説明

液体攪拌脱泡充填装置

【課題】 処理される液体の粘度や、液体に含有される粒子の性状に関わらず、十分な攪拌・脱泡、脱泡気体の排出と特定気体への置換、及び基材への塗布又は注射器や小型容器への充填といった一連の工程を、大気に開放せず、容器を変えないで、完了することのできる液体攪拌脱泡充填装置を提供する。
【解決手段】 攪拌・脱泡・充填の各工程を通して処理される液体を収容する共通の容器2と、気体を大気中へ排出する排出機構と特定の気体を注入する気体注入機構とを有していて容器2の内側で摺動するピストン3とにより大気遮蔽機構を構成する。処理される液体は、図示しない回転子駆動機構による容器2の外部からの非接触式駆動力によって攪拌用回転子を容器2内で転動させることにより攪拌・脱泡され、その後、ピストン3を押し下げることによって吐出口7を通して注射器15へ充填されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の粘度と粘調を有する液体、特に高粘度高粘調液体又はバインダーに充填材を含有させた高粘度高粘調液状物質を攪拌するとともに、液状物質中の微細気泡を脱泡し、前記物質を基材へ塗布又は注射器や細管等へ充填するための液体攪拌脱泡充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気部品の製造に際して使用されている接着剤、封止材、仮固定剤、インク等の多くは高粘度高粘調液体又はバインダーに充填材を含有させた高粘度高粘調液状物質(以下、当該液体という)であって、注射器や小型容器に充填されて製造現場に供給される。
【0003】
ここで、高粘度高粘調の液体とは、回転式粘度計((株)トキメック製:ブルックフィールドHBT型粘度計、測定条件:25℃において毎分50回転)での測定値で1.0Pa・s以上の値を有する液体をいう。
【0004】
そして、注射器や小型容器に充填された当該液体は、ディスペンサーと呼ばれる専用塗布機等を用いて、ニードルを通じて2mg程度の極微量ずつ、0.N秒/打の高速で精密に基材に塗布される。
【0005】
このとき、注射器や小型容器内の当該液体に微細な気泡が存在すると、塗布時に空打ちや塗布量のばらつきが発生し、接着不良や機能不具合を生じてしまう。
【0006】
そこで、従来、このような不具合を解決するために、例えば、特許文献1に記載されたような混合装置にて、当該液体を攪拌・脱泡した後、特許文献2や特許文献3に記載されたような吐出装置に充填し、当該液体を塗布すべきところに定量吐出する方法が用いられていた。
【特許文献1】実開平03−36613号公報
【特許文献2】特開平07−328698号公報
【特許文献3】特開平06−126227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたような容器の自転・公転運動によって攪拌する混合装置は、当該液体のような高粘調の液体に対しては攪拌能力が十分とはいえなかった。また、このような混合装置から、特許文献2に記載されたようなスクリューポンプ式吐出装置に当該液体を移す際、脱泡された当該液体に気泡が混入してしまいやすいという問題があった。さらに、このような装置間の搬送は、作業工程の増加を招き、作業効率を低下させる要因となっていた。
【0008】
加えて、特許文献2に記載された装置は、装置内の当該液体の吐出が終了した時、装置内部に当該液体が残留してしまうものであった。また、種類の異なる液体の吐出を行うに際してはそれまで吐出していた液体との混合を避けるために装置内部の洗浄が必要となるが、構造が複雑なためそのような洗浄作業は極めて困難であった。さらに、当該液体に硬質の粒子が含有されている場合には、装置の作動時にスクリューが摩滅し、磨耗粉が当該液体に混入してしまいやすいといった不具合があった。
【0009】
