説明

液圧駆動装置

【課題】小型、安価な構造で、高圧の制御と大流量の制御とを両立することができる液圧駆動装置を提供すること。
【解決手段】2連の中容量の第1固定容量形油圧ポンプ1および小容量の第2固定容量形油圧ポンプ2を、サーボモータ3で駆動する。第1および第2固定容量形油圧ポンプ1おび2からの作動油を4ポート3位置形の電磁切換弁5で制御する。電磁切換弁5は、第1および第2入力ポートP1,P2が出力ポートAに連通する一方戻りポートRが閉鎖される第1の位置S1と、第1入力ポートP1が出力ポートAに連通する一方上記第2入力ポートP1が戻りポートRに連通する第2の位置S2と、第1入力ポートP1が戻りポートRに連通する一方上記第2入力ポートP2が出力ポートAに連通する第3の位置S3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、射出成型機、工作機械、建設機械等に用いれば好適な液圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧駆動装置としては、1つの固定容量形油圧ポンプをサーボモータで駆動すると共に、圧力検出値、流量検出値、圧力指令値および流量指令値に基づいて、コントローラによって、上記サーボモータを制御するようにしたものがある(特許文献1:特開2000−320466号公報)。
【0003】
ところで、上記従来の液圧駆動装置では、1つの固定容量形油圧ポンプをサーボモータで駆動しているため、そのサーボモータの必要とする軸トルクは負荷圧力および固定容量形油圧ポンプの容量に比例することになる。そのため、大流量を必要とする場合に、大容量の固定容量形油圧ポンプを用いると、負荷圧力が高くなると、サーボモータの必要な軸トルク、駆動電流が極めて大きくなって、それに応じて、サーボモータおよびコントローラが非常に大型、かつ、高価になる。
【0004】
一方、高圧を必要とする場合、小容量の固定容量形油圧ポンプを用いて、サーボモータの必要とする軸トルクを小さくすると、大流量を必要とする場合に、その要求に応えることができない。
【0005】
このように、上記従来の液圧駆動装置では、小型、安価な構造で、高圧の制御と大流量の制御とを両立することができないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−320466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、小型、安価な構造で、高圧の制御と大流量の制御とを両立することができる液圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の液圧駆動装置は、
軸が互いに連結された2連の中容量の第1固定容量形液圧ポンプおよび小容量の第2固定容量形液圧ポンプと、
上記第1固定容量形液圧ポンプの吐出口に接続された第1入力ポートと、上記第2固定容量形液圧ポンプの吐出口に接続された第2入力ポートと、負荷ラインに接続された出力ポートと、タンクに接続された戻りポートとを有し、かつ、上記第1および第2入力ポートが出力ポートに連通する一方戻りポートが閉鎖される第1の位置と、上記第1入力ポートが出力ポートに連通する一方上記第2入力ポートが戻りポートに連通する第2の位置と、上記第1入力ポートが戻りポートに連通する一方上記第2入力ポートが出力ポートに連通する第3の位置とを有する4ポート3位置形の電磁切換弁と、
上記第1固定容量形液圧ポンプおよび第2固定容量形液圧ポンプを駆動するサーボモータと、
上記負荷ラインの圧力を直接または間接に検出する圧力センサと、
上記サーボモータの回転位置または速度を検出する流量検出用センサと、
上記圧力センサと流量検出用センサとの出力を受けると共に、圧力指令および流量指令を受けて、上記負荷ラインの圧力および流量が、上記圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように、上記サーボモータを制御するコントローラと
を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の液圧駆動装置によれば、低圧大流量の制御時には、上記コントローラは、上記4ポート3位置形の電磁切換弁を第1の位置に位置させる。
