説明

液体燃料組成物

本発明は、内燃機関での使用に好適なベース燃料と、式(III):[Y−CO[O−A−CO]−Z−X(III)(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1又は2であり、Zは、任意に置換された二価の架橋基であり、pは0又は1であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される、末端酸基又は末端酸基を持っている基である)を有する末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体とを含む液体燃料組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関での使用に好適な主要量のベース燃料を含む液体燃料組成物、特に内燃機関での使用に好適な主要量のベース燃料と超分散剤とを含む液体燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0164817 A2号明細書は、有機液体中の固形分の分散液及び油/水エマルジョンを安定化させるために好適な、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端強酸基を持っているカルボン酸エステルもしくはアミドを含む界面活性剤を開示している。好ましい種類の界面活性剤は、末端ヒドロキシもしくはカルボン酸基に、直接に又は連結基を介してのどちらかで、結合した強酸基を有するポリ(ヒドロキシアルカンカルボン酸)である。燃料でのかかる界面活性剤の使用は、その明細書には開示されていない。
【0003】
欧州特許出願公開第0233684 A1号明細書は、有機液体中の固形分のための分散剤としての使用に好適である(i)少なくとも2つの脂肪族炭素−炭素二重結合を含有する末端基と(ii)酸性もしくは塩基性アミノ基とを有するエステル又はポリエステルを開示している。燃料でのかかる界面活性剤の使用は、その明細書には開示されていない。
【0004】
英国特許出願公開第2197312 A号明細書は、先ずC〜Cラクトンをポリアミン、ポリオール又はアミノアルコールと反応させて中間体付加体を形成し、その後この中間体付加体が約1〜約165個の総炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビルモノカルボン酸もしくはジカルボン酸アシル化剤と反応させることによって製造されたポリ(C〜Cラクトン)付加体である、油溶性分散剤添加剤を開示している。潤滑油及び燃料でのこの分散剤添加剤の使用もまた、英国特許出願公開第2197312 A号明細書に開示されている。
【0005】
欧州特許出願公開第0802255 A2号明細書は、潤滑油及び普通は液体燃料用の低塩素含有添加剤として有用であるヒドロキシル基含有アシル化窒素化合物並びに本化合物の製造方法を開示している。
【0006】
国際公開第00/34418 A1号パンフレットは、潤滑性添加剤としての燃料組成物でのポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド又はエステル誘導体の使用を開示している。その明細書に開示されているポリ(ヒドロキシカルボン酸)アミド又はエステル誘導体の使用はまた、入口システム清浄度(吸気弁、燃料噴射装置、気化器)、燃焼室清浄度(各場合に清浄性保持(keep clean)効果及び清浄性向上効果のどちらか又は両方)、防食性(防錆を含む)並びに弁固着の低減又は排除などの多数の効果の1つ以上の達成をもたらす可能性があることもまた国際公開第00/34418 A1号パンフレットに開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用はまた、それらを組み込んだ液体燃料組成物の潤滑性を改善するという観点から利益を意外にも提供し得ることが今見出された。
【0008】
本発明は、
− 内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料と、
− 式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−X (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1又は2であり、Zは、任意に置換された二価の架橋基であり、pは0又は1であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基又は末端酸基を持っている基である)
を有する末端強酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体と、
を含む液体燃料組成物を提供する。
【0009】
本発明は更に、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を内燃機関での使用に好適なベース燃料と混合することを含む本発明の液体燃料組成物の調製方法を提供する。
【0010】
本発明はその上更に、本発明による液体燃料組成物をエンジンの燃焼室へ導入することを含む、内燃機関の運転方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液体燃料組成物は、内燃機関での使用に好適なベース燃料と、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体とを含む。一般的には、内燃機関での使用に好適なベース燃料は、ガソリン又はディーゼル燃料であり、それ故本発明の液体燃料組成物は一般的には、ガソリン組成物又はディーゼル燃料組成物である。
【0012】
本発明で使用される末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体はまた超分散剤と言われてもよい。
【0013】
本発明の液体燃料組成物中の末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体は、式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−X (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1又は2であり、Zは、任意に置換された二価の架橋基であり、pは0又は1であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される、末端酸基又は末端酸基を持っている基である)
を有する末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体である。
【0014】
式(III)において、Aは好ましくは、下で式(I)及び(II)について本明細書で以下に記載されるように二価の直鎖又は分岐のヒドロカルビル基である。
【0015】
即ち、式(III)において、Aは好ましくは、任意に置換された芳香族、脂肪族又は脂環式の直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基である。更に好ましくは、Aは、アリーレン、アルキレン又はアルケニレン基、特に4〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは6〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは8〜24個の範囲の炭素原子、更に好ましくは10〜22個の範囲の炭素原子、最も好ましくは12〜20個の範囲の炭素原子を含有するアリーレン、アルキレン又はアルケニレン基である。
【0016】
好ましくは、式(III)の前記化合物において、カルボニル基とヒドロキシル基に由来する酸素原子との間に直接連結された少なくとも4個の炭素原子、更に好ましくは少なくとも6個の炭素原子、なお更に好ましくは8〜14個の範囲の炭素原子が存在する。
【0017】
式(III)の化合物において、基A中の随意の置換基は好ましくは、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、とりわけC1〜4アルコキシ基から選択される。
【0018】
式(III)(及び式(I))において、nは1〜100の範囲にある。好ましくは、nについての範囲の下限は1、更に好ましくは2、なお更に好ましくは3であり;好ましくはnについての範囲の上限は100、更に好ましくは60、更に好ましくは40、更に好ましくは20、なお更に好ましくは10である(即ち、nは、以下の範囲のいずれかから選択してよい:1〜100;2〜100;3〜100;1〜60;2〜60;3〜60;1〜40;2〜40;3〜40;1〜20;2〜20;3〜20;1〜10;2〜10;及び3〜10)。
【0019】
式(III)において、Yは好ましくは、式(I)について本明細書で以上に記載されたように任意に置換されたヒドロカルビル基である。
【0020】
