説明

液体散布装置及び液体散布方法

【課題】 作業性が良好で、且つ、散布液の無駄も排除できる、液体散布装置及び液体散布方法を提案する。
【解決手段】 散布用ポンプ2が作動することにより、溶媒源4の溶媒Cと溶質源5の溶質Sとが前記散布用ポンプ2に吸入され、前記溶媒Cと前記溶質Sが混合された状態で、前記散布用ポンプ2から散布液として吐出される。該散布液の流量は、前記流量センサ6で検知される。そして、前記溶質源5からの溶質Sの繰り出し量は、制御装置7により、前記流量センサ6で検知された散布液の流量に応じて、散布液の濃度が所定の濃度となるように制御される。溶媒Cと溶質Sとを混合しながら散布するので、溶媒Cと溶質Sとをあらかじめ混合して散布液を調製する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体散布装置及び液体散布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体散布装置の一例としての農用のブームスプレーヤやスピードスプレーヤ等は、走行機体に大型の薬液タンクを搭載しているが、該薬液タンクには、あらかじめ、溶媒としての水と溶質としての薬液の原液とが所定の割合で注入され、前記薬液タンク内で攪拌されて、散布液が作られる。
【0003】
しかし、前記方法では、散布作業中に散布液が足りなくなった場合には、散布作業を中断して前記薬液タンクで散布液を再度調製しなければならないため、作業性が悪かった。また、前記薬液タンク内に散布液が余ってしまった場合には、その散布液が無駄になってしまうほか、その散布液の処理にも困る等の不都合がある。さらに、前記薬液タンクが大型であるため、使用後の前記薬液タンクの洗浄作業にも多大な労力を要していた。
【0004】
このような問題を解決するための技術として、下記特許文献1に記載のものが提案され、該特許文献1に記載のものの欠点を除去したものとして、下記特許文献2に記載のものが提案されている。これらはいずれも、水と薬液とを別タンクに収容し、散布時に前記水と前記薬液とを合流させて散布するようにしたものである。
【特許文献1】特開平11−76906号公報
【特許文献2】特開2001−190208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものには、散布液の流量が変化した場合に、オリフィス通過抵抗の変化によって、散布液の濃度が変化してしまうという問題がある。
【0006】
また、前記特許文献2に記載のものは、複数のコックを手動で切り換えることで、吸水量調節部及び吸液量調節部のオリフィスが、予め定めた数種のものから選択される方式であるので、操作が煩雑であるほか、配管も複雑である等の問題がある。
【0007】
本発明は、前記の如き事情に鑑みてなされたもので、前記従来技術に見られるような欠点がなく、作業性が良好で、且つ、散布液の無駄も排除できる、液体散布装置及び液体散布方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る液体散布装置は、散布液を圧送する散布用ポンプと、該散布用ポンプの吸入側にそれぞれ連通された溶媒源及び溶質源と、前記散布液の流量を検知する流量センサと、前記散布液の濃度が所定の濃度となるように、前記流量センサで検知された前記散布液の流量に応じて前記溶質源からの溶質の繰り出し量を自動制御する制御装置を備えたものである(請求項1)。
【0009】
本発明においては、前記散布用ポンプが作動することにより、前記溶媒源の溶媒と前記溶質源の溶質とが前記散布用ポンプに吸入され、前記溶媒と前記溶質が混合された状態で、前記散布用ポンプから散布液として吐出される。該散布液の流量は、前記流量センサで検知される。そして、前記溶質源からの溶質の繰り出し量は、前記制御装置により、前記流量センサで検知された前記散布液の流量に応じて、該散布液の濃度が所定の濃度となるように制御される。
【0010】
本発明によれば、溶媒と溶質とを混合しながら散布するので、溶媒と溶質とをあらかじめ混合して散布液を調製する必要がない。よって、散布作業性が良好となり、且つ、散布液の無駄も発生しない。また、散布液の流量が変化しても濃度は一定に保持され、操作性も良く、配管系もシンプルなものにできる等の利点がある。
【0011】
なお、本発明において、前記流量センサは、実際に散布される散布液の流量を検知するものであってもよいし、調量弁を介して余水として前記散布用ポンプの吸入側へと戻される散布液の流量を検知するものであってもよい。
