放して薬液経路内のガス(空気)を大気圧にすることにより、薬液の先端部(すなわち、薬液の最も下流側の部分)が第1圧力計51と送液ポンプ32との間の位置まで予め導入される。なお、送液ポンプに逆止弁が設けられ、送液ポンプを短時間だけ駆動することにより薬液の先端部が第1圧力計51と送液ポンプ32との間の位置まで導入されてもよい。
【0044】
続いて、バルブ311が閉塞されるとともに、切替弁433が減圧ポンプ43側に切り替えられ、この状態において制御部12が減圧機構である減圧ポンプ43の駆動を開始する。これにより、バルブ311が閉じられた閉塞状態にて、薬液経路のバルブ311よりも下流側(供給管31の一部、マイクロリアクタ2の内部、排出管41、生成物収容タンク421の内部および排気管431)が減圧される(ステップS11)。
【0045】
第1圧力計51および第2圧力計52では、それぞれ第1圧力および第2圧力が微小時間毎に繰り返し取得されており、減圧ポンプ43の駆動により、供給管31内のバルブ311よりも送液ポンプ32側のガスの第1圧力が、排出管41内のガスの第2圧力よりも低くなる。また、供給管31内のバルブ311よりもマイクロリアクタ2側の圧力も排出管41内の第2圧力とほぼ同じになる(正確には、マイクロリアクタ2の微細流路23における圧力損失により、供給管31内のバルブ311よりもマイクロリアクタ2側の圧力は排出管41内の第2圧力よりも僅かに大きい。)。液体処理装置1では、制御部12により減圧ポンプ43の回転数が制御されることにより、減圧速度(単位時間当たりの圧力の変化量)や減圧による到達圧力がある程度の範囲にて制御可能とされるが、排出管41に圧力調整が可能なバルブ(いわゆる、調圧バルブ)を別途設け、調圧バルブを制御することにより、減圧速度や到達圧力が制御されてもよい。
【0046】
制御部12では微小時間毎に第1圧力と第2圧力との差が求められ(ステップS12)、この差が後述する設定圧力差と比較される(ステップS13)。そして、第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS13)、制御部12によりバルブ311が開かれて供給管31内のバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。このとき、バルブ311の開放開始後、所定の設定減圧時間にて供給管31内における薬液の先端部の界面(すなわち、薬液のバルブ311側の界面)近傍の減圧が完了するように、すなわち、設定減圧時間にて供給管31内におけるバルブ311の上流側および下流側のガスの圧力がほぼ同じとなるようにバルブ311の開放動作(または、バルブ311の開口度)が制御される。液体処理装置1では、薬液の先端部の界面近傍の減圧が完了した直後において、第1圧力は第2圧力よりも僅かに大きくなっている。なお、設定圧力差および設定減圧時間については液体処理装置1における全体動作の説明後に詳述する。
【0047】
供給管31内における薬液の先端部の界面近傍の減圧が完了すると(または、減圧にほぼ並行して)、液体処理装置1では送液機構である送液ポンプ32が能動化されて薬液の送出が開始される(ステップS15)。これにより、薬液の先端部が供給管31内をマイクロリアクタ2側へと移動し、バルブ311の位置を通過した後、導入口21を介してマイクロリアクタ2の内部へと導入される。なお、供給管31内における薬液の先端部の移動に際して、薬液の先端部が第1圧力計51の位置を通過すると、第1圧力計51により供給管31内における薬液の圧力が第1圧力として取得されることとなる。
【0048】
液体処理装置1では、送液ポンプ32による薬液の送出が開始されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が開始される(ステップS16)。具体的には、制御部12が順次取得される第1圧力および第2圧力に基づいて送液ポンプ32および減圧ポンプ43を駆動制御することにより、供給管31内の薬液の圧力である第1圧力と排出管41内のガスの圧力である第2圧力との差が、前述の設定圧力差以上、かつ、設定圧力差よりも大きい所定の上限圧力差以下の範囲内にて制御される。ここで、上限圧力差は、薬液内の圧力の変動に起因して薬液に溶解していた気体が析出して形成される気泡のうち、所定の値よりも大きい直径のもの(以下、単に「析出気泡」という。)が発生する圧力差として、後述する事前準備により求められる。上限圧力差については、設定圧力差および設定減圧時間と同様に液体処理装置1における全体動作の説明後に詳述する。
【0049】
なお、前述のように、バルブ311の開放直前には、供給管31のバルブ311よりも上流側のガスの第1圧力と排出管41の第2圧力との差が設定圧力差とほぼ同じ(または、設定圧力差よりも僅かに高い値)とされて、第1圧力と第2圧力との差が上限圧力差を超えないようにされていることにより、実質的には、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御は、マイクロリアクタ2の内部への薬液の導入直前から始まっているといえる。
【0050】
マイクロリアクタ2の内部では、薬液の先端部が導入口21および導入部211を介して微細流路23の内部へと流入し、微細流路23を通過した後、排出部221および排出口22を介して排出管41へと導かれてマイクロリアクタ2への薬液の導入が完了する。ここで、マイクロリアクタ2の内部の微細流路23では、導入途上の薬液および薬液の先端部の下流側のガスに対して圧力損失が生じるため、先端部における薬液の圧力と薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力との差は、供給管31における薬液の圧力(実質的には、導入口21における薬液の圧力)である第1圧力と、排出口22におけるガスの圧力である第2圧力との差よりも小さくなる。換言すれば、マイクロリアクタ2の内部への薬液の導入時において、先端部における薬液の圧力と薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力との差は上限圧力差よりも小さくなる。これにより、先端部における薬液の圧力と薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力との差が上限圧力差よりも大きくなって、薬液の内部にて析出気泡が発生することが防止される。
【0051】
また、供給管31から排出管41に至る薬液の先端部の移動に際して、薬液の流路の壁面の状態の影響を受けたり(例えば、供給管31や微細流路23の内側面が粗い場合等)、導入口21や、導入部211から微細流路23への流入口近傍等において薬液の先端部の流れに乱れが生じることにより、先端部の界面近傍のガスが薬液内に気泡として取り込まれそうになったとしても、薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力(気圧)が減圧されていることにより、減圧が行われない場合に比べて薬液におけるガスの取り込みが抑制される。
【0052】
液体処理装置1では、マイクロリアクタ2への薬液の導入完了後も送液ポンプ32により薬液のマイクロリアクタ2への供給が継続される。そして、薬液の先端部が流量計411へと到達すると、制御部12が切替弁433を分岐路432側に切り替えて生成物収容タンク421内を大気圧にするとともに減圧ポンプ43も停止する。薬液の先端部は送液ポンプ32の動作によりさらに移動して生成物収容タンク421内へと到達し、薬液が生成物収容タンク421に貯溜される。なお、以下の説明において、薬液の導入完了後のマイクロリアクタ2への薬液の継続的な供給を、継続供給と呼ぶ。
【0053】
薬液のマイクロリアクタ2への継続供給時には、マイクロリアクタ2内において薬液に対して光照射部63による光の照射を伴う処理、および、リアクタ温調部62によるマイクロリアクタ2の温度に依存する処理が行われ(ステップS17)、これらの処理を経た薬液(生成物)が生成物収容タンク421内に貯溜される。なお、マイクロリアクタ2内における薬液に対する処理は、薬液のマイクロリアクタ2への導入時にも行われてもよい。
【0054】
マイクロリアクタ2内では、光照射部63により一定の光量が薬液に付与されることにより、光の照射を伴う処理において光量不足による未反応物や光量過多による副生成物の生成が抑制される。また、マイクロリアクタ2では、リアクタ温調部62により一定の温度環境下にて薬液を反応させることが実現されるため、反応時の温度の変動に起因する副生成物の発生を抑制して、生成物の純度を向上することができる。さらに、図3に示す拡散板25が良好な潤滑性を示すテフロン(登録商標)樹脂にて形成されることにより、薬液と微細流路23の拡散板25側の側面との間に生じる摩擦力に起因する薬液の圧力損失が低減され、高性能な送液ポンプを使用したり、薬液を高圧にすることなく、微細流路23内に薬液を滑らかに流すことができる。
【0055】
液体処理装置1では、薬液のマイクロリアクタ2への継続供給時においても、送液ポンプ32を駆動制御することにより、供給管31における薬液の圧力(実質的には、導入口21における薬液の圧力)として取得される第1圧力と、排出口22における薬液の圧力として取得される第2圧力との差が上限圧力差を超えないように制御され、これにより、マイクロリアクタ2の内部にて上限圧力差を超える圧力の減少が生じて薬液の内部にて析出気泡が発生することが防止される。
【0056】
本実施の形態では、薬液の導入完了直後に減圧ポンプ43が停止されるが、薬液の継続供給時においても減圧ポンプ43を継続して駆動し、送液ポンプ32および減圧ポンプ43を駆動制御することにより第1圧力と第2圧力との差の制御が行われてもよい。この場合において、送液ポンプ32が一時的に停止されてもよい。すなわち、液体処理装置1では、制御部12が送液ポンプ32および/または減圧ポンプ43を駆動制御することにより第1圧力と第2圧力との差が制御される。なお、液体処理装置1では、仮にマイクロリアクタ2が非常に長い微細流路23を有する場合であっても、薬液の継続供給時に減圧ポンプ43も駆動することにより、送液ポンプ32により薬液を過度に高圧にすることなく、薬液をマイクロリアクタ2内に滑らかに連続供給することが可能となる。
【0057】