即ち、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好ましくは、50個以下の炭素原子、更に好ましくは7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキル又はアルケニルである。例えば、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好都合には、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル及びリノレイルから選択してよい。
【0021】
本明細書での式(III)中の前記任意に置換されたヒドロカルビル基Yの他の例には、シクロヘキシルなどのC4〜8シクロアルキル;アビエチン酸などの天然起源の酸に由来する多環式テルペニル基などのポリシクロアルキル;フェニルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;並びにナフチル、ビフェニル、スチベニル及びフェニルメチルフェニルなどのポリアリールが挙げられる。
【0022】
本発明では、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アミノ、好ましくは第三級アミノ(N−H結合なし)、オキシ、シアノ、スルホニル及びスルホキシルなどの1つ以上の官能基を含有してもよい。置換ヒドロカルビル基中の、水素以外の、原子の大部分は、一般に炭素であり、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素及び硫黄)は、存在する全非水素原子のわずかな部分、約33%以下を一般に表すにすぎない。
【0023】
置換ヒドロカルビル基Y中のヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロ及びシアノなどの官能基はヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わるが、置換ヒドロカルビル基中のカルボニル、カルボキシル、第三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニル及びスルホキシルなどの官能基はヒドロカルビルの−CH−又はCH−部分と置き換わることを当業者は十分理解するであろう。
【0024】
更に好ましくは、式(III)中のヒドロカルビル基Yは、非置換であるか又は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、なお更に好ましくはC1〜4アルコキシから選択される基で置換されている。
【0025】
最も好ましくは、式(III)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基又は12−ヒドロキシオレイル基、及びトールオイル脂肪酸などの天然起源の油に由来するものである。
【0026】
式(III)において、Zは、任意に置換された二価の架橋基であり、好ましくは式−X−B−Y−(式中、Xは酸素、硫黄又は、Rが下に記載される通りである、式−NR−の基から選択され、Bは下に記載される通りであり、Yは、酸素又は、Rが下に記載される通りである、式−NR−の基から選択され、qは0又は1である)の、任意に置換された二価の架橋基である。qが1であり、X及びYの両方が式−NR−の基である場合、2つのR基は、2個の窒素原子を連結する単一ヒドロカルビル基を形成してもよい。
【0027】
好都合には、Zは、窒素原子を介してカルボニル基に結合している、好ましくは式(IV)
【化1】


(式中、Rは、水素又はヒドロカルビル基であり、Bは、任意に置換されたアルキレン基である)
で表される、任意に置換された二価の架橋基である。
【0028】
を表してもよいヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びオクタデシルが挙げられる。
【0029】
Bを表してもよい任意に置換されたアルキレン基の例には、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン及びヘキサメチレンが挙げられる。
【0030】
式(III)中の好ましいZ部分の例には、−NHCHCH−、−NHCHC(CHCH−及びNH(CH−が挙げられる。
【0031】
式(III)において、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される、末端酸基又は末端酸基を持っている基である。Xが末端酸基を持っている基である場合、好ましくは、それは−Z−X(式中、Zは、ポリアミン、ポリオール、ヒドロキシルアミン、又は上に定義されたようなZ基から選択される化合物などの、二官能性連結化合物であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基である)の基であり;更に好ましくは、Xが末端酸基を持っている基である場合、式(III)におけるpは0であり、Xは式−Z−Xの基である。
【0032】
末端酸基は、遊離酸の形態か又は酸の塩の形態で存在してもよい。末端酸基が塩の形態である場合、それは好都合には、遊離酸形態の末端酸と塩基との、例えば、アンモニア、アミン及びアミノアルコールなどの有機塩基並びに無機塩基との反応によって形成することができる。末端酸基での酸基が塩である場合、好適なカチオンの例には、ナトリウム、カリウム及びカルシウムなどの、金属イオン、アンモニウムイオン(NH)、N(CH、及びNH(CHなどの、アンモニウムイオンが挙げられる。
【0033】
末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体は、式(I)
Y−CO[O−A−CO]−OH (I)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100である)
のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を、
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の、カルボン酸基並びにカルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基と反応する基を有する化合物;
末端酸基の前駆体;又は
末端酸基の前駆体とその後反応させられる二官能性連結化合物
と反応させて得てもよい。
【0034】
本明細書で用いるところでは、用語「ヒドロカルビル」は、炭化水素の炭素原子からの1つ以上の水素原子の除去によって形成されるラジカルを表す(更に多くの水素原子が除去される場合には必ずしも同じ炭素原子ではない)。
【0035】
ヒドロカルビル基は、芳香族、脂肪族、非環式又は環式基であってよい。好ましくは、ヒドロカルビル基は、アリール、シクロアルキル、アルキル又はアルケニルであり、その場合それらは直鎖又は分岐鎖基であってよい。
【0036】
代表的なヒドロカルビル基には、フェニル、ナフチル、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、メチルペンチル、ヘキセニル、ジメチルヘキシル、オクテニル、シクロオクテニル、メチルシクロオクテニル、ジメチルシクロオクチル、エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ドデシル、ヘキサデセニル、アイコシル、ヘキサコシル、トリアコンチル及びフェニルエチルが含まれる。
【0037】
本発明では、語句「任意に置換されたヒドロカルビル」は、1つ以上の「不活性な」ヘテロ原子含有官能基を任意に含有するヒドロカルビル基を記載するために用いられる。「不活性な」とは、官能基がいかなる実質的な程度にも化合物の機能を妨げないことを意味する。
【0038】
式(I)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、本明細書では好ましくは、50個以下の炭素原子、更に好ましくは7〜25個の範囲の炭素原子を含有するアリール、アルキル又はアルケニルである。例えば、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは好都合には、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ラウリル、ヘプタデシル、ヘプタデニル、ヘプタデカジエニル、ステアリル、オレイル及びリノレイルから選択してよい。
【0039】
本明細書での式(I)中の前記任意に置換されたヒドロカルビル基Yの他の例には、シクロヘキシルなどのC4〜8シクロアルキル;アビエチン酸などの天然起源の酸に由来する多環式テルペニル基などのポリシクロアルキル;フェニルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;並びにナフチル、ビフェニル、スチベニル及びフェニルメチルフェニルなどのポリアリールが挙げられる。
【0040】