【0009】
そうすると、上記中容量の第1固定容量形液圧ポンプから電磁切換弁の第1入力ポートに流入する中流量の液体と、小容量の第2固定容量形液圧ポンプから電磁切換弁の第2入力ポートに流入する小流量の液体とが合流して、出力ポートから大流量の液体が負荷ラインに供給される。
【0010】
このとき、上記コントローラは、低圧を示す圧力指令と、大流量を示す流量指令と、圧力センサからの信号と、流量検出用センサからの信号とに基づいて、負荷ラインの圧力および流量が上記低圧および大流量になるように、上記サーボモータの回転速度を制御する。
【0011】
このように、上記電磁切換弁が第1の位置に位置しているときは、負荷ラインに対して低圧大流量の制御を行う。
【0012】
一方、中圧中流量の制御時には、上記コントローラは、上記電磁切換弁を第2の位置に位置させる。
【0013】
そうすると、上記小容量の第2固定容量形液圧ポンプから電磁切換弁の第2入力ポートに流入する小流量の液体は、戻りポートからタンクに排出されて、第2固定容量形液圧ポンプはアンロードする。しかし、上記第1固定容量形液圧ポンプから電磁切換弁の第1入力ポートに流入する中流量の液体は、出力ポートから負荷ラインに供給される。
【0014】
このとき、上記コントローラは、中圧を示す圧力指令と、中流量を示す流量指令と、圧力センサからの信号と、流量検出用センサからの信号とに基づいて、負荷ラインの圧力および流量が上記中圧および中流量になるように、上記サーボモータの回転速度を制御する。
【0015】
このように、上記電磁切換弁が第2の位置に位置しているときは、負荷ラインに対して中圧中流量の制御を行う。
【0016】
また、高圧小流量の制御時には、上記コントローラは、上記電磁切換弁を第3の位置に位置させる。
【0017】
そうすると、上記中容量の第1固定容量形液圧ポンプから電磁切換弁の第1入力ポートに流入する中流量の液体は、戻りポートからタンクに排出されて、第1固定容量形液圧ポンプはアンロードする。しかし、上記第2固定容量形液圧ポンプから電磁切換弁の第2入力ポートに流入する小流量の液体は、出力ポートから負荷ラインに供給される。
【0018】
このとき、上記コントローラは、高圧を示す圧力指令と、小流量を示す流量指令と、圧力センサからの信号と、流量検出用センサからの信号とに基づいて、負荷ラインの圧力および流量が上記高圧および小流量になるように、上記サーボモータの回転速度を制御する。
【0019】
このように、上記電磁切換弁が第3の位置に位置しているときは、負荷ラインに対して高圧小流量の制御を行う。
【0020】
このように、1つの4ポート3位置形の電磁切換弁と、上述の接続構造を用いるだけで、低圧大流量、中圧中流量、高圧小流量という3段階の運転モードを選択して、サーボモータに必要とする軸トルクを小さくすることができる。
【0021】
したがって、この発明によれば、高圧制御と大流量制御とを両立することができる上に、サーボモータおよびコントローラが必要とする電流値を小さくできて、サーボモータおよびコントローラを小型、安価にすることができる。
【0022】
さらに、例えば、射出成型機やプレス機械の液圧駆動装置等においては、高圧で長時間圧力を保持したいと言う要請があったが、従来、サーボモータやコントローラが大きな電流によって発熱が大きくなるため、この要請に応えることができないと言う問題があった。しかし、上記構成の液圧駆動装置では、電流値が小さくなるため、高圧で長時間圧力を保持することができる。
【0023】
1実施形態の液圧駆動装置は、
上記第1固定容量形液圧ポンプの吐出口と上記電磁切換弁の第1入力ポートとの間と、上記負荷ラインとの間に、上記負荷ラインに向けての流れが順方向になるように接続された第1チェック弁と、
上記第2固定容量形液圧ポンプの吐出口と上記電磁切換弁の第2入力ポートとの間と、上記負荷ラインとの間に、上記負荷ラインに向けての流れが順方向になるように接続された第2チェック弁と
を備える。
【0024】