また、特許文献3に記載された装置の場合は、シリンダ10と蓋部材3で形成された攪拌容器の体積が常に一定である。そのため、当該液体の吐出時に、容器内の気体と当該液体との体積比率が吐出の進行に伴って変化したり、圧縮性の気体の影響を受けたりする等により当該液体の吐出量を精確に制御することが困難あった。さらに、気液界面の下降に伴って攪拌羽根2が液面上に現れるため、攪拌によって気液界面では波打ちが生じ、気泡が液中に混入してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、これらの不具合を解決し、安全で効率良く簡便に当該液体の攪拌・脱泡・充填を行うと共に、吐出量の制御を精確に行うことのできる装置の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、処理を行う当該液体の粘度や、当該液体に含有される粒子の性状に関わらず、十分な攪拌・脱泡、脱泡気体の排出と特定気体への置換、及び基材への塗布又は注射器や小型容器への充填といった一連の工程を、大気に開放せず、しかも工程を進める上で装置の容器を変えないで、完了することのできる液体攪拌脱泡充填装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、攪拌機構と、脱泡機構と、充填機構と、を備えており、前記各機構が、摺動蓋を有する唯一共通の容器に収容された処理対象を処理するようにしている。
【0013】
好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、前記攪拌機構と前記脱泡機構とが同時又は順次に動作し、その後、充填機構が動作するようにしている。
【0014】
好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、処理対象が大気に暴露されることを避けるための大気遮蔽機構を備えている。
【0015】
好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、前記容器内の気体を大気中へ排出する排出機構と、該容器内に特定の気体を注入する気体注入機構を備えている。
【0016】
好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、前記攪拌機構及び/又は前記脱泡機構が、攪拌及び/又は脱泡を行うために攪拌用回転子を用いている。
【0017】
さらに好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、前記共通容器内の処理対象を大気に暴露せずに、前記攪拌用回転子を前記容器内から外部へ取出すための回転子取出機構を備えている。
【0018】
さらに好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、前記攪拌用回転子を、前記容器の外部からの非接触式駆動力によって駆動させる回転子駆動機構を備えている。
【0019】
好ましくは、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、前記攪拌用回転子が、前記容器の外部からの駆動力によって該容器内部で回動する軸の先端部に係止されており、かつ該容器の内壁に接触せずに旋回するようにしている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、当該液体を攪拌・脱泡・充填の各工程で用いる容器を共通化し、大気遮断機構を設けたので、当該液体を移し変える工程を必要とせず、かつ、当該液体中に微細気泡を残存させずに、上記工程の全てを完遂できるため、一連の作業の安定化、迅速化が達成できる。また、工程完了後の当該液体をディスペンスした場合、空打ち、塗布量のばらつき等の不具合が無い安定した塗布を行うことができる。さらに、充填終了時の容器内部に残留する当該液体の量が少なく収率が良くなる。
【0021】
さらに、当該液体の攪拌・脱泡工程に、容器内で自由に運動可能な攪拌用回転子を使用する構造を採用した場合、その攪拌用回転子の取出しを行うに際し、大気を遮断する取出機構を有するので、当該液体に気泡を混入することなく、効率的に攪拌用回転子の取出しを行うことができる。また、攪拌用回転子が軸に一体的に設けられている構造を採用した場合、その構造上、攪拌用回転子と容器内壁とが接触することが無いので、攪拌・脱泡時に当該液体に含まれている粒子等が攪拌用回転子と容器内壁によって磨り潰されたりすることが無く、その特性を変質させてしまうことがない。