液体漏洩検出器、液体搬送装置及び液体漏洩検出方法
【課題】液体漏洩の誤検出の発生を防ぎ、液体漏洩を正確に検出する。
【解決手段】液体配管の液体漏洩懸念位置5に固定され液体漏洩懸念位置5から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部1Aと、液体漏洩懸念位置5及び第一の液体検出部1Aを外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材3と、第一の液体検出部1Aからの信号に基づいて液体漏洩懸念位置3に液体漏洩が発生しているか否かを判断する制御部と、を備える。
【解決手段】液体配管の液体漏洩懸念位置5に固定され液体漏洩懸念位置5から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部1Aと、液体漏洩懸念位置5及び第一の液体検出部1Aを外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材3と、第一の液体検出部1Aからの信号に基づいて液体漏洩懸念位置3に液体漏洩が発生しているか否かを判断する制御部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染水などの液体漏洩を検出する液体漏洩検出器、この液体漏洩検出器を備える液体搬送装置及び液体漏洩検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全性あるいは環境保護の観点から、有機溶媒や薬品の汚染水などの漏洩検出技術に対する要望が高まっている。このような漏洩検出技術の一つとして、プラスチッククラッドファイバ(Plastic Clad Fiber,PCF)を用いたものが従来から知られている。この技術では、吸液性材料からなるクラッド材料でコア材料を被覆した光ファイバを用いており、液体が付着または浸透したクラッド部の屈折率が変化することで、光ファイバ中の光伝播損失が増加することを利用して漏洩が検出される。加えてこの技術では、OTDR(Optical Time-domain Reflectmeter)装置などによって光ファイバ中の光線路方向の伝播損失分布を測定して漏洩箇所が検出される。
【0003】
また、特許文献1には、液体の浸潤により膨潤する材料を用いて光ファイバを曲げることによって伝播損失が増加することを利用した漏洩検出技術も提案されている。
【0004】
また、近年インクジェット(IJ)プリンタは、家庭用の印刷用途のみならずオフィス用やリテールフォト用などの業務用の印刷用途、あるいは電子回路描画やフラットパネルディスプレイ製造など産業用途にも使用され、その用途は広がりつつある。このような業務用IJプリンタの記録ヘッドは、高速印刷性能が要求される。しかし、印刷速度が高い場合、インク供給部からインク漏洩が起こった場合、漏洩を瞬時に検出して記録動作を直ちに停止しなければ、商品である印刷物の不良数が短時間で増大してしまい、損失が拡大してしまう。
【0005】
また、業務用プリンタでは、大量印刷を行うためにインクタンクを大型にする必要性があるので、記録ヘッドとインクタンクを分離してインクチューブでインクを供給する、所謂オフ・キャリッジ方式とすることが多い。この場合、タンクと記録ヘッドをインクチューブで接続し、インクタンク内を加圧して記録ヘッドへ供給することがあり、この場合、微小なインク漏洩でも加圧インクがプリンタ内部に飛散し易く、プリンタ内の汚染や腐食損傷の範囲が広がり易いという恐れがある。このため、インク漏れを瞬時にかつ正確に検出することが求められている。また、業務用プリンタでは、コンシューマ向けプリンタと異なり、設備稼動効率を向上するために、待機時間よりも印刷動作時間を長くしたいという要望がある。このため、業務用プリンタでは、インク供給を中断することなく常時、インク漏洩の検出が可能な技術が求められている。
【0006】
従来、インク供給中にも常時インク漏洩検出を行う方法として、
[1]インクの導電性を利用して漏洩検出用電極で検出する方法(特許文献2、3)、
[2]インク検出部の反射率または透過光量の変化を検出する方法(特許文献4)、
[3]インクの接触により形状変化を起こすインク検出部材で検出する方法(特許文献5、6)、
などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63―266340号公報
【特許文献2】米国特許6402277号明細書
【特許文献3】特登録03162547号公報
【特許文献4】特登録03288921号公報
【特許文献5】特開平06−340089号公報
【特許文献6】特開2006−231803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したPCF型の液体漏洩検出器や特許文献1に記載の構成は、例えば汚染廃水などの液体配管における漏洩監視に用いた場合に、漏洩を誤検出してしまう問題がある。すなわち、上述した構成では、漏洩が発生していない状態で、液体配管の周囲が高湿度になったり結露が発生したりすることで、PCFや膨潤材へ水滴が付着した場合であっても、漏洩として誤って検出してしまう。
【0009】
また、通常、IJプリンタ内では、インク滴が微小なインクミストになって浮遊しており、プリンタ内の様々な構成部材の表面にインクミストが付着堆積する現象が発生する。このため、特許文献2〜6に記載の構成では、インクミストが液体検出部に付着して堆積した場合にも、インク漏洩として誤って検出してしまう問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、液体漏洩の誤検出の発生を防ぎ、液体漏洩を正確に検出することができる液体漏洩検出器、液体搬送装置及び液体漏洩検出方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明に係る液体漏洩検出器は、被検出体の液体漏洩懸念位置に固定され、液体漏洩懸念位置から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部と、液体漏洩懸念位置及び第一の液体検出部を外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材と、第一の液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩懸念位置に液体漏洩が発生しているか否かを判断する判断部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体漏洩の誤検出の発生を防ぎ、液体漏洩を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】液体検出部として電気的手段を用いた、第一の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図2】液体検出部として光学的手段を用いた、第一の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図3】図2における、光ファイバ対及び吸収体の配置を示す模式図である。
【図4】液体検出部としてPCFを用いた、第一の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図5】液体検出部として電気的手段を用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図6】液体検出部として電気的手段を用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び液滴付着発生時の状態を示す模式図である。
【図7】液体検出部として光学的手段を用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図8】液体検出部としてPCFを用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び液滴付着発生時の状態を示す模式図である。
【図9】液体検出部として電気的手段を用いた、第二の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図10】液体検出部として光学的手段を用いた、第二の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図11】液体検出部としてPCFを用いた、第二の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図12】図2に示した液体漏洩検出器が記録ヘッド近傍に搭載されたIJプリンタの断面を示す模式図である。
【図13】図2に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタのインクチューブ部を示す模式図である。
【図14】図2に示した液体漏洩検出器が搭載されたインクチューブのコネクタ近傍の断面を示す模式図である。
【図15】実施形態の液体搬送装置における、制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】図1に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】図2に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図18】図6に示した液体漏洩検出器が搭載された廃水搬送装置において、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図19】図2に示した液体漏洩検出器を備える廃水搬送装置において、漏洩を修復した後に漏洩監視を再開する場合に、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定まるものであり、以下の記載は本発明の範囲を限定するものではない。例えば、以下に記載されている形状、配置等は、この発明の範囲を限定するものではない。
【0015】
(第一の実施形態)
まず、第一の実施形態の液体漏洩検出器について詳細に説明する。
【0016】
第一の実施形態の液体漏洩検出器は、被検出体としての液体配管における液体漏洩懸念位置に固定され液体漏洩懸念位置から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部としての液体検出部を備えている。また、液体漏洩検出器は、液体漏洩懸念位置及び液体検出部を外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材と、液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩懸念位置に液体漏洩が発生しているか否かを判断する判断部としての制御部とを備えている。
【0017】
(電気的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例)
図1は、第一の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部として電気的手段を用いる構成例である。この構成例では、検出対象が導電性液体に限られる。図1に示すように、液体漏洩検出器は、液体配管における液体漏洩懸念位置5の近傍に固定された一対の電極4を有する液体検出部1Aと、液体漏洩懸念位置5及び液体検出部1Aを外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材3と、を有している。
【0018】
一対の電極4は、液滴漏洩懸念位置を構成する空隙を挟んで配置されている。電極4は、制御部(図示せず)に電気的に接続されており、導電性を有し、好ましくは耐腐食性材料、例えば貴金属やカーボンなどからなることが好ましい。電極が、腐食により表面に酸化物など絶縁性被膜を形成する材料である場合、漏洩が発生したときに、電極間で導通が阻害されたままとなり、漏洩検出ができなくなる恐れがある。また、電極4間に印加する電圧は、漏洩検出時に液体及び電極自身の電気分解が起こらないような電圧に設定することが安全上、好ましい。
【0019】
液体不浸透性部材3は、液体検出部1Aにおける、液体漏洩懸念位置5との固定面以外の外気と触れる面の全面を覆うように形成されている。なお、ここで、液体漏洩懸念位置5との固定面とは、液体漏洩懸念位置5を構成する部材と液体検出部1Aとが当接する面を意味する。液体不浸透性部材3は、検出対象となる液体を一対の電極4間の空隙から隔離する機能を有しており、液体と化学反応を起こさない材料によって形成されている。
【0020】
液体漏洩懸念位置5は、液体流路において特に漏洩発生が懸念される箇所である。具体的に、液体漏洩懸念位置5としては、流路と、流路のコネクタ部、流路部材同士の連結部、変形が繰り返される箇所、振動や温度変動に繰り返し曝される箇所、流路部材を腐食させる環境に曝される箇所、などが挙げられる。また、液体漏洩懸念位置5は、流路経路内の複数箇所に存在していても良く、流路の全領域であっても良い。流路の全領域の漏洩を監視する場合、多数の液体検出部が必要になったり、液体検出部が大きくなったりするので、特に漏洩が懸念される箇所のみを監視する構成がコストの観点から好ましい。
【0021】
(漏洩検出動作)