また、制御部12では第1圧力と第2圧力との差を確認することにより、マイクロリアクタ2の流路の状態(例えば、微細流路23の閉塞の有無)の監視も行われる。なお、マイクロリアクタ2の上流側にも流量計を設けることにより、この流量計および下流側の流量計411を、例えばマイクロリアクタ2における薬液の漏れ等の監視に利用することも可能である。
【0058】
さらに、液体処理装置1では、薬液の送出開始から先端部がマイクロリアクタ2から排出管41へと排出されるまでの薬液のマイクロリアクタ2への導入時、および、その後の継続供給時に、万一、ガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、薬液内にて析出気泡が発生してマイクロリアクタ2内の微細流路23の壁面に気泡が付着して残留する場合であっても、振動付与部61によりマイクロリアクタ2に超音波振動を常時付与することにより当該気泡を剥離して薬液を除去する(押し流す)ことができる。その結果、薬液を各微細流路23内にておよそ一定の流速で流して、薬液に対して均一な処理を行うことができる。
【0059】
このようにして、液体処理装置1では薬液に対して処理が施されて生成物収容タンク421に必要な量の生成物が貯溜されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が終了されるとともに(ステップS18)、送液ポンプ32による薬液の送出も停止され(ステップS19)、液体処理装置1における処理が終了する。
【0060】
次に、事前準備である所定の実験により予め決定される上限圧力差、設定圧力差および設定減圧時間について説明する。図5は、上限圧力差、設定圧力差および設定減圧時間を決定する際に準備される実験用の装置10の構成を示す図である。
【0061】
実験用の装置10において、マイクロリアクタ2の上流側では液体処理装置1と同様に、バルブ311を有する供給管31によりマイクロリアクタ2と送液ポンプ32とが接続され、送液ポンプ32は薬液供給タンク33に接続される。また、マイクロリアクタ2の下流側には排出管41が接続され、排出管41のマイクロリアクタ2とは反対側にはシリンダおよびピストンを有する注射器71が着脱可能に接続される。また、排出管41には第2圧力計52が設けられる。このように、実験用の装置10は、液体処理装置1の構成を簡略化したものとなっている。
【0062】
図5に示す実験用の装置10が準備されると、まず、バルブ311を開放するとともに、注射器71を排出管41から外した状態で、送液ポンプ32により薬液(ただし、所定のガスの(飽和)溶解度が薬液と同等となる代替の液体が用いられてもよく、ここでは25℃の水が用いられる。)が導入され、マイクロリアクタ2の導入部211(図2参照)が薬液にてほぼ満たされる。このとき、薬液の先端部は微細流路23内に僅かに進入した位置とされ、第2圧力計52にて取得される第2圧力は大気圧(ここでは、1気圧(atm))となる。そして、注射器71が排出管41の先端に取り付けられ、注射器71を用いて薬液の下流側(すなわち、マイクロリアクタ2の内部の一部分および排出管41)のガスが減圧される。これにより、液体処理装置1における図5のステップS14の処理において、バルブ311を開放して供給管31内における薬液の先端部の界面近傍を減圧する状態とおよそ同等の状態が、マイクロリアクタ2内にて実現される。
【0063】
上限圧力差、設定圧力差および設定減圧時間を決定する本実験は、注射器71による減圧後のガスの到達圧力が複数通りの目標気圧に変更されるとともに、減圧の開始後目標気圧となるまでの時間(以下、「到達時間」という。)も複数通りに変更して行われる。ここでは、目標気圧は0.5、0.2、0.1、0.05atmとされ、各目標気圧に対する到達時間も1、2、4秒とされる(すなわち、減圧の開始後、1、2または4秒にて各目標気圧となるようにピストンが引かれる。)。そして、注射器71による減圧時に導入部211内を観察して薬液の内部に発生する気泡の大きさ(直径)が測定される。なお、マイクロリアクタ2では、拡散板25を介して導入部211内が観察可能となっている。
【0064】
図6は、各目標気圧に対する到達時間と測定される気泡の大きさ(直径)との関係を示す図である。図6中では、目標気圧0.5atmの場合を菱形、目標気圧0.2atmの場合を正方形、目標気圧0.1atmの場合を三角形、目標気圧0.05atmの場合を丸にてそれぞれ示している。図6より、目標気圧が小さいほど薬液の内部に発生する気泡の直径が大きくなることが判る。換言すれば、減圧前後の圧力差が大きいほど発生する気泡の直径が大きくなる。また、同じ目標気圧で見ると、到達時間が短いほど気泡の直径は小さくなる。
【0065】
ところで、一般的なマイクロリアクタ2の微細流路23の幅および高さは共に1mm程度とされることにより、仮に導入部211にて1mmより大きい直径の気泡が発生すると、この気泡により微細流路23の導入部211側が閉塞されてしまう可能性がある(微細流路23内にて気泡が発生する場合も同様。)。したがって、薬液の内部にて発生する気泡の直径が1mm以下となることが重要となる。図6では、目標気圧0.5atmの場合には到達時間が1、2、4秒のいずれのときにも気泡の直径が1mm以下となり、目標気圧0.2atmの場合には到達時間が3秒以下、目標気圧0.1atmの場合には到達時間が2秒以下であれば気泡の直径は1mm以下となることが判る。すなわち、1気圧の状態からの減圧後の目標気圧が0.1atm以上とされ、かつ、目標気圧への到達時間が2秒以下とされる限り、発生する気泡の直径を1mm以下とすることが可能となる。なお、圧力差が0.5atmの場合には、到達時間が4秒であっても発生する気泡の直径は0.3mm以下となる。
【0066】
図1の液体処理装置1では、バルブ311が閉じられた閉塞状態でバルブ311の下流側を減圧した後に、バルブ311の開放によりバルブ311の上流側を減圧する際には、通常、短時間にて減圧を完了させることが可能であるため、バルブ311の上流側のガスの第1圧力が1atmである場合にバルブ311の閉塞状態からバルブ311が開放される直前の第2圧力が0.1atm以上、すなわち、第1圧力と第2圧力との差を0.9atm以下とすることにより、バルブ311の開放による減圧の完了直後において薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力を確実に0.1atm以上として、供給管31内の薬液中に発生する気泡の直径を1mm以下とすることが実現される。一方で、微小な直径の気泡が微細流路の壁面に付着した場合に、一般的に流路に垂直な断面において気泡が占める面積に比べて気泡の壁面との接触面積が大きくなるため、マイクロリアクタの設計によっては壁面から剥離して除去することが困難となり、付着した気泡の影響により複数の微細流路間にて薬液の流速にばらつきが生じてしまうことがある。図6では、目標気圧が0.1atm以上の場合において到達時間が1秒未満では発生する気泡の大きさが微小となると想定されるため、図1の液体処理装置1において、極端に小さい直径の気泡の発生を防止して、複数の微細流路23にて流速を一定にするには、バルブ311の開放開始後、薬液の先端部の界面近傍の減圧が完了するまでの時間は1秒以上とされることが好ましい。ただし、この場合においても、閉塞状態からバルブ311が開放される直前の第1圧力と第2圧力との差を0.9atm以下として発生する気泡の直径を1mm以下とする観点では、バルブ311の開放開始後、供給管31内における薬液の先端部の界面近傍の減圧が完了するまでの時間が2秒以内とされることが重要となる。
【0067】
ところで、前述のように、ガスが薬液内に気泡として取り込まれることを抑制するという観点では、薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力は低いほど好ましいと考えられる。また、実際に析出気泡として捉えられる気泡は、任意の値(ただし、マイクロリアクタ2の微細流路23の幅および高さ以下の値とされる。)よりも大きい直径のものとされる。したがって、上記実験結果に基づいて、発生する気泡の直径が析出気泡として捉えられる大きさ以下となり、かつ、極端に小さい直径の気泡の発生が防止されるように、バルブ311を開放する際の上限となる圧力差(すなわち、上限圧力差)および設定減圧時間が決定される。実際には、バルブ311の開放動作に多少の時間的な遅れが生じても第1圧力と第2圧力との差が上限圧力差を超えないように、この圧力差よりもある程度小さい値が設定圧力差として決定される。
【0068】
本実験では、図1の液体処理装置1においてマイクロリアクタ2の内部へと薬液を導入する際に、バルブ311の開放前後における薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力差と、薬液内に発生する気泡の大きさとの関係が実質的に取得されるが、マイクロリアクタ2の内部への薬液の導入時および継続供給時における、薬液の先端部の圧力と薬液の先端部の界面近傍のガスの圧力との差と、薬液内に発生する気泡の大きさとの関係も同様に考えることができる。したがって、図1の液体処理装置1におけるマイクロリアクタ2への薬液の導入時においては、薬液の第1圧力とガスの第2圧力との差を上限圧力差以下に維持することにより、先端部における薬液の圧力と先端部の界面近傍のガスの圧力との差を析出気泡が発生する圧力差以下として、薬液の先端部において析出気泡が発生することを防止することができ、マイクロリアクタ2への薬液の継続供給時においても、薬液の第1圧力と薬液の第2圧力との差を上限圧力差以下に維持することにより、薬液の圧力の変動に起因して生じる析出気泡の発生を防止することができる。なお、図6に示す実験結果は水に対するものであるが、薬液として比較的粘度の高いものが用いられる場合には、一般的に発生する気泡の大きさは小さくなる。また、実質的に設定圧力差、設定減圧時間および上限圧力差が求められるのであるならば、上記実験は同条件の他の簡便な手法にて行われてもよい。
【0069】
