説明

液化ガス供給装置および供給方法

【課題】 操作性がよくかつコンパクトな構造を有するとともに、液化ガスの使用量を迅速かつリアルタイムに管理しながら、液化ガスの大流量かつ安定して供給することが可能な、液化ガス供給装置および供給方法を提供すること。
【解決手段】 液化ガスが充填された容器1と、容器1の重量を測定するロードセル2と、容器1を加熱するハロゲンランプユニット3と、容器1の気相部のガスを移送するガス移送手段とを有する液化ガスの供給装置において、ハロゲンランプヒータ3aおよびこれを配設する空間3bからなるハロゲンランプユニット3とロードセル2を、容器1の底部1aに一体型として配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス供給装置および供給方法に関するもので、例えば、NH,BCL,CL,SiHCL,Si、HBr、HF、NO、C、SF、WF等に代表される半導体用特殊材料ガスなどを供給する液化ガス供給装置および供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスで使用される特殊材料ガスには、NH,BCL,CL,SiHCL,Si、HF、C、WF等に代表される蒸気圧の低い液化ガスがよく用いられている。このような液化ガスは、所定容量の容器内に液状で収容され、気相部のガスが各プロセスに供給される。容器内気相部のガスを外部に放出すると、圧力が減少した分に見合った量の液化ガスが液相から蒸発し気相に供給される。この蒸発に必要なエネルギーの多くは容器内に残っている液相部から奪われるため、容器に加熱手段を設けない場合には液温が低下し、やがて気相部分の供給圧力が低下し所望の圧力を供給することができなくなるという問題が発生する。
【0003】
そこで、容器外面から加熱手段を用いて熱を容器に加えることにより液化ガスの蒸発量を稼ぐ方法が一般的に取られている。加熱手段としては、熱温湿布、温湯ジャケットヒータ等の方法などを挙げることができるが、昨今、温度制御に優れ種々の用途への適用が容易な加熱手段として、容器底部に熱媒体を吹付けて熱を供給する方法が用いられている。例えば、図6に示すような構成を有する加熱装置110が提案されている。具体的には、加熱装置110は、第1及び第2の空間134,136が内部に形成されている載置台114と、載置台の第1の空間に、加熱空気を供給するエアファンヒータとを備えている。載置台には、載置エリア内に、第1の空間に連通する第1の貫通孔142と、第2の空間に連通する第2の貫通孔146とを形成し、且つ、載置エリアの外側に、第2の空間に連通する第3の貫通孔148を成したことを特徴とする。この構成においては、載置台にガス容器112が載置されている場合、加熱空気は第1の空間から第1の貫通孔を経てガス容器の底面に吹き付けられ、熱はガス容器の底面から液化ガスに効率よく伝えられる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
一方、使用量の管理あるいは使用に伴い減少する容器内の液化ガスの量を管理するために、通常液化ガスの重量を測定するための重量計(以下「ロードセル」という)が容器底部に設置される。例えば、図7に示すような構成を有する液化ガス供給装置が提案されている。具体的には、ガス容器210を載置する設置台211と、ガス容器210の底面に向けて熱媒体を噴出する熱媒体噴出ノズル212と、該熱媒体噴出ノズル212に温度調節した熱媒体を供給する熱媒体供給ライン213と、ガス容器210を囲むように設置台211上面に設けられた半割状の筒体からなる容器カバー214とを有し、設置台211は、ガス容器210の底部を支持するガス容器載置部215と、ガス容器載置部15の外周部分を支持するように設けられた重量測定手段であるロードセル216と、該ロードセル216の下部に位置して床面等に設置される台座部217とにより形成される。熱媒体供給ライン213は、台座部217に水平方向に挿通され、中央部で上方に屈曲してロードセル216の間を上昇し、ガス容器載置部215の中央部に設けられた貫通孔218に挿入され、その先端設けられている記熱媒体噴出ノズル212からガス容器底面に向けて高速で噴出した熱媒体は、ガス容器210の底面を加熱あるいは冷却した後、矢印Bで示すように、ガス容器底面と設置台上面との間の空間224からスリット219cの内周側を通って空洞部223に流れ、さらに、スリット219cの外周側を通って容器カバー214内周の空間225に排出される(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−166697号公報
