説明

液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の形成方法

【課題】圧電体層の結晶性を向上し良好な変位特性が安定して得られる圧電素子を備えた液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子の形成方法を提供する。
【解決手段】流路形成基板用ウエハー110の表面に第1の電極膜60を形成する工程と、第1の電極膜上に第1の強誘電体膜71aを形成する工程と、この第1の強誘電体膜71a上に形成したレジスト膜をマスクとして第1の強誘電体膜71a及び第1の電極膜60をエッチングする工程と、酸素プラズマアッシングによってレジスト膜を除去する第1の除去工程と、保護用レジスト膜を形成する工程と、最終的に有機剥離液で処理することによりレジスト膜及び保護用レジスト膜を除去する第2の除去工程と、残りの強誘電体膜を形成する工程と、強誘電体膜上に第2の電極膜を形成後、第2の電極膜及び強誘電体膜をパターニングして圧電素子を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を駆動することによりノズルから液滴を噴射する液体噴射ヘッドの
製造方法及び圧電素子の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子は、電気機械変換機能を呈する圧電材料等の強
誘電材料からなる圧電体層を2つの電極で挟んだ素子であり、圧電体層は、例えば、結晶
化した圧電性セラミックスにより構成されている。
【0003】
このような圧電素子を用いた液体噴射ヘッドとしては、例えば、インク滴を吐出するノ
ズルと連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形さ
せて圧力発生室のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させるインクジェット式記
録ヘッドがある。また、インクジェット式記録ヘッドとしては、圧電素子の軸方向に伸長
、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエーターを使用したものと、たわみ振動モードの
圧電アクチュエーターを使用したものの2種類が実用化されている。たわみ振動モードの
アクチュエーターを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術
により均一な圧電体膜を形成し、この圧電体層をイオンミリング等により切り分けること
によって、圧力発生室毎に独立する圧電素子を形成したものが知られている。
【0004】
圧電素子の形成方法としては、具体的には次のようなものがある。まず、基板上に下電
極膜を形成する。この下電極膜上に有機金属化合物のゾルを塗布して乾燥およびゲル化(
脱脂)して強誘電体前駆体膜を形成し、高温で熱処理して結晶化させて最下層の強誘電体
膜(第1の強誘電体膜)を形成する。次に、第1の強誘電体膜及び下電極膜を、第1の強
誘電体膜上に形成されたレジスト膜をマスクとしてイオンミリングすることによってこれ
ら第1の強誘電体膜及び下電極膜を所定形状に形成する。次いで、レジスト膜を酸素プラ
ズマアッシング等により除去した後、第1の強誘電体膜上に残りの強誘電体膜を形成して
圧電体層とする。さらにこの圧電体層上に上電極膜を形成する。そして、これら上電極膜
及び圧電体層を、上電極膜上に形成されたレジスト膜をマスクとしてイオンミリングする
ことで圧電素子を形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−152913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにレジスト膜を除去した後に、第1の強誘電体膜上に残りの強誘電体膜を形
成すると、特許文献1にも記載されているように、レジスト膜を除去する際に第1の強誘
電体膜の表面がダメージを受けているせいか、圧電体層の結晶配向等の結晶性が低下して
しまうという問題がある。すなわち第1の強誘電体の結晶性が残りの強誘電体膜に引き継
がれず、圧電体層の結晶性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
ところで、圧電素子が形成される基板は、その外周部が、例えば、金属製のリングチャ
ック等の押さえ部材によって保持されており、上述の第1の強誘電体膜をイオンミリング
する際には、押さえ部材が比較的高温に加熱される。このため、押さえ部材を介してその
下側のレジスト膜が加熱されて硬化しまうことがある。さらにイオンミリング時に押さえ
部材がエッチングされた異物(デポ物)が、押さえ部材近傍のレジスト膜に付着してしま
うことがある。このようにレジスト膜が硬化した部分や、異物が付着した部分は、レジス
ト膜の他の部分に比べて除去され難い。
【0008】
例えば、酸素プラズマアッシング等によるレジスト膜の除去工程を複数回実行すること
で、レジスト膜の硬化した部分等を完全に除去することはできる。しかしながら、除去工
程を単に複数回実行するだけでは、圧電体層の表面に大きなダメージを与えてしまう虞が
ある。
【0009】
なお基板の外周部にレジスト膜が硬化した部分等を残しておくと、その部分に形成され
る膜の密着性が弱くなる。このため、例えば、第1の強誘電体膜上に残りの強誘電体膜を
