説明

液体駆動送液ポンプ

【課題】従来、ポンプに使用されてきたモーター駆動のための電気エネルギーの代わりに、主液体の送液エネルギーをエネルギー源とすることにより、使用現場において電気設備を必要とせず、複数の液体を混合することのできる液体駆動送液ポンプを提供する。
【解決手段】送給される液体にて羽根車2を回転駆動する羽根車回転駆動部1Aを備えた液体駆動送液ポンプ1であって、羽根車回転駆動部1Aは、羽根車2が設置された羽根車ユニット2Aと、羽根車2の回転力をマグネットカプラー手段5により外部に伝達する回転部ユニット2Bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液用の小型の液体駆動送液ポンプに関する。特に、本発明は、ポンプ駆動エネルギー源として電気エネルギーを使用するのではなく、主液体の送液エネルギーをエネルギー源として、複数の液体を混合することのできる小型の液体駆動送液ポンプに関するものである。
【0002】
本発明の液体駆動送液ポンプは、特に、食品工業、農林畜産業、医療分野、石油化学工業分野等で、主液体と他成分の混合希釈工程を有する作業現場にて有効に使用される。
【背景技術】
【0003】
従来、液体に他成分液体を混合希釈して使用することは、例えば、農業における農薬使用時において、また、食品工業における各成分調合や、医療分野における消毒希釈使用等、多くの分野で行われてきた。
【0004】
これまでは、通常、電気をエネルギー源とした電動モーターによる駆動方式のポンプを使用して主液体への他成分液体の注入混合等が実施されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業革命による化学技術の発達は、人類に数多くの福音をもたらしてきたが、20世紀半ば頃、過剰な人間活動がこれまでの地球自然に大きなマイナス要因となってきている。その一例が、人類活動に伴うエネルギー消費に伴う二酸化炭素濃度の上昇と、これに伴う地球温暖化、異常気象、これに伴う台風の巨大化や異常降雨、乾燥化による農産物の減収などや、工業化発展に伴う大規模な公害の発生、即ち、人類生存に不可欠の大気も水もこれまでの延長の活動は許容されなくなってきた。
【0006】
本発明は、この大きな課題解決の一手段とすべくなされたものである。
【0007】
基本的には、主体流体の送液エネルギーの一部を薬剤等送液ポンプエネルギーとすることにより、従来安易な方法として実施されてきた、電気モーター式ポンプを無くするものである。こうすることにより、モーターを不要とすると共に、その駆動用電源供給設備も不要とするものである。
【0008】
本発明の目的は、従来、ポンプに使用されてきたモーター駆動のための電気エネルギーの代わりに、主液体の送液エネルギーをエネルギー源とすることにより、使用現場において電気設備を必要とせず、複数の液体を混合することのできる液体駆動送液ポンプを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、構成が簡単であり、小型化を実現することができる液体駆動送液ポンプを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、爆発の危険性を持つ液体にも安全に使用し得る液体駆動送液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る液体駆動送液ポンプにて達成される。要約すれば、本発明は、送給される液体にて羽根車を回転駆動する羽根車回転駆動部を備えた液体駆動送液ポンプであって、
前記羽根車回転駆動部は、前記羽根車が設置された羽根車ユニットと、前記羽根車の回転力をマグネットカプラー手段により外部に伝達する回転部ユニットとを備えていることを特徴とする液体駆動送液ポンプである。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、前記回転部ユニットは、前記羽車ユニットの両側に対称配置される。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、前記羽根車ユニットは、前記羽根車に一体に設けられた略円筒形状の回転支持部を備えており、