本発明では、任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、第三級アミノ(N−H結合なし)、オキシ、シアノ、スルホニル及びスルホキシルなどの1つ以上の官能基を含有してもよい。置換ヒドロカルビル基中の、水素以外の、原子の大部分は、一般に炭素であり、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素及び硫黄)は、存在する全非水素原子のわずかな部分、約33%以下を一般に表すにすぎない。
【0041】
置換ヒドロカルビル基Y中のヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、ニトロ及びシアノなどの官能基はヒドロカルビルの水素原子の1つと置き換わるが、置換ヒドロカルビル基中のカルボニル、カルボキシル、第三級アミノ(−N−)、オキシ、スルホニル及びスルホキシルなどの官能基はヒドロカルビルの−CH−又はCH−部分と置き換わることを当業者は十分理解するであろう。
【0042】
式(I)中のヒドロカルビル基Yは更に好ましくは、非置換であるか又は、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、なお更に好ましくはC1〜4アルコキシから選択される基で置換されている。
【0043】
最も好ましくは、式(I)中の任意に置換されたヒドロカルビル基Yは、ステアリル基、12−ヒドロキシステアリル基、オレイル基、12−ヒドロキシオレイル基又はトールオイル脂肪酸などの天然起源の油に由来する基である。
【0044】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)及びその誘導体の製造は公知であり、当該技術分野に、例えば欧州特許第0 164 817号明細書に記載されている。
【0045】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)は、周知の方法に従って任意に触媒の存在下に、式(II)
HO−A−COOH (II)
(式中、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基である)
の1つ以上のヒドロキシカルボン酸のエステル交換によって製造してよい。かかる方法は、例えば、米国特許第3,996,059号明細書、英国特許第1 373 660号明細書及び英国特許第1 342 746号明細書に記載されている。
【0046】
前記エステル交換における連鎖停止剤は、非ヒドロキシカルボン酸であってよい。
【0047】
ヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基及びヒドロキシカルボン酸又は非ヒドロキシカルボン酸中のカルボン酸基は、特性が第一級、第二級又は第三級であってよい。
【0048】
ヒドロキシカルボン酸及び非ヒドロキシカルボン酸連鎖停止剤のエステル交換は、任意にトルエン又はキシレンなどの好適な炭化水素溶媒中で、出発原料を加熱すること、及び形成された水を共沸除去することによって達成できる。反応は、−250℃以下の温度で、好都合には溶媒の還流温度で実施してよい。
【0049】
ヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基が第二級又は第三級である場合、用いられる温度は、酸分子の脱水をもたらすほどに高いものであるべきではない。
【0050】
p−トルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム又はチタン酸テトラブチルなどのエステル交換用の触媒が、所与の温度で反応の速度を上げるか又は所与の反応速度のために必要とされる温度を下げるかのどちらかの目的で、含有されてもよい。
【0051】
式(I)及び(II)の化合物において、Aは好ましくは、任意に置換された芳香族、脂肪族又は脂環式の直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基である。好ましくは、Aは、アリーレン、アルキレン又はアルケニレン基、特に4〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは6〜25個の範囲の炭素原子、更に好ましくは8〜24個の範囲の炭素原子、更に好ましくは10〜22個の範囲の炭素原子、最も好ましくは12〜20個の範囲の炭素原子を含有するアリーレン、アルキレン又はアルケニレン基である。
【0052】
好ましくは、式(I)及び(II)の前記化合物において、カルボニル基とヒドロキシル基に由来する酸素原子との間に直接連結された少なくとも4個の炭素原子、更に好ましくは少なくとも6個の炭素原子、なお更に好ましくは8〜14個の範囲の炭素原子が存在する。
【0053】
式(I)及び(II)の化合物において、基A中の随意の置換基は好ましくは、ヒドロキシ、ハロもしくはアルコキシ基、更に好ましくはC1〜4アルコキシ基から選択される。
【0054】
式(II)のヒドロキシカルボン酸中のヒドロキシル基は好ましくは第二級ヒドロキシル基である。
【0055】
好適なヒドロキシカルボン酸の例は、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシ−9−オレイン酸(リシノール酸)、6−ヒドロキシカプロン酸、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸である。市販の12−ヒドロキシステアリン酸(水素化ヒマシ油脂肪酸)は通常、不純物として15%wt以下のステアリン酸及び他の非ヒドロキシカルボン酸を含有し、分子量約1000〜2000のポリマーを製造するために更なる混合剤なしに好都合には使用することができる。
【0056】
非ヒドロキシカルボン酸が反応に別々に導入される場合、所与の分子量のポリマー又はオリゴマーを製造するために必要とされる割合は、簡単な実験によって又は当業者による計算によってのどちらかで決定することができる。
【0057】
式(I)及び(II)の化合物中の基(−O−A−CO−)は好ましくは12−オキシステアリル基、12−オキシオレイル基又は6−オキシカプロイル基である。
【0058】
アミンとの反応のための式(I)の好ましいポリ(ヒドロキシカルボン酸)には、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)及びポリ(ヒドロキシオレイン酸)が含まれる。
【0059】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の末端カルボン酸基、並びにカルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基と反応する基を有する好適な化合物には、グリシン及びグリコール酸などのアルファ−アミノ−又はアルファ−ヒドロキシ−アルカンカルボン酸、並びにアミノエタンスルホン酸などのアミノ−及びヒドロキシ−有機スルホン酸又はホスホン酸が含まれ、末端酸基の好適な前駆体は、五酸化リン及び塩化スルホニルであり、そして、ポリエステルと末端酸基との間に連結基を形成することができる好適な二官能性連結化合物は、ポリアミン、ポリオール、ヒドロキシルアミン及び上記のようなZ基である。
【0060】
式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の末端カルボン酸基並びにカルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基と反応する基を有する好適な化合物;
末端酸基の前駆体;又は
末端酸基の前駆体とその後反応させられる二官能性連結化合物と、式(I)のポリ(ヒドロキシカルボン酸)との反応は公知であり、当該技術分野に、例えば欧州特許第0 164 817号明細書に記載されている。
【0061】
本発明で好ましい、末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体は、ASTM D 4739による測定で、60mg.KOH/g未満、更に好ましくは50mg.KOH/g未満、なお更に好ましくは40mg.KOH/g未満、最も好ましくは30mg.KOH/g未満のTBN(全塩基価)値をそれぞれ有するものである。好都合には、末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体は、ASTM D 4739による測定で、5mg.KOH/g未満、更に好都合には2mg.KOH/g以下のTBN値をそれぞれ有してもよい。
【0062】
本発明で好ましい、末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体は、70mg.KOH/g未満、更に好ましくは60mg.KOH/g未満、なお更に好ましくは50mg.KOH/g未満、最も好ましくは40mg.KOH/g未満の酸価をそれぞれ有するものである。
【0063】
本発明の液体燃料組成物では、使用されるベース燃料がガソリンである場合、このガソリンは、当該技術分野で公知の、火花点火の内燃機関での使用に好適な任意のガソリン(ペトロール)型であってよい。本発明の液体燃料組成物でのベース燃料として使用されるガソリンは好都合には「ベースガソリン」と言われてもよい。
【0064】
