説明

液体材料の塗布方法、塗布装置およびプログラム

【課題】吐出量の変化を高精度に補正し、塗布形状ないしフィレット形状を安定させることができる塗布方法、塗布装置およびプログラムの提供。
【解決手段】毛細管現象を利用して吐出装置から吐出した液体材料を充填する液体材料の塗布方法であって、連続した複数の塗布領域からなる塗布パターン作成工程と、一の吐出パルスに複数の休止パルスを所定の比率で組み合わせたサイクルを複数作成し、各塗布領域に割り当てる工程と、各塗布領域について割り当てられたサイクルで塗布を実施する工程と、予め設定した補正周期で、補正周期の時点における吐出量を計測し、吐出量の補正量を算出する補正量算出工程と、補正量算出工程で算出した補正量に基づき、1以上のサイクルについて、一の吐出パルスに対する休止パルスの比率を調整する工程と、を含み、休止パルスの長さを吐出パルスの長さと比べ充分に短く設定した液体材料の塗布方法並びに装置及びプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基板とその上に載置されたワークとの間隙に毛細管現象を利用して吐出装置から吐出した液体材料を充填する液体材料の塗布方法、塗布装置およびプログラムに関し、特に、半導体パッケージングのアンダーフィル工程において、吐出装置の移動速度を変更することなく、吐出量の変化を補正し、かつ、塗布形状を安定させることができる方法、装置およびプログラムに関する。
なお、本明細書で「吐出量」とは一の吐出でノズルから排出される液体材料の量を意味し、「塗布量」とは複数の吐出が行われる一定の範囲(例えば塗布パターンや塗布領域)で必要とされる液体材料の量を意味する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの実装技術の一つにフリップチップ方式と呼ばれる技術がある。フリップチップ方式では半導体チップ30の表面に突起状電極(バンプ)31を形成し、これを基板29上の電極パッド32に対して直接接続する。
フリップチップパッケージでは、半導体チップ30と基板29との熱膨張係数の差により発生する応力が、接続部33に集中して接続部33が破壊することを防ぐために、半導体チップ30と基板29との隙間に樹脂を充填して接続部33を補強する。この工程をアンダーフィルと呼ぶ(図7参照)。
アンダーフィル工程は、半導体チップ30の外周に沿って液状樹脂34を塗布し、毛細管現象を利用して樹脂34を半導体チップ30と基板29との隙間に充填した後、オーブンなどで加熱して樹脂34を硬化させることにより行う。
【0003】
アンダーフィル工程においては、時間経過に伴う樹脂材料の粘度変化を考慮する必要がある。粘度が高くなると、材料吐出口からの吐出量が減少し、また、毛細管現象が不十分になって、適正量の材料が隙間に充填されなくなってしまうという問題があるからである。粘度変化の激しいものでは、例えば、6時間経過後、吐出量にして10%以上減ることもある。そこで、粘度の経時的変化に伴う吐出量の変化を補正する必要があった。
ところで、アンダーフィル工程に用いる樹脂材料の充填には、一般にディスペンサが用いられている。そのディスペンサの一種に、ノズルから液体材料の小滴を噴射して吐出するジェット式ディスペンサがある。
【0004】
ジェット式ディスペンサを用いてアンダーフィル工程を実施する方法は、例えば、特開2004−344883号(特許文献1)に開示される。すなわち、特許文献1には、ジェット式ディスペンサを用いて基板上に粘性材料を吐出する方法であって、吐出すべき粘性材料の総体積および総体積の粘性材料が吐出される長さを準備すること、重量計上に複数の粘性材料液滴を塗布するよう動作させること、重量計上に塗布された複数の粘性材料液滴の重量を表すフィードバック信号を生成すること、総体積の粘性材料が長さにわたって吐出されるように、ディスペンサと基板との間の最大相対速度を求めること、を含む方法が開示されている。
また、特許文献1には、複数の液体材料液滴のそれぞれの体積を求めること、総体積にほぼ等しくなるのに必要とされる液滴の全数を求めること、長さにわたって粘性材料液滴をほぼ均一に分配するのに必要とされる各液滴間距離を求めること、および最大相対速度で長さにわたって総体積の粘性材料を吐出するために粘性材料液滴がディスペンサから吐出されるレート値を求めること、をさらに含む方法であるとしている。
【0005】
それから、アンダーフィルを行うと、半導体チップ30の側面と基板29とが形成する角部に液状樹脂34によって満たされる隅肉部分35ができる。この隅肉部分35をフィレットという(図8参照)。フィレット35が均一に形成されていないと、フィレット35が小さい箇所から空気が進入して気泡巻き込みの原因となったり、塗布対象チップ30の周辺の塗布禁止領域まで樹脂34がはみ出してしまったり、加熱硬化時の半導体チップ34の破損の原因になったり、といった不都合がある。そのため、フィレット35は一定の幅36と高さ37で均一に形成される必要がある。
フィレット35が均一に形成されない原因として、バンプ31の配置の疎密による浸透度合いの違いが挙げられる。一般に、バンプ31の配置が密な箇所は液状樹脂34の浸透が速く、バンプ31の配置が疎な箇所は液状樹脂34の浸透が遅い。そのため、一定量の塗布を行うと、上述のような浸透度合いの違いにより、不均一な幅36や高さ37のフィレット35が形成され、フィレット35の形状の乱れが発生することになる。
フィレット35が均一に形成されないもう一つの原因として、塗布動作中の速度変化が挙げられる。L字やU字など移動方向が変わる軌跡で塗布を行う場合、角部(方向転換部)では方向転換のために減速しなくてはならない。また、動き始めや動き終わりにも同様に減速する必要がある。これは、機械として避けられないことである。そのため、一定量の塗布をしていると、角部や始終点部での塗布量が増え、フィレット35の形状の乱れが発生することとなる。
【0006】
その他に、アンダーフィル工程において液体材料を塗布する技術として例えば次に挙げる技術がある。