図1を参照して、上述した構成からなる液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩時の状態及び検出動作を説明する。なお、本実施形態において、液体としての「インク」には、印刷用のカラーインクのみならず、定着用などの無色インク、電子回路描画用の金属微粒子含有インク、FPD(Flat Panel Display)製造用液体等の各種塗布材料なども含まれる。FPD製造用液体としては、例えば液晶表示装置用カラーフィルタ材料や有機EL発光材料が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、液体漏洩懸念位置5から液体(すなわちインク)の漏洩が発生した場合、漏洩したインクである漏洩液体12は一対の電極4間に跨って広がり、導電パスを形成するので、一対の電極4間の電気抵抗が低下する。一対の電極4間の電気抵抗の低下が検出された場合に、制御部はインク漏洩が生じたと判断する。
【0023】
また、IJプリンタでは、通常インクミストがIJプリンタの内部に飛散し、インクミストが液体漏洩懸念位置5近傍に付着して堆積する。図1に示す付着液滴14はこのようなインクミストを示している。漏洩ではなく、インクミストが液体漏洩懸念位置5近傍に付着して堆積しただけの場合、液体検出部1Aは、液体不浸透性部材3で覆われていることにより、一対の電極4間にインクが入り込まないので、電極4間の電気抵抗が変化しない。このため、インク漏洩であると誤検出することが無い。このように、図1に示した液体漏洩検出器では、インクミストによる誤検出が防止され、インク漏洩を正確に検出可能となる。
【0024】
一方、図5に、IJプリンタ用の、電気的検出手段を用いた従来の液体漏洩検出器の構成を示す。図5においては、漏洩が発生して一対の電極4間にインクが接触した場合には、電気抵抗の変化から漏洩を検出できる。しかし、従来の液体漏洩検出器は、液体検出部101を外気から遮断するように覆う液体不浸透性部材103を備えていない。このため、図6に示すように液体漏洩が発生していない状態であっても、一対の電極104間にインクミストが付着して堆積することで、一対の電極104間で導電パスが形成された場合にはインク漏洩として誤検出してしまう。
【0025】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[1])
図2は、第一の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部として光学的手段を用いる構成例である。このような構成とすることで、図1に示した構成とは異なり、導電性液体に加えて、非導電性液体や、ソルベントインクなどの油性液体、更には引火性液体を検出することも可能になるので好ましい。
【0026】
図2において、液体検出部1Bは、液体配管の液体漏洩懸念位置5の近傍に固定され、液体不浸透性部材3によって被覆されている。液体検出部1Bは、吸収体8と、吸収体8の内部に端部が埋め込まれた光ファイバ対7と、を有して構成されている。
【0027】
吸収体8は、液体を吸収し、液体と化学的に反応しない材料からなる多孔体、ゲル、樹脂などからなる。吸収体8は、検出対象となる液体の吸収または透過波長帯域とは異なる吸収または透過波長帯域を有する物質からなる吸収体を用いることが好ましい。あるいは、そのような物質の微粒子を内部に分散させた吸収体を使用することもできる。
【0028】
光ファイバ対7は、一対の導光側光ファイバ11Aと受光側光ファイバ11Bとから構成されており、図3に示すように、導光側光ファイバ11Aと受光側光ファイバ11Bの一端部(検出点)が吸収体8の内部にそれぞれ埋め込まれている。また、液体検出部1Bは、吸収体8に生じた光学的性質の変化を測定する測定手段としての発光部及び受光部を有している。
【0029】
また、導光側光ファイバ11Aの他端部は発光部を構成する光源と光学的に接続されており、受光側光ファイバ11Bの他端部は受光部を構成する受光素子と光学的に接続されている。
【0030】
そして、発光部からの光を導光側光ファイバ11Aの一端部から放射し、受光側光ファイバ11Bの一端部から入射した光を受光部で受光して、吸収体8の内部の光学的性質の変化を測定することによって、液体漏洩懸念位置5に漏洩した液体が検出される。
【0031】
ここで、発光部を構成する光源としては、漏洩の検出対象となる液体に吸収または反射される波長を少なくとも含む光を発生できる光源であれば、光源の構造に特に制限はない。受光部を構成する受光素子は、光源で発生する波長の光を検出する機能を有するものであれば、受光素子の構造に特に制限はない。
【0032】
光ファイバ対7は、吸収体8中で、導光側光ファイバ11Aの端部から光を放射し、同時に受光側光ファイバ11Bの端部から散乱光を受光している。光ファイバ対7近傍の液体漏洩懸念位置5から漏洩が発生した場合、吸収体8内に液体が吸収されることにより、吸収体8内の、光ファイバ対7近傍の部分で散乱光量が変化する。例えば、液体が吸収する波長帯域の散乱光量が低下する。その結果、受光部で受光した散乱光量の変化から、液体の有無を検出することが可能となる。
【0033】
また予め、吸収体内に吸収された単位体積当たりの液体量と、散乱光量の低下量との対応データを取得しておくことにより、その対応データに基づいて受光部で受光した散乱光量から、漏洩検出点における単位体積当たりの液体量の検出が可能となる。
【0034】
上述のように光ファイバ対7は、吸収体8の内部に一対だけが設けられていても良いが、図2に示すように少なくとも二対以上、つまり複数対の光ファイバ対7が吸収体8の内部に設けられている方が、漏洩検出範囲を広く設定できるので好ましい。また、複数対の光ファイバ対7を設けた場合、各対の光ファイバ対7からの信号及び信号の時間的な変化に基づいて、漏洩の有無の検出だけでなく、漏洩位置、漏洩の広がり範囲、広がり速度も検出することが可能となるので好ましい。更に、各対の光ファイバ対近傍における単位体積当たりの液体量、漏洩の広がり範囲、広がり速度のデータを使用することによって、吸収体8中の漏洩液体量及び漏洩レート(単位時間当たりの漏洩液体量)の推定も可能となる。
【0035】
なお、図2においては、各対の光ファイバ対は、一本の光ファイバから分岐しているように図示されているが、各対の光ファイバ対が1つに束ねられて、各対の光ファイバ対がそれぞれ独立して受光素子と光学的に接続されている。
【0036】
(漏洩検出動作の説明)
図2に示した構成の液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩検出動作を説明する。
【0037】
液体漏洩懸念位置5から漏洩が発生した場合、吸収体8内に漏洩インクが吸収されることにより、光ファイバ対7近傍の吸収体8中における散乱光量が変化する。このとき、例えば、インクが吸収する波長帯域の散乱光量が低下する。液体検出部1Bでの散乱光量の低下が検出された場合に、制御部は漏洩が発生したと判断する。また、複数対の光ファイバ対7を設けることで、漏洩の有無の検出だけでなく、漏洩位置及び漏洩レートも検出することが可能となる。
【0038】
一方、漏洩ではなく、付着液滴(この場合はインクミスト)14が液体漏洩懸念位置5に付着して堆積しただけの場合は、液体検出部1Bは、液体不浸透性部材3により吸収体8にインクミストが入り込まない。このため、散乱光量が変化せず、インク漏洩と誤検出することが無い。このように図2に示す液体漏洩検出器では、インクミストによる誤検出が防止され、インク漏洩を正確に検出可能となる。
【0039】
そして、図2に示した実施形態の液体検出部は、OTDR装置を用いた従来の光学的な液体検出部と比べて、更にいくつかの好ましい効果が得られる。
【0040】
PCFを用いた従来の液体漏洩検出器は、一本の光ファイバを備えて構成されているので設置が容易である。しかしながら、従来の液体漏洩検出器は、一度漏洩を検出した場合、液体を吸収した、光ファイバのクラッド部のみを剥離交換することが不可能であるので、光ファイバ全体の交換が必要となる。また、上述した特許文献1に記載の液体漏洩検出器においても、漏洩検出後に光ファイバに曲げ変形が残留してしまうので、漏洩検出後に、光ファイバ毎の交換が必要になる。
【0041】
これに対し、図3に示す構成の実施形態の液体検出部は、漏洩検出後に吸収体を交換することが容易であり、吸収体以外の部品を再利用可能であるので、漏洩監視にかかるコストを抑えることができる。
【0042】
また、PCFや特許文献1に記載の液体検出部では、OTDR装置により液体漏洩懸念位置での液体を検出しているが、その位置分解能は概ね1cm〜10cm程度である。このため、液体漏洩懸念位置(例えばコネクタ部)の寸法が位置分解能よりも小さい場合には、漏洩発生を検出できるが、漏洩箇所を特定することが困難となる。
【0043】
これに対し、図3に示した実施形態の液体検出部では、複数対の光ファイバ対7が設けられ、かつ各光ファイバ対7の間の間隔を1cm以下に設定することができる。このため、液体漏洩懸念位置が小さい場合であっても、漏洩発生と、漏洩箇所とを特定することが可能になる。なお、各光ファイバ対7の間の間隔は、散乱光が互いに干渉しないように散乱距離以上に設定することが好ましい。しかし、例えば吸収体の光学的性質を制御したり、あるいは吸収体内部に非透光性部材の仕切りを設けたりすることで、各光ファイバ対7の間の間隔を小さくして、液体検出部での位置分解能を高めることが可能である。
【0044】
さらに、図3に示した実施形態の液体検出部では、例えばインクタンクと記録ヘッドを連結するインクチューブや可動コネクタなど、液体供給動作中に自由に曲がる自在配管においても、誤検出が無い漏洩監視を行うことが可能である。一方、OTDR法による光ファイバ中の伝播損失測定を用いた従来の液体検出部では、自在配管にPCFを設置した場合、漏洩による伝播損失増加以外に、自在配管の曲がり動作による伝播損失増加が加わるので、感度の低下や誤検出を招いてしまう。
【0045】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[2])
図4は、第一の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、図3に示した構成例と同様に、液体検出部として光学的手段を用いた構成例であり、導電性液体に加えて、非導電性液体あるいは油性液体、ソルベントインク、引火性液体の検出も可能である。図4に示すように、液体検出部1は、一本のPCF9を有しており、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定されており、液体不浸透性部材3によって被覆されている。PCF9は、クラッド部13を有しており、両端が発光部を構成する光源(図示せず)及び受光部を構成するOTDR装置10に光学的にそれぞれ接続されている。PCF9は、液体不浸透性部材3によって覆われている。
【0046】
(漏洩検出動作)
図4に示した構成の液体漏洩検出器が搭載された液体搬送装置における具体的な漏洩検出動作を説明する。
【0047】
PCF9に光学的に接続された測定手段としてのOTDR装置10は、PCF9内の光伝播損失を常時または定期的に測定している。そして、漏洩発生時には、漏洩液体12がPCF9に接触することにより、PCF9中の伝播損失が増加する。PCF9での伝播損失の増加が検出された場合に、制御部は液体漏洩(廃水漏洩)であると判断する。また、OTDR装置10によって光線路方向の伝播損失分布を測定することで、廃水漏洩の有無を検出するのに加えて、漏洩位置も検出することが可能となる。
【0048】
一方、廃水漏洩ではなく、付着液滴14(ここでは、結露水滴14)が液体漏洩懸念位置5に付着しただけの場合、PCF9は、液体不浸透性部材3によってクラッド部13への水滴付着が防止されるので、伝播損失が増加しない。このため、制御部は廃水漏洩であると誤検出することがない。
【0049】
このように図4に示す液体漏洩検出器によれば、廃水漏洩の誤検出の発生を防止し、廃水漏洩を正確に検出することができる。また、本実施形態の液体漏洩検出器を利用することで、廃水漏洩の誤検出による液体搬送の停止を防ぎ、安定動作が可能な液体搬送装置を提供することができる。
【0050】
図7に、汚染廃水配管用の、PCFを用いた従来の液体漏洩検出器の模式図を示す。図7に示すように、従来の液体漏洩検出器は、液体漏洩懸念位置105に漏洩が発生してPCF109に廃水が接触した場合に、OTDR装置110によって漏洩を検出できる。しかし、従来の液体検出器は、PCF109を覆う液体不浸透性部材103を備えていないので、図8に示すように漏洩が発生していない状態であっても、結露水滴114がPCF109に付着した場合に、漏洩発生であるとして誤検出してしまう。
【0051】
以上、電気的及び光学的な液体検出部を用いた場合の、第一の実施形態の構成例について説明したが、液体検出部としてはこれらに限定されない。液体検出部は、例えば、液体と化学的に反応する吸収体を使用する方法や、吸収体の色変化または温度変化をカメラで撮影し、これを画像認識処理によって検出する方法、などが用いられてもよい。このような方法であっても、第一の実施形態の構成を採用することによって、誤検出の発生を防止し、正確な漏洩検出が可能となることは明らかである。
【0052】
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態の液体漏洩検出器について説明する。
【0053】