ガソリンは一般的には、25〜230℃の範囲で沸騰する炭化水素の混合物を含み(EN−ISO 3405)、最適な範囲及び蒸留曲線は一般的には、気候及び年の季節によって変わる。ガソリン中の炭化水素は、当該技術分野で公知の任意の方法で誘導されてもよく、好都合には炭化水素は、直留ガソリン、合成的に製造された芳香族炭化水素混合物、熱もしくは接触分解炭化水素、水素化分解石油留分、接触改質炭化水素又はこれらの混合物から任意の公知の方法で誘導できる。
【0065】
ガソリンの具体的な蒸留曲線、炭化水素組成、リサーチオクタン価(RON)及びモーターオクタン価(MON)は、決定的に重要であるわけではない。
【0066】
好都合には、ガソリンのリサーチオクタン価(RON)は少なくとも80、例えば80〜110の範囲にあってよく、好ましくはガソリンのRONは少なくとも90、例えば90〜110の範囲にあるし、更に好ましくはガソリンのRONは少なくとも91、例えば91〜105の範囲にあるし、なお更に好ましくはガソリンのRONは少なくとも92、例えば92〜103の範囲にあるし、なお更に好ましくはガソリンのRONは少なくとも93、例えば93〜102の範囲にあるし、最も好ましくはガソリンのRONは少なくとも94、例えば94〜100の範囲にあるし(EN 25164);ガソリンのモーターオクタン価(MON)は好都合には少なくとも70、例えば70〜110の範囲にあってよく、好ましくはガソリンのMONは少なくとも75、例えば75〜105の範囲にあるし、更に好ましくはガソリンのMONは少なくとも80、例えば80〜100の範囲にあるし、最も好ましくはガソリンのMONは少なくとも82、例えば82〜95の範囲にある(EN 25163)。
【0067】
一般的には、ガソリンは、以下の群の1つ以上から選択される成分を含む:飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、及び含酸素炭化水素。好都合には、ガソリンは、飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、及び、任意に、含酸素炭化水素の混合物を含有してよい。
【0068】
一般的には、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜40容量パーセントの範囲にあり(ASTM D1319);好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜30容量パーセントの範囲にあり、更に好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜20容量パーセントの範囲にある。
【0069】
一般的には、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜70容量パーセントの範囲にあり(ASTM D1319)、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として10〜60容量パーセントの範囲にあり;好ましくは、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として0〜50容量パーセントの範囲にあり、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有率は、ガソリンを基準として10〜50容量パーセントの範囲にある。
【0070】
ガソリンのベンゼン含有率は、ガソリンを基準として10容量パーセント以下、更に好ましくは5容量パーセント以下、とりわけ1容量パーセント以下である。
【0071】
ガソリンは好ましくは、低い又は超低硫黄含有率、例えば1000ppmw(重量で百万当たりの部)以下、好ましくは500ppmw以下、更に好ましくは100以下、なお更に好ましくは50以下、最も好ましくは更に10ppmw以下を有する。
【0072】
ガソリンはまた好ましくは、0.005g/l以下などの、低い全鉛含有率を有し、最も好ましくは鉛を含まない、つまり鉛化合物をそれに全く添加されていない(即ち、無鉛である)。
【0073】
ガソリンが含酸素炭化水素を含むとき、酸素を含まない炭化水素の少なくとも一部が含酸素炭化水素と置き換えられる。ガソリンの酸素含有率は、ガソリンを基準として35重量パーセント以下であってよい(EN 1601)(例えば、エタノールそれ自体)。例えば、ガソリンの酸素含有率は25重量パーセント以下、好ましくは10重量パーセント以下であってよい。好都合には、含酸素物濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、及び1.2重量パーセントのいずれかから選択される最小濃度、及び5、4.5、4.0、3.5、3.0、及び2.7重量パーセントのいずれかから選択される最大濃度を有する。
【0074】
ガソリンへ組み込まれてもよい含酸素炭化水素の例には、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸及びそれらの誘導体、並びに酸素含有複素環化合物が挙げられる。好ましくは、ガソリンへ組み込まれてもよい含酸素炭化水素は、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、第三ブタノール及びイソ−ブタノールなどの)、エーテル(好ましくは1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエーテル、例えばメチル第三ブチルエーテル)及びエステル(好ましくは1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエステル)から選択され;特に好ましい含酸素炭化水素はエタノールである。
【0075】
含酸素炭化水素がガソリン中に存在するとき、ガソリン中の含酸素炭化水素の量は、広い範囲にわたって変わってもよい。例えば、主要割合の含酸素炭化水素、例えばエタノールそれ自体及びE85を含むガソリン、並びにマイナー割合の含酸素炭化水素、例えばE10及びE5を含むガソリンが、ブラジル国及び米国などの国で現在商業的に入手可能である。それ故、ガソリンは、100容量パーセント以下の含酸素炭化水素を含有してもよい。好ましくは、ガソリン中に存在する含酸素炭化水素の量は、以下の量の1つから選択される:ガソリンの所望の最終調合物に依存して、85容量パーセント以下;65容量パーセント以下;30容量パーセント以下;20容量パーセント以下;15容量パーセント以下;及び、10容量パーセント以下。好都合には、ガソリンは、少なくとも0.5、1.0又は2.0容量パーセントの含酸素炭化水素を含有してもよい。
【0076】
好適なガソリンの例には、0〜20容量パーセントのオレフィン系炭化水素含有率(ASTM D1319)、0〜5重量パーセントの酸素含有率(EN 1601)、0〜50容量パーセントの芳香族炭化水素含有率(ASTM D1319)及び1容量パーセント以下のベンゼン含有率を有するガソリンが挙げられる。
【0077】
本発明に決定的に重要であるわけではないが、本発明のベースガソリン又はガソリン組成物は好都合には、1つ以上の燃料添加剤を更に含有してよい。本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に含まれてもよい燃料添加剤の濃度及び本質は、決定的に重要であるわけではない。本発明のベースガソリン又はガソリン組成物に含むことができる好適なタイプの燃料添加剤の非限定的な例には、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、脱曇り剤(dehazer)、アンチノック添加剤、金属不活性化剤、弁座後退防止剤化合物、染料、摩擦改良剤、キャリア流体、希釈剤及びマーカーが挙げられる。好適なかかる添加剤の例は、米国特許第5,855,629号明細書に概して記載されている。
【0078】
好都合には、燃料添加剤は、添加剤コンセントレートを形成するために、1つ以上の希釈剤又はキャリア流体とブレンドすることができ、添加剤コンセントレートは次に、本発明のベースガソリン又はガソリン組成物と混合することができる。
【0079】
本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に存在する任意の添加剤の(活性成分)濃度は好ましくは、1重量パーセント以下、更に好ましくは5〜1000ppmwの範囲に、有利には95〜150ppmwなどの、75〜300ppmwの範囲にある。
【0080】
本発明の液体燃料組成物では、使用されるベース燃料がディーゼル燃料である場合、本発明でベース燃料として使用されるディーゼル燃料には、自動車圧縮点火エンジンでの、並びに例えば船舶、鉄道及び固定エンジンなどの他のタイプのエンジンでの使用のためのディーゼル燃料が含まれる。本発明の液体燃料組成物にベース燃料として使用されるディーゼル燃料は好都合にはまた「ディーゼルベース燃料」と言われてもよい。
【0081】
ディーゼルベース燃料はそれ自体、2つ以上の異なるディーゼル燃料成分の混合物を含有してよいし、及び/又は下に記載されるように添加剤を加えられてもよい。
【0082】
