説明

液体反応体から生成物を生成させる改良触媒方法

反応体を含む液体を多孔質セラミックハニカムを通して流すことによって反応生成物を製造する。このハニカムの壁は、反応体を含む液体がモノリシック構造のセラミックハニカムの入口端から出口端に流れる際に、反応体を含む液体が実質的に壁中に浸透し且つ反応体が反応するような気孔率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を用いて液体反応体から生成物を生成させる改良方法に関する。更に詳しくは、本発明は、バイオ触媒(例えば酵素)を用いた生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業的に重要な多くの反応が液体反応体を利用している。液体中の反応体を利用する典型的な反応は担体上の触媒を使用する。シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ複合材料及び種々の形態の炭素のような多くの担体が使用されている。典型的には、これらの反応は、触媒−担体が粉体、ビーズ又はチップの形態で内部に充填された反応器(典型的には固定床反応器と称する)中で実施する。
【0003】
残念ながら、これらの反応器は、拡散によって制限される傾向があるので、高速反応には有用でないことが判明している。即ち、拡散が反応速度に比べて遅い場合には、触媒構造の外殻のみが、触媒中に拡散する反応体の転化に有効に使用され、反応体は触媒の内側部に近づくことができない。その結果、触媒は全て使用されるとは限らない。更に、拡散制限は、収率の低下及び不所望な副反応生成物の存在のように生成物の品質を低下させる傾向がある。このような拡散制限を克服するために、触媒−担体の粒度を減少させることができるが、これは反応器を介して圧力低下を増加させ、触媒床の詰りの増大のような他の問題を引き起こす。
【0004】
最近では、充填床型反応器を改良するために、セラミックハニカム担体が使用されている。これらの反応器は、改善された物質移動及び低い圧力低下を示したとしても、液体が流路を下流に移動する際に反応に関与できる触媒は流路の壁に存在する少量に制限されるので、その用途は制限される。更に、触媒の量は、この拡散制限のために制限され、例えば、触媒で気孔が詰まるために、壁内の触媒が反応に関与できなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、前述のような1つ又はそれ以上の先行技術の問題を回避する、液体又は液体中の反応体を反応させる方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)入口端及び出口端が隣接流路によって接続されたセラミックハニカム中に反応体を含む液体を流入させ(ここで、隣接流路はセラミックハニカムの入口端から出口端に伸び;流路は、表面に触媒を有する複数の絡み合った薄い多孔質隔壁によって規定され;隔壁は、反応体を含む液体がモノリシック構造のセラミックハニカムの入口端から出口端まで流れる際に、反応体を含む液体が壁に実質的に浸透し且つ反応体が反応する気孔率を有する);そして
(b)セラミックハニカムの出口端から反応生成物を回収する
ことを含んでなる液体からの反応生成物の生成方法である。
【0007】
本発明の方法は、液体中の反応体を用いて反応生成物を生成させるのに有用であることができ、あらゆる応用例に使用できる。反応の例としては、水素添加、ヒドロキシル化、酵素触媒反応、アルキル化、酸化、エステル化、脱エステル化及びヒドロホルミル化が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の方法は、セラミックハニカムを利用する。セラミックハニカムは、任意の有用な形状を有することができ、ハニカムの流路も任意の有用な形状(例えば円形、正方形、長方形及び六角形)を有することができる。セラミックハニカムは、当業界で知られたような、任意の適当なセラミックであることができる。セラミックの例としては、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミニウム、酸窒化珪素及び炭窒化珪素、ムライト、コージライト、βスポジュメン、チタン酸アルミニウム、ストロンチウムアルミニウムシリケート、リチウムアルミニウムシリケートが挙げられる。好ましいセラミックとしては、炭化珪素、コージライト及びムライト又はそれらの組合せが挙げられる。炭化珪素の例は、米国特許6,669,751B1号及びWO pulication EP 1142619A1、WO 2002/070106A1に記載されている。他の適当な多孔質体は、WO2004/011386A1、WO2004/011124A1、US 2004/0020359A1及びWO 2003/051488A1に記載されている。
