説明

液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル

【課題】優れた遮光部硬化性を有し、且つ低液晶汚染性である液晶シール剤を提案すること。
【解決手段】 液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有するアクリル樹脂又はエポキシアクリレート樹脂又は芳香族化合物である光硬化性樹脂を30〜80重量%の範囲、かつ(b)光重合開始剤を(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部、及び(c)シリカなどの無機充填剤を5〜40重量%含有することを特徴とする液晶シール剤を提供する。更に、(a)〜(c)に加えて(d)エポキシ樹脂5〜30重量%と、(e)熱硬化剤を含有する液晶シール剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルに関する。より詳しくは、一方の基板に形成された光熱硬化併用型の液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、該液晶シール剤を硬化させることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造に用いる液晶シール剤及びそれを用いて製造された液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されていた(特許文献1、特許文献2参照)。具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造方法である。
【0003】
しかし、液晶滴下工法は、液晶シール剤がまず未硬化の状態で液晶に接触するため、その際に液晶シール剤の成分が液晶に溶解して液晶の比抵抗を低下させシール近傍の表示不良が発生する問題点がある。
【0004】
液晶滴下工法において、基板を貼り合わせ後の液晶シール剤の硬化方法として、熱硬化法、光硬化法、光熱硬化併用法の3つの方法が考えられている。熱硬化法では、加熱による液晶の膨張により低粘度化した硬化途中の液晶シール剤から液晶が漏れてしまうという問題と低粘度化した液晶シール剤の成分が液晶に溶解してしまうという問題があり、これらの問題は解決が困難であり、いまだ実用化されていない。
【0005】
一方、光硬化法に用いられる液晶シール剤としては、光重合開始剤の種類によりカチオン重合型とラジカル重合型の2種類が挙げられる。カチオン重合型の液晶シール剤(特許文献3参照)については、光硬化の際にイオンが発生するため、これを液晶滴下工法に使用した場合、接触状態の液晶中にイオン成分が溶出し、液晶の比抵抗を低下させるという問題がある。又、ラジカル重合型の液晶シール剤(特許文献4参照)については光硬化時の硬化収縮が大きいために、接着強度が十分でないという問題がある。更に、カチオン重合型とラジカル重合型の両方の光硬化法に関わる問題点として、液晶表示セルのアレイ基板のメタル配線部分やカラーフィルター基板のブラックマトリックス部分により液晶シール剤に光が当たらない遮光部分が生じるため、遮光部分が未硬化になるという問題が生じる。
【0006】
このように熱硬化法、光硬化法は様々な問題点を抱えており、現実には特許文献5に示されている様な光熱硬化併用法が最も実用的な工法と考えられている。光熱硬化併用法は、基板に挟まれた液晶シール剤に光を照射して一次硬化させた後、加熱して二次硬化させることを特徴とする。通常こういったシール剤には光反応性樹脂、光開始剤、熱硬化性樹脂、熱硬化剤を含有する事が一般的であるが、光反応性樹脂と熱硬化剤の選択の仕方によってはこの2成分を反応させる事も可能である。例えば、特許文献6に記載の様に、光反応性樹脂にエポキシアクリレートを用い、熱硬化剤に有機酸ヒドラジドを用いると、マイケル付加反応による熱硬化が可能である。この方法を用いることにより、光硬化時に未硬化となってしまう遮光部においても熱硬化により硬化させる事ができる。しかしながら、一般的に液晶表示セル内には遮光部と露光部が併存する為、熱硬化剤の添加量が問題となる。つまり、露光部に合わせ、熱硬化樹脂を硬化させるだけの量の熱硬化剤を添加すると、遮光部では熱硬化剤が不足し、硬化不十分となる。また遮光部に合わせ過剰の熱硬化剤を添加すると露光部において熱硬化剤が過剰となり、未反応で残存し、硬化物の特性を落とすという結果となってしまう。従って遮光部を熱硬化し、露光部を光硬化するといった方法は実質的には良策とはいえない。
【0007】
以上述べてきたように、液晶滴下工法用の液晶シール剤での開発は非常に精力的に行われているにも拘わらず、優れた遮光部硬化性を有するものは未だ完成していない。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−179323号公報
【特許文献2】特開平10−239694号公報
【特許文献3】特開2001−89743号公報
【特許文献4】特許第2754004号公報
【特許文献5】特許第3583326号公報
【特許文献6】特開2004−61925公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせて、液晶シール部に光照射後、加熱硬化で液晶表示セルが製造される液晶滴下工法に用いられる液晶シール剤に関するものであり、工程を通して液晶に対して極めて汚染性が低く、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着強度に優れ、且つ遮光部硬化性が非常に優れている為、いかなる設計の液晶パネルにも適応可能である液晶シール剤を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を用いることで遮光部の硬化性を向上させることを見出し、本発明を完成させたものである。即ち本発明は、次の(1)〜(12)に関するものである。
(1)液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を30〜80重量%の範囲で、かつ(b)光重合開始剤及び(c)無機充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。
