説明

液体吐出装置及び画像記録装置

【課題】複数の液体吐出ヘッドを有していても小型化を可能にする。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、副走査方向に沿って2列に並べられ且つ異なる列に属する2つのインク吐出面が主走査方向に沿って重ならないように配列された8つのインクジェットヘッド2と、8つのインクジェットヘッド2とそれぞれ対応する8つのワイパー63,64と、8つのワイパー63,64を2つのワイパー63,64ごとに選択的に移動させる移動機構70とを含んでいる。ワイパー63,64は、インク吐出面4と対向しない退避位置に配置されているときに、対応するヘッド組に属する一方のインクジェットヘッド2と主走査方向に沿って重なり且つ他方のインクジェットヘッド2と副走査方向に沿って重なる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置及び画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙搬送方向に4つ並べて設けられたインクジェットヘッドと、4つのインクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニットとを含むインクジェットプリンタについて記載されている。このインクジェットプリンタにおいて、メンテナンスユニットは、用紙搬送方向と平行な方向に水平移動可能なフレーム、このフレーム上に設けられたブレード、ワイプローラ、インク吸引部材及び4つのキャップを有している。メンテナンスユニットがパージ位置にあるときに、各キャップがノズル面を覆い、ノズルからキャップに向かってインクが吐出されるパージ動作が行われる。その後、各キャップがノズル面から離隔し、メンテナンスユニットが退避位置に移動しているときに、インク吸引部材、ワイプローラ及びブレードが順にノズル面に対向し、各部材によってインク吸引及び拭き取りが行われる。こうして、4つのインクジェットヘッドのメンテナンスが行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−132025号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいて、メンテナンスユニットに設けられたワイプローラ及びブレードは、4つのインクジェットヘッドの位置関係と同じ位置関係にフレーム上に配置されている4つのキャップと対応して配置されている。従って、例えば、4つのインクジェットヘッドを1つの組として、もう1組を、用紙に対する各組の印字領域が用紙搬送方向と直交する方向に関して途切れないように直交する方向にずれた位置であって、各組の印字領域が重ならないように用紙搬送方向にずれた位置(すなわち、2組が用紙搬送方向に対して斜めの位置関係となる位置)に増設した場合、2組のインクジェットヘッド組の位置関係と同じ位置関係に配置されたワイプローラ及びブレードがメンテナンスユニットに設けられることになり、インクジェットプリンタが用紙搬送方向に関して大型化してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、複数の液体吐出ヘッドを有していても小型化が可能な液体吐出装置及び画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体吐出領域が形成された液体吐出面をそれぞれ有し、それぞれの前記液体吐出面が一方向に沿って2列に並べられ且つ異なる前記列に属する2つの前記液体吐出面が前記液体吐出面の面内方向に関して前記一方向と直交する方向に沿って重ならないように配列された複数の液体吐出ヘッドのうち、前記一方向に関して近接し且つ異なる前記列に係る2つの前記液体吐出ヘッドからそれぞれなる複数のヘッド組と、前記複数の液体吐出ヘッドの前記液体吐出面を払拭する複数のワイパーと、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッドに対応する2つの前記ワイパーが前記液体吐出面と当接しつつ前記液体吐出面に沿って前記直交する方向に関して互いに反対方向に移動するように、前記複数のワイパーを移動させる移動機構とを備えている。前記複数のワイパーが前記移動機構によって前記液体吐出面と対向しないワイパー退避位置に配置されているときに、1つの前記ヘッド組に属する一方の前記液体吐出ヘッドに対応する前記ワイパーが、前記一方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ他方の前記液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されており、前記他方の液体吐出ヘッドに対応する前記ワイパーが、前記他方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記一方の液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されている。
【0007】
これによると、複数の液体吐出ヘッドの液体吐出面を一方向に沿って2列に並べ、異なる列に属する2つの液体吐出面が直交する方向に沿って重ならないように配列することで、直交する方向に関して、各液体吐出ヘッドに隣接する領域にそれぞれ空いた空間が形成されても、これら空間には各液体吐出ヘッドに対応する複数のワイパーが配置される。このように空いた空間にワイパーを配置することで、複数のワイパーを配置する別の空間を設ける必要がなくなって、液体吐出装置の小型化を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記複数のヘッド組が、同じ色の液体を吐出する2つの前記液体吐出ヘッドからそれぞれなり、前記移動機構が、前記複数のワイパーを前記ヘッド組に係る前記2つのワイパー毎に選択的に移動させるものであり、前記複数のヘッド組のうち、選択された前記ヘッド組に係る前記2つのワイパーが当該ヘッド組に係る2つの前記液体吐出面を払拭するように、前記移動機構を制御する移動制御手段をさらに備えていることが好ましい。
これにより、移動制御手段の制御によって複数のワイパーをヘッド組に係る2つのワイパー毎に選択して移動させることが可能になるので、払拭する必要があるヘッド組の液体吐出面だけをワイパーで払拭することができる。
【0009】
また、本発明において、前記移動機構が、前記ヘッド組に係る前記2つのワイパーと連結され、前記直交する方向に沿って走行することによって前記2つのワイパーを互いに前記反対方向に移動させる複数のベルトと、駆動源からの動力を前記ベルトに伝達する状態及び駆動源からの動力を前記ベルトに伝達しない状態のいずれかに切り換える複数の切換手段とを有しており、前記移動制御手段が、少なくとも1つの前記切換手段を駆動源からの動力を前記ベルトに伝達する状態に切り換えることが好ましい。
これにより、移動制御手段が、1つの切換手段だけを駆動源からの動力をベルトに伝達するように切り換えることが可能になるので、1つのヘッド組に係る液体吐出面だけをワイパーで払拭することができる。
【0010】
また、本発明において、前記移動制御手段が、すべての前記切換手段を駆動源からの動力を前記ベルトに伝達する状態に切り換えてもよい。
これにより、移動制御手段が、すべての切換手段を駆動源からの動力をベルトに伝達するように切り換えることが可能になるので、すべてのヘッド組に係る液体吐出面をワイパーで払拭することが可能になる。そのため、すべての液体吐出面をワイパーで払拭するために要する時間を短くすることができる。
【0011】
また、このとき、前記複数のベルトが、平面視において、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッド及び前記ヘッド組に係る前記2つのワイパーをそれぞれ取り囲むように配置されていてもよい。
これにより、ヘッド組間の間隙を小さくすることができる。
【0012】
また、このとき、前記複数のベルトが、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッド間にそれぞれ配置されており、前記ベルトの直交する方向に延在する部分が鉛直方向に関して対向して配置されていてもよい。
これにより、ベルトがヘッド組間に配置されていても、当該ベルトの直交する方向に延在する部分が鉛直方向に関して対向して配置されているので、ヘッド組間の間隙を小さくすることができる。加えて、ベルト長が比較的短くなって、駆動源にかかる負荷を小さくすることができる。
【0013】
また、本発明において、前記液体吐出面と当接することによって当該液体吐出面に形成された前記液体吐出領域を覆う複数のキャップをさらに備えており、前記ベルトが、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッドに対応する2つの前記キャップと連結されており、前記ベルトが前記直交する方向に沿って走行することによって前記2つのキャップが前記液体吐出面と対向するキャップ位置及び前記液体吐出面と対向しないキャップ退避位置との間において前記直交する方向に関して互いに前記反対方向に移動することが好ましい。
これにより、複数のキャップもヘッド組に係る2つのキャップ毎に選択して移動させることが可能になる。
【0014】