【特許文献2】特開2003−227597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような液化ガス供給装置では、以下の課題が生じることがあった。
(1)ロードセルと熱媒体を供給するためのユニットを容器底部の狭い区画に収納するとなれば、容器底部の構造が複雑となるだけでなく、床から容器設置台までの高さが高くなり容器据付・取外し時の作業性が悪いという問題がある。
(2)熱媒体(例えば、空気、窒素(N)、水など)を吹付けるだけでは熱媒体から容器への熱効率が低い(外壁境界膜伝熱係数が小さい)ために、効率的に熱エネルギーを容器に与えることができない。そのため、必要以上の過剰な熱エネルギーすなわち高い温度の熱媒体を吹付けなくてはならなくなり、その結果熱媒体の熱エネルギーがロードセルに伝熱することにより、ロードセルの誤作動を引起し正確な重量管理が行えないという問題があった。また、過剰な熱エネルギーは、省エネルギーの観点からいっても好ましくない。
(3)従来技術でロードセルに及ぼす熱負荷を考慮するとなれば、自ずと容器に与える熱エネルギーには限度があり、気化させるガス流量には限界があった(詳細は後述する)。その結果、大流量を要求されるプロセスや低蒸気圧液化ガスの場合のように液相温度の低下による供給圧力の影響が無視できない場合には、容器本数を増やさざるを得ずコストアップにつながっていた。
【0007】
本発明の目的は、操作性がよくかつコンパクトな構造を有するとともに、液化ガスの使用量を迅速かつリアルタイムに管理しながら、液化ガスの大流量かつ安定して供給することが可能な、液化ガス供給装置および供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す液化ガス供給装置および供給方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、液化ガスが充填された容器と、該容器の重量を測定する重量測定手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器の気相部のガスを移送するガス移送手段とを有する液化ガスの供給装置において、熱あるいは光を放射する熱媒体および該熱媒体を配設する空間からなる前記加熱手段と前記重量測定手段を、前記容器の底部に一体型として配設したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、液化ガスが充填された容器から、該容器の気相部のガスを移送する液化ガスの供給方法であって、該容器の重量を測定して液化ガスの残量や使用量を管理するとともに、前記容器の底部に前記重量測定手段と一体型として配設された熱あるいは光を放射する熱媒体によって、前記容器の底部を加熱して液化ガスの供給圧力を制御することを特徴とする。
【0011】
液化ガス供給装置は、例えば半導体製造プロセスなどにおいて重要な役割を果たすことから、液化ガスの安定した供給が要求され、供給源の圧力の安定性と供給源の供給状態の把握を確保することが必要となる。また、こうした機能を有するとともに、コンパクトで操作性の高い液化ガス供給装置が要求される。本発明は、加熱手段として熱あるいは光を放射する熱媒体を用い、液化ガス容器の重量を管理するロードセルと液化ガスの供給圧力を維持する加熱手段を一体化することにより、コンパクトな構造であって、かつ熱媒体の熱エネルギーを応答性よくかつ効率良く容器に供給できる液化ガス供給装置を提供することが可能となる。また、その結果従来技術よりも大流量かつ安定して供給することが可能となる。さらに、コンパクトな構造にすることによって、容器を設置する床からの高さを低く抑えることが可能となり、低床化が図られ作業性が向上する。
【0012】
また、本発明は、加熱手段として熱あるいは光を放射する熱媒体を用いることを特徴としている。形状や構造の汎用性によって上記のようなロードセルとの一体化を容易にし、装置のコンパクト化に寄与するとともに、後述するように簡便な手段によってロードセルとの熱的遮断を可能とすることから、従前からの課題であった一体化に伴うロードセルへの悪影響を排除することが可能となり、優れた機能を有する液化ガス供給装置あるいは供給方法を構成することが可能となった。
【0013】
本発明は、上記液化ガス用供給装置であって、前記重量測定手段と前記熱媒体の中間に、冷却媒体を充填あるいは流通する空間を備えることを特徴とする。
【0014】