かかるディーゼル燃料は、液体炭化水素中間留出物ガス油、例えば石油由来ガス油を一般的には含有してよい1つ以上のベース燃料を含有する。かかる燃料は一般的には、銘柄及び用途に依存して、150〜400℃の通常のディーゼル範囲内の沸点を有する。それらは一般的には、15℃で、750〜1000kg/m、好ましくは780〜860kg/mの密度(例えばASTM D4502又はIP 365)、及び35〜120、更に好ましくは40〜85のセタン価(ASTM D613)を有する。それらは一般的には、150〜230℃の範囲の初留点及び290〜400℃の範囲の最終沸点を有する。それらの40℃での動粘度(ASTM D445)は好適には1.2〜4.5mm/秒であってよい。
【0083】
石油由来ガス油の例は、スウェーデン国立規格EC1で定義されているように、15℃で800〜820kg/mの密度(SS−EN ISO 3675、SS−EN ISO 12185)、320℃以下のT95(SS−EN ISO 3405)及び1.4〜4.0mm/秒の40℃での動粘度(SS−EN ISO 3104)を有する、Swedish Class 1ベース燃料である。
【0084】
任意に、バイオ燃料又はFischer−Tropsch由来燃料などの、非鉱物油ベース燃料がまた、ディーゼル燃料を形成しても又はディーゼル燃料中に存在してもよい。かかるFischer−Tropsch燃料は例えば、天然ガス、天然ガス液、石油又はシェール油、石油又はシェール油処理残渣、石炭又はバイオマスに由来してもよい。
【0085】
ディーゼル燃料に使用されるFischer−Tropsch由来燃料の量は、全体ディーゼル燃料の0%〜100%v、好ましくは5%〜100%v、更に好ましくは5%〜75%vであってよい。かかるディーゼル燃料が10%v以上、更に好ましくは20%v以上、なお更に好ましくは30%v以上のFischer−Tropsch由来燃料を含有することが望ましい可能性がある。かかるディーゼル燃料が30〜75%v、特に30又は70%vのFischer−Tropsch由来燃料を含有することが特に好ましい。ディーゼル燃料の残りは、1つ以上の他のディーゼル燃料成分で構成される。
【0086】
かかるFischer−Tropsch由来燃料成分は、(任意に水素化分解された)Fischer−Tropsch合成生成物から単離することができる、中間留出物燃料範囲の任意の留分である。典型的な留分は、ナフサ、灯油又はガス油範囲で沸騰する。好ましくは、灯油又はガス油範囲で沸騰するFischer−Tropsch生成物が使用される。なぜならこれらの生成物は例えば家庭環境で取り扱うのが一層容易であるからである。かかる生成物は好適には、160〜400℃、好ましくは約370℃までに沸騰する90重量%超の留分を含む。Fischer−Tropsch由来灯油及びガス油の例は、欧州特許出願公開第A−0583836号明細書、国際公開第A−97/14768号パンフレット、国際公開第A−97/14769号パンフレット、国際公開第A−00/11116号パンフレット、国際公開第A−00/11117号パンフレット、国際公開第A−01/83406号パンフレット、国際公開第A−01/83648号パンフレット、国際公開第A−01/83647号パンフレット、国際公開第A−01/83641号パンフレット、国際公開第A−00/20535号パンフレット、国際公開第A−00/20534号パンフレット、欧州特許出願公開第A−1101813号明細書、米国特許第5766274号明細書、米国特許第5378348号明細書、米国特許第5888376号明細書及び米国特許第6204426号明細書に記載されている。
【0087】
Fischer−Tropsch生成物は、80重量%超、更に好適には95重量%超のイソ及びノルマルパラフィン並びに1重量%未満の芳香族化合物を好適には含有し、残りはナフテン系化合物である。硫黄及び窒素の含有率は非常に低く、普通はかかる化合物の検出限界未満である。こういう訳で、Fischer−Tropsch生成物を含有するディーゼル燃料組成物の硫黄含有率は、非常に低い可能性がある。
【0088】
ディーゼル燃料組成物は、好ましくは5000ppmw以下の硫黄、更に好ましくは500ppmw以下、もしくは350ppmw以下、もしくは150ppmw以下、もしくは100ppmw以下、もしくは70ppmw以下、もしくは50ppmw以下、もしくは30ppmw以下、もしくは20ppmw以下、又は最も好ましくは15ppmw以下の硫黄を含有する。
【0089】
ディーゼルベース燃料はそれ自体、添加剤を加えられても(添加剤を含有しても)、添加剤を加えられていなくても(添加剤なしでも)よい。例えば製油所で、添加剤を加えられる場合、それは、帯電防止剤、パイプライン抗力軽減剤、流動性向上剤(例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー又はアクリレート/無水マレイン酸コポリマー)、潤滑添加剤、酸化防止剤及びワックス沈降防止剤から例えば選択される1つ以上の少量の添加剤を含有する。
【0090】
洗浄剤含有ディーゼル燃料添加剤が公知であり、商業的に入手可能である。かかる添加剤は、エンジン沈着物の蓄積を低減する、排除する、又は遅くすることを意図されるレベルでディーゼル燃料に添加してよい。
【0091】
現目的のためのディーゼル燃料添加剤での使用に好適な洗浄剤の例には、ポリオレフィン置換スクシンイミド又はポリアミンのスクシンイミド、例えばポリイソブチレンスクシンイミド又はポリイソブチレンアミンスクシンイミド、脂肪族アミン、Mannich塩基又はアミン及びポリオレフィン(例えばポリイソブチレン)無水マレイン酸が挙げられる。スクシンイミド分散剤添加剤は例えば、GB−A−960493、欧州特許出願公開第A−0147240号明細書、欧州特許出願公開第A−0482253号明細書、欧州特許出願公開第A−0613938号明細書、欧州特許出願公開第A−0557516号明細書及び国際公開第A−98/42808号パンフレットに記載されている。ポリイソブチレンスクシンイミドなどのポリオレフィン置換スクシンイミドが特に好ましい。
【0092】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、洗浄剤に加えて他の成分を含有してもよい。例は、潤滑性エンハンサー;脱曇り剤、例えばアルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー;消泡剤(例えばポリエーテル変性ポリシロキサン);点火向上剤(セタン価向上剤)(例えば2−エチルヘキシルナイトレート(EHN)、シクロヘキシルナイトレート、ジ−第三ブチルペルオキシド及び米国特許第4,208,190号明細書、2列、27行〜3列、21行に開示されているもの);防錆剤(例えばテトラプロペニルコハク酸のプロパン−1,2−ジオール半エステル、又はコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、そのアルファ−炭素原子の少なくとも1つに20〜500個の炭素原子を含有する非置換もしくは置換脂肪族炭化水素基を有するコハク酸誘導体、例えばポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル);腐食防止剤;付香剤;摩耗防止剤;酸化防止剤(例えば2,6−ジ−第三ブチルフェノールなどのフェノール化合物、又はN,N’−ジ−第二ブチル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン);金属不活性化剤;助燃剤;静電気消散剤;低温流動性向上剤;並びにワックス沈降防止剤である。
【0093】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、とりわけディーゼル燃料組成物が低い(例えば500ppmw以下の)硫黄含有率を有するときに、潤滑性エンハンサーを含有してもよい。添加剤を加えられたディーゼル燃料組成物では、潤滑性エンハンサーは好都合には、1000ppmw未満、好ましくは50〜1000ppmw、更に好ましくは70〜1000ppmwの濃度で存在する。好適な商業的に入手可能な潤滑性エンハンサーには、エステル−及び酸−ベースの添加剤が含まれる。他の潤滑性エンハンサーは、特に低硫黄含有率ディーゼル燃料でのそれらの使用に関連して、特許文献に、例えば:
− Danping Wei及びH.A.Spikesによる論文、「The Lubricity of Diesel Feuls(ディーゼル燃料の潤滑性)」、Wear、III(1986)217−235ページ;
− 国際公開第A−95/33805号パンフレット−低硫黄燃料の潤滑性を高めるための低温流動性向上剤;
− 国際公開第A−94/17160号パンフレット−ディーゼルエンジン噴射システムでの摩耗低減のための燃料添加剤としての、カルボン酸が2〜50個の炭素原子を有し、アルコールが1個以上の炭素原子を有するカルボン酸とアルコールとのある種のエステル、特にグリセロールモノオレエート及びアジピン酸ジ−イソデシル;
− 米国特許第5,490,864号明細書−低硫黄ディーゼル燃料用の摩耗防止潤滑性添加剤としてのある種のジチオリン酸ジエステル−ジアルコール;並びに
