説明

液体吐出装置

【課題】インク供給路への気泡及びゴミの混入やインク垂れを防ぎながら、ユーザがカートリッジを簡単かつ確実に交換できるようにする。
【解決手段】インクカートリッジ20Aは、液体貯蔵室53及びインク流出口60aが設けられた第1ユニット50と、第1ユニット50に対して近接した位置と離間した位置との間で相対移動可能である第2ユニット51と、近接位置にある第2ユニット51を離間位置に向けて付勢するバネ52とを有し、ロック部材81はカートリッジ搭載部19に装着されたインクカートリッジ20Aの第2ユニット51を近接位置にロック可能で、コントローラ40はインクカートリッジ20Aの交換を許容する電気信号に応じて、ロック部材81にロック解除動作を行わせ、ロック解除時にバネ52の付勢力により第2ユニット51が近接位置から離間位置へ移動する際、インク流入口90aはインク流出口60aとの結合が保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等のような液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカラーインクジェットプリンタでは、複数のインクカートリッジのうち何れかのインク残量が空となったことが検出されると、ユーザ操作画面にその旨が表示される。これを見たユーザは、インクジェットプリンタ本体のカバーをあけて、複数並んだインクカートリッジのうち該当する色のインクカートリッジを取り外して新品と交換する。
【0003】
しかし、ユーザが操作画面に表示された警告を見ても、空になったインクカートリッジの色(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)について正確に認識していないままカバーをあけると、誤って別のインクカートリッジを取り外してしまう場合がある。
【0004】
そこで、空になったインクカートリッジを丸ごとキャリッジから離脱させて装置外に自動的に排出させるとともに、ユーザが供給した新品のインクカートリッジを自動ローディング機構でキャリッジに自動的に装着させるインクジェットプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、複数あるインクカートリッジのうち空のインクカートリッジの交換作業が半自動的に行われるので、ユーザが誤って空でないインクカートリッジを取り外すことが防止され、ユーザの利便性も向上する。
【特許文献1】特開2007−69541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成によれば、空になったインクカートリッジが丸ごと自動的に排出されるので、インクカートリッジとプリンタ本体との間のインク供給路が自動的に開放されてしまうこととなる。そうすると、ユーザが即座にインクカートリッジを新品と交換しなければ、インクカートリッジとプリンタ本体との間のジョイント部からインク供給路に気泡及びゴミが混入したり、そのジョイント部から残留インクが垂れることが生じやすくなる。
【0006】
そこで本発明は、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎながら、ユーザがカートリッジを簡単かつ確実に交換できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る液体吐出装置は、液体貯蔵室とその液体貯蔵室に貯蔵された液体を流出する液体流出口を有する液体カートリッジと、前記液体カートリッジが着脱可能に装着されるとともに、装着された前記液体カートリッジの液体流出口と結合する液体流入口を有するカートリッジ装着部と、前記液体流入口に流入した液体が供給されるとともに、供給された液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジをロックするロック手段と、前記ロック手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記液体カートリッジは、前記液体貯蔵室及び前記液体流出口が設けられた第1ユニットと、前記第1ユニットに対して近接した近接位置と離間した離間位置との間で相対移動可能である第2ユニットと、前記近接位置にある前記第2ユニットを前記離間位置に向けて付勢する付勢手段とを有し、前記ロック手段は、前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジの前記第2ユニットを前記近接位置にロック可能であり、前記制御手段は、前記液体カートリッジの交換を許容する際には、前記ロック手段にロック解除動作を行わせる構成であり、前記ロック解除時に前記付勢手段の付勢力により前記第2ユニットが前記近接位置から前記離間位置へ移動する際、前記液体流入口は、前記液体流出口との結合が保たれる構成であることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、液体カートリッジの液体流出口がカートリッジ搭載部の液体流入口に結合されたままで、第2ユニットを付勢手段により第1ユニットに対して相対移動させてカートリッジの外形を変化させることが可能となる。つまり、第2ユニットを付勢力に抗した位置でロックした状態から、たとえば空になったカートリッジについてのみロック解除して外形を変化させることができる。そうすると、液体カートリッジとカートリッジ搭載部との間の液体供給路を開放することなく、ユーザは取り外すべき液体カートリッジを容易に視認することができる。したがって、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎながらも、ユーザは液体カートリッジを簡単かつ確実に交換することが可能となる。
【0009】
前記液体流出口と前記液体流入口との結合力は、前記付勢手段の付勢力により前記第2ユニットが前記近接位置から前記離間位置へ移動することでは外れない大きさであってもよい。
【0010】
前記構成によれば、ロック解除時に付勢手段の付勢力で第2ユニットが相対移動し、液体カートリッジにその移動による慣性力が生じても、前記液体流出口と前記液体流入口との結合がより確実に保たれる。そうすると、ユーザが実際に液体カートリッジを掴んで取り外すまでに時間が掛かった場合でも、液体流入口から気泡等が混入するのを好適に防止することが可能となる。
【0011】
前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方がユーザによる把持容易性が高くなる構成であってもよい。
【0012】
前記構成によれば、前記離間位置でユーザが第2ユニットを掴んで液体カートリッジを取り外しやすいので、カートリッジ交換の作業性を向上させることができる。
【0013】
前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方が前記液体流入口から離反していてもよい。
【0014】
前記構成によれば、ユーザは液体カートリッジを掴み易くなり、カートリッジ交換の作業性が向上する。
【0015】