第二の実施形態の液体漏洩検出器は、第一の実施形態における液体検出部を第一の液体検出部として備えると共に、第一の液体検出部に隣接して配置され、外気に露出された液滴付着懸念位置に付着した液滴を検出する第二の液体検出部を備えている。また、液体漏洩検出器は、第一の液体検出部と第二の液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩及び液滴付着の少なくともいずれか一方が発生しているか否かを判断する判断部を備えている。
【0054】
第一の液体検出部は漏洩液体を検出し、第二の液体検出部は付着液滴のみを検出する。なお、第二の液体検出部によって検出される液滴付着懸念位置は、第一の液体検出部によって検出される液体漏洩懸念位置5の近傍に位置している。本実施形態は、第一の液体検出部に加えて第二の液体検出部を更に備えることによって、漏洩液体と付着液滴とを個別に検出することが可能になる。例えば、第二の実施形態の液体漏洩検出器が用いられたIJプリンタは、インク漏れを検出するのに加えて、インクミストを検出することが可能になる。このような構成とすることで、インク流路からの漏洩監視と同時に、インクミストの堆積監視を行うことができ、多量のインクミスト堆積によって起こるIJプリンタの部品腐食や印刷物へのインク垂れを未然に防止することができるので好ましい。
【0055】
(電気的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例)
図9に、第二の実施形態の、導電性液体の液体漏洩検出器の一例の模式図を示す。図9に示すように、本実施形態の導電性液体の液体漏洩検出器は、第一の液体検出部としての第一の液体検出部1Aが、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定され、液体不浸透性部材3によって被覆された一対の電極4を有して構成されている。第二の液体検出部2Aは、液体不浸透性部材3を介して液体漏洩懸念位置5の近傍で外気に露出して固定された一対の電極4を有して構成されている。本実施形態において、液体不浸透性部材3、電極4、液体漏洩懸念位置5の構成は、図1に示した構成と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
(漏洩検出動作)
図9に示す構成の液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩検出動作を説明する。図9に示すように、液体漏洩懸念位置5から液体(すなわちインク)漏洩が発生した場合、漏洩液体12は、一対の電極4間に広がり、導電パスを形成するので、一対の電極4間の電気抵抗が低下する。第一の液体検出部1における電気抵抗の低下が検出された場合に、制御部はインク漏洩が生じたと判断する。
【0057】
インク漏洩ではなく、インクミストが液体漏洩懸念位置5に付着して堆積した場合には、第一の液体検出部1Aは、液体不浸透性部材3により一対の電極4間にインクが入り込まないので、一対の電極4間の電気抵抗が変化しない。一方、第二の液体検出部2Aでは一対の電極4間の電気抵抗が低下する。第二の液体検出部2Aでの電気抵抗の低下が起こった場合に、制御部はインクミストの付着であると判断する。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の液体漏洩検出器では、インクミストの付着による誤検出が防止されるだけでなく、液体漏洩とインクミストの付着とを個別に検出することが可能となる。
【0059】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[3])
図10は、第二の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部として光学的手段を用いる構成例である。
【0060】
図10に示すように、本実施形態の液体漏洩検出器は、第一の液体検出部としての第一の液体検出部1Bを有しており、第一の液体検出部1Bが、液体配管の液体漏洩懸念位置5の近傍に固定され、液体不浸透性部材3によって被覆されている。第二の液体検出部2Bは、液体不浸透性部材3を介して液体漏洩懸念位置5の近傍で外気に露出して固定された吸収体8の内部に光ファイバ対7の一端が挿入されている。本実施形態において、液体検出部1、液体不浸透性部材3、液体漏洩懸念位置5、光ファイバ対7、吸収体8の構成は、図2に示した構成と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
(漏洩検出動作)
図10に示す構成の液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩検出動作を説明する。図10に示すように、液体漏洩懸念位置5から液体(すなわちインク)漏洩が発生した場合、吸収体8内にインクが吸収されることにより、光ファイバ対7近傍の吸収体8中で散乱光量が変化する。例えば、インクが吸収する波長帯域の散乱光量が低下する。第一の液体検出部1Bでの散乱光量の低下が検出された場合に、制御部は、インク漏洩と判断する。
【0062】
インク漏洩ではなく、インクミストが液体漏洩懸念位置5に付着して堆積した場合、第一の液体検出部1Bは、液体不浸透性部材3により吸収体8にインクが入り込まないので、光ファイバ対7からの散乱光量が変化しない。一方、第二の液体検出部2Bは散乱光量が低下する。第二の液体検出部2Bで散乱光量の低下が起こった場合に、制御部はインクミストの付着と判断する。
【0063】
以上のように構成された本実施形態の液体漏洩検出器では、インクミストの付着による誤検出が防止されるだけでなく、インク漏洩とインクミストの付着とを個別に検出することが可能となる。
【0064】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[4])
図11は、第二の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部としてPCFを用いる構成例である。
【0065】
図11に示すように、実施形態の液体漏洩検出器は、第一の液体検出部1Cを有しており、第一の液体検出部1Cが、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定された一本のPCF9からなり、液体不浸透性部材3によって被覆されている。また、第二の液体検出部2Cは、第一の液体検出部1CのPCF9を共有しており、液体不浸透性部材3を介して、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定されている。本実施形態において、液体不浸透性部材3、電極4、液体漏洩懸念位置5、PCF9の構成は、図4に示した構成と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
(漏洩検出動作)
図11に示す構成の液体漏洩検出器が搭載された廃水搬送装置における具体的な漏洩検出動作を説明する。
【0067】
液体漏洩懸念位置5から漏洩が発生した場合、廃水がPCF9に接触することにより、PCF9中の伝播損失が増加する。この変化をOTDR装置10によって光線路長方向での伝播損失分布を測定し、第一の液体検出部1Cでの伝播損失の増加が検出された場合、制御部は廃水漏洩が生じたと判断する。また、PCF9における伝播損失分布から漏洩位置も検出することが可能である。
【0068】
一方で、廃水漏洩ではなく、液体配管の表面で結露が起こっただけの場合には、第一の液体検出部1CのPCF9は、液体不浸透性部材3によってクラッド部13への付着液滴14の付着が防止されるので、伝播損失が増加しない。一方、第二の液体検出部2Cでは、伝播損失が増加する。したがって、第一の液体検出部1Cで伝幡損失が増加せずに、かつ第二の液体検出部2Cでの伝播損失の増加が起こった場合、制御部は、液体流路である液体配管の外部に水滴が付着したと判断する。
【0069】
以上のように構成された本実施形態の液体漏洩検出器によれば、付着液滴14の付着による誤検出が防止されるだけでなく、廃水漏洩と水滴付着とを個別に検出することが可能になる。
【0070】
(IJプリンタへの応用例)
図12は、図2に示した構成の液体漏洩検出器が記録ヘッド近傍に取り付けられた実施形態のIJプリンタの一例を示す断面図である。インクを噴射する機能を有するノズルチップ21は、ノズルチップ支持体19に固定されており、フレキシブル回路基板20と電気的に接続されている。ノズルチップ21は、ノズルチップ支持体19内に設けられたインク流路を介してインクが供給され、フレキシブル回路基板20からの電気信号に基づいて所定のノズルから所定のタイミングでインクを噴射する。
【0071】
流路部材15とノズルチップ支持体19とを連結する箇所は、シール部であるゴム部材16の劣化や、部材の取り付けミスなどにより、漏洩が懸念される箇所である。このような連結箇所に実施形態の液体漏洩検出器を配置する場合、流路部材15の外側(図12において最も左側に図示した液体漏洩検出器が配置された場所)に限らず、流路部材15の内側(図12における位置Aや位置B)に液体漏洩検出器が配置されてもよい。このように配置することで、迅速に漏洩液体を検出することが可能となるので好ましい。一方、液体漏洩ではなく、付着液滴(この場合はインクミスト)14が連結箇所に付着して堆積しただけの場合には、液体不浸透性部材3や流路部材15によって吸収体8にインクミストが入り込まないので、インク漏洩であると誤検出することが無い。
【0072】
図13は、オフ・キャリッジ式のIJプリンタの記録ヘッドとインクタンクとを連結するインクチューブに、図2に示す構成からなる液体漏洩検出器を取り付けた実施形態の一例を示す斜視図である。図13に示す構成では、4色(CMYK)用の4本のインクチューブ18を有しており、インクチューブ18同士が連結されて束ねられている。インクチューブ18は、外周部に液体不浸透性部材3及び吸収体8が巻かれて覆われており、吸収体8の複数箇所に光ファイバ対7の一端がそれぞれ埋め込まれている。
【0073】
インクチューブ18から漏洩が生じた場合には、漏洩したインクの一部が吸収体8に吸収され、吸収体8に埋め込まれた光ファイバ対7によって漏洩が検出される。ここで、吸収体8には複数対の光ファイバ対7が配置されているので、漏洩の有無だけでなく、各光ファイバ対7からの信号及び信号の時間的変化を参照することで、漏洩位置や、漏洩レートも検出することが可能になる。一方、漏洩ではなく、付着液滴(この場合はインクミスト)14が連結箇所に付着して堆積しただけの場合には、液体不浸透性部材3により吸収体8にインクミストが接触しないので、インク漏洩であると誤検出することが無い。
【0074】
なお、図13に示す構成では、液体漏洩検出器が環状に構成されているが、シート状またはリボン状に構成された液体漏洩検出器をインクチューブ18に巻き付けるように配置されてもよい。このように配置することで、漏洩検出後にインクチューブ18や吸収体8を交換することが容易となり、漏洩監視にかかる手間を少なくすることができる。
【0075】
図14は、図13に示したインクチューブ18を、インクタンクやフィルターボックス等と接続するコネクタ部近傍に、図2に示す構成からなる液体漏洩検出器を取り付けた実施形態の一例である。液体不浸透性部材3及び吸収体8は、コネクタと当接するインクチューブ18の周囲にリング状に配置されている。コネクタ内で漏洩が生じた場合には、漏洩したインクの一部が吸収体8に吸収され、吸収体8に埋め込まれた光ファイバ対7によって漏洩が検出される。ここで、吸収体8は、液体不浸透性部材3により付着液滴(この場合はインクミスト)14から隔離されているので、漏洩ではなくインクミストが連結箇所に付着して堆積しただけの場合にも、インク漏洩であると誤検出することが無い。
【0076】
なお、図13においては、各光ファイバ対7は一本の光ファイバから分岐しているように図示されているが、複数対の光ファイバ対7を1つに束ねた部分7aであり、各対の光ファイバ対7がそれぞれ独立して受光素子と光学的に接続されている。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の液体搬送装置を説明する。
【0078】
第3の実施形態の液体搬送装置は、液体貯蔵部と、液体出口部と、これら液体貯蔵部と液体出口部を連通する液体流路と、液体流路内または液体貯蔵部内の気体部分を加圧する液体搬送手段としての液体搬送ポンプと、を備えている。また、液体搬送装置は、液体貯蔵部、液体出口部、液体流路のいずれかの表面に設けられた第一の実施形態または第二の実施形態の液体漏洩検出器を備えている。また、液体搬送装置は、液体流路の内部または液体貯蔵部の内部の気体部分を大気圧未満に減圧する減圧機構と、液体漏洩検出器が液体漏洩を検出したときに減圧機構をON状態に作動させる制御部と、を備えている。
【0079】
図15は、第3の実施形態の液体搬送装置における、制御部の動作を示すフローチャートの一例である。図15に示すように、液体の搬送を開始したとき(ステップS1)、液体搬送装置の電源をON状態にし、液体の搬送を開始するために液体搬送ポンプを運転開始し始める(ステップS2)。また、液体搬送ポンプの運転開始と同時に液体漏洩検出器からの信号をモニターし、液体漏洩が検出された否かを判断する(ステップS3)。液体漏洩が検出されない場合、制御部は、液体搬送ポンプの運転を継続する(ステップS4)。液体漏洩が検出された場合、制御部は、直ちに液体搬送ポンプを停止する(ステップS5)と共に、減圧機構を作動させてON状態にし(ステップS6)、液体流路の内部の気体部分を大気圧未満にする。