また、本発明において、前記複数のキャップが前記キャップ退避位置に配置されているときに、前記一方の液体吐出ヘッドに対応する前記キャップが、前記一方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記他方の液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されており、前記他方の液体吐出ヘッドに対応する前記キャップが、前記他方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記一方の液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されていることが好ましい。
これにより、直交する方向に関して、各液体吐出ヘッドに隣接する空いた空間に各液体吐出ヘッドに対応する複数のキャップが配置されることになる。そのため、液体吐出装置をより小型化することができる。
【0015】
また、本発明において、前記ワイパーが前記ワイパー退避位置に配置されているときに、前記液体吐出ヘッドに対応する前記キャップが、前記直交する方向に関して、当該液体吐出ヘッドに対応する前記ワイパーをその液体吐出ヘッドとで挟む位置に配置されていることが好ましい。
これにより、液体吐出装置をより一層小型化することができる。
【0016】
本発明の画像記録装置は、インク吐出領域が形成されたインク吐出面をそれぞれ有し、それぞれの前記インク吐出面が一方向に沿って2列に並べられ且つ異なる前記列に属する2つの前記インク吐出面が前記インク吐出面の面内方向に関して前記一方向と直交する方向に沿って重ならないように配列された複数のインクジェットヘッドのうち、前記一方向に関して近接し且つ異なる前記列に係る2つの前記インクジェットヘッドからそれぞれなる複数のヘッド組と、記録媒体を、前記インク吐出面と対向させつつ前記一方向に搬送させる記録媒体搬送機構と、前記複数のインクジェットヘッドの前記インク吐出面を払拭する複数のワイパーと、前記ヘッド組に属する前記2つのインクジェットヘッドに対応する2つの前記ワイパーが前記インク吐出面と当接しつつ前記インク吐出面に沿って前記直交する方向に関して互いに反対方向に移動するように、前記複数のワイパーを移動させる移動機構とを備えており、前記複数のワイパーが前記移動機構によって前記インク吐出面と対向しないワイパー退避位置に配置されているときに、1つの前記ヘッド組に属する一方の前記インクジェットヘッドに対応する前記ワイパーが、前記一方のインクジェットヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ他方の前記インクジェットヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されており、前記他方のインクジェットヘッドに対応する前記ワイパーが、前記他方のインクジェットヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記一方のインクジェットヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されている。
【0017】
これによると、複数のインクジェットヘッドのインク吐出面を一方向に沿って2列に並べ、異なる列に属する2つのインク吐出面が直交する方向に沿って重ならないように配列することで、直交する方向に関して、各インクジェットヘッドに隣接する領域にそれぞれ空いた空間が形成されても、これら空間には各インクジェットヘッドに対応する複数のワイパーが配置される。このように空いた空間にワイパーを配置することで、複数のワイパーを配置する別の空間を設ける必要がなくなって、画像記録装置の小型化を図ることができる。さらに、移動制御手段の制御によって複数のワイパーをヘッド組に係る2つのワイパー毎に選択して移動させることが可能になるので、払拭する必要があるヘッド組のインク吐出面だけをワイパーで払拭することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタ要部の平面図である。図2は、図1に示すII−II線に沿った断面図である。図3は、図1に示す4つのヘッド組を下方から見たときの図である。
【0020】
インクジェットプリンタ(液体吐出装置、画像記録装置)1は、図1に示すように、2つのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)2からそれぞれなる4つのヘッド組3a,3b,3c,3dを有するライン式のカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中上方に給紙部が、図1中下方に排紙部が(ともに図示せず)、それぞれ構成されている。
【0021】
インクジェットプリンタ1の4つのヘッド組3a,3b,3c,3dと対向する位置であって給紙部及び排紙部に挟まれた位置には、記録媒体たる用紙を8つのインクジェットヘッド2のインク吐出面(液体吐出面)4と対向する位置に搬送する用紙搬送機構(記録媒体搬送機構)10が設けられている。用紙搬送機構10は、図1に示すように、上下方向に関して4つのヘッド組3a,3b,3c,3dを挟む位置に配置された一対のベルトローラ6,7と、一対のベルトローラ6,7に架け渡された無端状の搬送ベルト8とを有している。このうち、ベルトローラ7には搬送モータ97(図4参照)から駆動力が与えられて、所定方向に回転する。このベルトローラ7の所定方向への回転によって、用紙を用紙搬送方向A(図1中上方から下方に向う方向)に搬送するように、搬送ベルト8が走行する。
【0022】
搬送ベルト8はベース基材とウレタンゴムの2層構造で構成されており、その外周面、すなわち、搬送面9が粘着性を有している。そして、給紙部から送り出された用紙が、搬送面9の粘着力により保持されながら、搬送方向Aに搬送される。
【0023】
8つのインクジェットヘッド2は、図1及び図2に示すように、それぞれ主走査方向(搬送方向Aと直交する方向:直交する方向)に長尺な直方体形状を有している。また、インクジェットヘッド2はその下端にヘッド本体5を有している。
【0024】
ヘッド本体5の上面には、カバー14によって部分的に覆われた、インクを一時的に貯溜するリザーバユニットが固定されている。リザーバユニットの図1中左方端部には、チューブジョイント11が接続されており、このチューブジョイント11から供給されたインクを貯溜するインク溜まりがリザーバユニットの内部に形成されている。リザーバユニットは、主走査方向に関してヘッド本体5よりも長く形成されており、この両側に延出した部分12がリザーバユニットごとに設けられた昇降フレーム(不図示)への固定部となっている。この昇降フレームには、各インクジェットヘッド2が固定部を介して固定されており、ヘッド昇降機構98(図4参照)によって上下動可能になっている。
【0025】
通常、8つのインクジェットヘッド2は、インク吐出面4と搬送ベルト8の搬送面9とが平行となり、且つこれらの面間に所定の隙間が形成される印刷位置(図2中に示すインクジェットヘッド2の位置)に配置されている。この構成において、搬送ベルト8によって搬送される用紙が8つのヘッド本体5のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙上に所望画像が形成される。一方、インクジェットヘッド2のメンテナンス時は、メンテナンスを行いたいインクジェットヘッド2が固定された昇降フレームがヘッド昇降機構98によって移動されて、このインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方に離れたヘッドメンテナンス位置(図5(a)参照)に配置される。なお、メンテナンスを行いたいインクジェットヘッド2のみが、このインクジェットヘッド2を固定している昇降フレームがヘッド昇降機構98により移動されて、メンテナンス位置に配置されてもよいし、全てのインクジェットヘッド2が、これらインクジェットヘッド2を固定している昇降フレームがヘッド昇降機構98により移動されて、メンテナンス位置に配置されてもよい。
【0026】
ヘッド本体5の底面、すなわち、インクジェットヘッド2のインク吐出面4には、図3に示すように、インクを吐出する複数の微小径のノズル4aと、これらノズル4aが集まって構成されたインク吐出領域(液体吐出領域)4bと、インク吐出領域4bを取り囲む外側領域4cとが形成されている。
【0027】
また、8つのインクジェットヘッド2は、図3に示すように、インク吐出面4が副走査方向に沿って4つずつ2列に並べられ且つ異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように千鳥状に配列されている。また、8つのインクジェットヘッド2は、インク吐出面4が副走査方向に関して互いに近接しているとともに異なる列に係る2つのインクジェットヘッド2からなる4つのヘッド組3a,3b,3c,3dに分けられている。そして、8つのインクジェットヘッド2が副走査方向に関して千鳥状に配置されるように、4つのヘッド組3a,3b,3c,3dが副走査方向に関して並設されている。
【0028】