前記カートリッジ装着部は、複数の液体カートリッジを装着可能であり、前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方が隣接する別の液体カートリッジから離反していてもよい。
【0016】
前記構成によれば、ユーザは液体カートリッジを掴み易くなり、カートリッジ交換の作業性が向上する。
【0017】
前記カートリッジ装着部の出入口を開閉する開閉カバーをさらに備え、前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方が前記開閉カバーに近接していてもよい。
【0018】
前記構成によれば、ユーザは液体カートリッジを掴み易くなり、カートリッジ交換の作業性が向上する。
【0019】
前記液体カートリッジ内の液体残量が所定量以下であるエンプティ状態を検出する液体残量検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記液体残量検出手段による前記エンプティ状態の検出に応じて、前記ロック手段にロック解除動作を行わせてもよい。
【0020】
前記構成によれば、空になった液体カートリッジの第2ユニットが第1ユニットに対して相対移動するので、空になった液体カートリッジをユーザは容易に知ることができるので、ユーザが誤って空でない液体カートリッジを抜き出すことがなく、気泡及びゴミの混入や液垂れを効果的に防止できる。
【0021】
前記液体カートリッジ内の液体残量が所定量以下であるエンプティ状態を検出する液体残量検出手段と、前記開閉カバーが開かれたことを検出するカバー開動作検出手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記液体残量検出手段による前記エンプティ状態の検出及び前記カバー開動作検出手段による前記開閉カバーの開状態の検出がともになされると前記ロック手段にロック解除動作を行わせてもよい。
【0022】
前記構成によれば、液体カートリッジが空になり且つユーザが開閉カバーを開くと、空になった液体カートリッジの第2ユニットが第1ユニットに対して相対移動するので、ユーザが誤って空でない液体カートリッジを抜き出すことがなく、気泡及びゴミの混入や液垂れを効果的に防止できる。
【0023】
ユーザの操作によりエジェクト指令を発するエジェクト指令発生手段をさらに備え、前記制御手段は、前記エジェクト指令に応じて、前記ロック手段にロック解除動作を行わせてもよい。
【0024】
前記構成によれば、ユーザに意思に応じて液体カートリッジの取り外し動作を容易に行うことができ、利便性が向上する。
【0025】
前記カートリッジ装着部は、複数の液体カートリッジを装着可能であり、前記ロック手段は、前記複数の液体カートリッジにそれぞれ対応して複数設けられ、前記制御手段は、複数の前記ロック手段のうちの特定のロック手段のみにロック解除動作を行わせてもよい。
【0026】
前記構成によれば、取り外すべき液体カートリッジが他の液体カートリッジと異なる動作をすることで、ユーザは取り外すべき液体カートリッジをより容易に知ることができる。
【0027】
前記ロック手段は、ソレノイドからなるアクチュエータを有していてもよい。
【0028】
前記構成によれば、簡素な構成でありながら、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎつつ、ユーザは液体カートリッジを簡単かつ確実に交換することが可能となる。
【0029】
前記ロック手段は、誘電エラストマと、前記誘電エラストマの両面に形成された一対の電極とからなるアクチュエータを有していてもよい。
【0030】
前記構成によれば、コンパクトな構成でありながら、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎつつ、ユーザは液体カートリッジを簡単かつ確実に交換することが可能となる。
【0031】
また、本発明の液体吐出装置は、液体貯蔵室及び液体流出口が設けられた第1ユニットと、当該第1ユニットに対して近接した近接位置と離間した離間位置との間で相対移動可能である第2ユニットと、前記近接位置にある前記第2ユニットを前記離間位置に向けて付勢する付勢手段とを含んで構成される液体カートリッジが着脱可能に装着されるとともに、装着された当該液体カートリッジの液体流出口と結合する液体流入口を有するカートリッジ装着部と、前記液体流入口に流入した液体が供給されるとともに、供給された液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジをロックするロック手段と、前記ロック手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記ロック手段は、前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジの前記第2ユニットを前記近接位置にロック可能であり、前記制御手段は、前記液体カートリッジの交換を許容する際には、前記ロック手段にロック解除動作を行わせる構成であり、前記ロック解除時に前記付勢手段の付勢力により前記第2ユニットが前記近接位置から前記離間位置へ移動する際、前記液体流入口は、前記液体流出口との結合が保たれる構成であることを特徴とする。
【0032】
前記構成によれば、液体カートリッジの液体流出口がカートリッジ搭載部の液体流入口に結合されたままで、第2ユニットを付勢手段により第1ユニットに対して相対移動させてカートリッジの外形を変化させることが可能となる。即ち、第2ユニットを付勢力に抗した位置でロックした状態から、たとえば空になったカートリッジについてのみロック解除して外形を変化させることができる。そうすると、液体カートリッジとカートリッジ搭載部との間の液体供給路を開放することなく、ユーザは取り外すべき液体カートリッジを容易に視認することができる。したがって、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎながらも、ユーザは液体カートリッジを簡単かつ確実に交換することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎつつ、ユーザは液体カートリッジを簡単かつ確実に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ3を有する複合機1を示す斜視図である。図1に示すように、複合機1は、プリンタ機能やスキャナ機能やコピー機能やファクシミリ機能を有するものであり、その筐体2の下部にインクジェットプリンタ3を有すると共にその筐体2の上部にスキャナ4を有している。筐体2の正面には開口5が形成されており、その開口5の下段にインクジェットプリンタ3の給紙トレイ6が設けられ、上段にインクジェットプリンタ3の排紙トレイ7が設けられている。インクジェットプリンタ3の正面側の右下部には開閉カバー8が設けられており、開閉カバー8の内側にはカートリッジ搭載部19(図2及び3参照)が設けられている。複合機1の上部正面側には、インクジェットプリンタ3やスキャナ4などを操作するためのボタンや表示画面9などを有するオペレーションパネル10が設けられている。また、複合機1は、外部のパーソナルコンピュータ(図示せず)の指示によっても動作可能となっている。