特許文献2には、所望の塗布パターンを作成し、ノズルとワークとを相対移動しながら液体材料をノズルから吐出し、ワークに対し規定した塗布量の液体材料を塗布する方法において、吐出パルスまたは休止パルスを送信する回数を総パルス数として規定し、そのうち塗布量を達成するために必要な吐出パルス数を規定し、残りを休止パルス数として規定する工程、予め設定した補正周期で、補正周期の時点におけるノズルからの吐出量を計測し、吐出量の補正量を算出する工程、および、算出した補正量に基づき吐出パルス数と休止パルス数を調整する工程、とを含む塗布方法、が開示されている。
【0007】
特許文献3には、基板とその上に載置されたワークとの間隙に毛細管現象を利用して吐出装置から吐出した液体材料を充填する方法であって、連続した複数の塗布領域からなる塗布パターンを作成する工程と、各塗布領域に、吐出パルス数と休止パルス数とを所定の比率で組み合わせた吐出サイクルを複数割り当てる工程と、予め設定した補正周期で、補正周期の時点における吐出装置からの吐出量を計測し、吐出量の補正量を算出する工程と、を含み、さらに、算出した補正量に基づき、塗布パターンに含まれる吐出パルスと休止パルスの数を調整する工程、および/または、少なくとも一の塗布領域と当該塗布領域と連続する他の一または二の塗布領域の長さを各塗布領域における単位時間当たりの吐出量を変えることなく調整する工程、からなる工程と、を含む液体材料の充填方法、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−344883号公報
【特許文献2】特開2009−190012号公報
【特許文献3】国際公開第2010/147052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、長さにわたって均一に吐出するために液滴の数や各液滴の間隔を求める手順が必要であり、この手順内では様々なパラメータを計算によって求めるため、その計算時に誤差が多く生じるという課題がある。また、均一化を図るためには、一つ一つの液滴の大きさを揃える必要があり、このために特別の手段が必要となるという課題がある。
また、特許文献1ではノズルとワークの相対速度を可変とすることを前提に長さにわたって均一に吐出するための最大相対速度を求めている。しかし、相対速度が変わると、処理時間が変わり、時間当たりの処理数が一定しないという課題が生ずる。さらには、最大相対速度を求めて、一つの塗布パターンの中で液滴を均一に分配する手法では、バンプの配置やチップの角部へ対応させた塗布を行うことが困難であり、フィレット形状が乱れるおそれがあった。
【0010】
特許文献2は、吐出パルスと休止パルスの組み合わせにより塗布量を制御するものであるが、補正を実行して吐出パルス数と休止パルス数の割合を変更した場合に、塗布パターンの終点で欲するパルス種別と補正後に割り当てられたパルス種別が上手く合わないという問題が発生することがあった。例えば、塗布パターンの終点で吐出パルスが設定されるべき場合に、補正により休止パルスが設定されると吐出量に若干のずれが生じることになる。
【0011】
特許文献3では、パルス数を調整することによる特許文献2と同様の課題に加え、塗布領域の長さを調整することによる課題があった。すなわち、塗布領域の長さを変えると塗布形状が変わることの条件変化により、液体材料が余ったり足りなくなったりしてしまい、均一にフィレットが形成されない場合があった。
【0012】
そこで本発明は、上記課題を解決し、吐出量の変化を高精度に補正し、塗布形状ないしフィレット形状を安定させることができる塗布方法、塗布装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は、上記課題を解決するにあたり、吐出パルスと休止パルスを用いた塗布方法において、休止パルスの長さと吐出量の補正の精度に相関があることを見いだし、本発明をなした。
【0014】
すなわち、第1の発明は、基板とその上に載置されたワークとの間隙に毛細管現象を利用して吐出装置から吐出した液体材料を充填する液体材料の塗布方法であって、連続した複数の塗布領域からなる塗布パターン作成工程と、一の吐出パルスに複数の休止パルスを所定の比率で組み合わせたサイクルを複数作成し、各塗布領域に割り当てるサイクル割当工程と、各塗布領域について割り当てられたサイクルで塗布を実施する塗布工程と、予め設定した補正周期で、補正周期の時点における吐出装置からの吐出量を計測し、吐出量の補正量を算出する補正量算出工程と、前記補正量算出工程で算出した補正量に基づき、1以上のサイクルについて、一の吐出パルスに対する休止パルスの比率を調整する吐出量調整工程と、を含み、休止パルスの長さを吐出パルスの長さと比べ充分に短く設定したことを特徴とする液体材料の塗布方法である。
第2の発明は、第1の発明において、休止パルスの長さが吐出パルスの長さの20分の1以下であることを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記サイクル割当工程において、各サイクルに同じ長さの吐出パルスおよび同じ長さの休止パルスを割り当てることを特徴とする。
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明において、前記吐出量調整工程において、吐出パルスおよび休止パルスの長さを変えないことを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、前記吐出量調整工程において、塗布パターンの全長および各塗布領域の長さを変えないことを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記吐出量補正工程において、吐出装置とワークとの相対移動速度を変えることなく吐出量の補正を行うことを特徴とする。
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明において、前記補正量算出工程以前の工程において、補正を行うかを判断する許容範囲を設定し、許容範囲を越える場合に補正を実行することを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、前記補正周期は、ユーザーが補正周期として入力した時間情報、ワークの枚数、または基板の枚数に基づき設定されることを特徴とする。
