説明

液体噴射装置

【課題】簡便且つ確実なメニスカス制御を可能とし、良好な噴射特性が得られる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を貯留する液体貯留部48と、液体貯留部48から供給される液体を噴射する複数の噴射口16を有した液体噴射ヘッド4と、噴射口16内の液体を押し出す或いは引き込むことで液体噴射ヘッド4の液体噴射時及び非液体噴射時における液体メニスカスの位置をそれぞれ異ならせるメニスカス調整手段8と、非液体噴射時における液体メニスカスの第一の位置が、液体噴射時における液体メニスカスの第ニの位置よりも噴射口16内に引き込まれた状態となるようにメニスカス調整手段8を制御する制御装置58とを備える液体噴射装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置として記録ヘッド(液体噴射ヘッド)の噴射口より記録媒体にインク(液体)を噴射するインクジェット式プリンタ(以下、プリンタと称す)が知られている。ところで、このようなインクジェット式のプリンタでは、インクの吐出特性を保持すべく、噴射口内のインクメニスカスを良好な状態に保つ必要がある。そこで、インクタンク、或いは記録ヘッドの高さを適宜調整することでメニスカスが壊されるのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−305269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、メニスカスを上下させるために液体貯留部及びヘッドの位置を変更するための手段が必要となりプリンタの大型化、さらには装置構成も複雑化してしまう。また、上記従来技術では、インクの増粘による噴射口の目詰まりの回復処理とメニスカス制御との相関関係については考慮されておらず、上記目詰まりの回復処理時にメニスカスが破壊されてしまうおそれがあった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、簡便且つ確実なメニスカス制御を可能とし、且つ良好な噴射特性が得られる液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、液体を貯留する液体貯留部と、該液体貯留部から供給される前記液体を噴射する複数の噴射口を有した液体噴射ヘッドと、前記噴射口内の前記液体を押し出す或いは引き込むことで前記液体噴射ヘッドの液体噴射時及び非液体噴射時における液体メニスカスの位置をそれぞれ異ならせるメニスカス調整手段と、前記非液体噴射時における前記液体メニスカスの第一の位置が、前記液体噴射時における前記液体メニスカスの第二の位置よりも前記噴射口内に引き込まれた状態となるように前記メニスカス調整手段を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の液体噴射装置によれば、メニスカス調整手段により非液体噴射時における液体メニスカスが噴射口内に引き込まれた状態とされるので、液体メニスカスを空気に触れ難くすることが可能となる。よって、液体の増粘を遅延させることができる。また、非液体噴射時として、例えばクリーニング処理を行う場合、液体メニスカスが噴射口内に引き込まれた状態とされるので、クリーニング処理によって液体メニスカスが破壊されるといった不具合を防止できる。したがって、メニスカス調整手段を備えることで簡便且つ確実なメニスカス制御が可能とされ、良好な噴射特性を得る液体噴射装置を提供できる。
【0007】
また、上記液体噴射装置においては、前記液体貯留部と前記液体噴射ヘッドとを接続する液体流路を有し、該液体流路に前記メニスカス調整手段が設けられるのが好ましい。
このようにすれば、液体噴射ヘッドと液体貯留部とが例えばチューブ等の流体流路で接続された、所謂オフキャリッジタイプの液体噴射装置に本発明を適用可能となる。
このとき、前記メニスカス調整手段が電動シリンジにより構成されるのがより望ましい。
このように電動シリンジを用いてメニスカス調整手段を構成することで、メニスカス調整を精度良く行うことが可能となり、信頼性を向上させることができる。
【0008】
また、上記液体噴射装置においては、前記メニスカス調整手段と前記液体貯留部との間には、前記液体流路を開閉可能とする流路バルブが設けられているのが好ましい。
この構成によれば、メニスカス調整手段の動作に合わせて流路バルブの開閉を行うことで、液体貯留部に液体が逆流するといった不具合を防止することができる。
【0009】
また、上記液体噴射装置においては、前記制御装置は、前記非液体噴射時において前記液体メニスカスを微振動させるように前記メニスカス調整手段を制御するのが好ましい。
この構成によれば、例えばメニスカスが微振動することでメニスカスの増粘を内部に引き込みメニスカス部の増粘を遅らせることが可能となり、非液体噴射時においても液体の噴射特性を良好な状態で保持することができる。