以上に説明したように、図1の液体処理装置1では、薬液をマイクロリアクタ2の内部に導入する直前に、薬液が通過する前のバルブ311を閉塞した状態において、減圧ポンプ43を駆動して薬液経路のバルブ311よりも下流側のガスを減圧し、薬液経路のバルブ311よりも下流側の圧力がバルブ311よりも上流側の第1圧力よりも低くされる。これにより、このような減圧が行われない場合に比べて、薬液のマイクロリアクタ2への導入時に薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれることを抑制することができる。また、マイクロリアクタ2の内部への薬液の導入直前から導入が完了するまで、および、薬液の継続供給時に、送液ポンプ32および/または減圧ポンプ43を駆動制御して第1圧力と第2圧力との差が上限圧力差以下に維持されることにより、薬液の内部における析出気泡の発生も防止することができる。このように、液体処理装置1ではマイクロリアクタ2の内部へと薬液を供給する際に(すなわち、マイクロリアクタ2への薬液の導入直前、導入時、および、継続供給時に)、第1圧力と第2圧力との差が制御されることにより、マイクロリアクタ2内に薬液を適切に供給して薬液に対して安定して処理を行うことが実現される。
【0070】
ここで、既述の特許文献1の手法を応用して、マイクロリアクタ内の微細流路の全体に面するように脱気隔壁を設け、微細流路内の気泡を除去することも考えられるが、脱気隔壁の耐圧性には一定の限界があるため、粘度の高い薬液を処理する場合にはマイクロリアクタ内への薬液の供給が困難となる。これに対し、液体処理装置1では、第1圧力と第2圧力との差の制御によりガスの取り込みによる気泡および析出気泡の発生が抑制されるため、粘度の高い薬液をある程度高圧にてマイクロリアクタ2内に供給することができる。また、液体処理装置1ではマイクロリアクタ2への導入時における薬液の流速を速くして薬液をマイクロリアクタ2に短時間に導入する(マイクロリアクタ2を液密にする)ことも可能となる。
【0071】
液体処理装置1では、リアクタ温調部62によりマイクロリアクタ2の温度に依存する薬液の処理が行われるとともに、光照射部63により光の照射を伴う薬液の処理が実現される。ここで、仮に、図7.Aに示すように、リアクタ本体24に比較的深い溝部241aが形成され、かつ、溝部241aが一般的なガラス板25aにて閉塞される場合には、光照射部63からの光が照射されない領域(図7.A中にてクロスハッチングを付す領域)が存在してしまい、微細流路23(溝部241aの内部)を流れる薬液に光の照射に係る処理を均一に施すことができなくなってしまう。これに対し、液体処理装置1では、図7.Bに示すように、光照射部63からの光が拡散板25にて拡散されて微細流路23(溝部241aの内部)へと照射されることにより、マイクロリアクタ2において薬液への光の照射に係る処理を均一に施すことができる。
【0072】
図8は他の例に係る液体処理装置の本体11aを示す図である。図8の液体処理装置の排出管41では、マイクロリアクタ2とは反対側の端部が生成物収容タンク44に接続されるとともに、流量計411よりも下流側(マイクロリアクタ2よりも反対側)にて分岐して減圧ポンプ43に接続される分岐路412が設けられる。排出管41の分岐点には切替弁413が取り付けられ、切替弁413によりマイクロリアクタ2の排出口から減圧ポンプ43に至る経路と、排出口から生成物収容タンク44に至る経路とが切り替えられる。他の構成は図1の液体処理装置1と同様であり、同符号を付している。ただし、図8の液体処理装置(並びに、後述の図9ないし図11並びに図14ないし図17の液体処理装置)では、マイクロリアクタ2における処理に係る構成(振動付与部61、リアクタ温調部62および光照射部63)の図示を適宜省略している。
【0073】
図8の液体処理装置における処理では、薬液を第1圧力計51と送液ポンプ32との間の位置まで導入させた状態にて、バルブ311が閉塞されるとともに、切替弁413により排出口が減圧ポンプ43に連通され、この状態において第1圧力および第2圧力を取得しつつ制御部12(図1参照)が減圧ポンプ43の駆動を開始して薬液経路のバルブ311よりも下流側が減圧される(図4:ステップS11)。第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、バルブ311が開放されてバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。続いて、送液ポンプ32が能動化されることにより薬液の送出が開始されるとともに(ステップS15)、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御も開始され(ステップS16)、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、析出気泡が発生することを防止しつつ、薬液がマイクロリアクタ2の内部へと導入される。
【0074】
そして、薬液の先端部がマイクロリアクタ2から排出されて流量計411へと到達すると、減圧ポンプ43が停止されるとともに切替弁413が生成物収容タンク44側へと切り替えられ、薬液が生成物収容タンク44へと導かれる。これにより、薬液が減圧ポンプ43に流入することが防止される。また、マイクロリアクタ2の内部では薬液に対して所定の処理が行われており(ステップS17)、薬液が継続して供給されることにより、生成物収容タンク44に必要な量の処理後の薬液(生成物)が貯溜されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が終了されるとともに(ステップS18)、薬液の送出が停止され(ステップS19)、液体処理装置における処理が終了する。
【0075】
以上に説明したように、図8の液体処理装置では、マイクロリアクタ2へと薬液が導入され、液体検出部である流量計411によりマイクロリアクタ2から排出管41への薬液の流出が検出された直後に切替弁413が制御されて薬液が生成物収容タンク44へと導かれる。ここで、図1の液体処理装置1のように気液分離部42が用いられる場合には、減圧ポンプ43に薬液が流入することがないため切替弁413が不要となり、これに伴う制御も省略されるという利点がある一方で、生成物収容タンク421が気液分離部42の一部とされるため、生成物収容タンク421の交換が煩雑となってしまう。これに対し、図8の液体処理装置では、生成物収容タンク44を排出管41から取り外すのみで、容易に交換することが実現される。なお、マイクロリアクタ2の排出口から減圧ポンプ43に至る経路と、排出口から生成物収容タンク44に至る経路とを切替弁413にて切り替える上記構成は、後述する図9ないし図11並びに図14および図15の液体処理装置にて設けられてもよい。
【0076】
図9はさらに他の例に係る液体処理装置の本体11bを示す図である。図9の液体処理装置では、供給管31の第1圧力計51よりも送液ポンプ32側に液体を脱気する脱気モジュール34が設けられ、脱気モジュール34は脱気用排気管341を介して排気管431の切替弁433よりも減圧ポンプ43側に接続される。他の構成は図1の液体処理装置1と同様であり、同符号を付している。
【0077】
図9の液体処理装置における処理では、薬液を第1圧力計51と脱気モジュール34との間の位置まで導入させた状態にて、バルブ311が閉塞されるとともに、切替弁433により減圧ポンプ43が生成物収容タンク421に連通される。そして、この状態において制御部12(図1参照)が減圧ポンプ43の駆動を開始することにより、薬液経路のバルブ311よりも下流側が減圧されるとともに(図4:ステップS11)、脱気モジュール34において内部に存在する液体の脱気が開始される。第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、バルブ311が開かれてバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。続いて、送液ポンプ32が能動化されることにより薬液の送出が開始されて薬液がマイクロリアクタ2の内部へと導入され(ステップS15)、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御も開始される(ステップS16)。そして、薬液の先端部が流量計411へと到達すると、切替弁433により生成物収容タンク421の内部が大気開放される。このとき、制御部12が減圧ポンプ43を駆動させたままとすることにより、マイクロリアクタ2へと順次供給される薬液の脱気が継続される。
【0078】
マイクロリアクタ2の内部では、順次供給される薬液に対して所定の処理が行われており(ステップS17)、処理後の薬液(すなわち、生成物)は生成物収容タンク421へと導かれて貯溜される。生成物収容タンク421に必要な量の生成物が貯溜されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が終了されるとともに、送液ポンプ32および減圧ポンプ43が停止されて薬液の送出が停止され、液体処理装置における処理が終了する(ステップS18,S19)。
【0079】
以上に説明したように、図9の液体処理装置では、マイクロリアクタ2へと供給される薬液が脱気モジュール34により脱気される。これにより、薬液のマイクロリアクタ2への導入に際して、薬液中に溶解する気体の量を減少させ、マイクロリアクタ2内における反応熱の影響等により薬液の温度が上昇して薬液内に析出気泡が発生し易い状態となった場合であっても、析出気泡が発生することを防止することができる。なお、図8の液体処理装置(並びに、後述する図14ないし図17の液体処理装置)においても脱気モジュール34が設けられてもよい。
【0080】
図10はさらに他の例に係る液体処理装置の本体11cを示す図である。図10の液体処理装置の供給管31には、図9の液体処理装置と同様の脱気モジュール34が設けられ、脱気モジュール34と第1圧力計51との間にはマイクロリアクタ2の内部へと流入する薬液の流量を調整するとともに流量計を有する流量調整部(例えば、マスフローコントローラ)35が取り付けられる。また、供給管31のマイクロリアクタ2とは反対側の端部は薬液供給タンク33に接続され、薬液供給タンク33の上部には圧力調整バルブ361を有するガス供給管362が接続される。ガス供給管362は高圧ガス供給部363に接続されており、圧力調整バルブ361により所定の圧力にて送液用のガスが薬液供給タンク33内に供給されることにより薬液供給タンク33内の薬液が供給管31へと送液される。すなわち、本体11cでは、圧力調整バルブ361、ガス供給管362および高圧ガス供給部363により、薬液を供給管31を介してマイクロリアクタ2へと供給する送液機構36が実現される。なお、図1、図8および図9の液体処理装置(並びに、後述する図11および図14ないし図17の液体処理装置)においても送液ポンプ32に替えて送液機構36が設けられてもよい。
