説明

液体吐出装置

【課題】カラーインクがインク切れとなったときに、ブラックインクを用いる印刷を継続することにともない、吐出ヘッド内のカラーインクが増粘するのを確実に解消するとともに、カラーインクが無駄に排出されるのを抑制する。
【解決手段】カラーのインクカートリッジのインク切れが検知されると(S101:YES)、ブラックインクによる印刷が継続され、カラーインクによる印刷、フラッシング及びパージが禁止される(S102)。その時点からインクカートリッジが交換されるまでの時間が長い場合には(S107:YES、又は、S109:YES)、パージ動作を行い、上記時間が短い場合には(S109:NO)、フラッシング動作を行うことによってインクジェットヘッド4内のインクの増粘を解消する。さらに、上記時間の長さに応じてパージ動作及びフラッシング動作の強さを変更する(S107〜S113)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、複数色の色剤を用いて画像形成を行うカラー画像形成装置においては、複数色の色剤のいずれかが色剤切れとなったときに、その色剤を用いた画像形成を禁止するとともに、それ以外の色剤を用いた画像形成を可能とすることが知られている。
【0003】
そして、液体吐出装置たとえばインクジェットプリンタにおいても、特許文献1に記載されているのと同様の観点から、カラーのインクがインク切れとなったときに、カラーのインクが補充されるまでの間、カラーのインクを用いた印刷を禁止し、黒のインクを用いた印刷のみを可能とすることにより、ユーザの利便性が向上する。
【0004】
【特許文献1】特公昭60−60054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したように1つのインク(第1液体)による印刷を禁止し、残りのインク(第2液体)を用いた印刷のみを可能とした場合、液体吐出ヘッドにおいては、第2液体を吐出するノズル内の液体の増粘を防止するため、液体吐出ヘッドを駆動して第2液体を吐出させるフラッシング、ノズルから第2液体を吸引して外部に排出させるパージなどの回復動作が行われるが、このとき、第1液体を吐出するノズルに対しても上記フラッシングやパージを行うと、第1液体を吐出する液体吐出ヘッド内に、空になったインク供給源から多量の空気が導入されてしまい、第1液体の液体吐出ヘッドを吐出可能状態に回復させることが困難になる。
【0006】
逆に、第1液体のインクを吐出する液体吐出ヘッドに対する上記フラッシングやパージを一切禁止すると、第2液体を多く用いるユーザにおいては、第1液体の液体吐出ヘッドが長期間使用しないで放置され、また、第2液体の液体吐出ヘッドの動作中、第1液体の液体吐出ヘッドが乾燥状態にさらされることになり、時間の経過とともに第1液体の液体吐出ヘッド内の液体の増粘が進行する。このため、吐出ヘッド内の液体の増粘の程度によっては、第1液体が補充されたときに、フラッシング又はパージを行い、第1液体の液体吐出ヘッド内の液体の増粘を解消する必要がある。しかしながら、このときに一律にフラッシング又はパージを行うと、液体吐出ヘッド内のインク液体の増粘の程度によっては、無駄にあるいは必要以上に液体が排出されたり、液体の増粘が十分に解消されなかったりする虞がある。
【0007】
本発明の目的は、第1液体が液体切れとなったときに、第2の液体を吐出可能とするものにおいて、第2の液体の吐出を継続することにともない液体吐出ヘッド内の第1液体が増粘するのを確実に解消するとともに、その解消のために第1液体が必要以上に排出されるのを抑え、また液体吐出ヘッド内に多量の気体が導入されることがない液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体吐出装置は、第1液体が収容された第1液体供給源から供給された前記第1液体をノズルから吐出する第1液体吐出ヘッドと、第2液体が収容された第2液体供給源から供給された前記第2液体をノズルから吐出する第2液体吐出ヘッドと、前記第1液体が液体切れとなったことを検知する液体切れ検知手段と、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知されてから前記第1液体の液体切れが解消されるまでの時間を検出する時間検出手段と、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッド内の液体を外部に排出させることによって前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッド内の液体の増粘を解消させる回復動作を行う回復手段と、前記第1液体吐出ヘッド、前記第2液体吐出ヘッド及び前記回復手段の動作を制御する制御手段とを備えている。そして、前記制御手段は、前記液体切れ検知手段による前記第1液体の液体切れ検知の結果にかかわらず、前記第2液体吐出ヘッドによる吐出を可能にし、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知されてから、前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間、前記第1液体吐出ヘッドによる前記第1液体の吐出、及び、前記回復手段による前記第1液体吐出ヘッドに対する前記回復動作を禁止し、前記第1液体の液体切れが解消された後に、前記時間検出手段によって検出された時間に応じて前記回復手段を制御する(請求項1)。
【0009】
これによると、第1液体が液体切れとなった場合にも、第2液体吐出ヘッドを動作させることにより第2液体の吐出のみを行うことができるため、ユーザの利便性が向上する。
【0010】
また、第1液体が液体切れとなった後、仮に、第2液体吐出ヘッドとともに第1液体液体吐出ヘッドに対して回復動作を続けると、第1液体吐出ヘッド内に多量の空気が導入されてしまい、吐出可能状態に回復させることが困難になる。しかしながら、本発明では、第1液体が液体切れとなったときに第1液体吐出ヘッドに対する回復動作を禁止するため、第1液体吐出ヘッド内に空気が導入されにくい。
【0011】
さらに、第1液体が液体切れとなったときに第1液体吐出ヘッドに対する回復動作を禁止する一方、第2液体吐出ヘッドの動作を継続させた場合、時間の経過とともに第1液体の増粘が進むため、第1液体の液体切れが解消されたときに一律に回復動作を行うと、第1液体が必要以上に排出されたり、逆に、第1液体吐出ヘッド内の第1液体の増粘が十分に解消されなかったりする虞がある。しかしながら、本発明では、第1液体の液体切れが解消されたときに、回復手段が、第1液体が液体切れとなってからの時間に応じて回復動作を制御するため、第1液体吐出ヘッド内の第1液体の増粘を確実に解消することができるとともに、第1液体が必要以上に排出されてしまうこともない。