【0080】
その後、制御部は、液体流路内に設けられた圧力計によって、液体流路の内部が大気圧未満に減圧された否かを判断する(ステップS7)。液体流路の内部の減圧が確認できた場合は、ユーザーに漏洩発生を知らせるアラートを発報する(ステップS8)。また、減圧機構に何らかの異常があり、液体流路の内部が減圧されていない場合、漏洩が継続していると考えられるので、漏洩継続のアラームを発報する(ステップS9)。
【0081】
このように、漏洩検出時に自動的に液体流路内を減圧することで、液体流路または液体貯蔵部から漏洩が継続するのを防止することが可能になり、液体搬送装置及び装置周囲への漏液飛散による損害を大幅に低減することができる。更に、漏洩の停止状態と、漏洩の継続状態とをそれぞれ異なるアラートを用いてユーザーに知らせることで、ユーザーによる対処方法の判断を助けることが可能となる。
【0082】
また、液体漏洩検出器が、漏洩位置や漏洩レートも合わせて検出できる構成の場合には、アラームに漏洩位置、漏洩レート、漏洩量などの通知を追加しても良い。これらの情報を表示する等によって通知することで、ユーザーは更に適切に対処判断を行うことが可能になるので好ましい。ここで、漏洩量とは、漏洩検出から流路内の減圧確認までにかかった時間と、漏洩レートとを積算することによって得られる推定値である。
【0083】
(漏洩判断の処理)
図16に、図1に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が行う漏洩判断のためのフローチャートの一例を示す。図16に示すフローチャートは、第一の液体検出部として電気的手段を用いた液体漏洩検出器のように、液体の有無のみを検出する液体漏洩検出器に好適である。図16に示すように、漏洩検出の開始(ステップS11)後、液体検出部1Aで液体が検出された否かを判断する(ステップS12)。液体検出部1Aで液体が検出された場合、制御部は漏洩発生と判断し、漏洩検出信号を出力する(ステップS13)。また、液体検出部1Aで漏洩が検出されない場合、検出状態を継続する。
【0084】
図17は、図2に示した液体漏洩検出器が搭載された液体搬送装置としての廃水搬送装置において、制御部が行う漏洩判断のためのフローチャートの一例を示す。図17に示す処理は、図2に示したように複数の液体検出点を有する液体漏洩検出器などのように、漏洩位置、漏洩広がり、広がり速度などの検出が可能な液体漏洩検出器に好適である。
【0085】
図17に示す処理では、m個の液体検出点を有する液体漏洩検出器が用いられている。図17に示すように、漏洩検出開始後(ステップS21)、制御部は、変数nの初期値を「1」として変数nを生成し(ステップS22)、n番目の液体漏洩検出器の光ファイバ対で液体を検出した否かを判断する(ステップS23)。n番目の液体漏洩検出器の光ファイバ対で液体が検出されない場合、n番目の液体漏洩検出器における液体の有無を1番目〜m番目の液体検出点について順に検出していく(ステップS24A、S24B、S24C)。m番目の液体検出点まで漏洩が検出されない場合には、再び1番目の液体検出点から順に検出していく工程を繰り返す。n番目の液体検出点で液体を検出した場合には、制御部が漏洩検出信号を出力する(ステップS25)。同時に、液体が検出された液体検出点及びこの液体検出点に隣接する液体検出点における液体量をそれぞれ測定し(ステップS26)、各液体検出点における液体量から漏洩量、漏洩位置及び漏洩広がりを算出する(ステップS27)。更に、漏洩広がりとその時間の変化から漏洩レートを算出し(ステップS28)、漏洩範囲と漏洩レートを出力する(ステップS29)。このようにして、ユーザーに漏洩発生を通知すると共に、漏洩状況に関する付加的な情報を出力するので、ユーザーは対処判断を更に適切に行うことが可能となる。
【0086】
図18は、図2に示した液体漏洩検出器を、液体搬送装置としての廃水搬送装置に搭載した場合において、漏洩を修復した後に漏洩監視を再開する際に、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。図18に示す処理は、図2に示した液体漏洩検出器などのように、液体検出部における液体量を測定可能な液体漏洩検出器に好適である。このような処理を制御部が行うことで、一度漏洩を検出した後も、吸収体などの部品を交換することなく、漏洩監視を再開できるので好ましい。
【0087】
図18に示すように、漏洩検出後(ステップS31)、ユーザーが漏洩を修復した場合に、ユーザーによって漏洩修復信号が入力される(ステップS32)。このとき、まず制御部は、液体検出部1Bの吸収体中の液体量を算出する(ステップS33)。続いて、算出された液体量を内部記憶装置に記憶(ステップS34)した後、漏洩監視を再開する(ステップS35)。なお、図示しないが、ここで、液体検出部1Bに何らかの異常が発生したことにより吸収体中の液体量を測定できない場合は、漏洩監視を再開せずに、検出器異常発生信号を出力するようにしても良い。このようにすることで、漏洩監視の再開時に検出機能の自己診断を行うこととなり、検出機能の信頼性が向上するので好ましい。
【0088】
次に、漏洩監視の再開後、制御部は、液体検出部1Bにおける液体量を算出し(ステップS36)、算出された液体量から、記憶されている液体量を減算した差分△Lを計算する(ステップS37)。続いて、制御部は、△L>0を満たすか否かを判断する(ステップS38)。△L>0を満たしている場合は、漏洩監視の再開後に液体検出部に更に液体が漏洩したことを示しているので、制御部が漏洩発生と判断して漏洩検出信号を出力する(ステップS39)。
【0089】
また同様に、第一及び第二の液体検出部を備える液体漏洩検出器を用いる場合は、第一及び第二の液体検出部で液体または液滴の付着を検出したときに、上述と同様に内部記憶装置に液体量を記憶するように構成されてもよい。この構成の場合も、制御部は、その後に第一及び第二の液体検出部で検出された液体量から、内部記憶装置に記憶されている液体量を減算して求められた差分△Lに基づいて検出を行う。
【0090】
図19は、図10に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が行うフローチャートの一例を示す。図19において、漏洩検出の開始(ステップS41)後、制御部は、第二の液体検出部2Bからの信号をモニターし、第二の液体検出部2Bで液体が検出されたか否かを判断する(ステップS42)。第二の液体検出部2Bで液滴が検出されない場合、続いて第一の液体検出部1Bからの信号をモニターし、制御部は、第一の液体検出部1Bで液体が検出された否かを判断する(ステップS43)。
【0091】
第一の液体検出部1Bで液体が検出された場合には、制御部が漏洩検出信号を出力する(ステップS44)。第一の液体検出部1Bで液体が検出されない場合には、再度、第二の液体検出部2Bで液滴の検出を行う。
【0092】
第二の液体検出部2Bで液滴が検出された場合、制御部は、インクミストの付着が起こったと判断して、ミスト付着信号を出力する(ステップS45)。続いて、制御部は、第一の液体検出部1Bからの信号をモニターし、第一の液体検出部1Bで液体が検出された否かを判断する(ステップS46)。第一の液体検出部1Bで液体が検出された場合、制御部は漏洩検出信号を出力する(ステップS44)。第一の液体検出部1Bで液体が検出されない場合、制御部は、続いてミスト付着リセット信号の入力の有無を検出し、ミスト付着リセット信号が入力されたか否かを判断する(ステップS47)。ミスト付着リセット信号が入力された場合、制御部は、ユーザーにミスト付着信号が通知されたと判断し、漏洩検出を停止する(ステップS48)。ミスト付着リセット信号が入力されていない場合、制御部は、ユーザーが装置近くに居らずミスト付着信号がユーザーに通知されていないと判断し、漏洩監視を継続する。このため、ユーザーによるリセット信号の入力時まで、第一の液体検出部での漏洩監視が継続される。このような処理フローを採用することにより、インクミストの付着の検出後に、ユーザーが装置近傍に居ない場合であったとしても、漏洩監視を継続することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
1A 液体検出部
3 液体不浸透性部材
4 電極
5 液体漏洩懸念位置
6 液体
7 光ファイバ対
8 吸収体
10 導光側光ファイバ
11 受光側光ファイバ
12 漏洩液体
13 クラッド部
14 付着液滴
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染水などの液体漏洩を検出する液体漏洩検出器、この液体漏洩検出器を備える液体搬送装置及び液体漏洩検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全性あるいは環境保護の観点から、有機溶媒や薬品の汚染水などの漏洩検出技術に対する要望が高まっている。このような漏洩検出技術の一つとして、プラスチッククラッドファイバ(Plastic Clad Fiber,PCF)を用いたものが従来から知られている。この技術では、吸液性材料からなるクラッド材料でコア材料を被覆した光ファイバを用いており、液体が付着または浸透したクラッド部の屈折率が変化することで、光ファイバ中の光伝播損失が増加することを利用して漏洩が検出される。加えてこの技術では、OTDR(Optical Time-domain Reflectmeter)装置などによって光ファイバ中の光線路方向の伝播損失分布を測定して漏洩箇所が検出される。
【0003】
また、特許文献1には、液体の浸潤により膨潤する材料を用いて光ファイバを曲げることによって伝播損失が増加することを利用した漏洩検出技術も提案されている。
【0004】
また、近年インクジェット(IJ)プリンタは、家庭用の印刷用途のみならずオフィス用やリテールフォト用などの業務用の印刷用途、あるいは電子回路描画やフラットパネルディスプレイ製造など産業用途にも使用され、その用途は広がりつつある。このような業務用IJプリンタの記録ヘッドは、高速印刷性能が要求される。しかし、印刷速度が高い場合、インク供給部からインク漏洩が起こった場合、漏洩を瞬時に検出して記録動作を直ちに停止しなければ、商品である印刷物の不良数が短時間で増大してしまい、損失が拡大してしまう。
【0005】
また、業務用プリンタでは、大量印刷を行うためにインクタンクを大型にする必要性があるので、記録ヘッドとインクタンクを分離してインクチューブでインクを供給する、所謂オフ・キャリッジ方式とすることが多い。この場合、タンクと記録ヘッドをインクチューブで接続し、インクタンク内を加圧して記録ヘッドへ供給することがあり、この場合、微小なインク漏洩でも加圧インクがプリンタ内部に飛散し易く、プリンタ内の汚染や腐食損傷の範囲が広がり易いという恐れがある。このため、インク漏れを瞬時にかつ正確に検出することが求められている。また、業務用プリンタでは、コンシューマ向けプリンタと異なり、設備稼動効率を向上するために、待機時間よりも印刷動作時間を長くしたいという要望がある。このため、業務用プリンタでは、インク供給を中断することなく常時、インク漏洩の検出が可能な技術が求められている。
【0006】
従来、インク供給中にも常時インク漏洩検出を行う方法として、
[1]インクの導電性を利用して漏洩検出用電極で検出する方法(特許文献2、3)、
[2]インク検出部の反射率または透過光量の変化を検出する方法(特許文献4)、
[3]インクの接触により形状変化を起こすインク検出部材で検出する方法(特許文献5、6)、
などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63―266340号公報
【特許文献2】米国特許6402277号明細書
【特許文献3】特登録03162547号公報
【特許文献4】特登録03288921号公報
【特許文献5】特開平06−340089号公報
【特許文献6】特開2006−231803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したPCF型の液体漏洩検出器や特許文献1に記載の構成は、例えば汚染廃水などの液体配管における漏洩監視に用いた場合に、漏洩を誤検出してしまう問題がある。すなわち、上述した構成では、漏洩が発生していない状態で、液体配管の周囲が高湿度になったり結露が発生したりすることで、PCFや膨潤材へ水滴が付着した場合であっても、漏洩として誤って検出してしまう。
【0009】