【0081】
図10の液体処理装置における処理では、例えば、脱気モジュール34と流量調整部35との間の位置まで薬液を導入した状態で薬液経路のバルブ311よりも下流側が減圧され(図4:ステップS11)、第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、バルブ311が開かれて供給管31内のバルブ311の上流側が減圧される(ステップS14)。このとき、流量調整部35を介して薬液の界面近傍の減圧が行われる。
【0082】
そして、送液機構36が能動化されて薬液の送出が開始され(ステップS15)、制御部12(図1参照)による第1圧力と第2圧力との差の制御も開始される(ステップS16)。薬液のマイクロリアクタ2への導入の際には、流量調整部35により薬液の流量が所定の値まで緩やかに増大し、その後一定となるように調整される。そして、薬液の先端部がマイクロリアクタ2の排出口から排出管41へと排出されて流量計411へと到達すると、切替弁433により生成物収容タンク421の内部が大気開放される。このとき、減圧ポンプ43の駆動を継続させることにより薬液の脱気も引き続き行われる。薬液の先端部は生成物収容タンク421へと導かれる。
【0083】
液体処理装置では薬液のマイクロリアクタ2への供給が継続され、マイクロリアクタ2の内部では、順次供給される薬液に対して所定の処理が行われ(ステップS17)、処理後の薬液(すなわち、生成物)は生成物収容タンク421にて貯溜される。このとき、万一、マイクロリアクタ2において薬液の漏れが発生した場合でも、制御部12では流量調整部35が有する流量計が示す流量と、流量計411が示す流量とを比較することにより薬液の漏れが検出され、制御部12が有する表示部に薬液の漏れを示す警告が表示されるとともに、送液ポンプ32が停止される。なお、マイクロリアクタ2において光照射部63(図1参照)からの光の照射を伴う処理が薬液に対して行われる場合には、照度計632にて取得される光の強度に合わせて、薬液に付与される光量が一定となるようにマイクロリアクタ2の微細流路23における薬液の単位時間当たりの流量が流量調整部35により調整されてもよい。
【0084】
生成物収容タンク421に必要な量の生成物が貯溜されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が終了されるとともに、送液ポンプ32による薬液の送出が停止される(ステップS18,S19)。また、減圧ポンプ43の駆動も停止され、液体処理装置における処理が終了する。
【0085】
以上に説明したように、図10の液体処理装置では、マイクロリアクタ2の内部へと流入する薬液の流量を調整する流量調整部35が設けられる。これにより、薬液のマイクロリアクタ2への導入に際して、薬液が急激にマイクロリアクタ2の内部へと流入して薬液の先端部にて流れが乱れることが抑制され、薬液の先端部の界面近傍のガスが薬液内に気泡として取り込まれることをさらに抑制することができる。なお、図10の液体処理装置では、薬液のマイクロリアクタ2への継続供給時において、流量調整部35を駆動制御することにより第1圧力と第2圧力との差の制御を行うことも可能である。また、流量調整部35は、図1、図8および図9(並びに、図14、図15および図17)の液体処理装置に設けられてもよい。
【0086】
図11はさらに他の例に係る液体処理装置の本体11dを示す図である。図11の液体処理装置では、供給管31がマイクロリアクタ2とは反対側(上流側)にて送液ポンプ32に接続され、送液ポンプ32は切替弁371により薬液を貯溜する薬液供給タンク33側、または、リンス液(例えば、アセトン)を貯留するリンス液供給タンク372側に接続される。薬液供給タンク33には、内部の薬液の温度を一定に保つタンク温調部331が設けられる。また、供給管31には送液ポンプ32側からマイクロリアクタ2に向かって順に、別途準備される補助ポンプ342に接続された脱気モジュール34、供給管31内を流れる液体の温度を調整する液体温調部38、供給管31内の液体の温度を取得する温度センサ53、供給管31内の液体または気体の圧力を取得する補助圧力計54、フィルタ39、流量調整部35、第1圧力計51およびバルブ311が設けられる。液体処理装置では、薬液のマイクロリアクタ2への供給の際に、補助圧力計54にて取得される薬液の圧力と第1圧力計51にて取得される薬液の圧力との差が求められ、この差が所定の値以上となると、制御部12(図1参照)が有する表示部にフィルタ39の交換を求める警告が表示される。
【0087】
排出管41のマイクロリアクタ2とは反対側には、気体および液体のいずれに対しても吸引可能な吸引ポンプ46(例えば、プランジャポンプ)が設けられ、吸引ポンプ46は切替弁471により生成物収容タンク44側、または、マイクロリアクタ2の内部を流れたリンス液を回収するリンス液回収タンク472側に接続される。生成物収容タンク44には、内部の生成物の温度を一定に保つタンク温調部441が設けられる。また、排出管41にはマイクロリアクタ2側から吸引ポンプ46に向かって順に第2圧力計52、流量計411、排出管41内を流れる液体の温度を調整する液体温調部48、および、排出管41内の液体の温度を取得する温度センサ54が設けられる。
【0088】
図11の液体処理装置における処理では、切替弁371により送液ポンプ32を薬液供給タンク33側に接続させて薬液を送液ポンプ32と第1圧力計51との間の位置(例えば、液体温調部38と温度センサ53との間の位置)まで導入させ、この状態にてバルブ311が閉塞されるとともに、切替弁471により吸引ポンプ46が生成物収容タンク44に連通される。そして、制御部12が減圧機構である吸引ポンプ46の駆動を開始する(図4:ステップS11)。このとき、生成物収容タンク44の内部は大気開放されており、吸引ポンプ46により薬液経路のバルブ311よりも下流側が減圧される。また、補助ポンプ342を駆動することにより、脱気モジュール34において供給管31内を流れる液体の脱気が可能とされる。
【0089】
第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、バルブ311が開かれてバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。続いて、送液ポンプ32が能動化されることにより薬液の送出が開始され、薬液がマイクロリアクタ2に向かって移動してマイクロリアクタ2の内部へと導入される(ステップS15)。また、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が開始される(ステップS16)。このとき、液体温調部38によりマイクロリアクタ2の内部へと流入する(導入される)薬液の温度が、送液ポンプ32によりマイクロリアクタ2に供給される前の薬液供給タンク33内における薬液の温度よりも低くされることにより、液体における気体の(飽和)溶解度が増大して、マイクロリアクタ2内において薬液内に析出気泡が発生することがさらに防止される。また、フィルタ39により薬液が濾過されるため、万一薬液内に不要物が混在する場合であっても、マイクロリアクタ2内への不要物の流入が防止され、マイクロリアクタ2内における薬液への処理に支障が生じることが防止される。
【0090】
薬液のマイクロリアクタ2からの排出が流量計411により検出されると吸引ポンプ46が停止され、排出管41内の薬液は生成物収容タンク44へと導かれる。液体処理装置では薬液の供給が継続され、マイクロリアクタ2の内部では供給される薬液に対して所定の処理が行われることにより(ステップS17)、当該処理による生成物が生成物収容タンク44にて貯溜される。このとき、供給管31内では液体温調部48により生成物が所定の温度に調整(例えば、冷却)され、生成物収容タンク44においてもタンク温調部441により生成物の温度が一定に保たれるため、生成物が温度により変質してしまう場合であっても、生成物の質の低下を防止することができる。なお、薬液や生成物の温度調整に伴って供給管31や排出管41に結露が生じる可能性がある場合には、これらの管に断熱材を巻き付けて結露を抑制したり、管の結露を検知して操作者に知らせるシステム、あるいは、結露水を排出する排水部等が設けられる。また、供給管31や排出管41に設けられる液体温調部38,48は、熱交換器、ヒータ、ペルチェ素子を用いるもの、あるいは、金属にて形成される供給管31または排出管41を中心として巻回されるコイルに高周波電流を付与することにより供給管31または排出管41を加熱するものであってもよい。
【0091】
図11の液体処理装置では薬液の継続供給時においても、制御部12が送液ポンプ32を制御して第1圧力と第2圧力との差が制御されことにより、析出気泡の発生が防止される。なお、必要に応じて、薬液の継続供給時においても吸引ポンプ46を継続して駆動し、送液ポンプ32および吸引ポンプ46を駆動制御することにより第1圧力と第2圧力との差の制御が行われてもよく、この場合において、送液ポンプ32が一時的に停止されてもよい。すなわち、液体処理装置1では、制御部12が送液ポンプ32および/または吸引ポンプ46を駆動制御することにより第1圧力と第2圧力との差が制御される。
【0092】
生成物収容タンク44にて必要な量の生成物が貯溜されると、供給管31の切替弁371がリンス液供給タンク372側に、排出管41の切替弁471がリンス液回収タンク472側にそれぞれ切り替えられる。これにより、液体処理装置において、供給管31からマイクロリアクタ2を経由して排出管41へと至る薬液経路の洗浄が行われる。その後、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が停止され(リンス液の供給前に停止されてもよい。)(ステップS18)、送液ポンプ32が停止されて液体処理装置における処理が終了する(ステップS19)。
【0093】