第9の発明は、第1ないし8のいずれかの発明において、前記吐出量調整工程において、複数サイクルについて、一の吐出パルスに対する休止パルスの比率を調整することを特徴とする。
【0015】
第10の発明は、液体材料を供給する液材供給部と、液体材料を吐出する吐出口を有する吐出装置と、吐出口より吐出された液体材料の量を計量する計量部と、吐出口とワークとを相対移動させる駆動機構と、これらの作動を制御する制御部とを備える塗布装置において、制御部に第1ないし9のいずれかに記載の発明に係る塗布方法を実施させることを特徴とする塗布装置である。
【0016】
第11の発明は、液体材料を供給する液材供給部と、液体材料を吐出する吐出口を有する吐出装置と、吐出口より吐出された液体材料の量を計量する計量部と、吐出口とワークとを相対移動させる駆動機構と、これらの作動を制御する制御部とを備える塗布装置において、制御部に第1ないし9のいずれかに記載の発明に係る塗布方法を実施させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吐出装置とワークとの間の相対移動速度(以下、単に「相対速度」という場合がある)を変えないので、処理時間が変わらず、生産が安定して一定に行える。加えて、液体材料の間隙への浸透と吐出装置からの供給とのバランスが変わらず、一定したフィレット形状が形成できる。
また、一つの塗布パターンの中で複数のサイクルを設定でき、補正に際して相対速度やパターン長さを変えるのではなく、サイクルに含まれるパルス数を調整するので、不均一な塗布パターンでも吐出量を一定に保つことができる。言い換えると、塗布パターンの作成に関し自由度が高く、バンプの配置やチップの角部へ対応した塗布が可能である。
【0018】
さらに、相対速度を変えず、かつサイクルを切り替える位置を変えないので、塗布形状が変わらず、塗布禁止領域や塗布対象ではない部品が近くにあっても塗布を行うことができる。
そして、休止パルスから優先的に調整を行うので、吐出パルスに与える影響が少なく、安定した吐出が行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る塗布パターンの例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る液体材料の吐出量調整手順を示したフローチャートである。
【図3】実施例に係るジェット式吐出装置の要部断面図である。
【図4】実施例に係る吐出装置へ発信されるパルス信号を説明する説明図である。
【図5】実施例に係る塗布装置の概略斜視図である。
【図6】実施例に係る塗布装置での塗布作業手順を示したフローチャートである。
【図7】アンダーフィル工程を説明するための側面断面図である。
【図8】フィレットを説明するための側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を図1および図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る塗布パターンの例であり、図2は、本実施の形態に係る吐出量の調整手順のフローチャートである。なお、図1のチップ30と液体材料34との間は、説明を分かり易くするため少し間を空けて描いている。実際に塗布を行う場合は、前記の間はほとんど空けずにチップ辺のすぐ近くに塗布する。
本実施の形態で用いる吐出装置は、パルス信号を受けて弁体を駆動し、弁座に弁体を衝突させることによりノズルから液体材料を飛翔吐出するジェット式吐出装置である(具体的な構成は実施例で後述する)。この吐出装置における一の吐出は、一のパルス信号を受けることにより行う。
なお、本発明は、飛翔吐出ないし液滴状吐出させるタイプの吐出装置であれば適用することができ、ジェット式への適用に限定されない。
【0021】
[1]単位時間当たりの吐出量の設定(STEP201)
吐出装置から吐出される液体材料の単位時間当たりの吐出量を求める。これは予め実験で求めてもよいし、その場で計測してもよい。いずれにせよ、実際に使用する液体材料で吐出を行って計測することが好ましい。なぜなら、それぞれの液体材料の特性(粘度、密度等)により、単位時間当たりの吐出量が異なってくるからである。また、複数の吐出装置を用意して代わる代わる使用する場合、吐出装置によっていわゆる個体差が存在するので、単位時間当たりの吐出量は、それぞれの吐出装置について求めておくことが好ましい。液体材料の種類やノズル径などを変えた際も同様である。
さらに、同一吐出装置における吐出量のばらつき(偏差)を求める。このばらつきは、後述するSTEP204を設定する際に考慮することがある。
【0022】
[2]必要塗布量の設定(STEP202)
基板とワーク(半導体チップ)との間隙を充填し、かつフィレットを形成するために必要な液体材料の量を求める。必要塗布量は、設計図面などから理論値を求めてもよいし、実際に塗布を行って求めてもよい。ただし、理論値はあくまで理想的な値であるので、正確を期すためには実際に塗布を行って求めることが好ましい。また、必要塗布量は、体積として求めてもよいし、質量として求めてもよい。その際、用いる液体材料の密度の値が必要である。
【0023】
[3]塗布パターンの作成(STEP203)
ワークと基板とを接続するバンプの配置、ワーク周辺の他の部品の状況などを考慮して塗布を行う辺を設定する。例えば、矩形状のワークにおいて、一辺に沿って直線状に塗布を行う、或いは隣り合う二辺に沿ってL字状に塗布を行う、といったことを設定する。塗布パターンが定まると、塗布総長さが求まる。ここで、「塗布長さ」とは、一のワークに塗布をする際のノズルとワークとの相対移動量の総長を意味する。