(2)液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を30〜80重量%、(b)光重合開始剤を(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部及び(c)無機充填剤を5〜40重量%含有することを特徴とする、(1)に記載の液晶シール剤。
(3)(a)成分の光硬化性樹脂がアクリル樹脂である(1)又は(2)に記載の液晶シール剤。
(4)(a)成分の光硬化性樹脂がエポキシアクリレート樹脂である(3)に記載の液晶シール剤。
(5)(a)成分の光硬化性樹脂が芳香環を有する化合物である(1)乃至(4)の何れか1項に記載の液晶シール剤。
(6)更に、(d)エポキシ樹脂及び(e)熱硬化剤を含有する(1)乃至(5)の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【0011】
(7)(e)熱硬化剤がジヒドラジド類である(6)に記載の液晶シール剤。
(8)更に、(f)シランカップリング剤を含有する(1)乃至(7)の何れか1項に記載の液晶シール剤。
(9)シランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤である(8)に記載の液晶シール剤。
(10)液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を30〜80重量%、(b)光重合開始剤を(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部、(c)無機充填剤を5〜40重量%、(d)エポキシ樹脂を5〜30重量%、(e)熱硬化剤を(d)成分のエポキシ基の1当量に対して0.5〜1.5当量及び(f)シランカップリング剤を0.05〜3重量%含有することを特徴とする、(1)に記載の液晶シール剤。
(11)前記(1)乃至(10)の何れか1項に記載の液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
(12)一方の基板の周囲に形成された(1)乃至(10)の何れか1項に記載の液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることを特徴とする液晶表示セルの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶シール剤は配線またはブラックマトリックスの影となる遮光部に関しても、良好な光硬化性を有する。従って、このシール剤を使用する事により、遮光部を意識することなく液晶滴下工法による液晶表示セルの設計ができ、また、信頼性の優れた液晶表示パネルの製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂(a)は、特に限定されるものでは無く、3官能以上のウレタンアクリレート、(メタ)アクリルエステル、エポキシ(メタ)アクリレートの様なアクリロイル基またはビニル基を官能基としてもつ化合物が挙げられ、中でも液晶汚染性の観点から液晶と相溶し難いものである必要がある。また、1分子中にこれらの官能基を併せ持った構造のものでも良く、これらを2種以上混合して用いても良い。ただし、この樹脂は液晶への溶解性を考慮した場合、ある程度高極性である必要があり、好ましくはアクリル樹脂、より好ましくはエポキシアクリレート樹脂である。具体的には、グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フロログリシノールトリアクリレート等のアクリル酸エステルが挙げられる。更には、2−[4−(2,3−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、トリスヒドロキシフェニルメタン、フロログリシノール、イソシアヌレート、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物等のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂のアクリル酸付加物やN, N, N', N'-テトラグリジルm-キシレンジアミン、1.3-ビス(N, N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンのアクリル酸付加物が挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
【0014】
また、この光反応性樹脂は、分子内に芳香環をもつことが好ましい。芳香環を有する事により光感受性が上がり、遮光部における硬化度が更に向上する。従って例示列挙した上記化合物の中でも特にフロログリシノールトリアクリレートや2−[4−(2,3−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、トリスヒドロキシフェニルメタン、フロログリシノール、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物のアクリル酸付加物等、またN, N, N', N'-テトラグリジルm-キシレンジアミンのアクリル酸付加物が好ましいと考えられるがこれらに限定されるものでは無い。
本発明で使用しうる(a)成分の液晶シール剤中の含有量は、通常30〜80重量%、好ましくは40〜70重量%程度である。(a)の含有量が30重量%より少ないと光硬化時の反応が不十分となり、本発明の特徴と言える遮硬部での硬化性もその効力を減衰させる。一方、(a)の含有量が80重量%より多いと、光硬化時の硬化収縮が大きいために、十分な接着強度が得られない。
【0015】