− 国際公開第A−98/01516号パンフレット−特に低硫黄ディーゼル燃料に摩耗防止潤滑性効果を与えるための、少なくとも1個のカルボキシル基がそれらの芳香核に結合したある種のアルキル芳香族化合物
に記載されている。
【0094】
更に好ましくは防錆剤及び/又は腐食防止剤及び/又は潤滑性増強添加剤と組み合わせて、消泡剤を含有することはまた、ディーゼル燃料組成物にとって好ましい可能性がある。
【0095】
特に明記しない限り、添加剤を加えられたディーゼル燃料組成物中の各かかる添加剤成分の(活性成分)濃度は、好ましくは10000ppmw以下であり、更に好ましくは0.1〜1000ppmw、有利には0.1〜150ppmwなどの、0.1〜300ppmwの範囲にある。
【0096】
ディーゼル燃料組成物中の任意の脱曇り剤の(活性成分)濃度は、好ましくは0.1〜20ppmw、更に好ましくは1〜15ppmw、なお更に好ましくは1〜10ppmw、有利には1〜5ppmwの範囲にある。存在する任意の点火向上剤の(活性成分)濃度は、好ましくは2600ppmw以下、更に好ましくは2000ppmw以下、好都合には300〜1500ppmwである。ディーゼル燃料組成物中の任意の洗浄剤の(活性成分)濃度は、好ましくは5〜1500ppmw、更に好ましくは10〜750ppmw、最も好ましくは20〜500ppmwの範囲にある。
【0097】
ディーゼル燃料組成物の場合には、例えば、燃料添加剤混合物は一般的には、任意に上記の他の成分と一緒に、洗浄剤と、ディーゼル燃料相溶性希釈剤とを含有するし、これは、鉱油、商標「SHELLSOL」でShell社によって販売されるものなどの溶剤、エステルなどの極性溶剤並びに、特に、アルコール、例えばヘキサノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール及び商標「LINEVOL」、とりわけC7〜9第一級アルコールの混合物であるLINEVOL79アルコールでShell companyによって販売されるものなどのアルコール混合物、又は商業的に入手可能であるC12〜14アルコール混合物であってよい。
【0098】
ディーゼル燃料組成物中の添加剤の全含有率は好適には、0〜10000ppmw、好ましくは5000ppmw未満であってよい。
【0099】
上記において、成分の量(濃度、%vol、ppmw、%wt)は、活性成分のもの、即ち揮発性溶剤/希釈剤材料を除いたものである。
【0100】
本発明の液体燃料組成物は、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を、内燃機関での使用に好適なベース燃料と混合することによって生成する。末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体が混合されるベース燃料がガソリンである場合、生成される液体燃料組成物はガソリン組成物であり;同様に、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体が混合されるベース燃料がディーゼル燃料である場合、生成される液体燃料組成物はディーゼル燃料組成物である。
【0101】
好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の量は、液体燃料組成物の全体重量を基準として、少なくとも1ppmw(重量で百万当たりの部)である。更に好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の量は、以下に示すパラメーター(i)から(xx)の1つ以上と一致する:
(i)少なくとも10ppmw
(ii)少なくとも20ppmw
(iii)少なくとも30ppmw
(iv)少なくとも40ppmw
(v)少なくとも50ppmw
(vi)少なくとも60ppmw
(vii)少なくとも70ppmw
(viii)少なくとも80ppmw
(ix)少なくとも90ppmw
(x)少なくとも100ppmw
(xi)20%wt.以下
(xii)18%wt.以下
(xiii)16%wt.以下
(xiv)14%wt.以下
(xv)12%wt.以下
(xvi)10%wt.以下
(xvii)8%wt.以下
(xviii)6%wt.以下
(xix)4%wt.以下
(xx)2%wt.以下
【0102】
好都合には、本発明の液体燃料組成物中に存在する末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の量はまた、少なくとも200ppmw、少なくとも300ppmw、少なくとも400ppmw、少なくとも500ppmw、又は更に少なくとも1000ppmwであってよい。
【0103】
意外にも、液体燃料組成物での末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用は、液体ベース燃料に対して、液体燃料組成物がガソリンであるときに特に、液体燃料組成物の改善された潤滑性の観点から顕著な利益を提供できることが分かった。
【0104】
本明細書で用いられる用語「改善された/向上する潤滑性」とは、高周波往復リグ(HFRR)を使用して生成される摩耗傷跡が減少することを意味する。
【0105】
液体燃料組成物での末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用はまた、液体ベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明の液体燃料組成物を燃料供給されつつある内燃機関のエンジン清浄度の観点から、特に改善された入口弁沈着清浄性保持及び/又は噴射装置ノズル清浄性保持性能の観点から、利益を提供できることが更に分かった。
【0106】
用語「改善された/向上する入口弁沈着清浄性保持性能」とは、エンジンの入口弁上に形成された沈着物の重量が、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を含有しないベース燃料と比べて減少することを意味する。
【0107】
用語「改善された/向上する噴射装置ノズル清浄性保持性能」とは、エンジンの噴射装置ノズル上に形成された沈着物の量が、エンジントルクの損失によって測定されるように減少することを意味する。
【0108】
液体燃料組成物での末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用はまた、液体ベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明の液体燃料組成物を燃料供給されつつある内燃機関の向上した燃料節約の観点から、利益を提供できることが更に分かった。
【0109】
本発明はそれ故また、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要量と混合することを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の潤滑性の改善方法と、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要量と混合することを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の入口弁沈着清浄性向上性能の改善方法と、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要量と混合することを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の噴射装置ノズル清浄性保持性能の改善方法と、末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の主要量と混合することを含む、内燃機関での使用に好適な液体ベース燃料の燃料節約性能の改善方法と、を提供する。
【0110】
更に、液体燃料組成物での末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用はまた、液体ベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明の液体燃料組成物を燃料供給されつつある内燃機関の潤滑油性能を改善するという観点から、利益を提供できることが分かった。
【0111】
特に、本発明による液体燃料組成物を燃料供給される内燃機関の潤滑油性能の改善は、ロッカーアームカバー、カムバッフル、タイミングチェーンカバー、オイルパン、オイルパンバッフル、及びバブルデッキ上のスラッジ、並びにピストンスカート及びカムバッフル上のワニスなどの、特定のエンジン部品上のスラッジ及びワニスのレベルの低下によって観察することができる。
【0112】
特に、ガソリン組成物での末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用は、ガソリンベース燃料を燃料供給されつつある内燃機関と比べて、本発明のガソリン組成物を燃料供給されつつある内燃機関の、ASTM D 6593−07によって測定されるような、特定のスラッジ及びワニス沈着物形成を抑制するという観点から、利益を提供できる。
