説明

液体粘度調整管理システム

【課題】 本発明は、液体粘度を一定に保つように温度及び水素イオン濃度指数を常時監視コントロールしながら、液体の増粘状態に応じて希釈液である溶剤を断続的に自動で添加し液体粘度を調整するために用いられる液体粘度調整管理システムに関するものである。
【解決手段】本発明は、インキに代表される液体の粘度管理及び調整を長時間にわたって安定的に可能とするために、温度調整装置を使用して、液体温度及び液体タンクの保温又は冷却のための循環液の温度を常時測定記録し、両方の温度の差に応じて循環液の温度をPID制御によって調整し、液体温度を周囲の温度変化に左右されず、常に一定に保つことができるシステムを構築したものである。必要に応じてpH管理及び調整もできる機能を有しているほか、少量の液体を一定量安定して供給し、泡の発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷作業における印刷物品質の均一化のために重要な役割を持つインキの液体粘度を一定に保つように温度及び水素イオン濃度指数(以下、「pH」と記す)を常時監視コントロールしながら、インキの増粘状態に応じて希釈液である溶剤を断続的に自動で添加しインキ粘度を調整するために用いられる液体粘度調整管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、グラビア印刷及びフレキソ印刷といった印刷方式では、通常は印刷機のインキパンに大量の低粘度のインキを溜めて、印刷を行っている。グラビア印刷及びフレキソ印刷に用いられるインキは、インキ中に溶剤や水といった蒸発成分を含んでいるが、これらは、連続印刷作業に伴う時間経過とともに徐々に空気中に蒸発して、インキ粘度が高くなることが知られている。
【0003】
インキ粘度が高くなることで、インキ転移量も印刷開始時と比べて異なっていくため、一定の濃度の印刷画線を得ることができなくなることが懸念され、インキ粘度の管理が均一な印刷物を得る上で重要なポイントになる。このような問題を改善するために、自動でインキ粘度を調整する様々なタイプのインキの粘度調整装置等がインキ粘度調整装置として公知で提案され、使用されている例もあるものの、様々な問題点を有している。
【0004】
インキ粘度の安定化には、インキの温度とpHの調整が不可欠である。インキ粘度は、温度によって大きく左右されるので、インキ粘度を調整するためには温度調整が前提となる。しかし、既存のインキの粘度調整装置等では、間接的にインキの保温や冷却に使用している循環液等の温度を管理する機構のものがほとんどである。このような機構では、インキ温度と循環液温度の間に温度のギャップが生じることとなる。この温度のギャップは、印刷機が設置された場所の気温によって左右されることが多く、1日を通した長時間の連続印刷作業では昼夜によって、また、1年を通した長期の連続印刷作業では季節的な変動となって逆転して現れ、均一なインキ転移量の印刷物を得ることへの障害となっている。
【0005】
また、アルカリ安定型のエマルションやアルカリ可溶型のインキ等では、pHによってインキ粘度が大きく異なることが知られており、インキの温度とともにインキのpHも一定の値に調整しないと粘度を正確に調整できないことが問題となっていた。
【0006】
このようなインキの粘度調整装置として、インキ等用粘度自動調整方法及びその装置が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平08−323961号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記記載のインキ等用粘度自動調整方法及びその装置では、連続的な稼動において長時間にわたって安定的にインキ温度を管理することは不可能であった。
【0009】
また、インキの温度とpH管理を同時に行い、調整することはできなかった。
【0010】
希釈液の溶剤補給に関しては、手動のコントロールバルブを備えているが、このようなバルブでは開度によって微妙な希釈液の注入ができず、希釈のし過ぎという重大な問題が発生する場合があった。
【0011】
インキを供給するポンプには、ダイヤフラムポンプを使用しているため、少量のインキ流量が細かく調整できないことに加えて、気泡が発生しやすいものであった。
【0012】
インキへの希釈液の溶剤の添加においては、希釈液の溶剤が添加されてから全体が混合撹拌されて均一になるまでに時間がかかるため、急激な粘度変化に対しては、大量に希釈液の溶剤が投入されてしまいやすい点が問題となっていた。
【0013】
さらに、完全防爆仕様のため、駆動系にはすべてエアーを使用してあり、外部出力を備えていないことから、粘度異常発生時の警報出力や粘度測定記録を行えないために、自動でインキ粘度を長時間にわたって管理することには不適であった。