また、通常、IJプリンタ内では、インク滴が微小なインクミストになって浮遊しており、プリンタ内の様々な構成部材の表面にインクミストが付着堆積する現象が発生する。このため、特許文献2〜6に記載の構成では、インクミストが液体検出部に付着して堆積した場合にも、インク漏洩として誤って検出してしまう問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、液体漏洩の誤検出の発生を防ぎ、液体漏洩を正確に検出することができる液体漏洩検出器、液体搬送装置及び液体漏洩検出方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明に係る液体漏洩検出器は、被検出体の液体漏洩懸念位置に固定され、液体漏洩懸念位置から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部と、液体漏洩懸念位置及び第一の液体検出部を外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材と、第一の液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩懸念位置に液体漏洩が発生しているか否かを判断する判断部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体漏洩の誤検出の発生を防ぎ、液体漏洩を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】液体検出部として電気的手段を用いた、第一の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図2】液体検出部として光学的手段を用いた、第一の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図3】図2における、光ファイバ対及び吸収体の配置を示す模式図である。
【図4】液体検出部としてPCFを用いた、第一の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図5】液体検出部として電気的手段を用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図6】液体検出部として電気的手段を用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び液滴付着発生時の状態を示す模式図である。
【図7】液体検出部として光学的手段を用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図8】液体検出部としてPCFを用いた、従来の液体漏洩検出器の構成及び液滴付着発生時の状態を示す模式図である。
【図9】液体検出部として電気的手段を用いた、第二の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図10】液体検出部として光学的手段を用いた、第二の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図11】液体検出部としてPCFを用いた、第二の実施形態の液体漏洩検出器の構成及び漏洩発生時の状態を示す模式図である。
【図12】図2に示した液体漏洩検出器が記録ヘッド近傍に搭載されたIJプリンタの断面を示す模式図である。
【図13】図2に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタのインクチューブ部を示す模式図である。
【図14】図2に示した液体漏洩検出器が搭載されたインクチューブのコネクタ近傍の断面を示す模式図である。
【図15】実施形態の液体搬送装置における、制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】図1に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】図2に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図18】図6に示した液体漏洩検出器が搭載された廃水搬送装置において、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図19】図2に示した液体漏洩検出器を備える廃水搬送装置において、漏洩を修復した後に漏洩監視を再開する場合に、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定まるものであり、以下の記載は本発明の範囲を限定するものではない。例えば、以下に記載されている形状、配置等は、この発明の範囲を限定するものではない。
【0015】
(第一の実施形態)
まず、第一の実施形態の液体漏洩検出器について詳細に説明する。
【0016】
第一の実施形態の液体漏洩検出器は、被検出体としての液体配管における液体漏洩懸念位置に固定され液体漏洩懸念位置から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部としての液体検出部を備えている。また、液体漏洩検出器は、液体漏洩懸念位置及び液体検出部を外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材と、液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩懸念位置に液体漏洩が発生しているか否かを判断する判断部としての制御部とを備えている。
【0017】
(電気的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例)
図1は、第一の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部として電気的手段を用いる構成例である。この構成例では、検出対象が導電性液体に限られる。図1に示すように、液体漏洩検出器は、液体配管における液体漏洩懸念位置5の近傍に固定された一対の電極4を有する液体検出部1Aと、液体漏洩懸念位置5及び液体検出部1Aを外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材3と、を有している。
【0018】
一対の電極4は、液滴漏洩懸念位置を構成する空隙を挟んで配置されている。電極4は、制御部(図示せず)に電気的に接続されており、導電性を有し、好ましくは耐腐食性材料、例えば貴金属やカーボンなどからなることが好ましい。電極が、腐食により表面に酸化物など絶縁性被膜を形成する材料である場合、漏洩が発生したときに、電極間で導通が阻害されたままとなり、漏洩検出ができなくなる恐れがある。また、電極4間に印加する電圧は、漏洩検出時に液体及び電極自身の電気分解が起こらないような電圧に設定することが安全上、好ましい。
【0019】
液体不浸透性部材3は、液体検出部1Aにおける、液体漏洩懸念位置5との固定面以外の外気と触れる面の全面を覆うように形成されている。なお、ここで、液体漏洩懸念位置5との固定面とは、液体漏洩懸念位置5を構成する部材と液体検出部1Aとが当接する面を意味する。液体不浸透性部材3は、検出対象となる液体を一対の電極4間の空隙から隔離する機能を有しており、液体と化学反応を起こさない材料によって形成されている。
【0020】
液体漏洩懸念位置5は、液体流路において特に漏洩発生が懸念される箇所である。具体的に、液体漏洩懸念位置5としては、流路と、流路のコネクタ部、流路部材同士の連結部、変形が繰り返される箇所、振動や温度変動に繰り返し曝される箇所、流路部材を腐食させる環境に曝される箇所、などが挙げられる。また、液体漏洩懸念位置5は、流路経路内の複数箇所に存在していても良く、流路の全領域であっても良い。流路の全領域の漏洩を監視する場合、多数の液体検出部が必要になったり、液体検出部が大きくなったりするので、特に漏洩が懸念される箇所のみを監視する構成がコストの観点から好ましい。
【0021】
(漏洩検出動作)
図1を参照して、上述した構成からなる液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩時の状態及び検出動作を説明する。なお、本実施形態において、液体としての「インク」には、印刷用のカラーインクのみならず、定着用などの無色インク、電子回路描画用の金属微粒子含有インク、FPD(Flat Panel Display)製造用液体等の各種塗布材料なども含まれる。FPD製造用液体としては、例えば液晶表示装置用カラーフィルタ材料や有機EL発光材料が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、液体漏洩懸念位置5から液体(すなわちインク)の漏洩が発生した場合、漏洩したインクである漏洩液体12は一対の電極4間に跨って広がり、導電パスを形成するので、一対の電極4間の電気抵抗が低下する。一対の電極4間の電気抵抗の低下が検出された場合に、制御部はインク漏洩が生じたと判断する。
【0023】
また、IJプリンタでは、通常インクミストがIJプリンタの内部に飛散し、インクミストが液体漏洩懸念位置5近傍に付着して堆積する。図1に示す付着液滴14はこのようなインクミストを示している。漏洩ではなく、インクミストが液体漏洩懸念位置5近傍に付着して堆積しただけの場合、液体検出部1Aは、液体不浸透性部材3で覆われていることにより、一対の電極4間にインクが入り込まないので、電極4間の電気抵抗が変化しない。このため、インク漏洩であると誤検出することが無い。このように、図1に示した液体漏洩検出器では、インクミストによる誤検出が防止され、インク漏洩を正確に検出可能となる。
【0024】
一方、図5に、IJプリンタ用の、電気的検出手段を用いた従来の液体漏洩検出器の構成を示す。図5においては、漏洩が発生して一対の電極4間にインクが接触した場合には、電気抵抗の変化から漏洩を検出できる。しかし、従来の液体漏洩検出器は、液体検出部101を外気から遮断するように覆う液体不浸透性部材103を備えていない。このため、図6に示すように液体漏洩が発生していない状態であっても、一対の電極104間にインクミストが付着して堆積することで、一対の電極104間で導電パスが形成された場合にはインク漏洩として誤検出してしまう。
【0025】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[1])
図2は、第一の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部として光学的手段を用いる構成例である。このような構成とすることで、図1に示した構成とは異なり、導電性液体に加えて、非導電性液体や、ソルベントインクなどの油性液体、更には引火性液体を検出することも可能になるので好ましい。
【0026】
図2において、液体検出部1Bは、液体配管の液体漏洩懸念位置5の近傍に固定され、液体不浸透性部材3によって被覆されている。液体検出部1Bは、吸収体8と、吸収体8の内部に端部が埋め込まれた光ファイバ対7と、を有して構成されている。
【0027】
吸収体8は、液体を吸収し、液体と化学的に反応しない材料からなる多孔体、ゲル、樹脂などからなる。吸収体8は、検出対象となる液体の吸収または透過波長帯域とは異なる吸収または透過波長帯域を有する物質からなる吸収体を用いることが好ましい。あるいは、そのような物質の微粒子を内部に分散させた吸収体を使用することもできる。
【0028】
光ファイバ対7は、一対の導光側光ファイバ11Aと受光側光ファイバ11Bとから構成されており、図3に示すように、導光側光ファイバ11Aと受光側光ファイバ11Bの一端部(検出点)が吸収体8の内部にそれぞれ埋め込まれている。また、液体検出部1Bは、吸収体8に生じた光学的性質の変化を測定する測定手段としての発光部及び受光部を有している。
【0029】
また、導光側光ファイバ11Aの他端部は発光部を構成する光源と光学的に接続されており、受光側光ファイバ11Bの他端部は受光部を構成する受光素子と光学的に接続されている。
【0030】
そして、発光部からの光を導光側光ファイバ11Aの一端部から放射し、受光側光ファイバ11Bの一端部から入射した光を受光部で受光して、吸収体8の内部の光学的性質の変化を測定することによって、液体漏洩懸念位置5に漏洩した液体が検出される。
【0031】
ここで、発光部を構成する光源としては、漏洩の検出対象となる液体に吸収または反射される波長を少なくとも含む光を発生できる光源であれば、光源の構造に特に制限はない。受光部を構成する受光素子は、光源で発生する波長の光を検出する機能を有するものであれば、受光素子の構造に特に制限はない。
【0032】
光ファイバ対7は、吸収体8中で、導光側光ファイバ11Aの端部から光を放射し、同時に受光側光ファイバ11Bの端部から散乱光を受光している。光ファイバ対7近傍の液体漏洩懸念位置5から漏洩が発生した場合、吸収体8内に液体が吸収されることにより、吸収体8内の、光ファイバ対7近傍の部分で散乱光量が変化する。例えば、液体が吸収する波長帯域の散乱光量が低下する。その結果、受光部で受光した散乱光量の変化から、液体の有無を検出することが可能となる。
【0033】
また予め、吸収体内に吸収された単位体積当たりの液体量と、散乱光量の低下量との対応データを取得しておくことにより、その対応データに基づいて受光部で受光した散乱光量から、漏洩検出点における単位体積当たりの液体量の検出が可能となる。
【0034】
上述のように光ファイバ対7は、吸収体8の内部に一対だけが設けられていても良いが、図2に示すように少なくとも二対以上、つまり複数対の光ファイバ対7が吸収体8の内部に設けられている方が、漏洩検出範囲を広く設定できるので好ましい。また、複数対の光ファイバ対7を設けた場合、各対の光ファイバ対7からの信号及び信号の時間的な変化に基づいて、漏洩の有無の検出だけでなく、漏洩位置、漏洩の広がり範囲、広がり速度も検出することが可能となるので好ましい。更に、各対の光ファイバ対近傍における単位体積当たりの液体量、漏洩の広がり範囲、広がり速度のデータを使用することによって、吸収体8中の漏洩液体量及び漏洩レート(単位時間当たりの漏洩液体量)の推定も可能となる。