なお、液体処理装置において薬液の温度に依存する処理が行われる場合には、マイクロリアクタ2に流入する薬液の温度を薬液供給タンク33内の薬液の温度よりも低くする液体温調部38による処理は、薬液の導入時にのみ行われ、その後の薬液の継続供給時においては供給管31およびマイクロリアクタ2内における薬液が、所望の生成物の生成に適した温度にされる。この場合、切替弁471が切り替えられることにより、薬液の導入時に取得される生成物(析出気泡が発生しにくい温度にてマイクロリアクタ2に流入した薬液から生成される生成物)はリンス液回収タンク472側へと導かれ、その後、切替弁471が再度切り替えられることにより、薬液の継続供給時において生成された生成物のみが、生成物収容タンク44に貯溜される。
【0094】
以上に説明したように、図11の液体処理装置では、マイクロリアクタ2の内部への薬液の導入時に、薬液の温度が薬液供給タンク33内の薬液の温度よりも低くされる。これにより、薬液をマイクロリアクタ2の内部へと供給する際に、薬液の圧力の変動に起因して薬液内に気泡が発生することをさらに防止することができる。なお、液体温調部38は、マイクロリアクタ2の内部へと流入する薬液の温度を、生成物収容タンク44内の薬液の温度よりも低くすることが可能である限り、生成物収容タンク44とマイクロリアクタ2との間の図11とは異なる位置に配置されてもよい。また、液体温調部38は、図1および図8ないし図10(並びに、図14ないし図17)の液体処理装置に設けられてもよい。
【0095】
液体処理装置では、気体および液体のいずれに対しても吸引可能な吸引ポンプ46が設けられることにより、図1の液体処理装置1のように気液分離部42を設けたり、図8の液体処理装置のように気体のみが吸引可能な減圧ポンプ43の使用に必要な構成(分岐路412および切替弁413)を別途設けることなく、液体処理装置の構成の簡素化を図ることが実現される。また、図1および図8ないし図10(並びに、図14ないし図16)の液体処理装置において、減圧ポンプ43に替えて吸引ポンプ46が設けられてもよい。なお、図11の液体処理装置では、薬液の供給前にリンス液をマイクロリアクタ2に供給し、リンス液の導入の際に上記手法が利用されてマイクロリアクタ2内にリンス液を充填し、その後、供給される液体が薬液に切り替えられてもよい。また、液体処理装置では、送液ポンプ32に替えて流量コントロール機能を有する定量ポンプが設けられ、流量調整部35を省略しつつ、マイクロリアクタ2へと流入する薬液の流量を調整することも可能である。
【0096】
次に、図11の液体処理装置においてバルブ311のみが省略された場合について、図4の処理の流れに準じて説明する。本液体処理装置における処理では、薬液を第1圧力計51と送液ポンプ32との間の位置まで導入させた状態にて切替弁471により吸引ポンプ46が生成物収容タンク44に連通され、制御部12が吸引ポンプ46の駆動を開始する(ステップS11)。
【0097】
ここで、供給管31のバルブ311が省略された液体処理装置において、吸引ポンプ46を駆動させた際に、仮に後述の薬液の供給を行わない場合の第1圧力および第2圧力の変化について述べる。図12は、薬液を供給しない場合における第1圧力および第2圧力の変化を示す図である。図12において、三角形が第1圧力を示し、菱形が第2圧力を示す。図12に示すように、本実施の形態にて用いられるマイクロリアクタ2では、微細流路23にて比較的大きな圧力損失が発生することにより、吸引ポンプ46による減圧の開始直後では、排出管41におけるガスの第2圧力と供給管31におけるガスの第1圧力とに大きな差が生じる。
【0098】
実際には、制御部12では微小時間毎に供給管31におけるガスの第1圧力と排出管41におけるガスの第2圧力との差が求められ(ステップS12)、第1圧力と第2圧力との差が上限圧力差よりも小さい所定の圧力差(例えば、0.2atm)となった時点で(ステップS13)、送液ポンプ32が能動化されて薬液の送出が開始されるとともに(ステップS15)、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が開始される(ステップS16)。なお、図4のステップS14におけるバルブ311を開放する処理は省略される。
【0099】
図13は、第1圧力および第2圧力の変化を示す図である。図13において、三角形が第1圧力を示し、菱形が第2圧力を示す。また、図13中の符号T1を付して示す時刻が、送液ポンプ32が能動化されて薬液の送液が開始された時刻である(実際には、減圧の開始から約0.3秒後)。薬液の送液が開始されると、薬液の先端部の移動により薬液経路内のガスが圧縮されるが、吸引ポンプ46を駆動制御しつつ供給管31内が下流側から減圧されることにより、第1圧力と第2圧力との差が一定に保たれる。
【0100】
図13中の符号T2を付す時刻には、薬液の先端部が第1圧力計51の位置を通過して、第1圧力計51による圧力の取得対象が薬液に切り替わって第1圧力が1atmから約1.6atmまで上昇し、その後一定となる。このとき、第2圧力計52が設けられる排出管41においても薬液の移動により薬液経路内のガスが圧縮され、吸引ポンプ46による吸引量を一時的に低減させることにより、第2圧力が第1圧力との差を一定に保ったまま同様に上昇する。そして、その後においても第1圧力と第2圧力との差がほぼ一定となるように、制御部12により送液ポンプ32および吸引ポンプ46が駆動制御される。これにより、薬液のマイクロリアクタ2への導入時において、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、析出気泡が発生することが防止される。
【0101】
液体処理装置では薬液の供給が継続され、制御部12が第1圧力と第2圧力との差を制御することにより、薬液のマイクロリアクタ2への継続供給時においても、析出気泡の発生が防止される。また、マイクロリアクタ2の内部では薬液に対して所定の処理が行われており(ステップS17)、生成物収容タンク44にて必要な量の生成物が貯溜されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が終了されるとともに(ステップS18)、送液ポンプ32による薬液の送出が停止され、液体処理装置における処理が終了する(ステップS19)。
【0102】
以上に説明したように、供給管31のバルブ311が省略された液体処理装置では、薬液のマイクロリアクタ2への導入直前において、マイクロリアクタ2内の微細流路23におけるガスの圧力損失により第2圧力が第1圧力よりも低くされる。そして、第1圧力と第2圧力との差が上限圧力差よりも小さい所定の圧力差となった段階で、送液ポンプ32が能動化されて薬液の導入が開始され、その後、制御部12が送液ポンプ32および吸引ポンプ46を駆動制御することにより第1圧力と第2圧力との差が当該圧力差にて一定に維持される。これにより、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、析出気泡が発生することを防止することができる。
【0103】
以上の液体処理装置では、1種類の薬液をマイクロリアクタ2に供給して薬液に対する処理が行われるが、マイクロリアクタの設計によっては、複数種類の薬液を混合する処理が行われてもよい。また、複数のマイクロリアクタ2同士を接続してより高度な処理を薬液に対して行うことも可能であり、以下、このような液体処理装置の一例について述べる。
【0104】
図14はさらに他の例に係る液体処理装置の本体11eを示す図である。図14の液体処理装置では、複数の(3つの)マイクロリアクタ(ただし、図14中の最も左側のマイクロリアクタから右側に向かってそれぞれ符号2a,2b,2cを付している。)が設けられ、複数のマイクロリアクタ2a〜2cは1つの筐体91内に収容される。詳細には、図14中の最も左側のマイクロリアクタ2aには、2つの導入口が設けられ、各導入口には供給管31が接続される。各供給管31のマイクロリアクタ2aとは反対側には送液ポンプ32を介して薬液供給タンク33が接続され、供給管31の送液ポンプ32とマイクロリアクタ2aとの間には、送液ポンプ32側から順に第1圧力計51およびバルブ311が設けられる。一方の薬液供給タンク33には所定の液体状のモノマーが貯溜され、他方の薬液供給タンク33には当該モノマーに対する重合開始剤が貯溜される。
【0105】
また、マイクロリアクタ2aには1つの排出口が設けられ、他の2つのマイクロリアクタ2b,2cのそれぞれには、1つの導入口および1つの排出口が設けられる。マイクロリアクタ2aの排出口と中央のマイクロリアクタ2bの導入口との間、および、中央のマイクロリアクタ2bの排出口と最も右側のマイクロリアクタ2cの導入口との間のそれぞれには接続管92(例えば、内側の直径が1/16インチであって、ステンレス鋼(SUS316)にて形成されたもの)が取り付けられる。各マイクロリアクタ2a〜2cには温度センサを有するリアクタ温調部(ただし、図14中の最も左側のリアクタ温調部から右側に向かってそれぞれ符号62a,62b,62cを付している。)がリアクタ本体24(図3参照)に当接するようにして設けられる。各マイクロリアクタ2a〜2c(のリアクタ本体24)は、例えばステンレス鋼(SUS316)等の良好な熱伝導率を有する金属にて形成されており、リアクタ温調部62a〜62cによりマイクロリアクタ2a〜2cの温度が効率よく調整される。
【0106】
筐体91内において各マイクロリアクタ2a〜2cおよび対応するリアクタ温調部62a〜62cは断熱材931にて覆われており、互いに隣接する2つのマイクロリアクタ2a〜2c間には、断熱隔壁932が設けられる。これにより、複数のマイクロリアクタ2a〜2cは、筐体91内において断熱隔壁932により仕切られて形成される複数の空間(チャンバ)にそれぞれ配置されることとなる。各空間には吸気口94および排気口95が設けられて個別に換気される。また、最も右側のマイクロリアクタ2cの排出口には排出管41が接続される。なお、排出管41に設けられる各構成については、図1の液体処理装置1と同様である。
【0107】