【0010】
また、上記液体噴射装置においては、前記液体噴射時は、前記噴射口から前記液体を噴射して印字を行う印字動作時、前記噴射口から前記液体を噴射させるフラッシング動作時、或いは前記噴射口から前記液体を吸引する吸引動作時であることが好ましい。
この構成によれば、印字処理、フラッシング処理、及び吸引処理時において、メニスカスが噴射口側に位置しているので、液体の噴射を良好に行うことができる。
【0011】
また、上記液体噴射装置においては、前記非液体噴射時は、前記液体噴射ヘッドにおける複数の前記噴射口が形成された噴射口形成面を払拭するワイピング動作時、前記液体噴射ヘッドの空走時、及び前記噴射口が形成された噴射口形成面をキャップするキャッピング時であることが好ましい。
この構成によれば、メニスカスが噴射口内に引き込まれた状態となるため、噴射口形成面に対するワイピング処理時、ヘッドの空走時、及びキャッピング時においても、メニスカスが破壊されるのを防止できる。また、例えば噴射口形成面を濡らした状態で行われるワイピング処理に同期させてメニスカスを引き込むことでメニスカス破壊を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る液体噴射装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
図1は、本実施形態に係る液体噴射装置の一例を示す斜視図、図2は、平面図である。
本実施形態に係る液体噴射装置は、インク等の流体を噴射する装置である。液体噴射装置の一例として、記録ヘッドの噴射口から記録媒体にインクを噴射して、その記録媒体に対する記録を実行するインクジェット式プリンタを用いて説明する。なお、以下の説明では、そのインクジェット式記録装置の一例として、記録媒体である記録紙にインクの滴を吐出(噴射)して、その記録紙に対する記録を実行するインクジェットプリンタについて説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクにより記録紙に対する記録を実行する記録ユニット2と、記録紙を搬送する記録紙搬送機構3とを備えている。
記録ユニット2は、インクを噴射する記録ヘッド4(噴射ヘッド)と、記録ヘッド4を支持しながら移動可能なキャリッジ5と、記録ヘッド4及びキャリッジ5と対向する位置に配置され、インクが噴射される記録紙を支持するプラテン6とを含む。
【0015】
インクジェットプリンタ1は、キャリッジ5を移動するモータ等を含むキャリッジ駆動装置7と、キャリッジ5の移動を案内するキャリッジガイド部材とを備えている。
キャリッジ5は、キャリッジガイド部材に案内されながら、キャリッジ駆動装置7によって、主走査方向に移動する。記録紙は、記録紙搬送機構3により、記録ユニット2に対して、主走査方向と交差する副走査方向に移動する。
【0016】
また、インクジェットプリンタ1は、記録紙を収容する給紙カセット9を備えている。
給紙カセット9は、インクジェットプリンタ1の本体の背面側に、着脱可能に設けられている。給紙カセット9は、積層された複数の記録紙を収容可能に設けられている。
【0017】
記録紙搬送機構3は、給紙カセット9の記録紙を搬出するための給紙ローラと、給紙ローラを駆動するモータ等を含む給紙ローラ駆動装置10と、記録紙の移動を案内する記録紙ガイド部材11と、給紙ローラに対して搬送方向の下流側に配置されている搬送ローラと、搬送ローラを駆動する搬送ローラ駆動装置と、記録ユニット2に対して搬送方向の下流側に配置されている排出ローラとを有している。
【0018】
給紙ローラは、給紙カセット9に積層されている複数の記録紙のうち、最も上側に配置されている記録紙をピックアップし、給紙カセット9より搬出可能に構成されている。給紙カセット9の記録紙は、記録紙ガイド部材11に案内されながら、給紙ローラ駆動装置10によって駆動する給紙ローラによって、搬送ローラに送られる。搬送ローラに送られた記録紙は、搬送ローラ駆動装置によって駆動する搬送ローラにより、搬送方向の下流側に配置された記録ユニット2に搬送される。
【0019】
記録ユニット2のプラテン6は、記録ヘッド4及びキャリッジ5と対向する位置に配置され、記録紙の下面を支持する。記録ヘッド4及びキャリッジ5は、プラテン6の上方に配置されている。記録紙搬送機構3は、記録ユニット2による記録動作と連動して、記録紙を副走査方向に搬送する。記録ユニット2で記録された記録紙は、排出ローラを含む記録紙搬送機構3によって、インクジェットプリンタ1の正面側から排出される。
【0020】
また、インクジェットプリンタ1は、インクカートリッジのインクをキャリッジ5の記録ヘッド4に供給するインク供給チューブ12を備えている。インクカートリッジのインクは、インク供給針を介してインク供給路に供給され、そのインク供給路より、インク供給チューブ12を介して、キャリッジ5の記録ヘッド4に供給される。