【0012】
また、本発明の液体吐出装置においては、前記回復手段は、前記回復動作として、外部から前記第1液体吐出ヘッド内の前記第1液体に圧力変動を生じさせることにより、前記ノズルから前記第1液体吐出ヘッド内の前記第1液体を排出させるパージ動作、または、前記第1液体吐出ヘッドを駆動して前記ノズルから前記第1液体を吐出させるフラッシング動作を行うように構成されており、前記制御手段は、前記時間検出手段によって検出された時間に応じて、前記パージ動作または前記フラッシング動作の制御もしくはそれらを選択的に動作させる制御を行うことが好ましい(請求項2)。
【0013】
これによると、回復動作としてパージ動作またはフラッシング動作が選択的に行われる場合、第1液体が液体切れとなってから第1液体の液体切れが解消されるまでの時間に応じてパージ動作またはフラッシング動作が制御されもしくはそれらを選択的に動作させる制御されるので、第1液体吐出ヘッド内の第1液体の増粘を確実に解消することができるとともに、第1液体が必要以上に排出されてしまうこともない。
【0014】
本発明の液体吐出装置は、第1液体が収容された第1液体供給源から供給された前記第1液体をノズルから吐出する吐出動作を行う第1液体吐出ヘッドと、第2液体が収容された第2液体供給源から供給された前記第2液体をノズルから吐出する吐出動作を行う第2液体吐出ヘッドと、前記第1液体供給源と前記第1液体吐出ヘッドとを接続する第1接続流路と、前記第2液体供給源と前記第2液体吐出ヘッドとを接続する第2接続流路と、前記第1接続流路内の気体を外部に排出させる排気手段と、前記第1液体が液体切れとなったことを検知する液体切れ検知手段と、前記第1液体吐出ヘッドのノズル内の前記第1液体の増粘を防止するために前記ノズルから前記第1液体を吐出するフラッシング動作を前記第1液体吐出ヘッドに行わせるフラッシング制御手段と、前記排気手段による前記第1接続流路内の気体の排出を制御する排気制御手段と、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検出されてから前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間に前記第1液体吐出ヘッドにおいて前記フラッシング動作が行われた回数を検出するフラッシング回数検出手段と、前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドを、ユーザのデータにもとづいて液体を吐出するように制御する吐出制御手段とを備えている。そして、前記吐出制御手段は、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知された後、前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間、前記ユーザのデータにもとづく前記第1液体吐出ヘッドによる吐出を禁止し、前記第2液体吐出ヘッドによる吐出を可能にし、前記フラッシング制御手段は、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知された後、前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間、前記第1液体吐出ヘッドによる前記フラッシング動作を許容し、前記排気制御手段は、前記第1液体の液体切れが解消されたときに、前記フラッシング回数検出手段によって検出された前記フラッシング動作の回数に応じて、前記排気手段を制御する(請求項3)。
【0015】
これによると、第1液体が液体切れとなった場合にも、第2液体吐出ヘッドを動作させることにより第2液体の吐出のみを行うことができるため、ユーザの利便性が向上する。
【0016】
また、仮に、第1液体が液体切れになってから第1液体の液体切れが解消されるまでの間、第1液体吐出ヘッドから第1液体が一切排出されない一方、第2液体吐出ヘッドの動作を継続させた場合、第1液体吐出ヘッド内の第1液体が大きく増粘してしまう虞がある。しかしながら、本発明では、第1液体が液体切れとなった状態でも、第1液体吐出ヘッドにおいてフラッシングを行っているので、第1液体吐出ヘッド内の第1液体の増粘を抑制することができる。
【0017】
また、第1液体が液体切れになった後も第1液体吐出ヘッドにおいてフラッシング動作を継続すると、空になった第1液体供給源から第1接続流路内に気体が導入され、フラッシングの回数が多くなるほど導入される気体の量が多くなる。そこで、本発明では、第1液体カートリッジが液体切れになってから第1液体の液体切れが解消されるまでに行われたフラッシングの回数に応じて排気手段を制御することにより、第1接続流路に導入された気体の量に応じて、適切に気体を外部に排出することができる。
【0018】
また、本発明の液体吐出装置においては、前記排気制御手段は、前記第1液体の液体切れが解消されたときに、前記フラッシング回数検出手段により検出された前記フラッシング動作の回数が多いほど、前記排気手段が前記多量の気体を排出するように、前記排気手段を制御することが好ましい(請求項4)。
【0019】
これによると、第1液体が液体切れになってから第1液体の液体切れが解消されるまでのフラッシング回数が多くなるほど、第1接続流路内の気体の量が多くなるため、第1液体の液体切れが解消されたときに、排気手段により排出する気体の量を多くすることにより、第1接続流路内の気体を十分に排出することができる。
【0020】
また、本発明の液体吐出装置においては、前記排気制御手段は、前記液体切れ検知手段により液体切れが検知されていないときに、前記排気手段が所定の排気周期毎に前記第1接続流路内及び前記第2接続流路内の気体を排出するように前記排気手段を制御しており、前記第1液体の液体切れが解消されたときに、前記フラッシング回数検出手段により検出された前記フラッシング動作の回数が所定の回数よりも少なければ、その後、少なくとも1回、前記排気周期よりも短い周期で前記第1接続流路内の気体を外部に排出するように、前記排気手段を制御することが好ましい(請求項5)。
【0021】