形成する際に、強誘電体膜或いはレジスト膜の一部が剥離して異物として付着し、エッチ
ング不良等が生じる虞がある。
【0010】
またこのような問題は、インクを噴射するインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘ
ッドに用いられる圧電素子だけでなく、あらゆる装置に用いられる圧電素子の形成方法に
おいても、同様に存在する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧電体層の結晶性を向上し良好
な変位特性が安定して得られる圧電素子を備えた液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子
の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、液滴を噴射するノズルに連通する圧力発生室が形成され
た流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に設けられる第1の電極膜と該第1の電極
膜上に形成される複数の強誘電体膜からなる圧電体層と該圧電体層上に形成される第2の
電極膜とで構成される圧電素子と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、複数の
流路形成基板が一体的に形成される流路形成基板用ウエハーの表面に前記第1の電極膜を
形成する工程と、該第1の電極膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成しそれを脱脂及
び焼成することで前記圧電体層を構成する複数の強誘電体膜のうちの最下層である第1の
強誘電体膜を形成する工程と、この第1の強誘電体膜上にレジストを塗布し露光及び現像
することにより所定形状のレジスト膜を形成すると共にこのレジスト膜をマスクとして前
記第1の強誘電体膜及び前記第1の電極膜をエッチングして所定形状に形成する工程と、
酸素プラズマアッシングによって前記レジスト膜の厚さ方向の少なくとも一部を除去する
第1の除去工程と、前記流路形成基板用ウエハーの中央部にレジストを塗布して前記第1
の強誘電体膜を覆う保護用レジスト膜を形成する工程と、最終的に有機剥離液で処理する
ことにより前記レジスト膜及び前記保護用レジスト膜を除去する第2の除去工程と、前記
第1の強誘電体膜上に強誘電体前駆体を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成して強誘電
体膜を形成する工程を複数回繰り返すことにより前記圧電体層を構成する残りの強誘電体
膜を形成する工程と、前記圧電体層を構成する強誘電体膜上に第2の電極膜を形成後、該
第2の電極膜及び残りの強誘電体膜を所定形状にパターニングして前記圧電素子を形成す
る工程と、を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる本発明では、第1の強誘電体膜の表面のダメージを抑えつつ、レジスト膜全体を
良好に除去(剥離)することができる。したがって、残りの強誘電体膜が、第1の強誘電
体膜の結晶性を引き継いで形成されるため、極めて良好な結晶性を有する圧電体層を形成
することができる。
【0013】
ここで、前記保護用レジスト膜を、前記流路形成基板用ウエハーの前記流路形成基板と
なるチップ領域に亘って形成することが好ましい。これにより、第1の強誘電体膜の表面
を保護用レジスト膜によってより確実に保護することができる。
【0014】
また前記第2の除去工程には、酸素プラズマアッシングによって前記第1のレジスト膜
及び保護用レジスト膜を除去する工程と、有機剥離液で処理することにより当該第1のレ
ジスト膜及び前記保護用レジスト膜を除去する工程と、が含まれていてもよい。このよう
な第2の除去工程によっても、レジスト膜全体を良好に除去することができる。
【0015】
また前記第1の除去工程には、酸素プラズマアッシングによって前記レジスト膜の厚さ
方向の一部のみを除去する工程と、有機剥離液で処理することにより前記レジスト膜の残
りを除去する工程と、が含まれていてもよい。このような第1の除去工程によっても、レ
ジスト膜全体を良好に除去することができる。
【0016】
また本発明は、素子基板上に設けられる第1の電極膜と、該第1の電極膜上に形成され
る複数の強誘電体膜からなる圧電体層と、該圧電体層上に形成される第2の電極膜と、を
備える圧電素子の形成方法であって、前記素子基板が複数一体的に形成される素子基板用
ウエハーの表面に前記第1の電極膜を形成する工程と、該第1の電極膜上に強誘電体前駆
体膜を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成することで前記圧電体層を構成する複数の強
誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜を形成する工程と、この第1の強誘電体
膜上にレジストを塗布し露光及び現像することにより所定形状のレジスト膜を形成すると
共にこのレジスト膜をマスクとして前記第1の強誘電体膜及び前記第1の電極膜をエッチ
ングして所定形状に形成する工程と、酸素プラズマアッシングによって前記レジスト膜の
厚さ方向の少なくとも一部を除去する第1の除去工程と、前記素子基板用ウエハーの中央