各ヘッド組3a,3b,3c,3dにそれぞれ属する2つのインクジェットヘッド2は、インク吐出面4が副走査方向に沿って互いにオーバーラップしており、用紙に対する印字領域(すなわち、インク吐出領域4b)が主走査方向に連続している。具体的には、1つのインクジェットヘッド2のインク吐出領域4b内において、主走査方向に関して隣接するノズル4aのノズル間隔と、主走査方向に関して、ヘッド組3aに属する図3中右方に位置するインクジェットヘッド2のインク吐出面4において最も内側(図3中左方)に形成されたノズル4aと、図3中左方に位置するインクジェットヘッド2のインク吐出面4において最も内側(図3中右方)に形成されたノズル4aとの間隔とが等間隔になるように、インクジェットヘッド2が配列されている。なお、他のヘッド組3b,3c,3dもヘッド組3aと同様に配置された2つのインクジェットヘッド2からなる。また、8つのインクジェットヘッド2は、各ヘッド組3a,3b,3c,3dごとに互いに異なる4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)を吐出する。つまり、同じヘッド組に属する副走査方向に関して近接し、異なる列に属する2つのインクジェットヘッド2が、同じ色のインクを吐出する。
【0029】
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット60について説明する。メンテナンスユニット60は、副走査方向に沿って並べられた一方(図1中左方)の列の各ヘッド組3a,3b,3c,3dに属する4つのインクジェットヘッド2に対応する4つのキャップ61及び4つのワイパー63と、副走査方向に沿って並べられた他方(図1中右方)の列の各ヘッド組3a,3b,3c,3dに属する4つのインクジェットヘッド2に対応する4つのキャップ62及び4つのワイパー64と、ヘッド組ごとにこれら8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64をそれぞれ主走査方向に移動させる移動機構70と、これら8つのキャップ61,62、8つのワイパー63,64及び移動機構70を内包するトレイ69とを有している。トレイ69には、各インクジェットヘッド2とそれぞれ対向する位置に貫通部68aが形成されている。貫通部68aは、矩形平面形状を有しており、各インクジェットヘッド2に係る8つのインク吐出面4全体が、搬送面9と対向可能なサイズに形成されている。
【0030】
キャップ61,62は、ともに同じ形状及びサイズを有しており、インク吐出領域4bよりも一回り大きな相似形状を有する基材65と、基材65の周縁部に立設された環状突起66とを有している。この構成により、キャップ61,62は、環状突起66の先端がインク吐出面4の外側領域4cと当接することでインク吐出領域4bを覆うことが可能になっており、ノズル4a内のインクの乾燥を抑制することができる。
【0031】
また、基材65には、鉛直方向上方に向かって開口した凹部65aが主走査方向に並んで2つ形成されている。凹部65aの底部には、貫通孔65bが形成されている。このように貫通孔65bが形成されていることで、パージ動作によってキャップ61,62内に吐出され凹部65aに溜まったインクを図示しない廃インク溜めに貫通孔65bを通して廃棄することが可能になる。
【0032】
また、キャップ61,62は、図2に示すように、それぞれ3つのバネ67によって下方から支持されている。このように、3つのバネ67によってキャップ61,62がそれぞれ支持されていることで、環状突起66とインク吐出面4とを当接させたときの衝撃を緩和することが可能になって、インク吐出面4が環状突起66によって損傷しにくくなる。
【0033】
また、メンテナンスユニット60は、ワイパー63,64でインク吐出面4を払拭するときに、キャップ61,62のその高さを下方に移動させるキャップ高さ調整機構99(図4参照)を有している。これによって、ワイパー63,64の先端がキャップ61,62よりも高くなってキャップ61,62がインク吐出面4に接触しなくなる。
【0034】
ワイパー63,64は、図1に示すように、各々、対応するインクジェットヘッド2と、このインクジェットヘッド2に対応するキャップ61,62とに挟まれた位置に配置されており、対応するインクジェットヘッド2のインク吐出面4の副走査方向に関する幅とほぼ同じ長さに延在しており、ゴムなどの弾性材料からなる。また、ワイパー63,64は、キャップ61,62をバネ67を介して支持する後述の支持プレート71,72から立設して設けられている。なお、ワイパー63,64の先端は、キャップ61,62がキャップ高さ調整機構99によって下方に下げられていない場合はキャップ61,62の基材65とほぼ同じ高さとなるように形成されている。
【0035】
ヘッド組3aに係るワイパー63は、インク吐出面4と対向しない退避位置(図1に示す位置)に配置されているときに、対応する図1中左方に位置するインクジェットヘッド2と主走査方向に沿って重なり且つ図1中右方に位置するインクジェットヘッド2と副走査方向に沿って重なる位置に配置されている。また、ヘッド組3aに係るワイパー64は、インク吐出面4と対向しない退避位置(図1に示す位置)に配置されているときに、対応する図1中右方に位置するインクジェットヘッド2と主走査方向に沿って重なり且つ図1中左方に位置するインクジェットヘッド2と副走査方向に沿って重なる位置に配置されている。なお、ヘッド組3b,3c,3dに係るワイパー63,64も、ヘッド組3aに係るワイパー63,64と同様に配置されている。
【0036】
移動機構70は、図1及び図2に示すように、副走査方向に延在し且つ軸回り方向に回転可能に支持された2本の軸90,93及び4本の軸81と、4本の軸81にそれぞれ設けられた4個のベルトローラ74と、軸93に設けられた4個のベルトローラ75と、これらベルトローラ74,75に架け渡された4本のベルト73と、4本のベルト73にそれぞれ連結された8つの支持プレート71,72と、各ベルトローラ74に回転動力を伝達する動力伝達機構80とを有している。
【0037】
4つの支持プレート71は、各ヘッド組3a,3b,3c,3dの副走査方向に沿った一方(図1中左方)の列に属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ61及びワイパー63をそれぞれ支持しており、ベルト73の主走査方向に延在する部分に連結されている。キャップ61及びワイパー63は、平面視において、対応するインクジェットヘッド2と主走査方向に沿って重なっており且つ当該インクジェットヘッド2と同じヘッド組に属する他方のインクジェットヘッド2と副走査方向に沿って重なる位置に配置されている。
【0038】
4つの支持プレート72は、各ヘッド組3a,3b,3c,3dの副走査方向に沿った他方(図1中右方)の列に属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ62及びワイパー64をそれぞれ支持しており、ベルト73の主走査方向に延在する部分に連結されている。キャップ62及びワイパー64は、平面視において、対応するインクジェットヘッド2と主走査方向に沿って重なっており且つ当該インクジェットヘッド2と同じヘッド組に属する他方のインクジェットヘッド2と副走査方向に沿って重なる位置に配置されている。
【0039】
換言すると、8つの支持プレート71,72は、副走査方向に関して、8つのインクジェットヘッド2の千鳥配列とは逆の千鳥配列で配列されている。
【0040】
4つのベルトローラ75は、軸93の各ヘッド組3a,3b,3c,3dの副走査方向中央と主走査方向に沿って重なる位置に、その径方向が鉛直方向となるように配置されており、図2中時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ回転可能に支持されている。
【0041】
4つのベルトローラ74は、4本の軸81にその径方向が鉛直方向となるように配置されており、図2中時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ回転可能に固定されている。
【0042】
4本のベルト73は、一対のベルトローラ74,75にそれぞれ架け渡されており、副走査方向に関して、各ヘッド組3a,3b,3c,3dに属する2つのインクジェットヘッド2間に配置されている。また、ベルト73は、ベルト73の主走査方向に延在する部分が鉛直方向に互いに対向するように配置されている。なお、本実施形態におけるベルト73は、その幅が非常に狭いゴムからなる平ベルトを用いているが、断面が円形などのゴムベルトであってもよいし、金属からなるワイヤであってもよい。要するにベルトの機能を有する部材であればよい。
【0043】
動力伝達機構80は、軸90の一端(図1中上端)に軸90とともに軸90の軸回り方向に回転可能に固定されたギア92と、軸90の副走査方向に沿った各ヘッド組3a,3b,3c,3dに対応した位置に軸90とともに軸90の軸回り方向に回転可能に固定された4つのギア91と、4つのギア91と噛み合って回転する4つのギア85と、4つのギア85及び4本の軸81間に固定された4つのクラッチ(切替手段)84とを有している。
【0044】
クラッチ84は、ギア85に固定された入力軸84aと、軸81に固定された出力軸84bとを有している。クラッチ84は、入力軸84aと出力軸84bとが電磁的に結合されることで、入力軸84aからの動力が出力軸84bに伝達され、入力軸84aが回転すると、それに伴い出力軸84bも回転する。また、クラッチ84は、入力軸84aと出力軸84bとの結合が解かれると、入力軸84aからの動力が出力軸84bに伝達されなくなり、入力軸84aが回転しても、出力軸84bは回転しない。