また、回転子駆動機構によって転動される攪拌用回転子より、高粘度高粘調の液体にも十分な攪拌・脱泡を行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明の液体攪拌脱泡充填装置は、共通容器内の当該液体の体積に対し、容器及び摺動蓋の接触面積が小さく、充填時の摺動動作においても摩擦・摺動面積が小さい。また、攪拌用回転子は従来の攪拌用の羽根型部材に比較して平滑な形状を取りやすいため、当該液体から受ける力の集中を少なくすることが容易である。そのため、当該液体内部に硬質の粒子が含有されている場合でも、容器、摺動蓋及び攪拌用回転子の摩滅を最小限に抑えることができる。同時に、それらの磨耗粉が当該液体に混入し液体の品質を劣化させるという不具合もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するに当っては、まず、共通容器の摺動蓋を共通容器から取り外し、摺動蓋に内蔵された気体注入機構の開閉弁と、共通容器底部中央に設けられた吐出口の開口部の開閉弁を閉じる。攪拌用回転子が取出せる構造のものはこの時、共通容器底側部に設けられた回転子取出機構のシールド板を開き、取出室の開閉弁を閉じておく。
【0024】
次に、共通容器内に当該液体を注入する。ここで、攪拌用回転子が取出せる構造のものは、取出室に当該液体を充満させた後、回転子取出機構のシールド板を閉じた上で、攪拌用回転子を容器内の当該液体中に沈める。
【0025】
その後、共通容器に摺動蓋を装着し、摺動蓋に内蔵された排出機構から容器内の気体を排出すると共に、回転子駆動機構を駆動させ、攪拌用回転子を当該容器中で転動させる。この際、回転子駆動機構として、容器は固定した状態で磁力等を用いて攪拌用回転子のみを転動させても良いし、回転子駆動機構によって共通容器を回転させ、相対的に攪拌用回転子を転動させても良い。当該液体中での攪拌用回転子の運動により、微細気泡の衝突時に、気泡の表面張力で気泡が併合する。これによって、気泡の浮上方向に投影した面積当りの浮力の値が、併合前の微細気泡に比べ大きくなり、気液界面への浮上速度が高まり、気液の分離が促進される。
【0026】
なお、当該液体が大気に接触することを避ける必要がある場合は、当該液体の容器への注入前に共通容器に摺動蓋を装着し、気体注入機構により、予め容器内の大気を注入した気体で置換しておき、その後、気体注入機構から容器内に当該液体を注入する。攪拌と脱泡は上記と同様に行う。ここで、攪拌用回転子が取出せる構造のものは、摺動蓋を装着する前に攪拌用回転子を当該容器中に納めるようにする。
【0027】
このようにして、当該液体の攪拌と脱泡工程を共通容器内で終えた後、注射器や微細容器への充填、又は基材への塗布等を行うに際し、排出機構及び気体注入機構の開閉弁が開いている場合はそれらの開閉弁を閉じた後、摺動蓋を下降させる。このとき、摺動蓋と攪拌用回転子が干渉しないよう、予め攪拌用回転子を退避させる必要がある。
【0028】
攪拌用回転子が取出せる構造のものは、回転子取出機構のシールド板を開いて回転子駆動機構により攪拌用回転子を回転子取出機構の取出室内に落下させる。当該液体を共通容器に注入するときにシールド板は開いていたので、回転子取出機構内は既に当該液体で満たされており、攪拌用回転子の取出し時にシールド板を開いても当該液体に大気が接触や侵入をすることはない。攪拌用回転子が回転子取出機構の取出室内に入ると、共通容器の摺動蓋が降下しても攪拌用回転子と干渉することがなくなる。
【0029】
一方、攪拌用回転子を回転軸周りに係止した構造のものは、回転軸の回転により攪拌用回転子を摺動蓋底面に設けた回転子格納溝の直下に位置させ、回転軸を引上げることで攪拌用回転子を回転子格納溝内に格納する。
【0030】
このようにして、攪拌用回転子を退避させた後、共通容器の摺動蓋に設けられた排出機構及び気体注入機構の開閉弁が開いている場合はそれらを閉じて、吐出口を開く。そして、摺動蓋を降下させ、容器内の当該液体は装置の下部に設置された基材への塗布や、注射器や微細容器への充填等が行われる。
【実施例1】
【0031】
以下、図1及び図2によって本発明に係る液体攪拌脱泡充填装置の一実施例を説明する。本実施例における液体攪拌脱泡充填装置は攪拌・脱泡に用いられる攪拌用回転子が、固定されておらず、取出しが自由に行える。