前記回転部ユニットは、前記回転支持部の外側に位置して前記回転支持部を囲包して配置された略円筒形状の回転部材を備えており、
前記回転支持部に駆動マグネットを設置し、前記回転部材には被駆動マグネットを設置して、前記マグネットカプラー手段を構成する。
【0014】
本発明の他の実施態様によれば、前記回転部ユニットは、前記回転部材が一体に設置された回転出力軸を備えている。
【0015】
本発明の他の実施態様によれば、前記羽根車ユニットは、前記羽根車を囲包した羽根車ケースと、前記回転支持部を囲包した回転支持部ケースとを有しており、前記羽根車ケースと前記回転支持部ケースとは、内部に前記羽根車を収容した閉空間を形成する。
【0016】
本発明の他の実施態様によれば、更に、副送液ポンプを備えており、前記回転部ユニットの回転出力軸からの駆動力により作動される。
【0017】
本発明の他の実施態様によれば、前記副送液ポンプと前記回転部ユニットとの間に回転変更手段が配置される。
【0018】
本発明の他の実施態様によれば、前記副送液ポンプは、チューブ開閉式ポンプである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気エネルギーを不要とし、主液体の送液エネルギーをエネルギー源として複数の液体を混合することができる。従って、環境にやさしく、しかも、構成が極めて簡単である。また、爆発の危険性を持つ液体にも安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る液体駆動送液ポンプを図面に則して更に詳しく説明する。
【0021】
実施例1
本発明に係る液体駆動送液ポンプは、例えば、農業における農薬使用時において、水のような主液体に他成分の液体薬剤(薬液)を混合希釈して使用する場合等において有効に使用される。
【0022】
図1にて、本発明に係る液体駆動送液ポンプ1は、電源設備などがない農薬散布の現場に配置される。一方、主液体(A液)SAである水は、現場より離れ、かつ、電気設備も整った作業所に設置した貯留槽100から供給される。貯留槽100は、現場に設置された液体駆動送液ポンプ1より、重力方向にて高い位置Hに設置されている。即ち、貯留槽100は液体駆動送液ポンプ1に対して大きい位置エネルギーを有している。従って、貯留槽100内の水SAは、電動モーター式の給水ポンプ等を使用することなく、液体駆動送液ポンプ1に対するより大きい位置エネルギーにより液体駆動送液ポンプ1へと送給される。貯留槽100には、必要に応じて水源200から電動ポンプPなどにより水が汲み上げられる。
【0023】
勿論、液体駆動送液ポンプ1に対する給水システムとしては、直接電動モーター式のポンプを使用して、貯留槽100から液体駆動送液ポンプ1への給水することもできる。しかし、この場合には比較的小型とされる電動モーターポンプが使用される。
【0024】
これに対して、上記本実施例の給水システムによれば、水源200から貯水槽100への水の汲み上げに使用される電動ポンプPは、より効率の良い大型のポンプPを使用することができる。従って、貯留槽100から液体駆動送液ポンプ1への給水のために比較的小型とされる電動モーターポンプを使用するよりは、上記本実施例の給水システムの方が、省エネルギーの観点からは、極めて優れている。
【0025】
上述のように、本実施例によれば、貯留槽100から水SAが樹脂チューブのような配管路LAにより液体駆動送液ポンプ1へと供給される。
【0026】
本実施例の液体駆動送液ポンプ1は、詳しくは後述するが、主液体(A液)SAにて駆動される羽根車回転駆動部1Aを備えており、従来の電動モーターのように、電源設備を必要とせず、配管路LAにて水のみを供給することにより羽根車回転駆動部1Aを駆動し、この液体駆動送液ポンプ1に付設される他のポンプ1Cを駆動することができる。液体駆動送液ポンプ1を駆動した後の主液体(A液)SAは、調合槽80に貯留される。
【0027】