部にレジストを塗布して前記第1の強誘電体膜を覆う保護用レジスト膜を形成する工程と
、最終的に有機剥離液で処理することにより前記レジスト膜及び前記保護用レジスト膜を
除去する第2の除去工程と、前記第1の強誘電体膜上に強誘電体前駆体を所定厚さで形成
しそれを脱脂及び焼成して強誘電体膜を形成する工程を複数回繰り返すことにより前記圧
電体層を構成する残りの強誘電体膜を形成する工程と、前記圧電体層を構成する強誘電体
膜上に第2の電極膜を形成後、該第2の電極膜及び残りの強誘電体膜を所定形状にパター
ニングする工程と、を有することを特徴とする圧電素子の形成方法にある。
かかる本発明では、第1の強誘電体膜の表面のダメージを抑えつつ、レジスト膜全体を
良好に除去(剥離)することができる。したがって、残りの強誘電体膜が、第1の強誘電
体膜の結晶性を引き継いで形成されるため、極めて良好な結晶性を有する圧電体層を形成
することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係る圧電素子の層構造を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図7】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図8】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図9】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図10】実施形態2に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図11】実施形態3に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を一実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視
図であり、図2は、図1の平面図及びA−A’線断面図であり、図3は、圧電素子の層構
造を示す断面図である。
【0019】
図示するように、シリコン基板からなる第1の基板である流路形成基板10は、その一
方面に酸化膜からなる弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11に
よって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。流路形成基板1
0の圧力発生室12の長手方向一端側には、隔壁11によって区画され各圧力発生室12
に連通するインク供給路13と連通路14とが設けられている。さらに、連通路14の外
側には、各連通路14と連通する連通部15が設けられている。この連通部15は、後述
する第2の基板である保護基板30のリザーバー部32と連通して、各圧力発生室12の
共通のインク室(液体室)となるリザーバー100を構成する。
【0020】
流路形成基板10の他方面側には、各圧力発生室12に連通するノズル21が穿設され
たノズルプレート20が、接着剤等によって接合されている。このノズルプレート20は
、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
【0021】
流路形成基板10の一方面側には上述したように弾性膜50が形成されており、この弾
性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料からなる絶縁体膜55が形成されている。さ
らに、この絶縁体膜55上には、圧力発生室12内に圧力を発生させる圧力発生素子とし
ての圧電素子300が形成されている。本実施形態では、圧電素子300は、絶縁体膜5
5上に形成された共通電極である下電極膜(第1の電極膜)60と、下電極膜60上に形
成された圧電体層70と、圧電体層70上に形成された個別電極である上電極膜(第2の
電極膜)80とで構成されている。
【0022】
ここで下電極膜60は、圧力発生室12の長手方向両端部近傍でそれぞれパターニング
され、圧力発生室12の並設方向に沿って連続的に設けられている。また各圧力発生室1
2に対向する領域の下電極膜60の端面は、絶縁体膜55の表面に対して所定角度で傾斜
する傾斜面となっている。
【0023】
圧電体層70は、圧力発生室12毎に独立して設けられ、図3に示すように、例えば、
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電材料からなる複数層の強誘電体膜71(71
a〜71d)で構成され、それらのうちの最下層である第1の強誘電体膜71aは下電極
膜60上のみに設けられている。そして、この第1の強誘電体膜71aの端面は、下電極
膜60の端面に連続する傾斜面となっている。また、この第1の強誘電体膜71a上に形
成される第2〜4の強誘電体膜71b〜71dは、第1の強誘電体膜71a上から絶縁体
膜55上まで、第1の強誘電体膜71a及び下電極膜60の傾斜した端面を覆って設けら
れている。
【0024】
上電極膜80は、圧電体層70と同様に圧力発生室12毎に独立して設けられている。
そして、各上電極膜80には、リード電極90がそれぞれ接続されており、このリード電
極90を介して各上電極膜80と後述する駆動ICとが接続されている。
【0025】
流路形成基板10の圧電素子300側の面、具体的には下電極膜60、弾性膜50及び