【0036】
図2は図1に示すインクジェットプリンタ3を模式的に説明する平面図である。図2に示すように、インクジェットプリンタ3は、一対のガイドレール11,12が略平行に配設されており、そのガイドレール11,12に画像記録ユニット13が走査方向にスライド可能に支持されている。画像記録ユニット13は、一対のプーリー14,15に巻き掛けられたタイミングベルト16に接合されており、タイミングベルト16はガイドレール12の延在方向と略平行に配設されている。一方のプーリー15には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられており、そのプーリー15が正逆回転駆動されることでタイミングベルト16が往復移動し、画像記録ユニット13がガイドレール11,12に沿って走査される。
【0037】
画像記録ユニット13は、ケーシングとなるキャリッジ17を有しており、そのキャリッジ17に4つのバッファタンク18が設けられている。また、ガイドレール12の右側手前にはカートリッジ搭載部19が設けられている。このカートリッジ搭載部19には、4色(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)のインクが夫々貯蔵された4つのインクカートリッジ20A〜20Dが着脱自在に装着されている。カートリッジ搭載部19に装着されたインクカートリッジ20A〜20Dは、インク供給チューブ21を介してバッファタンク18に夫々接続されている。
【0038】
図3は図1に示すインクジェットプリンタ3を模式的に説明する一部断面図である。図3に示すように、複合機1の底側には給紙トレイ6が配置されている。給紙トレイ6の上側には、給紙トレイ6に積載された記録用紙23のうち最上層のものを搬送路24へ供給する給紙駆動ローラ25が設けられている。搬送路24は、給紙トレイ6の背面側から上方へ向かった後に正面側へ向けてUターンし、印刷領域26を通過して排紙トレイ7(図1参照)へと導かれている。
【0039】
印刷領域26には、画像記録ユニット13が設けられている。画像記録ユニット13の下方には、用紙サイズより大きいプラテン27が配設されている。画像記録ユニット13の上流側には、搬送路24を流れる記録用紙23を狭持してプラテン27上へ搬送する搬送ローラ28及びピンチローラ29が設けられている。画像記録ユニット13の下流側には、印刷が行われた記録用紙23を狭持して排紙トレイ7(図1参照)へ搬送する排紙ローラ30及びピンチローラ31が設けられている。
【0040】
画像記録ユニット13は、多数のノズルからインクをプラテン27に向けて吐出する公知のインクジェットヘッド35と、インクジェットヘッド35へ供給するインクを一時貯蔵するバッファタンク18と、インクジェットヘッド35を駆動制御するヘッド制御基板34と、これらを搭載するキャリッジ17とを有している。インクジェットヘッド35は、バッファタンク18より供給されるインクを多数のノズル(図示せず)まで導く複数の液体室を有する流路ユニット32と、その流路ユニット32の上面に積層されて流路ユニット32内のインクにノズルに向かう吐出圧力を選択的に付与する圧電駆動式のアクチュエータ33とを有している。
【0041】
開閉カバー8の内側にはカートリッジ搭載部19が設けられており、カートリッジ搭載部19には、4つのインクカートリッジ20A〜20Dが着脱自在に装着されている。そして、これらインクカートリッジ20A〜20Dが、カートリッジ搭載部19及びインク供給チューブ36を介してバッファタンク33に夫々接続されている。
【0042】
また、これらインクカートリッジ20A〜20Dは、後述するように前後方向に伸長するように付勢された構造になっている。そして、カートリッジ搭載部19には、インクカートリッジ20A〜20Dを収縮状態で係止するための後述するロック手段38が4つのインクカートリッジ20A〜20Dに夫々対応して4つ設けられている。さらに、カートリッジ搭載部19には、装着されたインクカートリッジ20A〜20Dのインク残量を光学的に検出するインク残量検出センサ37が4つのインクカートリッジ20A〜20Dに夫々対応して4つ設けられている。
【0043】
ロック手段38、インク残量検出センサ37及びヘッド制御基板34には、コントローラ40(制御手段)が接続されている。このコントローラ40は、演算処理装置であるCPUや、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROMや、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAMや、書き換え可能なEEPROM等のメモリや、入出力インターフェース等で構成されている。機能的には、コントローラ40は、所要の演算制御を行う演算制御部41と、インク残量センサ37及びヘッド制御基板34の情報からインクカートリッジ20A〜20Dのインク残量を検出するインク残量検出部42と、ユーザ操作により生成される入力信号を受信するユーザ入力部43と、ロック手段38を係止状態と非係止状態との間で駆動させる駆動部44とを有している。なお、インク残量センサ37とインク残量検出部42とでインク残量検出手段が構成されている。
【0044】
図4は図3に示すインクジェットプリンタ3に装着されたインクカートリッジ20A付近の垂直断面図である。なお、4つのインクカートリッジ20A〜20D及びそれらに対応する部品は基本的に同構造であるため、以下、1つのインクカートリッジ20Aについて代表して説明する。
【0045】
図4に示すように、インクカートリッジ20Aは、インク100を貯蔵するためのインク貯蔵室53を有する第1ユニット50と、第1ユニット50の開閉カバー8側にスライド自在に取り付けられた第2ユニット51と、第1ユニット50と第2ユニット51との間に介設され、第2ユニット51が第1ユニット50に対して近接した近接位置から離間した離間位置に向けて相対移動するように付勢するコイル状のバネ52(付勢手段)とを備えている。
【0046】
第1ユニット50の開閉カバー8と反対側(図4右側)の面の下部には、開口部54と、その開口部54に連続する筒状のバルブ収容室55とが設けられている。バルブ収容室55は、開口部54から第1ユニット50の内部に向かって延設されており、そのバルブ収容室55にはインク供給バルブ56が収容されている。また、開口部54には環状のシール部材60が設けられており、その中心にインク流出口60aが形成されている。また、インク供給バルブ56は、インク流出口60aを閉鎖するようにバネ59でシール部材60に向けて付勢されている。バルブ収容室55の奥面には孔57が形成されており、その孔57の周囲から第1ユニット50の内部に向かって中空円錐状のカバー部58が突設されている。カバー部58の下部には流入孔58aが形成されており、バルブ収容室55はバルブ孔57及び流入孔58aを介してインク貯蔵室53に連通している。
【0047】