つまり、本実施例では、現場に配置された液体駆動送液ポンプ1の羽根車回転駆動部1Aには、副送液ポンプ1Cとしてチューブ開閉式ポンプが接続されている。チューブ開閉式ポンプ1Cは、主液体に混合希釈される一種類、或いは、複数種類の薬液、本実施例では、二種類の薬液(B液)SB、薬液(C液)SCを貯槽81、82から調合槽80へと送給する。従って、A、B、C液は、液体駆動送液ポンプ1により一つの調合槽80に供給され、所望の混合された農薬SDが調合される。
【0028】
図2〜図6を参照して、本発明に係る液体駆動送液ポンプの一実施例について説明する。図2は、液体駆動送液ポンプ1の正面図で、図3は、図2の線A−Aに取った部分縦断面図である。図4、図5及び図6は、それぞれ、図3の線B−B、C−C、D−Dに取った横断面図である。
【0029】
図3及び図4にて理解されるように、本実施例にて、液体駆動送液ポンプ1は、主液体(A液)SAにて駆動される羽根車回転駆動部1Aを備えている。羽根車回転駆動部1Aは、羽根車2を回転自在に支持している羽根車ユニット2Aと、羽根車ユニット2Aの羽根車2の回転力を外部に伝達する回転部ユニット2Bとを備えている。羽根車ユニット2Bで発生する回転力は、マグネットカプラー手段5により回転部ユニット2Bに伝達される。
【0030】
回転部ユニット2Bの回転駆動力は、更に、副送液ポンプ1Cに伝達される。本実施例にて、副送液ポンプ1Cは、チューブ開閉式ポンプとされているが、必要により、その他のポンプとすることも可能である。
【0031】
ただ、本実施例では、羽根車回転駆動部1A、即ち、回転部ユニット2Bと、チューブ開閉式ポンプ1Cとの間には、回転変更手段1B、即ち、本実施例では減速機が設けられており、回転部ユニット2Bの回転数を下げ、トルクを増大させて、チューブ開閉式ポンプ1Cを駆動する構成とされている。
【0032】
更に、本実施例では、液体駆動送液ポンプ1は、羽根車回転駆動部1Aが二つの副送液ポンプ1Cを駆動する形式とされているために、羽根車ユニット2Aの両側に対称配置にて、羽根車ユニット2Aの羽根車2の回転力を外部に伝達する回転部ユニット2Bが配置されており、更に、羽根車回転駆動部1Aの両側に対称配置にて、それぞれ、回転部ユニット2Bに隣接して、回転変更手段(減速機)1B及び副送液ポンプ(チューブ開閉式ポンプ)1Cが設置されている。このような構成とすることにより、羽根車回転駆動部1Aの回転駆動の安定性が向上する。しかし、羽根車回転駆動部1Aにて一つの副送液ポンプ1Cを駆動する形式で良い場合には、回転変更手段(減速機)1B及び副送液ポンプ(チューブ開閉式ポンプ)1Cは、羽根車回転駆動部1Aのいずれか一方の側部に設置すれば良い。
【0033】
次に、液体駆動送液ポンプ1を構成する各構成部分について更に詳しく説明する。
【0034】
なお、羽根車ユニット2Aの両側に設置されている回転部ユニット2B、回転変更手段(減速機)1B、及び副送液ポンプ(チューブ開閉式ポンプ)1Cは同じ構成とされているために、以下の説明では、回転部ユニット2B、回転変更手段(減速機)1B、及び副送液ポンプ(チューブ開閉式ポンプ)1Cについては、図3にて羽根車ユニット2Aの左側の構成について説明する。
【0035】
(羽根車回転駆動部)
本発明の液体駆動送液ポンプ1は、その羽根車回転駆動部1Aの構造に特徴を有している。
【0036】
図3及び図4を参照すると、本実施例にて、羽根車回転駆動部1Aは、羽根車2が設置された羽根車ユニット2Aと、羽根車ユニット2Aの両側に位置して羽根車2を回転自在に支持し、且つ、羽根車2の回転力を外部に伝達する回転部ユニット2Bとにて構成される。
【0037】
羽根車ユニット2Aは、筐体としての駆動部ケース3を備えている。駆動部ケース3は、羽根車2を囲包する羽根車ケース31と、羽根車2を駆動部ケース3内に回転自在に支持するための略円筒形状の回転支持部4を囲包した略円筒形状とされる回転支持部ケース32とを有している。回転支持部4は、その円筒状外周部に隣接して駆動マグネット4aを備えており、後述するように、回転支持部4の外側に位置して設置された略円筒形状の回転部材42に設置された被駆動マグネット43aと協働してマグネットカプラー手段5を構成する。
【0038】
つまり、羽根車ケース31は、略円筒形状の外周壁31aと、外周壁31aの両側部に一体に形成された両側壁31bとにて形成される。両側壁31bには中心部に開口31cが形成されている。