【0035】
なお、図2においては、各対の光ファイバ対は、一本の光ファイバから分岐しているように図示されているが、各対の光ファイバ対が1つに束ねられて、各対の光ファイバ対がそれぞれ独立して受光素子と光学的に接続されている。
【0036】
(漏洩検出動作の説明)
図2に示した構成の液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩検出動作を説明する。
【0037】
液体漏洩懸念位置5から漏洩が発生した場合、吸収体8内に漏洩インクが吸収されることにより、光ファイバ対7近傍の吸収体8中における散乱光量が変化する。このとき、例えば、インクが吸収する波長帯域の散乱光量が低下する。液体検出部1Bでの散乱光量の低下が検出された場合に、制御部は漏洩が発生したと判断する。また、複数対の光ファイバ対7を設けることで、漏洩の有無の検出だけでなく、漏洩位置及び漏洩レートも検出することが可能となる。
【0038】
一方、漏洩ではなく、付着液滴(この場合はインクミスト)14が液体漏洩懸念位置5に付着して堆積しただけの場合は、液体検出部1Bは、液体不浸透性部材3により吸収体8にインクミストが入り込まない。このため、散乱光量が変化せず、インク漏洩と誤検出することが無い。このように図2に示す液体漏洩検出器では、インクミストによる誤検出が防止され、インク漏洩を正確に検出可能となる。
【0039】
そして、図2に示した実施形態の液体検出部は、OTDR装置を用いた従来の光学的な液体検出部と比べて、更にいくつかの好ましい効果が得られる。
【0040】
PCFを用いた従来の液体漏洩検出器は、一本の光ファイバを備えて構成されているので設置が容易である。しかしながら、従来の液体漏洩検出器は、一度漏洩を検出した場合、液体を吸収した、光ファイバのクラッド部のみを剥離交換することが不可能であるので、光ファイバ全体の交換が必要となる。また、上述した特許文献1に記載の液体漏洩検出器においても、漏洩検出後に光ファイバに曲げ変形が残留してしまうので、漏洩検出後に、光ファイバ毎の交換が必要になる。
【0041】
これに対し、図3に示す構成の実施形態の液体検出部は、漏洩検出後に吸収体を交換することが容易であり、吸収体以外の部品を再利用可能であるので、漏洩監視にかかるコストを抑えることができる。
【0042】
また、PCFや特許文献1に記載の液体検出部では、OTDR装置により液体漏洩懸念位置での液体を検出しているが、その位置分解能は概ね1cm〜10cm程度である。このため、液体漏洩懸念位置(例えばコネクタ部)の寸法が位置分解能よりも小さい場合には、漏洩発生を検出できるが、漏洩箇所を特定することが困難となる。
【0043】
これに対し、図3に示した実施形態の液体検出部では、複数対の光ファイバ対7が設けられ、かつ各光ファイバ対7の間の間隔を1cm以下に設定することができる。このため、液体漏洩懸念位置が小さい場合であっても、漏洩発生と、漏洩箇所とを特定することが可能になる。なお、各光ファイバ対7の間の間隔は、散乱光が互いに干渉しないように散乱距離以上に設定することが好ましい。しかし、例えば吸収体の光学的性質を制御したり、あるいは吸収体内部に非透光性部材の仕切りを設けたりすることで、各光ファイバ対7の間の間隔を小さくして、液体検出部での位置分解能を高めることが可能である。
【0044】
さらに、図3に示した実施形態の液体検出部では、例えばインクタンクと記録ヘッドを連結するインクチューブや可動コネクタなど、液体供給動作中に自由に曲がる自在配管においても、誤検出が無い漏洩監視を行うことが可能である。一方、OTDR法による光ファイバ中の伝播損失測定を用いた従来の液体検出部では、自在配管にPCFを設置した場合、漏洩による伝播損失増加以外に、自在配管の曲がり動作による伝播損失増加が加わるので、感度の低下や誤検出を招いてしまう。
【0045】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[2])
図4は、第一の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、図3に示した構成例と同様に、液体検出部として光学的手段を用いた構成例であり、導電性液体に加えて、非導電性液体あるいは油性液体、ソルベントインク、引火性液体の検出も可能である。図4に示すように、液体検出部1は、一本のPCF9を有しており、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定されており、液体不浸透性部材3によって被覆されている。PCF9は、クラッド部13を有しており、両端が発光部を構成する光源(図示せず)及び受光部を構成するOTDR装置10に光学的にそれぞれ接続されている。PCF9は、液体不浸透性部材3によって覆われている。
【0046】
(漏洩検出動作)
図4に示した構成の液体漏洩検出器が搭載された液体搬送装置における具体的な漏洩検出動作を説明する。
【0047】
PCF9に光学的に接続された測定手段としてのOTDR装置10は、PCF9内の光伝播損失を常時または定期的に測定している。そして、漏洩発生時には、漏洩液体12がPCF9に接触することにより、PCF9中の伝播損失が増加する。PCF9での伝播損失の増加が検出された場合に、制御部は液体漏洩(廃水漏洩)であると判断する。また、OTDR装置10によって光線路方向の伝播損失分布を測定することで、廃水漏洩の有無を検出するのに加えて、漏洩位置も検出することが可能となる。
【0048】
一方、廃水漏洩ではなく、付着液滴14(ここでは、結露水滴14)が液体漏洩懸念位置5に付着しただけの場合、PCF9は、液体不浸透性部材3によってクラッド部13への水滴付着が防止されるので、伝播損失が増加しない。このため、制御部は廃水漏洩であると誤検出することがない。
【0049】
このように図4に示す液体漏洩検出器によれば、廃水漏洩の誤検出の発生を防止し、廃水漏洩を正確に検出することができる。また、本実施形態の液体漏洩検出器を利用することで、廃水漏洩の誤検出による液体搬送の停止を防ぎ、安定動作が可能な液体搬送装置を提供することができる。
【0050】
図7に、汚染廃水配管用の、PCFを用いた従来の液体漏洩検出器の模式図を示す。図7に示すように、従来の液体漏洩検出器は、液体漏洩懸念位置105に漏洩が発生してPCF109に廃水が接触した場合に、OTDR装置110によって漏洩を検出できる。しかし、従来の液体検出器は、PCF109を覆う液体不浸透性部材103を備えていないので、図8に示すように漏洩が発生していない状態であっても、結露水滴114がPCF109に付着した場合に、漏洩発生であるとして誤検出してしまう。
【0051】
以上、電気的及び光学的な液体検出部を用いた場合の、第一の実施形態の構成例について説明したが、液体検出部としてはこれらに限定されない。液体検出部は、例えば、液体と化学的に反応する吸収体を使用する方法や、吸収体の色変化または温度変化をカメラで撮影し、これを画像認識処理によって検出する方法、などが用いられてもよい。このような方法であっても、第一の実施形態の構成を採用することによって、誤検出の発生を防止し、正確な漏洩検出が可能となることは明らかである。
【0052】
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態の液体漏洩検出器について説明する。
【0053】
第二の実施形態の液体漏洩検出器は、第一の実施形態における液体検出部を第一の液体検出部として備えると共に、第一の液体検出部に隣接して配置され、外気に露出された液滴付着懸念位置に付着した液滴を検出する第二の液体検出部を備えている。また、液体漏洩検出器は、第一の液体検出部と第二の液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩及び液滴付着の少なくともいずれか一方が発生しているか否かを判断する判断部を備えている。
【0054】
第一の液体検出部は漏洩液体を検出し、第二の液体検出部は付着液滴のみを検出する。なお、第二の液体検出部によって検出される液滴付着懸念位置は、第一の液体検出部によって検出される液体漏洩懸念位置5の近傍に位置している。本実施形態は、第一の液体検出部に加えて第二の液体検出部を更に備えることによって、漏洩液体と付着液滴とを個別に検出することが可能になる。例えば、第二の実施形態の液体漏洩検出器が用いられたIJプリンタは、インク漏れを検出するのに加えて、インクミストを検出することが可能になる。このような構成とすることで、インク流路からの漏洩監視と同時に、インクミストの堆積監視を行うことができ、多量のインクミスト堆積によって起こるIJプリンタの部品腐食や印刷物へのインク垂れを未然に防止することができるので好ましい。
【0055】
(電気的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例)
図9に、第二の実施形態の、導電性液体の液体漏洩検出器の一例の模式図を示す。図9に示すように、本実施形態の導電性液体の液体漏洩検出器は、第一の液体検出部としての第一の液体検出部1Aが、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定され、液体不浸透性部材3によって被覆された一対の電極4を有して構成されている。第二の液体検出部2Aは、液体不浸透性部材3を介して液体漏洩懸念位置5の近傍で外気に露出して固定された一対の電極4を有して構成されている。本実施形態において、液体不浸透性部材3、電極4、液体漏洩懸念位置5の構成は、図1に示した構成と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
(漏洩検出動作)
図9に示す構成の液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩検出動作を説明する。図9に示すように、液体漏洩懸念位置5から液体(すなわちインク)漏洩が発生した場合、漏洩液体12は、一対の電極4間に広がり、導電パスを形成するので、一対の電極4間の電気抵抗が低下する。第一の液体検出部1における電気抵抗の低下が検出された場合に、制御部はインク漏洩が生じたと判断する。
【0057】
インク漏洩ではなく、インクミストが液体漏洩懸念位置5に付着して堆積した場合には、第一の液体検出部1Aは、液体不浸透性部材3により一対の電極4間にインクが入り込まないので、一対の電極4間の電気抵抗が変化しない。一方、第二の液体検出部2Aでは一対の電極4間の電気抵抗が低下する。第二の液体検出部2Aでの電気抵抗の低下が起こった場合に、制御部はインクミストの付着であると判断する。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の液体漏洩検出器では、インクミストの付着による誤検出が防止されるだけでなく、液体漏洩とインクミストの付着とを個別に検出することが可能となる。
【0059】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[3])
図10は、第二の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部として光学的手段を用いる構成例である。
【0060】
図10に示すように、本実施形態の液体漏洩検出器は、第一の液体検出部としての第一の液体検出部1Bを有しており、第一の液体検出部1Bが、液体配管の液体漏洩懸念位置5の近傍に固定され、液体不浸透性部材3によって被覆されている。第二の液体検出部2Bは、液体不浸透性部材3を介して液体漏洩懸念位置5の近傍で外気に露出して固定された吸収体8の内部に光ファイバ対7の一端が挿入されている。本実施形態において、液体検出部1、液体不浸透性部材3、液体漏洩懸念位置5、光ファイバ対7、吸収体8の構成は、図2に示した構成と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
(漏洩検出動作)
図10に示す構成の液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおける具体的な漏洩検出動作を説明する。図10に示すように、液体漏洩懸念位置5から液体(すなわちインク)漏洩が発生した場合、吸収体8内にインクが吸収されることにより、光ファイバ対7近傍の吸収体8中で散乱光量が変化する。例えば、インクが吸収する波長帯域の散乱光量が低下する。第一の液体検出部1Bでの散乱光量の低下が検出された場合に、制御部は、インク漏洩と判断する。
【0062】
インク漏洩ではなく、インクミストが液体漏洩懸念位置5に付着して堆積した場合、第一の液体検出部1Bは、液体不浸透性部材3により吸収体8にインクが入り込まないので、光ファイバ対7からの散乱光量が変化しない。一方、第二の液体検出部2Bは散乱光量が低下する。第二の液体検出部2Bで散乱光量の低下が起こった場合に、制御部はインクミストの付着と判断する。
【0063】
以上のように構成された本実施形態の液体漏洩検出器では、インクミストの付着による誤検出が防止されるだけでなく、インク漏洩とインクミストの付着とを個別に検出することが可能となる。
【0064】
(光学的手段を用いた液体漏洩検出器の構成例[4])
図11は、第二の実施形態の液体漏洩検出器の一例であって、液体検出部としてPCFを用いる構成例である。
【0065】