【0045】
回転モータ95の駆動によりギア92が所定方向に回転すると、同方向に軸90も回転し、4つのギア91,85を介してクラッチ84の入力軸84aに逆方向の回転動力が伝達される。このとき、入力軸84aと出力軸84bとが電磁的に結合されていると、入力軸84aの逆方向の回転が出力軸84bに伝達され、出力軸84bとともに軸81及びベルトローラ74が逆方向に回転することにより、ベルト73がギア92の回転方向と逆方向に走行する。つまり、各ヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する各クラッチ84の入力軸84a及び出力軸84bをそれぞれ電磁的に結合するか否かを切り換えることで、それぞれのベルト73を選択的に走行させることができる。
【0046】
また、支持プレート71は、ベルト73の鉛直方向上方に位置する主走査方向に延在する部分と連結されており、支持プレート72は、ベルト73の鉛直下方に位置する主走査方向に延在する部分と連結されている。図1に示すように、トレイ69には、副走査方向に関して、貫通部68aをそれぞれ挟む、主走査方向に沿って延在した2本のガイドレール68cが、貫通部68aごとに8組形成されている。これら8組のガイドレール68cのうち、副走査方向に沿って並べられた図1中左方の列に位置する4組のガイドレール68cは、支持プレート71の副走査方向の両端部と対向しており、その部位に主走査方向に沿って延在して形成された凹部と摺動可能に嵌合している。残りの副走査方向に沿って並べられた図1中右方の列に位置する4組のガイドレール68cは、支持プレート72の副走査方向の両端部と対向しており、その部位に主走査方向に沿って延在して形成された凹部と摺動可能に嵌合している。
【0047】
以上のようなメンテナンスユニット60の構成により、ギア92を回転モータ95によって図2中時計回り方向に回転させると、クラッチ84が電磁的に結合されているヘッド組に対応する支持プレート71上に設けられたキャップ61及びワイパー63が対応するインク吐出面4と対向しない退避位置(図1に示す位置:ワイパー退避位置:キャップ退避位置)から支持プレート71とともに図1中左方に移動し、支持プレート72上に設けられたキャップ62及びワイパー64が対応するインク吐出面4と対向しない退避位置から支持プレート72とともに図1中右方に移動する。このようにして、クラッチ84が電磁的に結合されたヘッド組に対応する2つのキャップ61,62及び2つのワイパー63,64をインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)に選択的に移動させることができる。つまり、全てのクラッチ84を電磁的に結合させることで、全てのヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64をインク吐出面4と対向する位置に移動させることも可能である。
【0048】
一方、ギア92を回転モータ95によって図2中反時計回り方向に回転させると、クラッチ84が電磁的に結合されたヘッド組に対応する支持プレート71に設けられたキャップ61及びワイパー63が対応するインク吐出面4と対向する位置から図1中右方に移動し、支持プレート72に設けられたキャップ62及びワイパー64が対応するインク吐出面4と対向する位置から図1中左方に移動する。このようにして、クラッチ84が電磁的に結合されたヘッド組に対応するキャップ61,62及びワイパー63,64をインク吐出面4と対向しない退避位置に移動させることができる。つまり、全てのクラッチ84を電磁的に結合させることで、全てのヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64をインク吐出面4と対向しない退避位置に移動させることも可能である。
【0049】
次に、インクジェットプリンタ1の動作を制御する制御部100について、図4を参照して説明する。図4は、制御部の概略を示すブロック図である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などによって構成されており、これらが図4に示すように、印刷制御部101、搬送制御部102、メンテナンス制御部103として動作する。
【0050】
印刷制御部101は、制御部100がPC(パーソナルコンピュータ)120などの外部装置から印刷データを受信したときに、ヘッド駆動回路111を制御して対応するインクジェットヘッド2からインクを吐出させる。
【0051】
搬送制御部102は、制御部100がPC120などの外部装置から印刷データを受信したときに、搬送モータ97を駆動して、搬送ベルト8上の用紙を搬送するようにモータドライバ112を制御する。
【0052】
メンテナンス制御部103は、ヘッド昇降制御部104と、ポンプ制御部105と、メンテナンスユニット移動制御部106(移動制御手段)とを有している。
【0053】
ヘッド昇降制御部104は、メンテナンス動作に合わせてヘッド昇降機構98を制御して、昇降フレームとともにインクジェットヘッド2を昇降移動させる。
【0054】
ポンプ制御部105は、パージが必要な時、例えば、インクジェットヘッド2へのインク初期導入時及び印字動作が長時間行われない休止後の印字開始時などに、インク供給ポンプ96を駆動して強制的にインクをインクジェットヘッド2へ送るようにポンプドライバ114を制御する。
【0055】
メンテナンスユニット移動制御部106は、メンテナンス動作に合わせてベルト73を所定方向に走行させて、支持プレート71,72とともにキャップ61,62及びワイパー63,64を移動させるようにモータドライバ115を制御して回転モータ95を駆動する。また、メンテナンス制御部106は、メンテナンス動作を行いたいヘッド組3a,3b,3c,3dに対応したクラッチ84を電磁的に結合させるよう制御する。さらに、メンテナンス制御部106は、ワイパー63,64でインク吐出面4を払拭するときに、キャップ高さ調整機構99によりキャップ61,62のその高さを下方に移動させるようにモータドライバ116を制御する。このように、メンテナンスユニット移動制御部106が、1つのクラッチ84だけを回転モータ95からの動力をベルト73に伝達するように切り換えることが可能になるので、1つのヘッド組に係るインク吐出面4だけをワイパー63,64で払拭することができる。なお、メンテナンスユニット移動制御部106は、ヘッド組3a,3b,3c,3dごとに選択的にクラッチ84を電磁的に結合させるよう制御せずに、全てのクラッチ84を電磁的に結合させるよう制御してもよい。これにより、すべてのインク吐出面4をワイパー63,64で払拭するために要する時間を短くすることができる。
【0056】
次に、メンテナンスユニット60のメンテナンス動作について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、インクジェットヘッドのパージ動作及びインク吐出面の払拭動作を経時的に示す状況図である。図6は、インク吐出面をキャップで覆うキャップ動作を経時的に示す状況図である。
【0057】
吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行う場合は、図5(a)に示すように、ヘッド昇降制御部104によりヘッド昇降機構98を制御して、パージ動作を行いたいインクジェットヘッド2と当該インクジェットヘッド2とヘッド組になっているインクジェットヘッド2とを印刷位置からヘッドメンテナンス位置に上昇させる。そして、パージ動作を行いたいインクジェットヘッド2と当該インクジェットヘッド2とヘッド組になっているインクジェットヘッド2に対応するキャップ61,62をキャップ退避位置からキャップ位置に移動するように、パージ動作を行いたいインクジェットヘッド2を含むヘッド組に対応するクラッチ84を電磁的に結合させる。そして、メンテナンスユニット移動制御部106により回転モータ95を回転させ、ギア92を図5中時計回り方向に回転させることで、ベルトローラ74を図5中反時計回り方向に回転させてベルト73の主走査方向に延在した部分を主走査方向に沿って走行させる。このとき、キャップ61が主走査方向に沿って図1中左方に移動し、キャップ62が主走査方向に沿って図1中右方(図5中右方)に移動する。すなわち、キャップ61と、キャップ62とは主走査方向に関して互いに反対方向に移動する。また、このとき、同じ支持部材71,72に設けられたワイパー63,64も、各々、キャップ61,62と一緒に移動する。
【0058】
次に、ポンプ制御部105により供給ポンプ96からインクジェットヘッド2へインクを供給することで、インクジェットヘッド2のノズル4aからキャップ61,62に向かってインクを吐出するパージ動作を行う。キャップ61,62内にインクがパージされた後、キャップ61,62をキャップ位置からキャップ退避位置に移動するように、メンテナンスユニット移動制御部106により回転モータ95を逆回転させ、ギア92を図5中反時計回り方向に回転させることで、ベルトローラ74を図5中時計回り方向に回転させてベルト73の主走査方向に延在した部分を主走査方向に沿って走行させる。このとき、キャップ61が主走査方向に沿って図1中右方に移動し、キャップ62が主走査方向に沿って図1中左方(図5中左方)に移動する。そして、図5(b)に示すように、モータドライバ116によりキャップ高さ調整機構99を制御してキャップ61,62を下方に下げる。このとき、ワイパー63,64の先端(上端)が、キャップ61,62の上端よりも上方に位置するように、キャップ61,62を下げる。