また、インクジェットプリンタ1は、記録ヘッド4をメンテナンス可能なメンテナンス装置13を備えている。
【0021】
メンテナンス装置13は、キャッピング装置14及びワイピング装置15を含む。ワイピング装置15は、記録ヘッド4と対向可能なワイプ部材44を備えている。ワイピング装置15は、ワイプ部材44を用いて、残留したインク等、記録ヘッド4の噴射口形成面17(後述)に付着している異物を拭き取ったり、払ったりすることができる。
メンテナンス装置13は、キャリッジ5及び記録ヘッド4のホームポジションに配置されている。ホームポジションは、キャリッジ5の移動領域内であって、記録ユニット2による記録動作が実行される記録領域の外側の端部領域に設定されている。
電源が切断されている間、あるいは長時間に亘って記録動作が実行されない場合、キャリッジ5及び記録ヘッド4は、ホームポジションに配置される。
【0022】
図3は、記録ヘッド4の断面図である。
図3に示すように、記録ヘッド4は、ヘッド本体18と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット22とを備えている。噴射口形成面17は、ノズル基板21の下面によって形成されている。噴射口(ノズル)16は、ノズル基板21に形成されている。ここで、噴射口16の径は、用いられるインクに対応して、例えば、従来よりも約15%程度大きく形成されている。流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合して一体にしたものである。
【0023】
記録ヘッド4は、ヘッド本体18の内部に形成された収容空間23と、収容空間23に配置された駆動ユニット24とを備えている。駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数の噴射口16のそれぞれに対応するように設けられている。
【0024】
また、記録ヘッド4は、ヘッド本体18の内部に形成され、インクカートリッジからインク供給チューブ12を介して供給されたインクが流れる内部流路28と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット22によって形成され、内部流路28と接続された共通インク室29と、流路形成ユニット22によって形成され、共通インク室29と接続されたインク供給口30と、流路形成ユニット22によって形成され、インク供給口30と接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、複数の噴射口16に対応するように複数設けられている。複数の噴射口16のそれぞれは、複数の圧力室31のそれぞれに接続されている。
【0025】
ヘッド本体18は、合成樹脂で形成されている。振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものである。振動板19の圧力室31に対応する部分には、圧電素子25の下端と接合される島部32が形成されている。振動板19の少なくとも一部は、圧電素子25の駆動に応じて弾性変形する。振動板19と内部流路28の下端近傍との間にはコンプライアンス部33が形成されている。
流路基板20は、内部流路28の下端と噴射口16とを接続する共通インク室29、インク供給口30、及び圧力室31それぞれの空間を形成するための凹部を有する。本実施形態においては、流路基板20は、シリコンを異方性エッチングすることで形成されている。
【0026】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数の噴射口16を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。尚、上述のように噴射口形成面17は、ノズル基板21の下面によって形成されている。
【0027】
このように構成されたインクジェットプリンタ1は、インクを貯留するインク貯留部(液体貯留部)として、インクカートリッジ48(図4参照)を有し、このインクカートリッジ48からインク供給チューブ12を介して供給されたインクは、図3に示す内部流路28の上端に流入する。内部流路28の下端は、共通インク室29に接続されており、インクカートリッジ48からインク供給チューブ12を介して内部流路28の上端に流入したインクは、内部流路28を流れた後、共通インク室29に供給される。共通インク室29に供給されたインクは、インク供給口30を介して、複数の圧力室31のそれぞれに分配されるように供給される。すなわち、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、所謂オフキャリッジタイプのプリンタとなっている。
【0028】
図4は、インクの供給経路を説明するための模式図である。図4に示されるように、インク供給チューブ12は、上記インクカートリッジ48と記録ヘッド4に接続されたサブタンク(自己封止バルブ)51とを接続しており、インクカートリッジ48からインク供給チューブ12に供給されたインクLは、サブタンク51に供給される。