上記実施形態によれば、仮に、電磁切換弁が例えばゴミなどでロックして、第1の位置と第2の位置との間、あるいは、第1の位置と第3の位置との間で停止して、第1入力ポートや第2入力ポートと、出力ポートとの間が閉鎖されても、第1および第2固定容量形液圧ポンプからの液体を、上記電磁切換弁をバイパスして、第1チェック弁や第2チェック弁を通して、負荷ラインに供給することができる。このように、上記電磁切換弁が故障したときに、上記第1チェック弁や第2チェック弁で、電磁切換弁をバイパスするので、配管や液圧機器等の破損を防止できる。
【0025】
また、1実施形態の液圧駆動装置は、
上記負荷ラインに接続されたリリーフ弁を備える。
【0026】
上記実施形態によれば、上記リリーフ弁によって、上記第1および第2チェック弁から供給された液体で負荷ラインの圧力が過大になろうとしても、液体をタンクに解放して、圧力が過大になることを防止でき、機器の破損を防止できる。
【0027】
また、1実施形態の液圧駆動装置では、
上記コントローラは、
上記圧力指令と上記圧力センサからの圧力検出信号とを受けて、上記圧力指令と上記圧力検出信号との偏差に基づいて圧力制御信号を出力する圧力制御部と、
上記圧力制御部からの圧力制御信号と流量指令とを受けて、上記圧力制御信号に上記流量指令に応じた制限を加えて生成した制限制御信号を出力する制限部と、
上記制限部からの制限制御信号と上記流量検出用センサからの流量検出用信号とに基づいて、上記負荷ラインの圧力および流量を、上記圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように制御するための回転速度制御信号を生成して上記サーボモータに出力する回転速度制御部と
を備える。
【0028】
上記実施形態によれば、上記圧力制御部から出力されると共に、圧力指令と圧力検出信号との偏差に基づいた圧力制御信号に、制限部によって、流量指令に応じた制限を加えて(リミッタ制御をして)、制限制御信号を生成する。そして、この制限制御信号と、流量検出用センサからの流量検出用信号とに基づいて、回転速度制御部は、負荷ラインの圧力および流量を、圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように制御するための回転速度制御信号を生成してサーボモータに出力する。
【0029】
このように、圧力制御信号に、制限部によって、流量指令に応じた制限を加えて制限制御信号を作成し、この制限制御信号に基づいて、圧力および流量を制御するので、圧力制御および流量制御を的確、かつ、スムーズにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、小型、安価な構造で、モータ軸トルク、コントローラ出力電流を小さく抑えて、高圧の制御と大流量の制御とを両立することができる液圧駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、この液圧駆動装置は、軸が互いに連結された2連の第1固定容量形油圧ポンプ1および第2固定容量形油圧ポンプ2と、この第1および第2固定容量形油圧ポンプ1および2を駆動するサーボモータ3と、上記第1および第2固定容量形油圧ポンプ1および2からの作動油を制御する4ポート3位置形の電磁切換弁5と、上記サーボモータ3を制御するコントローラ6を備える。
【0033】
なお、第1および第2固定容量形油圧ポンプ1および2は、第1および第2固定容量形液圧ポンプの一例である。
【0034】
上記第1固定容量形油圧ポンプ1は、中容量で、第2固定容量形油圧ポンプ2は、第1固定容量形油圧ポンプ1の中容量よりも小さな小容量である。
【0035】
上記電磁切換弁5は、第1入力ポートP1と、第2入力ポートP2と、出力ポートAと、戻りポートRとを有する。
【0036】
また、上記電磁切換弁5は、上記第1および第2入力ポートP1,P2が出力ポートAに連通する一方戻りポートRが閉鎖される第1の位置S1と、上記第1入力ポートP1が出力ポートAに連通する一方上記第2入力ポートP1が戻りポートRに連通する第2の位置S2と、上記第1入力ポートP1が戻りポートRに連通する一方上記第2入力ポートP2が出力ポートAに連通する第3の位置S3とを有する。
【0037】
さらにまた、上記電磁切換弁5は、ソレノイドa、bを有し、ソレノイドaおよびbを消磁すると、中立位置、つまり、第1の位置S1に位置し、ソレノイドaのみを励磁すると、第2の位置S2に位置し、ソレノイドbのみを励磁すると、第3の位置S3に位置する。