図11に示すように、実施形態の液体漏洩検出器は、第一の液体検出部1Cを有しており、第一の液体検出部1Cが、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定された一本のPCF9からなり、液体不浸透性部材3によって被覆されている。また、第二の液体検出部2Cは、第一の液体検出部1CのPCF9を共有しており、液体不浸透性部材3を介して、液体漏洩懸念位置5の近傍に固定されている。本実施形態において、液体不浸透性部材3、電極4、液体漏洩懸念位置5、PCF9の構成は、図4に示した構成と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
(漏洩検出動作)
図11に示す構成の液体漏洩検出器が搭載された廃水搬送装置における具体的な漏洩検出動作を説明する。
【0067】
液体漏洩懸念位置5から漏洩が発生した場合、廃水がPCF9に接触することにより、PCF9中の伝播損失が増加する。この変化をOTDR装置10によって光線路長方向での伝播損失分布を測定し、第一の液体検出部1Cでの伝播損失の増加が検出された場合、制御部は廃水漏洩が生じたと判断する。また、PCF9における伝播損失分布から漏洩位置も検出することが可能である。
【0068】
一方で、廃水漏洩ではなく、液体配管の表面で結露が起こっただけの場合には、第一の液体検出部1CのPCF9は、液体不浸透性部材3によってクラッド部13への付着液滴14の付着が防止されるので、伝播損失が増加しない。一方、第二の液体検出部2Cでは、伝播損失が増加する。したがって、第一の液体検出部1Cで伝幡損失が増加せずに、かつ第二の液体検出部2Cでの伝播損失の増加が起こった場合、制御部は、液体流路である液体配管の外部に水滴が付着したと判断する。
【0069】
以上のように構成された本実施形態の液体漏洩検出器によれば、付着液滴14の付着による誤検出が防止されるだけでなく、廃水漏洩と水滴付着とを個別に検出することが可能になる。
【0070】
(IJプリンタへの応用例)
図12は、図2に示した構成の液体漏洩検出器が記録ヘッド近傍に取り付けられた実施形態のIJプリンタの一例を示す断面図である。インクを噴射する機能を有するノズルチップ21は、ノズルチップ支持体19に固定されており、フレキシブル回路基板20と電気的に接続されている。ノズルチップ21は、ノズルチップ支持体19内に設けられたインク流路を介してインクが供給され、フレキシブル回路基板20からの電気信号に基づいて所定のノズルから所定のタイミングでインクを噴射する。
【0071】
流路部材15とノズルチップ支持体19とを連結する箇所は、シール部であるゴム部材16の劣化や、部材の取り付けミスなどにより、漏洩が懸念される箇所である。このような連結箇所に実施形態の液体漏洩検出器を配置する場合、流路部材15の外側(図12において最も左側に図示した液体漏洩検出器が配置された場所)に限らず、流路部材15の内側(図12における位置Aや位置B)に液体漏洩検出器が配置されてもよい。このように配置することで、迅速に漏洩液体を検出することが可能となるので好ましい。一方、液体漏洩ではなく、付着液滴(この場合はインクミスト)14が連結箇所に付着して堆積しただけの場合には、液体不浸透性部材3や流路部材15によって吸収体8にインクミストが入り込まないので、インク漏洩であると誤検出することが無い。
【0072】
図13は、オフ・キャリッジ式のIJプリンタの記録ヘッドとインクタンクとを連結するインクチューブに、図2に示す構成からなる液体漏洩検出器を取り付けた実施形態の一例を示す斜視図である。図13に示す構成では、4色(CMYK)用の4本のインクチューブ18を有しており、インクチューブ18同士が連結されて束ねられている。インクチューブ18は、外周部に液体不浸透性部材3及び吸収体8が巻かれて覆われており、吸収体8の複数箇所に光ファイバ対7の一端がそれぞれ埋め込まれている。
【0073】
インクチューブ18から漏洩が生じた場合には、漏洩したインクの一部が吸収体8に吸収され、吸収体8に埋め込まれた光ファイバ対7によって漏洩が検出される。ここで、吸収体8には複数対の光ファイバ対7が配置されているので、漏洩の有無だけでなく、各光ファイバ対7からの信号及び信号の時間的変化を参照することで、漏洩位置や、漏洩レートも検出することが可能になる。一方、漏洩ではなく、付着液滴(この場合はインクミスト)14が連結箇所に付着して堆積しただけの場合には、液体不浸透性部材3により吸収体8にインクミストが接触しないので、インク漏洩であると誤検出することが無い。
【0074】
なお、図13に示す構成では、液体漏洩検出器が環状に構成されているが、シート状またはリボン状に構成された液体漏洩検出器をインクチューブ18に巻き付けるように配置されてもよい。このように配置することで、漏洩検出後にインクチューブ18や吸収体8を交換することが容易となり、漏洩監視にかかる手間を少なくすることができる。
【0075】
図14は、図13に示したインクチューブ18を、インクタンクやフィルターボックス等と接続するコネクタ部近傍に、図2に示す構成からなる液体漏洩検出器を取り付けた実施形態の一例である。液体不浸透性部材3及び吸収体8は、コネクタと当接するインクチューブ18の周囲にリング状に配置されている。コネクタ内で漏洩が生じた場合には、漏洩したインクの一部が吸収体8に吸収され、吸収体8に埋め込まれた光ファイバ対7によって漏洩が検出される。ここで、吸収体8は、液体不浸透性部材3により付着液滴(この場合はインクミスト)14から隔離されているので、漏洩ではなくインクミストが連結箇所に付着して堆積しただけの場合にも、インク漏洩であると誤検出することが無い。
【0076】
なお、図13においては、各光ファイバ対7は一本の光ファイバから分岐しているように図示されているが、複数対の光ファイバ対7を1つに束ねた部分7aであり、各対の光ファイバ対7がそれぞれ独立して受光素子と光学的に接続されている。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の液体搬送装置を説明する。
【0078】
第3の実施形態の液体搬送装置は、液体貯蔵部と、液体出口部と、これら液体貯蔵部と液体出口部を連通する液体流路と、液体流路内または液体貯蔵部内の気体部分を加圧する液体搬送手段としての液体搬送ポンプと、を備えている。また、液体搬送装置は、液体貯蔵部、液体出口部、液体流路のいずれかの表面に設けられた第一の実施形態または第二の実施形態の液体漏洩検出器を備えている。また、液体搬送装置は、液体流路の内部または液体貯蔵部の内部の気体部分を大気圧未満に減圧する減圧機構と、液体漏洩検出器が液体漏洩を検出したときに減圧機構をON状態に作動させる制御部と、を備えている。
【0079】
図15は、第3の実施形態の液体搬送装置における、制御部の動作を示すフローチャートの一例である。図15に示すように、液体の搬送を開始したとき(ステップS1)、液体搬送装置の電源をON状態にし、液体の搬送を開始するために液体搬送ポンプを運転開始し始める(ステップS2)。また、液体搬送ポンプの運転開始と同時に液体漏洩検出器からの信号をモニターし、液体漏洩が検出された否かを判断する(ステップS3)。液体漏洩が検出されない場合、制御部は、液体搬送ポンプの運転を継続する(ステップS4)。液体漏洩が検出された場合、制御部は、直ちに液体搬送ポンプを停止する(ステップS5)と共に、減圧機構を作動させてON状態にし(ステップS6)、液体流路の内部の気体部分を大気圧未満にする。
【0080】
その後、制御部は、液体流路内に設けられた圧力計によって、液体流路の内部が大気圧未満に減圧された否かを判断する(ステップS7)。液体流路の内部の減圧が確認できた場合は、ユーザーに漏洩発生を知らせるアラートを発報する(ステップS8)。また、減圧機構に何らかの異常があり、液体流路の内部が減圧されていない場合、漏洩が継続していると考えられるので、漏洩継続のアラームを発報する(ステップS9)。
【0081】
このように、漏洩検出時に自動的に液体流路内を減圧することで、液体流路または液体貯蔵部から漏洩が継続するのを防止することが可能になり、液体搬送装置及び装置周囲への漏液飛散による損害を大幅に低減することができる。更に、漏洩の停止状態と、漏洩の継続状態とをそれぞれ異なるアラートを用いてユーザーに知らせることで、ユーザーによる対処方法の判断を助けることが可能となる。
【0082】
また、液体漏洩検出器が、漏洩位置や漏洩レートも合わせて検出できる構成の場合には、アラームに漏洩位置、漏洩レート、漏洩量などの通知を追加しても良い。これらの情報を表示する等によって通知することで、ユーザーは更に適切に対処判断を行うことが可能になるので好ましい。ここで、漏洩量とは、漏洩検出から流路内の減圧確認までにかかった時間と、漏洩レートとを積算することによって得られる推定値である。
【0083】
(漏洩判断の処理)
図16に、図1に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が行う漏洩判断のためのフローチャートの一例を示す。図16に示すフローチャートは、第一の液体検出部として電気的手段を用いた液体漏洩検出器のように、液体の有無のみを検出する液体漏洩検出器に好適である。図16に示すように、漏洩検出の開始(ステップS11)後、液体検出部1Aで液体が検出された否かを判断する(ステップS12)。液体検出部1Aで液体が検出された場合、制御部は漏洩発生と判断し、漏洩検出信号を出力する(ステップS13)。また、液体検出部1Aで漏洩が検出されない場合、検出状態を継続する。
【0084】
図17は、図2に示した液体漏洩検出器が搭載された液体搬送装置としての廃水搬送装置において、制御部が行う漏洩判断のためのフローチャートの一例を示す。図17に示す処理は、図2に示したように複数の液体検出点を有する液体漏洩検出器などのように、漏洩位置、漏洩広がり、広がり速度などの検出が可能な液体漏洩検出器に好適である。
【0085】
図17に示す処理では、m個の液体検出点を有する液体漏洩検出器が用いられている。図17に示すように、漏洩検出開始後(ステップS21)、制御部は、変数nの初期値を「1」として変数nを生成し(ステップS22)、n番目の液体漏洩検出器の光ファイバ対で液体を検出した否かを判断する(ステップS23)。n番目の液体漏洩検出器の光ファイバ対で液体が検出されない場合、n番目の液体漏洩検出器における液体の有無を1番目〜m番目の液体検出点について順に検出していく(ステップS24A、S24B、S24C)。m番目の液体検出点まで漏洩が検出されない場合には、再び1番目の液体検出点から順に検出していく工程を繰り返す。n番目の液体検出点で液体を検出した場合には、制御部が漏洩検出信号を出力する(ステップS25)。同時に、液体が検出された液体検出点及びこの液体検出点に隣接する液体検出点における液体量をそれぞれ測定し(ステップS26)、各液体検出点における液体量から漏洩量、漏洩位置及び漏洩広がりを算出する(ステップS27)。更に、漏洩広がりとその時間の変化から漏洩レートを算出し(ステップS28)、漏洩範囲と漏洩レートを出力する(ステップS29)。このようにして、ユーザーに漏洩発生を通知すると共に、漏洩状況に関する付加的な情報を出力するので、ユーザーは対処判断を更に適切に行うことが可能となる。
【0086】
図18は、図2に示した液体漏洩検出器を、液体搬送装置としての廃水搬送装置に搭載した場合において、漏洩を修復した後に漏洩監視を再開する際に、制御部が漏洩判断を行う処理の一例を示すフローチャートである。図18に示す処理は、図2に示した液体漏洩検出器などのように、液体検出部における液体量を測定可能な液体漏洩検出器に好適である。このような処理を制御部が行うことで、一度漏洩を検出した後も、吸収体などの部品を交換することなく、漏洩監視を再開できるので好ましい。
【0087】
図18に示すように、漏洩検出後(ステップS31)、ユーザーが漏洩を修復した場合に、ユーザーによって漏洩修復信号が入力される(ステップS32)。このとき、まず制御部は、液体検出部1Bの吸収体中の液体量を算出する(ステップS33)。続いて、算出された液体量を内部記憶装置に記憶(ステップS34)した後、漏洩監視を再開する(ステップS35)。なお、図示しないが、ここで、液体検出部1Bに何らかの異常が発生したことにより吸収体中の液体量を測定できない場合は、漏洩監視を再開せずに、検出器異常発生信号を出力するようにしても良い。このようにすることで、漏洩監視の再開時に検出機能の自己診断を行うこととなり、検出機能の信頼性が向上するので好ましい。
【0088】
次に、漏洩監視の再開後、制御部は、液体検出部1Bにおける液体量を算出し(ステップS36)、算出された液体量から、記憶されている液体量を減算した差分△Lを計算する(ステップS37)。続いて、制御部は、△L>0を満たすか否かを判断する(ステップS38)。△L>0を満たしている場合は、漏洩監視の再開後に液体検出部に更に液体が漏洩したことを示しているので、制御部が漏洩発生と判断して漏洩検出信号を出力する(ステップS39)。
【0089】
また同様に、第一及び第二の液体検出部を備える液体漏洩検出器を用いる場合は、第一及び第二の液体検出部で液体または液滴の付着を検出したときに、上述と同様に内部記憶装置に液体量を記憶するように構成されてもよい。この構成の場合も、制御部は、その後に第一及び第二の液体検出部で検出された液体量から、内部記憶装置に記憶されている液体量を減算して求められた差分△Lに基づいて検出を行う。
【0090】