上記のように、放射エネルギーを利用した熱媒体を用いることによって、コンパクトな構造でロードセルと加熱手段との一体化を図ることが可能となった。同時に、本発明は、かかる熱媒体について、重量測定手段と熱媒体の中間に冷却媒体を充填あるいは流通する空間を配設しようとした場合にあっても比較的容易に構成することが可能であることを検証し、従前の他の手段では困難であった熱媒体の周囲との熱的遮断を測ることができた。つまり、こうした冷却媒体を充填あるいは流通する空間を設け、かつ構造のコンパクト化を図ることによって、構造的には熱的にアイソレーションされ、かつ冷却機能を有することによって、熱媒体から放出される熱エネルギーがロードセルの性能に悪影響を及ぼさずに、かつロードセルと熱媒体が一体型化されたガス供給装置を提供することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記液化ガス用供給装置であって、前記重量測定手段と前記熱媒体を、各々前記容器の底部の載置面に対して一定の距離に配設するとともに、略同一平面状に配設することを特徴とする。
【0016】
液化ガスの移送に伴い、気相部から移送されたガス量は液相から補充され、液化ガスが充填された容器の底面に加えられるエネルギーは、その気相部への蒸散エネルギー量に相当する。このとき、液相の液化ガス量の減少に伴い、容器の載置面は、液化ガス用供給装置の設置面に対し、重量測定手段を介して僅かに変動する。本発明は、容器の載置面に対する重量測定手段および熱媒体の位置を一定にし、付加するエネルギーを熱媒体のみによって制御することを1つの特徴とする。これによって、迅速に安定した制御を行うことができる。また、容器の載置面は、重量物である容器の交換や保守において、前記設置面に近いことが望ましい一方、複数の機能を設置台に設けると、載置面の高床化は避けられない。本発明は、重量測定手段と熱媒体を略同一平面状に配設することによって、低床化を図り、操作性がよくかつコンパクトな構造とすることが可能となり、優れた機能を有する液化ガス供給装置あるいは供給方法を構成することが可能となった。
【0017】
本発明は、上記液化ガス用供給装置であって、前記容器内気相部の圧力を測定する手段、および該圧力を一定に保持するように前記熱媒体の出力を自動制御する手段を有することを特徴とする。
【0018】
半導体で使用されるプロセスガスの中で、液化ガスを大量に消費する場合、容器から供出される液化ガスの移送量に相当する容器内での液化ガスの蒸発量が必要となる。蒸発量の低下は容器内気相部の圧力低下として表れることから、これをモニタリングすることが好ましい。一方、放射エネルギーを利用した熱媒体は、加熱側熱容量を小さくすることができることから、その出力制御によって、他の加熱手段と比較して非常に迅速に放射エネルギーの増減を変化させることができる。特に上記のように、熱媒体を周囲から熱絶縁を図った場合には、その機能をより高いものとすることができる。本発明は、上記液化ガスの蒸発量を補う手段として、こうした熱源を利用するもので、液化ガスの供給量に応じて熱媒体の出力を自動制御することによって、液化ガスを大流量であっても安定して供給することができる、優れた液化ガス供給装置の提供が可能となった。
【0019】
本発明は、上記液化ガス用供給装置であって、前記熱媒体がハロゲンランプであることを特徴とする。
【0020】
上記にいう放射エネルギーを利用した熱媒体としては、電熱ヒータや温水による加温による発熱体などがある。一方、ハロゲンランプによるガス容器の加熱は、電熱ヒータや温水による加温に比べ、加熱側熱容量に起因する熱イナーシャがない分オン・デマンド・ヒーティング制御が求められる熱源として適している。本発明は、液化ガスの供給に伴う大量の蒸発潜熱を外部から補う手段としてハロゲンヒータによる加熱を図るもので、この熱源を利用することで、液化ガスを大流量であっても安定して供給できる上、従来のジャケットヒータ等に比べ熱効率を約2倍向上させることができた。従って、液化ガスの安定供給が可能な優れた液化ガス供給装置の提供が可能となった。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、液化ガス供給装置および供給方法において、熱あるいは光を放射する熱媒体からなる加熱手段と重量測定手段を、液化ガスが収容された容器の底部に一体型として配設することによって、操作性がよくかつコンパクトな構造を有するとともに、液化ガスの使用量を迅速かつリアルタイムに管理しながら、液化ガスの大流量かつ安定して供給することが可能な、液化ガス供給装置および供給方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係る液化ガス供給装置(以下「本装置」という)は、液化ガスが充填された容器と、容器の重量を測定する重量測定手段と、容器を加熱する加熱手段と、容器の気相部のガスを移送するガス移送手段とを有し、熱あるいは光を放射する熱媒体および熱媒体を配設する空間からなる加熱手段と重量測定手段を容器の底部に一体型として配設され、シンプルかつコンパクトな機器で構成されたことを特徴とする。