そして、バンプの配置やチップ角部の経由の有無などを考慮して、一つの塗布パターンの中で、単位時間あたりの吐出量が異なる複数の塗布領域を設定し、各塗布領域の長さをそれぞれ設定する。例えば図1では、ワーク30の一辺に沿って、符号38の方向へ直線状に塗布する場合において、X〜Xの塗布領域を設定し、ワーク辺中央付近(Xの領域)の塗布量を多く、その両側(X、Xの領域)の塗布量を少なくしている。なお図1では、説明の便宜上、塗布量の多い領域を幅の太い線で、塗布量の少ない領域を幅の細い線で描いている。このような塗布量の多寡は、後述するSTEP204の吐出率を変えることにより設定する。
【0024】
[4]吐出率の設定(STEP204)
上記[3]で設定した塗布領域毎に異なる塗布量を実現するため、吐出パルスと休止パルスとを組み合わせる割合(比率)を各塗布領域(X〜X)について設定する。具体的には、一の塗布領域における全パルスのうち、吐出パルスの占める割合(以下「吐出率」と呼ぶ場合がある)が塗布領域毎に異なるように、全ての塗布領域について吐出率の設定を行う。本実施の形態では、吐出率は、塗布領域全体が吐出パルスのみで構成されるときを100%とし、塗布領域全体が休止パルスのみで構成されるときを0%としている。一つの塗布領域内における吐出率は一定である。
吐出率は、100%から0%まで設定可能であるが、一の塗布パターンの中で最も吐出量の多い領域(例えば図1に示すXの領域)でも100%にはせず、STEP201で求めたばらつきや後の調整の幅を考慮して、例えば80%のように上下に余裕を持たせて設定するとよい。そうすることで、吐出量を増やす方向にも減らす方向にも対応ができるようになる。
【0025】
[5]パルス長さ(ON時間/OFF時間)の設定(STEP205)
本実施の形態で用いる吐出装置はジェット式であるので、一の吐出パルス信号を受けることにより、弁体が一の往復動作をし、一の吐出をする。パルス信号には、弁体が弁座から離れている時間であるON時間と、弁体が弁座に接している時間であるOFF時間とからなる吐出パルスと、ON時間が設定されておらずOFF時間のみからなり吐出動作を行わない休止パルスとがある。吐出パルス、休止パルスはそれぞれ一定の周波数で発信される(吐出パルスと休止パルスの周波数は異なる)。
これら吐出パルスと休止パルスのON時間とOFF時間を塗布領域毎にそれぞれ設定する。ただし、吐出パルスのON時間とOFF時間には適正範囲があり、この範囲を外れると不具合(液体材料がノズル先端に過剰に付着したり、塗布した結果である液滴が複数個に分かれて飛散したり、或いは液体材料が噴射しないなど)が発生する。適正範囲は液体材料の特性や吐出量などにより異なるが、例えばON時間は2〜10[msec]、OFF時間は2〜10[msec]の範囲で設定するとよい。なお、一番よく用いられるのは、ON時間が3[msec]、OFF時間が3[msec]である。ON時間とOFF時間は原則同じ値とする。一方、休止パルスには上記のような時間の範囲がないことは言うまでもない。
【0026】
塗布パターンは、複数のサイクルの組み合わせから構成される。ここで、「サイクル」とは、一の吐出パルスと休止パルスとの組み合わせをいう。前述のように、各塗布領域で異なる塗布量とするため、各塗布領域で実行されるサイクルは異なる。すなわち、各塗布領域で吐出パルスと休止パルスを組み合わせる割合を異ならせる。一方、各塗布領域でそれぞれのパルス長さ(パルス周期。パルスのON時間とOFF時間を足し合わせた時間)は異ならせない。換言すると、一つの塗布パターンの中でパルス長さは変わらない。このパルス長さは、液体材料の種類が変わったり、塗布対象ワークの種類が変わったりしない限り、同一吐出装置においては一度設定すれば変えることは必要ない。
本発明では、休止パルス長さは吐出パルス長さよりも短く設定しており、好ましくは20分の1以下とし、より好ましくは100分の1以下とし、さらに好ましくは1000分の1以下とする。これは、後述するように、優先的に増減を行う休止パルス長さを短くすることでより細かな調整をできるようにするためである。休止パルス長さを吐出パルス長さの100分の1とすると吐出率を1%のオーダーまで制御でき、1000分の1とすると吐出率を0.1%のオーダーまで制御できる。
【0027】
[6]移動速度の設定(STEP206)
吐出装置とワークとの相対移動速度Vの設定には二通りの決め方がある。一つは、目標とする生産量などから、目標とする移動速度Vを決めて設定する方法である。塗布作業や製品の量産などを開始すればその間は基本的に速度を変更しないので、自由に移動速度Vを決めてよい。もちろん、自由と言っても機械の出せる限界の移動速度というものが存在するので、その範囲内で決めることになる。
もう一つは、上記各設定値から移動速度Vを算出する方法である。図1を例にとると、単位時間当たりの吐出量をA[g/sec]、必要塗布量をG[g]、塗布領域の長さをX[mm]とすると、移動速度V[mm/sec]は次のようになる。
【0028】
[式1]

【0029】
もし、上記式1の右辺の各設定値に変更がある場合には、移動速度Vはその都度算出し直す。
【0030】
[7]パルス数算出(STEP207)
前述のSTEP204で設定した各塗布領域での吐出率に基づき、各塗布領域での吐出パルスと休止パルスの数を設定する。本実施の形態では、一の吐出パルスに対する休止パルスの数を算出して基本となるサイクルとする。
まず、一の吐出パルスの長さ(ON時間とOFF時間を足し合わせた時間)をD、一の休止パルスの長さ(ON時間とOFF時間を足し合わせた時間)をSとし、各塗布領域の吐出パルスの数をn、各塗布領域の休止パルスの数をmとする。前述の通り、吐出率とは、一の塗布領域における全パルス数のうち、吐出パルスの占める割合であるので、吐出率Cは、次の式のようになる。
【0031】
[式2]

【0032】
ここで、添字iは塗布領域の番号を表し、例えば図1では、iは1、2、3のいずれかとなる。
【0033】
上式から各塗布領域の休止パルスの数mは、次の式のようになる。
【0034】
[式3]

【0035】
これより、吐出パルスの数を1(すなわちn=1)としたときの各塗布領域の休止パルスの数mは次のような式になる。
【0036】
[式4]

【0037】
