説明

液体噴射装置および液体噴射装置におけるフラッシング方法

【課題】印字の条件が変わる場合、それに応じて定期フラッシングの条件も変えることができるインクジェット式記録装置のフラッシング方法を提供する。
【解決手段】媒体を搬送する搬送手段と、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、所定の間隔で媒体以外に液体を噴射するフラッシング動作を実行する制御手段と、を備える液体噴射装置におけるフラッシング方法は、噴射ジョブデータに基づいて最初の媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件を比較する比較工程と、を有し、比較工程の結果に基づいて、フラッシングを実行するフラッシング実行工程を実施するか、フラッシングを実行しないかを選択することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置および液体噴射装置のフラッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置が知られている。このようなインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させることにより、所望の文字や図形等の画像を記録媒体上に記録する。
ところが、記録ヘッドのノズルのなかで使用頻度が少ないノズルは、インクの粘度が増加する等の原因により、画像の記録中にインク滴が適切に吐出できず吐出不良が発生することがあった。この結果、記録媒体上には画像が正しく記録できない部分(以後、ドット抜けと呼ぶ)が発生した。
このような問題に対応すべく、画像記録領域外でノズルからインクを定期的に吐出する定期フラッシングを行い、ノズルを新しいインクで満たす方法が知られている。例えば、下記特許文献1に示すように、1回のクリーニング回数に対応する液体を噴射したターゲットの枚数を示す平均吐出不良枚数に基づいて定期フラッシングの間隔を決定することで、吐出不良を予防している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−95816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平均吐出不良枚数に基づいて定期フラッシングを行う場合、例えば、150枚を同じ条件で印刷するような場合には有効であるが、印刷条件が都度変化するような印刷の場合、平均吐出不良枚数に達しない場合でも定期フラッシングが必要な印字品質になることがあった。他方で、印刷条件によっては、平均吐出不良枚数を越えても定期フラッシングが不要な印字品質を維持することがあった。
そこで本発明は、前記した課題に鑑みてなされたものであり、定期フラッシングを効率的に行う液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例にかかる液体噴射装置におけるフラッシング方法は、媒体を搬送する搬送手段と、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、所定の間隔で前記媒体以外に前記液体を噴射するフラッシング動作を実行する制御手段と、を備える液体噴射装置におけるフラッシング方法であって、噴射ジョブデータに基づいて最初の前記媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件とを比較する比較工程と、フラッシングを実行するフラッシング実行工程と、を有し、前記比較工程の結果に基づいて、前記フラッシング実行工程を実行するか、否かを選択することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、液体噴射装置において噴射ジョブデータに基づき最初の媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブのフラッシング条件と、今回の噴射ジョブのフラッシング条件とが比較され、比較結果に基づきフラッシングを実行するか否かが決定される。従って、噴射ジョブに応じたフラッシング条件に基づきフラッシングの実行可否が決定されるため、液体噴射装置において不要なフラッシングを抑制し、フラッシングを効率良く実行できる。
【0008】
[適用例2]
上記適用例にかかる液体噴射装置におけるフラッシング方法において、前記比較工程の結果が、前記前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と、前記今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件とが同じであるか否かを比較する工程を含み、比較の結果、同じである場合、フラッシングを実行しないことを特徴とする。
【0009】