また、本発明で用いられる光重合開始剤である(b)成分は、ラジカル型開始剤であれば特に限定されるものではなく、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。また、式(1)に示す一分子中にラジカル重合反応性基とラジカル発生基を併せもっている光重合開始剤を用いる事によって、更に低液晶汚染性を実現する事も可能である。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明の液晶シール剤中、(a)成分に対する成分(b)光重合開始剤の配合比は、(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜3重量部である。ラジカル発生型光重合開始剤の量が0.01重量部より少ないと光硬化反応が充分でなくなり、5重量部より多くなると開始剤の量が多すぎて液晶に対する開始剤による汚染や硬化樹脂特性の低下が問題になる。
【0018】
本発明で使用しうる無機充填剤(c)としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機充填剤は2種以上を混合して用いても良い。
【0019】
本発明で使用しうる無機充填剤の液晶シール剤中の含有量は、通常5〜40重量%、好ましくは15〜30重量%である。無機充填剤の含有量が5重量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機充填剤の含有量が40重量%より多い場合、充填剤含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0020】
本発明で用いられうるエポキシ樹脂(d)としては、特に限定されるものではないが、液晶汚染性の観点より、液晶に対して溶出し難いエポキシ樹脂である事が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールS型エポキシ樹脂(2)
【化2】

【0021】
、レゾルシンジグリシジルエーテル多量体(3)
【化3】

(式中、nは1乃至10の整数を表す。)
【0022】
、エチレンオキサイド付加ビスフェノールSのジグリシジルエーテル(4)
【化4】

【0023】
、エチレンオキサイド付加ビスフェノールフルオレンのジグリシジルエーテル(5)
【化5】

等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明に使用するエポキシ樹脂の加水分解性塩素量は600ppm以下、好ましくは300ppm以下である。加水分解性塩素量が600ppmより多くなると液晶に対する液晶シール剤の汚染性が問題になる。加水分解性塩素量は、例えば約0.5gのエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、1NのKOH/エタノール溶液5mlで30分還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量することができる。かかるエポキシ樹脂(d)の液晶シール剤に占める含有量は、5〜30重量%程度である。
【0025】
本発明の液晶シール剤は熱硬化剤(e)を含有することが好ましい。熱硬化剤についてはエポキシ樹脂と反応して硬化物を形成するものであれば特に限定されるものではないが、加熱した時に液晶シール剤が液晶を汚染することなく均一に速やかに反応を開始すること、使用時には室温下における経時的な粘度変化が少ないことが重要である。熱硬化条件としては液晶滴下方式の場合、封入される液晶の特性低下を最小限に留める為、一般に120℃、1時間程度での低温硬化能が求められている。以上の点を鑑みて、本発明の液晶シール剤における熱硬化成分として特に多官能ヒドラジド類を使用することが好ましい。
【0026】
多官能ジヒドラジド類とは、この場合分子中に2個以上のヒドラジド基を有するものを指し、その具体例としては、例えば、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオジヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のバリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多官能ジヒドラジドを硬化剤として使用する場合には、潜在性硬化剤とするために、粒径を細かくして均一に分散することが好ましい。多官能ジヒドラジドのうち、好ましいのはジヒドラジドであり、液晶汚染性の観点から特に好ましいのはアジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、バリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類である。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。また、同様に最大粒径は8μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。硬化剤の粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定した。なお、平均粒径は極端に小さく(例えば、0.1μm以下)ならないように調製するのが好ましい。
【0027】
本発明の液晶シール剤中、成分(e)成分の配合比は、(d)成分のエポキシ基の当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量である。(d)成分の量が0.5当量より少ないと熱硬化反応が不十分となり、接着力、ガラス転移点が低くなることがある。一方、当量が1.5より多いと、硬化剤が残留して接着力が低下し、またポットライフも悪化する場合がある。
【0028】
本発明の液晶シール剤は接着強度を向上させるために、シランカップリング剤(f)を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。これらのうち、より良好な接着強度を得るためにはシランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤を使用する事により接着強度が向上し、耐湿信頼性が優れた液晶シール剤が得られる。かかるシランカップリング剤(f)の液晶シール剤に占める含有量は、0.05〜3重量%程度である。
【0029】
本発明による液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機溶媒、有機充填剤ならびに顔料、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。