具体的な例を挙げると、吐出パルスのON時間を3[msec]、OFF時間を3[msec]、また休止パルスのON時間を0.005[msec]、OFF時間を0.005[msec]とし、吐出率を80%とした場合、式4より、一の吐出パルスに対する休止パルスの数mは150個となる。同じ吐出パルス長さと休止パルス長さで、吐出率を40%とした場合は、一の吐出パルスに対する休止パルスの数mは900個となる。この具体例の場合は、算出結果が割り切れる数値(自然数)であったが、割り切れない場合は例えば四捨五入して自然数とする。
【0038】
各塗布領域について一の吐出パルスに対する休止パルスを算出し、それと一の吐出パルスとの組み合わせを基本サイクルとする。実際の塗布作業では、この基本サイクルを塗布領域内で相対移動をしながら、時間や距離が設定値に達するまで繰り返す。図1を例にとると、塗布領域Xの左端から吐出装置が移動を開始し、塗布領域Xと塗布領域Xとの接続点までは、第1の基本サイクルを繰り返して吐出を行う。塗布領域Xと塗布領域Xとの接続点に達したら、吐出装置は停止せずに第2の基本サイクルへと切り替える。そして、塗布領域Xと塗布領域Xとの接続点までは、第2の基本サイクルを繰り返して吐出を行う。同様にして、塗布領域2と塗布領域3との接続点に達したら、第3の基本サイクルへと切り替え、吐出を続ける。そして、塗布領域Xの右端に吐出装置が達したとき停止し、塗布作業は終了となる。塗布パターン内の塗布領域の数が増減したり、塗布パターンに角部などが含まれていたりする場合も同様の手順で実施することができる。
【0039】
[8]補正周期の設定(STEP208)
吐出量を補正する周期である補正周期を設定する。補正周期としては、例えば、ユーザーが入力した時間情報、チップないしは基板の枚数などを設定する。所定の時間を設定する場合は、液体材料の吐出量の変化が作業開始から許容範囲を越えると予想される時間を設定する。枚数を設定する場合には、一枚のチップを処理する時間ないしは一枚の基板を処理する時間(搬入→塗布→搬出の時間)と、上記所定の時間から処理枚数を求め、設定する。
【0040】
補正周期の設定に際しては、塗布に用いる液体材料について、塗布パターンと必要塗布量などとの関係を予めの試験により算出し、これらの値を補正周期に反映するのが好ましい。これらのパラメータを設定することで、温度の変化により生ずる液体材料の粘度変化や吐出部のつまりおよび水頭差による影響がある場合でも、吐出量の変化に対応することが可能となる。
また、液体材料の使用時間の限界値として、メーカーの規定するポットライフに基づいて算出した値を予め記憶しておき、補正周期に組み込んでもよい。
【0041】
補正周期設定の際は、時間経過や温度の変化により生ずる液体材料の粘度変化を考慮する必要があるが、以下では時間の経過に伴う粘度変化のみが生ずることを前提に説明を行うものとする。
なお、吐出部の温度調整により液体材料の粘度を制御する公知の技術を本発明に適用できることは言うまでもない。
【0042】
[9]補正の実行
設定された補正周期で、液体材料の粘度変化による吐出量の変化に対応するための補正量を算出する。
補正量の算出手法としては、(A)一定時間吐出した際の重量を測定し、必要重量との差に基づいて補正量を算出する手法、(B)必要重量となるまでに要する吐出時間を測定し、直前の吐出時間との差に基づいて補正量を算出する手法がある。本発明では、いずれの手法を適用してもよいが、以下では(A)の手法に基づき、具体的な補正量の算出手順を説明する。
【0043】
(i)吐出量計測(STEP209)
ノズル(すなわち吐出装置)を秤量器の上方へ移動させ、固定位置にて液体材料を吐出する。秤量器への吐出は、一定時間の間、連続して行う。この一定時間は、例えば上述の設定した塗布パターンを吐出するのに要する時間や、上述のSTEP201で行う実験や計測に要する時間などとするとよい。
続いて、秤量器へ吐出された液体材料の重量Gを読み取る。この計測重量Gと必要重量Gとから変化率Rを算出する。変化率Rは次の式のようになる。
[式5]

【0044】
変化率Rがマイナスの場合、一定吐出時間における吐出量が必要重量より少ないことになるので、下記STEP210で吐出量が増えるよう補正量の算出を行う。逆に変化率Rがプラスの場合、一定吐出時間における吐出量が必要重量より多いことになるので、下記STEP210で吐出量が減るよう補正量の算出を行う。
なお、重量の計測は、複数回計測して平均値を求めるようにしてもよい。そうすることでより精度よく計測値を求めることができる。
【0045】
(ii)補正量(新パルス数)算出(STEP210)
補正量を算出するには、上記STEP209の変化率から新たな吐出率を計算し、STEP207の計算式に基づいて新たなパルス数を算出する。
まず、新たな吐出率から求める。上述のように変化率Rがマイナスの場合、吐出量が増えるよう補正量の算出を行わなければならない。すなわち、各領域の新たな吐出率をC’とすると、次のようになる。
【0046】
[式6]

【0047】
ここで、添字iは塗布領域の番号を表し、例えば図1では、iは1、2、3のいずれかとなる(次式も同じ)。一方、変化率Rがプラスの場合は、吐出量が減るよう補正量の算出を行わなければならないので、各領域の新たな吐出率は、次のようになる。
【0048】
[式7]

【0049】
次いで、上記式6または式7で求めた各領域の新たな吐出率と、前述のSTEP207で示した式4に基づいて新たなパルス数を各塗布領域において算出する。
【0050】
具体的に例を挙げて説明する。ここでは前述のSTEP207と同じ数値で考えるものとする。初期設定吐出率が80%の領域の新たな吐出率C’は、ある補正周期経過後に吐出量を計測した結果、必要吐出量より10%少ないとすると(変化率Rがマイナス10%とすると)、式6より88%となる。したがって、一の吐出パルスに対する休止パルスの数は、式4より82個となる。また、初期設定吐出率が40%の領域の新たな吐出率C’は、式6より44%となる。したがって、一の吐出パルスに対する休止パルスの数は、式4より764個となる。このようにして求めた新たなパルス数を組み合わせて新たなサイクルとして、塗布パターンに設定する。
このようにして、各塗布領域において、一の吐出パルスに対する休止パルスの数を増減することでより細かな調整ができるようになる。