前回の噴射ジョブ時と今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件が同じであれば、媒体搬送時にはフラッシングを実行しなくても、媒体への噴射時に行われる定期間隔で実行されるフラッシングでヘッド内の液体の増粘を抑制できる。これにより媒体搬送時にフラッシングを実行することで無駄にフラッシングをすることを防止できる。
【0010】
[適用例3]
上記適用例にかかる液体噴射装置におけるフラッシング方法において、前記フラッシング条件は、フラッシングの間隔、フラッシングの吐出量、媒体の種類、液体噴射モード、フラッシングの重み付けの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0011】
前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件が同じであるか否かを比較しているだけのため、フラッシングの間隔やフラッシングの吐出量だけでなく、媒体の種類、液体噴射モード、フラッシングの重み付けなどを利用することが可能となり、用いるデータの選択肢が増える。
【0012】
[適用例4]
上記適用例にかかる液体噴射装置におけるフラッシング方法において、前記比較工程はフラッシングの間隔またはフラッシングの吐出量の大小を比較する工程を含み、比較の結果、今回のフラッシングの間隔またはフラッシングの吐出量が小である場合、フラッシングを実行し、前記前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と前記今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件が同じである場合、フラッシングを実行しないことを特徴とする。
【0013】
今回のジョブのほうが前回のジョブよりフラッシング間隔やフラッシング吐出量が小さい場合、すでにフラッシングをする条件になっている可能性があるため、フラッシングを実行することで、ヘッド内の液体の増粘を抑制する。
【0014】
[適用例5]
上記適用例にかかる液体噴射装置におけるフラッシング方法において、前記比較工程においてフラッシングの間隔またはフラッシングの吐出量の大小を比較した結果、大である場合には、フラッシング間隔を測定するタイマーを、既に経過している時間を加味してセットしスタートすることを特徴とする。
【0015】
今回のジョブのほうが前回のジョブよりフラッシング間隔やフラッシング吐出量が大きい場合、新たなフラッシング間隔でタイマーをスタートさせると、既に経過していた時間分、長い間隔となる。既に経過した時間を加味してスタートすることで、適切な時間間隔でフラッシングを行うことができる。
【0016】
[適用例6]
本適用例にかかる液体噴射装置は、媒体を搬送する搬送手段と、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、所定の間隔で前記媒体以外に前記液体を噴射するフラッシング動作を実行する制御手段と、を備える液体噴射装置であって、前記制御手段は、噴射ジョブデータに基づいて最初の前記媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と、今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件とを比較し、比較した結果に基づいて、フラッシングを実行するか、否かを選択することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、噴射ジョブデータに基づき最初の媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブのフラッシング条件と、今回の噴射ジョブのフラッシング条件とが比較され、比較結果に基づきフラッシングを実行するか否かが決定される。従って、噴射ジョブに応じたフラッシング条件に基づきフラッシングの実行可否が決定されるため、液体噴射装置において不要なフラッシングを抑制し、フラッシングを効率良く実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インクジェット式記録装置の全体構成を示す図。
【図2】インクジェット式記録装置の機能構成を示すブロック図。
【図3】インクジェット式記録装置の処理の流れを示すフローチャート。
【図4】用紙の給紙動作時の処理の流れを示すフローチャート。
【図5】印字品質と定期フラッシング条件優先順位との関係を示す図。
【図6】定期フラッシング条件優先順位と定期フラッシング条件との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(実施形態)
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示す概略図である。