図14の液体処理装置における処理では、図1の液体処理装置1と同様に、各バルブ311を閉塞させた閉塞状態において減圧ポンプ43を駆動することにより薬液経路(この場合は、樹脂モノマーおよび重合開始剤の薬液経路であり、実際には、これらの薬液経路はマイクロリアクタ2aにて1つになる。)の各バルブ311よりも下流側が減圧される(図4:ステップS11)。このとき、2つの第1圧力計51にて取得される圧力はともに同じ圧力(例えば、大気圧)とされる。第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、2つのバルブ311が同時に開かれてバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。そして、各送液ポンプ32が同時に能動化されることにより、モノマーおよび重合開始剤の送出が開始され、それぞれ異なる導入口からマイクロリアクタ2aの内部へと導入される(ステップS15)。また、制御部12(図1参照)による一方の供給管31における第1圧力と第2圧力との差、および、他方の供給管31における第1圧力と第2圧力との差の制御が開始される(ステップS16)。
【0108】
マイクロリアクタ2a〜2c内では、モノマーに対して所定の処理が行われる(ステップS17)。具体的には、マイクロリアクタ2aはリアクタ温調部62aにより約50℃に加熱されており、マイクロリアクタ2a内において、この温度環境下にてモノマーおよび重合開始剤が混合される(すなわち、マイクロリアクタ2aがミキサーとしての役割を果たす。)。続いて、混合された後の液体が、接続管92を介して中央のマイクロリアクタ2bへと導入する。マイクロリアクタ2bは、例えばセラミックヒータを有するリアクタ温調部62bにより約200℃に加熱されており、マイクロリアクタ2b内にてモノマーの重合が促進される。そして、重合後の液体(ポリマー)がマイクロリアクタ2cへと導入され、例えばペルチェ素子を有するリアクタ温調部62cによりマイクロリアクタ2cを約30℃に保持することにより重合反応を停止させた後、生成物である液体が排出口から排出管41へと排出され、生成物収容タンク421にて貯溜される。生成物収容タンク421にて必要な量の生成物が貯溜されると、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御が終了され(ステップS18)、送液ポンプ32による薬液の送出が停止されて液体処理装置における処理が終了する(ステップS19)。
【0109】
以上に説明したように、図14の液体処理装置では複数のマイクロリアクタ2a〜2cが直列に接続されるとともに、複数のマイクロリアクタ2a〜2cの温度が個別に調整される。これにより、薬液のマイクロリアクタ2a〜2cへの供給の際に、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、析出気泡が発生することを防止しつつ、複数のマイクロリアクタ2a〜2cのそれぞれにおいて混合後の液体に対して温度に依存する処理を行うことができる。また、液体処理装置では、各マイクロリアクタ2a〜2cを断熱材931にて覆い、かつ、断熱隔壁932により形成される空間に配置して各空間を個別に換気することにより、高温にされるマイクロリアクタ2bからの熱により他のマイクロリアクタ2a,2cにおいてモノマーの重合が促進されて生成後のポリマーの分子量の均一性が低くなったり、特に微細な流路を有し、かつ、低温での混合が必要とされるマイクロリアクタ2a内にて過剰な重合が生じて流路が閉塞されることが防止される。なお、各マイクロリアクタ2a〜2cにおける処理に対して影響が生じない場合には、断熱材931のみを設け、断熱隔壁932を省略することも可能である。また、図14の液体処理装置において、供給管31、接続管92および排出管41に断熱材を巻き付けることにより、処理対象の液体に対する外部からの熱の影響が抑制されてもよい。さらに、モノマーおよび重合開始剤はシリンジポンプにより送出されてもよい。
【0110】
図15はさらに他の例に係る液体処理装置の本体11fの一部を示す図である。図15の液体処理装置は、それぞれが個別にリアクタ温調部62が設けられる複数の(3つの)マイクロリアクタ2dを備え、各マイクロリアクタ2dは2つの導入口および1つの排出口を有する。液体処理装置は2つの供給管31および1つの排出管41を備え、一方の供給管31はマイクロリアクタ2d側にて分岐して各マイクロリアクタ2dの一の導入口に接続され、他方の供給管31もマイクロリアクタ2d側にて分岐して各マイクロリアクタ2dの他の導入口に接続される。また、排出管41はマイクロリアクタ2d側にて分岐して各マイクロリアクタ2dの排出口に接続される。各供給管31の分岐点よりも上流側の構成、および、排出管41の分岐点よりも下流側の構成は図14の液体処理装置と同様である。
【0111】
図15の液体処理装置においても、図14の液体処理装置と同様の処理を行うことにより、薬液のマイクロリアクタ2dへの供給の際に、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、析出気泡が発生することを防止しつつ、複数のマイクロリアクタ2dのそれぞれにおいて供給される薬液に対して温度に依存する処理を行うことができる。このように、並列に接続される複数のマイクロリアクタ2dの温度が個別に調整されることにより、各マイクロリアクタ2dの温度をより精度よく調整することが可能となり、生成物の品質を向上することが可能となる。
【0112】
なお、図14の液体処理装置において直列に接続される複数のマイクロリアクタ2a〜2cが1つのマイクロリアクタ群とされ、図15の液体処理装置における各マイクロリアクタ2dが、このマイクロリアクタ群に置き換えられ、並列に接続される複数のマイクロリアクタ群を用いてより高度な処理が薬液に対して行われてもよい。また、図1および図8ないし図11(並びに、後述の図16および図17)の液体処理装置において、図14および図15の液体処理装置のように直列または並列にて接続される複数のマイクロリアクタが設けられ、複数のマイクロリアクタの温度が個別に調整されてもよい。
【0113】
図16は本発明の第2の実施の形態に係る液体処理装置の本体11gを示す図である。図16の液体処理装置では、複数のマイクロリアクタ2が並列に配置され、各マイクロリアクタ2の導入口には供給管31が接続され、排出口には排出管41が接続される。供給管31には上流側(マイクロリアクタ2とは反対側)から順に流量調整部35、第1圧力計51およびバルブ311が設けられ、排出管41には上流側(マイクロリアクタ2側)から順に第2圧力計52および流量調整部45が設けられる。このように、図16の液体処理装置では、マイクロリアクタ2、供給管31、排出管41、第1および第2圧力計51,52および流量調整部35,45が1つの処理ユニット13とされ、複数の処理ユニット13が並列に配列される。そして、複数の処理ユニット13において、複数の供給管31が結合されて送液ポンプ32に接続され、複数の排出管41が結合されて減圧ポンプ43に接続される。
【0114】
図16の液体処理装置における処理では、薬液を第1圧力計51と送液ポンプ32との間の位置(複数の供給管31への分岐前または分岐後のいずれの位置であってもよい。)まで導入させた状態にて、制御部12(図1参照)が各処理ユニット13のバルブ311を閉塞するとともに、減圧ポンプ43の駆動を開始する(図4:ステップS11)。液体処理装置では、制御部12(図1参照)が複数の下流側の流量調整部45を個別に駆動制御することにより、全ての処理ユニット13において第1圧力計51により取得される第1圧力と第2圧力計52により取得される第2圧力との差がほぼ同時に設定圧力差以上となり(ステップS12,S13)、その後、全てのバルブ311が同時に開放されてバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。続いて、送液ポンプ32が能動化されることにより薬液の送出が開始されるとともに(ステップS15)、制御部12による各処理ユニット13における第1圧力と第2圧力との差の制御も開始される(ステップS16)。なお、第1圧力と第2圧力との差の制御において、送液ポンプ32および減圧ポンプ43と共に、各流量調整部35,45の駆動制御が行われてもよい。
【0115】
薬液は各マイクロリアクタ2の内部へと導入され、その後、排出管41へと排出される。そして、全ての流量調整部45において薬液のマイクロリアクタ2から排出管41への流出が検出されると、減圧ポンプ43が停止されるとともに切替弁413により経路が切り替えられ、複数の排出管41からの薬液が生成物収容タンク421へと導かれる。液体処理装置では、マイクロリアクタ2への薬液の供給が継続されるとともに、マイクロリアクタ2の内部にて薬液に対する所定の処理が行われ(ステップS17)、処理後の薬液(生成物)が生成物収容タンク421にて貯溜される。
【0116】
このとき、複数のマイクロリアクタ2ではそれぞれ薬液の流れにおける圧力損失が異なるが、各流量調整部35によりマイクロリアクタ2に流れる薬液の流量が一定にされるため、マイクロリアクタ2における薬液に対する処理を一定にして均一な生成物を生成することができる。また、各処理ユニット13に対して、制御部12により第1および第2圧力計51,52が示す圧力、並びに、流量調整部35,45が有する流量計が示す流量が監視されるため、マイクロリアクタ2内の流路に異常が生じた場合(例えば、マイクロリアクタ2に漏れが生じた場合や流路が閉塞しそうな場合)であっても、早期に異常を発見することが可能となり、生成物の質の低下を抑制することができる。なお、このようにマイクロリアクタ2内の流路に異常が生じた場合、異常が生じたマイクロリアクタ2を含む処理ユニット13の流量調整部35,45により、供給管31および排出管41が閉塞されることにより、他のマイクロリアクタ2を用いた生成物の生成を継続して行うことができる。
【0117】
液体処理装置では、生成物収容タンク421に必要な量の生成物が貯溜されると、第1圧力と第2圧力との差の制御が終了されるとともに(ステップS18)、薬液の送出が停止され(ステップS19)、液体処理装置における処理が終了する。
【0118】
以上に説明したように、図16の液体処理装置では、それぞれがマイクロリアクタ2、供給管31、排出管41並びに第1および第2圧力計51,52を有する複数の処理ユニット13が設けられ、複数の処理ユニット13が1つの送液ポンプ32および1つの減圧ポンプ43に接続される。これにより、薬液をマイクロリアクタ2に供給する際に、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、薬液内に析出気泡が発生することを防止しつつ、液体処理装置における薬液の処理量を増大させることができる。