【0014】
本発明は、上記のような状況にかんがみ、インキに代表される液体の粘度管理及び調整を長時間にわたって安定的に可能とするために、温度調整装置を使用して、液体温度及び液体タンクの保温又は冷却のための循環液の温度を常時測定記録し、両方の温度の差に応じて循環液の温度をPID制御によって調整し、液体温度を周囲の温度変化に左右されず、常に一定に保つことができるシステムを構築することである。
【0015】
本発明は、必要に応じてpH管理及び調整もできる機能を有しているほか、少量の液体を一定量安定して供給し、泡の発生を抑制できる。
【0016】
液体粘度、液体pH等の測定結果に関わる情報は常時測定し、管理パソコン上にリアルタイムで表示され、所望の設定した時間間隔でハードディスクに保存される機能を有することである。
【0017】
液体の希釈は、所望の設定した時間のみ希釈バルブが開き、設定したインターバルにおいて希釈が断続的に行われることとなっており、液体の過剰希釈が起こらないようにすることである。
【0018】
液体温度、液体pH、液体粘度に関わる情報は、所望の設定した上限値と下限値の中で管理され、上限値又は下限値を逸脱した場合には直ちに警報又はブザーが鳴り、人為的な助けを必要として目的値に復帰されるシステムであり、通常はすべてが自動で管理又は調整されることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、タンクの内槽の液体の温度を測定する液体温度センサと、前記液体のpH値を測定するpHセンサと、前記液体の粘度を測定する液体粘度センサを備え、かつ前記タンクの外側に外槽を備えた液体タンクと、前記液体タンク内の内槽に希釈剤を注入する希釈液タンクと、前記液体タンク内の内槽にpH調整液を注入するpH液調整液タンクと、前記液体タンクの外槽に送る循環液の温度を測定する循環液温度センサを備えた循環液タンクと、前記液体タンクの温度、pH値、温度及び前記循環液タンクの温度の各々の測定値又は設定値の少なくとも一つから前記液体を一定に制御するコンピュータからなる液体粘度調整管理システムであって、前記液体温度センサと、前記循環液温度センサの測定値の差異を前記コンピュータにより判定、演算し、前記液体タンク内の液体を所定の温度設定値に調整する液体温度調整手段と、前記pHセンサで測定したpH値と前記液体温度調整手段により所定の温度設定値に調整した液体の温度とを前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽にpH調整液を注入するpH調整手段と、前記液体粘度センサで測定した粘度と前記pH調整手段により調整した液体のpH値を前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽に希釈剤を注入する液体粘度調整手段とから前記液体タンク内の液体の粘度を一定に制御管理することを特徴とする液体粘度調整管理システムである。
【0020】
本発明は、前記液体タンクの内槽の液体を液体パンに供給するとともに前記液体タンクの内槽に還流する液体供給・還流手段を具備し、液体タンクの内槽と液体パンとの液体の循環を制御することを特徴とする液体粘度調整管理システムである。
【0021】
本発明は、前記液体タンクの内槽に液体を撹拌する撹拌機と、液体内に混入した異物を除去する異物除去フィルタを設けていることを特徴としている。
【0022】
本発明の液体粘度調整管理システムは、前記液体タンクの内槽の液体の温度、pH値及び粘度が各々設定値の許容範囲を逸脱したときは異常状態として表示、警告する表示・警告手段を有することを特徴としている。
【0023】
本発明は、液体タンク内の液体の温度、pH値、温度及び循環液タンクの循環液温度各々の測定値又は設定値の少なくとも一つからコンピュータにより前記液体を一定に制御する方法であって、前記液体の温度と、前記循環液の温度の差異を前記コンピュータにより判定、演算する液体温度調整手段により、前記液体タンク内の液体の温度を調整し、前記液体のpH値と、前記液体温度調整手段により調整した液体の温度とを前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽にpH調整液を注入するpH調整手段により、前記液体タンク内の液体のpH値を調整した後、前記液体の粘度と、前記pH調整手段により調整した液体のpH値とを前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽に希釈剤を注入する液体粘度調整手段によって、前記液体タンク内の液体の粘度を調整し、液体の状態を一定に制御管理することを特徴とする液体の調整方法である。