【0029】
サブタンク51は、例えばポリプロピレン等の樹脂製材料によって成型される。このサブタンク51には、インク室52となる凹部が形成され、この凹部の開口面に透明な弾性シートを貼設してインク室52が区画されている。このサブタンク51には、インク室52に連通する連通溝部53′を有する延出部53が形成されており、この延出部53の上面にはインク流入口54が突設されている。このインク流入口54には、インクカートリッジ48に貯留されたインクを供給する上記インク供給チューブ12が接続される。したがって、インク供給チューブ12を通ってきたインクは、このインク流入口54から連通溝部53′を通ってインク室52に流入するようになっている。
【0030】
インクカートリッジ48は、ケース部材49と、ケース部材49に収容され、可塑性材料で形成されたインクパック50とを含む。また、ケース部材49には不図示の検出装置が接続されており、インクカートリッジ48の交換時期を検出可能となっている。
【0031】
インクジェットプリンタ1においては、ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。これにより、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、噴射口16から、インクが噴射(吐出)される。
このように、本実施形態の圧電素子25は、噴射口16よりインクを噴射するために、入力される駆動信号に基づいて、噴射口16に接続された圧力室31の圧力を変動させる。
【0032】
ところで、上記インク供給チューブ12には、図4に示したように上記噴射口16内のインクを押し出す或いは引き込むことにより記録ヘッド4のインク噴射時及び非インク噴射時における液体メニスカスの位置を異ならせるメニスカス調整手段8が設けられている。さらに本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、上記メニスカス調整手段8を制御する制御装置58を備えている。この制御装置58は後述するようにインクジェットプリンタ1全体の動作も制御可能となっている。
【0033】
ここで、インクジェットプリンタ1の電気的な構成について図5を参照しながら説明する。本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御するための制御装置58を備えている。この制御装置58には、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0034】
また、制御装置58には、上述した駆動装置7、記録紙搬送機構3、キャリッジ駆動装置7、キャッピング装置14及びワイピング装置15を含むメンテナンス装置13、及びメニスカス調整手段8等が接続されている。また、インクジェットプリンタ1は、圧電素子25を含む駆動ユニット24(図3参照)に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置58に接続されている。
駆動信号発生器62には、記録ヘッド4の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0035】
駆動信号発生器62より吐出パルスが圧電素子25に入力されると、噴射口16よりインク滴が吐出される。吐出パルスが圧電素子25に入力されると、圧電素子25が収縮して圧力室31が膨張する。圧力室31の膨張状態が短時間維持された後、圧電素子25が急激に伸長する。これに伴って、圧力室31の容積が基準容積以下に収縮し、噴射口16に露出したメニスカスが外側に向けて急激に加圧される。これにより、所定量のインクの滴が噴射口16から吐出される。その後、インクの滴の吐出に伴うメニスカスの振動を短時間で収束させるように、圧力室31が基準容積に復帰する。
【0036】
本実施形態においては、上記メニスカス調整手段8が電気シリンジにより構成されている。電気シリンジは、ピストン8aと、このピストン8aとの間で閉空間を構成するケース部8bとを備えている。そして、ケース部8bは上記インク供給チューブ12に接続されている。このような構成に基づいて、ピストン8aが押し込まれるとピストン8aによってケース部8b内の空間が加圧され、インク供給チューブ12内が正圧状態となる。よって、インク供給チューブ12内のインクが加圧されることなり、インクメニスカスを噴射口16内から押し出すことが可能となる。一方、ピストン8aを引き込むとピストン8aによってケース部8b内の空間が減圧され、インク供給チューブ12内が負圧状態となる。よって、インク供給チューブ12内のインクがケース部8b内に引き込まれることとなり、インクメニスカスを噴射口16内に引き込ませることが可能となる。