カートリッジ搭載部19の開閉カバー8と反対側(図4右側)で立設する奥壁部19aには、インクカートリッジ20Aに向かって筒状のニードル部90が突設されており、ニードル部90の先端がインク流入口90aとなっている。また、奥壁部19aのニードル部90と反対側に、ニードル部90と連通するチューブ取付部91が突設されている。インク供給チューブ36がチューブ取付部91に接続され、かつ、ニードル部90が第1ユニット50のシール部材60のインク流出口60aに液密的に挿入されてインク供給バルブ56を押し開くことで、インクカートリッジ20Aのインク貯蔵室53とバッファタンク33とが連通される構成となっている。
【0048】
第1ユニット50の開閉カバー8と反対側(図4右側)の面の上部には、開口部70と、その開口部70に連続する筒状のバルブ収容室71とが設けられている。開口部70には環状のシール部材72が設けられており、シール部材72の中心には大気開放孔72aが形成されている。バルブ収容室71は開口部70から第1ユニット50の内部に向かって延設されており、そのバルブ収容室71には大気開放バルブ73が収容されている。大気開放バルブ73は、大気開放孔72aを貫通し、カートリッジ搭載部19の奥壁部19aに向けて突出するロッド部73aと、ロッド部73aの奥端部から径方向外側に突出するフランジ部73bとを有している。大気開放バルブ73は、フランジ部73bが大気開放孔72aを封止すべくシール部材72に接触するようにバネ87で付勢されている。ロッド部73aには、その延在方向に沿って溝部73cが設けられており、フランジ部73bがシール部材72から離反した状態では溝部73cを介してバルブ収容室71が大気開放される。バルブ収容室71の奥面には連通孔74が形成されており、バルブ収容室71は連通孔74を介してインク貯蔵室53の上層に形成される空気層に連通している。
【0049】
第2ユニット51は、断面凹形状であり、第1ユニット50に対して開閉カバー8側からスライド自在に外嵌されている。第2ユニット51の上壁部分には上方に突出する爪状の被ロック部76が形成されていると共に、下方に突出するストッパ部77が形成されている。ストッパ部77は、第2ユニット51がバネ52による付勢力で第1ユニット50に対して開閉カバー8側に向けてスライド移動した際に、第1ユニット50の上面の開閉カバー8側にある突起部75に干渉し、第2ユニット51が第1ユニット50から抜けるのを防止している。
【0050】
ロック手段38は、支軸80により揺動自在に支持されたレバー状のロック部材81と、ロック部材81を係止状態に付勢するコイル状のバネ82と、ロック部材81を非係止状態にするためのソレノイド式のアクチュエータ83とを備えている。ロック部材81は、支軸80から上方に突出する第1アーム部81aと、支軸80から前方(開閉カバー8側)に向けて突出する第2アーム部81bと、第2アーム部81bの先端から下方に爪状に突出するロック部81cとを備えている。第1アーム部81aには、カートリッジ搭載部19に一端が接続されたバネ82の他端部が接続されている。即ち、バネ82により、ロック部材81が支軸80を支点として図4中の反時計回りに揺動し、第2ユニット51がバネ52に抗して第1ユニット50に近接した位置で第2ユニット51の被ロック部76にロック部81cが係止される。
【0051】
また、第1アーム部81aに対向するバネ81と反対側の位置には、アクチュエータ83が配置されている。アクチュエータ83は、コントローラ40の駆動部44に接続されたソレノイド部84と、ソレノイド部84から第1アーム部81aに向けて進退するロッド部85とを有している。即ち、アクチュエータ83のロッド部85が進出して第1アーム部81aがバネ82に抗して押圧されることで、ロック部材81が支軸80を支点として図4中の時計回りに揺動し、ロック部81cと被ロック部76との間の係止状態が解除される。なお、開閉カバー8とインクカートリッジ20Aとの間には、第2ユニット51がバネ52により開閉カバー8側に突出した状態での干渉を避けるためのクリアランスが設けられている。
【0052】
また、シール部材60がそのインク流出口60aでニードル部90を保持する力をFp、第2ユニット51がロック部材81によりロック解除されてバネ52によりスライド移動する際に第2ユニット51が第1ユニット50を追従させてニードル部90から引き離そうとする力をF1、バネ59がニードル部90を押し返す力をF2とすると、F1+F2<Fpの関係が成立している。これにより、第2ユニット51がロック部材81によるロックが解除されて第1ユニット50に対して近接した位置から離間した位置に移動しても、シール部材60はニードル部90を保持しつづけ、インク流出口60aとインク流入口90aとの結合が保たれることとなる。
【0053】
また、第1ユニット50には、奥壁部19a側の部分にインク貯蔵室53に連続する凹部67が形成されている。その凹部67の両側壁には、インク貯蔵室53に貯蔵されているインクの残量を検出するための半透明材からなる光透過部61が設けられている。また、第1ユニット50は、センサーアーム63を揺動可能に支持するための支持部62を有している。センサーアーム63は、支持部62に軸支される連結軸64aを有する連結部64と、連結部64の一方側(図4左側)に延在するフロート部65と、連結部64の他方側(図4右側)に延在するアーム部66とを備えている。
【0054】
フロート部65は、その平均比重がインクの比重よりも軽くなるように中空状に成形されている。アーム部66は、第1アーム66aと、第2アーム66bと、遮蔽部66cとを有している。第1アーム66aは、連結部64からフロート部65に対して略垂直をなす上方に向けて延びている。第1アーム66aの先端からはフロート部65から遠ざかる方向へ第2アーム部66bが延びている。第2アーム部66bの先端には、凹部67に位置する遮蔽部66cが形成されている。
【0055】
アーム部66はフロート部65よりも重量が小さく、インク貯蔵室53にインクが入っていない状態では、センサーアーム63は連結軸64aを中心にフロート部65が降下する方向に回動する。その際、センサーアーム63の遮蔽部66cは、凹部62から斜め上方に退くように移動する。一方、インク貯蔵室63にインクが十分充填された状態では、フロート部65がインクに浸漬され、浮力によってフロート部65とアーム部66との重量の均衡が逆転し、センサーアーム63は連結軸64aを中心にフロート部65が上昇する方向に回動する。その際、センサーアーム63の遮蔽部66cは、凹部67に進入するように斜め下方に移動する。
【0056】
図5は図4に示すインクカートリッジ20A及びインク残量検出センサ37の要部水平断面図である。図5に示すように、カートリッジ搭載部19には、インク残量検出センサ37が設けられている。インク残量検出センサ37は、発光部37aと受光部37bとを有し、発光部37aから受光部37bへ出射された光の輝度に基づいて所定の電気信号を出力するものであり、具体的には透過型のフォトインタラプタが用いられている。インク残量検出センサ37は、その発光部37aと受光部37bとの間の検出領域に、第1ユニット50の凹部67の壁面の光透過部61が位置するように設けられている。