【0012】
好適な実施の一形態として、前記制御装置は、前記溶質源から溶質を繰り出す溶質ポンプと、該溶質ポンプの作動を制御する溶質繰り出し量制御部を備えたものとすることもできる(請求項2)。
【0013】
さらに、好適な実施の一形態として、前記溶媒源と前記散布用ポンプの間に、前記溶媒源への溶質の混入を阻止する逆止弁が介装され、前記溶質ポンプの吐出口に連通された吐液管路と、前記散布用ポンプの吐出側に介装された三方弁の全量戻し管路と、前記散布液の流量を調整する調量弁に連通された余水管路が、前記逆止弁と前記散布用ポンプの吸入口を連通する混合管路に連通されたものとすることもできる(請求項3)。このようにすれば、前記全量戻し管路と前記余水管路を介して前記混合管路へと戻される散布液が前記溶媒源へ流入することが前記逆止弁によって阻止されるので、散布液の濃度を常に一定に維持できる。
【0014】
なお、本発明において、前記溶質源の溶質は、例えば、薬液等の原液であってもよいし、薬液原液や粉粒状薬剤等の原溶質を、散布液より高濃度となるように予め溶媒で希釈した予備希釈液であってもよい(請求項4)。
【0015】
他の好適な実施の一形態として、散布幅を直接又は間接的に知るために必要な要素を検知する散布幅要素センサと、散布移動速度センサを備え、前記制御装置は、前記流量センサ、前記散布幅要素センサ及び前記散布移動速度センサの検知結果に基づいて、散布幅と散布移動速度のいずれが変化しても単位面積当たりの目標散布量通りの散布が行われるように前記散布液の流量をも制御するものであっても良い(請求項5)。
【0016】
前記実施の形態において、前記散布幅要素センサとしては、前記散布幅を直接検知し得るセンサを使用することもできるし、実際に散布液を散布するノズルの数を検知する稼働ノズル数センサを用いることもできる。後者の場合には、前記制御装置において、前記稼働ノズル数センサで検知された稼働ノズル数にノズル間距離を乗算することで、前記散布幅を算出することができる。
【0017】
また、前記散布幅要素センサとして、前記流量センサから得られる情報との組み合わせにより前記制御装置において前記散布幅を演算可能な情報を提供するセンサを用いることもでき、具体的には、例えば、散布圧力センサを用いることもできる。
【0018】
一方、本発明に係る液体散布方法は、散布用ポンプの吸入口に溶媒源と溶質源とを連通せしめ、散布液の濃度が常に一定となるように、該散布液の流量に応じて前記溶質源からの溶質の供給量を自動制御しながら散布するものである(請求項6)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係る液体散布装置の、制御回路を含む配管図である。
【0021】
図1の液体散布装置であるブームスプレーヤ1は、図示しない農用トラクタ等の走行機体に搭載されて、圃場内を走行しながら防除液や液肥等を散布する農用ブームスプレーヤであり、中でも特に、いわゆるスライドブームと呼ばれる伸縮式ブームを備えたブームスプレーヤについて、本発明を適用した例である。しかし、これには限定されず、折り畳み式ブームを有する、いわゆる条止め式散布装置についても適用できることは言うまでもない。また、本発明の適用範囲は、ブームスプレーヤには限定されず、散布作業中に散布液の流量を変化せしめる場合がある液体散布装置について、広く適用可能である。
【0022】
前記ブームスプレーヤ1は、散布液を圧送する散布用ポンプ2と、該散布用ポンプ2の吸入口3にそれぞれ連通された溶媒源4及び溶質源5と、前記散布液の流量を検知する流量センサ6と、前記散布液の濃度が所定の濃度となるように、前記流量センサ6で検知された前記散布液の流量に応じて前記溶質源5からの溶質Sの繰り出し量を制御する制御装置7を備えている。該制御装置7は、前記溶質源5から溶質Sを繰り出す溶質ポンプ8と、該溶質ポンプ8の作動を制御する溶質繰り出し量制御部9を備えている。
【0023】
さらに前記ブームスプレーヤ1は、散布幅Wを直接又は間接的に知るために必要な要素を検知する散布幅要素センサ12と、散布移動速度センサ13を備えている。そして、前記制御装置7は、演算部14と、散布液の流量調整手段としての調量弁15と、該調量弁15の作動を制御する流量制御部16を備え、前記流量センサ6、前記散布幅要素センサ12及び前記散布移動速度センサ13の検知結果に基づいて、散布幅Wと散布移動速度Vのいずれが変化しても単位面積当たりの目標散布量q通りの散布が行われるように、前記散布液の流量をも制御する。