【0030】
本発明の液晶シール剤を得るにはまず(a)成分、(b)成分に必要に応じ、(d)成分、(f)成分を溶解混合する。次いでこの混合物に無機充填剤(c)成分、更に(d)成分を用いた場合は熱硬化剤として(e)成分、並びに必要に応じ有機フィラー、消泡剤、及びレベリング剤等の所定量を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0031】
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、例えば本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方の周囲にディスペンサー等により該液晶シール剤を塗布して堰を形成した後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、紫外線照射機により液晶シール部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500mJ/cm2〜6000mJ/cm2、より好ましくは1000mJ/cm2〜4000mJ/cm2の照射量が好ましい。その後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100重量部に対し通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0033】
合成例1 (a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂の合成(1)
2−[4−(2,3−ヒドロキシフェニル)−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパンのグリシジルエーテル化合物(商品名:VG3101、エポキシ当量:約211g/eq、三井化学工業株式会社製)をトルエンに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライドを添加して、98℃で約50時間攪拌した。得られた反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とする3官能のエポキシアクリレートを得た。
【0034】
合成例2 (a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂(2)
ジペンタエリスリトールのグリシジルエーテル化合物(エポキシ当量:約116g/eq)をトルエンに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライドを添加して、98℃で約50時間攪拌した。得られた反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とする6官能のエポキシアクリレートを得た。
【0035】
合成例3 1分子中に光反応性官能基を2個有する光硬化性樹脂
ビスフェノールFエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE−404P、エポキシ当量160g/eq、加水分解量30ppm)をトルエンに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸を加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライドを添加して、98℃で約50時間攪拌した。得られた反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、ビスフェノールFのエポキシアクリレートを得た。
【0036】
実施例1
多官能光反応性樹脂として合成例1で合成した3官能エポキシアクリレート樹脂160重量部、式(1)に示した構造をもつ反応性光重合開始剤(2−イソシアナートエチル=メタクリラートと2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンの反応生成物)を1重量部、エポキシ樹脂としてRE−203(日本化薬株式会社製;エポキシ当量233g/eq、エチレンオキサイド付加ビスフェノールS型エポキシ樹脂)40重量部、エポキシシランカップリング剤(サイラエースS−510、チッソ株式会社製)0.3重量部を90℃で加熱溶解し、樹脂液を得た。室温に冷却後、アジピン酸ジヒドラジド(商品名ADH;大塚化学株式会社製ジェットミル粉砕グレードを更にジェットミルで微粉砕したもの、平均粒径1.0μm)3.6重量部、球状シリカ(株式会社アドマテックス製、アドマファイン、平均粒径1.0μm)59.4重量部を添加し3本ロールにより混練して本発明の液晶シール剤を得た。液晶シール剤の粘度(25℃)は260Pa・sであった(R型粘度計(東機産業株式会社製))
【0037】
実施例2
多官能光反応性樹脂として合成例2で合成した6官能エポキシアクリレート樹脂を用いる以外は実施例1と同様にして、本発明の液晶シール剤を得た。粘度(25℃)は350Pa・sであった。
【0038】
比較例1
光反応性樹脂として合成例3で合成した2官能エポキシアクリレート樹脂を用いる以外は実施例1と同様にして、本発明の液晶シール剤を得た。粘度(25℃)は300Pa・sであった。
【0039】
遮光部硬化テスト
図1に示す様に、クロムメッキをエッチングしたガラス基板の中央に5μmのグラスファイバーを1w%添加した液晶シール剤を塗付し、クロムメッキがクロスするように貼りあわせ、クリップで固定する。これに2000mJ/cm2の紫外線を照射した後、貼り合わせた2枚のガラスを剥がし、クロムの下で遮光されている部分を顕微鏡で確認し、遮光部分の硬化幅を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
液晶汚染性テスト