【0057】
即ち、センサーアーム63の遮蔽部66cが、凹部67に進入して両側壁の光透過部61に挟まれる状態では、発光部37aから出射された光は遮蔽部66cで遮断されて受光部37bで感知されない。このとき、コントローラ40のインク残量検出部42(図4参照)では、「インクが所定量以上」と判断される。一方、遮蔽部66cが凹部67から退避して両側壁の光透過部61に挟まれない状態では、発光部37aから出射された光は、遮蔽部66cで遮断されずに光透過部61を介して受光部37bで感知される。このとき、コントローラ40(図4参照)では、「インクが所定量以下」と判断される。
【0058】
次に、インクジェットプリンタ3の動作について説明する。図4の状態ではインク貯留室53にインクが十分に貯留されており、センサーアーム63のフロート部65が上昇しているので、センサーアーム63の遮蔽部66cが凹部67に進入して両側壁の光透過部61に挟まれている、よって、コントローラ40のインク残量検出部42は、インク残量検出センサ37の出力から「インクが所定量以上」と判断する。
【0059】
インクカートリッジ20A内のインクが所定量まで減ると、センサーアーム63のフロート部65が降下し、遮蔽部66cが凹部67から退避する。よって、コントローラ40のインク残量検出部42は、インク残量検出センサ37の出力から「インクが所定量以下」であると判断する。続いてこの時点から、インク残量検出部42では、ヘッド制御基板34から受信するデータをもとにしてインクジェットヘッド32(図3参照)で吐出されるインク量を累積計算し、インク貯蔵室53内のインク残量を演算する。この演算により、インク貯蔵室53内のインク液面が流入孔58aに達する量まで減ったと検出された時点で、インク残量検出部42は「インク残量がゼロ」と判断する。
【0060】
図6は図4に示すインクカートリッジ20A付近のエンプティ状態における垂直断面図である。図7は図2に示すインクジェットプリンタ3のインクカートリッジ20A〜20Dの1つがエンプティ状態であるときの平面図である。図6に示すように、インク残量検出部42は、インクカートリッジ20Aのインク残量がゼロであると特定すると、その旨のエンプティ信号を演算制御部41に送信する。そして、演算制御部41は、特定された空のインクカートリッジ20Aに対応するアクチュエータ83のロッド部85を伸長させるように駆動部44に指令する。そうすると、ロック部材81がバネ82に抗して時計回りに揺動し、空のインクカートリッジ20Aに対応するロック部81cのみが被ロック部76に対して非係止状態となる。これにより、第2ユニット51がバネ52の付勢力で第1ユニット50に対して開閉カバー8側に向けて相対移動し、インクカートリッジ20Aの外形が変化する。即ち、インクカートリッジ20Aの第1ユニット50のインク流出口60aが、カートリッジ搭載部19のインク流入口90aに接続されたままの状態で、第2ユニット51がインク流入口90aから離反するようにスライドする(図7も参照)。このように、コントローラ40の演算制御部41は、エンプティ信号を受信すると、ロック部材81が非係止状態となるように制御するエンプティエジェクトモードを有している。
【0061】
また、コントローラ40の演算制御部41は、ユーザ操作に応じて、ロック部材81が非係止状態となるように制御するユーザエジェクトモードも有している。例えば、ユーザがオペレーションパネル10(図1参照)のボタン(エジェクト指令発生手段)を操作して、任意のインクカートリッジ20A〜20Dを取り外す旨のエジェクト指令をした場合には、その旨の入力信号が生成されてコントローラ40のユーザ入力部43で受信される。これを受けた演算制御部41は、ユーザにより特定されたインクカートリッジ20Aに対応するアクチュエータ83のロッド部85を伸長させるように駆動部44に指令し、ロック部材81が非係止状態となる。なお、前述したエンプティエジェクトモードとユーザエジェクトモードは、オペレーションパネル10や、インクジェットプリンタ1に外部接続されたパソコン(図示せず)等をユーザが操作することで切換できるように設定されている。
【0062】
以上の構成によれば、インクカートリッジ20Aのインク流出口60aがカートリッジ搭載部19のインク流入口90aに接続されたままで、電気的な制御により第2ユニット51をバネ52により第1ユニット50に対して相対移動させてインクカートリッジ20Aの外形を変化させることが可能となる。よって、インクカートリッジ20Aとカートリッジ搭載部19との間のインク供給路を開放することなく、ユーザは取り外すべきインクカートリッジ20Aを容易に視認することができる。その結果、インク供給路への気泡及びゴミの混入やインク垂れを防ぎながらも、ユーザはインクカートリッジ20Aを簡単かつ確実に交換することが可能となる。
【0063】
さらに、第2ユニット51は第1ユニット50から離間するようにスライドすることで、カートリッジ搭載部19から離反して開閉カバー8に近接し、隣接する別の液体カートリッジ20B〜20Dからも離反するので、ユーザは複数並んだインクカートリッジ20A〜20Dから空になったインクカートリッジ20Aを簡単に掴んで取り外すことができ、インクカートリッジ交換の作業性が向上する。
【0064】
なお、エンプティエジェクトモードとユーザエジェクトモードは、ユーザによる明示的な切換操作により互いを切り換えてもよいし、同時に実施可能としてもよい。また、付勢手段としてコイル状のバネ52を用いているが、付勢力を発揮する弾性体であればこれに限定されず、たとえば板バネやゴム等を用いてもよい。また、制御手段となるコントローラ40は、ヘッド制御基板34と別体としているが一体でもよい。
【0065】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ20A付近の垂直断面図である。図9は図8の要部拡大図である。第2実施形態は、アクチュエータ183に誘電エラストマ193を用いている点が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付して以下の説明を省略している。
【0066】
図8及び図9に示すように、カートリッジ搭載部119は、その奥壁部119aの上端から前方側(開閉カバー8側)に向けて突出した上壁部119bを有し、その上壁部119bの先端部の上面にアクチュエータ183が設けられている。アクチュエータ183は、平坦な誘電エラストマ193と、誘電エラストマ193の上面に形成された上部電極194と、誘電エラストマ193の下面に形成された下部電極195とを備えている。誘電エラストマ193は、電場方向に収縮し、電場方向と直交する方向に膨張する性質を有している。誘電エラストマ193の具体例としては、例えば、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂などが挙げられる。上部電極194はコントローラ140の駆動部144に電気的に接続されており、下部電極195はアースされている。また、このアクチュエータ183の両端部は、上壁部119bから上方に突出した突起部119c,119dにより位置規制されている。