【0023】
図1は、本装置を例示する概略図である。本装置は、液化ガスが充填された容器1が、その底部1aおよび側部1bを設置台4によって保持された状態で、設置される。設置台4の載置面4aの裏面側には、その周辺部に略等間隔に複数のセル部2a,2b・・を有し、容器1の重量を測定するロードセル2(重量測定手段に相当)が配置される。その中央部空間には、ロードセル2と略同一平面位置に、ハロゲンランプユニット3(加熱手段に相当、以下「ランプユニット」という)がロードセル2と一体型に配設され、ロードセル2とランプユニット3の中間には、冷却媒体を充填あるいは流通する空間5を備える。載置面4aには、熱あるいは光が照射される底部1aに相当する刳り抜き状に光取出し部4bが設けられている。ランプユニット3は、ハロゲンランプヒータ3a(熱媒体に相当、以下「ランプ」という)をその中央に配設し、その周囲に空間3bが設けられ、また、光取出し部4bと当接する面には、光を透過する透過ガラス3cが配設される。ランプ3aから放射された光は、光取出し部4bおよび透過ガラス3cを介して、底部1aに照射され、容器1が加熱され、充填された液化ガスを加熱することができる。
【0024】
また、本装置は、図2に例示するように、バルブ1cを介して接続され、容器内気相部の圧力を測定する手段(圧力センサ)6、および該圧力を一定に保持するようにランプ3aの出力を制御する手段(AVPコントロ−ラ)7を有している。一定の条件に保持された特殊材料ガスが、容器1の内部で気化されて、バルブ1cおよび圧力調整器8(ガス移送手段に相当)を経緯して、例えば半導体製造プロセスの各装置に安定的に供給される。供給流量の調整は、プロセス装置側の流量調整計で行うことができる。また、AVPコントロ−ラ7に、ロードセル2の出力を入力して、容器1の重量の管理を行うことも可能である。詳細は後述する。
【0025】
容器1の内部の圧力は、圧力センサ6の出力を基にAVPコントロ−ラ7において制御される。具体的には、予め設定された値(蒸気圧と温度との相関性から導かれる液設定温度に相当する)と圧力センサ6の出力(蒸気圧と温度との相関性から導かれる液温度に相当する)とを比較しながら、例えばAVP(ALL VAPOR PHASE)でPID制御を行うことによって、オーバーシュートのない非常に安定した制御が可能となる。
【0026】
容器1には、NH,BCL,CL,SiHCL,Si、HF、C、WF等に代表される蒸気圧の低い液化ガスが充填される。容器1の大きさは、使用する半導体製造プロセスの規模に依存するが、本発明においては、数〜数10L程度の小型容器あるいは中型容器として数10〜数100L規模の耐圧容器が挙げられる。具体的には、例えばアンモニアの場合、内容積47Lの容器の内部圧力を約0.55〜0.65MPaG、液温度約13〜15℃の上記液化ガスを約10〜20L/min(SLM)として供給されるシステムなどが挙げられる。また、数〜数10L程度の小型あるいは中型の高圧容器だけではなく、トンコンテナのような大型容器を用いたバルク供給システムについても本装置を用いることが可能である。
【0027】
設置台4の一面は、底部1aを載置する載置面4aを形成するとともに、上記光取出し部4bと、載置面4aに一部に容器1を所定の位置にセットするためのガイド4cが取り付けられている。このガイド4bは、容器サイズ(直径)に合わせて自由に交換できるアダプターとなっているため、容器サイズに応じて堅固に保持することができる。
【0028】
また、本装置は、ロードセル2とランプユニット3を、図1のように、載置面4aの裏面の周囲にロードセル2を、その中央にランプユニット3を配置し、載置面4aに対して一定の距離に配設するとともに、図1のA−A断面に例示するように、略同一平面状に配設する。従前は、ロードセルに加熱機能を付加する場合あるいは、加熱ユニットに重量測定機能を付加する場合においては、容器の載置面に重畳する構造を採らざるを得なかったが、本装置では、ランプ3aなどの熱媒体を用いてコンパクト化したランプユニット3を用いることによって、ロードセル2とランプユニット3を略同一平面状に配設することが可能となった。これによって、複数の機能を設置台に設けても、低床化を図り、操作性がよくかつコンパクトな構造とすることが可能となった。