リード電極90上には、圧電素子300を保護するための圧電素子保持部31を有する第
2の基板である保護基板30が、例えば、接着剤35によって接合されている。保護基板
30には、圧電素子保持部31と共にリザーバー部32が設けられている。このリザーバ
ー部32は、上述のように流路形成基板10に形成された連通部15と連通してリザーバ
ー100を構成している。また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫
通孔33が設けられており、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近
傍は、この貫通孔33内に露出されている。
【0026】
保護基板30の材料は、特に限定されないが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の
材料、例えば、ガラス材料、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では
、流路形成基板10と同一材料であるシリコン基板を用いている。
【0027】
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40
が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなる。リ
ザーバー部32の一方面はこの封止膜41によって封止されている。また、固定板42は
、金属等の硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する
領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっており、リザーバー100の一方
面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0028】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給
手段からインクを取り込み、リザーバー100からノズル21に至るまで内部をインクで
満たした後、駆動ICからの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの圧電
素子300に電圧を印加して撓み変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高
まりノズル21からインク滴が噴射される。
【0029】
以下、このような本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法、特に、圧
電素子の形成方法について図4〜図10を参照して説明する。
【0030】
まず図4(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー(素子基板用ウエハー)110
上に弾性膜50及び絶縁体膜55を順次形成した後、絶縁体膜55上に下電極膜60を形
成する。流路形成基板用ウエハー110は、例えば、シリコンウエハーからなり、その中
央部に複数の流路形成基板(素子基板)10が一体的に形成される。なおこれら各層の形
成方法は、特に限定されるものではない。
【0031】
次いで、下電極膜60上に圧電体層70を形成する。圧電体層70は、上述したように
複数層の強誘電体膜71a〜71dを積層することによって形成され、本実施形態では、
これらの強誘電体膜71をいわゆるゾル−ゲル法を用いて形成している。すなわち、金属
有機物を溶媒に溶解・分散しゾルを塗布乾燥しゲル化して強誘電体前駆体膜72を形成し
、さらにこの強誘電体前駆体膜72を脱脂して有機成分を離脱させた後、焼成して結晶化
させることで各強誘電体膜71を得ている。
【0032】
具体的には、図4(b)に示すように、下電極膜60上に、チタン又は酸化チタンから
なる結晶種(層)61をスパッタ法により形成する。次いで、図4(c)に示すように、
例えば、スピンコート法等の塗布法により未結晶状態の強誘電体前駆体膜72aを所定の
厚さ、例えば、110nm程度の厚さとなるように形成する。この強誘電体前駆体膜72
aを所定温度で所定時間乾燥させて溶媒を蒸発させる。強誘電体前駆体膜72aの乾燥温
度は、例えば、150℃以上200℃以下であることが好ましく、好適には180℃程度
である。また乾燥時間は、例えば、5分以上15分以下であることが好ましく、好適には
10分程度である。そして、乾燥した強誘電体前駆体膜72aを所定温度で脱脂する。な
お、ここで言う脱脂とは、強誘電体前駆体膜72aの有機成分を、例えば、NO、CO
、HO等として離脱させることである。なお脱脂時の流路形成基板用ウエハー110
の加熱温度は300℃〜500℃程度であることが好ましい。温度が高すぎると強誘電体
前駆体膜72aの結晶化が始まってしまい、温度が低すぎると十分な脱脂が行えないため
である。
【0033】
このように強誘電体前駆体膜72aの脱脂を行った後、流路形成基板用ウエハー110
を、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置等に挿入し、強誘電体前駆体膜7
2aを約700℃の高温で焼成して結晶化することにより、最下層の強誘電体膜である第
1の強誘電体膜71aを形成する。
【0034】