このインクジェット式記録装置10は、所謂インクジェットプリンターであり、ターゲットの一例である用紙29上に画像等を記録するための装置である。このインクジェット式記録装置10の本体部1は、ガイドレール17、プラテン12、キャリッジ14、インク吸引装置20および記録ヘッド30を備えている。記録ヘッド30は、用紙29に対して液体の一例であるインクを噴射する液体噴射ヘッドの一例であり、印刷ヘッドとも呼ばれる。また、図示を略すが、本体部1は、用紙29を所定の位置に搬送する搬送手段を備える。
【0021】
本実施形態のインクジェット式記録装置10は、所謂オンキャリッジ型の記録装置であり、キャリッジ14の上部には、複数のインクカートリッジ2,3,4及び5が着脱可能に装着されている。これらのインクカートリッジ2,3,4及び5には、インクが充填されている。キャリッジ14の下部には、記録ヘッド30が設けられている。記録ヘッド30が、用紙29に対面するノズルプレート面30aには、インクを噴射(以後、吐出とも呼ぶ)するためのノズル開口(図示せず)が設けられている。
【0022】
キャリッジ14は、ベルト15を介してモーター16に接続されている。モーター16が回転することによって、キャリッジ14はガイドレール17に沿ってプラテン12の軸方向である主走査方向Tに往復走行する。その際、記録ヘッド30からインクを吐出しつつ、キャリッジ14が主走査方向Tに往復走行することで、搬送手段により搬送された用紙29上に画像が記録される。
【0023】
ガイドレール17の一方の端部には、ホームポジション18が位置している。このホームポジション18は、キャリッジの走行経路の末端にあって、用紙29が位置しない非画像記録領域である。このホームポジション18には、本体部1の上にインク吸引装置20が配置されている。このインク吸引装置20は、キャッピングシステムもしくはキャッピング手段とも呼んでいる。図1のキャリッジ14に配置された記録ヘッド30は、T1方向に沿ってホームポジション18に移動することで、インク吸引装置20のキャップ本体21に対面する。そして、キャップ本体21は、記録ヘッド30のノズルプレート面30aに密着する。
【0024】
インク吸引装置20は、記録ヘッド30に密着した状態で、記録ヘッド30のノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、吸引ポンプ19からの負圧をノズル開口に作用させてノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる機能を備える。即ち、インク吸引装置20は、記録ヘッド30のノズル開口からインクを吸引することによって記録ヘッド30からインクが正常に噴射されない状態である噴射不良を回復するクリーニングを行う。
吸引ポンプ19は、インク吸引装置20を構成する構成要素の1つである。また、インク吸引装置20の横には、ワイピング部材23が設けられている。このワイピング部材23は、必要に応じて記録ヘッド30のノズルプレート面30aのインクを払拭する。
尚、本実施の形態とは異なり、クリーニングに際しては、吸引ポンプ19からの負圧によって記録ヘッド30からインクを吸引する動作ではなくて、記録ヘッド30からインクを吐出してもよい。
【0025】
ガイドレール17のホームポジション18と反対側の他方の端部には、フラッシングポジション32が位置している。このフラッシングポジション32もまた、非画像記録領域である。
記録ヘッド30は、このフラッシングポジション32又は上述のホームポジション18において、印字動作中に定期的にノズル開口からインクを吐出する定期フラッシングを実施する。定期フラッシングによって、ノズル開口からのインクの吐出状態を維持している。
【0026】
図1に示すように、キャリッジ14には吐出不良検出装置8が配置されている。この吐出不良検出装置8は、記録ヘッド30からインクが正常に噴射されない噴射不良を検出する噴射不良検出手段の一例である。
【0027】
尚、本実施形態では、複数のインクカートリッジ2,3,4および5が、キャリッジ14の上に直接搭載されているが、これに限らずインクカートリッジ2,3,4および5がキャリッジ14とは別の位置に搭載されている、いわゆるオフキャリッジ型のインクジェット式記録装置10を採用しても良い。
【0028】
図2は、インクジェット式記録装置10の機能構成を示すブロック図である。このインクジェット式記録装置10は、制御装置7、吐出不良検出装置8、インク吸引装置20、インクカートリッジ2,3,4および5、記録ヘッド30ならびにキャリッジ駆動装置25を備える。