【0067】
図10は図8に示すインクカートリッジ20A付近のエンプティ状態における垂直断面図である。図11は図10の要部拡大図である。図10及び図11に示すように、インク残量検出部42が、インクカートリッジ20Aのインク残量がゼロであると検出すると、その旨のエンプティ信号(電気信号)が演算制御部41に送信される。そして、演算制御部41は、空のインクカートリッジ20Aに対応するアクチュエータ183の上部電極194に電圧を印加するように駆動部144に指令する。そうすると、上部電極194と下部電極195との間に電場が形成され、誘電エラストマ193が上下方向に収縮する。その際、誘電エラストマ193が面方向に膨張しようとするのを突起部119c,119dが規制するため、誘電エラストマ193は上方に弓形に突出変形する。これにより、誘電エラストマ193がロック部材81の第2アーム部81bを上方に押圧し、ロック部材81がバネ82に抗して時計回りに揺動し、ロック部81cの被ロック部76に対する係止が解除される。これにより、第2ユニット51がバネ52の付勢力で第1ユニット50に対して開閉カバー8側に向けて相対移動し、インクカートリッジ20Aの外形が変化する。即ち、インクカートリッジ20Aの第1ユニット50のインク流出口60aが、カートリッジ搭載部19のインク流入口90aに接続されたままの状態で、第2ユニット51がインク流入口90aから離反するようにスライドする。
【0068】
以上の構成によれば、アクチュエータとして誘電エラストマ193が用いられているので、インクジェットプリンタの小型化を図ることができる。また、誘電エラストマは、小型でありながら圧電素子と比べて遥かに歪み量が大きく、発熱もあまり生じないため、インクジェットプリンタのような高密度化された電気機器に内蔵するのに好適である。
【0069】
(第3実施形態)
図12は本発明の第3実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ20A付近の垂直断面図である。第3実施形態は、アクチュエータ83の制御に開閉カバー8の開放を検出したオープン信号を利用している点が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付して以下の説明を省略している。
【0070】
図12に示すように、カートリッジ搭載部19は、インクカートリッジ20Aが装着された状態で第2ユニット51が開閉カバー8に近接するような位置に設けられている。また、開閉カバー8が開状態であるか閉状態であるかを検出可能なカバー開動作検出スイッチ294が配置されている。コントローラ240には、カバー開動作検出スイッチ294と接続されたカバー開動作検出部293が設けられている。カバー開動作検出部293は、カバー開動作検出スイッチ294に開閉カバー8が当接していることを検出すると開閉カバー8が閉じていると判断し、カバー開動作検出スイッチ294に開閉カバー8が当接していないことを検出すると開閉カバー8が開いていると判断する。即ち、カバー開動作検出部293とカバー開動作検出スイッチ294とでカバー開動作検出手段が構成されている。
【0071】
また、第1ユニット50の開閉カバー8と反対側(図4右側)の面の下部には、開口部54が形成され、その開口部54には環状のシール部材260が設けられている。シール部材260の中心には、無負荷時に弾性により縮径して閉塞するインク流出口260aが形成されている。つまり、カートリッジ搭載部19のニードル部90がインク流出口260aに挿入されることで、ニードル部90のインク流入口90aがインク貯蔵室53に連通する構成となっている。
【0072】
また、シール部材260がそのインク流出口90aでニードル部90を保持する力をFp、第2ユニット51がロック部材81によりロック解除されてバネ52によりスライド移動する際に第2ユニット51が第1ユニット50を追従させてニードル部90から引き離そうとする力をF1とすると、F1<Fpの関係が成立している。これにより、第2ユニット51がロック部材81によりロック解除されて第1ユニット50に対して近接した位置から離間した位置に移動しても、シール部材260はニードル部90を保持しつづけ、インク流出口260aとインク流入口90aとの結合が保たれることとなる。
【0073】
図13は図12に示すインクカートリッジ20A付近のカバー開動作中における垂直断面図である。図13に示すように、インク残量検出部42が、インクカートリッジ20Aのインク残量がゼロであると検出すると、その旨のエンプティ信号が演算制御部241に送信される。そして、ユーザが開閉カバー8を開けると、カバー開動作検出部293は、それを検出してオープン信号を演算制御部241に送信する。
【0074】
図14は図12に示すインクカートリッジ20A付近のカバー開動作完了後における垂直断面図である。図14に示すように、コントローラ240の演算制御部241は、エンプティ信号及びオープン信号を受信すると、所定時間経過後(例えば、1秒後)に、空のインクカートリッジ20Aに対応するアクチュエータ83のロッド部85を伸長させるように駆動部44に指令する。そうすると、ロック部81cと被ロック部76との係止が解除されて、第1ユニット50のインク流出口60aがカートリッジ搭載部19のインク流入口90aに接続されたままの状態で、第2ユニット51がバネ52により第1ユニット50から離反するようにスライド移動する。その際、第2ユニット51は、閉状態の開閉カバー8の位置よりも外部に突出する。
【0075】
以上の構成によれば、インクカートリッジ20Aが空になり且つユーザが開閉カバー8を開くと、第2ユニット51が第1ユニット50に対して相対移動するので、ユーザが誤って空でないインクカートリッジ20Aを抜き出すことがなく、気泡及びゴミの混入やインク垂れを効果的に防止できる。また、開閉カバー8が開かれた後に第2ユニット51がスライド移動するので、カートリッジ搭載部19を開閉カバー8に近づけて配置することができ、インクジェットプリンタの小型化を図ることが可能となる。
【0076】
(第4実施形態)
図15は本発明の第4実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ20A付近の垂直断面図である。第4実施形態は、アクチュエータ183の制御に開閉カバー8の開放を検出したオープン信号を利用している点が第2実施形態と相違し、アクチュエータ183に誘電エラストマ193を用いている点が第3実施形態と相違する。なお、第1〜第3実施形態と共通する部分については同一符号を付して以下の説明を省略している。
【0077】
図15に示すように、カートリッジ搭載部119は、第3実施形態と同様に、インクカートリッジ20Aが装着された状態で第2ユニット51が開閉カバー8に近接する位置に設けられている。また、第3実施形態と同様に、カバー開動作検出手段を構成するカバー開動作検出部293及びカバー開動作検出スイッチ294が設けられている。アクチュエータ183は、第2実施形態と同様に、薄膜状の誘電エラストマ193と、誘電エラストマ193の上面に形成された上部電極194と、誘電エラストマ193の下面に形成された下部電極195とを備えている。