【0009】
好ましくは、セラミックハニカムは、針状微細構造を有するムライトハニカムである。このような針状セラミックの例としては、米国特許第5,194,154号、第5,173,349号、第5,198,007号、第5,098,455号、第5,340,516号、第6,596,665号及び第6,306,335号;米国特許出願公開第2001/0038810号;並びにInternational PCT publication WO 03/082773に記載されたものが挙げられる。
【0010】
ハニカムが針状微細構造を有するセラミックである場合には、粒子の平均アスペクト比は一般に2より大きい(長さが幅の2倍より大きい)。好ましくは、平均アスペクト比は少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約15である。
【0011】
液体がハニカムの壁に実質的に浸透するか否かは、いくつかの要因が関係している。このような要因の例としては、ハニカムの気孔の量及び型並びに表面張力が挙げられる。一般に、静止液体フラクションの少なくとも約5%がセラミックハニカムの壁に浸透した液体による場合に、液体は実質的に浸透する。Taylor流下におけるパルス色素滞留時間分布(RTD)実験によって測定した場合に、静止液体フラクションの好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、更に好ましくは少なくとも約20%、最も好ましくは少なくとも約40%がセラミックハニカムの壁に浸透した液体による。Taylor流は、G.I.Taylor,Journal of Fluid Mechanics,10,161−165(1960)に記載されたような、流路を通る気泡及び液体の交互流である。
【0012】
浸透する液体の割合は、同一条件下で高密度のハニカム及び液体の場合に得られるであろう層の静止液体フラクションを、本発明方法の静止液体フラクションから差し引くことによって求められる。高密度のハニカム中を流れる液体の静止液体フラクションは、Aussilousら,Physics of Fluids,12(10),2367−2371(2001)及びF.P.Bretherton,Journal of Fluid Mechanics,10,166−188(1960)に記載されたような公知の方法及び相関関係によって計算できる。
【0013】
静止液体フラクションを求める方法は、セラミックハニカムの流路を通して、反応体を含む液体及び気体を流すことを含むと考えられる。一般に、気液二相流は、約1×10-6〜約0.1のキャピラリー数を有する。好ましくは、キャピラリー数は少なくとも約1×10-5、より好ましくは少なくとも約1×10-4〜好ましくは最大約0.05、より好ましくは最大約0.01である。キャピラリー数は、(流速)×(液体粘度)÷(液体−気体界面相の表面張力)である。キャピラリー数は、当業界ではよく知られており、例えばAussilousら,前記;F.P.Bretherton,前記;Kolb,Chemical Engineering Science,46(9)2181−2195(1991);及びThulasidas,Chemical Engineering Science 50(2),183−199(1995)に記載されている。
【0014】
液体は実質的に浸透し、反応する。これは、同じ量の触媒が主に流路壁上に位置する同様なハニカム(即ち低気孔率の「<40%」のハニカム)に比較した、触媒g当たりの活性の増加によって一般に示される。この効果は典型的には、反応速度が速いほど顕著である。活性は、生成物への反応体の転化率、例えば単位モノリス(monolith)体積当たりの転化率又は触媒種g当たりの転化率である。好ましくは、触媒g当たりの活性は、少なくとも約5%、より好ましくは少なくとも約10%、更に好ましくは20%、最も好ましくは少なくとも約50%又はそれ以上増加する。場合によっては、活性は2、3又は5倍増加することができる。
【0015】
容器中の液体の滞留時間分布は、容器内の淀んだ液体フラクションを測定するのに用いられる。滞留時間分布は、反応器の供給時にトレーサーのパルスを導入し且つそれが反応器から出る際に記録することによって得られる。
【0016】
滞留時間分布から淀んだ液体フラクションを測定する際には、ピストン−ディスパージョン−エクスチェンジ(PDE)モデルを用いる。このモデルにおいて、反応器中の流体は、淀んだ部分と動的な部分に分解される。動的部分は、不規則変動が重ねられた平均速度で流れる。更に、動的部分と淀んだ部分との間で物質交換が行われることができる。このモデルにより、理論曲線と実験曲線とを比較した場合に、3つのパラメーターを求めることができる。