制御装置7は、各種情報を記憶する記憶部72、各種演算を実施する計算部74およびクリーニングを制御するCL制御部76を備え、制御手段としてインクジェット式記録装置10の各機能を制御する機能を有する。この制御装置7は、プリンターケーブルや通信ネットワークを介してホストコンピューター80のプリンタードライバー81と接続されている。プリンタードライバー81は、インクジェット式記録装置10に対して印刷やクリーニング動作あるいはインク吸引動作を実行させるためのコマンドを送るソフトウェアを搭載している。また、この制御装置7は、何れも図示を略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリー等のハードウェアと、ROMやフラッシュメモリーに記憶されたソフトウェアとが協働することで各機能を実現している。
【0029】
記憶部72は、インク吸引装置20等による上述のクリーニングの回数を記録している。尚、ここで言うクリーニング回数は、一定時間経過後に自動的に実施されるクリーニングや、インクカートリッジ2,3,4および5の交換時に自動的に実施されるクリーニングは除外し、吐出不良時にインクジェット式記録装置10の使用者によって実施されるマニュアルクリーニングを意味する。
尚、本実施の形態とは異なり、クリーニング回数の替わりに、ドット抜けを検出した回数を使用してもよい。
【0030】
また、記憶部72はインクを噴射した用紙29の数や、定期フラッシングの条件(定期フラッシング条件)を記憶している。尚、本実施形態では、定期フラッシング条件として、フラッシングの間隔、フラッシングの吐出量、媒体の種類、液体噴射モードおよびフラッシングの重み付け等を想定する。
【0031】
図3は、待機状態のインクジェット式記録装置10がジョブを受け付けて印字をする際の処理の流れを示すフローチャートである。
処理が開始されると、制御装置7は初期設定を実行し、インクジェット式記録装置10の使用準備を行う(ステップS11)。
次に、制御装置7は、印刷すべき1つのジョブを取得し(ステップS12)、取得したジョブの印字品質および印字データを取得する。
続いて、制御装置7は給紙時動作を行う(ステップS13)。尚、ステップS13の詳細は後述する。
次に、制御装置7は用紙29に対して印刷を行い(ステップS14)、ジョブ内に次ページがあるか、否かを判定する(ステップS15)。
【0032】
ここで、ジョブ内に次ページがあると判定した場合(ステップS15でYES)、ステップS13に戻り、ステップS13以降の処理を繰り返す。
他方で、ジョブ内に次ページがないと判定した場合(ステップS15でNO)、制御装置7は次に印刷すべきジョブがあるか、否かを判定する(ステップS16)。
ここで、次に印刷すべきジョブがあると判定した場合(ステップS16でYES)、ステップS12に戻り、ステップS12以降の処理を繰り返す。
他方で、次に印刷すべきジョブがないと判定した場合(ステップS16でNO)、一連の処理を終了し、インクジェット式記録装置10は待機状態に遷移する。
【0033】
図4は、ステップS13の処理の流れの詳細を示すフローチャートであり、用紙29の給紙時動作においてなされる制御形態を示したものである。この動作は、その時のジョブのUnit番号に応じて定期フラッシング条件優先順位を設定し、必要があればフラッシングを行うことを目的としている。尚、印字品質、定期フラッシング条件優先順位及び定期フラッシング条件は、図5および図6が示す情報に基づいて紐付けされる。本実施形態では、図5および図6が示す情報は記憶部72に記憶されている。
【0034】
尚、図5はUnit番号、印字品質、定期フラッシング条件優先順位を紐付けするための情報を示し、記憶部72に記憶されている。この情報に基づき、印刷ジョブのデータに含まれるUnit番号から定期フラッシング条件優先順位を決定することができる。
【0035】
また、図6は定期フラッシング条件優先順位、フラッシングseg数、定期フラッシング間隔時間を紐付けするための表で、記憶部72に記憶されている。この情報に基づき、定期フラッシング条件優先順位から、フラッシングseg数および定期フラッシング間隔時間を決定することができる。尚、seg(セグ)とはインク吐出の処理の単位であり、本実施形態では、1segは1ショットまたは2ショットで2.5ナノグラム(ng)程度のインクが吐出されるように設定されている。
【0036】
図4に戻り、この処理が開始されると、制御装置7はジョブに含まれる所定のフラグが「0」であるか、否かを判定する(ステップS21)。
ここで、所定のフラグが「0」でない場合(ステップS21でNO)、一連の処理を終了する。他方で、所定のフラグが「0」である場合(ステップS21でYES)、この所定のフラグの値を「1」にして(ステップS22)、ステップS23以降を実行する。
本実施形態では、ステップS21とステップS22が示すように、ジョブにおいて最初の印字を除いて何もしないことを示している。尚、図示はしていないが、ジョブが終了した際に、所定のフラグは「0」に戻るため、次のジョブの最初の印字の際には給紙時動作が実行される。即ち、印字品質はジョブごとに設定されるため、同じジョブ内では定期フラッシング条件優先順位の再設定や、定期フラッシング以外のフラッシングを行う必要がない。