【0051】
(iii)補正の実行(STEP211)
前述のSTEP209で吐出量の補正が必要であると判定された場合には、上記STEP210で新たな吐出率C’から新たなパルス数を算出し、塗布パターンの全塗布領域に対して再設定することで補正を行う。
ここで、吐出量補正の要否の判定は、重量差や変化率がゼロで無い場合には常に補正を行うようにするのではなく、計測した吐出量(計測値)の差分や変化率Rが許容範囲(例えば±5%)を越える場合にのみ補正を行うようにするのが好ましい。許容範囲を設けた補正の好ましい態様は、例えば、本出願人に係る特許第3877038号に詳しい。すなわち、補正を行うかを判断する許容範囲を設け、差分値ないしは変化率が前記許容する範囲を越える場合にのみ補正する。
上記STEP209からSTEP211の工程は、上記STEP208で設定した補正周期において、或いは基板の種類(大きさや形状)が変わったときなどに実行することで、液体材料の経時的粘度変化に関わらず、常に最良の塗布量を実現することが可能となる。
【0052】
以上に説明した本発明によれば、相対速度を変えないので、処理時間が変わらず、生産が安定して一定に行える。加えて、液体材料の間隙への浸透と吐出装置からの供給とのバランスが変わらず、一定したフィレット形状が形成できる。
また、一つの塗布パターンの中で複数のサイクルを設定でき、補正に際して相対速度やパターン長さを変えるのではなく、サイクルに含まれるパルス数を調整するので、塗布量が不均一な塗布パターンでも吐出量を一定に保つことができる。言い換えると、塗布パターンの作成に関し自由度が高く、バンプの配置やチップの角部へ対応した塗布が可能である。
さらに、相対速度を変えず、かつサイクルを切り替える位置(すなわち各塗布領域の長さ)を変えないので、塗布形状が変わらず、塗布禁止領域や塗布対象ではない部品が近くにあっても塗布を行うことができる。
そして、本発明では、補正により休止パルスの数は大きく変動するものの、吐出パルスの数の変動は小さいので、安定した吐出が行える。
【0053】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
[吐出装置]
本実施例の吐出装置1は、図3に示すように、上下動自在に内設された弁体であるピストン2と、制御部11を通して調圧された圧縮空気により加圧されている貯留容器3と、貯留容器3と連通するノズル4とを備えるジェット式吐出装置である。また、ピストン2を上方へ移動させるための作動気体を制御部11を通じて給排気する切換弁6と、ピストン2を下方へ付勢するスプリング7を備える。そして、スプリング7の上部には、ピストン2の移動量を調整するためのストローク調整部材8を備える。ノズル4近傍にはノズル4とその内部にある液体材料34を暖めるためのヒータ9を備える。さらに、ノズル4近傍にはヒータ9と対向して温度センサ10が設けられており、ノズル4とその内部にある液体材料34を所定の温度に保つための制御を行う際に用いられる。
【0055】
貯留容器3に充填された液体材料34は、制御部11から発信されるパルス信号に応じて切換弁6を作動させ、ピストン2を上下させることにより、ノズル4から液滴状に吐出される。ノズル4から吐出された液体材料34は、吐出装置1が基板29と相対移動されることにより、ノズル4の下方に位置決めされた基板29へ点状に塗布される。
より詳細には、吐出装置1は次のように動作する。吐出装置1に与えられるパルス信号は、例えば図4に示すようになっている。符号14のように、パルス信号がONとなったとき、切換弁6の作動により気体を給気し、ピストン2を上昇させてノズル入口5を開放する。続いてパルス信号がOFFとなったとき、切換弁6の作動により気体を排気し、ピストン2をスプリング7の反発力により下降させてノズル入口5を閉鎖する。つまり、一の吐出パルス14は、ピストン2を上昇(ノズル入口5の開放)させるONとピストン2を下降(ノズル入口5の閉鎖)させるOFFを一単位とし、この一単位の動作で一滴の液体材料34を吐出する。図4中、Dが吐出パルス14の長さである。他方、符号15のように、パルス信号のOFF状態が続くときには、ピストン2を作動させず、一の休止パルス15につきノズル入口5が一単位(すなわちSの時間単位)の間閉鎖される。図4中、Sが休止パルス15の長さである。
【0056】
ワーク30の辺に沿って塗布を行う際には、制御部11は、塗布開始と同時にノズル4を移動させながら吐出装置1へ予め設定したパルス信号(符号14、15)を発信し、連続的に液体材料34の吐出を行う。ワーク30の一辺に沿って吐出された液体材料34は、ワーク30と基板29との隙間に毛細管現象により充填されていく。
【0057】
[塗布装置]
本実施例の塗布装置16は、図5に示すように、吐出装置1と、XYZ駆動機構17と、搬送機構18と、塗布ステージ19と、調整用基板20およびこれを載置する調整用ステージ21と、秤量器22と、検出装置(タッチセンサ23、レーザー変位計24およびカメラ25)と、制御部11と、を備える。
【0058】
吐出装置1は、上述したジェット式吐出装置であり、制御部11からのパルス信号(符号14、15)を受け、液体材料34を吐出する。
XYZ駆動機構17には、吐出装置1と後述する検出装置の一部であるレーザー変位計24およびカメラ25が設置され、吐出装置1並びにレーザー変位計24およびカメラ25を符号26で示すXYZ方向へ移動させることができる。すなわち、制御部11に設定した塗布パターンに基づき、基板の上方で吐出装置1を移動させたり、秤量器22や別位置に固定されている後述する検出装置の一部であるタッチセンサ23といった機器や、後述する調整用基板20を載置した調整用ステージ21まで吐出装置1並びにレーザー変位計24およびカメラ25を移動させることができる。
【0059】
搬送機構18は、塗布作業を行う前のワーク30を載置した基板29を装置外の符号27で示す方向から搬入し、塗布作業を行う吐出装置1近くまで搬送を行う。そして、塗布作業を終えた基板29を装置外の符号28で示す方向へ搬出する。