次に、下電極膜60と第1の強誘電体膜71aとを同時にパターニングする。図4(d
)に示すように、まず第1の強誘電体膜71a上にレジストを塗布、露光及び現像するこ
とにより所定パターンのレジスト膜200を形成する。なおレジストとしては、ネガレジ
ストが好適に用いられるが、ポジレジストを用いてもよい。
【0035】
次いで図4(e)に示すように、レジスト膜200を介して第1の強誘電体膜71a及
び下電極膜60を、例えば、イオンミリング等のドライエッチングによりパターニングす
る。このとき、第1の強誘電体膜71a及び下電極膜60は、レジスト膜200の傾斜し
た端面に沿ってパターニングされる。
【0036】
ところで、このように第1の強誘電体膜71a及び下電極膜60をイオンミリングする
際には、流路形成基板用ウエハー110の外周部は、図5に示すように、リングチャック
等の押さえ部材400によって保持されている。このため、イオンミリング時に押さえ部
材400下側のレジスト膜200の一部に、押さえ部材400を介して加熱されて硬化し
た硬化部201が形成されることがある。この硬化部201は、レジスト膜200の他の
部分よりも除去され難くなる。このため、硬化部201を完全に除去しようとすると、第
1の強誘電体膜71aの表面にダメージを与えてしまう虞がある。
【0037】
このため本発明では、次のような手順で硬化部201を含むレジスト膜200を除去す
る除去工程を実施することで、その際の第1の強誘電体膜71aの表面のダメージを抑制
している。
【0038】
具体的には、まず図6(a)及び図6(b)に示すように、第1の強誘電体膜71a上
のレジスト膜200の厚さ方向の一部(例えば、半分程度)を、酸素(O)プラズマア
ッシングによって除去する(第1の除去工程)。このとき、流路形成基板用ウエハー11
0の外周部に形成されているレジスト膜200の硬化部201は、他の部分よりも厚く残
る。次に、図6(c)に示すように、少なくとも第1の強誘電体膜71aを覆って保護用
レジスト膜210を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウエハー110の中央部
(流路形成基板10となるチップ領域)を覆うように保護用レジスト膜210を形成して
いる。したがって、図6(d)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の外周部(
流路形成基板10となる領域の外側)には保護用レジスト膜210は形成されていない。
【0039】
次に、図6(e)及び図6(f)に示すように、保護用レジスト膜210及び第1のレ
ジスト膜200を再び酸素プラズマアッシングすることによって除去する(第2の除去工
程)。このとき、第1の強誘電体膜71aの表面にダメージを与えないように、所定のタ
イミングで酸素プラズマアッシングを終了する。このため、流路形成基板用ウエハー11
0の外周部に形成されている硬化部201は、大部分は除去されるもののその一部が残っ
てしまう。
【0040】
このように流路形成基板用ウエハー110の外周部に残ったレジスト膜200の硬化部
201は、その後、有機剥離液等によって処理(有機剥離処理)することで剥離させる(
第2の除去工程)。このとき、第1の強誘電体膜71aの表面にも有機剥離液が接触する
ため、第1の強誘電体膜71aの表面にダメージを与える虞はある。しかしながら、上述
したように酸素プラズマアッシングを複数回実行しているため、硬化部201は大部分が
除去されており、比較的短時間の有機剥離処理によって硬化部201を剥離させることが
できる。したがって、第1の強誘電体膜71aの表面が受けるダメージは極めて小さく抑
えられる。すなわち上記の手順でレジスト膜200を剥離させることで、第1の強誘電体
膜71aの表面のダメージを抑えつつ、硬化部201を含むレジスト膜200を良好に除
去することができる。
【0041】
これにより、以下の工程で第1の強誘電体膜71a上に形成される第2〜第4の強誘電
体膜71b〜71dが、第1の強誘電体膜71aの結晶性を引き継いで形成されるため、
極めて良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができる。
【0042】
具体的には、図7(a)に示すように、第1の強誘電体膜71a上に、スピンコート法
等により強誘電体前駆体膜72bを所定の厚さ、具体的には、焼成後で330nm程度の
厚さとなるように形成する。例えば、三度の塗布により所望の厚さの強誘電体前駆体膜7
2bを形成している。次いで、この強誘電体前駆体膜72bを乾燥・脱脂後、焼成して結
晶化させて強誘電体膜71bとする。そして、このように、三度の塗布によって強誘電体
前駆体膜72b〜72dを形成する工程と、その強誘電体前駆体膜72b〜72dを乾燥
・脱脂後、焼成する工程とを複数回(例えば、3回)繰り返すことにより、第2〜第4の
強誘電体膜71b〜71dを形成する。これにより、複数層の強誘電体膜71a〜71d
からなり、厚さが約1μmの圧電体層70が形成される(図7(b))。
【0043】
上述したように、本実施形態では、第1の強誘電体膜71aのパターニングに用いたレ
ジスト膜200を複数回(本実施形態では2回)の酸素プラズマアッシングにより除去し
た後、残ったレジスト膜200の硬化部201を有機剥離処理によって除去するようにし
たので、圧電体層70の結晶性が向上する。すなわち、圧電体層70を構成する第1〜第