(a)淀んでいると見なすことができる容器中の液体のフラクション(淀んだ液体フラクション)、
(b)淀んだ液体フラクションと動的液体フラクションとの間の交換(物質交換)の速度、及び
(c)不規則な速度の変動の振幅(ディスパージョン)。
【0017】
PDEモデルは、充分に確立されており、Stegemen Dら、Industrial & Engineering Chemistry Research,35(2),378−385(1996)及びIliuta I,Thyrion Fら,Chemical Engineering Science,51,4579−4593(1996)に記載されている。
【0018】
本発明において適当なセラミックハニカム壁の具体的な気孔率及び気孔寸法は、個々のハニカム、触媒、液体及び液体の表面張力のようないくつかの要因によって決まる。セラミックハニカムの壁に実質的に浸透する反応体を含む液体の場合には、気孔率は一般に、少なくとも約45%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約55%でなければならない。操作に充分な強度を維持するためには、気孔率は、一般に、最大約85%、好ましくは最大約80%、最も好ましくは最大約75%である。気孔率の量の他に、平均気孔寸法が一般に、少なくとも直径約3μmである必要がある。好ましくは、平均気孔寸法は、直径が少なくとも約4μm、より好ましくは少なくとも約5μm、最も好ましくは少なくとも約10μm〜好ましくは最大約100μm、より好ましくは最大約50μm、最も好ましくは最大約25μmである。
【0019】
気孔の量及び平均気孔寸法は、例えばUnderwoodによってQuantitative Stereology,Addison−Wesley,Reading,Mass(1970)に記載された切断法を用いた研磨セクションの走査電子顕微鏡写真の定量的ステレオロジーのような周知の顕微鏡写真技術を用いて求めることができる。
【0020】
触媒は、セラミック粒子の少なくとも一部分に表面結合させるか、セラミック粒子の少なくとも一部分に組み込むか、又はその組合せであることができる。触媒は、当業界で知られた任意の適当な触媒であることができる。詳細には、触媒は、以下の好ましい実施態様のいずれか1つ又はそれらの組合せであることができる。
【0021】
第1の好ましい触媒は、直接結合された金属触媒、例えば貴金属、卑金属及びそれらの組合せである。貴金属触媒の例としては、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、レニウム、銀及びそれらの合金が挙げられる。卑金属触媒の例としては、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、バナジウム、チタン、スカンジウム及びそれらの組合せが挙げられる。金属触媒は好ましくは金属の形態であるが、酸化物、窒化物及び炭化物のような無機化合物として、又は多孔質触媒担体のセラミック粒子内の欠陥構造として存在することもできる。金属は当業界で知られたような任意の適当な方法によって適用できる。例えば金属触媒は化学蒸着によって適用できる。
【0022】
第2の好ましい触媒コーティングは、多孔質触媒担体のセラミック粒子の格子構造中に取り込まれるものである。例えば、元素は、Ce、Zr、La、Mg、Ca、前のパラグラフに記載された金属元素又はそれらの組合せであることができる。これらの元素は、当業界で知られたような任意の適当な方法で、また、後述の方法によって取り込ませることができる。
【0023】
第3の好ましい触媒は、金属が表面に沈着されたセラミック粒子の組合せである。これらは典型的にはウォッシュコートと称される。一般に、ウォッシュコートは、表面に金属が沈着(付着)されたマイクロメーターサイズのセラミック粒子、例えばゼオライト、アルミノシリケート、シリカ、セリア、ジルコニア、酸化バリウム、炭酸バリウム及びアルミナ粒子からなる。この金属は、直接沈着される金属に関して前述されたいずれかであることができる。特に好ましいウォッシュコート触媒コーティングは、表面に貴金属を有するアルミナ粒子からなるものである。ウォッシュコートは1種より多い金属酸化物、例えばジルコニウム、バリウム、ランタン、マグネシウム及びセリウムのうち少なくとも1種の酸化物を含むアルミナを含むことができると理解される。
【0024】
第4の好ましい触媒は、Goldenらによって米国特許第5,939,354号に記載されたような金属酸化物組成物を含むペロブスカイト型触媒である。
【0025】