【0113】
それ故、本発明はまた、内燃機関の潤滑油の性能の改善方法であって、エンジン潤滑油を含有する内燃機関に本発明による液体燃料組成物を燃料供給することを含む前記方法を提供する。
【0114】
本発明は更に、本発明による液体燃料組成物をエンジンの燃焼室へ導入することを含む、内燃機関の運転方法を提供する。
【0115】
上記の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体はまた好都合には、潤滑組成物に、特に自動車エンジン潤滑油組成物に使用してよい。参照により本明細書に援用される、国際公開第2007/128740号パンフレットは、上記の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を混合できる好適な潤滑基油及び添加剤を開示している。
【0116】
それ故、本発明は、
− 基油と;
− 上記のような末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体と
を含む潤滑組成物を更に提供する。
【0117】
一般的には、末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体は、潤滑組成物の総重量を基準として、0.1〜10.0重量%の範囲の量で、更に好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲の量で本発明の潤滑組成物中に存在する。とりわけ好ましい実施形態によれば、本組成物は、潤滑組成物の総重量を基準として、5.0重量%未満、好ましくは2.0重量%未満の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体を含む。
【0118】
一般的には、潤滑組成物は、0.12重量%未満などの比較的低いリン含有率(ASTM D 5185による)を有する。好ましくは、組成物は、0.08重量%未満のリン含有率を有する。好ましくは、組成物は、0.06重量%より高いリン含有率を有する。
【0119】
また、組成物は0.6重量%未満の硫黄含有率(ASTM D 5185による)を有することが好ましい。
【0120】
更に、組成物は200ppm未満の塩素含有率(ASTM D 808による)を有することが好ましい。
【0121】
とりわけ好ましい実施形態によれば、組成物は、2.0重量%未満の灰分含有率(ASTM D 874による)を有する。
【0122】
本発明のとりわけ好ましい実施形態によれば、組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)化合物を含む。一般的には、存在する場合、ZDDP化合物は、0.01〜1.5重量%、好ましくは0.4〜1.0重量%の量で存在する。ZDDP化合物は、好ましくは12個未満の炭素原子を含有する、第一級、第二級、第三級アルコール又はそれらの混合物から製造されたものであってよい。好ましくは、ZDDP化合物は、3〜8個の炭素原子を含有する第二級アルコールから製造されたものである。
【0123】
潤滑組成物に使用される基油に関して特別な制限は全くなく、様々な通常の鉱油、合成油並びに植物油などの天然由来エステルが好都合に使用できる。
【0124】
使用される基油は、1つ以上の鉱油及び/又は1つ以上の合成油の混合物を好都合には含んでもよく、従って、用語「基油」は、2つ以上の基油を含有する混合物を意味し得る。鉱油には、水素化精製法及び/又は脱ロウによって更に精製可能の液体石油並びに、パラフィン系、ナフテン系、又は混合パラフィン系/ナフテン系タイプの溶剤処理又は酸処理鉱物潤滑油が含まれる。
【0125】
潤滑油組成物での使用のための好適な基油は、グループI〜III鉱物基油、グループIVポリ−アルファオレフィン(PAO)、グループII〜III Fischer−Tropsch由来基油及びそれらの混合物である。
【0126】
「グループI」、「グループII」、「グループIII」及び「グループIV」基油とは、American Petroleum Institute(米国石油協会)(API)のカテゴリーI〜IVについての定義に従った潤滑油基油を意味する。これらのAPIカテゴリーは、API Publication 1509、第16版、Appendix E、2007年4月に定義されている。
【0127】
Fischer−Tropsch由来基油は当該技術分野で公知である。用語「Fischer−Tropsch由来」とは、基油がFischer−Tropsch法の合成生成物であるか、又はそれに由来することを意味する。Fischer−Tropsch由来基油はまた、GTL(Gas−To−Liquids)基油と言われてもよい。潤滑組成物中の基油として好都合に使用できる好適なFischer−Tropsch由来基油は、例えば0 776 959号明細書、欧州特許第0 668 342号明細書、国際公開第97/21788号パンフレット、国際公開第00/15736号パンフレット、国際公開第00/14188号パンフレット、国際公開第00/14187号パンフレット、国際公開第00/14183号パンフレット、国際公開第00/14179号パンフレット、国際公開第00/08115号パンフレット、国際公開第99/41332号パンフレット、欧州特許第1 029 029号明細書、国際公開第01/18156号パンフレット及び国際公開第01/57166号パンフレットに開示されているようなものである。
【0128】
合成油には、オレフィンオリゴマー(ポリアルファオレフィン基油;PAOを含む)などの炭化水素油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール(PAG)、アルキルナフタレン及び脱ロウしたワックス質異性化体が含まれる。呼称「Shell XHVI」(商標)でShell Groupによって販売されている合成炭化水素基油が好都合に使用できる。
【0129】
ポリ−アルファオレフィン基油(PAO)及びそれらの製造は当該技術分野で周知である。潤滑組成物に使用できる好ましいポリ−アルファオレフィン基油は、線状のC〜C32、好ましくはC〜C16アルファオレフィンから誘導してよい。前記ポリ−アルファオレフィン用の特に好ましい原料は、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及び1−テトラデセンである。
【0130】
潤滑組成物に組み込まれる基油の総量は、潤滑組成物の総重量に対して、好ましくは60〜99重量%の範囲の量で、更に好ましくは65〜98重量%の範囲の量で、最も好ましくは70〜95重量%の範囲の量で存在する。
【0131】
好ましくは、完成潤滑組成物は、100℃で2〜80mm/秒の範囲の、更に好ましくは3〜70mm/秒の範囲の、最も好ましくは4〜50mm/秒の範囲の動粘度を有する。
【0132】
潤滑組成物は、摩耗防止添加剤、酸化防止剤、分散剤、洗浄剤、摩擦改良剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、消泡剤及び密封固定剤又は密封相溶化剤などの追加の添加剤を更に含有してよい。
【0133】
当業者は上記の及び他の添加剤に精通しているので、これらは、詳細に本明細書では更に議論されない。かかる添加剤の具体的な例は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477−526ページに記載されている。
【0134】
好ましくは洗浄剤は、存在する場合、適宜、フェノキシド型及びスルホネート型洗浄剤から選択される。
【0135】
潤滑組成物は、上記の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体、及び、任意に、例えば本明細書で前に記載されたような、潤滑組成物中に通常存在する任意の更なる添加剤を、鉱物及び/又は合成基油と混合することによって好都合に調製できる。
【0136】
潤滑組成物での、上記の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用は、潤滑組成物の改善された潤滑性の観点から、利益を提供することができる。
【0137】
更に、潤滑組成物での、上記の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用は、ASTM D 6593−07によって測定されるように、特定のスラッジ及びワニス沈着物形成を抑制するという観点から、利益を提供することができる。
【0138】
更に、潤滑組成物での、上記の末端酸基を有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の使用は、潤滑組成物で潤滑化される内燃機関の燃料経済性を向上させるという観点から、利益を提供することができる。
【0139】
本発明は、以下の実施例から更に理解されるであろう。特に明記しない限り、実施例に開示される全ての量及び濃度は、完全に調合された燃料組成物の重量を基準としている。
【実施例】
【0140】