【0059】
次に、図5(c)に示すように、インク吐出面4がワイパー63,64の先端よりも僅かに低く且つキャップ61,62の上端よりも上方に位置する位置まで、ヘッド昇降制御部104によりヘッド昇降機構98を制御して、上昇していたインクジェットヘッド2を下降させる。そして、ワイパー63,64をワイパー退避位置から、キャップ61,62がキャップ位置に到達する位置まで移動するように、メンテナンスユニット移動制御部106により回転モータ95を回転させ、ギア92を図5中時計回り方向に回転させることで、ベルトローラ74を図5中反時計回り方向に回転させてベルト73の主走査方向に延在した部分を主走査方向に沿って走行させる。このとき、ワイパー63,64の先端がインク吐出面4よりも上側にあるので、インク吐出面4と撓みながら接触し、パージによってインク吐出面4に付着したインクを拭き取る。また、このとき、ワイパー63,64は、主走査方向に関して、払拭するインク吐出面4の内側端部(外側領域4cの一端部)から外側端部に向かって移動し、インク吐出面4の外側端部(外側領域4cの他端部)に到達する位置でその払拭を停止する。
【0060】
次に、インク吐出面4からワイパー63,64が離隔するように、ヘッド昇降制御部104によりヘッド昇降機構98を制御して、インクジェットヘッド2を上昇させた後、ワイパー63,64をワイパー退避位置に移動させる。こうして、インク吐出不良に陥っていたインクジェットヘッド2をパージで回復し、パージによってインク吐出面4に付着したインクを拭き取るメンテナンス動作が終了する。
【0061】
次に、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、インク吐出面4をキャップ61,62で覆うキャップ動作について以下に説明する。この場合においても、上述と同様に、ヘッド昇降制御部104によりヘッド昇降機構98を制御して、キャップ動作を行いたいインクジェットヘッド2と当該インクジェットヘッド2とヘッド組になっているインクジェットヘッド2とを印刷位置からヘッドメンテナンス位置に上昇させる(図6(a)参照)。そして、図6(b)に示すように、キャップ動作を行いたいインクジェットヘッド2と当該インクジェットヘッド2とヘッド組になっているインクジェットヘッド2に対応するキャップ61,62をキャップ退避位置からキャップ位置に移動するように、パージ動作を行いたいインクジェットヘッド2を含むヘッド組に対応するクラッチ84を電磁的に結合させ、メンテナンスユニット移動制御部106により回転モータ95を回転させ、ギア92を図6中時計回り方向に回転させることで、ベルトローラ74を図6中反時計回り方向に回転させてベルト73の主走査方向に延在した部分を主走査方向に沿って走行させる。
【0062】
次に、図6(c)に示すように、インク吐出面4がキャップ61,62の上端と当接するように、ヘッド昇降制御部104によりヘッド昇降機構98を制御して、インクジェットヘッド2を下降させる。こうして、インク吐出面4とキャップ61,62との間が密閉空間となってノズル4a内のインクの乾燥を防止する。
【0063】
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ1によると、8つのインクジェットヘッド2のインク吐出面4を、副走査方向に沿って4つずつ2列に並べ且つ異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように配列することで、主走査方向に関して、各インクジェットヘッド2に隣接する領域にそれぞれ空いた空間が形成されても、これら空間には各インクジェットヘッド2に対応する複数のワイパー63,64が配置される。このように空いた空間にワイパー63,64を配置することで、複数のワイパー63,64を配置する別の空間を設ける必要がなくなって、インクジェットプリンタ1の小型化を図ることができる。さらに、メンテナンスユニット移動制御部106の制御によって複数のワイパー63,64をヘッド組に係る2つのワイパー63,64毎に選択して移動させることが可能になるので、例えばパージ動作を行い、払拭する必要があるヘッド組のインク吐出面4だけをワイパー63,64で払拭することができる。これにより、パージ動作を行っていないヘッド組のインク吐出面4をワイパー63,64で空ワイプするのを防止することができ、インク吐出面4に形成された撥水膜の劣化やワイパー63,64の摩耗を低減することができる。
【0064】
また、ベルト73がヘッド組3a,3b,3c,3d間に配置されていても、当該ベルト73の主走査方向に延在する部分が鉛直方向に関して対向して配置されているので、ヘッド組3a,3b,3c,3d間の間隙を小さくすることができる。加えて、ベルト長が比較的短くなって、駆動源である回転モータにかかる負荷を小さくすることができる。
【0065】
さらに、主走査方向に関して、各インクジェットヘッド2に隣接する空いた空間に各インクジェットヘッド2に対応する複数のキャップ61,62が配置されることになる。そのため、インクジェットプリンタ1をより小型化することができる。また、メンテナンスユニット移動制御部106の制御によって複数のキャップ61,62もヘッド組に係る2つのキャップ61,62毎に選択して移動させることが可能になる。
【0066】
加えて、メンテナンスユニット60が退避位置に配置されているときに、インクジェットヘッド2に対応するキャップ61,62が、主走査方向に関して、当該インクジェットヘッド2に対応するワイパー63,64をそのインクジェットヘッド2とで挟む位置に配置されていることで、インクジェットプリンタ1をより一層小型化することができる。
【0067】
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタ201について、図7を参照しつつ以下に説明する。図7は、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタ要部の平面図である。
【0068】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ201は、移動機構270の構成が第1実施形態の移動機構70の構成と異なっているだけで、それ以外は、第1実施形態と同様である。なお、第1実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
【0069】
本実施形態における移動機構270は、図7に示すように、副走査方向に延在し且つ軸回り方向に回転可能に支持された軸290と、16個のベルトローラ291と、各ヘッド組3a,3b,3c,3dに対応してそれぞれ4個のベルトローラ291に架け渡された4本のベルト273と、副走査方向に関する一方(図7中上方)の端部においてベルト273に連結され、1つの列(図7中右方)に属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ61及びワイパー63をそれぞれ支持する4つの支持プレート271、及び、他方の列(図7中左方)に属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ62及びワイパー64をそれぞれ支持する4つの支持プレート272と、各ヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する4個のベルトローラ291に回転動力を伝達する動力伝達機構280とを有している。
【0070】
4つの支持プレート271は、図7中左方の列に属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ61及びワイパー63を支持しており、ベルト273の主走査方向に延在する部分に連結されている。
【0071】
4つの支持プレート272は、図7中右方の列に属するインクジェットヘッド2に対応するキャップ62及びワイパー64を支持しており、ベルト273の主走査方向に延在する部分に連結されている。
【0072】
換言すると、8つの支持プレート271,272は、副走査方向に関して、8つのインクジェットヘッド2の千鳥配列とは逆の千鳥配列で配列されている。
【0073】
16個のベルトローラ291は、平面視において、4本のベルト273がヘッド組に属する2つのインクジェットヘッド2と、当該ヘッド組に係る2つのキャップ61,62及び2つのワイパー63,64をそれぞれ取り囲んで配置されるように、トレイ69内において回転可能に支持されている。これにより、ヘッド組間の間隙を小さくすることができる。
【0074】
動力伝達機構280は、軸290の一端(図7中上端)に軸290とともに軸290の軸回り方向に回転可能に固定されたギア292と、副走査方向に沿った各ヘッド組3a,3b,3c,3dに対応した位置に軸290とともに軸290の軸回り方向に回転可能に支持された4つのギア296と、平面視において各ベルト273の左上方に位置するベルトローラ291に回転可能に固定され、4つのギア296と噛み合って回転する4つのギア285と、4つのギア296に軸290の回転動力を伝達する4つのクラッチ284とを有している。
【0075】