これによると第1液体が液体切れとなってから第1液体の液体切れが解消されるまでの間のフラッシング回数が少ない場合、気体は、第1液体接続流路において液体吐出ヘッドから遠い位置にあるので、直ちに排出する必要はないが、この気体を排出しようとすると、気体よりも下流側の液体も排出する必要がある。しかしながら、本発明では、第1接続流路内の気体を直ちに排出することなく、排気周期を短くすることで比較的早期にかつ効率よく排出することができる。また、気体よりも下流側の第1液体を無駄に排出してしまうこともない。
【0022】
また、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記第1液体吐出ヘッドが、前記第1液体としてカラーのインクを吐出するインク吐出ヘッドであり、前記第2液体吐出ヘッドが、前記第2液体として黒のインクを吐出するインク吐出ヘッドであることが好ましい(請求項6)。
【0023】
これによると、第1液体吐出ヘッドがカラーのインクを吐出するインク吐出ヘッドであり、第2液体吐出ヘッドが黒のインクを吐出するインク吐出ヘッドである場合、カラーのインクがインク切れとなったときにも、黒のインクのみを用いてモノクロ印刷を行うことができるので、ユーザの利便性が向上する。また、カラーのインク切れが解消されたときの状態に応じて回復動作が制御されるので、第1液体吐出ヘッド内のカラーインクの増粘が確実に解消されるとともに、回復動作によって必要以上にカラーインクが排出されることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0025】
図1は第1実施形態に係るプリンタ(液体吐出装置)の概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、ガイド軸3、インクジェットヘッド4、サブタンク5、チューブ6、用紙搬送ローラ9、排気キャップ8、パージキャップ10、切り替え装置11、吸引ポンプ12などを備えている。また、プリンタ1の動作は制御装置60によって制御されている。
【0026】
キャリッジ2はガイド軸3に沿って、走査方向である図1の左右方向に往復移動する。インクジェットヘッド4は、キャリッジ2の下面に取り付けられており、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動しつつ、後述するノズル25(図2参照)からブラック(黒)のインク(第2液体)及びカラー(以下、イエロー、シアン、マゼンタをカラー3色という)の各インク(第1液体)を吐出(吐出動作)して記録用紙P上に印刷を行う。すなわち、第1実施形態においては、インクジェットヘッド4が本発明に係る第1液体吐出ヘッド及び第2液体吐出ヘッドとが一体となったものに相当する。
【0027】
4つのサブタンク5はインクジェットヘッド4の上方においてキャリッジ2に取り付けられており、図中左側に配置されているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを収容し、それらのインクをそれぞれインクジェットヘッド4に供給する。各サブタンク5には、図3に示すように、その上面から図中右方に延び、その右端部において略直角に下方に折れ曲がった排気流路7が設けられている。4つの排気流路7は、下端7aをインクジェットヘッド4の側方において外部に開口させており、それぞれ内部に弁17を備えている。弁17は、バネ18の作用によって常には排気流路7を外部に対して閉じている。
【0028】
4本のチューブ6は、4つのサブタンク5と、キャリッジ2外のプリンタ1における静止部位13に装着された4つのインク供給源、すなわちインクカートリッジ14a〜14dとを接続している。インクカートリッジ14a〜14dには、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが収容されており、インクカートリッジ14a〜14dからサブタンク5にこれら4色のインクが供給される。なお、4つのインク供給源のうち、イエロー、シアン、マゼンタのインクが収容されたインクカートリッジ14b〜14dが本発明に係る第1液体供給源に相当し、ブラックのインクが収容されたインクカートリッジ14aが本発明に係る第2液体供給源に相当する。また、4本のチューブ6と4つのサブタンク5との組のうち、ブラックのインクカートリッジ14aに接続されているものが本発明に係る第2接続流路に相当し、カラーのインクカートリッジ14b〜14dにそれぞれ接続されているものが本発明に係る第1接続流路に相当する。
【0029】
用紙搬送ローラ9は、記録用紙Pを、インクジェットヘッド4のノズルの下方位置において、キャリッジ2の走査方向と直交する方向(紙送り方向)に搬送する。
【0030】
排気キャップ8およびパージキャップ10は、プリンタ1において記録用紙Pが搬送される位置よりも側方に設けられている。排気キャップ8およびパージキャップ10は、昇降機構19により上下方向に移動可能となっており、キャリッジ2が記録用紙Pの搬送位置外に移動したとき、上方に移動することにより、排気流路7の下端開口7aに排気キャップ8が、インクジェットヘッド4の下面にパージキャップ10がそれぞれ密着する。排気キャップ8は、内部に押し上げ突部8aを備えており、排気流路7の下端開口7aと接続されたとき、その突部8aにより弁7を押し上げて開き、サブタンク5内の上部空間と接続する。
【0031】
パージキャップ10は、第1キャッピング部10a及び第2キャッピング部10bを有している。第1キャッピング部10aは後述するブラックインクのノズル、また第2キャッピング部10bは、後述するカラー(イエロー、シアン、マゼンタ)インクのノズルをそれぞれ前述のように上方に移動したとき覆う。
【0032】
なお、排気キャップ8、第1キャッピング部10a及び第2キャッピング部10bは、それぞれ別々の昇降機構によって、上下動するようにしてもよい。排気キャップ8とその中の突部8aとは、別々の昇降機構によって、上下動するようにしてもよい。また、ブラックインクのサブタンク5に接続された排気通路7と、カラー3色のインクのサブタンク5に接続された排気通路7とで、弁17を別々に開閉するようにしてもよい。
【0033】
排気キャップ8、第1キャッピング部10a及び第2キャッピング部10bは、それぞれ、切り替え装置11を介して吸引ポンプ12に接続されている。切り替え装置11は、排気キャップ8、第1キャッピング部10a及び第2キャッピング部10bと吸引ポンプ12との接続及びその遮断を切り替える。
【0034】