サンプル瓶にシール剤3種(合成例1、2及び比較例1)を0.1g入れ、2000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化した後液晶(メルク製、MLC−6866−100)1mlを加え、120℃オーブンに1時間投入し、その後、0.5時間室温にて放置する。処理が終ったサンプル瓶から液晶のみを取り出し、液体電極LE21(安藤電気製)に入れて、アドバンテスト製エレクトロメーターR−8340により測定電圧10Vで4分後の液晶の比抵抗を測定して行った。結果を表1に示す。
【0041】
シール剤接着強度テスト
液晶シール剤100gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせUV照射機により2000mJ/cm2の紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入して硬化させた。そのガラス片のせん断接着強度を測定した。その結果を表1示す。
【0042】
シール剤ガラス転移点
得られた液晶シール剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み100μmの薄膜としたものにUV照射機により2000mJ/cm2の紫外線を照射した後、120℃オーブンに1時間投入して硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。TMA試験機(真空理工株式会社製)引っ張りモードにてガラス転移点を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
表1に示すように本発明のシール剤は遮光部硬化深度が、2官能光反応性樹脂を使用した場合よりも深くなっており、優れた遮光部硬化性を有する事が確認された。また、表1に示す様に、本発明のシール剤のその他の特性に関しては、比較例1と同等であり、多官能光反応性樹脂を使用することによるデメリットは確認されなかった。
【0044】
以上のように、本件発明の液晶シール剤は、他の特性を落とす事無く、遮光部の硬化性を向上したものであり、液晶パネル設計の幅を広げられる上、高い信頼性を保証する事ができるものである。
【0045】
表1
実施例1 実施例2 比較例1
遮光部硬化幅 150μm 180μm 90μm
粘度(25℃) 260Pa・s 350Pa・s 300Pa・s
接着強度 75MPa 73MPa 75MPa
液晶比抵抗値 1.4E+12 2.0E+12 1.4E+12
ガラス転移温度 105℃ 110℃ 100℃
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】遮光部分の硬化幅の測定について図1に示した。クロムメッキをエッチングしたガラス基板の中央にグラスファイバーを添加した液晶シール剤を塗付し、クロムメッキがクロスするように貼りあわせ、クリップで固定する(紫外線照射前)。これに紫外線を照射した後、貼り合わせた2枚のガラスを剥がし、クロムの下で遮光されている部分を顕微鏡で確認し、遮光部分の硬化幅を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を30〜80重量%の範囲で、かつ(b)光重合開始剤及び(c)無機充填剤を含有することを特徴とする液晶シール剤。
【請求項2】
液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を30〜80重量%、(b)光重合開始剤を(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部及び(c)無機充填剤を5〜40重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
(a)成分の光硬化性樹脂がアクリル樹脂である請求項1又は請求項2に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
(a)成分の光硬化性樹脂がエポキシアクリレート樹脂である請求項3に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
(a)成分の光硬化性樹脂が芳香環を有する化合物である請求項1乃至4の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
更に、(d)エポキシ樹脂及び(e)熱硬化剤を含有する請求項1乃至5の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項7】
(e)熱硬化剤がジヒドラジド類である請求項6に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
更に、(f)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至7の何れか1項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
シランカップリング剤がアミノ基を有するシランカップリング剤である請求項8に記載の液晶シール剤。
【請求項10】
液晶シール剤中に、(a)1分子中に光反応性官能基を3個以上有する光硬化性樹脂を30〜80重量%、(b)光重合開始剤を(a)成分100重量部に対して0.01〜5重量部、(c)無機充填剤を5〜40重量%、(d)エポキシ樹脂を5〜30重量%、(e)熱硬化剤を(d)成分のエポキシ基の1当量に対して0.5〜1.5当量及び(f)シランカップリング剤を0.05〜3重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【請求項12】
一方の基板の周囲に形成された請求項1乃至10の何れか1項に記載の液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることを特徴とする液晶表示セルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−10769(P2007−10769A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188547(P2005−188547)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】