【0032】
まず、本実施例における液体攪拌脱泡充填装置の構成を説明する。図1は本実施例に用いられる各種形態の攪拌用回転子を示したものである。図2は本実施例に用いられる液体攪拌脱泡充填装置及び処理完了後の当該液体を充填するための注射器の断面図である。
【0033】
本実施例における攪拌用回転子1は、図1(a),(b)又は(c)に示したような形状のものを用いた。なお、攪拌用回転子の形状は対象となる当該液体の種類により適切な形状は異なり、ここで示す形状に限定されるものではない。
【0034】
本実施例における液体攪拌脱泡充填装置は、主として大気遮断機構と、攪拌機構と、脱泡機構と、充填機構とを有してなる。
【0035】
本実施例において、大気遮断機構は、容器2と摺動蓋であるピストン3により構成されている。この大気遮断機構は、攪拌機構、脱泡機構及び充填機構における共通容器となっている。容器2の下部には攪拌用回転子1の取出室4が設けられている。取出室4と容器2との間にはシールド板5が設けられており、このシールド板5をスライドさせて閉じることにより容器2と取出室4とを遮断することができる。また、取出室4と大気との間にも開閉弁6が設けられており、この開閉弁6を閉じることにより取出室4と外部とを遮断することができる。なお、回転子取出機構はこの取出室4と、シールド板5と、開閉弁6とによって構成されている。
【0036】
さらに、容器2の下部には吐出口7が設けられている。吐出口7と容器2との間にはスライド式の開閉弁8が設けられており、この開閉弁8を閉じることによって、容器2と吐出口7とを遮断することができる。
【0037】
一方、容器2上部には、容器2の容積を増減するピストン3が軸9により容器2に対し摺動自在に駆動される状態で嵌装されている。このピストン3には排出機構である脱気用の導口10と気体注入機構である送気用の導口11が設けられおり、各々に開閉自在な開閉弁12、13が設けられている。
【0038】
攪拌機構及び脱泡機構は、組み合わされた一つの機構として構成されている。この機構は、攪拌用回転子1と、ベアリング14と、図示しない回転子駆動機構と、排出機構とによって構成されている。ベアリング14は容器2全体を回転可能に支持している。図示しない回転子駆動機構により容器2が回転駆動され、相対的に攪拌用回転子1は容器2内で転動し、攪拌・脱泡動作を行う。また、この動作と共に、排出機構による脱泡動作によって当該液体から排出された気体を、容器2の外部へと排出する。
【0039】
充填機構は、ピストン3と吐出口7とによって構成されている。吐出口7の下部には、注射器15がホルダー16に支持されて着脱可能な状態で設置されている。この注射器15の内部へ、攪拌・脱泡を終えた当該液体をピストン3が容器2から押出し吐出口7を通して充填を行う。
【0040】
なお、当該液体が大気の接触を避けなければならない液体である場合には、液体攪拌脱泡充填装置、注射器15及びホルダー16の全てを密閉された図示しない容器の内部に設置する。そして、その容器の内部の大気を当該液体に対して無害な気体と置換した後に、各機構を動作させる。また、このような容器を用いず、吐出口7と無害な気体が満たされた注射器15とを気密状態で接続し、当該液体の大気との接触を避けても良い。
【0041】
以上のように構成した本実施例における液体攪拌脱泡充填装置の動作について以下に説明する。
なお、当該液体として、以下の電子用接着剤2種、各1kgを用いた。
No.1:銀エポキシペーストT−3007/粘度40Pa・s
No.2:銀エポキシペーストT−3030/粘度8Pa・s
(何れも住友金属鉱山(株)製)
【0042】
本実施例における液体攪拌脱泡充填装置を用いて、攪拌、脱泡、充填の各工程を行う前には、まず、容器2に設けられた吐出口7への開閉弁8と、取出室4に設けられた外部開閉弁6を閉じる。ただし、取出室4と容器2との間に設けられたこれらの間を開閉するシールド板5は開いておく。次に、ピストン3は一度容器2から外し、容器2の上部を開いて処理対象の当該液体を容器2の内部に注入する。
【0043】
なお、本実施例では、ピストン3の上部に設けられている軸9が取り外し可能となっている。このように構成することによって、ピストン3の保全がしやすく、交換時の操作性を向上させることができる等の効果がある。