【0039】
また、回転支持部ケース32は、一端が開口した円筒形状のケースとされ、その開口部が、前記羽根車ケース31の開口部31cに連通して一体に接続されている。
【0040】
上述のように、羽根車ケース31と回転支持部ケース32とにて形成される駆動部ケース3は、内部にて羽根車2を回転自在に収容した閉空間を形成している。
【0041】
羽根車ケース31の内部には、所定の距離だけ離隔して互いに平行に配置された、羽根車2を構成する円板21、22が回転自在に配置されている。
【0042】
一方の円板、本実施例では、右側の円板21は、その中心部にボス部23が形成され、羽根車2の回転支持軸24が一体に固定されている。他方の円板、本実施例では、左側の円板22は、中心部に回転支持軸24が貫通する開口部25を備えている。左右の円板21、22は、円板21、22に直交して配置された羽根板26にて一体に固定されている。羽根板26は、円板21、22の外縁部から半径方向内方へと延在して配置されるが、本実施例では右側円板21のボス部23にまでは至っていない。また、羽根板26は、図4に示すように、本実施例では、円周方向に均等に8枚配置されているが、これに限定されるものではない。例えば、10枚でもよく、或いは、6枚でもよい。
【0043】
本実施例では、羽根車ユニット2Aには、羽根車2を回転自在に支持するために、回転支持部4が設けられている。この回転支持部4は、磁気軸受け手段及び回転力伝達手段として機能するマグネットカプラー手段5を構成するマグネット4aが、その外周に隣接して設置されている。
【0044】
つまり、回転支持部4は、左右の円板21、22から回転支持軸24の軸線方向に沿って外方へと突出した円筒状の回転部ケース6を備えており、この回転部ケース6は、各円板21、22に一体に形成されている。
【0045】
本実施例にて、回転部ケース6は、回転支持部ケース32と同一軸線にて、回転支持部ケース32の内部に形成された小径の円筒外周壁6aと、円筒外周壁6aの軸線方向外方に位置して外周壁6aと一体に形成された側壁6bとを有している。回転部ケース6は、羽根車ユニット2Aの回転支持部ケース32内に収容された形態で配置されている。
【0046】
回転支持軸24の両端は、回転部ケース6の両側部に形成された回転部ケース側壁6b、6bに当接している。
【0047】
上記回転支持軸24は、羽根車回転駆動部1Aの構成上機能的には不要とすることもできるが、回転支持軸24を設けることにより、羽根車回転駆動部1A等の組み立て、調整がより容易となる。
【0048】
図3及び図5を参照すると理解されるように、回転部ケース外周壁6aの内面には、回転支持軸24の両端部に位置して、それぞれ、円周方向に均等に駆動マグネット4aが配置される。駆動マグネット4aは、上述したように、マグネットカプラー手段5を構成する。
【0049】
駆動マグネット4aは、回転部ケース外周壁6aの内面に接着剤などにて固定しても良く、或いは、回転部ケース外周壁6aの内面と回転支持軸24の外周面との間に樹脂を充填し、この樹脂内に配置して固定しても良い。また、駆動マグネット4aの数は、本実施例では、3個とされているが、これに限定するものではなく、通常、3〜5個とされる。
【0050】
羽根車回転駆動部1Aには、本実施例では、羽根車ユニット2Aの両側に位置し、羽根車2の回転力を外部に伝達する回転部ユニット2Bが設けられる。
【0051】
つまり、本実施例にて、回転部ユニット2Bは、筐体としての回転部ハウジング41を備えており、羽根車ユニット2Aの駆動部ケース3に一体に取り付けられる。
【0052】
回転部ハウジング41の内部には、羽根車ユニット2Aの回転支持軸24と同一軸線にて回転出力軸27が軸受け28にて回転自在に支持されている。
【0053】
また、回転出力軸27には、略円筒形状とされる回転部材42が一体に取り付けられる。即ち、回転部材42は、円筒形状とされる外周壁42aと、側壁42bとにて形成されており、側壁42bの中心部が回転出力軸27に一体に取り付けられる。
【0054】
本実施例にて、回転部材42の外周壁42aは、羽根車ユニット2Aの回転支持部ケース32の外周面を囲包した形状とされる。つまり、回転部材42の外周壁42aは、回転部ケース外周壁6aと同一軸線にて回転部ケース外周壁6aの外周面を囲包している。
