説明

液体食品保存用樹脂組成物及びそれを用いた積層体

【課題】 酸素による劣化を抑制して、内容物を安全かつ長期間保存し得る水性の液体食品の包装材等に適した素材、及びそれを用いた該食品包装用積層体の提供。
【解決手段】 親水性の還元性有機化合物若しくは該有機化合物と多孔性無機物質が親水性かつ水不溶性熱可塑性樹脂を介して疎水性熱可塑性樹脂に分散している組成物及びそれを最内層若しくは最内層の隣接層とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁、牛乳、酒等水性の液体食品保存用樹脂組成物及びそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品包装密封用の樹脂製容器や紙製容器は、十分な強度を有し、軽量であるため、その利用範囲が広がっている。
しかし、樹脂製容器や紙製容器は、金属缶等に比べて酸素透過量が大きく、密封保存中の内容物の風味に劣化が認められ、内容物の賞味期間が短い等の欠点を有していた。
【0003】
そこで、賞味期間延長のため、樹脂製容器の場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の酸素バリアー性樹脂を介在させたり、紙製容器の場合には、アルミニウム箔やエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の酸素バリアー性樹脂、或いはシリカ等の無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムを紙基材にラミネートした容器が開発され、液体食品の保存に使用されている。
【0004】
又、積層体を構成する樹脂層や接着層に、ステアリン酸コバルト等の酸化触媒や、鉄粉や還元性有機化合物を含有する酸素吸収性容器等が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平1−278335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記酸素バリアー性樹脂を積層した容器においても、その遮断性は完全ではないし、アルミニウム箔や無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムをラミネートした容器においては、ラミネート時や容器の成形加工時に微小亀裂(ピンホール)が生じる危険性があり、酸素ガスバリアーが低下し易い。
【0006】
又、鉄粉を含有する場合、十分な効果を得るためには重量増加が著しく、軽量容器としての特性を失ってしまう。加えて衛生性にも問題がある。酸化触媒を用いる場合、その衛生性と機能発現の制御に問題がある。
更に、還元性有機化合物を用いる場合、安全なものを使用し、該有機化合物の耐熱性や、樹脂層からの溶出に注意を払う必要がある等の困難を伴う。
【0007】
本発明は、液体食品を包装する場合等において、内容物を安全かつ長期間保存し得る、還元性有機化合物含有の樹脂組成物及びそれを用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、親水性の還元性有機化合物又は該還元性有機化合物と多孔性無機物質を、予め親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂と混練した後、疎水性の熱可塑性樹脂に分散して得た樹脂組成物、及び該組成物からなる層を最内層とするか、該組成物からなる層を特定の樹脂からなる最内層の隣接層とした積層体が、本発明の目的を達成し得ることを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)親水性の還元性有機化合物と親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂の混練物が疎水性の熱可塑性樹脂に分散していることからなる液体食品保存用樹脂組成物、(2)親水性の還元性有機化合物、多孔性無機物質及び親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂の混練物が疎水性の熱可塑性樹脂に分散していることからなる液体食品保存用樹脂組成物、(3)上記(1)又は(2)の組成物からなる層を最内層とする液体食品包装用積層体、(4)親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂からなる層を最内層とし、上記(1)又は(2)の組成物からなる層を該最内層の隣接層とする該積層体及び(5)40℃,90%RHでの水蒸気透過度が5g/m・24時間以上の樹脂層を最内層とし、上記(1)又は(2)の組成物からなる層を該最内層の隣接層とする該積層体を要旨とする。
【0010】
なお、本発明の積層体において、最内層とは、該積層体を用いて液体食品を包装したときに、液体食品に最も近い層、すなわち液体食品が直接触れる層を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、水の存在下、酸素吸収能が発揮され、よってこの組成物を最内層又は最内層の隣接層とする積層体から成形される容器は、容器内に封入された酸素ばかりでなく、容器外部から透過して来る酸素をも吸収して、低減することができる。
従って、保管中の液体食品の酸素による劣化を抑制し、品質の保持、賞味期間の延長を可能とする。
【0012】
又、上記酸素吸収能は、該還元性有機化合物の濃度、該還元性有機化合物と親水性かつ水不溶性熱可塑性樹脂の混練物の配合割合を変えることによって容易に調整でき、よって、液体食品の種類や保管中の内外部の環境に応じて簡単に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いられる親水性の還元性有機化合物としては、アスコルビン酸類、多価フェノール類、カテキン類等が挙げられ、アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アラボアスコルビン酸およびそれらの塩類(ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられる。