【0024】
本発明は、グラビアインキ又はフレキソインキといったインキ、基材に塗布する塗布液又は接着剤あるいは粘着剤などの液体の、温度、pH値、粘度を調整する液体粘度調整管理システムを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、液体温度を管理値の±0.5℃以内の精度範囲で極めて微細な温度管理をすることができ、人為的な手作業による管理手段よりも正確にできる。
【0026】
本発明は、印刷作業におけるインキ、塗布液などの液体粘度を一定に保つように温度と溶剤添加量を自動調整する液体粘度管理装置として使用することができ、一つの装置から複数の印刷機械や塗布機に供給できるシステムであるので、省人化にも寄与できる。
【0027】
本発明は、印刷以外においても、接着、粘着、塗布、塗装作業などにおける接着剤、塗布液、塗料などの液体についても、温度と溶剤添加量を自動調整する必要のある場合に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態による液体粘度調整管理システムについて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0029】
本発明の液体粘度調整管理システムの構成について、以下にそれぞれの実施の形態として、液体をインキに適用した場合について、図1を基に説明する。
【0030】
本発明に記載される「インキ粘度が高くなる」とは、インキ中の溶剤が蒸発し増粘した状態になるものである。
【0031】
本発明のインキ粘度調整管理システムでは、インキ2Aがインキ供給・還流手段2によって、印刷機のインキパン2Cとインキタンク2Bの内槽11を循環している。インキタンク2Bの内槽11では、インキ温度調整手段3、pH値調整手段4、インキ粘度調整手段5により、インキ2Aの粘度調整が行われる。そして、制御部7によって、システム全体を制御している。
【0032】
インキ温度調整手段3であるインキタンク2Bの内槽11のインキ2Aの温度を測定するインキ温度センサ3Bと、循環液タンク3Gの循環液の温度を測定する循環液温度センサ3Dからつながるインキ温度調整装置3Hの構成として、インキタンク2Bは、温度を調整できるように内側の内槽11と外側の外槽12の二槽から成る二重構造にしてあり、内槽11にはインキ2Aを入れ、外槽12には、インキ温度調整装置3Hにより温度制御された循環液3Cを通している。インキ温度は、インキタンク2Bの内槽11のインキ2Aを、インキタンク2Bの外槽12に通した循環液3Cで加温又は冷却することによって調整する。循環液3Cは、循環液ポンプ3Fで循環される。
【0033】
インキタンク2Bのインキ温度を一定に保つために、循環液3Cの温度調節には、ヒーターと冷却器を具備し加温又は冷却を行う循環液加熱・冷却装置3Eを設置している。
【0034】
インキ2Aの温度と、循環液3Cの温度は、インキ温度調整装置3H内のデュアルコントローラを介して双方の温度値データから適宜温度制御される。このデュアルコントローラは、制御部7内に備えても良い。
【0035】
インキタンクの内槽11には、インキ温度センサ3B、pHセンサ4B、粘度センサ5Bを設置し、各センサはインキの温度、pH、粘度を測定し、各センサからの信号処理を行う制御部7に夫々結線してあり、さらに演算部22に結線している。
【0036】
インキタンクの内槽11には、インキ2Aが均一な粘度、温度、pHを絶えず保つように撹拌機2Dを設けている。また、インキパン2Cからの戻りインキに混入した紙粉やインキ滓等の異物を除去する異物除去フィルタ2Eをインキタンク2Bのインキ戻り口に設置している。
【0037】
循環液加熱・冷却装置3Eからインキタンク2Bの外槽12に、温度制御された循環液3Cを導くための配管を施し、循環液加熱・冷却装置3Eとの間で循環させて温度調整を行う。ここでは、循環液3Cをインキタンク2Bの外槽12に通しているが、配管をインキタンク2Bの周囲に巻き付けるようにしても良い。
【0038】
制御部7にはインキタンク2Bの内槽11のインキ2Aの温度を検出するインキ温度センサ3Bと、インキ2Aの温度制御する循環液3Cの温度を検出する循環液温度センサ3Dを施し、温度信号を受けるための配線が施されていて、インキ温度(PID)制御部3Aにこれらの温度データを送る。また、インキ温度調整装置3Hには、温度制御機構が具備されており、インキ温度(PID)制御部3Aで、インキ2Aと温度制御する循環液3Cの温度差を検出してPID制御による温度制御を行う。
【0039】