【0044】
そして、取出室4が当該液体で満たされた後に、シールド板5を閉じ、攪拌用回転子1を容器2内に入れる。ピストン3に設けられた脱気用の導口10の開閉弁12を開くと共に、送気用の導口11の開閉弁13を閉じ、ピストン3を容器2に装着し、軸9を介してピストン3の下面が当該液体に接触する直前の位置まで下降させる。なお、開閉弁12,13の開閉は、ピストン3を装着してから行っても良い。
【0045】
なお、当該液体を大気に接触させないようにする場合は、当該液体を容器2へ注入する前に、まず、シールド板5を開き、開閉弁6を閉じた後に、容器2内に攪拌用回転子1を載置する。載置する場所は、当該液体を容器2内へ注入したときに、当該液体の流れに対して、取出室4よりも下流となる場所である。次に、脱気用の導口10と送気用の導口11の各開閉弁12,13を開いてからピストン3を装着する。なお、このときピストン3を装着してから開閉弁12,13を開いても良い。次に、送気用の導口11から所定の気体を注入すると共に、脱気用の導口10から大気を排出し容器2の内部の気体を置換する。その後、送気用の導口11より当該液体を注入する。そして、シールド板5と送気用の導口11の開閉弁13を閉じ、軸9を介してピストン3の下面が当該液体に接触する直前の位置まで下降させる。
【0046】
次に、ベアリング14により回転自在に支持された容器2を図示しない回転子駆動機構により回転駆動し、攪拌用回転子1を容器2内で転動させ、当該液体の攪拌・脱泡を行う。このとき、脱気用の導口10から気体を引き抜き減圧したり、上記した方法と同様の方法によって置換することにより、気液界面に浮上した気泡を含む容器2内の気体を排出する。
【0047】
ここで、攪拌・脱泡工程を終了させる前に、シールド板5を開き、攪拌用回転子1を取出室4に満たされた当該液体の中に落下させ格納した後、脱気用の導口10の開閉弁12を閉じる。シールド板5を開いた際、取出室4は予め外部開閉弁6が閉じていて、当該液体で満たされているので、ここから大気が容器2内に侵入することはない。その後、回転子駆動機構の回転を停止して攪拌・脱泡工程を終了させる。
【0048】
最後に、充填を行うには、開閉弁12を閉じ、容器2の吐出口7の直下に注射器15を上部を開口した状態で設置した後、開閉弁8を開き、ピストン3を軸9を介して下降させ、攪拌・脱泡された当該液体を注射器15に向かって気体が混入しないように静かに押出す。
【0049】
なお、取出室4に格納された攪拌用回転子1の取出しは、シールド板5を閉じた後であれば、開閉弁6を開くことによっていつでも行うことができる。この際、取出室4内には大気が侵入するが、閉じられたシールド板5の働きで大気が容器2内に侵入することはない。
【0050】
以上のようにして得た攪拌・脱泡された当該液体を充填した注射器に、0.4mmφのステンレスニードルをセットし3軸同時制御ロボットディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株)製、SHOT−MINI型)を用いて、ニードルより全量連続塗布を行い空打ちの発生回数を数えた。また、効率評価として、サンプルを交換して充填する場合の洗淨、当該液体交換、攪拌、脱泡及び再充填までに掛かる時間を測定した。
【0051】
その結果、上記のNo.1ペースト、No.2ペーストとも、容量20gの注射器に充填し、10000ショット(1ショットあたり約2mg)の吐出を行ったが、空打ちは発生しなかった。また、吐出以外の上記工程に要した時間は従来の装置では約4時間程度かかっていたが、本実施例では1.5時間以内でそれらの吐出を除く全工程を終了することができた。
【実施例2】
【0052】
以下、本発明に係る液体攪拌脱泡充填装置の他の実施例を説明する。本実施例における液体攪拌脱泡充填装置は攪拌・脱泡に用いられる攪拌用回転子が、実施例1とは異なり軸の先端に一体的に設けられていることを特徴としている。
【0053】
まず、本実施例における液体攪拌脱泡充填装置の構成を図3及び図4を用いて説明する。
【0054】