塗布ステージ19は、搬送機構18ほぼ中央の搬送機構18の間に設置される。塗布作業を行う際は、上昇して基板29を固定する役割を果たす。基板29の搬送時には、下降して搬送の妨げにならないようにする。
【0060】
調整用ステージ21は、搬送機構18の近傍に設置される。素の基板、すなわち部品等が実装されていない基板やダミーのワークを実装した基板(これらを総称して調整用基板20と呼ぶ)をその上に載置して、液体材料34の吐出量の調整作業に伴う作業を行うためのものである。
秤量器22は、吐出装置1より吐出される液体材料34の重量を測るためのものであり、搬送機構18の近傍に設置される。秤量器22による計測結果は制御部11へと伝えられる。
【0061】
検出装置は、ノズル4の高さ位置を検出するセンサであるタッチセンサ23、基板29の高さ位置を検出するセンサであるレーザー変位計24、ワーク30の位置を検出するカメラ25とを備える。レーザー変位計24およびカメラ25は、吐出装置1と共にXYZ駆動機構17に設置され、XYZ方向(符号26)へ移動可能である。タッチセンサ23は、調整用ステージ21に固設される。
制御部11は、塗布装置16全体の動作を制御する全体制御部と、吐出装置1の動作を制御する吐出制御部とからなる。
【0062】
[塗布作業]
上述の塗布装置16を用いた一連の塗布作業の流れについて次に説明する。図6にそのフローチャートを示す。
前述のパルスに関するパラメータ(ON/OFF時間や組み合わせる割合)に加え、吐出装置1の吐出量変更因子(ノズル径、ストローク量、印加圧力等)を調整して、安定して吐出が行える条件を探し、設定する(STEP601)。この作業は、液体材料34を実際に塗布した結果である重量や径などを測りながら行うとよい。またこのとき、液体材料34がノズル4先端に過剰に付着していないか、塗布した結果である液滴が複数個に分かれて飛散していないかなども併せて確認するのが好ましい。
【0063】
次いで、前述の実施の形態で説明した吐出量補正工程(STEP209〜211参照)を実施する(STEP602)。吐出量補正工程は、補正周期に達したときだけでなく、準備段階で実施することでも効果を発揮できる。補正工程終了後、本塗布を開始する前に、素の基板やダミーの基板を用いて試験塗布を行い、最終確認をする(STEP603)。この試験塗布は、実際の部品等が実装された基板を用いることが好ましい。最終確認をして、不良があればSTEP601の条件を見直し、不良がなければ本塗布作業を開始する(STEP604)。
【0064】
本塗布作業が開始されると、まず、基板29が搬入され、吐出装置1近くまで搬送された後、塗布ステージ19に固定される(STEP605)。そして、塗布ステージ19上の基板29に対してカメラ25による画像認識を行い、アライメントを実行して位置合わせを行う(STEP606)。なお、アライメントに用いる基準となる画像は予め制御部11へ記憶しておく。位置合わせを終えた後、塗布が行われる(STEP607)。塗布を終えた基板29は、塗布装置16外へ搬出される(STEP608)。
塗布を終えた基板29を装置16外へ搬出した時点で、予め設定した補正周期(ワークの数や基板の枚数)に達したかどうかを判断する(STEP609)。補正周期に達している場合には、次ステップである補正工程へ進み、補正周期に達していない場合は、STEP611に進む。
【0065】
補正工程では、吐出装置1を秤量器22上へ移動し、吐出を行い、重量を計測する。計測の結果、許容範囲を越える場合には、前述の実施の形態で説明した吐出量補正工程(STEP209〜211)を実施する(STEP610)。逆に、許容範囲を越えていない場合には、STEP611へ進む。
補正工程を終えた後、或いは基板29を搬出してすぐに、続けて塗布すべき未塗布の基板29が有るかどうかを判断する(STEP611)。未塗布の基板29がある場合には、STEP605へ戻り、再び基板29を搬入して塗布作業を行う。未塗布の基板29がない場合には、本塗布作業は終了となる。
以上が、準備段階から本塗布作業までの基本的な一連の流れである。なお、ここで示したのは一例であって当該手順に限定されるものでなく、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができる。
【0066】
[パルス数算出に関する計算式]
前述の実施の形態では、一の吐出パルスに対する休止パルスの数を算出した上で、これらの組み合わせを基本サイクルとして塗布領域毎に設定した。しかし、本実施例では、塗布領域の長さにわたって所望の吐出率を実現するよう、吐出パルス数および休止パルス数を算出し、塗布する。具体的には以下のようにする。
【0067】
まず、一の吐出パルスの長さ(ON時間とOFF時間を足し合わせた時間)をD、一の休止パルスの長さ(ON時間とOFF時間を足し合わせた時間)をSとし、各領域の吐出パルスの数をn、各領域の休止パルスの数をmとする。また、吐出装置とワークの相対移動速度をV、各塗布領域の吐出率をC、各塗布領域の長さをXとする。なお、添字iは塗布領域の番号を表し、図1では、iは1、2、3のいずれかである。
時間を基準とすると、吐出装置がある塗布領域を通過するのに要する時間のうち、吐出パルスが占める割合が吐出率であるので、次のような式が成り立つ。
【0068】
[式8]

【0069】
この式より各塗布領域の吐出パルスの数nは次のように算出できる。
【0070】
[式9]

【0071】
一方、吐出装置が有る塗布領域を通過するのに要する時間のうち、吐出パルスが占めていない部分は、休止パルスが占める割合であるので、次のような式が成り立つ。
【0072】
[式10]

【0073】
この式より各塗布領域の休止パルスの数mは次のように算出できる。
【0074】
[式11]

【0075】
上記式9および式11を用いて、各塗布領域での吐出パルスと休止パルスの数を算出する。そしてそれを塗布パターンに設定する。
【0076】
具体的な例を挙げて説明する。塗布パターンを図1と同じと考え、一の吐出パルスの長さDを6[msec]、一の休止パルスの長さSを0.01[msec]、移動速度Vを50[mm/s]とし、塗布領域XおよびXの長さを5[mm]、吐出率を40%、並びに塗布領域Xの長さを10[mm]、吐出率を80%とする。