【0014】
多価フェノール類としては、ピロガロール、カテコール、沒食子酸、レゾルシン、ヒドロキノン等が挙げられ、それらの混合物も使用できる。
【0015】
カテキン類としては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテンガレート等が挙げられ、それらの混合物も使用し得る。
【0016】
これらの還元性有機化合物の中でも、アスコルビン酸類及びカテキン類、特にアスコルビン酸が望ましい。
【0017】
親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、けん化度95%以上のポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12等)、ポリエステル樹脂、アセチルセルロース等が使用できる。これらの中でも、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0018】
疎水性の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、エチレン−α−不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体等を用いることができる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン系樹脂(ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等)、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0020】
エチレン−α−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸等のα−不飽和カルボン酸との共重合体が挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンは、上記ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸若しくはその誘導体をグラフトさせて得たものである。
【0022】
不飽和カルボン酸としては、α−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸、環内にシス型二重結合を有する脂環式不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。α−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が、α,β−不飽和ジカルボン酸若しくはその誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸等が、環内にシス型二重結合を有する脂環式不飽和ジカルボン酸若しくはその誘導体としては、ハイミツク酸、無水ハイミツク酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、クロリデン酸等が、それぞれ挙げられる。
【0023】
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィンとエチレン若しくはα−オレフィンとの共重合体である。
【0024】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−ノルボルネン等が、α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が、それぞれ挙げられる。
【0025】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0026】
本発明で用いられる多孔性無機物質としては、ゼオライト、シリカゲル、セピオライト、多孔質シリカ、多孔質シリカ−アルミナ等が挙げられる。これらの中でも、特にゼオライトが望ましい。
【0027】
ゼオライトとしては、天然ゼオライトも使用可能であるが、均一性や不純物を含まないという点から、合成ゼオライトが好ましく、特にA型、X型及びY型ゼオライトが好ましい。これらの合成ゼオライトは、水素型でも良く、カチオン型(ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型等)でも良い。
【0028】
これら多孔性無機物質は、乾燥後用いるのが望ましい。
【0029】
本発明の組成物(1)は、親水性の還元性有機化合物(以下、A成分という。)と親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂(以下、B成分という。)の混練物が、疎水性の熱可塑性樹脂(以下、C成分という。)に分散しているものであるが、このものは、まずA成分とB成分を混練して、両者の混練物を得た後、C成分と混練することにより調製することができる。
【0030】
A成分とB成分の混練は、望ましくは、A成分の融点或いは分解点以下、かつB成分の溶融温度以上の温度で、両成分を適当な混練機、特に望ましくは押出機中で混練することにより行われる。
【0031】
A成分とB成分の使用割合は、A成分やB成分の種類、液体食品の種類、その保存期間、保存容器内外部の雰囲気状況等により一概に規定できないが、A成分とB成分の混練物中、A成分が通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜20重量%となるようにする。
【0032】
次いで、上記で得られたA成分とB成分の混練物を、C成分と混練して、C成分中に分散させることにより、本発明の組成物(1)が得られる。該混練物とC成分の混練は、望ましくはC成分の溶融温度以上の温度で、A成分とB成分の混練と同様な方式で行われる。
【0033】