【0078】
図16は図15に示すインクカートリッジ20A付近のカバー開動作中における垂直断面図である。図16に示すように、インク残量検出部42が、インクカートリッジ20Aのインク残量がゼロであると検出すると、その旨のエンプティ信号が演算制御部241に送信される。そして、ユーザが開閉カバー8を開けると、カバー開動作検出部293は、それを検出してオープン信号を演算制御部241に送信する。
【0079】
図17は図15に示すインクカートリッジ20A付近のカバー開動作完了後における垂直断面図である。図17に示すように、コントローラ340の演算制御部241は、エンプティ信号及びオープン信号を受信すると、所定時間経過後(例えば、1秒後)に、空のインクカートリッジ20Aに対応するアクチュエータ183の上部電極194に電圧を印加する。そうすると、誘電エラストマ193が弓形に変形してロック部材81の第2アーム部81bを上方に押圧し、ロック部81cと被ロック部76との係止が解除される。これにより、第1ユニット50のインク流出口60aがカートリッジ搭載部119のインク流入口90aに接続されたままの状態で、第2ユニット51がバネ52により第1ユニット50から離反するようにスライド移動する。その際、第2ユニット51は、閉状態の開閉カバー8の位置よりも外部に突出する。
【0080】
以上の構成によれば、インクカートリッジ20Aが空になり且つユーザが開閉カバー8を開くと、第2ユニット51が第1ユニット50に対して相対移動するので、ユーザが誤って空でないインクカートリッジ20Aを抜き出すことがなく、気泡及びゴミの混入やインク垂れを効果的に防止できる。また、開閉カバー8が開かれた後に第2ユニット51がスライド移動するので、カートリッジ搭載部19を開閉カバー8に近づけて配置することができ、インクジェットプリンタの小型化を図ることが可能となる。さらに、アクチュエータとして誘電エラストマ193が用いられているので、インクジェットプリンタの小型化を図ることができる。
【0081】
(第5実施形態)
図18は本発明の第5実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ320A付近の垂直断面図である。第5実施形態は、インクカートリッジ320Aの第1ユニット350がカートリッジ搭載部319に係止される点が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と共通する部分については同一符号を付して以下の説明を省略している。
【0082】
図18に示すように、インクカートリッジ320Aの第1ユニット350は、その上面に被係止部350aが上方に向けて突出している。一方、カートリッジ搭載部319の被係止部350aに対応する位置には、係止部319bが下方に向けて突出している。よって、インクカートリッジ320Aがカートリッジ搭載部319に装着された状態で、係止部319bが被係止部350aに係止される。この係止力は、ユーザがインクカートリッジ320Aを掴んで開閉カバー8側に引っ張れば係止が解除される程度のものである。
【0083】
以上の構成によれば、第2ユニット51がロック部材81によりロック解除されることでバネ52による付勢力で開閉カバー8側に向けてスライド移動する際に、係止部319bが被係止部350aを係止しているので、インク流出口60aとインク流入口90aとの結合を確実に維持することができる。なお、係止部319bの代わりに、手動で被係止部350aとの係止を解除する係止レバーなどを設けてもよい。また、本実施形態の係止構造は、前述した第2〜第4実施形態に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明に係る液体吐出装置は、液体供給路への気泡及びゴミの混入や液垂れを防ぎながらも、ユーザがカートリッジを簡単かつ確実に交換できる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できるインクジェットプリンタ等に広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタを有する複合機1を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタを模式的に説明する平面図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンタを模式的に説明する一部断面図である。
【図4】図3に示すインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ付近の垂直断面図である。
【図5】図4に示すインクカートリッジ及びインク残量検出センサの要部水平断面図である。
【図6】図4に示すインクカートリッジ付近のエンプティ状態における垂直断面図である。
【図7】図2に示すインクジェットプリンタのインクカートリッジの1つがエンプティ状態であるときの平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ付近の垂直断面図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】図8に示すインクカートリッジ付近のエンプティ状態における垂直断面図である。
【図11】図10の要部拡大図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ付近の垂直断面図である。
【図13】図12に示すインクカートリッジ付近のカバー開動作中における垂直断面図である。
【図14】図12に示すインクカートリッジ付近のカバー開動作完了後における垂直断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ付近の垂直断面図である。
【図16】図15に示すインクカートリッジ付近のカバー開動作中における垂直断面図である。
【図17】図15に示すインクカートリッジ付近のカバー開動作完了後における垂直断面図である。
【図18】本発明の第5実施形態に係るインクジェットプリンタに装着されたインクカートリッジ付近の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0086】
3 インクジェットプリンタ
8 開閉カバー
19,119,319 カートリッジ搭載部
20A〜20D,320A インクカートリッジ
37 インク残量検出センサ
38,138 ロック手段
40 コントローラ(制御手段)
42 インク残量検出部
43 ユーザ入力部
50 第1ユニット
51 第2ユニット
52 バネ(付勢手段)
53 インク貯蔵室
60a インク流出口(液体流出口)
81 ロック部材
83,183 アクチュエータ
84 ソレノイド
60a インク流出口
90a インク流入口(液体流入口)
193 誘電エラストマ
194 上部電極
195 下部電極
293 カバー開動作検出部