図3は本実施例に用いられる液体攪拌脱泡充填装置及び処理完了後の当該液体を充填するための注射器の断面図である。図4は本実施例に用いられる攪拌用回転子を有するピストンを示す図であって(a)は攪拌・脱泡を行う際の攪拌用回転子の状態を示しており、(b)は攪拌用回転子をピストンに格納した状態を示したものである。本実施例の装置においても、主要な構成は図2に示す実施例1の装置と共通であり、符号も同じ符号を用いて説明する。
【0055】
攪拌用回転子1は連結棒17の先端部に固定されている。連結棒17は軸18に軸19によって回動可能に軸支されている。また、連結棒17には、攪拌用回転子1の固定されていない側の端部に突起部17aが設けられている。軸18はピストン3を貫通しており、図示しない駆動機構によってピストン3に対して回転、昇降運動をすることができる。そして、ピストン3の底面には、攪拌用回転子1及び連結棒17を図4(b)のような状態で格納可能な回転子格納溝20が設けられている。さらに、ピストン3の上面には外筒21が設けられており、ピストン3はこの外筒21を介して図示しない駆動機構により駆動される。
【0056】
本実施例では、実施例1の装置とは異なり、容器2自体を回転させないので、容器2を回転可能に支持するベアリングは設けられていない。また、実施例1で説明した、回転子取出機構も有していない。なお、図3及び図4には気体注入機構及び排出機構を図示していないが、軸18、回転子格納溝20及び外筒21と重ならない場所に、本実施例でも実施例1と同様の構成で気体注入機構及び排出機構が設けられている。
【0057】
また、軸19には連結棒17を下方へ開かせるように付勢する図示しないバネが取り付けられている。また、軸18にはその開き作動を停止させるためのストッパー18aが形成されている。そのため、連結棒17はこのストッパー18aとバネによって高粘調の当該液体中でも、図4(a)に示すように略水平となるような状態で保持される。そして、攪拌中も遠心力によりこの状態が保持される。
【0058】
また、連結棒17には、上記のように突起部17aが設けられている。そのため、図4(a)の状態から、ピストン3に対して軸18を引上げると、この突起部17aが、回転子格納溝20の奥壁の接触部20aに当接し、カム作用によって連結棒17が図示していないバネの付勢力に抗して回転され、攪拌用回転子1及び連結棒17は図4(b)に示すように、回転子格納溝20に自動的に格納されるようになっている。
【0059】
以上のように構成した本実施例における液体攪拌脱泡充填装置の動作について以下に説明する。当該液体としては実施例1で用いたものと同一の2種を用いた。
【0060】
本実施例における液体攪拌脱泡充填装置を用いて、攪拌、脱泡、充填の各工程を行うには、まず、容器2の下部に設けられた吐出口7への開閉弁8を閉じておき、ピストン3を攪拌用回転子1、連結棒17、軸18ごと容器2から取り外し、容器2の上部から当該液体を容器2の内部に注入する。
【0061】
次に、ピストン3に設けられた脱気用の導口10の開閉弁12を開くと共に、送気用の導口11の開閉弁13を閉じ、ピストン3を容器2に装着し、外筒21を介してピストン3の下面が当該液体に接触する直前の位置まで下降させる。
【0062】
なお、当該液体を大気に接触させてはいけない場合は、当該液体を容器2へ注入する前に、実施例1と同様の方法で置換を行ってから当該液体を注入する。
【0063】
そして、軸18の下端に軸支された連結棒17及び攪拌用回転子1を、軸18をピストン3に対し下降させることで連結棒17を開かせ攪拌可能な状態にするとともに、当該液体内へと沈める。そして、軸18を回転駆動することで攪拌用回転子1を容器2内で回転させ、攪拌・脱泡を行う。このとき、脱気用の導口10から減圧や置換によって容器2内の気体を排出することで、気液界面に浮上した気泡を含む容器2内の気体を排出する。攪拌と脱泡作業を終了させるには、脱気用の導口10の開閉弁12を閉じ、軸18の回転駆動機構を停止する。
【0064】
充填を行うには、容器2の吐出口7の直下に注射器15を、上部を開口した状態で設置した後、開閉弁8を開き、外筒21を介してピストン3を下降させ、攪拌・脱泡された当該液体を注射器15に向かって気体が混入しないように静かに押出す。
【0065】