【0024】
前記ブームスプレーヤ1によれば、前記散布用ポンプ2の吐出量(回転数)を一定とした状態で移動しながら散布が行われるが、散布作業中に散布幅W及び散布移動速度Vが変化した場合には、その変化に対応して前記散布液の流量が自動制御されることで、常に単位面積当たりの目標散布量q通りの散布が行われる。加えて、前記散布液の流量の変化に対応して前記溶質Sの繰り出し量が自動制御されることで、散布液の流量の変化にかかわらず、散布液の濃度が所定の濃度に維持される。
【0025】
以下、前記ブームスプレーヤ1について具体的に説明する。
【0026】
前記溶媒源4は、本実施の形態では、溶媒としての水Cを貯留する清水タンクとされている。該清水タンク4は、逆止弁17を介装した吸水管路18と、混合管路19を介して、高圧プランジャ式等の前記散布用ポンプ2の前記吸入口3に連通されている。
【0027】
また、前記溶質源5は、本実施の形態では、溶質としての防除用薬液Sを貯留する薬液タンクとされている。該薬液タンク5は、前記溶質ポンプとしての薬液ポンプ8の吸入口20に連通された吸液管路21と、前記薬液ポンプ8の吐出口22に連通された吐液管路23を介して、前記混合管路19に連通されている。前記薬液タンク5内には、前記清水タンク4内の水Cと所定比率で混合・希釈されて散布液となる前記薬液Sが入っている。該薬液Sは、例えば、薬液の原液であってもよいし、その原液を、散布液より高濃度に予め水で希釈したものであってもよい。さらに、粉粒状の薬剤を水に溶かして、散布液より高濃度となるように濃度設定したものであってもよい。このため、前記薬液タンク5内には、攪拌手段としての攪拌翼24が配設されている。前記薬液として、薬液原液や粉粒状薬剤等の原溶質を、散布液より高濃度となるように予め溶媒で希釈した予備希釈液を用いれば、水との均質混合がより確実となるほか、前記薬液ポンプ8として、最小繰り出し量の大きな、したがって安価なものを採用できるので、好適である。
【0028】
前記薬液ポンプ8としては、液体を少量ずつ量的正確さをもって送出することができるポンプを使用する。例えば、それ自体周知のチューブポンプ、特に、側面一方が壁とされた弾力性のあるチューブの前記壁の部分をローラーが押しつぶしながら転がることにより前記チューブ内の液を押し出す、ローラーチューブポンプを用いることができる。該ローラーチューブポンプによれば、前記ローラーの転がり速度を制御することで、前記混合管路19への薬液Sの供給量を制御することができる。前記薬液ポンプ8の作動は、散布液の濃度が、予め入力した所定の濃度に維持されるように、前記溶質繰り出し量制御部9によって自動制御される。
【0029】
前記薬液タンク5内の薬液Sは、前記薬液ポンプ8によって前記混合管路19へと供給され、前記散布用ポンプ2によって前記清水タンク4から吸入された水Cと前記混合管路19内で混合されて、前記散布液となる。前記混合管路19においては、前記散布用ポンプ2の大きな吸入圧により、必然的に、前記水Cと前記薬液Sとが強制的な混合攪拌作用を受けることになる。よって、前記散布液の濃度に偏りは生じない。
【0030】
前記薬液タンク5と前記清水タンク4との容量比は、前記薬液Sの希釈倍率に応じて適宜に決定すればよいが、前記薬液タンク5の容量は、前記清水タンク4の容量に比べてはるかに小さくて済む。このため、第一の利点として、前記薬液タンク5への薬液Sの注入作業が容易となる。第二の利点として、散布作業終了時に前記薬液タンク5内に薬液が残っても、少量なのでその取り扱いが容易である。第三の利点として、使用後の前記薬液タンク5の洗浄作業が容易となる。
【0031】
前記散布用ポンプ2の吐出口25は、手動操作式の三方弁26が介装された吐出管路27を介して、液体分配筐28に連通されている。前記三方弁26の二つの切換流出口26a,26bの内の一方26aは、前記液体分配筐28に連通していて、他方26bは、全量戻し管路31を介して前記混合管路19に連通している。したがって、散布作業中に散布を一時的に停止したい場合等には、前記ブームスプレーヤ1の運転者が前記三方弁26を操作して前記混合管路19側へと流路を切り換えることにより、前記散布用ポンプ2を無負荷運転させることができる。
【0032】