クラッチ284は、軸290に固定された入力軸284aと、ギア296に固定された出力軸284bとを有している。クラッチ284は、入力軸284aと出力軸284bとが電磁的に結合されることで、入力軸284aからの動力が出力軸284bに伝達され、入力軸284aが回転すると、それに伴い出力軸284bも回転する。また、クラッチ284は、入力軸284aと出力軸284bとの結合が解かれると、入力軸284aからの動力が出力軸284bに伝達されなくなり、入力軸284aが回転しても、出力軸284bは回転しない。
【0076】
回転モータ95の駆動によりギア292が所定方向に回転すると、同方向に軸290も回転し、クラッチ284の入力軸284aに同方向の回転動力が伝達される。このとき、入力軸284aと出力軸284bとが電磁的に結合されていると、入力軸284aの回転が出力軸284bに伝達され、出力軸284bが回転し、それに伴いギア285とともに軸291が図7中反時計回り方向に回転することにより、ベルト273が反時計回り方向に走行する。つまり、各ヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する各クラッチ284の入力軸284a及び出力軸284bをそれぞれ電磁的に結合するか否かを切り換えることで、それぞれのベルト273を選択的に走行させることができる。
【0077】
このような移動機構270の構成においても、ギア292を回転モータ95によって所定方向に回転させると、クラッチ284が電磁的に結合されているヘッド組に対応する支持プレート271上に設けられたキャップ61及びワイパー63が対応するインク吐出面4と対向しない退避位置(図7に示す位置:ワイパー退避位置:キャップ退避位置)から支持プレート271とともに図7中左方に移動し、支持プレート272上に設けられたキャップ62及びワイパー64が対応するインク吐出面4と対向しない退避位置(図7に示す位置:ワイパー退避位置:キャップ退避位置)から支持プレート272とともに図7中右方に移動する。このようにして、クラッチ284が電磁的に結合されたヘッド組に対応する2つのキャップ61,62及び2つのワイパー63,64をインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)に移動させることができる。つまり、全てのクラッチ284を電磁的に結合させることで、全てのヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64をインク吐出面4と対向する位置に移動させることも可能である。
【0078】
一方、ギア292を回転モータ95によって上述した所定方向と逆方向に回転させると、クラッチ284が電磁的に結合されたヘッド組に対応する支持プレート271に設けられたキャップ61及びワイパー63が対応するインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)から図7中右方に移動し、支持プレート272に設けられたキャップ62及びワイパー64が対応するインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)から図7中左方に移動する。このようにして、クラッチ284が電磁的に結合されたヘッド組に対応するキャップ61,62及びワイパー63,64をインク吐出面4と対向しない退避位置に移動させることができる。つまり、全てのクラッチ284を電磁的に結合させることで、全てのヘッド組3a,3b,3c,3dに対応する8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64をインク吐出面4と対向しない退避位置に移動させることも可能である。
【0079】
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ201によると、8つのインクジェットヘッド2のインク吐出面4を、副走査方向に沿って4つずつ2列に並べ且つ異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように配列することで、主走査方向に関して、各インクジェットヘッド2に隣接する領域にそれぞれ空いた空間が形成されても、これら空間には各インクジェットヘッド2に対応する複数のワイパー63,64が配置される。このように空いた空間にワイパー63,64を配置することで、複数のワイパー63,64を配置する別の空間を設ける必要がなくなって、インクジェットプリンタ201の小型化を図ることができる。さらに、メンテナンスユニット移動制御部106の制御によって複数のワイパー63,64をヘッド組に係る2つのワイパー63,64毎に選択して移動させることが可能になるので、例えばパージ動作を行い、払拭する必要があるヘッド組のインク吐出面4だけをワイパー63,64で払拭することができる。これにより、パージ動作を行っていないヘッド組のインク吐出面4をワイパー63,64で空ワイプするのを防止することができ、インク吐出面4に形成された撥水膜の劣化やワイパー63,64の摩耗を低減することができる。
【0080】
続いて、本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタ301について、図8を参照しつつ以下に説明する。図8は、本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタ要部の平面図である。
【0081】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ301は、副走査方向に隣接するヘッド組303a,303b,303c,303dの向きが互いに反対方向を向いて配置され、第1実施形態のヘッド組3a,3b,3c,3dの配列と異なっており、これに伴って、8つのキャップ361,362及び8つのワイパー363,364の配列も第1実施形態の8つのキャップ61,62及び8つのワイパー63,64の配列と異なり、且つ、移動機構370の構成が第2実施形態の移動機構270の構成と若干異なったメンテナンスユニット370を有している。これら以外は、第1実施形態と同様である。なお、インクジェットヘッド302、キャップ361,362及びワイパー363,364の構成は第1実施形態と同様であり、その配置形態だけが第1実施形態と異なっている。また、第1実施形態と同様なものについては、同符号で示し説明を省略する。
【0082】
本実施形態における8つのインクジェットヘッド302は、図8に示すように、インク吐出面4が副走査方向に沿って4つずつ2列に並べられ且つ異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように千鳥状に配列されている。また、8つのインクジェットヘッド302は、インク吐出面4が副走査方向に関して互いに近接しているとともに異なる列に係る2つのインクジェットヘッド302からなる4つのヘッド組303a,303b,303c,303dに分けられている。
【0083】
そして、ヘッド組303aに属する2つのインクジェットヘッド302のうち、一方(図8中左方)のインクジェットヘッド302と、ヘッド組303bに属する2つのインクジェットヘッド302のうち、一方のインクジェットヘッド302とが主走査方向に関する位置が同じであって副走査方向に関して近接して配置され、ヘッド組303bに属する他方(図8中右方)のインクジェットヘッド302と、ヘッド組303cに属する2つのインクジェットヘッド302のうち、他方のインクジェットヘッド302とが主走査方向に関する位置が同じであって副走査方向に関して近接して配置され、ヘッド組303cに属する一方のインクジェットヘッド302と、ヘッド組303dに属する2つのインクジェットヘッド302のうち、一方のインクジェットヘッド302とが主走査方向に関する位置が同じであって副走査方向に関して近接して配置されるように、4つのヘッド組303a,303b,303c,303dが副走査方向に関して並設されている。
【0084】
これにより、互いに隣接するヘッド組303a,303b,303c,303dに属する且つ近接する2つのインクジェットヘッド302にそれぞれ対応する2つのキャップ361,362及び2つのワイパー363,364を主走査方向に関して同じ位置であって副走査方向に関して近接して配置することが可能になる。
【0085】
各ヘッド組303a,303b,303c,303dにそれぞれ属する2つのインクジェットヘッド302は、インク吐出面4が副走査方向に互いにオーバーラップしており、第1実施形態のヘッド組3a,3b,3c,3dと同様な構成となっている。
【0086】
メンテナンスユニット360は、8つのインクジェットヘッド302にそれぞれ対応する8つのキャップ361,362及び8つのワイパー363,364と、これらキャップ361,362及びワイパー363,364をそれぞれ主走査方向に移動させる移動機構370とを有している。
【0087】
移動機構370は、副走査方向に延在し且つ軸回り方向に回転可能に支持された軸390と、16個のベルトローラ391と、各ヘッド組303a,303b,303c,303dに対応してそれぞれ4個のベルトローラ391に架け渡された4本のベルト373と、副走査方向に関する一方(図8中上方)の端部においてベルト373に連結され、1つの列(図8中右方)に属するインクジェットヘッド302に対応するキャップ361及びワイパー363をそれぞれ支持する4つの支持プレート371、及び、他方の列(図8中左方)に属するインクジェットヘッド302に対応するキャップ362及びワイパー364をそれぞれ支持する4つの支持プレート372と、各ヘッド組303a,303b,303c,303dに対応する1個のベルトローラ391に回転動力を伝達する動力伝達機構380とを有している。