PID制御は、計装制御に使われる比例動作(Proportional)、積分動作(Integral)、微分動作(Derivative)の三つの動作のできる演算制御で、これにより作動信号は入力と出力の間における、重みづけられた和の差、その差の時間積分、その差の時間微分を表す。本発明に関連して、制御信号は、最初に比例項を求めることによって計算される。計算された制御信号が基準値を超える場合、インキ温度(PID)制御部3Aは、次に実行時間がゼロに等しいかどうかを判別し、等しければ停止し、等しくなければ動作に必要な時間情報を入手する。インキ温度(PID)制御部3Aからの信号により、インキ2A及び循環液3Cの温度が設定値に維持されるようになっている。
【0040】
pH値調整手段4、インキ粘度調整手段5は、夫々pH制御部4Aとインキ粘度制御部5Aで動作する。制御部7から発信されるpH、粘度に対応した信号に対して、pH制御部4Aからの信号によりpH調整液を注入するpH値調整手段3には、pH調整液を満たしたpH調整液タンク4EからpH調整液の適切な量を導くための配管及びpH調整液電磁弁4Dを設置している。
【0041】
また、インキ粘度制御部5Aからの信号により希釈液を注入するインキ粘度調整手段5には、粘度を調整する希釈液を満たした希釈液タンク5Eから希釈液の適切な量を導くための配管及び希釈液電磁弁5Dを設置している。
【0042】
pH制御部4Aには、pH調整液の過剰注入を防止し、注入量を調整する注入制御・異常表示装置8を設置している。
【0043】
また、希釈液電磁弁5Dには、希釈液の過剰注入を防止し、注入量を調整する注入制御・異常表示装置8を設置している。
【0044】
インキ粘度の調整は、インキタンク2Bの内槽11に回転式の粘度センサ5B、pHセンサ4B、インキ温度センサ3Bを設置し、回転式の粘度センサ5B、pHセンサ4B、インキ温度センサ3Bからの信号を制御部7によって測定及び判定を行う。
【0045】
インキ粘度値の上昇やpH値の変化に伴い、制御部7から動作のための各上限又は下限設定値を超えた場合に信号が出力されるように設定してあり、上限信号を注入制御・異常表示装置8が受けると、あらかじめ希釈液及び/又はpH調整液の注入に対して、粘度値やpH値が安定するまでの遅れ時間を考慮して、希釈液及び/又はpH調整液を注入するpH調整液電磁弁4D及び/又は希釈液電磁弁5Dの開閉時間を制御している。
【0046】
インキ温度の調整は、演算部22のデータ処理部7Aでインキタンク2Bの内槽11のインキ温度センサ3Bによるインキ2Aの温度の測定データと、インキ温度調整装置3Hで温度調整に使用する循環液3Cの温度の測定データを受けることで行われる。インキの温度値が著しく設定値よりもかけ離れていた場合には、制御指令部7Bからの信号で、循環液加熱・冷却装置3Eの温度を加温又は冷却によって、設定値よりも差を大きくして温度調整に使用する循環液3Cの温度を調整する。
【0047】
インキ2Aをインキパン2Cに送るインキポンプ2Fには、インキ供給・還流手段2により、チューブポンプを採用し、ダイヤフラムポンプと比較して揚程の変化による流量変動が少なく、少量で安定した送り量を確保している。
【実施例】
【0048】
本発明について図面に基づいて実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0049】
本発明の実施例においても同様に、液体タンクで使用する液体を印刷機のインキに適用した場合について以下に説明する。印刷開始時にインキの管理設定温度設定値が20℃で、実際のインキ温度が25℃であった場合について、操作例を説明する。まず、インキタンクに設置されているインキ温度センサによりインキ温度を検出し(S11)、又循環液タンクの循環液温度センサにより循環液温度をインキ温度調整装置3Hで循環液3Cを冷却してインキ温度を下げていく(S14)。インキ2Aと循環液3Cの温度はデュアルコントローラで常に測定し、PID制御しているため、インキ2Aの温度が設定値に近づくにつれて温度制御機構であるインキ温度(PID)制御部3A及び循環液加熱・冷却装置3Eによって、冷却していた循環液3Cの温度を少しずつ加温して温度を上げ、インキ2Aの温度が設定値より超えることがないように正確にかつ短時間で温度調整を行う。インキ温度が設定温度20℃に一定になると、液体pH制御フロー(図3)の調整を行う。
【0050】
印刷中においてもインキ温度を常時監視しており、インキパン2Cからの戻りインキ2Aが外気温や印刷ユニットのジュール熱等の影響によって温度が設定値より上昇あるいは下降した場合、印刷開始時の例と同様に、液体温度調整装置3により循環液3Cの温度制御を行い、常時安定した温度を保っている。
【0051】