このように電動シリンジによってメニスカス調整手段8を構成することで、上記制御装置58からの信号に基づいて精度の高いメニスカス調整が可能となっている。
【0037】
図6は、メニスカス調整手段8によるインクメニスカスの状態を説明する図であり、同図(a)は非インク噴射時におけるインクメニスカスの状態を示し、同図(b)はインク噴射時におけるインクメニスカスの状態を示している。
【0038】
上記制御装置58は、図6(a)、(b)に示されるように非インク噴射時におけるインクメニスカスの第一の位置が、インク噴射時におけるインクメニスカスの第二の位置よりも噴射口16内に引き込まれた状態となるように上記メニスカス調整手段8を制御している。
【0039】
ここで、インク噴射時とは記録ヘッド4の噴射口16からインクを噴射する場合を意味しており、具体的に本実施形態では噴射口16からインクを噴射して印字を行う印字処理時、上記メンテナンス装置13におけるキャッピング装置14を用いることで行われるフラッシング処理時、或いは上記キャッピング装置14に連結された吸引装置35を用いることで行われる噴射口16からのインク吸引動作時を意味している。
一方、非インク噴射時とは記録ヘッド4の噴射口16からインクが噴射されない場合を意味しており、具体的に本実施形態ではメンテナンス装置13におけるワイピング装置15を用いることで行われる、上記噴射口形成面17を払拭するワイピング動作時、記録ヘッド4の空走時(記録ヘッド4が記録媒体である記録紙上を移動する場合)、及び噴射口形成面17を後述するキャップ部材34によりキャップするキャッピング時を意味している。すなわち、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、噴射口形成面に対するワイピング処理時、ヘッドの空走時、及びキャッピング時にメニスカスが噴射口内に引き込まれることでメニスカスの破壊が防止されたものとなる。例えば、噴射口形成面17を濡らした状態でワイピング処理を行う場合、ワイピング処理に同期させてメニスカスが引き込まれることでメニスカスの破壊が防止されたものとなっている。なお、第一の位置は、上記メニスカス調整手段8が駆動されないためにインク供給チューブ12内に圧力が生じず、噴射口形成面17に対してメニスカスが引き込まれていない通常状態を意味している。また、第二の位置は、上記第一の位置に対して噴射口16の内面側の位置を意味する。
【0040】
また、メニスカス調整手段8とインクカートリッジ48との間には、図4に示したようにインク供給チューブ12を開閉可能とする流路バルブが設けられている。具体的に本実施形態では、インク供給チューブ12における、インクカートリッジ48及びサブタンク51間のインクカートリッジ48側に設けられた第一流路バルブB1と、サブタンク51及びメニスカス調整手段8間のサブタンク51側に設けられた第二流路バルブB2と、を備えている。本実施形態では、これら第一、第二流路バルブB1,B2の開閉動作をメニスカス調整手段8の動作に合わせて行うことで、インクカートリッジ48にインクが逆流するのを防止している。具体的には、インクジェットプリンタ1は、上述したインク噴射時において、第一流路バルブB1、及び第二流路バルブB2を開いた状態に保持する。また、非インク噴射時において、インクジェットプリンタ1は、第一流路バルブB1、及び第二流路バルブB2を閉じた状態に保持する。非インク噴射時は、上述のようにメニスカス調整手段8によりインクメニスカスが噴射口16内に引き込まれるので、インク供給チューブ12内が負圧状態となるが、このとき第二流路バルブB2が閉じられているため、サブタンク51内に影響が及ぼされることがない。
【0041】
図7は、キャッピング装置14に連結された吸引装置35の詳細構成を示す図である。
キャップ部材34の底壁には、キャップ部材34内に溜まったインクを排出する排出部34aが下方に向かって突設されており、その内部には排出通路34bが形成されている。
排出部34aには、可撓性材料等からなる排出チューブ39の一端部が接続されており、排出チューブ39の他端部は、廃インクタンク36内に挿入されている。
なお、廃インクタンク36内には、多孔質部材からなる廃インク吸収材55が収容されており、この廃インク吸収材55により回収されたインクが吸収されるようになっている。なお、この廃インクタンク36は、プラテン6の下方に配設されている。
【0042】
キャップ部材34と廃インクタンク36との間には、チューブポンプ式吸引装置35が配設されている。吸引装置35は、円筒状のケース37を有しており、このケース37内には平面視で円形状をなすポンプホイル38がケース37の軸心に設けられたホイル軸38aを中心に回動可能に収容されている。そして、このケース37内に、排出チューブ39の中間部39aがケース37の内周壁37aに沿うようにして収容されている。
【0043】