【0029】
ロードセル2は、載置面4aを介して容器1の重量を測定し、容器1の内部に充填された液化ガスの使用量および残量を監視する。載置面4aに掛かる容器1の重量を正確に受けることができるタイプであれば特に制限はないが、図1においては、4つのセル部2a〜2dを有し、載置面4aの4つの角部に略等間隔に位置するタイプを例示している。各セル部での押圧を、歪ゲージあるいはダイヤフラムの変位などによって出力変換され、AVPコントロ−ラ7に送信される。セル部は、容器1の底面に合わせた形状、例えばリング状あるいは一部半円状に形成されたものなどを使用することも可能であり、これらを1あるいは複数個組み合わせて使用することも可能である。また、独立したロードセル2を4つ、2a〜2dに配設し、総重量によって測定することも可能である。
【0030】
ランプユニット3は、一面に透過ガラス3cを有し、その内部空間3bの中央にランプ3aが配設される。空間3bは、温度上昇を防ぐために空気もしくは不活性なガス(N等)でパージできる構造となっている。透明ガラス3cとしては、赤外線などの光透過率の高い素材が好ましい。具体的には、石英が好ましく、安価で光透過率の高い耐熱性硼珪酸ガラス等が好ましい。
【0031】
本装置では、熱媒体として、赤外線などの光を放射するハロゲンランプ(ランプ3a)を用いている。これに代えて、カーボンヒータなども使用可能であるが、熱密度が高く、容器1の底部1aを効率よく加熱することができることから、ハロゲンランプが好適である。ランプ3aは、放射される光を熱源としているため光が当たっている時だけ加熱され、スイッチON/OFFとほぼ同時に熱エネルギーが投入される。従って、通常の加熱方式に比べレスポンスが速く後述する制御方法を利用することによって、オーバーシュートを抑えることが可能である。また、ランプ3と容器1は非接触のためヒータによる保温効果もなく、極めて応答性が良いのが特長である。さらに、ランプ3aは、所定容量のヒータ本数を任意に設置可能であるため、ヒータ本数ならびに各ヒータの出力を任意にコントロールすることによりきめ細かい温度制御が可能となる。また、安全面を考慮しても、従来の熱源を直接容器に接触させるものに比べ非接触のランプ3aは安全性が高いメリットがある。コスト面においては従来のヒータに比べ安価であり、またハンドリングにおいても従来に比べ容易である。
【0032】
また、光の放射を目的の面に効率よく放射させるために、ランプ3aあるいはランプユニット3の透過ガラス3cと反対面に反射板(図示せず)を設けることが好ましい。反射板によりランプ3aから照射される光を外部に漏れないように集光することによって、照射エネルギーを効率よく容器1の底部1aに照射し、一段と熱効率の向上を図ることができる。つまり、容器1とランプ3aは非接触のため、その隙間から漏れる光は反射板を使って容器1の底部1aの目的のエリアに集光させることにより熱効率はより一層向上させることができる。反射板はランプ3aと照射面全体を覆うように配設することや、ランプ3aの透過ガラス3cと反対面に所定の曲面を有する反射板を取り付けることも可能であるが、ランプ3aに反射膜をコーティングしたものを選択することにより目的の方向に放射させることも可能である。反射板は、可視光および赤外光を反射するものであれば、特に限定されるものではないが、金属あるいは樹脂などの部材の表面に金やアルミニウムなどの反射機能の高い薄膜を形成したものを用いることが好ましい。
【0033】
〔本装置における冷却媒体供給について〕
本装置は、ロードセル2とランプ3aの中間に、冷却媒体を充填あるいは流通する空間5を備えることを特徴とする。空間5を設け、かつ構造のコンパクト化を図ることによって、熱的にアイソレーションされ、かつ冷却機能を有することによって、熱媒体から放出される熱エネルギーがロードセルの性能に悪影響を及ぼすことを排除することが可能となった。具体的には、図1に示すように、空間5には、冷却媒体用の冷却管5aを設けている。この冷却管5a内には冷却水もしくは空気を送り込める供給ポート5bおよび排気ポート5cが付属しており、ランプユニット3からの熱を奪い、ロードセルに伝熱しない構造となっている。
【0034】