インキタンク8Bの内槽9に設置されたインキのpHを計測するpHセンサにより、インキのpH値を検出し(S21)、インキのpH値を設定pH値と比較し、その許容範囲か否かによってインキpH制御フロー(図3)、又はその許容範囲の上限か下限によって、pH調整液の注入量をインキpH制御部27により指示する(S24)。
【0052】
インキタンク8Bの内槽9に設置されたインキの粘度を計測する粘度センサ5Bにより、インキの粘度を検出し(S31)、インキの粘度を設定値と比較し、その許容範囲か否かによってインキ粘度制御フロー(図4)、又はその許容範囲の上限か下限によって、粘度調整する希釈液の注入量をインキ粘度制御部27により指示する(S34)。
【0053】
インキ粘度の全体の制御としては、最初に、インキタンク8Bの内槽9のインキ温度が許容範囲に入っているかを確認し(S41)、次に、インキタンク8Bの内槽9のインキのpHが許容範囲に入っているかを確認し(S42)、それから、インキタンク8Bの内槽9のインキの粘度が許容範囲に入っているかを確認する(S43)ことで、制御することとなっている。
【0054】
印刷中にインキ粘度値やpH値が設定値より上昇して上限値を超えた場合、粘度センサ5Bからの信号を受けて計測している制御部7から上限信号を注入制御・異常表示装置8へ出力する。注入制御・異常表示装置8では上限信号を受けている間、希釈液電磁弁5DやpH調整液電磁弁4Dの開閉を行うとともに警報装置9によって事態を知らせるようになっている。この際、注入してから撹拌機2Dで撹拌されてインキが安定するまでの時間を考慮して、時間設定による断続的に希釈液電磁弁5DやpH調整液電磁弁4Dの開閉を行い、希釈し過ぎもしくはpH調整液の入れ過ぎによる粘度等の異常下降を防止している。例えば、5秒間注入したら60秒後に再度5秒間の注入を行い、粘度センサ5Bで粘度を検出して粘度が上限値より下がった場合は、上限信号が止まるので希釈液の注入が止まるように任意に設定できるようになっている。
【0055】
インキ2Aの温度、循環液3Cの温度、インキ2AのpH値の管理データは付設のコンピュータ10の記憶部23に記憶され、リアルタイム又は設定したサンプリング間隔で測定結果が表示・出力部24に表示され、自動的に記憶部23のハードディスクに取り込まれるようになっている。
【0056】
インキ粘度及びインキpH及び/又はインキ温度においては、上限値及び下限値の設定が任意でできるようになっているため、もしも、インキ補充時の大幅なインキ不安定やその他の自動で調整できないような事象が発生し、インキ粘度又はインキpH又はインキ温度が管理設定値から逸脱し始めた場合には、警報装置9によって人為的な動作を求める警報で知らせることができるシステムになっている。
【0057】
コンピュータ10に粘度管理データが蓄積されているので、自動で調整できないような事象が発生し、印刷物について追跡調査する場合は、この管理データを基に調査することができる。
【0058】
本発明の実施例における図面では、制御装置内に、インキ温度調整装置3H、pH調整部4、インキ粘度制御部5、制御部7と注入制御・異常表示装置8が内蔵された場合を例示しているが、構成要件を満たしていれば、内蔵されなくても良い。
【0059】
本発明の液体粘度調整管理システムを、pH調整を行わなくても良い液体に適用する場合には、構成用件のうち、液体のpH調整に関する機構(例えば、pH制御部4A他)は、機能させなければ、適用することができるが、液体のpH調整に関する機構を具備しない状態で使用しても良い。
【0060】
本発明の液体粘度調整管理システムは、上述の操作を自動で行うシステムであるが、液体温度調整手段、pH値調整手段、液体粘度調整手段の各部は、夫々単独で稼働することもできるので、液体の粘度調整において、適宜使用することができる。全体のフロー図は、各調整手段を、温度、pH値、粘度の順序どおりに行う場合を例示しているが、この順序は入れ替わっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の液体粘度調整管理システムの概略図である。
【図2】液体温度制御のフロー図である。
【図3】液体pH制御のフロー図である。
【図4】液体粘度制御のフロー図である。
【図5】液体粘度制御全体のフロー図である。
【図6】コンピュータ制御の概略図である。
【図7】本発明の液体粘度調整管理システムの構成図である。
【符号の説明】
【0062】
2 インキ供給・還流手段
2A インキ
2B インキタンク
2C インキパン
2D 撹拌機
2E 異物除去フィルタ
2F インキポンプ
3 インキ温度調整手段
3A インキ温度(PID)制御部
3B インキ温度センサ
3C 循環液
3D 循環液温度センサ
3E 循環液加熱・冷却装置
3F 循環液ポンプ
3G 循環液タンク