【0038】
上記第1固定容量形油圧ポンプ1の吐出口は、第1吐出ライン11を介して電磁切換弁3の第1入力ポートP1に接続し、また、上記第2固定容量形油圧ポンプ2の吐出口は、第2吐出ライン12を介して電磁切換弁3の第2入力ポートP2に接続している。さらに、上記電磁切換弁5の出力ポートAは、負荷ライン15に接続し、この負荷ライン15は主機油圧回路16に通じている。上記電磁切換弁5の戻りポートRは、タンクTに接続している。
【0039】
上記第1吐出ライン11と負荷ライン15との間に、この負荷ライン15に向けての流れが順方向になる第1チェック弁21を接続している。さらに、上記第2吐出ライン12と負荷ライン15との間に、この負荷ライン15に向けての流れが順方向になる第2チェック弁22を接続している。さらにまた、上記負荷ライン15にリリーフ弁23を接続している。
【0040】
また、上記負荷ライン15に圧力センサ25を接続して、この圧力センサ25で負荷ライン15の圧力を直接検出するようにしている。
【0041】
一方、上記サーボモータ3には、このサーボモータ3の回転位置を検出するエンコーダからなる位置検出器26を設けている。この位置検出器26は、2連の第1および第2固定容量形油圧ポンプ1および2の流量を間接的に検出するためのもので、流量検出用センサの一例である。
【0042】
また、上記コントローラ6は、上記圧力センサ25と位置検出器26との出力を受けると共に、圧力指令および流量指令を受けて、負荷ライン15の圧力および流量が、上記圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように、上記サーボモータ3を制御する。
【0043】
具体的には、上記コントローラ6は、圧力制御部31と、制限部32と、回転速度制御部33とを含む。これらの圧力制御部31、制限部32および回転速度制御部33は、マイクロコンピュータのソフトウェア、ハードウェア等から構成されている。
【0044】
上記圧力制御部31は、上記圧力指令と上記圧力センサ25からの圧力検出信号Pfとを受けて、上記圧力指令と上記圧力検出信号Pfとの偏差に基づいた圧力制御信号Vpを出力する。この圧力制御部31は、圧力偏差をいわゆるPID(比例・積分・微分)制御により圧力制御信号に変換する。
【0045】
上記制限部32は、リミッタ回路と同様の機能を有し、上記圧力制御部31からの圧力制御信号Vpと流量指令とを受けて、上記圧力制御信号Vpが、流量指令に応じた所定の値よりも大きいときに、上記流量指令に応じた制限を加えて、所望の回転速度に対応する制限制御信号VLを生成して出力する。
【0046】
上記コントローラ6は、図示しないが、予め定められた基準によって、流量指令が大流量、中流量または小流量のどれを表しているかを定め、そして、この定められた大流量、中流量および小流量に応じて、電磁切換弁5を第1、第2および第3の位置S1,S2,S3に位置させるための制御信号をソレノイドa,bに出力する。
【0047】
また、上記回転速度制御部33は、例えば、単位時間当たり、位置検出器26から受けた検出信号の数、つまり、サーボモータ3の回転速度と、上記制御信号によって定まる電磁切換弁5の位置S1,S2またはS3、つまり、サーボモータ3の一定回転角当たり負荷ライン15に供給される作動油の量とに基づいて、流量を検出する。
【0048】
さらに、上記回転速度制御部33は、所望流量に対応する制限部32からの制限制御信号VLと、上記検出した流量との偏差に応じた回転速度制御信号を生成して上記サーボモータ3に出力して、上記負荷ライン15の圧力および流量を、上記圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように制御する。この回転速度制御部33は、ドライバーとしての機能を有し、上記回転速度制御信号は、交流のモータ制御電流である。
【0049】
上記構成の液圧駆動装置は、次のように動作する。
【0050】
いま、圧力指令および流量指令によって、低圧大流量の制御を行うとする。このとき、上記コントローラ6は、上記4ポート3位置形の電磁切換弁5を第1の位置S1に位置させる。