冷却媒体の供給方法としては、図1の方法に限定されず、図3のように、供給ポート5bおよび排気ポート5cをそれぞれ1個所にすることも可能である。すなわち、ランプユニット3の外周に接触した冷却管5aに冷却媒体(冷却水もしくは空気)を先ず供給する。冷却管5aの底部には周方向に等間隔で開口部5dを設け、これと同じ位置にランプユニット3にも開口部3dを設ける。該冷却媒体は、冷却管5aからランプユニット3の内部に流れ込み、ランプ3a表面、透過ガラス3cの順に冷却した後、最終的にはランプ3aの中央部の排気口から外部に放出される。この場合、強制的に外部へ排気するため、ポンプあるいはバキュームジェネレータなどを付加することが望ましい(図示せず)。一方、ランプユニット3のガラス破損を防ぐために、ガラス上面には保護用金網(図示せず)が取り付けられている。
【0035】
また、図4のように、冷却管5aを用いずに、直接、ランプユニット3の空間3bおよびその側壁3eを利用し、供給ポート5bを2個所から、ランプユニット3の中心部ではなく、側壁3eに沿うように設けることも可能である。すなわち、供給ポート5bから冷却媒体(空気)を供給すると、冷却媒体は、空間3bに流れ込むとともに、側壁3eに沿うように移送し、側壁3e、ランプ3a表面、透過ガラス3cの順に冷却した後、最終的にはランプ3aの中央部の排気口から外部に放出される。2個所から供給することによって、略空間3bの側壁3e全周を冷却することができる。2個所では不十分な場合は、同様の構造の供給ポート5bを増やすことによって、さらに効率よく熱絶縁を行うことが可能である。この場合、強制的排気や保護用金網などについては上記と同様が好ましい。
【0036】
〔本装置における冷却媒体供給の効果について〕
本装置は、液化ガスを充填した容器の重量を測定すると同時に、容器の加熱によって液化ガスの供給圧力を制御する場合において、ロードセルと熱媒体の中間の空間に冷却媒体を供給することによって、従前にない優れた機能を可能とする。以下、その容器の側壁部と容器内部の液温度の分布状態、およびそのときの液化ガスの容器内気相部の圧力の時間的変化を、図5(A)〜(E)によって、説明する。
(A)液化ガスを供給していないときを、図5(A)に示す。容器の側壁部と容器内部の液温度ともに、室温レベルで一定ある。
(B)加熱しないで、液化ガスを供給したときを、図5(B)に示す。容器内気相部のガスを外部に放出するとそれに相当するガスが液相より蒸発する。この蒸発に必要なエネルギーは容器に残っている液相部から奪われるため、液温が大幅に低下し、やがて気相部分の供給圧力が低下する(図5(E)(b)参照)。
(C)従来技術(熱風)による加熱方法を用いたときを、図5(C)に示す。熱風による容器への熱伝達効率が低いために、容器内液相からの蒸発に必要なエネルギーを供給するのに、それ以上の過剰な熱エネルギーすなわち高い温度の熱風を吹付けなくてはならなくなり、その結果過剰な熱エネルギーがロードセルに伝熱することにより、ロードセルの誤作動を引起し、正確な重量管理を行うことができない(図5(E)(c)参照)。
(D)本装置のように、冷却媒体によって、ランプ3aとロードセル2との熱遮断をおこなったときを、図5(D)に示す。ロードセルの誤動作をなくし、正確な重量管理を行い、かつ適正な熱エネルギーの供給ができることから、容器1の液相部も適正温度となり、気相部圧力も適正に制御することができている(図5(E)(d)参照)。
【0037】
〔AVPコントロ−ラによる制御方法〕
本発明においては、図2に示すように、ロードセル2とランプ3aおよびAVPコントロ−ラ5を用いることによって、優れた特殊材料ガス用液化ガス供給装置および供給方法を提供することが可能である。ここで、AVPとは、液化ガスの蒸気圧と温度との相関性(PT相関関係式)が事前にインプットされており、容器内液化ガスの飽和蒸気圧から得られる液温度と液設定温度とのPID制御によりオン・デマンド・ヒーティングが可能となる制御システムである。
【0038】
つまり、容器1から供出される液化ガスの移送量に相当する、液相部からの蒸発量が、十分に補充されているか否かは、容器内気相部での液化ガスの圧力によって判断することが可能であり、これをモニタリングすることが好ましい。一方、放射エネルギーを利用したランプ3aは、加熱側熱容量を小さくすることができることから、その出力制御によって迅速に放射エネルギーの増減を変化させることができる。
【0039】
具体的には、AVPコントロ−ラ5において、入力された稼動時の圧力センサ6の出力との比較から、常に設定した圧力(液温度)になるように、ランプ3aの出力が制御される。また、ロードセル出力が入力され、液化ガスの使用量および残量を算出し、交換時期の予測や警告などの出力減少、つまり内部の液化ガスの充填量の減少に伴い、加熱エネルギーを減少させるようにランプ3aの出力の微調整を行うことも可能である。