そして、排気キャップ8が排気流路7に接続され、切り替え装置11により排気キャップ8と吸引ポンプ12とが接続された状態で、吸引ポンプ12を動作させることにより、サブタンク5内の上部の空気が外部に排出される。ここで、このような空気の外部への排出は、所定の排気周期で行われている。なお、排気キャップ8及び吸引ポンプ12が本発明に係る排気手段に相当する。
【0035】
また、パージキャップ10によりノズル25が覆われ、切り替え装置11により第1、第2キャッピング部10a、10bの少なくとも一方と吸引ポンプ12とが接続された状態で吸引ポンプ12を動作させることにより、ブラックのインクを吐出するノズル25、及び、カラーのインクを吐出するノズル25のいずれか一方又は両方から、インクジェットヘッド4内のインクを吸引するパージが行われる。
【0036】
フラッシング動作は、公知のように、キャリッジ2が記録用紙Pの搬送位置よりも側方の位置に移動して、インクジェットヘッド4を駆動して全ノズル25からインクをパージキャップ10または図示しない公知の容器に向けて吐出して行われる。本実施形態では、ブラックインクを吐出するノズル25と、カラー3色のインクを吐出するノズル25とは、それぞれ別々にもフラッシング動作を行うことができる。
なお、パージキャップ10、切り替え装置11及び吸引ポンプ12が本発明に係る回復手段の一部を構成するものとなっている。
【0037】
図2はインクジェットヘッド4の一例を示すものである。インクジェットヘッド4は、公知のものと同様に、記録用紙と対向する下面に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクごとに列をなす多数のノズル25を備え、各インク毎に設けられたマニホールド流路21に各列のノズル25を圧力室20を介して連通させている。マニホールド流路21は、一端の供給口27を対応するサブタンク5に連通させ、サブタンク5から供給されたインクを圧力室20に分配する。圧力室20内のインクは、吐出エネルギーを付与されることによって、ノズル25から液滴となって記録用紙へ向け吐出される。吐出エネルギーの付与手段としては、圧電素子の変形させるもの、ヒータによりインクを発泡させるものなどが適用可能である。
【0038】
なお、インクジェットヘッド4のうち、カラー3色のインクのノズル25とそのインクの吐出に関わる部分が本発明に係る第1液体吐出ヘッドに相当し、ブラックインクのノズル25とそのインクの吐出に関わる部分が本発明に係る第2液体吐出ヘッドに相当する。
【0039】
次に、プリンタ1の動作を制御する制御装置60について説明する。図4は制御装置60の概略を示すブロック図である。制御装置60はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などによって構成されており、これらが、吐出制御部61、フラッシング制御部62、パージ制御部63、排気制御部64、インク切れ検検知部65及び時間検出部66として動作する。
【0040】
吐出制御部61は、印刷などのためのユーザのデータにもとづいてインクジェットヘッド4、キャリッジ2及び用紙搬送ローラ9の動作を制御する。フラッシング制御部62は、フラッシングを行う際のインクジェットヘッド4及びキャリッジ2の動作を制御する。
【0041】
パージ制御部63は、パージ動作を行う際のキャリッジ2、切り替え装置11、吸引ポンプ12及び昇降機構19の動作を制御する。排気制御部64は、サブタンク5内の気体を排出する際のキャリッジ2、切り替え装置11、吸引ポンプ12及び昇降機構19の動作を制御する。
【0042】
インク切れ検知部65は、プリンタ1に設けられた図示しない公知のセンサの信号などからインクカートリッジ14a〜14d内のインク量を検知し、その検知結果を示す信号を、吐出制御部61、フラッシング制御部62、パージ制御部63及び時間検出部66に出力する。
【0043】
時間検出部66は、インク切れ検知部65においてインクカートリッジ14a〜14dのいずれかのインク切れ(インク量が所定値以下)が検知されてからそのインクカートリッジが交換され、あるいはインクカートリッジにインクが補充されて再びインク切れ検知部65においてインク量が所定値以上であることが検知されるまでの時間を計測、すなわち検出し、その時間を示す信号をフラッシング制御部62及びパージ制御部63に出力する。なお、図示しない公知のスイッチ、センサなどのカートリッジ検知手段により、インクカートリッジが存在することを検知し、かつインク切れ検知部65においてインク量が所定値以上であることが検知されるまでの時間を、時間検出部66は検出するようにしてもよい。
【0044】
インク切れ検知部65が、インクカートリッジ14a〜14d内のインク量が印刷動作やパージ動作などの実行に十分な量だけあることを検知しているとき、吐出制御部61は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを用いて記録用紙P上に印刷動作を実行する。また、フラッシング制御部62、パージ制御部63及び排気制御部64は、公知のように、所定周期で、あるいは印刷不良を生じたときに人為的に、あるいは前回のフラッシング、パージ及び排気の各動作からの経過時間にもとづいて、フラッシング、パージ及び排気の各動作を実行する。これらの所定周期及び経過時間は、時間データだけでなく、ドット数などの印刷データ量に置き換えてもよく、時間とデータ量と組み合わせを用いることもできる。以下、通常の回復動作を実行する契機を、上記のことを総称して「所定周期に到達するなどしたとき」と説明する。
【0045】
インク切れ検知部65がカラー3色のインクカートリッジ14b〜14dのいずれかのインク切れを検知すると(図5のS101:YES)、インク切れ検知部65から出力されたそのことを示す信号にもとづいて、吐出制御部61は、カラー3色のインクを用いる印刷を禁止し、また、フラッシング制御部62及びパージ制御部63は、上記のように所定周期に到達するなどしてもカラー3色のノズルのフラッシング及びパージ動作を禁止する(S102)。さらにそれにもとづいて、時間検出部76は、時間の計測を開始する(S103)。
【0046】
このとき、吐出制御部61は、ブラックのインクによる印刷を禁止せず、カラーのインクカートリッジ14b〜14がインク切れとなっているか否かに関わらず、モノクロ印刷を行う。フラッシング制御部62は、上記のように所定周期に到達するなどしたとき、ブラックインクを吐出するノズル25のみからフラッシング動作を行うことが可能となっている。また、パージ制御部63も、上記のように所定周期に到達するなどしたとき、インクジェットヘッド4にキャップ10を密着させ、第1キャッピング部10aを吸引ポンプ12に切り替え装置11によって接続し、ブラックインクを吐出するノズル25のみに対しパージ動作する。このように、カラーのインクカートリッジ14b〜14dがインク切れとなった場合にも、プリンタ1においてモノクロ印刷を可能とすることにより、ユーザの利便性が高くなっている。