【0051】
そうすると、中容量の第1固定容量形油圧ポンプ1から電磁切換弁5の第1入力ポートP1に流入する中流量の作動油と、小容量の第2固定容量形油圧ポンプ2から電磁切換弁5の第2入力ポートP2に流入する小流量の作動油とが合流して、出力ポートAから大流量の液体が負荷ライン15に供給される。
【0052】
このとき、上記コントローラ6は、低圧を示す圧力指令と、大流量を示す流量指令と、圧力センサ25からの信号と、位置検出器26からの信号とに基づいて、負荷ライン15の圧力および流量が上記低圧および大流量になるように、上記サーボモータ3の回転速度を制御する。
【0053】
このように、上記電磁切換弁5が第1の位置S1に位置しているときは、負荷ライン15に対して低圧大流量の制御を行う。
【0054】
詳しくは、上記コントローラ6の圧力制御部31から出力されると共に、圧力指令と圧力検出信号との偏差に基づいた圧力制御信号Vpに、制限部32によって、流量指令に応じた制限を加えて、制限制御信号VLを生成する。そして、この制限制御信号VLと、位置検出器26からの信号と上記第1の位置S1を表す制御信号とによって算出された流量とに基づいて、回転速度制御部33は、負荷ライン15の圧力および流量を、圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように制御するための回転速度制御信号を生成してサーボモータ3に出力する。
【0055】
このように、圧力制御信号Vpに、制限部32によって、流量指令に応じた制限を加えて制限制御信号VLを作成し、この制限制御信号VLに基づいて、圧力および流量を制御するので、圧力制御および流量制御を的確、かつ、スムーズにすることができる。
【0056】
次に、圧力指令および流量指令によって、中圧中流量の制御を行うとする。
【0057】
このとき、上記コントローラ6は、上記4ポート3位置形の電磁切換弁5を第2の位置S2に位置させる。
【0058】
そうすると、中容量の第1固定容量形油圧ポンプ1から電磁切換弁5の第1入力ポートP1に流入する中流量の作動油は出力ポートAから負荷ライン15に供給される一方、小容量の第2固定容量形油圧ポンプ2から電磁切換弁5の第2入力ポートP2に流入する小流量の作動油は戻りポートRからタンクTに排出されて、第2固定容量形油圧ポンプ2はアンロードする。
【0059】
このとき、上記コントローラ6は、中圧を示す圧力指令と、中流量を示す流量指令と、圧力センサ25からの信号と、位置検出器26からの信号とに基づいて、負荷ライン15の圧力および流量が上記中圧および中流量になるように、上記サーボモータ3の回転速度を制御する。
【0060】
このように、上記電磁切換弁5が第2の位置S2に位置しているときは、負荷ライン15に対して中圧中流量の制御を行う。
【0061】
詳しくは、上記コントローラ6の圧力制御部31から出力されると共に、圧力指令と圧力検出信号との偏差に基づいた圧力制御信号Vpに、制限部32によって、流量指令に応じた制限を加えて、制限制御信号VLを生成する。そして、この制限制御信号VLと、位置検出器26からの信号と上記第2の位置S2を表す制御信号とによって算出された流量とに基づいて、回転速度制御部33は、負荷ライン15の圧力および流量を、圧力指令および流量指令に応じた中圧および中流量になるように制御するための回転速度制御信号を生成してサーボモータ3に出力する。
【0062】
このように、圧力制御信号Vpに、制限部32によって、流量指令に応じた制限を加えて制限制御信号VLを作成し、この制限制御信号VLに基づいて、圧力および流量を制御するので、圧力制御および流量制御を的確、かつ、スムーズにすることができる。
【0063】
次に、圧力指令および流量指令によって、高圧小流量の制御を行うとする。
【0064】
このとき、上記コントローラ6は、上記4ポート3位置形の電磁切換弁5を第3の位置S3に位置させる。
【0065】
そうすると、中容量の第1固定容量形油圧ポンプ1から電磁切換弁5の第1入力ポートP1に流入する中流量の作動油は戻りポートRからタンクTに排出されて、第1固定容量形油圧ポンプ1がアンロードする一方、小容量の第2固定容量形油圧ポンプ2から電磁切換弁5の第2入力ポートP2に流入する小流量の作動油は出力ポートAから負荷ライン15に供給される。