ここで、ピストン3を下降させる前に、ピストン3と容器2内の攪拌用回転子1の干渉を避ける必要がある。これには、軸18を微動回転させることにより、軸18下端に軸支された連結棒17及び攪拌用回転子1が回転子格納溝20の直下に位置するように回転角度の位置決めを行った後、軸18を上昇させることで、連結棒17及び攪拌用回転子1を回転子格納溝20内に格納する。これにより、下降するピストン3と攪拌用回転子1の干渉は避けられる。
【0066】
以上のようにして得た当該液体を実施例1と同一条件で評価を行った。その結果、No.1ペースト、No.2ペーストとも、注射器に充填された当該液体を使い切るまで、空打ちは発生せず、各サンプルとも所要時間はそれぞれ1.5時間以内を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1における攪拌用回転子の例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における液体攪拌脱泡充填装置及び処理完了後の当該液体を充填するための注射器を示した断面図である。
【図3】本発明の実施例2における液体攪拌脱泡充填装置及び処理完了後の当該液体を充填するための注射器を示した断面図である。
【図4】本発明の実施例2における攪拌用回転子及び連結棒を示す断面図であり、 (a)は攪拌・脱泡工程を行う際の状態を示したものであり、(b)は充填工程を行う際の状態を示したものである。
【符号の説明】
【0068】
1 攪拌用回転子
2 容器
3 ピストン
4 取出室
5 シールド板
6,8,12,13 開閉弁
7 吐出口
9,18,19 軸
10 脱気用の導口
11 送気用の導口
14 ベアリング
15 注射器
16 ホルダー
17 連結棒
17a 突起部
18a ストッパー
20 回転子格納溝
20a 接触部
21 外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌機構と、脱泡機構と、充填機構と、を備えており、前記各機構が摺動蓋を有する唯一共通の容器に収容された処理対象を処理することを特徴とする液体攪拌脱泡充填装置。
【請求項2】
前記攪拌機構と前記脱泡機構とが同時又は順次に動作し、その後、充填機構が動作することを特徴とする請求項1に記載の液体攪拌脱泡充填装置。
【請求項3】
処理対象が大気に暴露されることを避けるための大気遮蔽機構を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体攪拌脱泡充填装置。
【請求項4】
前記容器内の気体を大気中へ排出する排出機構と、該容器内に特定の気体を注入する気体注入機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体攪拌脱泡充填装置。
【請求項5】
前記攪拌機構及び/又は前記脱泡機構が、攪拌及び/又は脱泡を行うために攪拌用回転子を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体攪拌脱泡充填装置。
【請求項6】
前記共通容器内の処理対象を大気に暴露せずに、前記攪拌用回転子を前記容器内から外部へ取出すための回転子取出機構を備えていることを特徴とする請求項5に記載の液体攪拌充填脱泡装置。
【請求項7】
前記攪拌用回転子を、前記容器の外部からの非接触式駆動力によって駆動させる回転子駆動機構を備えていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液体攪拌脱泡充填装置。
【請求項8】
前記攪拌用回転子が、前記容器の外部からの駆動力によって該容器内部で回動する軸の先端部に係止されており、かつ該容器の内壁に接触せずに旋回することを特徴とする請求項5に記載の液体攪拌脱泡充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−212530(P2006−212530A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27299(P2005−27299)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】