【0047】
そして、インク切れとなったインクカートリッジ14b〜14dが交換されあるいはそのインクカートリッジにインクが補充されて、インク切れ検知部65が再びそれらのインク量が所定値以上であることを検知すると(S104:YES)、カラー3色インクを用いる印刷、フラッシング動作、パージ動作の禁止が解除される(S105)。そして、時間検出手段66は時間の計測を終了する(S106)。
【0048】
ここで、時間検出部66により計測された時間に応じて、カラー3色のインクを吐出するノズル25に対してパージ動作、あるいはそのノズル25からフラッシング動作を制御する。そのパージ動作においてパージ制御部63は、インクジェットヘッド4にキャップ10を密着させたとき、第2キャッピング部10bを吸引ポンプ12に切り替え装置11によって接続し、カラー3色のインクを吐出するノズル25からインクを吸引する。
【0049】
時間検出部66により検出された時間が、所定の時間T1よりも長い場合には(S107:YES)、パージ制御部63は、吸引ポンプ12による吸引効果の大きいパージ(強パージ)を行う(S108)。時間検出部66により検出された時間が時間T1以下であり(S107:NO)、且つ、時間T2(<T1)よりも長い場合には(S109:YES)、パージ制御部63は、吸引ポンプ12による吸引効果が強パージよりも小さいパージ(弱パージ)を行う(S110)。
【0050】
時間検出部66により検出された時間が時間T2以下であり(S109:NO)、且つ、時間T3(<T2)よりも長い場合には(S111:YES)、フラッシング制御部62は、インクの吐出効果が大きいフラッシング(強フラッシング)を行う(S112)。時間検出部66により検出された時間が時間T3以下であり(S111:NO)、且つ、時間T4(<T3)よりも長い場合には(S114:YES)、フラッシング制御部62は、強フラッシングよりもインクの吐出効果が小さいフラッシング(弱フラッシング)を行う(S113)。時間検出部66により検出された時間が時間T4以下の場合には(S114:NO)、パージ動作も、フラッシング動作も行わない。
【0051】
上記の強及び弱パージは、吸引ポンプ12を駆動するモータの回転速度、回転時間、または間欠及び連続回転の選択などによって制御することができる。また、強及び弱フラッシングは、インクジェットヘッド4を駆動するパルス波形のパルス幅、電圧、またはパルス数などによって制御することができる。これらの強及び弱の制御は、3段階以上としてもよい。また、インクカートリッジの交換後、パージ動作のみまたはフラッシング動作のみを行うようにしてもよい。
【0052】
以上のようにして、インクカートリッジ14b〜14dのインク切れが解消されるまでの間におけるノズル25のインクの増粘が解消され、その後、通常の動作に戻る。
【0053】
なお、インクカートリッジ14b〜14dのインク切れが解消されたときには、上述したようにパージ動作あるいはフラッシング動作が行われるのに加えて、排気制御部64は、排気キャップ8を排気流路7の下端開口7aに密着させ、弁17を開いたとき、切り替え装置11により吸引ポンプ12を排気流路7に接続し、吸引ポンプ12を駆動してサブタンク5内の上部空間の空気を適宜吸引して外部に排出する。
【0054】
以上のように、カラー3色のインクカートリッジ14b〜14dのいずれかがインク切れとなった後も、ブラックインクを用いた印刷を継続していると、実施形態のように、ブラック及びカラー3色のノズルが1つのキャリッジ2に一体に配置されている装置では、カラー3色のノズルが無吐出状態、すなわち乾燥状態にさらされる。また、ブラックインクを多く用いるユーザにおいては、長期間、カラーのインクカートリッジを交換せずに使い続けることが予想され、このため、カラー3色のノズルでのインクの増粘がすすんでしまう虞がある。
【0055】
しかし、カラー3色のノズルに対しフラッシング動作及びパージ動作を続けると、空になったインクカートリッジからインクジェットヘッド4に空気が導入されてしまい、カラーインクカートリッジ14b〜14dが交換された後に、インクジェットヘッド4の機能を回復するために多量のインクを必要としてしまう。本実施形態では、カラーのインクカートリッジ14b〜14dがインク切れとなったときに、カラーのインクの印刷、フラッシング動作及びパージ動作を禁止するため、空気が導入されにくい。
【0056】
一方、このようにフラッシング動作、パージ動作を禁止した場合、時間の経過とともにカラー3色のノズルにおいてインクの増粘が進むため、インクカートリッジ14b〜14dが交換されたときに一律に回復動作を行うと、カラーインクが必要以上に排出されたり、逆に、インクジェットヘッド4内のカラーインクの増粘が十分に解消されなかったりする虞がある。しかしながら、本実施形態では、インクカートリッジ14b〜14dが交換されたときに、時間検出部66において検出された時間に応じてフラッシング動作及びパージ動作のいずれかを行い、さらに、フラッシング動作及びパージ動作の強さを変更するため、インクジェットヘッド4内のインクの増粘を確実に解消することができるとともに、インクが必要以上に排出されてしまうこともない。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。ただし、第2実施形態においては、プリンタ1(図1参照)の動作を制御する制御装置が第1実施形態の制御装置60(図4参照)と異なっている点以外は、第1実施形態と同様の構成を有しているので、以下では、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、それ以外の部分の説明は適宜省略する。
【0058】
図6は、第2実施形態においてプリンタ1の動作を制御する制御装置70のブロック図である。制御装置70は、CPU、ROM、RAM等によって構成されており、これらが、吐出制御部61、フラッシング制御部62、パージ制御部63、排気制御部64、インク切れ検知部65及びフラッシング回数検出部76として動作する。
【0059】