【0066】
このとき、上記コントローラ6は、高圧を示す圧力指令と、小流量を示す流量指令と、圧力センサ25からの信号と、位置検出器26からの信号とに基づいて、負荷ライン15の圧力および流量が上記高圧および小流量になるように、上記サーボモータ3の回転速度を制御する。
【0067】
このように、上記電磁切換弁5が第3の位置S3に位置しているときは、負荷ライン15に対して高圧小流量の制御を行う。
【0068】
詳しくは、上記コントローラ6の圧力制御部31から出力されると共に、圧力指令と圧力検出信号との偏差に基づいた圧力制御信号Vpに、制限部32によって、流量指令に応じた制限を加えて、制限制御信号VLを生成する。そして、この制限制御信号VLと、位置検出器26からの信号と上記第3の位置S3を表す制御信号とによって算出された流量とに基づいて、回転速度制御部33は、負荷ライン15の圧力および流量を、圧力指令および流量指令に応じた高圧および小流量になるように制御するための回転速度制御信号を生成してサーボモータ3に出力する。
【0069】
このように、圧力制御信号Vpに、制限部32によって、流量指令に応じた制限を加えて制限制御信号VLを作成し、この制限制御信号VLに基づいて、圧力および流量を制御するので、圧力制御および流量制御を的確、かつ、スムーズにすることができる。
【0070】
このように、1つの4ポート3位置形の電磁切換弁5と、上述の接続構造を用いるだけで、低圧大流量、中圧中流量、高圧小流量という3段階の運転モードを選択して、2つのポンプを適宜アンロード、合流させることにより、サーボモータ3に必要とする軸トルクを小さくすることができる。
【0071】
したがって、この液圧駆動装置よれば、高圧制御と大流量制御とを両立することができる上に、サーボモータ3およびコントローラ6が必要とする電流値を小さくできて、サーボモータ3およびコントローラ6を小型、安価にすることができる。
【0072】
さらに、上記液圧駆動装置では、電流値が小さくなるため、高圧小容量の制御を選択すると、高圧で長時間圧力を保持することができる。
【0073】
次に、上記電磁切換弁5が例えばゴミなどでロックして、第1の位置S1と第2の位置S2との間、あるいは、第1の位置S1と第3の位置S3との間で停止して、第1入力ポートP1や第2入力ポートP2と、出力ポートAや戻りポートRとの間が閉鎖されたとする。
【0074】
このとき、吐出ライン11,12の圧力が上がろうとするが、第1チェック弁21や第2チェック弁22が開放して、第1および第2固定容量形油圧ポンプ1,2からの作動油が、上記電磁切換弁5をバイパスして、負荷ライン15に供給される。このように、上記電磁切換弁5が故障したときに、作動油が第1チェック弁21や第2チェック弁22で、電磁切換弁5をバイパスするので、配管や油圧機器等の破損を防止することができる。
【0075】
さらに、上記第1および第2チェック弁21,22から供給された作動油で負荷ライン15の圧力が過大になろうとしたときに、リリーフ弁23によって、作動油をタンクTに解放して、圧力が過大になることを防止でき、機器の破損を防止できる。
【0076】
上記実施形態では、負荷ライン15の圧力を圧力センサ25で直接検出したが、サーボモータ3に流れる電流値を電流センサで検出して、この電流値によって、間接的に圧力を検出してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、流量検出用センサの一例として位置検出器を用いて、サーボモータ3の回転位置と時間とに基づいて流量を検出したが、サーボモータ3の回転速度を直接検出して、流量を検出するようにしてもよい。
【0078】
また、この発明の用いるコントローラは、上記実施形態のコントローラ6に限るものではなく、例えば、特許文献1の図4に記載のような差分選択部を有するものであってもよく、圧力指令および流量指令に応じて圧力および流量を制御するものであれば、どのようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の1実施形態の液圧駆動装置の回路図である。
【符号の説明】
【0080】
1 第1固定容量形油圧ポンプ