A成分とB成分の混練物とC成分の混練割合は、A成分とB成分の混練の際と同様の理由で、一概に規定できないが、本発明の組成物(1)中、A成分が通常0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、B成分が通常3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、C成分が通常50〜96重量%、好ましくは65〜95重量%となるように両者を用いる。
【0034】
A成分とB成分の混練物とC成分を混練する際に、必要に応じて、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の相溶化剤を用いることも可能である。又、各成分の混練時に、衛生性を損なわない程度の量の公知の抗酸化剤を添加しても良い。
【0035】
次に、本発明の組成物(2)は、A成分、多孔性無機物質(以下、D成分という。)及びB成分の混練物が、C成分に分散しているものであるが、このものは、まずA成分とD成分を同時若しくは個々にB成分と混練するか、A成分とD成分を混合した後、B成分と混練し、更にC成分と混練することにより調製することができる。これらの中でも、A成分とD成分を混合した後、B成分と混練し、更にC成分と混練する方法によって調製するのが特に望ましい。
【0036】
A成分、D成分及びB成分の混練は、望ましくは、A成分の融点或いは分解点以下、かつB成分の溶融温度以上の温度で、各成分を適当な混練機、特に望ましくは押出機中で混練することにより行われる。
【0037】
A成分、D成分及びB成分の使用割合は、A成分、D成分及びB成分の種類、液体食品の種類、その保存期間、保存容器内外部の雰囲気状況等により一概に規定できないが、A成分、D成分及びB成分の混練物中、A成分が通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜20重量%、D成分が通常0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%となるようにする。又、A成分とD成分の割合は、D/A(重量比)が、0.1〜5となるようにするのが望ましい。
【0038】
次いで、上記で得られたA成分、D成分及びB成分の混練物を、C成分と混練して、A成分、D成分及びB成分の混練物をC成分中に分散させることにより、本発明の組成物(2)が得られる。該混練物とC成分の混練は、望ましくはC成分の溶融温度以上の温度で、A成分、D成分及びB成分の混練と同様な方式で行われる。
【0039】
A成分、D成分及びB成分の混練物とC成分の混練割合は、A成分、D成分及びB成分の混練の際と同様の理由で、一概に規定できないが、本発明の組成物(2)中、A成分が通常0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、D成分が通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、B成分が通常3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、C成分が通常40〜96重量%、好ましくは60〜95重量%となるように各成分を用いる。
【0040】
A成分、D成分及びB成分の混練物とC成分を混練する際に、必要に応じて、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の相溶化剤を用いることも可能である。又、各成分の混練時に、衛生性を損なわない程度の量の公知の抗酸化剤を添加しても良い。
【0041】
上記のようにして得られた本発明の組成物(1)及び組成物(2)は、それぞれが、例えば、液体食品保存用の包装材料として、そのまま、或いは該包装材料となる素材に配合して、それぞれ使用することができる。
【0042】
又、組成物(1)又は組成物(2)(以下、これらを該組成物ということがある。)から適当な形に成形した成形物を、液体食品包装容器に、そのまま、或いは適当な部材に包む等して、内容物と共に充填することも可能である。
【0043】
本発明は、更に、該組成物からなる層を最内層とする液体食品包装用積層体、親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂からなる層を最内層とし、該組成物からなる層を該最内層の隣接層とする該積層体及び40℃,90%RH(相対湿度)での水蒸気透過度が5g/m・24時間以上の樹脂層を最内層とし、該組成物からなる層を該最内層の隣接層とする該積層体である。これら積層体の厚さは特定されるものではないが、液体食品を包装する包装体の通常の厚さである10〜600μmである。勿論これよりも薄くても、厚くても良い。
【0044】
最内層とする親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂としては、該組成物の一成分である前記B成分の中から任意に選ばれるが、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びけん化度95%以上のポリビニルアルコールが、特に、エチレン−ビニルアルコール共重合体が望ましい。
【0045】
又、最内層とする上記水蒸気透過度の樹脂層の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー等及びそれらの混合物が挙げられる。ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及びエチレン−α−不飽和カルボン酸共重合体は、前記の中から任意に選ばれる。上記の中でも、ポリオレフィン樹脂が望ましく、特に、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が望ましい。又、上記水蒸気透過度を満足する樹脂層の厚さは、樹脂の種類や加工法等に依存するが、通常は80μm以下であり、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の場合、通常30μm以下である。
【0046】
該積層体の基材層としては、各種合成樹脂製フィルムやシート、紙、金属箔等、或いはこれらの積層体等の液体食品包装用の基材層として通常用いられるものであれば、いずれも使用可能である。