【0119】
また、図16の液体処理装置において、それぞれが2つの導入口および1つの排出口を有する複数のマイクロリアクタが用いられてもよい。この場合、各マイクロリアクタの一方の導入口に、流量調整部35、第1圧力計51およびバルブ311を有する供給管31が接続され、これらの供給管31が結合されて1つの送液ポンプ32に接続される。また、各マイクロリアクタの他方の導入口にも、流量調整部35、第1圧力計51およびバルブ311を有する供給管31が接続され、これらの供給管31が結合されて他の1つの送液ポンプ32に接続される。このような液体処理装置では、例えば、一方の送液ポンプ32により水が送出され、他方の送液ポンプ32により油が送出されることによりエマルジョンが生成物として製造される(すなわち、マイクロリアクタがミキサーとしての役割を果たす。)。
【0120】
ところで、水と油とを混合してエマルジョンを製造する際には、ミキサーの温度がエマルジョンの品質に大きく影響するため、一般的には、実験によりエマルジョンの製造における適切なミキサーの温度が決定される。この場合に、通常、水と油とを混合するミキサーの温度を安定させてから水および油を送出して生成されたエマルジョンの品質が確認されるため、適切なミキサーの温度を決定するのに長時間を要してしまう。また、水と油との混合比やミキサー内における液体の流速等の適切な条件も決定する場合には、膨大な時間を要してしまう。
【0121】
これに対し、上記のエマルジョンの製造に利用可能な液体処理装置では、例えば、リアクタ温調部62により一のマイクロリアクタの温度を50℃としつつ、このマイクロリアクタに接続される2つの流量調整部35を制御することにより1対2の混合比にて水と油とを混合して生成物が取得される。このとき、他のマイクロリアクタについては、液体がマイクロリアクタ内に流入しないように流量調整部35,45が閉塞される。続いて、温度50℃にて予め安定させた別の1つのマイクロリアクタにおいて1対1の混合比にて水と油とを混合して生成物が取得され、別の生成物収容タンク421にて回収される。その後、温度100℃にて予め安定させたさらに別のマイクロリアクタにおいて1対1の混合比にて水と油とを混合して生成物が取得される。このようにして、上記液体処理装置では複数の条件にて製造された生成物を短時間にて取得することができ、高品質なエマルジョンの製造に適した各種条件を短時間にて決定することが可能となる。
【0122】
図17は本発明の第3の実施の形態に係る液体処理装置の本体11hの一部を示す図である。図17の液体処理装置ではそれぞれが供給管31、排出管41およびマイクロリアクタ2を有する複数の処理ユニット(図17では2つの処理ユニット13a,13b)が直列に設けられ、各処理ユニット13a,13bの供給管31では、上流側から下流側に向かって順に送液ポンプ32、第1圧力計51、バルブ311が設けられ、排出管41には第2圧力計52が取り付けられる。互いに隣接する2つの処理ユニット13a,13bでは、上流側の処理ユニット13aの排出管41の下流側に、他方の処理ユニット13bの送液ポンプ32が接続される。また、上流の処理ユニット13aの送液ポンプ32には薬液供給タンク33が接続され、下流の処理ユニット13bの排出管41には気体および液体のいずれに対しても吸引可能な吸引ポンプ46が減圧機構として接続される。
【0123】
次に、図17の液体処理装置における処理について図4に準じて説明を行う。まず、上流側の処理ユニット13aにおいて、薬液を第1圧力計51と送液ポンプ32との間の位置まで導入させた状態にて、処理ユニット13aのバルブ311が閉塞されるとともに、下流側の処理ユニット13bのバルブ311が開放される。そして、制御部12(図1参照)により処理ユニット13bの送液ポンプ32および吸引ポンプ46の駆動が開始され、薬液供給タンク33から吸引ポンプ46に至る薬液経路において処理ユニット13aのバルブ311の下流側が減圧される(図4:ステップS11)。処理ユニット13aにおいて第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、処理ユニット13aのバルブ311が開放されてこのバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。続いて、処理ユニット13aの送液ポンプ32が能動化されることにより薬液が上流側のマイクロリアクタ2の内部へと導入される(ステップS15)。また、制御部12により処理ユニット13aにおける第1圧力と第2圧力との差の制御も開始されることにより(ステップS16)、薬液の処理ユニット13aのマイクロリアクタ2内への導入に際して、薬液の先端部の界面近傍におけるガスが薬液内に気泡として取り込まれたり、析出気泡が発生することが防止される。その後、薬液は処理ユニット13aの排出管41へと排出されて薬液の先端部が下流側の処理ユニット13bの送液ポンプ32の位置まで到達する。
【0124】
実際には、処理ユニット13bの送液ポンプ32と第1圧力計51との間には流量計が設けられており、この位置まで薬液の先端部が移動したことが確認されると、処理ユニット13a,13bの送液ポンプ32が一時的に停止されるとともに、処理ユニット13bのバルブ311が閉塞され、薬液経路の処理ユニット13bのバルブ311の下流側が減圧される(すなわち、処理ユニット13bに対して図4のステップS11が行われる。)。そして、処理ユニット13bにおいて第1圧力と第2圧力との差が設定圧力差以上となると(ステップS12,S13)、処理ユニット13bのバルブ311が開放されてこのバルブ311の送液ポンプ32側(上流側)が減圧される(ステップS14)。続いて、処理ユニット13a,13bの送液ポンプ32が能動化されることにより薬液の先端部が処理ユニット13bのマイクロリアクタ2の内部へと導入され(ステップS15)、制御部12により処理ユニット13bにおける第1圧力と第2圧力との差の制御も開始される(ステップS16)。そして、薬液の先端部が処理ユニット13bの排出管41へと排出され、吸引ポンプ46を介して図示省略の生成物収容タンクに導かれる。
【0125】
液体処理装置では、直列に接続される2つのマイクロリアクタ2のそれぞれにおいて異なる処理が行われており(ステップS17)、2つの処理ユニット13a,13bのマイクロリアクタ2による処理後の生成物が生成物収容タンクにて貯溜される。そして、所望の量の生成物が取得されると、処理ユニット13a,13bにおける第1圧力と第2圧力との差の制御が終了され(ステップS18)、薬液の送出も停止されて液体処理装置における処理が終了する(ステップS19)。
【0126】
以上に説明したように、図17の液体処理装置では、それぞれが送液ポンプ32、マイクロリアクタ2、供給管31、排出管41並びに第1および第2圧力計51,52を備える複数の処理ユニット13a,13bが直列に接続され、互いに隣接する2つの処理ユニット13a,13bにおいて、下流側の処理ユニット13bの供給管31に接続された送液ポンプ32が、上流側の処理ユニット13aの排出管41に接続されて減圧機構としての動作を行い、下流側の処理ユニット13bの排出管41には吸引ポンプ46が別途接続される。ここで、直列に接続される2つのマイクロリアクタ2の間にポンプが設けられない場合に、仮に上流側の送液ポンプのみにより薬液を流すとすると、薬液を高圧にする必要が生じて高価なポンプが必要となるとともに、薬液の種類によっては溶媒に溶解した溶質が析出し易くなって所望の反応を均一に生じさせることが困難となり、さらには、マイクロリアクタの微細流路が析出物により閉塞されてしまう可能性もある。また、粘度の高い薬液を流す場合には上流側のマイクロリアクタに過度の負荷が与えられてしまう。これに対し、図17の液体処理装置では、直列に接続される2つのマイクロリアクタ2の間にポンプが設けられることにより、粘度の高い薬液を流す場合であっても薬液を過度に高圧にすることなく、比較的安価なポンプを用いて薬液を直列に並ぶ複数のマイクロリアクタ2に容易に供給することができる。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0128】
上記第1ないし第3の実施の形態において、制御部12による第1圧力と第2圧力との差の制御は、マイクロリアクタの内部へと薬液を供給する際に行われるのであれば、薬液のマイクロリアクタ2への導入直前、導入時および継続供給時のいずれかのみにおいて行われてもよい。
【0129】
図14に示す液体処理装置のように、複数のマイクロリアクタ2を直列に接続する場合に、液体処理装置の設計によっては接続管92を省略してマイクロリアクタ2同士がほぼ直接的に接続されてもよい。例えば、図18に示すように、一のマイクロリアクタ2の排出口に他のマイクロリアクタ2の導入口が専用のコネクタを用いて直接的に接続され、複数のマイクロリアクタ2同士が接続されて1つのマイクロリアクタ群20とされてもよい。この場合、最も上流側のマイクロリアクタ2の導入口に供給管31が接続され、最も下流側のマイクロリアクタ2の排出口に排出管41が接続されて液体処理装置が構成される。ここで、互いに隣接する2つのマイクロリアクタ2間に管を設ける場合には、薬液に対する処理の種類によっては、当該管における放熱による薬液の温度低下を防止するために断熱材等を設けて保温を行う必要があるが、図18に示すマイクロリアクタ群20では、マイクロリアクタ2間の管を省略して、コンパクトな液体処理装置を実現することができる。
【0130】
上記第3の実施の形態では、2つの処理ユニット13aが直列に接続されるが、液体処理装置では3以上の処理ユニット13aが直列に接続されてもよい。この場合、3以上の処理ユニットのうち互いに隣接する2つの処理ユニットにおいて、下流側の処理ユニットの供給管31に接続された送液ポンプ32が、上流側の処理ユニットの排出管41に接続されて減圧機構としての動作を行い、最下流の処理ユニット13bの排出管41に吸引ポンプ46(または、減圧ポンプ43)が別途接続される。
【0131】
また、上記実施の形態における液体処理装置において、1つのマイクロリアクタ2に対して複数のリアクタ温調部62が設けられ、複数のリアクタ温調部62によりマイクロリアクタ2の複数の部分がそれぞれ異なる温度に調整されてもよい。
【0132】