前記液体分配筐28からは、ブーム10a,10bの分割数に対応した複数本(本実施の形態では二本)のホース等よりなる送液管路11が延び出していて、該二本の送液管路11,11は、それぞれ、その長さ方向に沿って多数の散布ノズルnを有するノズル管29へと連通している。該各ノズル管29,29は、その長さ方向に沿ってそれ自体周知の構成により相対伸縮自在に結合せしめられた一対の前記ブーム10a,10bのそれぞれの下面に沿って取着されている。
【0033】
前記各散布ノズルnは、互いに同一仕様のものであり、いずれの散布ノズルnからも、互いに同一量の散布液が互いに同一の態様で吐出されるようになっている。
【0034】
前記ブームスプレーヤ1によれば、前記一対のブーム10a,10bを、前記走行機体の進行方向に対して左右方向外方へ向けて長く伸ばして、圃場内を走行しながら、前記多数の散布ノズルnによって広幅の液体散布を行うことができる。しかも、必要に応じて前記一対のブーム10a,10bを伸縮操作してブーム全長(散布幅W)を変更することにより、圃場の外周形状変化等に適宜に対応しながら散布を行うことができる。
【0035】
前記ブームスプレーヤ1においては、例えば、前記一対のブーム10a,10bの内の一方の固定ブーム10a側の前記各散布ノズルnに図示しないコックをそれぞれ付設し、これらのコックが、前記他方の移動ブーム10bの相対伸縮に応じて自動的に開閉操作されるようにせしめて、前記移動ブーム10bの収縮により前記散布ノズルnの位置が前記両ブームで重なり合っても、液体吐出は重なり合わないようにされている。すなわち、本実施の形態では、前記一対のブーム10a,10bが相対伸縮することによって、実際に前記散布液を吐出する散布ノズル(稼働ノズル)nの数Kが変化し、散布幅Wが変化することになる。
【0036】
前記ブームスプレーヤ1においては、散布幅Wと散布移動速度Vのいずれが変化しても、単位面積当たりの目標散布量q通りの散布が可能とされている。すなわち、前記制御装置7の前記演算部14において、前記流量センサとしての散布流量センサ6、前記散布幅要素センサ12及び前記散布移動速度センサ13の各検知結果に基づく散布幅Wと移動速度Vと前記目標散布量qとの乗算により、該目標散布量qを実現するのに必要な単位時間当たりの液体流量Qが演算され、該演算結果が実現されるように、前記流量制御部16によって前記調量弁15の作動が制御される。
【0037】
本実施の形態では、前記散布流量センサ6は、前記三方弁26の下流側で前記吐出管路27に介装されている。前記散布流量センサ6は、前記散布用ポンプ2により前記液体分配筐28へと所定圧力値で圧送される散布液の流量、すなわち、前記稼働ノズルnから実際に散布される散布液の流量を検知する。
【0038】
前記散布幅要素センサ12は、それ自体が、例えば、前記移動ブーム10bの伸び出し量を計測して散布幅W(前記ブーム全体としての伸長幅)を直接検知するものであっても良いし、前記散布流量センサ6から得られる情報との組み合わせにより、マイクロコンピュータを含む前記演算部14において前記散布幅Wを演算可能な情報を提供する、適宜の他のセンサであっても良い。本実施の形態では、前記散布幅Wを直接検知可能なセンサ(散布幅検出手段)として、ブーム長計測用距離センサ12aを用いている。該距離センサ12aとしては、ビームセンサ又はバーコードセンサ等、それ自体周知の適宜の他の構成のものを使用することができる。
【0039】
前記散布移動速度センサ13は、前記散布ノズルnの地面に対する移動速度(前記走行機体の走行速度)を検知するセンサである。前記散布移動速度センサ13は、前記走行機体の車軸の回転速度を検知するものでも良いし、該車軸の回転速度と比例関係にある、他の回転要素の速度を検知するものであっても良い。
【0040】
また、前記ブームスプレーヤ1は、前記吐出管路27における前記散布流量センサ6の上流側に調量管路30を備えていて、該調量管路30には、電動式等の前記調量弁15を介して、余水管路32が接続されている。該余水管路32は、前記混合管路19へと連通している。前記調量弁15の調量値は、マイクロコンピュータを含む前記流量制御部16によって自動制御される。
【0041】
なお、前記清水タンク4と前記混合管路19との間には、前記清水タンク4への液体流入を阻止する前記逆止弁17が介装されているので、前記余水管路32や前記全量戻し管路31を介して前記混合管路19へと散布液が戻されても、該散布液が前記清水タンク4に混入してしまうことはない。よって、該清水タンク内の清水に薬液が混じってしまうことがなく、散布液の濃度を常に一定に保持できる。