【0055】
ここで、図5(a)に示すように、この回転部材42の外周壁42aの内面には、周方向に均等に、本実施例では3個の被駆動マグネット43aが配置される。従って、被駆動マグネット43aは、前記回転部ケース外周壁6aに設置した駆動マグネット5aと対向する配置とされる。
【0056】
本実施例にて、被駆動マグネット43aは、回転部材42の内面側に形成した凹部に接着剤などにて固定されているが、回転部材42の内面に直接接着するなど、その他種々の方法が考えられる。また、被駆動マグネット43aの数は、本実施例では、図5(a)に示すように、駆動マグネット4aと対応して3個とされているが、これに限定するものではない。
【0057】
本実施例では、駆動マグネット4a及び被駆動マグネット43aの磁極の配置は、図5(b)に示すように、互いに異極が対向するように配置されている。
【0058】
上記構成により、羽根車2が回転することにより回転部ケース外周壁6aに設けた駆動マグネット4aが回転すると、被駆動マグネット43aを設けた回転部材42も又回転する。
【0059】
つまり、羽根車ユニット2Aにおける回転支持部4の駆動マグネット4aと、回転部ユニット2Bの被駆動マグネット43aは、マグネットカプラー手段5を構成している。
【0060】
また、図4を参照すると、本実施例では、羽根車ケース31には、上下方向に対称配置にて、主流体SAの流入口31a、流出口31bがそれぞれ設けられる。
【0061】
一方の流入口31a、即ち、本実施例では図4の上方左側の流入口31aから主流体SAが羽根車ケース31内に流入されると、羽根車2の羽根板26に衝突し、その衝突力により羽根車を矢印方向(時計方向)に回転させる。羽根車2に衝突した流体は、流出口31bより外部へと流出する。外部に流出した主流体SAは、図4の下方右側の流入口31aから羽根車ケース31内に再度流入し、羽根車2の羽根板26に衝突し、その衝突力により羽根車を矢印方向(時計方向)に回転させる。
【0062】
本実施例によれば、羽根車2は、マグネットカプラー手段5により極めて好適に軸受けされ、羽根車ケース31内での極めて円滑な回転が可能であった。
【0063】
上述のように、本実施例では、主流体の流入口31a、流出口31bは、羽根車ケース31の上下方向に対称配置にて二組設けられているが、いずれか一組の流入口、流出口とすることもできる。
【0064】
(回転変更手段:減速機)
本実施例の液体駆動送液ポンプ1は、羽根車回転駆動部1Aに隣接して、即ち、回転部ユニット2Bに隣り合って回転変更手段1Bとしての減速機を備えており、減速機1Bは、回転部ユニット2Bに一体に固定されている。
【0065】
減速機1Bは、筐体としての減速機ハウジング51を備えており、その内部に歯車列から成る減速機構を備えている。
【0066】
本実施例では、回転部ユニット2Bの回転出力軸27の軸端が減速機ハウジング51内へと突出しており、この軸端に取り付けられた出力歯車52に、段歯車53の大歯車53aが噛合し、小歯車53bは、減速機1Bの出力軸55に一体に取り付けられた歯車54に噛合している。
【0067】
従って、減速機1Bにより、回転部ユニット2Bの回転出力軸27の回転数を低下させ、トルクは増大したものとなり、減速機1Bの出力軸55から回転駆動力が出力される。
【0068】
本実施例では、減速機1Bは、歯車機構を備えた減速機であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、回転部ユニット2Bから回転エネルギーを外部に取り出し得る手段であれば、ベルトやチェーンなどを使用した減速手段でもよい。
【0069】
また、場合によっては、回転部ユニット2Bからの出力を増速する機構とすることも可能である。
【0070】
(副送液ポンプ)
上述したように、本実施例の液体駆動送液ポンプ1は、本発明の特徴部の一つを構成するものとして副送液ポンプ1Cを備えた構成とされる。
【0071】
本実施例にて、副送液ポンプ1Cは、チューブ開閉式ポンプとされているが、必要により、その他のポンプとすることも可能である。