第2実施形態においては、インク切れ検知部65がカラー3色のインクカートリッジ14b〜14のいずれかがインク切れとなったことを検知したとき、吐出制御部61はそのカラー3色を用いる印刷を禁止するが、フラッシング制御部62は、引き続きそのカラー3色のインクのフラッシング動作を可能にしてノズル25内のインクの増粘を抑制する。このため、インク切れ検知部65は、インクカートリッジに、少ない回数のフラッシング動作を可能にするだけのインク量を残して、インク切れを検知するように設定されている。ここで、フラッシング動作によって排出されるインクの量はパージ動作によって排出されるインクの量よりも少ない。
【0060】
フラッシング回数検出部76は、インク切れ検知部65からカラーのインクカートリッジ14b〜14dのいずれかがインク切れとなったことを示す信号が入力されたときに、カラーインクのフラッシング回数の計測を開始し、そのインクカートリッジ14b〜14dのインク量が再び所定値以上であることを検知するまで、カラーインクのフラッシング動作が行われた回数を計測する。
【0061】
第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、インクカートリッジ14a〜14d内のインク量が十分な量だけあるとき、吐出制御部61は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを用いて印刷動作を実行する。また、フラッシング制御部62、パージ制御部63及び排気制御部64は、所定周期に到達するなどしたときに、フラッシング、パージ及び排気の各動作を実行する。
【0062】
図7のS201,S202においては、前記第1実施形態のS101,S102と同様に、インクカートリッジ14b〜14dのいずれかのインク切れが検知されると(S201:YES)、吐出制御部61は、ブラックインクによる印刷を許容し、カラー3色のインクを用いる印刷を禁止する。また、パージ制御部63は、所定周期に到達するなどしたとき、ブラックインクのノズルに対するパージ動作を許容し、カラー3色のノズルに対するパージ動作を禁止する。第2実施形態では、フラッシング制御部62は、ブラック及びカラー3色のノズルのフラッシング動作を許容し、所定周期に到達するなどしたときに実行する。さらにインク切れ検知にもとづいて、フラッシング回数検出部76は、カラー3色のノズルでフラッシングが行われた回数の計測を開始する(S203)。
【0063】
そして、インク切れとなったインクカートリッジ14b〜14dが交換され、あるいはそのインクカートリッジにインクが補充され、インク切れ検知部65が再びそれらのインク量が所定値以上であることを検知すると(S204:YES)、カラー3色インクを用いる印刷、パージ動作の禁止が解除される(S205)。そして、フラッシング回数検出部76はフラッシング回数の計測を終了する(S206)。
【0064】
前記第1実施形態で説明したように、カラー3色インクを用いる印刷を禁止していた間、ブラックインクを用いた印刷を継続していた場合、カラー3色のノズルが乾燥状態にさらされるが、第2実施形態では、カラー3色のノズルに対してフラッシング動作を許容している。これによってインクの増粘によるノズル詰まりを防止することができるが、それにともなうインクの消費によって、インクカートリッジが空になってしまうと、チューブ6を通って、サブタンク5内に空気が引き込まれる。この空気が多量になってインクジェットヘッド4に流入するようになると、印刷不良を生じるようになる。第2実施形態では、フラッシング回数検出部76において検出されたフラッシング回数がサブタンク5へ空気を引き込む量と対応すると考えられるため、そのフラッシング回数に応じてサブタンク5からの排気動作を制御している。
【0065】
排気動作は、前記第1実施形態と同様に、排気制御部64の制御によって、排気キャップ8を排気流路7の下端開口7aに密着させ、弁17を開き、切り替え装置11により吸引ポンプ12を排気流路7に接続した状態で、吸引ポンプ12を駆動してサブタンク5内の上部空間の空気を吸引して行う。このときの排気量は、吸引ポンプ12を駆動するモータの回転速度、回転時間、または間欠及び連続回転の選択などの組み合わせによって制御することができる。
【0066】
交換したインクカートリッジに連通するサブタンク5以外のサブタンクも同時に排気動作を行ったとしても、排気動作にともない排出してしまうインク量はわずかであるので、実用上問題ない。好ましくは、排気キャップ8内の複数の突部8aを個別に制御することで、交換したインクカートリッジに連通するサブタンク5の排気通路7のみ弁17を開いて排気動作を行うようにすることができる。
【0067】
図7のフローチャートに戻って説明すると、フラッシング回数が所定値n1よりも少ない場合には(S207:YES)、インクカートリッジ14がまだ空になっていなかったか、インクカートリッジ14からの空気がサブタンク5に到達していないので、排気動作をすることなく終了する。
【0068】
フラッシング回数が所定値n1よりも多く(S207:NO)、所定値n2(>n1)よりも少ない場合には(S208:YES)、サブタンク5に空気が引き込まれているが、少量であるので、排気動作を、少ない排気量だけ実行する(S209)。
【0069】
フラッシング回数が所定値n2よりも多い場合には(S208:NO)、サブタンク5に引き込まれている空気が多量であるので、排気動作を、上記S209での排気量よりも多い量実行する(S210)。そして、通常の動作に戻る。なお、フラッシング回数n1,n2と、サブタンク5内への空気の引き込み量との関係は、サブタンク5とチューブ6との容量にもとづいて実験等により予め決めておく。
【0070】
以上のように、カラー3色のインクカートリッジ14b〜14dがインク切れになった後も、ブラックインクを用いた印刷を継続していた場合、カラー3色のノズルにおいてインクが大きく増粘してしまう虞がある。しかしながら、本実施形態では、インクカートリッジ14b〜14dがインク切れとなっても、引き続きカラー3色のノズルにおいてフラッシング動作が行われるので、そのカラー3色のノズルにおいてインクの増粘を抑制することができる。このとき、フラッシング動作によりノズル25から吐出されるインクの量は、パージ動作よりも少ないので、フラッシング動作によって引き込まれる空気の量は比較的少なくてすむ。
【0071】
また、フラッシング動作にともなうインク消費によって、空になったインクカートリッジからサブタンク5へ引き込まれる空気の量は、フラッシング動作の回数に対応するものと考えられるから、フラッシングの回数に応じて排気動作を制御することにより、適切に空気を排出することができる。