塗布領域XおよびXの吐出パルスの数は、式9より7個となり、塗布領域XおよびXの休止パルスの数は、式11より6000個となる。一方、塗布領域Xの吐出パルスの数は、式9より27個となり、塗布領域Xの休止パルスの数は、式11より4000個となる。
このようにして求めた各パルス数を各塗布領域の長さにわたって振り分け、塗布パターンに設定する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、吐出された液体材料が、塗布対象物に接触する前にノズルから離間するタイプの吐出装置を用いた塗布に応用可能である。当該吐出装置としては、例えば、弁座に弁体を衝突させて液体材料をノズル先端より飛翔吐出させるジェット式、プランジャタイプのプランジャを移動させ、次いで急激に呈しして、同じくノズル先端より飛翔吐出させるプランジャジェット式、連続噴射方式あるいはオンデマンド方式のインクジェット式などである。
なお、本発明を半導体パッケージングのアンダーフィル工程に利用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1:吐出装置 2:ピストン 3:貯留容器 4:ノズル 5:ノズル入口 6:切換弁 7:スプリング 8:ストローク調整手段 9:ヒータ 10:温度センサ 11:制御部 12:気体配管 13:電気配線 14:吐出パルス 15:休止パルス 16:塗布装置 17:XYZ駆動機構 18:搬送機構 19:塗布ステージ 20:調整用基板 21:調整用ステージ 22:秤量器 23:タッチセンサ 24:レーザー変位計 25:カメラ 26:移動方向 27:搬入方向 28:搬出方向 29:基板 30:ワーク(半導体チップ) 31:突起状電極(バンプ) 32:電極パッド 33:接続部 34:樹脂、液体材料 35:隅肉部分、フィレット 36:フィレット幅 37:フィレット高さ 38:塗布方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とその上に載置されたワークとの間隙に毛細管現象を利用して吐出装置から吐出した液体材料を充填する液体材料の塗布方法であって、
連続した複数の塗布領域からなる塗布パターン作成工程と、
一の吐出パルスに複数の休止パルスを所定の比率で組み合わせたサイクルを複数作成し、各塗布領域に割り当てるサイクル割当工程と、
各塗布領域について割り当てられたサイクルで塗布を実施する塗布工程と、
予め設定した補正周期で、補正周期の時点における吐出装置からの吐出量を計測し、吐出量の補正量を算出する補正量算出工程と、
前記補正量算出工程で算出した補正量に基づき、1以上のサイクルについて、一の吐出パルスに対する休止パルスの比率を調整する吐出量調整工程と、
を含み、休止パルスの長さを吐出パルスの長さと比べ充分に短く設定したことを特徴とする液体材料の塗布方法。
【請求項2】
休止パルスの長さが吐出パルスの長さの20分の1以下であることを特徴とする請求項1記載の液体材料の塗布方法。
【請求項3】
前記サイクル割当工程において、各サイクルに同じ長さの吐出パルスおよび同じ長さの休止パルスを割り当てることを特徴とする請求項1または2記載の液体材料の塗布方法。
【請求項4】
前記吐出量調整工程において、吐出パルスおよび休止パルスの長さを変えないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体材料の塗布方法。
【請求項5】
前記吐出量調整工程において、塗布パターンの全長および各塗布領域の長さを変えないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体材料の塗布方法。
【請求項6】
前記吐出量補正工程において、吐出装置とワークとの相対移動速度を変えることなく吐出量の補正を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体材料の塗布方法。
【請求項7】
前記補正量算出工程以前の工程において、補正を行うかを判断する許容範囲を設定し、許容範囲を越える場合に補正を実行することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体材料の塗布方法。
【請求項8】
前記補正周期は、ユーザーが補正周期として入力した時間情報、ワークの枚数、または基板の枚数に基づき設定されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の液体材料の塗布方法。
【請求項9】
前記吐出量調整工程において、複数サイクルについて、一の吐出パルスに対する休止パルスの比率を調整することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の液体材料の塗布方法。
【請求項10】
液体材料を供給する液材供給部と、液体材料を吐出する吐出口を有する吐出装置と、吐出口より吐出された液体材料の量を計量する計量部と、吐出口とワークとを相対移動させる駆動機構と、これらの作動を制御する制御部とを備える塗布装置において、制御部に請求項1ないし9のいずれかに記載の塗布方法を実施させることを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
液体材料を供給する液材供給部と、液体材料を吐出する吐出口を有する吐出装置と、吐出口より吐出された液体材料の量を計量する計量部と、吐出口とワークとを相対移動させる駆動機構と、これらの作動を制御する制御部とを備える塗布装置において、制御部に請求項1ないし9のいずれかに記載の塗布方法を実施させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−148235(P2012−148235A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8648(P2011−8648)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】