【0088】
4つの支持プレート371は、図8中左方の列に属するインクジェットヘッド302に対応するキャップ361及びワイパー363を支持しており、ベルト373の主走査方向に延在する部分に連結されている。
【0089】
4つの支持プレート372は、図8中右方の列に属するインクジェットヘッド302に対応するキャップ362及びワイパー364を支持しており、ベルト373の主走査方向に延在する部分に連結されている。
【0090】
16個のベルトローラ391は、平面視において、4本のベルト373がヘッド組に属する2つのインクジェットヘッド302と、当該ヘッド組に係る2つのキャップ361,362及び2つのワイパー363,364をそれぞれ取り囲んで配置されるように、トレイ69内において回転可能に支持されている。これにより、ヘッド組間の間隙を小さくすることができる。
【0091】
動力伝達機構380は、軸390の一端(図8中上端)に軸390とともに軸390の軸回り方向に回転可能に固定されたギア392と、副走査方向に沿った各ヘッド組303a,303dに対応した位置に軸390とともに軸390の軸回り方向に回転可能に支持された2つのギア391aと、副走査方向に沿った各ヘッド組303b,303dに対応した位置に軸390とともに軸390の軸回り方向に回転可能に支持された2つのギア391bと、平面視において各ベルト373の左上方に位置するベルトローラ391に回転可能に固定され、4つのギア391a,391bと噛み合って回転する4つのギア385a,385bと、4つのギア391a,391bに軸390の回転動力を伝達するクラッチ384とを有している。
【0092】
ギア391aは、所定方向に回転することで、ギア385aを図8中時計回り方向に回転させる。ギア391bは、ギア391bと逆方向にネジ山がきられており、所定方向に回転することで、ギア385bを図8中反時計回り方向に回転させる。
【0093】
クラッチ384は、軸390に固定された入力軸384aと、ギア391a,391bに固定された出力軸384bとを有している。クラッチ384は、入力軸384aと出力軸384bとが電磁的に結合されることで、入力軸384aからの動力が出力軸384bに伝達され、入力軸384aが回転すると、それに伴い出力軸384bも回転する。また、クラッチ384は、入力軸384aと出力軸384bとの結合が解かれると、入力軸384aからの動力が出力軸384bに伝達されなくなり、入力軸384aが回転しても、出力軸384bは回転しない。
【0094】
回転モータ95の駆動によりギア392が所定方向に回転すると、同方向に軸390も回転し、クラッチ384の入力軸384aに同方向の回転動力が伝達される。このとき、入力軸384aと出力軸384bとが電磁的に結合されていると、入力軸384aの回転が出力軸384bに伝達され、出力軸384bが回転する。出力軸384bが回転すると、それに伴い、ギア396aが回転し、ギア396aに噛み合っているギア285aとともにギア285aを固定している軸291が図8中時計回り方向に回転することにより、ベルト373が時計回り方向に走行する。また、出力軸384bが回転すると、それに伴い、ギア396bが回転し、ギア396bに噛み合っているギア285bとともにギア285bを固定している軸391が図8中反時計回り方向に回転することにより、ベルト373が反時計回り方向に走行する。つまり、各ヘッド組303a,303b,303c,303dに対応する各クラッチ384の入力軸384a及び出力軸384bをそれぞれ電磁的に結合するか否かを切り換えることで、それぞれのベルト373を選択的に走行させることができる。
【0095】
このような移動機構370の構成においても、ギア392を回転モータ95によって所定方向に回転させると、クラッチ384が電磁的に結合されているヘッド組に対応する支持プレート371上に設けられたキャップ361及びワイパー363が対応するインク吐出面4と対向しない退避位置(図8に示す位置:ワイパー退避位置:キャップ退避位置)から支持プレート371とともに図8中左方に移動し、支持プレート372上に設けられたキャップ362及びワイパー364が対応するインク吐出面4と対向しない退避位置(図8に示す位置:ワイパー退避位置:キャップ退避位置)から支持プレート372とともに図8中右方に移動する。このようにして、クラッチ384が電磁的に結合されたヘッド組に対応するキャップ361,362及びワイパー363,364をインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)に移動させることができる。つまり、全てのクラッチ384を電磁的に結合させることで、全てのヘッド組303a,303b,303c,303dに対応する8つのキャップ361,362及び8つのワイパー363,364をインク吐出面4と対向する位置に移動させることも可能である。
【0096】
一方、ギア392を回転モータ95によって上述した所定方向と逆方向に回転させると、クラッチ384が電磁的に結合されたヘッド組に対応する支持プレート371に設けられたキャップ361及びワイパー363が対応するインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)から図8中右方に移動し、支持プレート372に設けられたキャップ362及びワイパー364が対応するインク吐出面4と対向する位置(キャップ位置)から図8中左方に移動する。このようにして、クラッチ384が電磁的に結合されたヘッド組に対応するキャップ361,362及びワイパー363,364をインク吐出面4と対向しない退避位置に移動させることができる。つまり、全てのクラッチ384を電磁的に結合させることで、全てのヘッド組303a,303b,303c,303dに対応する8つのキャップ361,362及び8つのワイパー363,364をインク吐出面4と対向しない退避位置に移動させることも可能である。
【0097】
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ301によると、8つのインクジェットヘッド302のインク吐出面4を、副走査方向に沿って4つずつ2列に並べ且つ異なる列に属するインク吐出面4同士が主走査方向に沿って重ならないように配列することで、主走査方向に関して、各インクジェットヘッド302に隣接する領域にそれぞれ空いた空間が形成されても、これら空間には各インクジェットヘッド302に対応する複数のワイパー363,364が配置される。このように空いた空間にワイパー363,364を配置することで、複数のワイパー363,364を配置する別の空間を設ける必要がなくなって、インクジェットプリンタ301の小型化を図ることができる。さらに、メンテナンスユニット移動制御部106の制御によって複数のワイパー363,364をヘッド組に係る2つのワイパー363,364毎に選択して移動させることが可能になるので、例えばパージ動作を行い、払拭する必要があるヘッド組のインク吐出面4だけをワイパー363,364で払拭することができる。これにより、パージ動作を行っていないヘッド組のインク吐出面4をワイパー363,364で空ワイプするのを防止することができ、インク吐出面4に形成された撥水膜の劣化やワイパー363,364の摩耗を低減することができる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りのおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した各実施形態においては、同じ色のインクを吐出する2つのインクジェットヘッドが、当該2つのインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を形成したときに、主走査方向に関して途切れず連続した印刷が可能なように配置されているが、これら2つのインクジェットヘッドが副走査方向に沿って重ならず、画像を形成したときに、主走査方向に関して連続せず途切れた印刷を可能とするように2つのインクジェットヘッドが配置されていてもよい。また、各実施形態におけるインクジェットプリンタは、キャップを有していなくてもよい。
【0099】
また、上述した各実施形態は、1つの回転モータの回転駆動により、ベルトを走行させてキャップ及びワイパーを選択的に移動させていたが、それぞれのベルトに対して回転モータを別々に有していてもよい。この場合、回転モータを制御することにより、ベルトを選択的に走行させ、キャップ及びワイパーをヘッド組ごとに選択的に移動させることができる。つまり、切替手段として回転モータをヘッド組ごとに設けてもよい。このとき、クラッチは設けなくてもよい。
【0100】
さらに、上述した各実施形態は、ノズルからインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。例えば、導電ペーストを吐出して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に吐出して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に吐出して光導波路などの微小電子デバイスを形成するための、複数の液体吐出ヘッドを有する、種々の液体吐出装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタ要部の平面図である。