【0072】
[第3実施形態]
図8は、第2実施形態の一部を変形した第3実施形態を示すもので、S201〜S206は、第2実施形態と同様である。
【0073】
インク中に溶存している空気、あるいはチューブ6の壁面を浸透してインク中に溶解した空気は、サブタンク5中で気泡に成長して、サブタンク5上部に蓄積される。通常、この空気は、所定周期に到達するなどしたときに、前述した排気動作によって、外部に排出される。第3実施形態は、第2実施形態においてインク切れとなってから許容されたフラッシング動作によって引き込まれる空気の量に応じて、通常の排気動作の周期Lを変更して、排気動作を実行するものである。
【0074】
なお、図8のS211は、図7のS207と同様にフラッシング回数を判定するものであるが、n3は、図7のn1とは異なる。フラッシング回数が所定値n3よりも少ない場合(S211:YES)、交換前のインクカートリッジから空気を引き込む前であっても、インクカートリッジ14の交換に際してインクカートリッジとチューブ6との接続部に空気を挟み込むことは避けられず、その空気がサブタンク5へ到達する時機を推測して、周期L1でm1回の排気動作を設定する(S214)。この周期L1は、通常の排気動作の周期Lよりも短い(L1<L)。つまり、後述するように通常の印刷動作に戻った後、排気動作を通常よりも短い周期でm1回(たとえば複数回)行うことで、上記空気がサブタンク5へ到達するのを早め、チューブ中で成長するのを抑え、効率よく空気を排出する。
【0075】
フラッシング回数が所定値n3よりも多く(S211:NO)、所定値n4(>n3)よりも少ない場合には(S212:YES)、空気が、空のインクカートリッジからチューブ6内に引き込まれているので、周期L2(<L1)でm2回の排気動作を設定する(S215)。周期L2=L1としm2(<m1)回の排気動作を設定してもよい。
【0076】
フラッシング回数が所定値n4よりも多く(S212:NO)、所定値n5(>n4)よりも少ない場合には(S213:YES)、サブタンク5内に比較的少ない空気量が引き込まれているので、周期L3(<L2)でm3回の排気動作を設定する(S216)。
【0077】
フラッシング回数が所定値n5よりも多い場合には(S213:NO)、サブタンク5内の空気量が多いので、直ちに排気動作を実行する(S217)。
【0078】
そして、通常の印刷動作に戻り、上記周期L1,L2,L3に達するごとにそれぞれの周期に設定した回数m1,m2,m3の排気動作を実行する。設定した回数の排気動作を実行後、設定した周期、回数は、もとに戻される。
【0079】
なお、チューブ6などの容量の設定から、通常の排気動作の周期Lが上記周期L1よりも長くなる場合、通常の印刷動作に戻った後、最初に実行する排気動作を前回の排気動作から、周期Lよりも短い間隔(すなわち周期)で、1回実行するように設定すればよい。S214,S215,S216において、この周期L1,L2,L3は、L1>L2>L3に設定される。
【0080】
上記周期L1,L2,L3は、通常の排気動作の周期Lにおいてサブタンク5に蓄積される空気量に、上記のように引き込む空気量を加味して設定することもできる。
【0081】
第2実施形態において、フラッシング回数が所定値n1よりも少ない場合(S207:YES)、第3実施形態のS214,S215のように、フラッシング回数に応じて、排気動作の周期、回数を設定するようにしてもよい。また、第3実施形態において、フラッシング回数が所定値n5よりも多い場合(S213:NO)、第2実施形態のS209,S210のように、フラッシング回数に応じて、排気動作における排気量を変えるようにしてもよい。
【0082】
なお、各実施形態においては、インクジェットヘッド4は、カラー3色のインクを吐出する第1液体吐出ヘッドと、ブラックインクを吐出する第2液体吐出ヘッドとが一体となったものであったが、これらの吐出ヘッドが別々に設けられていてもよい。
【0083】
また、ブラックインクを吐出するヘッドを第1液体吐出ヘッド、カラー3色のインクを吐出するヘッドを第2液体吐出ヘッドとし、ブラックインクがインク切れになったとき、カラー3色のインクを用いる印刷を継続するように構成することもできる。
【0084】
また、3種類以上の液体吐出ヘッドを備えるものにおいて、そのうちインク切れになったものを含む任意の吐出ヘッドの組み合わせを第1液体吐出ヘッド、残りの吐出ヘッドの組み合わせを第2液体吐出ヘッドとし、3種類以上の液体吐出ヘッドのうちインク切れになったもの次第で、その組み合わせを変えることができる。
【0085】
また、本発明は、インクに限らず、2種類以上の着色剤を媒体上にパターン状に塗布するなど、各種の液体を吐出する装置に適用することができる。
【0086】
また、「パージ動作」及び「排気動作」として、実施形態においては、吸引ポンプ12を動作させることによりノズル25からインクを吸引する、あるいはサブタンクから空気を吸引する動作を行っているが、サブタンクの上流側からインクに正圧を付与することによって、ノズル25からインクを押し出す、あるいはサブタンクから空気を押し出す動作を行ってもよい。
【0087】
また、時間計測手段によって計測された時間に応じて制御する回復動作、またフラッシング動作の回数に応じて制御する排気動作は、それぞれ各実施形態で説明したものよりも多段階するなど任意に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【図3】(a)図1のインクジェットヘッド、サブタンク部分の縦断面図、(b)前記(a)のb−b断面図とそれに対応するキャップ部分の断面図である。
【図4】図1の制御装置のブロック図である。
【図5】制御の流れの要部を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の図6相当のブロック図である。
【図7】第2実施形態の図5相当のフローチャートである。
【図8】第3実施形態の図5相当のフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
5 サブタンク
6 チューブ
10 パージキャップ
11 切り替え装置
12 吸引ポンプ
14a〜14d インクカートリッジ
25 ノズル
60 制御装置
61 吐出制御部
62 フラッシング制御部
63 パージ制御部
64 排気制御部
65 インク切れ検知部
66 時間検出部
70 制御装置