ポンプホイル38には、一対の外側に膨らむ円弧状をなすローラ案内溝40,41がホイル軸38aを挟んで対向するように形成されている。各ローラ案内溝40,41は、一端がポンプホイル38の外周側に位置しており、他端がポンプホイル38の内周側に位置している。すなわち、両ローラ案内溝40,41は、それらの一端から他端に向かうほど、徐々にポンプホイル38の外周部から遠ざかるように延びている。
両ローラ案内溝40,41内には、押圧手段としての一対のローラ42,43が、それぞれ回動軸42a,43aを介して挿通支持されている。なお、両回動軸42a,43aは、それぞれ両ローラ案内溝40,41内を摺動自在になっている。
【0044】
そして、ポンプホイル38を、正方向(矢印方向)に回動させると、両ローラ42,43が両ローラ案内溝40,41の一端側(ポンプホイル38の外周側)に移動し、排出チューブ39の中間部39aを上流側から下流側へ順次押し潰しながら(押圧しながら)回動するようになっている。この回動により、吸引装置35より上流側の排出チューブ39の内部が減圧されるようになっている。
これにより、キャップ部材34内に溜まったインクは、ポンプホイル38の正方向の回動動作により、徐々に廃インクタンク36方向へ排出されるようになっている。また、噴射口形成面17とキャップ部材34との間に形成された空間を負圧にすることによって、噴射口形成面17の噴射口16からインクを吸引することができる。
【0045】
また、ポンプホイル38を逆方向(矢印方向とは反対方向)に回動させると、両ローラ42,43が両ローラ案内溝40,41の他端側(ポンプホイル38の内周側)に移動するようになっている。この移動により、両ローラ42,43がそれぞれ排出チューブ39の中間部39aに軽く接した状態となり、排出チューブ39の内部の減圧状態が解消されるようになっている。
なお、ポンプホイル38は、給紙ローラ駆動装置10よって回転駆動されるようになっている。また、キャップ部材34は、不図示の駆動装置により、記録ヘッド4の噴射口形成面17に上端面を接触させて閉空間を形成したり、離間させたりすることが可能となっている。
【0046】
インクジェットプリンタ1は、メンテナンス装置13を用いて、記録ヘッド4に対するメンテナンス処理を実行可能である。メンテナンス装置13は、記録ヘッド4の噴射特性を維持するために、記録ヘッド4と協働して、噴射口16よりインクを排出させる動作を含むメンテナンス処理を実行する。
【0047】
メンテナンス処理は、噴射口16からインクをキャップ部材34に噴射するフラッシング動作、ワイピング装置15のワイプ部材44を用いたワイプ動作、及びキャッピング装置14のキャップ部材34及び吸引装置35を用いた吸引動作を含む。
フラッシング動作は、記録領域において噴射口16からのインクを記録紙に供給する前に、ホームポジションにおいて、噴射口16よりインクをキャップ部材34に予め噴射(吐出)する動作を含む。これにより、噴射口16付近の粘度が増大したインクが排出され、噴射口16の噴射特性が維持又は回復される。本実施形態においては、上記フラッシング動作はインク噴射時に相当することから、上記メニスカス調整手段8によってインクメニスカスが図6(b)に示される第二の位置(噴射口16外側)に保持される。よって、フラッシング動作時にインクの噴射を良好に行うことが可能となる。
【0048】
また、上記吸引動作は、ホームポジションにおいて、噴射口形成面17とキャップ部材34とを対向させ、噴射口形成面17とキャップ部材34との間に形成された空間を吸引する吸引装置35を用いて負圧にすることによって、噴射口形成面17の噴射口16からインクを吸引する動作である。これにより、フラッシング動作では排出しきれなかった粘度が増大したインク、噴射口16内に浸入したゴミ、記録ヘッド4内の気泡等が、噴射口16よりインクとともに排出され、噴射口16の噴射特性が維持又は回復される。本実施形態においては、上記吸引動作はインク噴射時に相当することから、上記メニスカス調整手段8によってインクメニスカスが図6(b)に示される第二の位置(噴射口16外側)に保持される。よって、インク吸引動作を良好に実行することが可能となる。
また、上記ワイプ動作は、ワイプ部材44により噴射口形成面17を払拭する動作である。これにより、吸引動作後に噴射口形成面17に付着したインクがワイプ部材44により払拭されて噴射口形成面17が清掃されることで、噴射口16の近傍に付着したインクを除去することで噴射特性を良好な状態に保つことができる。本実施形態においては、上記ワイプ動作は非インク噴射時に相当することから、上記メニスカス調整手段8によってインクメニスカスが図6(a)に示される第一の位置(噴射口16内側)に保持される。具体的には、キャップ部材34の吸引動作により噴射口形成面17を濡らした状態でワイピング動作を行うことで、ワイプ部材44のビビリ等による異常振動が防止される。これによりワイピング時にメニスカスを壊れ難くすることができ、且つ噴射口形成面17及びワイプ部材44の磨耗を防止することができる。さらにワイプ動作時には、上述したようにメニスカスを引き込むので、ワイプ部材44がインクメニスカスに接触することで、メニスカスが破壊されるのを防止できる。このとき、制御装置58は、インクメニスカスを噴射口16内で微振動させるように上記メニスカス調整手段8を制御している。このようにメニスカスを微振動させることでメニスカスの増粘を内部に引き込みメニスカス部の増粘を遅らせることが可能となり、非インク噴射時においてもインクの噴射特性を良好な状態で保持することができる。