4の強誘電体膜71a〜71dの結晶は、第1の強誘電体膜71aから第4の強誘電体膜
71dまで実質的に連続した柱状結晶となり且つ(100)面に優先配向する。したがっ
て、圧電素子300の変位特性が向上し、インク噴射特性に優れたインクジェット式記録
ヘッドを実現することができる。なお優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、
特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、
略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を
形成している状態をいう。
【0044】
このような複数層の強誘電体膜71a〜71dからなる圧電体層70を形成した後は、
に示すように、圧電体層70上に上電極膜80を形成し、圧電体層70及び上電極膜80
を各圧力発生室12に対向する領域内にパターニングする。これにより、各圧力発生室1
2に対向する領域に、それぞれ圧電素子300が形成される(図8(a))。
【0045】
その後は、図8(b)に示すように、金(Au)等からなる金属層を流路形成基板用ウ
エハー110の全面に亘って形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示
なし)を介してこの金属層を圧電素子300毎にパターニングすることによってリード電
極90を形成する。次いで、図8(c)に示すように、複数の保護基板30が一体的に形
成される保護基板用ウエハー130を、流路形成基板用ウエハー110上に接着剤35に
よって接着する。ここで、保護基板用ウエハー130には、圧電素子保持部31、リザー
バー部32等が予め形成されている。
【0046】
次いで、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110をある程度の厚さと
なるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形
成基板用ウエハー110を所定の厚みに加工する。次いで、図9(b)に示すように、流
路形成基板用ウエハー110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなる保護膜52
を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図9(c)に示すように、この
保護膜52をマスクとして流路形成基板用ウエハー110を異方性エッチング(ウェット
エッチング)して、流路形成基板用ウエハー110に、圧力発生室12等の流路を形成す
る。
【0047】
その後は、流路形成基板用ウエハー110及び保護基板用ウエハー130の外周縁部の
不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路
形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130とは反対側の面にノズル21が穿
設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハー130にコンプライ
アンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウエハー110等を、図1に示すような
一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって上述した構造のインク
ジェット式記録ヘッドが製造される。
【0048】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図であ
る。本実施形態は、インクジェット式記録ヘッド製造方法(圧電素子の形成方法)の他の
例であり、具体的には、レジスト膜200を除去する除去工程の変形例である。
【0049】
本実施形態の除去工程では、レジスト膜200を介して第1の強誘電体膜71a及び下
電極膜60をパターニングした後、まず図10(a)及び図10(b)に示すように、第
1の強誘電体膜71a上のレジスト膜200を、酸素(O)プラズマアッシングによっ
て完全に除去する(第1の除去工程)。このとき、第1の強誘電体膜71aの表面にダメ
ージを与えないように、所定のタイミングで酸素プラズマアッシングを終了する。このた
め、流路形成基板用ウエハー110の外周部に形成されている硬化部201は、完全には
除去されずに残ってしまう。
【0050】
次に図10(c)及び図10(d)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の中
央部のチップ領域のみを覆って保護用レジスト膜210を形成する。次いで図10(e)
及び図10(f)に示すように、保護用レジスト膜210を再び酸素プラズマアッシング
することによって除去する(第2の除去工程)。このときにも、第1の強誘電体膜71a
の表面にダメージを与えないように、所定のタイミングで酸素プラズマアッシングを終了
する。このため、流路形成基板用ウエハー110の外周部の硬化部201は、その大部分
は除去されるものの一部が残ってしまう。
【0051】
その後は、上述の実施形態と同様に、流路形成基板用ウエハー110を有機剥離液等に
よって処理する(第2の除去工程)。これにより、流路形成基板用ウエハー110の外周