【0047】
基材層と、該組成物からなる層(以下、樹脂層ということがある。)との積層方法は、特に限定されるものではなく、通常の積層方法が採用できる。
【0048】
例えば、上記基材層上に上記樹脂層を押出しコーティングする押出しラミネーション法、上記基材層とフィルムやシート状の上記樹脂層を接着剤等を介して積層するドライラミネーション法、上記基材層又はフィルムやシート状の上記樹脂層の少なくとも表面を溶融して両者を積層するダイレクトラミネーション法、上記基材層とフィルムやシート状の上記樹脂層とを、両者の中間に接着層となる等の素材を押出してラミネーションする、いわゆるサンドイッチラミネーション法、基材層となる合成樹脂と上記樹脂層となる上記樹脂混練物を、それぞれ押出機等に装着されたフラットダイやサーキュラーダイから押出し、両者を積層する共押出しラミネーション法等が挙げられる。
【0049】
又、親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂からなる最内層と、その隣接層である上記樹脂層との積層方法は、上記基材層と上記樹脂層との積層方法に準じればよい。更に、上記水蒸気透過度の樹脂層なる最内層と、その隣接層である上記樹脂層との積層方法も同様である。
【0050】
本発明の積層体は、上記のように基材層と上記樹脂層、更には上記親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂からなる層又は上記水蒸気透過度の樹脂層、を基本層とするが、基材層と上記樹脂層の中間や基材層の外部に同じ部材や他の部材(例えば、ガスバリアー性樹脂層、無機酸化物蒸着合成樹脂フィルム等)からなる層を設けて多層体とすることは任意である。
【0051】
上記のような構成からなる該組成物(それからの前記包装材料、成形物等を含む)及び積層体から成形される液体食品用容器は、充填、密封された内容物の液体食品からの水分が該組成物や積層体の最内層又はそれに隣接する層に作用することにより、酸素吸収能力が発現する。
【0052】
すなわち、内容物を充填する前は、前記A成分は酸素ガスバリアーを有する前記B成分に保護されており、周囲の酸素により消費されることがないため、酸素吸収能は保持されている。しかし、内容物が充填されると、前記C成分を通して、水分が徐々にC成分中に分散されているB成分に到達するため、B成分はその酸素バリアー性を失い、その中に包含されているA成分が酸素吸収能を発揮する。
【0053】
特に、前記D成分を前記A成分と共に用いると、A成分の酸素吸収能を向上せしめる。又、上記水蒸気透過度の樹脂からなる層を最内層とすると、隣接の樹脂層の酸素吸収能を保持しながら、内容物のシール性を改善すると共に、前記A成分が溶出する危険性を低減させる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により、詳細に説明する。
【0055】
(実施例1)
アスコルビン酸5重量部とエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量47モル%、融点160℃)95重量部を二軸押出機に供給して混練し、押出機に装着されたダイから両者の混練物を吐出してペレットを得た。
【0056】
上記のペレット10重量部と低密度ポリエチレン(密度0.919g/cm)90重量部を上記と同様にして混練し、アスコルビン酸含有量が0.5重量%の本発明の組成物からなるペレットを得た。
【0057】
このペレット50gと蒸溜水10mlとを、内容積180mlの酸素不透過性のカップ状容器に入れ、酸素不透過性のフィルムでヒートシールして密封した。
【0058】
この容器を、15℃の恒温槽に保管し、ヒートシール直後、1週間後及び2週間後の容器内の酸素濃度を微量酸素分析計にて測定して、酸素減少量を計算し、これを酸素吸収量とした。酸素吸収量を表1に示した。
【0059】
(実施例2)
アスコルビン酸とエチレン−ビニルアルコール共重合体の混練物を20重量部、低密度ポリエチレンを80重量部とした以外は、実施例1と同様にして、アスコルビン酸含有量が1重量%の組成物からなるペレットを得た。
このペレットを用いて、実施例1と同様にして酸素吸収量を求め、その値を表1に示した。
【0060】
(実施例3)
アスコルビン酸10重量部とエチレン−ビニルアルコール共重合体90重量部を用いて得たペレットを用いた以外は、実施例2と同様にして、アスコルビン酸を2重量%含有する本発明の組成物からなるペレットを得た。
【0061】
このペレットを用いて、実施例1と同様にして酸素吸収量を求め、その値を表1に示した。
【0062】
(実施例4)
アスコルビン酸5重量部の代わりに、アスコルビン酸2.5重量部とA型ゼオライト2.5重量部の混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、アスコルビン酸含有量2.5重量%及びA型ゼオライト2.5重量%の組成物からなるペレットを得た。
【0063】
このペレットを用いて、実施例1と同様にして酸素吸収量を求め、その値を表1に示した。
【0064】
(比較例1)
アスコルビン酸を用いない以外は、実施例1と同様にして得たペレットを用いて、実施例1と同様にして酸素吸収量を求め、その値を表1に示した。
【0065】
(参考例1〜4)
実施例1〜4で得られた本発明の組成物からなるペレットを、蒸留水を用いることなく実施例1と同様にして密封、保管し、酸素吸収量を求め、それらの値を表1に示した。なお、参考例1は実施例1と、参考例2は実施例2と、参考例3は実施例3と、参考例4は実施例4とそれぞれ対応する。
【0066】
【表1】

【0067】
(実施例5)
実施例1と同様にして得たアスコルビン酸とエチレン−ビニルアルコール共重合体とからなるペレット10重量部、無水マレイン酸変性線状低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm)10重量部及び低密度ポリエチレン(密度0.921g/cm)(LDPE)80重量部の混合物、並びに上記LDPEを、それぞれ押出機に供給すると共に、該押出機に装着したサーキュラーダイから共押出しして、アスコルビン酸含有量が0.5重量%の樹脂層30μmとLDPE層10μmの2層からなるインフレーションフィルムを成形した。