2 第2固定容量形油圧ポンプ
3 サーボモータ
5 電磁切換弁
6 コントローラ
21,22 チェック弁
23 リリーフ弁
25 圧力センサ
26 位置検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸が互いに連結された2連の中容量の第1固定容量形液圧ポンプ(1)および小容量の第2固定容量形液圧ポンプ(2)と、
上記第1固定容量形液圧ポンプ(1)の吐出口に接続された第1入力ポート(P1)と、上記第2固定容量形液圧ポンプ(2)の吐出口に接続された第2入力ポート(P2)と、負荷ライン(15)に接続された出力ポート(A)と、タンク(T)に接続された戻りポート(R)とを有し、かつ、上記第1および第2入力ポート(P1,P2)が出力ポート(A)に連通する一方戻りポート(R)が閉鎖される第1の位置(S1)と、上記第1入力ポート(P1)が出力ポート(A)に連通する一方上記第2入力ポート(P2)が戻りポート(R)に連通する第2の位置(S2)と、上記第1入力ポート(P1)が戻りポート(R)に連通する一方上記第2入力ポート(P2)が出力ポート(A)に連通する第3の位置(S3)とを有する4ポート3位置形の電磁切換弁(5)と、
上記第1固定容量形液圧ポンプ(1)および第2固定容量形液圧ポンプ(2)を駆動するサーボモータ(3)と、
上記負荷ライン(15)の圧力を直接または間接に検出する圧力センサ(25)と、
上記サーボモータ(3)の回転位置または速度を検出する流量検出用センサ(26)と、
上記圧力センサ(25)と流量検出用センサ(26)との出力を受けると共に、圧力指令および流量指令を受けて、上記負荷ライン(15)の圧力および流量が、上記圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように、上記サーボモータ(3)を制御するコントローラ(6)と
を備えることを特徴とする液圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧駆動装置において、
上記第1固定容量形液圧ポンプ(1)の吐出口と上記電磁切換弁(5)の第1入力ポート(P1)との間と、上記負荷ライン(15)との間に、上記負荷ライン(15)に向けての流れが順方向になるように接続された第1チェック弁(21)と、
上記第2固定容量形液圧ポンプ(2)の吐出口と上記電磁切換弁(5)の第2入力ポート(P2)との間と、上記負荷ライン(15)との間に、上記負荷ライン(15)に向けての流れが順方向になるように接続された第2チェック弁(22)と
を備えることを特徴とする液圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液圧駆動装置において、
上記負荷ライン(15)に接続されたリリーフ弁(23)を備えることを特徴とする液圧駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の液圧駆動装置において、
上記コントローラ(6)は、
上記圧力指令と上記圧力センサからの圧力検出信号とを受けて、上記圧力指令と上記圧力検出信号との偏差に基づいて圧力制御信号(Vp)を出力する圧力制御部(31)と、
上記圧力制御部(31)からの圧力制御信号と流量指令とを受けて、上記圧力制御信号に上記流量指令に応じた制限を加えて生成した制限制御信号(VL)を出力する制限部(32)と、
上記制限部(32)からの制限制御信号と上記流量検出用センサ(26)からの流量検出用信号とに基づいて、上記負荷ライン(15)の圧力および流量を、上記圧力指令および流量指令に応じた圧力および流量になるように制御するための回転速度制御信号を生成して上記サーボモータ(3)に出力する回転速度制御部(33)と
を備えることを特徴とする液圧駆動装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−8258(P2008−8258A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181628(P2006−181628)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】