第5の好ましい触媒は、Gruenbauerら(PCT Patent Application No.99/18809)に記載されたような、(a)少なくとも1種の金属塩を含む塩水溶液及び(b)両親媒性エチレンオキシド含有コポリマー(このコポリマーは400超の平均分子量、5〜90%のエチレンオキシド含量及び−15〜15のHLBを有する)を含む組成物を約300℃〜約3000℃の温度において焼成することによって形成され且つ触媒担体上に沈着されたものである。更に、触媒は、米国特許第5,698,483号及びPCT Patent Application No.99/03627に記載されたようなものであることもできる。
【0026】
第6の好ましい触媒は、酵素又は前述のウォッシュコート若しくは高表面積炭素によって担持された酵素である。酵素は、当業界で知られた他の適当な担体によって担持されることもできる。酵素に好ましい担体としては、炭素(例えば炭素繊維)、ポリエチエンイミン、アルギネートゲル、ゾル−ゲルコーティング又はそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、酵素はリパーゼ、ラクターゼ、デハロゲナーゼ又はそれらの組合せである。より好ましくは、酵素はリパーゼ、ラクターゼ又はそれらの組合せである。
【0027】
第7の好ましい触媒は、高表面積炭素(例えば炭素繊維)に担持された金属活性部位である。好ましくは、金属活性部位はRu、Ni、Pt、Pdなどの水素添加触媒である。
【0028】
第8の好ましい触媒は、固定化均一触媒(例えば共有結合された金属化合物)である。固定化触媒分子は、セラミック粒子、ウォッシュコート又は高表面積炭素に直接結合させることができる。固定化方法には、シランカップリング剤による結合のような、当業者に一般に知られたものがある。(担持されることができる均一触媒の例は金属シッフ塩基錯体、金属ホスフィン及びジアザホスファサイクルである)
触媒の量は、個々の反応に応じて任意の適当な量であることができる。一般に、セラミック粒子の少なくとも約10%〜本質的に全てが被覆されるか、又は触媒を含む。
【0029】
反応体を含む液体は液体反応体又は液体反応体中に溶解された反応体であることができる。液体は、1種より多くの反応体、例えば、混合された2種の液体反応体又は液体反応体中に溶解された固体反応体を含むことができる。好ましくは、液体の少なくとも一部は溶媒である。望ましい1種又はそれ以上の反応に応じて、任意の適当な溶媒を使用できる。溶媒の例としては、アルコール(例えばエタノール、プロパノール及びメタノール)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン)、グリコールエーテル(例えばDOWANOL(登録商標))、ケトン(例えばメチルエチルケトン、アセトン)、ジメチルスルホキシド、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ヘプテン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン)、水又はそれらの組合せが挙げられる。
【0030】
反応体を含む液体は、任意の実現可能な粘度であることができるが、一般に粘度は約0.01〜約1000センチポアズである。好ましくは、粘度は少なくとも約0.1センチポアズ、より好ましくは少なくとも約0.25センチポアズ、最も好ましくは少なくとも約0.5センチポアズ〜好ましくは最大500センチポアズ、より好ましくは最大約100センチポアズ、最も好ましくは最大約50センチポアズである。
【0031】
本発明の好ましい実施態様において、反応体の少なくとも1種は反応体を含む液体内に含まれる気体である。即ち、反応体の少なくとも1種は、反応体を含む液体内を流れる気泡である。好ましくは、このような反応体系が、前述のTaylor流条件下で流れている。
【0032】
反応体を含む液体がセラミックハニカムを通って流れた後、反応生成物は、当業界で知られたような任意の適当な手段(例えば蒸留及び濾過)によって回収する。
【実施例】
【0033】
例1〜9及び実施例1〜3に用いた針状ムライトセラミックハニカムは、WO 2003082773 A1に記載されたのと同様な方法で製造した。
【0034】
例1〜23及び比較例1〜8
例1〜23及び比較例1〜8においては、管壁とサンプルとの間の液体のバイパスを防止し且つ2つのサンプル間の空間が2mm未満となるように、垂直に取り付けた管中に直径約4cmのセル400個/inch2を有するハニカムを積み重ねた。水及び空気を、カラムの最上部でサンプルの断面全体に均一に分布させ、カラムを通して下方に向かって所定の流量で強制的に流した。検出可能なトレーサーを、サンプルを含むカラムの真上で液体供給材料中に注入した。トレーサーは、カラム内部の液体の滞留時間に比較して短い期間で注入した。管中の最後のサンプルの真下において、容器から出る液体の経時的濃度を、検出可能なトレーサーがカラム流出液中において検出されなくなるまで記録した。出口濃度対時間のデータを、曲線の下の面積及び曲線の最初の瞬間を用いて正規化して、いわゆるE(シータ)曲線を得た。