上記第1ないし第3の実施の形態における液体処理装置は様々な用途に用いることができる。例えば、2種類の液体の混合に利用されるマイクロリアクタが用いられる液体処理装置は流体分析機器の混合機部分等に利用することができる。もちろん、3以上の導入口が設けられたマイクロリアクタを用いることにより、液体処理装置が3種類以上の流体の混合、および反応に利用されても良い。また、液体処理装置は、燃料電池にも利用可能である。燃料電池として利用される場合には、マイクロリアクタには例えばイオン交換膜等の機能性膜を挟んで対向する2つの微細流路が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】第1の実施の形態に係る液体処理装置の構成を示す図である。
【図2】マイクロリアクタを示す平面図である。
【図3】マイクロリアクタ近傍の構成を示す縦断面図である。
【図4】マイクロリアクタに薬液を流して薬液に処理を行う動作の流れを示す図である。
【図5】実験用の装置の構成を示す図である。
【図6】目標気圧に対する到達時間と気泡の大きさとの関係を示す図である。
【図7.A】微細流路に光が照射される様子を示す図である。
【図7.B】微細流路に光が照射される様子を示す図である。
【図8】液体処理装置の他の例を示す図である。
【図9】液体処理装置のさらに他の例を示す図である。
【図10】液体処理装置のさらに他の例を示す図である。
【図11】液体処理装置のさらに他の例を示す図である。
【図12】第1圧力および第2圧力の変化を示す図である。
【図13】第1圧力および第2圧力の変化を示す図である。
【図14】液体処理装置のさらに他の例を示す図である。
【図15】液体処理装置のさらに他の例を示す図である。
【図16】第2の実施の形態に係る液体処理装置の構成の一部を示す図である。
【図17】第3の実施の形態に係る液体処理装置の構成の一部を示す図である。
【図18】マイクロリアクタ同士が接続される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0134】
1 液体処理装置
2,2a〜2d マイクロリアクタ
12 制御部
13,13a,13b 処理ユニット
21 導入口
22 排出口
23 微細流路
31 供給管
32 送液ポンプ
33 薬液供給タンク
34 脱気モジュール
35 流量調整部
36 送液機構
38 液体温調部
41 排出管
43 減圧ポンプ
44 生成物収容タンク
46 吸引ポンプ
51 第1圧力計
52 第2圧力計
61 振動付与部
62,62a〜62c リアクタ温調部
63 光照射部
311 バルブ
411 流量計
412 分岐路
413 切替弁
S15,S16 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路構造体に所定の液体を流して前記液体に処理を行う液体処理装置であって、
導入口から排出口に至る微細流路が内部に形成された流路構造体と、
前記導入口に接続される供給管と、
所定の液体を前記供給管を介して前記流路構造体へと供給する送液機構と、
前記排出口に接続される排出管と、
前記排出管に接続される減圧機構と、
前記供給管における流体の第1圧力を取得する第1圧力計と、
前記排出口における流体の第2圧力を取得する第2圧力計と、
前記流路構造体の内部へと液体を供給する際に、前記送液機構および/または前記減圧機構を駆動制御することにより前記第1圧力と前記第2圧力との差を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体処理装置であって、
前記制御部が、前記流路構造体の内部への液体の導入時において、前記第1圧力と前記第2圧力との差を前記液体の内部にて気泡が発生する圧力差以下に維持することを特徴とする液体処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体処理装置であって、
前記制御部が、前記流路構造体の内部への液体の導入直前から導入が完了するまで、前記第1圧力と前記第2圧力との差を前記液体の内部にて気泡が発生する圧力差以下に維持することを特徴とする液体処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記供給管にバルブが設けられており、
前記第1圧力計が、液体が前記バルブを通過する前の前記バルブが閉じられた閉塞状態において、前記バルブの前記送液機構側のガスの圧力を前記第1圧力として取得し、
前記制御部が、予め前記供給管の前記第1圧力計と前記送液機構との間の位置まで液体を導入しておき、前記閉塞状態にて前記減圧機構を駆動することにより、前記第2圧力を前記第1圧力よりも低くし、その後、前記バルブを開いて前記バルブの前記送液機構側を減圧するとともに前記送液機構を能動化することを特徴とする液体処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体処理装置であって、
前記閉塞状態から前記バルブが開放される直前の前記第1圧力と前記第2圧力との差が、0.9気圧以下であることを特徴とする液体処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体処理装置であって、
前記バルブの開放開始後2秒以内に前記供給管内における前記液体の先端部の界面近傍の減圧が完了することを特徴とする液体処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記第1圧力計の前記送液機構側において液体を脱気する脱気モジュールをさらに備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記送液機構により前記流路構造体に供給される前の液体を貯溜する液体供給タンクと、
前記流路構造体の内部への液体の導入時に、前記流路構造体の内部へと流入する液体の温度を前記液体供給タンク内における前記液体の温度よりも低くする液体温調部と、
をさらに備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記流路構造体の内部へと流入する液体の流量を調整する流量調整部をさらに備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記流路構造体の内部へと液体を供給する際に前記流路構造体に振動を付与する振動付与部をさらに備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記流路構造体の温度を調整する構造体温調部をさらに備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記流路構造体に光を照射する光照射部をさらに備え、
前記流路構造体の少なくとも一部において、前記光照射部からの光が内部の前記微細流路まで導かれることを特徴とする液体処理装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記減圧機構が、気体および液体のいずれに対しても吸引可能なポンプであることを特徴とする液体処理装置。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記流路構造体から前記排出管への液体の流出を検出する液体検出部と、
前記排出管から排出される液体を貯留する液体収容タンクと、
をさらに備え、
前記排出管が、
前記液体検出部による検出位置よりも前記液体収容タンク側にて分岐して前記減圧機構に接続される分岐路と、
前記排出口から前記減圧機構に至る経路と前記排出口から前記液体収容タンクに至る経路とを切り替える切替弁と、
を有し、
前記制御部が、前記液体検出部により液体の流出が検出された直後に前記切替弁を制御して前記液体を前記液体収容タンクへと導くことを特徴とする液体処理装置。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれかに記載の液体処理装置であって、
それぞれが、前記流路構造体、前記供給管、前記排出管、前記第1圧力計および前記第2圧力計を備える複数の処理ユニットを備え、
前記複数の処理ユニットの複数の供給管が結合されて前記送液機構に接続され、前記複数の処理ユニットの複数の排出管が結合されて前記減圧機構に接続されることを特徴とする液体処理装置。
【請求項16】
請求項1ないし13のいずれかに記載の液体処理装置であって、
それぞれが、前記送液機構、前記流路構造体、前記供給管、前記排出管、前記第1圧力計および前記第2圧力計を備える複数の処理ユニットを備え、
前記複数の処理ユニットが直列に接続され、互いに隣接する2つの処理ユニットにおいて、下流側の処理ユニットの前記供給管に接続された前記送液機構が、上流側の処理ユニットの前記排出管に接続された前記減圧機構としての動作を行い、最下流の処理ユニットの前記排出管に前記減圧機構が別途接続されることを特徴とする液体処理装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の液体処理装置であって、
前記流路構造体が、直列または並列にて接続される複数の流路構造体であり、
前記複数の流路構造体の温度が個別に調整されることを特徴とする液体処理装置。
【請求項18】
導入口から排出口に至る微細流路が内部に形成された流路構造体と、前記導入口に接続される供給管と、所定の液体を前記供給管を介して前記流路構造体へと供給する送液機構と、前記排出口に接続される排出管と、前記排出管に接続される減圧機構と、前記供給管における流体の第1圧力を取得する第1圧力計と、前記排出口における流体の第2圧力を取得する第2圧力計とを備える液体処理装置において、前記流路構造体の内部へと液体を供給する液体供給方法であって、
前記流路構造体の内部へと液体を送出する工程と、
前記液体を送出する工程にほぼ並行して前記送液機構および/または前記減圧機構を駆動制御することにより前記第1圧力と前記第2圧力との差を制御する工程と、
を備えることを特徴とする液体供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−38058(P2007−38058A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222519(P2005−222519)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】