【0040】
ここで、使用される圧力センサ6としては、耐圧性を有するものであれば、特に制限されないが測定精度の面からは、ダイヤフラム式、ピエゾ式、あるいは半導体式などの圧力センサを適宜選択することができる。
【0041】
本発明は、上記のような構造及び制御方法により、ハロゲンランプから照射される光エネルギー(輻射熱)を、直接容器の底部に与えることが可能となり、従来方法に比べ飛躍的に熱効率がアップし、その結果従来以上の流量でかつ安定して供給することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上記においては、主として半導体あるいはFPD製造プロセスに用いる半導体用特殊材料ガスの供給装置および供給方法について述べたが、本発明は、こうしたエレクトロニクス用液化材料ガスに限られず、加熱蒸発させて使用する固形物(あるいは液化物)であって、それを充填した容器の重量を管理しながら、かつその加熱温度を制御することによって使用量を調整するものであれば、全て適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る液化ガス供給装置を例示する概略図
【図2】本発明に係る液化ガス供給装置におけるAVPによる制御方法を例示する説明図
【図3】本発明に係る液化ガス供給装置における他の冷却媒体の供給方法を例示する説明図
【図4】本発明に係る液化ガス供給装置における他の冷却媒体の供給方法を例示する説明図
【図5】本発明に係る液化ガス供給方法と他の供給方法との比較を例示する説明図
【図6】従来技術に係るガス容器用の加熱装置を例示する概略図
【図7】従来技術に係るガス供給装置を例示する概略図
【符号の説明】
【0044】
1 容器
1a 底部
1b 側部
1c バルブ
2 ロードセル
2a,2b,2c,2d セル部
3 ハロゲンランプユニット(ランプユニット)
3a ハロゲンランプヒータ(ランプ)
3b 空間
3c 透過ガラス
4 設置台
4a 載置面
4b 光取出し部
4c ガイド
5 空間
5a 冷却管
5b 供給ポート
5c 排気ポート
6 圧力測定手段(圧力センサ)
7 制御手段(AVPコントローラ)
8 圧力調整器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスが充填された容器と、該容器の重量を測定する重量測定手段と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器の気相部のガスを移送するガス移送手段とを有する液化ガスの供給装置において、熱あるいは光を放射する熱媒体および該熱媒体を配設する空間からなる前記加熱手段と前記重量測定手段を、前記容器の底部に一体型として配設したことを特徴とする液化ガス供給装置。
【請求項2】
前記重量測定手段と前記熱媒体の中間に、冷却媒体を充填あるいは流通する空間を備えることを特徴とする請求項1記載の液化ガス供給装置。
【請求項3】
前記重量測定手段と前記熱媒体を、各々前記容器の底部の載置面に対して一定の距離に配設するとともに、略同一平面状に配設することを特徴とする請求項1または2記載の液化ガス供給装置。
【請求項4】
前記容器内気相部の圧力を測定する手段、および該圧力を一定に保持するように前記熱媒体の出力を自動制御する手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液化ガス供給装置。
【請求項5】
前記熱媒体がハロゲンランプであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液化ガス供給装置。
【請求項6】
液化ガスが充填された容器から、該容器の気相部のガスを移送する液化ガスの供給方法であって、該容器の重量を測定して液化ガスの残量や使用量を管理するとともに、前記容器の底部に前記重量測定手段と一体型として配設された熱あるいは光を放射する熱媒体によって、前記容器の底部を加熱して液化ガスの供給圧力を制御することを特徴とする液化ガス供給方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−232226(P2008−232226A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71034(P2007−71034)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】