部に残っている硬化部201が良好に剥離する。
【0052】
このような本実施形態の手順でレジスト膜200を剥離させることによっても、第1の
強誘電体膜71aの表面のダメージを抑えつつ、硬化部201を含むレジスト膜200全
体を良好に除去することができる。したがって、第2〜第4の強誘電体膜71b〜71d
が、第1の強誘電体膜71aの結晶性を引き継いで形成されるため、極めて良好な結晶性
を有する圧電体層70を形成することができる。
【0053】
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図であ
る。本実施形態は、インクジェット式記録ヘッド製造方法(圧電素子の形成方法)の他の
例であり、具体的には、レジスト膜200を除去する除去工程の変形例である。
【0054】
本実施形態の除去工程では、レジスト膜200を介して第1の強誘電体膜71a及び下
電極膜60をパターニングした後、まず図11(a)及び図11(b)に示すように、第
1の強誘電体膜71a上のレジスト膜200の厚さ方向の一部(例えば、半分程度)を、
酸素(O)プラズマアッシングによって除去する(第1の除去工程)。このとき、流路
形成基板用ウエハー110の外周部に形成されているレジスト膜200の硬化部201は
、他の部分よりも厚く残ってしまう。
【0055】
次に、図11(c)に示すように、第1の強誘電体膜71a上に残っているレジスト膜
200を、有機剥離液等によって処理することによって除去する(第2の除去工程)。第
1の強誘電体膜71aの表面が有機剥離液に曝されると、第1の強誘電体膜71aの表面
にダメージを受ける虞があるため、処理時間は、第1の強誘電体膜71aの表面に大きな
ダメージを受けない程度に適宜決定する必要がある。このため、図11(d)に示すよう
に、流路形成基板用ウエハー110の外周部に残っている硬化部201も、ある程度は除
去されるもののその一部が残ってしまう。ただし有機剥離処理されたことで硬化部201
は剥がれ易くなる。
【0056】
次に図11(e)及び図11(f)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の中
央部のチップ領域を覆うように保護用レジスト膜210を形成する。その後、流路形成基
板用ウエハー110を、再度、有機剥離処理することによって保護用レジスト膜210を
除去する(第2の除去工程)。このとき、流路形成基板用ウエハー110の外周部に残っ
ている硬化部201を保護用レジスト膜210と共に除去することができる。
【0057】
このような本実施形態の手順でレジスト膜200を除去することによっても、第1の強
誘電体膜71aの表面のダメージを抑えつつ、硬化部201を含むレジスト膜200全体
を良好に除去することができる。したがって、第2〜第4の強誘電体膜71b〜71dが
、第1の強誘電体膜71aの結晶性を引き継いで形成されるため、極めて良好な結晶性を
有する圧電体層70を形成することができる。
【0058】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の構成は上述したものに限定されるも
のではない。例えば、上述の実施形態では、流路形成基板用ウエハーの外周部に形成され
た硬化部をレジスト膜と共に除去する例を説明したが、例えば、流路形成基板用ウエハー
の外周部に、イオンミリング時に押さえ部材がエッチングされた異物(デポ物)がレジス
ト膜に付着している場合にも、勿論、適用することができる。つまり、本発明の方法よれ
ば、第1の強誘電体膜の表面へのダメージを抑えつつ、上記異物や異物が付着した部分の
レジスト膜を良好に除去することができる。
【0059】
また、液体噴射ヘッドとしてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッドを一例とし
て説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたもので
ある。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる記録
ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有
機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材
料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることが
できる。さらに、本発明は、液体噴射ヘッドに利用される圧電素子だけでなく、他のあら
ゆる装置、例えば、マイクロホン、発音体、各種振動子、発信子等に搭載される圧電素子
の形成方法にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 30 保護基
板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電
極膜、 70 圧電体層、 71 強誘電体膜、 71a 第1の強誘電体膜、 80
上電極膜、 90 リード電極、 110 流路形成基板用ウエハー、 130 保護基
板用ウエハー、 200 レジスト膜、 201 硬化部、 210 保護用レジスト膜