図19は、図10に示した液体漏洩検出器が搭載されたIJプリンタにおいて、制御部が行うフローチャートの一例を示す。図19において、漏洩検出の開始(ステップS41)後、制御部は、第二の液体検出部2Bからの信号をモニターし、第二の液体検出部2Bで液体が検出されたか否かを判断する(ステップS42)。第二の液体検出部2Bで液滴が検出されない場合、続いて第一の液体検出部1Bからの信号をモニターし、制御部は、第一の液体検出部1Bで液体が検出された否かを判断する(ステップS43)。
【0091】
第一の液体検出部1Bで液体が検出された場合には、制御部が漏洩検出信号を出力する(ステップS44)。第一の液体検出部1Bで液体が検出されない場合には、再度、第二の液体検出部2Bで液滴の検出を行う。
【0092】
第二の液体検出部2Bで液滴が検出された場合、制御部は、インクミストの付着が起こったと判断して、ミスト付着信号を出力する(ステップS45)。続いて、制御部は、第一の液体検出部1Bからの信号をモニターし、第一の液体検出部1Bで液体が検出された否かを判断する(ステップS46)。第一の液体検出部1Bで液体が検出された場合、制御部は漏洩検出信号を出力する(ステップS44)。第一の液体検出部1Bで液体が検出されない場合、制御部は、続いてミスト付着リセット信号の入力の有無を検出し、ミスト付着リセット信号が入力されたか否かを判断する(ステップS47)。ミスト付着リセット信号が入力された場合、制御部は、ユーザーにミスト付着信号が通知されたと判断し、漏洩検出を停止する(ステップS48)。ミスト付着リセット信号が入力されていない場合、制御部は、ユーザーが装置近くに居らずミスト付着信号がユーザーに通知されていないと判断し、漏洩監視を継続する。このため、ユーザーによるリセット信号の入力時まで、第一の液体検出部での漏洩監視が継続される。このような処理フローを採用することにより、インクミストの付着の検出後に、ユーザーが装置近傍に居ない場合であったとしても、漏洩監視を継続することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
1A 液体検出部
3 液体不浸透性部材
4 電極
5 液体漏洩懸念位置
6 液体
7 光ファイバ対
8 吸収体
10 導光側光ファイバ
11 受光側光ファイバ
12 漏洩液体
13 クラッド部
14 付着液滴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の液体漏洩懸念位置に固定され、前記液体漏洩懸念位置から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部と、
前記液体漏洩懸念位置及び前記第一の液体検出部を外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材と、
前記第一の液体検出部からの信号に基づいて前記液体漏洩懸念位置に液体漏洩が発生しているか否かを判断する判断部と、を備えることを特徴とする液体漏洩検出器。
【請求項2】
前記第一の液体検出部に隣接して配置され、外気に露出された液滴付着懸念位置に付着した液滴を検出する第二の液体検出部を更に備え、
前記判断部は、前記第一の液体検出部及び前記第二の液体検出部からの信号に基づいて、液体漏洩及び液滴付着の少なくともいずれか一方が発生しているか否かを判断する、請求項1に記載の液体漏洩検出器。
【請求項3】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部は、空隙を挟んで配置された一対の電極を有する、請求項1または2の記載の液体漏洩検出器。
【請求項4】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部は、前記液体漏洩懸念位置に配置されて液体を吸収することで光学的性質に変化を生じる吸収体と、該吸収体の光学的性質の変化を測定する測定手段と、を有している、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器。
【請求項5】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部は、
発光部及び受光部を含む前記測定手段と、
一端部が前記吸収体の内部に配置され他端部が前記発光部に光学的に接続された導光側光ファイバと、一端部が前記吸収体の内部に配置され他端部が前記受光部に光学的に接続された受光側光ファイバとを含む光ファイバ対と、を有し、
前記発光部からの光を前記導光側光ファイバの前記一端部から放射し、前記受光側光ファイバの前記一端部から入射した光を前記受光部で受光して、前記吸収体の内部の光学的性質の変化を測定することによって、液体漏洩または液滴付着が検出される、請求項4に記載の液体漏洩検出器。
【請求項6】
前記光学的性質の変化が、散乱光量の変化である、請求項5に記載の液体漏洩検出器。
【請求項7】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部が、少なくとも二対以上の前記光ファイバ対を有する、請求項5または請求項6に記載の液体漏洩検出器。
【請求項8】
液体貯蔵部と、液体出口部と、前記液体貯蔵部と前記液体出口部とを連通する液体流路と、前記液体貯蔵部から前記液体出口部に液体を送る液体搬送手段と、を備える液体搬送装置において、
前記液体貯蔵部、前記液体出口部、前記液体流路、前記液体搬送手段のいずれかの表面または連結部に設けられた、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器と、
前記液体流路の内部または前記液体貯蔵部の内部を大気圧未満に減圧する減圧機構と、
前記減圧機構を制御する制御部と、を備え、
前記漏洩検出器が液体漏洩を検出したときに、前記制御部は、前記減圧機構を作動させる、液体搬送装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器を用いて液体漏洩を検出する液体漏洩検出方法であって、
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部からの信号に基づいて、液体漏洩が発生した否かを判断するステップを有する、液体漏洩検出方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器を用いて液体漏洩を検出する液体漏洩検出方法であって、
前記第一の液体検出部で検出された液体漏洩が修復された後に、再度、液体漏洩を検出する場合に、
前記第一の液体検出部で液体漏洩を検出したときにおける液体量を記憶するステップと、
記憶された前記液体量を、前記第一の液体検出部で検出された液体量から減算した結果に基づいて液体漏洩が発生したか否かを判断するステップと
を有する、液体漏洩検出方法。
【請求項11】
前記第二の液体検出部で検出された液滴付着が修復された後に、再度、液滴付着を検出する場合に、
前記第二の液体検出部で液滴付着を検出したときにおける液体量を記憶するステップと、
記憶された前記液体量を、前記第二の液体検出部で検出された液体量から減算した結果に基づいて液滴付着が発生したか否かを判断するステップと
を有することを特徴とする、請求項10に記載の液体漏洩検出方法。
【請求項12】
請求項2に記載の液体漏洩検出器を用いて液体流路からの液体漏洩を検出する液体漏洩検出方法であって、
前記第一の液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩の有無を判断するステップと、
前記第二の液体検出部からの信号に基づいて液滴付着の有無を判断するステップと、
前記第一の液体検出部で液体漏洩が無く、かつ前記第二の液体検出部で液滴付着が有る場合に、前記液体流路の外部から液体が付着したと判断するステップと、
を有する、液体漏洩検出方法。
【請求項1】
被検出体の液体漏洩懸念位置に固定され、前記液体漏洩懸念位置から漏洩した液体を検出する第一の液体検出部と、
前記液体漏洩懸念位置及び前記第一の液体検出部を外気から遮断するように覆って設けられた液体不浸透性部材と、
前記第一の液体検出部からの信号に基づいて前記液体漏洩懸念位置に液体漏洩が発生しているか否かを判断する判断部と、を備えることを特徴とする液体漏洩検出器。
【請求項2】
前記第一の液体検出部に隣接して配置され、外気に露出された液滴付着懸念位置に付着した液滴を検出する第二の液体検出部を更に備え、
前記判断部は、前記第一の液体検出部及び前記第二の液体検出部からの信号に基づいて、液体漏洩及び液滴付着の少なくともいずれか一方が発生しているか否かを判断する、請求項1に記載の液体漏洩検出器。
【請求項3】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部は、空隙を挟んで配置された一対の電極を有する、請求項1または2の記載の液体漏洩検出器。
【請求項4】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部は、前記液体漏洩懸念位置に配置されて液体を吸収することで光学的性質に変化を生じる吸収体と、該吸収体の光学的性質の変化を測定する測定手段と、を有している、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器。
【請求項5】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部は、
発光部及び受光部を含む前記測定手段と、
一端部が前記吸収体の内部に配置され他端部が前記発光部に光学的に接続された導光側光ファイバと、一端部が前記吸収体の内部に配置され他端部が前記受光部に光学的に接続された受光側光ファイバとを含む光ファイバ対と、を有し、
前記発光部からの光を前記導光側光ファイバの前記一端部から放射し、前記受光側光ファイバの前記一端部から入射した光を前記受光部で受光して、前記吸収体の内部の光学的性質の変化を測定することによって、液体漏洩または液滴付着が検出される、請求項4に記載の液体漏洩検出器。
【請求項6】
前記光学的性質の変化が、散乱光量の変化である、請求項5に記載の液体漏洩検出器。
【請求項7】
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部が、少なくとも二対以上の前記光ファイバ対を有する、請求項5または請求項6に記載の液体漏洩検出器。
【請求項8】
液体貯蔵部と、液体出口部と、前記液体貯蔵部と前記液体出口部とを連通する液体流路と、前記液体貯蔵部から前記液体出口部に液体を送る液体搬送手段と、を備える液体搬送装置において、
前記液体貯蔵部、前記液体出口部、前記液体流路、前記液体搬送手段のいずれかの表面または連結部に設けられた、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器と、
前記液体流路の内部または前記液体貯蔵部の内部を大気圧未満に減圧する減圧機構と、
前記減圧機構を制御する制御部と、を備え、
前記漏洩検出器が液体漏洩を検出したときに、前記制御部は、前記減圧機構を作動させる、液体搬送装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器を用いて液体漏洩を検出する液体漏洩検出方法であって、
前記第一の液体検出部または前記第二の液体検出部からの信号に基づいて、液体漏洩が発生した否かを判断するステップを有する、液体漏洩検出方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体漏洩検出器を用いて液体漏洩を検出する液体漏洩検出方法であって、
前記第一の液体検出部で検出された液体漏洩が修復された後に、再度、液体漏洩を検出する場合に、
前記第一の液体検出部で液体漏洩を検出したときにおける液体量を記憶するステップと、
記憶された前記液体量を、前記第一の液体検出部で検出された液体量から減算した結果に基づいて液体漏洩が発生したか否かを判断するステップと
を有する、液体漏洩検出方法。
【請求項11】
前記第二の液体検出部で検出された液滴付着が修復された後に、再度、液滴付着を検出する場合に、
前記第二の液体検出部で液滴付着を検出したときにおける液体量を記憶するステップと、
記憶された前記液体量を、前記第二の液体検出部で検出された液体量から減算した結果に基づいて液滴付着が発生したか否かを判断するステップと
を有することを特徴とする、請求項10に記載の液体漏洩検出方法。
【請求項12】
請求項2に記載の液体漏洩検出器を用いて液体流路からの液体漏洩を検出する液体漏洩検出方法であって、
前記第一の液体検出部からの信号に基づいて液体漏洩の有無を判断するステップと、
前記第二の液体検出部からの信号に基づいて液滴付着の有無を判断するステップと、
前記第一の液体検出部で液体漏洩が無く、かつ前記第二の液体検出部で液滴付着が有る場合に、前記液体流路の外部から液体が付着したと判断するステップと、
を有する、液体漏洩検出方法。
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2012−42247(P2012−42247A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181768(P2010−181768)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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