【0072】
本実施例の液体駆動送液ポンプ1は、減速機1Bに隣接して、チューブ開閉式ポンプ1Cが配置され、減速機1Bに一体に接続されている。
【0073】
図2、図3及び図6を参照すると理解されるように、チューブ開閉式ポンプ1Cは、筐体としてのポンプハウジング61を備えており、円筒形状とされるポンプハウジング61の内部にロータ62が配置されている。
【0074】
ロータ62は、その回転中心部を構成するボス部62aと、このボス部62aに対して直径方向に延在した二つの支持アーム部62bとを備えている。ボス部62aにはその中心部に減速機1Bからの出力軸55が一体に取り付けられている。また、両支持アーム部62bには、支持軸63により回転自在にコロ64が支持されている。コロ64の数は、本実施例では2個であるが、これに限定されるものではなく、1個でもよく、また、3個以上とすることもできる。
【0075】
上記構成にて、減速機1Bからの出力軸55が図6にて矢印方向(時計方向)に回転すると、ローラ62も又矢印方向に回転する。
【0076】
本実施例では、ポンプハウジング61内には、コロ64と、ポンプハウジング61の内面61aとの間に位置してU字状のゴムチューブのような弾性チューブ70(70A、70B)が、軸線方向に平行に配置されている。各弾性チューブ70(70A、70B)は、取付具67を介して、それぞれの入口側管路65a、66a及び出口側管路65b、66bに接続され、送液のための連続した流通路LC、LBを形成している。
【0077】
従って、ロータ62が回転することにより、チューブ押圧ローラとしてのコロ64とポンプハウジング内面61aとの間に位置する弾性チューブ70(70A、70B)部分は、コロ64により間欠的に押圧され、それによって、ポンプ作動をなし、薬液SC、SBを入口側管路65a、66aから出口側管路65b、66bへと流動させる。
【0078】
本実施例にように、U字状の弾性チューブ70(70A、70B)を軸線方向に平行に配置し、コロ64により常にいずれかの弾性チューブ70(70A、70B)を押圧する構成とすることにより、羽根車回転駆動部1Aに対する負荷変動をなくすことができる。
【0079】
(ポンプの運転)
図1、図2、図4にて、作業現場からは離れた遠隔地に設置された貯留槽100内の主流体、例えば、水SAが、位置エネルギーを利用して管路LAを流動して、作業現場に設置された液体駆動送液ポンプ1へと供給される。水SAは、液体駆動送液ポンプ1の羽根車ユニット2Aの一方側(上側)の主流体流入口31aに供給される。これにより、主流体SAは、羽根板26に衝突し、その衝突力により羽根車2を矢印方向に回転させる。羽根車2に衝突した流体は、流出口31bより外部へと流出する。
【0080】
本実施例では、上側の主流体の流出口31bは、下側の主流体流入口31aに接続されており、従って、液体駆動送液ポンプ1の下側の主流体流入口31aに供給された主流体SAは、羽根板26に衝突し、その衝突力により羽根車2を矢印方向に回転させる。羽根車2に衝突した流体は、下側の流出口31bより外部へと流出し、現場に設けられた調合槽80へと送給される。
【0081】
羽根車2が回転することにより、羽根車ユニット2Aの羽根車2の回転力が回転部ユニット2Bに伝達される。
【0082】
つまり、羽根車ユニット2Aの羽根車2が回転することにより、マグネットカプラー手段5により回転部ユニット2Bの回転部材42が回転する。回転部材42の回転は、減速機1Bの回転軸55を回転させ、チューブ開閉式ポンプ1Cのロータ62を回転させる。
【0083】
これにより、チューブ開閉式ポンプ1Cは、本実施例では、薬液貯槽81、82に、それぞれ、貯留された二種類の薬液SB、SCを、調合槽80へと送給する。即ち、A、B、C液は、液体駆動送液ポンプ1により一つの調合槽80に供給され、所望の農薬が調合される。
【0084】
上述のように、本発明の液体駆動送液ポンプ1は、主流体SAの流体エネルギーを羽根車2で回転エネルギーに変換し、この回転エネルギーをマグネット式カプラー5(駆動マグネット5a、被駆動マグネット43a)で、液体とは絶縁した状態で外部に回転エネルギーとして取り出すものであり、外部に取り出したエネルギーをポンプ駆動エネルギーとして使用するものである。