、 300 圧電素子、 400 押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射するノズルに連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、
該流路形成基板の一方面側に設けられる第1の電極膜と該第1の電極膜上に形成される
複数の強誘電体膜からなる圧電体層と該圧電体層上に形成される第2の電極膜とで構成さ
れる圧電素子と、
を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、
複数の流路形成基板が一体的に形成される流路形成基板用ウエハーの表面に前記第1の
電極膜を形成する工程と、
該第1の電極膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成すること
で前記圧電体層を構成する複数の強誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜を形
成する工程と、
この第1の強誘電体膜上にレジストを塗布し露光及び現像することにより所定形状のレ
ジスト膜を形成すると共にこのレジスト膜をマスクとして前記第1の強誘電体膜及び前記
第1の電極膜をエッチングして所定形状に形成する工程と、
酸素プラズマアッシングによって前記レジスト膜の厚さ方向の少なくとも一部を除去す
る第1の除去工程と、
前記流路形成基板用ウエハーの中央部にレジストを塗布して前記第1の強誘電体膜を覆
う保護用レジスト膜を形成する工程と、
最終的に有機剥離液で処理することにより前記レジスト膜及び前記保護用レジスト膜を
除去する第2の除去工程と、
前記第1の強誘電体膜上に強誘電体前駆体を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成して
強誘電体膜を形成する工程を複数回繰り返すことにより前記圧電体層を構成する残りの強
誘電体膜を形成する工程と、
前記圧電体層を構成する強誘電体膜上に第2の電極膜を形成後、該第2の電極膜及び残
りの強誘電体膜を所定形状にパターニングして前記圧電素子を形成する工程と、を有する
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記保護用レジスト膜を、前記流路形成基板用ウエハーの前記流路形成基板となるチッ
プ領域に亘って形成することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第2の除去工程には、酸素プラズマアッシングによって前記第1のレジスト膜及び
保護用レジスト膜を除去する工程と、有機剥離液で処理することにより当該第1のレジス
ト膜及び前記保護用レジスト膜を除去する工程と、が含まれていることを特徴とする請求
項1又は2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第1の除去工程には、酸素プラズマアッシングによって前記レジスト膜の厚さ方向
の一部のみを除去する工程と、有機剥離液で処理することにより前記レジスト膜の残りを
除去する工程と、が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッ
ドの製造方法。
【請求項5】
素子基板上に設けられる第1の電極膜と、該第1の電極膜上に形成される複数の強誘電
体膜からなる圧電体層と、該圧電体層上に形成される第2の電極膜と、を備える圧電素子
の形成方法であって、
前記素子基板が複数一体的に形成される素子基板用ウエハーの表面に前記第1の電極膜
を形成する工程と、
該第1の電極膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成すること
で前記圧電体層を構成する複数の強誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜を形
成する工程と、
この第1の強誘電体膜上にレジストを塗布し露光及び現像することにより所定形状のレ
ジスト膜を形成すると共にこのレジスト膜をマスクとして前記第1の強誘電体膜及び前記
第1の電極膜をエッチングして所定形状に形成する工程と、
酸素プラズマアッシングによって前記レジスト膜の厚さ方向の少なくとも一部を除去す
る第1の除去工程と、
前記素子基板用ウエハーの中央部にレジストを塗布して前記第1の強誘電体膜を覆う保
護用レジスト膜を形成する工程と、
最終的に有機剥離液で処理することにより前記レジスト膜及び前記保護用レジスト膜を
除去する第2の除去工程と、
前記第1の強誘電体膜上に強誘電体前駆体を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成して
強誘電体膜を形成する工程を複数回繰り返すことにより前記圧電体層を構成する残りの強
誘電体膜を形成する工程と、
前記圧電体層を構成する強誘電体膜上に第2の電極膜を形成後、該第2の電極膜及び残
りの強誘電体膜を所定形状にパターニングする工程と、を有することを特徴とする圧電素
子の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−207071(P2011−207071A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77505(P2010−77505)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】