【0035】
このE−曲線を、Stegemenら(前述)によって記載されたPDEモデルにフィットさせて、サンプル内の淀んだ液体フラクション及び淀んだ液体と流れている液体との間の物質交換速度を得た。壁に浸透する静止液体フラクションの割合は、Hydrodynamnics of Taylor Flow in Capillaries and Monolith Reactors,PH.D.Thesis.M.Kreutzer,Delft University Press,Netherlands(2003)の75及び76頁に従って高密度壁キャピラリーに関して計算された液体フィルムフラクションを、PDEフィットから得られた静止液体フラクションから差し引いてから、PDEフィットからの静止液体フラクションで割り、得られた値に100を乗じることによって計算する。
【0036】
例1〜8については、ハニカムは、約60%の壁気孔率及び約9μmの平均気孔径を有する針状ムライトであった。例9〜15については、ハニカムは、約60%の壁気孔率及び約16μmの平均気孔径を有する針状ムライトであった。
【0037】
例16〜23については、約60%の壁気孔率及び約16μmの平均気孔径を有する針状ムライトハニカムにコロイドシリカを、Beauseigneurらによって米国特許第5,334,570号に記載されたのと同様な方法で浸漬コーティング法によって被覆した。浸漬コーティングの前に、針状ムライトハニカムは393Kにおいて2時間乾燥させ、浸漬前に冷却した。針状ムライトハニカムは、脱イオン水で希釈された15重量%LUDOX SM−30(ALDRICH;ナトリウム対イオンによって安定化された比表面積が345m2/gの7nmのコロイドシリカ)溶液中に2分間浸漬し、浸漬速度及び取り出し速度を0.5mm/sの一定とした。続いて、過剰の液体を、被覆された針状ムライトハニカムから、両面に1分間加圧空気を適用することによって除去した。次に、針状ムライトハニカムを、水平回転装置上で周囲条件において12時間乾燥させた。最後に、被覆された針状ムライトハニカムを723Kにおいて4時間焼成した。
【0038】
この浸漬コーティングによって、約11重量%のシリカウォッシュコートを含む針状ムライトハニカムが得られた。このシリカウォッシュコートは、約0.6μmの均一な層で針状ムライト粒子を完全に被覆した。被覆された針状ムライトハニカムの比表面積は、約36m2/g合計(330m2/gシリカ)であった。
【0039】
比較例1〜8に関しては、ハニカムは、約35%の壁気孔率及び約3μmの平均気孔径を有するコージライトであった。これらの例及び比較例の淀んだ液体フラクション、物質交換及び気孔中に浸透した液体の%を表Iに記載する。表IIにおいて、表Iからのデータを平均した。これは、浸透液体%は、触媒を用いた場合でも実質的にゼロより大きいことを明白に示しているが、比較例はこのような浸透を示さなかった。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
実施例1
セル200個/inch2の針状ムライトハニカム(気孔率60%)、直径4.3cm×長さ5cmを、65%スクロース水溶液中に室温で5分間浸漬した。含浸後、過剰の溶液を、流路に空気を吹き込むことによって流路から除去した。サンプルを連続回転下で室温において24時間乾燥させた後、393ケルビン(K)で3時間乾燥させた。サンプルを、水平炉中に配置された管型石英反応器中で炭化させた。サンプルは管型石英反応器中でN2流中において823Kまで10K/分で加熱した。サンプルを500mL/分のN2流下で823Kに2時間保持して、炭化担体を調製した。炭化後、担体は、重量増加によって計算すると、炭素が15重量%であった。
【0043】
リパーゼ{Sigmaから入手したカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)(E.C.3.1.1.3.,VII型)}を、ペリスタポンプを用いて2g/L、pH7の酵素溶液を、ガラス管中に取り付けられたモノリスを通して再循環させることによって炭素化担体上に固定化した。5時間後、約350mgのリパーゼが担体上に固定化されていた。サンプルを取り出し、水洗し、空気乾燥させた。続いて0.4mMのDMSO/トリス緩衝液(1:9)(pH7)中で再水和後、モノリスは、p−ニトロフェニルプロピオネート(pNPP)の加水分解によって測定した場合に0.19ミリモル/L−分の酵素活性を示した。pNNPの加水分解は348nmにおいて分光光度法で追跡した。