【図2】図1に示すII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1に示す4つのヘッド組を下方から見たときの図である。
【図4】制御部の概略を示すブロック図である。
【図5】インクジェットヘッドのパージ動作及びインク吐出面の払拭動作を経時的に示す状況図である。
【図6】インク吐出面をキャップで覆うキャップ動作を経時的に示す状況図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタ要部の平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタ要部の平面図である。
【符号の説明】
【0102】
1,201,301 インクジェットプリンタ(液体吐出装置,画像記録装置)
2,302 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
3a〜3d,303a〜303d ヘッド組
4 インク吐出面(液体吐出面)
4b インク吐出領域(液体吐出領域)
10 用紙搬送機構(記録媒体搬送機構)
61,62,361,362 キャップ
63,64,363,364 ワイパー
70,270,370 移動機構
73,273,373 ベルト
84,284,384 クラッチ(切替手段)
95 回転モータ
100 制御部
106 メンテナンスユニット移動制御部(移動制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出領域が形成された液体吐出面をそれぞれ有し、それぞれの前記液体吐出面が一方向に沿って2列に並べられ且つ異なる前記列に属する2つの前記液体吐出面が前記液体吐出面の面内方向に関して前記一方向と直交する方向に沿って重ならないように配列された複数の液体吐出ヘッドのうち、前記一方向に関して近接し且つ異なる前記列に係る2つの前記液体吐出ヘッドからそれぞれなる複数のヘッド組と、
前記複数の液体吐出ヘッドの前記液体吐出面を払拭する複数のワイパーと、
前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッドに対応する2つの前記ワイパーが前記液体吐出面と当接しつつ前記液体吐出面に沿って前記直交する方向に関して互いに反対方向に移動するように、前記複数のワイパーを移動させる移動機構とを備えており、
前記複数のワイパーが前記移動機構によって前記液体吐出面と対向しないワイパー退避位置に配置されているときに、1つの前記ヘッド組に属する一方の前記液体吐出ヘッドに対応する前記ワイパーが、前記一方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ他方の前記液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されており、前記他方の液体吐出ヘッドに対応する前記ワイパーが、前記他方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記一方の液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記複数のヘッド組が、同じ色の液体を吐出する2つの前記液体吐出ヘッドからそれぞれなり、
前記移動機構が、前記複数のワイパーを前記ヘッド組に係る前記2つのワイパー毎に選択的に移動させるものであり、
前記複数のヘッド組のうち、選択された前記ヘッド組に係る前記2つのワイパーが当該ヘッド組に係る2つの前記液体吐出面を払拭するように、前記移動機構を制御する移動制御手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記移動機構が、
前記ヘッド組に係る前記2つのワイパーと連結され、前記直交する方向に沿って走行することによって前記2つのワイパーを互いに前記反対方向に移動させる複数のベルトと、
駆動源からの動力を前記ベルトに伝達する状態及び駆動源からの動力を前記ベルトに伝達しない状態のいずれかに切り換える複数の切換手段とを有しており、
前記移動制御手段が、少なくとも1つの前記切換手段を駆動源からの動力を前記ベルトに伝達する状態に切り換えることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記移動制御手段が、すべての前記切換手段を駆動源からの動力を前記ベルトに伝達する状態に切り換えることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記複数のベルトが、平面視において、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッド及び前記ヘッド組に係る前記2つのワイパーをそれぞれ取り囲むように配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数のベルトが、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッド間にそれぞれ配置されており、前記ベルトの直交する方向に延在する部分が鉛直方向に関して対向して配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出面と当接することによって当該液体吐出面に形成された前記液体吐出領域を覆う複数のキャップをさらに備えており、
前記ベルトが、前記ヘッド組に属する前記2つの液体吐出ヘッドに対応する2つの前記キャップと連結されており、前記ベルトが前記直交する方向に沿って走行することによって前記2つのキャップが前記液体吐出面と対向するキャップ位置及び前記液体吐出面と対向しないキャップ退避位置との間において前記直交する方向に関して互いに前記反対方向に移動することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記複数のキャップが前記キャップ退避位置に配置されているときに、前記一方の液体吐出ヘッドに対応する前記キャップが、前記一方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記他方の液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されており、前記他方の液体吐出ヘッドに対応する前記キャップが、前記他方の液体吐出ヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記一方の液体吐出ヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記ワイパーが前記ワイパー退避位置に配置されているときに、前記液体吐出ヘッドに対応する前記キャップが、前記直交する方向に関して、当該液体吐出ヘッドに対応する前記ワイパーをその液体吐出ヘッドとで挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
インク吐出領域が形成されたインク吐出面をそれぞれ有し、それぞれの前記インク吐出面が一方向に沿って2列に並べられ且つ異なる前記列に属する2つの前記インク吐出面が前記インク吐出面の面内方向に関して前記一方向と直交する方向に沿って重ならないように配列された複数のインクジェットヘッドのうち、前記一方向に関して近接し且つ異なる前記列に係る2つの前記インクジェットヘッドからそれぞれなる複数のヘッド組と、
記録媒体を、前記インク吐出面と対向させつつ前記一方向に搬送させる記録媒体搬送機構と、
前記複数のインクジェットヘッドの前記インク吐出面を払拭する複数のワイパーと、
前記ヘッド組に属する前記2つのインクジェットヘッドに対応する2つの前記ワイパーが前記インク吐出面と当接しつつ前記インク吐出面に沿って前記直交する方向に関して互いに反対方向に移動するように、前記複数のワイパーを移動させる移動機構とを備えており、
前記複数のワイパーが前記移動機構によって前記インク吐出面と対向しないワイパー退避位置に配置されているときに、1つの前記ヘッド組に属する一方の前記インクジェットヘッドに対応する前記ワイパーが、前記一方のインクジェットヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ他方の前記インクジェットヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されており、前記他方のインクジェットヘッドに対応する前記ワイパーが、前記他方のインクジェットヘッドと前記直交する方向に沿って重なり且つ前記一方のインクジェットヘッドと前記一方向に沿って重なる位置に配置されていることを特徴とする画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−28974(P2009−28974A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194072(P2007−194072)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】