【0037】
ステップS23では、制御装置7は、図5の情報に基づきジョブのUnit番号(印字品質)に応じて定期フラッシング条件優先順位を設定する。尚、設定された定期フラッシング条件優先順位は、記憶部72に記憶される。
続いて、制御装置7は、図6の情報に基づき前回の定期フラッシング条件優先順位から前回の定期フラッシング間隔時間を取得する(ステップS24)。前回の定期フラッシング条件優先順位は、直前にジョブが存在していれば、そのジョブで設定した定期フラッシング条件優先順位である。また、今回のジョブが初回である場合には、前回の定期フラッシング条件優先順位には、Unit番号が不定の状態に対応した優先順位「5」がセットされている。
【0038】
続いて、制御装置7は、図6の情報に基づき定期フラッシング条件優先順位から定期フラッシング間隔時間を取得する(ステップS25)。
続いて、制御装置7は、比較工程に入り、定期フラッシング条件優先順位と前回の定期フラッシング条件優先順位とを比較する(ステップS26)。比較した結果、2つの順位が同一である場合(ステップS26でNO)、一連の処理を終了する。
他方で、2つの順位が異なる場合(ステップS26でYES)、制御装置7は、定期フラッシング間隔時間と前回の定期フラッシング間隔時間とを比較する(ステップS27)。
【0039】
比較した結果、定期フラッシング間隔時間が前回の定期フラッシング間隔時間以上の場合(ステップS27でNO)、制御装置7は定期フラッシングタイマーをセットしてタイマーをスタートさせ(ステップS34)、ステップS33に進む。尚、本実施形態では、タイマーにセットする定期フラッシングタイマーT1は、既に経過している時間を加味し、以下の式で算出される。
T1=定期フラッシング間隔時間―(前回の定期フラッシング間隔時間―定期フラッシングタイマー値)・・・(式1)
他方で、定期フラッシング間隔時間が前回の定期フラッシング間隔時間よりも小さい場合(ステップS27でYES)、制御装置7は定期フラッシング条件優先順位と前回の定期フラッシング条件優先順位とを比較する(ステップS28)。
【0040】
比較した結果、定期フラッシング条件優先順位が前回の定期フラッシング条件優先順位よりも小さい場合(ステップS28でYES)、制御装置7は、図6の情報に基づき定期フラッシング条件優先順位に応じたフラッシングseg数を設定し(ステップS29)、ステップS31に進む。
他方で、定期フラッシング条件優先順位が前回の定期フラッシング条件優先順位以上の場合(ステップS28でNO)、制御装置7は、図6の情報に基づき前回の定期フラッシング条件優先順位に応じたフラッシングseg数を設定し(ステップS30)、ステップS31に進む。
【0041】
ステップS31では、制御装置7はステップS29およびステップS30の何れかで設定したフラッシングseg数のフラッシングを実行する(フラッシング実行工程)。
続いて、制御装置7は、定期フラッシング間隔時間をリセットし、定期フラッシングタイマーを定期フラッシング間隔時間にセットし、カウントダウンをスタートする(ステップS32)。印字中に定期フラッシングタイマーがタイムアップした場合には、制御装置7は、その時の定期フラッシング条件優先順位に応じたフラッシングseg数のフラッシングを実施する。
続いて、制御装置7は、前回の定期フラッシング条件優先順位に定期フラッシング条件優先順位を代入し(ステップS33)、一連の処理を終了する。
【0042】
以上述べた処理により、定期フラッシング条件は、Unit番号や印字品質に応じて優先順位が決定され、決定された定期フラッシング条件優先順位およびフラッシングseg数に基づいて定期フラッシング間隔時間が決定されるため、インクジェット式記録装置10の定期フラッシングを印字品質やUnit番号等に応じて効率的に行うことができる。従って、インクジェット式記録装置10のスループットの向上を図ることができる。
【0043】
また、図示した実施形態においては、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの各インクを使用する4つのインクカートリッジ2,3,4および5がキャリッジに装着できるようになっているが、これに限らず、ブラックインク用のインクカートリッジだけを備えているものや、ブラックインクを除いた3色のカラー印刷用の3つのインクカートリッジを備えているものであっても良い。また、インクを使用した5つ以上のインクカートリッジがキャリッジに装着できるようなものであっても良い。
【0044】
本発明は、インクジェット式記録装置10としての上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