【0049】
以上述べたように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、メニスカス調整手段8により非インク噴射時におけるインクメニスカスが噴射口16内に引き込まれた状態とされるので、インクメニスカスを空気に触れ難くすることが可能となる。よって、インクメニスカスの増粘を遅延させることができる。また、非インク噴射時としてクリーニング処理を行う場合、インクメニスカスが噴射口16内に引き込まれた状態とされるので、クリーニング処理によってインクメニスカスが破壊されるのを防止できる。
したがって、インクジェットプリンタ1によれば、メニスカス調整手段8を備えることで簡便且つ確実なメニスカス制御が可能とされると共に良好な噴射特性が得られる信頼性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】液体噴射装置の一例を示す斜視図である。
【図2】液体噴射装置の一例を示す平面図である。
【図3】記録ヘッドの断面図である。
【図4】インクの供給経路を説明するための模式図である。
【図5】インクジェットプリンタの電気的な構成を示すブロック図である。
【図6】メニスカス調整手段によるインクメニスカスの状態を説明する図である。
【図7】キャッピング装置に連結された吸引装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…インクジェットプリンタ(液体噴射装置)、4…記録ヘッド、8…メニスカス調整手段、12…インク供給チューブ(液体流路)、16…噴射口、17…噴射口形成面、48…インクカートリッジ(液体貯留部)、58…制御装置、B1…第一流路バルブ(流路バルブ)、B2…第二流路バルブ(流路バルブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留部と、
該液体貯留部から供給される前記液体を噴射する複数の噴射口を有した液体噴射ヘッドと、
前記噴射口内の前記液体を押し出す或いは引き込むことで前記液体噴射ヘッドの液体噴射時及び非液体噴射時における液体メニスカスの位置をそれぞれ異ならせるメニスカス調整手段と、
前記非液体噴射時における前記液体メニスカスの第一の位置が、前記液体噴射時における前記液体メニスカスの第二の位置よりも前記噴射口内に引き込まれた状態となるように前記メニスカス調整手段を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体貯留部と前記液体噴射ヘッドとを接続する液体流路を有し、該液体流路に前記メニスカス調整手段が設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記メニスカス調整手段が電動シリンジにより構成されることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記メニスカス調整手段と前記液体貯留部との間には、前記液体流路を開閉可能とする流路バルブが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記非液体噴射時において前記液体メニスカスを微振動させるように前記メニスカス調整手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射時は、前記噴射口から前記液体を噴射して印字を行う印字動作時、前記噴射口から前記液体を噴射させるフラッシング動作時、或いは前記噴射口から前記液体を吸引する吸引動作時であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記非液体噴射時は、前記液体噴射ヘッドにおける複数の前記噴射口が形成された噴射口形成面を払拭するワイピング動作時、前記液体噴射ヘッドの空走時、及び前記噴射口が形成された噴射口形成面をキャップするキャッピング時であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−148927(P2009−148927A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327169(P2007−327169)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】