294 カバー開動作検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯蔵室とその液体貯蔵室に貯蔵された液体を流出する液体流出口を有する液体カートリッジと、
前記液体カートリッジが着脱可能に装着されるとともに、装着された前記液体カートリッジの液体流出口と結合する液体流入口を有するカートリッジ装着部と、
前記液体流入口に流入した液体が供給されるとともに、供給された液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジをロックするロック手段と、
前記ロック手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記液体カートリッジは、前記液体貯蔵室及び前記液体流出口が設けられた第1ユニットと、前記第1ユニットに対して近接した近接位置と離間した離間位置との間で相対移動可能である第2ユニットと、前記近接位置にある前記第2ユニットを前記離間位置に向けて付勢する付勢手段とを有し、
前記ロック手段は、前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジの前記第2ユニットを前記近接位置にロック可能であり、
前記制御手段は、前記液体カートリッジの交換を許容する際には、前記ロック手段にロック解除動作を行わせる構成であり、
前記ロック解除時に前記付勢手段の付勢力により前記第2ユニットが前記近接位置から前記離間位置へ移動する際、前記液体流入口と前記液体流出口との結合が保たれる構成であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体流出口と前記液体流入口との結合力が、前記付勢手段の付勢力により前記第2ユニットが前記近接位置から前記離間位置へ移動することでは外れない大きさである請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方がユーザによる把持容易性が高くなる構成である請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方が前記液体流入口から離反している請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記カートリッジ装着部は、複数の液体カートリッジを装着可能であり、
前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方が隣接する別の液体カートリッジから離反している請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記カートリッジ装着部の出入口を開閉する開閉カバーをさらに備え、
前記液体流出口と前記液体流入口とが結合された状態において、前記第2ユニットは、前記近接位置よりも前記離間位置に位置する方が前記開閉カバーに近接している請求項1乃至5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体カートリッジ内の液体残量が所定量以下であるエンプティ状態を検出する液体残量検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記液体残量検出手段による前記エンプティ状態の検出に応じて、前記ロック手段にロック解除動作を行わせる請求項1乃至6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体カートリッジ内の液体残量が所定量以下であるエンプティ状態を検出する液体残量検出手段と、前記開閉カバーが開かれたことを検出するカバー開動作検出手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記液体残量検出手段による前記エンプティ状態の検出及び前記カバー開動作検出手段による前記開閉カバーの開状態の検出がともになされると前記ロック手段にロック解除動作を行わせる請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
ユーザの操作によりエジェクト指令を発するエジェクト指令発生手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記エジェクト指令に応じて、前記ロック手段にロック解除動作を行わせる請求項1乃至8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記カートリッジ装着部は、複数の液体カートリッジを装着可能であり、
前記ロック手段は、前記複数の液体カートリッジにそれぞれ対応して複数設けられ、
前記制御手段は、複数の前記ロック手段のうちの特定のロック手段のみにロック解除動作を行わせる請求項1乃至9のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記ロック手段は、ソレノイドからなるアクチュエータを有している請求項1乃至10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記ロック手段は、誘電エラストマと、前記誘電エラストマの両面に形成された一対の電極とからなるアクチュエータを有している請求項1乃至10のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項13】
液体貯蔵室及び液体流出口が設けられた第1ユニットと、当該第1ユニットに対して近接した近接位置と離間した離間位置との間で相対移動可能である第2ユニットと、前記近接位置にある前記第2ユニットを前記離間位置に向けて付勢する付勢手段とを含んで構成される液体カートリッジが着脱可能に装着されるとともに、装着された当該液体カートリッジの液体流出口と結合する液体流入口を有するカートリッジ装着部と、
前記液体流入口に流入した液体が供給されるとともに、供給された液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジをロックするロック手段と、
前記ロック手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記ロック手段は、前記カートリッジ装着部に装着された前記液体カートリッジの前記第2ユニットを前記近接位置にロック可能であり、
前記制御手段は、前記液体カートリッジの交換を許容する際には、前記ロック手段にロック解除動作を行わせる構成であり、
前記ロック解除時に前記付勢手段の付勢力により前記第2ユニットが前記近接位置から前記離間位置へ移動する際、前記液体流入口と前記液体流出口との結合が保たれる構成であることを特徴とする液体吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−39870(P2009−39870A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204044(P2007−204044)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】