3H インキ温度調整装置
4 pH値調整手段
4A pH制御部
4B pHセンサ
4C pH調整液注入部
4D pH調整液電磁弁
4E pH調整液タンク
5 インキ粘度調整手段
5A インキ粘度制御部
5B 粘度センサ
5C 希釈液注入部
5D 希釈液電磁弁
5E 希釈液タンク
6 データ管理部
7、21 制御部
7A データ処理部
7B 制御指令部
8 注入制御・異常表示装置
9 警報装置
10 コンピュータ
11 内槽
12 外槽
20 入力部
22 演算部
23 記憶部
24 出力部
2´ 液体供給・還流手段
2A´ 液体
2B´ 液体タンク
2C´ 液体パン
2F´ 液体ポンプ
3´ 液体温度調整手段
3A´ 液体温度(PID)制御部
3B´ 液体温度センサ
3H´ 液体温度調整装置
5´ 液体粘度調整手段
5A´ 液体粘度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの内槽の液体の温度を測定する液体温度センサと、前記液体のpH値を測定するpHセンサと、前記液体の粘度を測定する液体粘度センサを備え、かつ前記タンクの外側に外槽を備えた液体タンクと、
前記液体タンク内の内槽に希釈剤を注入する希釈液タンクと、
前記液体タンク内の内槽にpH調整液を注入するpH液調整液タンクと、
前記液体タンクの外槽に送る循環液の温度を測定する循環液温度センサを備えた循環液タンクと、
前記液体タンクの温度、pH値、温度及び前記循環液タンクの温度の各々の測定値又は設定値の少なくとも一つから前記液体を一定に制御するコンピュータから成る液体粘度調整管理システムであって、
前記液体温度センサと、前記循環液温度センサの測定値の差異を前記コンピュータにより判定、演算し、前記液体タンク内の液体を所定の温度設定値に調整する液体温度調整手段と、
前記pHセンサで測定したpH値と前記液体温度調整手段により所定の温度設定値に調整した液体の温度とを前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽にpH調整液を注入するpH調整手段と、
前記液体粘度センサで測定した粘度と前記pH調整手段により調整した液体のpH値を前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽に希釈剤を注入する液体粘度調整手段とから前記液体タンク内の液体の粘度を一定に制御管理することを特徴とする液体粘度調整管理システム。
【請求項2】
前記液体タンクの内槽の液体を液体パンに供給するとともに、前記液体タンクの内槽に環流する液体供給・環流手段を具備し、液体タンクの内槽と液体パンとの液体の循環を制御することを特徴とする請求項1記載の液体粘度調整管理システム。
【請求項3】
前記液体タンクの内槽には、液体を撹拌する撹拌機と、液体内に混入した異物を除去する異物除去フィルタを設けていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体粘度調整管理システム。
【請求項4】
前記液体タンクの内槽の液体の温度、pH値及び粘度が各々設定値の許容範囲を逸脱したときは異常状態として表示、警告する表示・警告手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の液体粘度調整管理システム。
【請求項5】
液体タンク内の液体の温度、pH値、温度及び循環液タンクの循環液温度各々の測定値又は設定値の少なくとも一つからコンピュータにより前記液体を一定に制御する方法であって、
前記液体の温度と、前記循環液の温度の差異を前記コンピュータにより判定、演算する液体温度調整手段により、前記液体タンク内の液体の温度を調整し、
前記液体のpH値と、前記液体温度調整手段により調整した液体の温度とを前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽にpH調整液を注入するpH調整手段により、前記液体タンク内の液体のpH値を調整した後、
前記液体の粘度と、前記pH調整手段により調整した液体のpH値とを前記コンピュータにより演算し、前記液体タンクの内槽に希釈剤を注入する液体粘度調整手段によって、前記液体タンク内の液体の粘度を調整し、液体の状態を一定に制御管理することを特徴とする液体の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−35587(P2006−35587A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217595(P2004−217595)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】