【0085】
このように構成することにより、主液体SAとは絶縁して機械的エネルギーが得られるため、回転軸シールの液漏れの欠点もなくすることができる。同時に、電気エネルギーを使用しないため、爆発の危険性を持つ液体にも安全なポンプとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る液体駆動送液ポンプの使用態様を説明する構成図である。
【図2】本発明に係る液体駆動送液ポンプの一実施例の正面図である。
【図3】図2の線A−Aに取った部分断面図である。
【図4】図3の線B−Bに取った断面図である。
【図5】図3の線C−Cに取った断面図である。
【図6】図3の線D−Dに取った断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 液体駆動送液ポンプ
1A 羽根車回転駆動部
1B 減速機(回転変更手段)
1C チューブ開閉式ポンプ(副送液ポンプ)
2 羽根車
2A 羽根車ユニット
2B 回転部ユニット
3 駆動部ケース
4 回転支持部
4a 駆動マグネット
5 マグネットカプラー手段
6 回転部ケース
26 羽根板
27 回転出力軸
31 羽根車ケース
32 回転支持部ケース
42 回転部材
43a 被駆動マグネット
55 出力軸
62 ロータ
64 コロ(押圧ローラ)
70 弾性チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送給される液体にて羽根車を回転駆動する羽根車回転駆動部を備えた液体駆動送液ポンプであって、
前記羽根車回転駆動部は、前記羽根車が設置された羽根車ユニットと、前記羽根車の回転力をマグネットカプラー手段により外部に伝達する回転部ユニットとを備えていることを特徴とする液体駆動送液ポンプ。
【請求項2】
前記回転部ユニットは、前記羽車ユニットの両側に対称配置されることを特徴とする前記請求項1に記載の液体駆動送液ポンプ。
【請求項3】
前記羽根車ユニットは、前記羽根車に一体に設けられた略円筒形状の回転支持部を備えており、
前記回転部ユニットは、前記回転支持部の外側に位置して前記回転支持部を囲包して配置された略円筒形状の回転部材を備えており、
前記回転支持部に駆動マグネットを設置し、前記回転部材には被駆動マグネットを設置して、前記マグネットカプラー手段を構成する、
ことを特徴とする前記請求項1又は2に記載の液体駆動送液ポンプ。
【請求項4】
前記回転部ユニットは、前記回転部材が一体に設置された回転出力軸を備えていることを特徴とする前記請求項3に記載の液体駆動送液ポンプ。
【請求項5】
前記羽根車ユニットは、前記羽根車を囲包した羽根車ケースと、前記回転支持部を囲包した回転支持部ケースとを有しており、前記羽根車ケースと前記回転支持部ケースとは、内部に前記羽根車を収容した閉空間を形成することを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかの項に記載の液体駆動送液ポンプ。
【請求項6】
更に、副送液ポンプを備えており、前記回転部ユニットの回転出力軸からの駆動力により作動されることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかの項に記載の液体駆動送液ポンプ。
【請求項7】
前記副送液ポンプと前記回転部ユニットとの間に回転変更手段が配置されることを特徴とする前記請求項6に記載の液体駆動送液ポンプ。
【請求項8】
前記副送液ポンプは、チューブ開閉式ポンプであることを特徴とする前記請求項7に記載の液体駆動送液ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−257138(P2009−257138A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105192(P2008−105192)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(507338529)有限会社ジーネット (2)
【Fターム(参考)】