【0044】
実施例2
フルフリルアルコール(90mL)及びピロール(27mL)を293Kにおいて攪拌した。酸触媒(7mL、65% HNO3)を45分間にわたって徐々に添加した。この発熱反応の間、氷浴を用いて温度を293Kの一定に保った。重合を293Kにおいて1時間続けた。
【0045】
セル200個/inch2の針状ムライトハニカム(気孔率60%)、直径4.3cm×長さ5cmを、部分重合混合物中で5分間浸漬コーティングした。過剰の液体を、窒素によって吹き飛ばし、浸漬コーティングを5分後に繰り返した。含浸ポリマーを周囲条件において4時間固化させ、重合を353Kにおいて一晩続けさせた。ポリマーの炭化を、石英反応器中で823Kにおいて2時間実施した(10K/分、300mL/分,100% Ar)。炭化後、担体は、重量増加によって計算すると、炭素が30重量%であった。
【0046】
リパーゼ{Sigmaから入手したカンジダ・ルゴサ(E.C.3.1.1.3.,VII型)}を、実施例1に記載したのと同様な方法で炭化担体上に固定化した。5時間後、約190mgのリパーゼが担体上に固定化されていた。続いて0.4mMのDMSO/トリス緩衝液(1:9)(pH7)中で再水和後、モノリスは、pNPPの加水分解によって測定した場合に0.091ミリモル/L−分の酵素活性を示した。
【0047】
実施例3
Nijhuisら,Chemical Engineering Science,56(3),823−829(2001)によって記載された方法によって、炭素ナノファイバーをベースとするコーティングを製造した。Puralox SBA 200 γ−アルミナ(Condea)300g及びコロイドアルミナ(水中20%,Alfa Aesar)170gを水400mL中で混合した。pHを硝酸で4.5に調整し、スラリーを24時間ボールミル磨砕した。pHを硝酸で再び4.5に調整した。セル200個/inch2の針状ムライトハニカム(気孔率60%)、直径4.3cm×長さ5cmを、スラリー中に5分間浸漬し、水平にしてゆっくりと回転させながら乾燥させた。サンプルを723Kにおいて4時間焼成した。ニッケルを、353Kにおいて1M尿素水溶液から担体上に沈着(付着)させた。973Kにおいて1時間還元後、炭素ナノファイバーを石英反応器中で、Kovalenkoらの方法(Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,182−183,73−80(2002))に従って生長させた。Ni含浸サンプルをN2流中において973Kまでで加熱した(10K/分)。ニッケルをN2中20%H2中で1時間還元させた。773〜873Kに冷却後、炭素繊維を、プロペン又はメタン中及びN2中H2中で生長させた(総流量200mL/分)。担体は、重量増加によって計算すると、炭素を6重量%含んでいた。
【0048】
リパーゼ{Sigmaから入手したカンジダ・ルゴサ(E.C.3.1.1.3.,VII型)}を、実施例1に記載したのと同様な方法で炭化担体上に固定化した。5時間後、約1000mgのリパーゼが担体上に固定化されていた。続いて0.4mMのDMSO/トリス緩衝液(1:9)(pH7)中で再水和後、モノリスは、pNPPの加水分解によって測定した場合に0.25ミリモル/L−分の酵素活性を示した。
【0049】
実施例4
セル200個/inch2の針状ムライトハニカム(気孔率60%)、直径4.3cm×長さ5cmを、40%水性コロイドシリカ懸濁液(Ludox AS−40,Aldrich)中に5分間浸漬した。過剰の液体を、流路からゆるやかに吹き飛ばし、サンプルを空気中で一晩乾燥させてから、723Kにおいて4時間焼成した。次いで、サンプルをN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ポリエチレンイミンヒドロクロリド(Aldrich)の2−プロパノール中10%(v/v)溶液中に45時間浸漬して置いた。この浸漬後、サンプルを2−プロパノールで2回、水で2回洗浄した。
【0050】