以下の実施例では、商業的に入手可能な超分散剤、CH−2Cは、Shanghai Sanzheng Polymer Material Co Ltd(中国)から入手可能である。
【0141】
CH−2C超分散剤は、1368の平均分子量、0.61ppmwの測定硫黄含有率、0.05%wt.の測定窒素含有率、及び
【化2】


図1:CH−2Cの化学構造
に示されるタイプの一般化学構造を有した。
【0142】
実施例1〜21及び比較例A〜D
上記のCH−2C超分散剤を、様々な量で、下の表1及び2に記載されるガソリン、ディーゼル、GTLディーゼル及びSwedish Class Iディーゼルベース燃料から選択されるベース燃料にブレンドした。















【0143】
【表1】




【0144】
【表2】

【0145】
上記の液体燃料組成物の潤滑性を評価するために、以下の試験手順を用いた。
【0146】
ディーゼル燃料組成物の潤滑性は、ISO 12156−1に記載される、使用されるHFRR試験を用いて測定した。
【0147】
ガソリン組成物の潤滑性は、修正HFRR試験を用いることによって測定した。修正HFRR試験は、ISO 12156−1に基づき、PCS機器ガソリン転化キット(PCS Instruments Gasoline Conversion Kit)で補充されたPCS機器HFRRを用い、及び15.0ml(±0.2ml)の流体容量、25.0℃(±1℃)の流体温度を用い、そしてここで、蒸発を最小限にするために試験サンプルを覆うPTFEカバーを使用している。
【0148】
潤滑性試験の結果を下の表3に示す。























【0149】
【表3】

【0150】
表3の結果から理解できるように、ベース燃料と比較して、CH−2C超分散剤を含有する燃料組成物(ガソリン及びディーゼル燃料組成物の両方)についての摩耗傷跡の減少がHFRR試験において観察され、それは、ベース燃料と比較して超分散剤を含有する燃料の潤滑性の改善を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0164817 A2号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0233684 A1号
【特許文献3】英国特許出願公開第2197312 A号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0802255 A2号
【特許文献5】国際公開第00/34418 A1号
【特許文献6】国際公開第A−97/14768号
【特許文献7】国際公開第A−97/14769号
【特許文献8】国際公開第A−00/11116号
【特許文献9】国際公開第A−00/11117号
【特許文献10】国際公開第A−01/83406号、
【特許文献11】国際公開第A−01/83648号
【特許文献12】国際公開第A−01/83647号
【特許文献13】国際公開第A−01/83641号
【特許文献14】国際公開第A−00/20535号
【特許文献15】国際公開第A−00/20534号、
【特許文献16】国際公開第A−95/33805号
【特許文献17】国際公開第A−94/17160号
【特許文献18】国際公開第A−98/01516号
【特許文献19】国際公開第97/21788号
【特許文献20】国際公開第01/57166号
【特許文献21】国際公開第01/18156号
【特許文献22】国際公開第00/15736号
【特許文献23】国際公開第00/14188号
【特許文献24】国際公開第00/14187号
【特許文献25】国際公開第00/14183号
【特許文献26】国際公開第00/14179号
【特許文献27】国際公開第00/08115号
【特許文献28】国際公開第99/41332号
【特許文献29】欧州特許第0 164 817号
【特許文献30】欧州特許出願公開第A−0583836号
【特許文献31】欧州特許出願公開第A−1101813号
【特許文献32】欧州特許第0 776 959号
【特許文献33】欧州特許第0 668 342号
【特許文献34】欧州特許第1 029 029号
【特許文献35】米国特許第3,996,059号
【特許文献36】米国特許第5766274号
【特許文献37】米国特許第5378348号
【特許文献38】米国特許第5888376号
【特許文献39】米国特許第6204426号
【特許文献40】米国特許第5,490,864号
【特許文献41】英国特許第1 373 660号
【特許文献42】英国特許第1 342 746号
【非特許文献】
【0152】
【非特許文献1】Danping Wei及びH.A.Spikesによる論文、「The Lubricity of Diesel Feuls(ディーゼル燃料の潤滑性)」、Wear、III(1986)217−235ページ
【非特許文献2】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477−526ページ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 内燃機関での使用に好適なベース燃料と、
− 式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−X (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1又は2であり、Zは、任意に置換された二価の架橋基であり、pは0又は1であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基又は末端酸基を持っている基である)
を有する末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体と、
を含む、液体燃料組成物。
【請求項2】
本発明の前記液体燃料組成物中に存在する末端酸基を有する前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の量が、前記液体燃料組成物の全体量を基準として、少なくとも1ppmwである、請求項1に記載の液体燃料組成物。
【請求項3】
本発明の前記液体燃料組成物中に存在する末端酸基を有する前記1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体の量が、前記液体燃料組成物の全体量を基準として、10ppmw〜20%wtの範囲にある、請求項2に記載の液体燃料組成物。
【請求項4】
Xが式−Z−X(式中、Zは二官能性連結化合物であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基である)の基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項5】
が、ポリアミン、ポリオール、ヒドロキシルアミン、又は請求項1に定義したZ基から選択される二官能性連結化合物である、請求項4に記載の液体燃料組成物。
【請求項6】
前記末端酸基が遊離酸の形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項7】
前記末端酸基が前記酸の塩の形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項8】
前記ベース燃料がガソリンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項9】
前記ベース燃料がディーゼル燃料である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体燃料組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体燃料組成物をエンジンの燃焼室へ導入することを含む、内燃機関の運転方法。
【請求項11】
− 基油と、
− 式(III):
[Y−CO[O−A−CO]−Z−X (III)
(式中、Yは水素又は任意に置換されたヒドロカルビル基であり、Aは、二価の任意に置換されたヒドロカルビル基であり、nは1〜100であり、mは1又は2であり、Zは、任意に置換された二価の架橋基であり、pは0又は1であり、Xは、カルボン酸、カルボキシメチル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートから選択される末端酸基又は末端酸基を持っている基である)
を有する末端酸基を有する1つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)誘導体と、
を含む、潤滑組成物。

【公表番号】特表2011−529517(P2011−529517A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520502(P2011−520502)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059795
【国際公開番号】WO2010/012763
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】