【0068】
次に、上記2層インフレーションフィルムとLDPE(15μm)−板紙(坪量200g/m)−LDPE(15μm)−アルミニウム箔(7μm)からなる基材とを、LDPE(密度0.919g/cm)(20μm)を接着層として、300℃でサンドイッチラミネーションし、下記の構成からなる本発明の積層体を作製した。
LDPE−板紙−LDPE−アルミニウム箔‖LDPE‖LDPE−アスコルビン酸含有樹脂層
【0069】
上記積層体を用いて、アスコルビン酸含有樹脂層が容器の内面側となるように、紙容器用充填機にて、溶存酸素濃度0.6mg/lの脱気水を200ml充填して、レンガ型の紙容器を得た。
【0070】
脱気水を充填した上記容器を、温度37℃の恒温室に一定期間保存して、脱気水の溶存酸素濃度を測定し、その結果を表2に示した。
【0071】
(実施例6)
実施例5で用いたアスコルビン酸とエチレン−ビニルアルコール共重合体とからなるペレットの代わりに、実施例4で得られたペレットを用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0072】
(実施例7)
実施例5と同様にして、下記構成の3層インフレーションフィルムを成形した。
LDPE(10μm)−アスコルビン酸含有樹脂層(30μm)−LDPE(10μm)
【0073】
2層インフレーションフィルムの代わりに、上記の3層インフレーションフィルムを用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0074】
(実施例8)
片側のLDPE層の厚さが30μmの3層インフレーションフィルムを、実施例7と同様にして成形した。この3層インフレーションフィルムの30μmのLDPE層が容器の内側になるようにして用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0075】
(実施例9)
片側がポリピロピレン(密度0.90g/cm)90重量部とエチレン−1−ブテン共重合体(密度0.88g/cm)10重量部の混合物からなる層の厚さが20μmの3層インフレーションフィルムを、実施例7と同様にして成形した。この3層インフレーションフィルムの20μmの樹脂混合物層が容器の内側になるようにして用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0076】
(実施例10)
実施例1と同様にして得たアスコルビン酸とエチレン−ビニルアルコール共重合体とからなるペレット10重量部及び無水マレイン酸変性線状低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm)90重量部の混合物、実施例1で用いたエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)並びに実施例5で用いたLDPEを、実施例5と同様にして、それぞれ押出機に供給すると共に、該押出機に装着したサーキュラーダイから共押出しして、下記構成の3層インフレーションフィルムを作製した。
LDPE(10μm)−アスコルビン酸含有樹脂層(15μm)−EVOH(15μm)
【0077】
この3層インフレーションフィルムのEVOH層が容器の内側になるようにして用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0078】
(比較例2)
片側のLDPE層の厚さが40μmの3層インフレーションフィルムを、実施例7と同様にして成形した。この3層インフレーションフィルムの40μmのLDPE層が容器の内側になるようにして用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0079】
(比較例3)
アスコルビン酸とエチレン−ビニルアルコール共重合体とからなるペレットの代わりに、エチレン−ビニルアルコール共重合体のみを用いた以外は、実施例5と同様にして積層体を作製し、この積層体につき、実施例5と同時に評価を行った。結果を表2に示した。
【0080】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の還元性有機化合物と親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂の混練物が疎水性の熱可塑性樹脂に分散していることからなる液体食品保存用樹脂組成物。
【請求項2】
親水性の還元性有機化合物、多孔性無機物質及び親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂の混練物が疎水性の熱可塑性樹脂に分散していることからなる液体食品保存用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の組成物からなる層を最内層とする液体食品包装用積層体。
【請求項4】
親水性かつ水不溶性の熱可塑性樹脂からなる層を最内層とし、かつ請求項1または2記載の組成物からなる層を該最内層に隣接する層とする液体食品包装用積層体。
【請求項5】
40℃,90%RHでの水蒸気透過度が5g/m・24時間以上の樹脂層を最内層とし、かつ請求項1または2記載の組成物からなる層を該最内層に隣接する層とする液体食品包装用積層体。

【公開番号】特開2006−28491(P2006−28491A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172744(P2005−172744)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【分割の表示】特願平8−119176の分割
【原出願日】平成8年5月14日(1996.5.14)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】