ラクターゼ{Sigmaから入手したアスペルギルス・オルザエ(Aspergillus orzae)(E.C.3.1.2.23)からのβ−ガラクトシダーゼ}を、ペリスタポンプを用いて2g/L、pH7の酵素溶液を、ガラス管中に取り付けられたモノリスを通して再循環させることによって炭素化担体上に固定化した。5時間後、約350mgのラクターゼが担体上に固定化されていた。サンプルを取り出し、水洗した。モノリスは、50mMトリス緩衝液(pH7)中におけるo−ニトロフェニル−β−ガラクトピラノシド(oNPG)の加水分解によって測定した場合に0.015ミリモル/L−分の酵素活性を示した。oNPGの加水分解は405nmにおいて分光光度法で追跡した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セラミックハニカムの入口端から出口端に伸びる隣接流路によって接続された、入口端及び出口端を有するセラミックハニカム中に、反応体を含む液体を流入させ(ここで前記流路は、表面に触媒を有する複数の絡み合った薄い多孔質隔壁によって規定され;前記隔壁は、反応体を含む液体がモノリシック構造のセラミックハニカムの入口端から出口端まで流れる際に、反応体を含む液体が壁に実質的に浸透し且つ反応体が反応する気孔率を有する);そして
(b)セラミックハニカムの出口端から反応生成物を回収する
ことを含んでなる液体からの反応生成物の生成方法。
【請求項2】
前記モノリスセラミックハニカムが、少なくとも約50%の気孔率及び少なくとも約5μmの平均気孔寸法を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応体を含む液体が、液体中にパルス化されるトレイサーのTaylor流下で得られる滞留時間分布を用いて測定された場合に、静止液体フラクションの少なくとも10%である量で浸透する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記量が、静止液体フラクションの少なくとも約15%である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、E−曲線を用いて計算した場合に少なくとも約0.4の物質交換を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記物質交換が少なくとも約0.7である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記静止液体フラクションが少なくとも約1.25である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が酵素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が貴金属、卑金属又はそれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応体の少なくとも1種を、気体として導入する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応体の少なくとも1種が液体と同時に流れる気泡中の気体である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記液体が溶解された反応体を有する溶媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が水である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
モノリシック構造の前記セラミックハニカムが針状セラミックである請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記針状セラミックが少なくとも約3μmの平均気孔寸法及び少なくとも約2のアスペクト比を有する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記針状セラミックが少なくとも約5μmの平均気孔寸法を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記針状セラミックが針状ムライトである請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が炭素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素が炭素繊維である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒が更に酵素を含む請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2007−525223(P2007−525223A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500786(P2007−500786)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/006347
【国際公開番号】WO2005/084805
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】