76 フラッシング回数検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体が収容された第1液体供給源から供給された前記第1液体をノズルから吐出する第1液体吐出ヘッドと、
第2液体が収容された第2液体供給源から供給された前記第2液体をノズルから吐出する第2液体吐出ヘッドと、
前記第1液体が液体切れとなったことを検知する液体切れ検知手段と、
前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知されてから前記第1液体の液体切れが解消されるまでの時間を検出する時間検出手段と、
前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッド内の液体を外部に排出させることによって前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッド内の液体の増粘を解消させる回復動作を行う回復手段と、
前記第1液体吐出ヘッド、前記第2液体吐出ヘッド及び前記回復手段の動作を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、
前記液体切れ検知手段による前記第1液体の液体切れ検知の結果にかかわらず、前記第2液体吐出ヘッドによる吐出を可能にし、
前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知されてから前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間、前記第1液体吐出ヘッドによる前記第1液体の吐出、及び、前記回復手段による前記第1液体吐出ヘッドに対する前記回復動作を禁止し、
前記第1液体の液体切れが解消された後に、前記時間検出手段によって検出された時間に応じて前記回復手段を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記回復手段は、前記回復動作として、外部から前記第1液体吐出ヘッド内の前記第1液体に圧力変動を生じさせることにより、前記ノズルから前記第1液体吐出ヘッド内の前記第1液体を排出させるパージ動作、または、前記第1液体吐出ヘッドを駆動して前記ノズルから前記第1液体を吐出させるフラッシング動作を行うように構成されており、
前記制御手段は、前記時間検出手段によって検出された時間に応じて、前記パージ動作または前記フラッシング動作の制御もしくはそれらを選択的に動作させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
第1液体が収容された第1液体供給源から供給された前記第1液体をノズルから吐出する吐出動作を行う第1液体吐出ヘッドと、
第2液体が収容された第2液体供給源から供給された前記第2液体をノズルから吐出する吐出動作を行う第2液体吐出ヘッドと、
前記第1液体供給源と前記第1液体吐出ヘッドとを接続する第1接続流路と、
前記第2液体供給源と前記第2液体吐出ヘッドとを接続する第2接続流路と、
前記第1接続流路内の気体を外部に排出させる排気手段と、
前記第1液体が液体切れとなったことを検知する液体切れ検知手段と、
前記第1液体吐出ヘッドのノズル内の前記第1液体の増粘を防止するために前記ノズルから前記第1液体を吐出するフラッシング動作を前記第1液体吐出ヘッドに行わせるフラッシング制御手段と、
前記排気手段による前記第1接続流路内の気体の排出を制御する排気制御手段と、
前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検出されてから前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間に前記第1液体吐出ヘッドにおいて前記フラッシング動作が行われた回数を検出するフラッシング回数検出手段と、
前記第1液体吐出ヘッド及び前記第2液体吐出ヘッドを、ユーザのデータにもとづいて液体を吐出するように制御する吐出制御手段とを備えており、
前記吐出制御手段は、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知された後、前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間、前記ユーザのデータにもとづく前記第1液体吐出ヘッドによる吐出を禁止し、前記第2液体吐出ヘッドによる吐出を可能にし、
前記フラッシング制御手段は、前記液体切れ検知手段により前記第1液体の液体切れが検知された後、前記第1液体の液体切れが解消されるまでの間、前記第1液体吐出ヘッドによる前記フラッシング動作を許容し、
前記排気制御手段は、前記第1液体の液体切れが解消されたときに、前記フラッシング回数検出手段によって検出された前記フラッシング動作の回数に応じて、前記排気手段を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記排気制御手段は、
前記第1液体の液体切れが解消されたときに、前記フラッシング回数検出手段により検出された前記フラッシング動作の回数が多いほど、前記排気手段が前記多量の気体を排出するように、前記排気手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記排気制御手段は、
前記液体切れ検知手段により液体切れが検知されていないときに、前記排気手段が所定の排気周期毎に前記第1接続流路内及び前記第2接続流路内の気体を排出するように前記排気手段を制御しており、
前記第1液体の液体切れが解消されたときに、前記フラッシング回数検出手段により検出された前記フラッシング動作の回数が所定の回数よりも少なければ、その後、少なくとも1回、前記排気周期よりも短い周期で前記第1接続流路内の気体を外部に排出するように、前記排気手段を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1液体吐出ヘッドが、前記第1液体としてカラーのインクを吐出するインク吐出ヘッドであり、
前記第2液体吐出ヘッドが、前記第2液体として黒のインクを吐出するインク吐出ヘッドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−39868(P2009−39868A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204027(P2007−204027)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】