【0042】
前記構成において、前記散布流量センサ6、前記ブーム長計測用距離センサ12a及び前記散布移動速度センサ13からの信号は、前記制御装置7の前記演算部14へと送られる。該演算部14では、前記各センサ6,12a,13からの情報信号に基づいて、前記目標散布量qを実現するのに必要な単位時間当たりの液体流量Qが、次の計算式を利用して、連続的に演算される。
【0043】
計算式:単位面積当たりの目標散布量を実現するのに必要な単位時間当たりの液体流量Q(L/min)=散布幅W(m)×単位面積当たりの目標散布量q(L/10a)×移動速度V(km/h)×1/60
そして、前記制御装置7の前記流量制御部16は、前記演算結果に基づき目標散布量qが実現されるように、前記調量弁15の調量値を連続的に自動制御する。その結果、前記調量管路30及び前記余水管路32を介して前記散布用ポンプ2から前記混合管路19へと戻される余水の流量が変化するので、前記液体分配筐28へと送られる散布液の流量、すなわち、前記各稼働ノズルnからの実散布量も、自動的に調節される。よって、前記散布幅Wと散布移動速度Vのいずれが変化しても、単位面積当たりの目標散布量q通りの散布が可能となる。散布液の流量は、前記散布流量センサ6から前記制御装置7へと連続的に出力されているので、計算通りの均一量散布が行われているか否かが、常に前記制御装置7でチェックされ、信頼性が向上する。
【0044】
さらに、前記演算部14において、前記散布液の流量に対応して、該散布液の濃度を予め入力された所定の濃度に維持するのに必要な溶質繰り出し量が演算され、その演算結果が実現されるように、マイクロコンピュータを含む前記溶質繰り出し量制御部9によって前記薬液ポンプ8の作動が制御される。これにより、散布液の流量の変化にかかわらず、散布液の濃度が所定の濃度に保持される。
【0045】
ところで、前記計算式を利用する場合、前記単位面積当たりの目標散布量qは、散布される薬液の種類や、栽培作物の種類等に応じて予め設定され、前記散布移動速度Vは、前記散布移動速度センサ13からの情報によって具体的な数値が定まるので、あとは、前記散布幅Wの具体的な数値が確定されれば良い。本実施の形態は、前記散布幅Wをブームの長さとして直接検知する前記距離センサ12aを、散布幅要素センサ12として用いた例であるが、前記散布幅Wは、互いに一定の相関関係を有する二以上の要素の組み合わせ演算により算出することも可能である。
【0046】
例えば、図1において、前記ブーム長計測用距離センサ12aに代えて、実際に前記散布液を吐出する液体吐出ノズル(稼働ノズル)nの数Kを検知する稼働ノズル数センサ12bを、前記散布幅要素センサ12として設けたものとすることもできる。前記稼働ノズル数センサ12bとしては、前記各散布ノズルnの前記各コックからその開閉信号を得て、その個数Kを計数するノズルカウンタや、相対伸縮する前記ブーム10a,10bにおいて、前記各散布ノズルnが所定のコック開閉位置を通過したか否かをそれぞれ検知するリミットスイッチ等を含むものを採用することができる。
【0047】
この場合には、前記制御装置7の前記演算部14において、前記ノズル数センサ12bから得られた稼働ノズル数Kと、予め入力されたノズル間距離と、の乗算により、散布幅Wを演算することができる。散布幅Wが算出されれば、前記演算部14で前記計算式により、単位面積当たりの目標散布量qを実現するのに必要な単位時間当たりの液体流量Qが演算可能であるので、この液体流量Qが実現されるように、前記制御装置7の前記流量制御部16において、前記調量弁15の調量値を自動制御すればよい。
【0048】
他の実施の形態として、図1に仮想線で示すように、前記ブーム長計測用距離センサ12bに代えて、前記吐出管路27内の圧力を検知する圧力センサ(散布圧力センサ)12cを、散布幅要素検知センサ12として用いることもできる。この場合には、前記散布圧力センサ12cと前記散布流量センサ6が、散布幅検出手段としての役割を果たすことになる。
【0049】