たとえば、本発明の液体噴射装置としては、他の液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。本発明の液体噴射装置は、たとえば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイおよび面発光ディスプレイの製造等に用いられる電極材や色材等の液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略しても良く、また、記述した組み合わせに限定されず、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…本体部、2,3,4,5…インクカートリッジ、7…制御装置、8…吐出不良検出装置、10…インクジェット式記録装置、12…プラテン、14…キャリッジ、15…ベルト、16…モーター、17…ガイドレール、18…ホームポジション、19…吸引ポンプ、20…インク吸引装置、21…キャップ本体、23…ワイピング部材、25…キャリッジ駆動装置、29…用紙、30…記録ヘッド、30a…ノズルプレート面、32…フラッシングポジション、72…記憶部、74…計算部、76…CL制御部、80…ホストコンピューター、81…プリンタードライバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送手段と、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、所定の間隔で前記媒体以外に前記液体を噴射するフラッシング動作を実行する制御手段と、を備える液体噴射装置におけるフラッシング方法であって、
噴射ジョブデータに基づいて最初の前記媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件とを比較する比較工程と、
フラッシングを実行するフラッシング実行工程と、を有し、
前記比較工程の結果に基づいて、前記フラッシング実行工程を実行するか、否かを選択することを特徴とする液体噴射装置におけるフラッシング方法。
【請求項2】
前記比較工程の結果が、前記前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と、前記今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件とが同じであるか否かを比較する工程を含み、比較の結果、同じである場合、フラッシングを実行しないことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置におけるフラッシング方法。
【請求項3】
前記フラッシング条件は、フラッシングの間隔、フラッシングの吐出量、媒体の種類、液体噴射モード、フラッシングの重み付けの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置におけるフラッシング方法。
【請求項4】
前記比較工程はフラッシングの間隔またはフラッシングの吐出量の大小を比較する工程を含み、比較の結果、今回のフラッシングの間隔またはフラッシングの吐出量が小である場合、フラッシングを実行し、前記前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と前記今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件が同じである場合、フラッシングを実行しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射装置におけるフラッシング方法。
【請求項5】
前記比較工程においてフラッシングの間隔またはフラッシングの吐出量の大小を比較した結果、大である場合、フラッシング間隔を測定するタイマーを、既に経過している時間を加味してセットしスタートすることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置におけるフラッシング方法。
【請求項6】
媒体を搬送する搬送手段と、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、所定の間隔で前記媒体以外に前記液体を噴射するフラッシング動作を実行する制御手段と、を備える液体噴射装置であって、
前記制御手段は、噴射ジョブデータに基づいて最初の前記媒体を搬送する際に、前回の噴射ジョブ時のフラッシング条件と、今回の噴射ジョブ時のフラッシング条件とを比較し、比較した結果に基づいて、フラッシングを実行するか、否かを選択することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162010(P2012−162010A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24681(P2011−24681)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】