例えば、前記稼働ノズルnの数Kの様々な値に対して、前記散布圧力センサ12cで検出される散布圧力と、前記散布流量センサ6で検出される散布流量と、の間には、一定の相関関係(流量値は、圧力値の平方根に比例する。)がある。このため、前記散布流量センサ6で検出される散布流量値と、前記散布圧力センサ12cで検出される散布圧力値と、の組み合わせから、前記制御装置7の前記演算部14において、稼働ノズルnの個数Kを割り出すことができる。したがって、前記演算部14では、得られた稼働ノズル数Kと、予め入力されたノズル間距離と、の乗算により、散布幅Wを演算することができる。散布幅Wが算出されれば、前記演算部で前記計算式により、単位面積当たりの目標散布量qを実現するのに必要な単位時間当たりの液体流量Qが演算可能であるので、この液体流量Qが実現されるように、前記制御装置7で自動制御すればよい。
【0050】
また、さらに他の実施の形態として、折り畳み式ブームを有する、いわゆる条止め式散布装置の場合には、散布幅Wを知るために必要な要素を検知する散布幅要素センサ12として、ブームの折り畳み作動を検知するリミットスイッチや、折り畳まれたブームのノズル管へつながる送液管路を開閉するための散布コックの開閉を検知するセンサ等を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液体散布装置の、制御回路を含む配管図である。
【符号の説明】
【0052】
2 散布用ポンプ
4 溶媒源
5 溶質源
6 流量センサ
7 制御装置
8 溶質ポンプ
9 溶質繰り出し量制御部
12 散布幅要素センサ
13 散布移動速度センサ
15 調量弁
16 流量制御部
17 逆止弁
19 混合管路
23 吐液管路
26 三方弁
31 全量戻し管路
32 余水管路
q 目標散布量
S 溶質
V 散布移動速度
W 散布幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布液を圧送する散布用ポンプ(2)と、該散布用ポンプ(2)の吸入側にそれぞれ連通された溶媒源(4)及び溶質源(5)と、前記散布液の流量を検知する流量センサ(6)と、前記散布液の濃度が所定の濃度となるように、前記流量センサ(6)で検知された前記散布液の流量に応じて前記溶質源(5)からの溶質(S)の繰り出し量を自動制御する制御装置(7)を備えている、液体散布装置。
【請求項2】
前記制御装置(7)は、前記溶質源(5)から溶質(S)を繰り出す溶質ポンプ(8)と、該溶質ポンプ(8)の作動を制御する溶質繰り出し量制御部(9)を備えている、請求項1に記載の液体散布装置。
【請求項3】
前記溶媒源(4)と前記散布用ポンプ(2)の間に、前記溶媒源(4)への溶質(S)の混入を阻止する逆止弁(17)が介装され、前記溶質ポンプ(8)の吐出口(22)に連通された吐液管路(23)と、前記散布用ポンプ(2)の吐出側に介装された三方弁(26)の全量戻し管路(31)と、前記散布液の流量を調整する調量弁(15)に連通された余水管路(32)が、前記逆止弁(17)と前記散布用ポンプ(2)の吸入口(3)を連通する混合管路(19)に連通されている、請求項2に記載の液体散布装置。
【請求項4】
前記溶質源(5)内の溶質(S)が、前記散布液の濃度より高濃度となるように予め原溶質を溶媒で希釈した予備希釈液とされている、請求項1,2又は3に記載の液体散布装置。
【請求項5】
散布幅(W)を直接又は間接的に知るために必要な要素を検知する散布幅要素センサ(12)と、散布移動速度センサ(13)を備え、前記制御装置(7)は、前記流量センサ(6)、前記散布幅要素センサ(12)及び前記散布移動速度センサ(13)の検知結果に基づいて、散布幅(W)と散布移動速度(V)のいずれが変化しても単位面積当たりの目標散布量(q)通りの散布が行われるように前記散布液の流量をも制御するものである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体散布装置。
【請求項6】
散布用ポンプ(2)の吸入口(3)に溶媒源(4)と溶質源(5)とを連通せしめ、散布液の濃度が所定の濃度となるように、該散布液の流量に応じて前記溶質源(5)からの溶質(S)の供給量を自動制御しながら散布する、液体散布方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−167809(P2007−167809A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372363(P2005−372363)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】