説明

液晶シール用硬化性樹脂組成物、およびこれを使用する液晶表示パネルの製造方法

【課題】耐リーク性に優れる液晶シール用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(1a)アクリル樹脂または(1b)分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂と、(2)熱ラジカル重合開始剤と、(3)フィラーと、を含む液晶シール用硬化性樹脂組成物を調製する。当該樹脂組成物は、前記フィラー(3)を除く樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が、0.002mol/g以上0.006mol/g未満とする。このような樹脂組成物は、ラジカル種と(メタ)アクリル基とが素早く反応するので硬化速度が速く、ゲル化が促進されるため、耐リーク性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶シール用硬化性樹脂組成物、当該液晶シール用硬化性樹脂組成物から得られる液晶滴下工法用樹脂組成物、およびこの液晶滴下工法用シール剤を使用する液晶表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータをはじめとする各種電子機器の画像表示パネルとして、軽量かつ高精細であるなどの利点から、液晶表示パネルが広く使用されている。液晶表示パネルは、表面に電極が設けられた2枚の透明基板の間に液晶材料(以下、単に「液晶」という)を挟み込み、その周りを液晶シール剤によってシールされた構造を有する画像表示パネルである。
【0003】
上記液晶シール剤は、その使用量は僅かであるものの液晶と直接接触するため、液晶表示パネルの信頼性に大きな影響を与える。したがって、液晶表示パネルの高画質化を実現するため、現在、液晶シール剤には、高度かつ多様な特性が求められている。
【0004】
従来から、液晶表示パネルは、主に液晶注入工法によって製造されている。液晶注入工法は、先ず、(1)1枚の透明な基板の上に液晶シール剤を塗布して枠を形成し、(2)当該基板をプレキュア処理することによって液晶シール剤を乾燥させた後、他方の基板を貼り合わせ、(3)この2枚の基板を加熱圧締し、基板同士を接着させることにより基板の間に液晶シール剤の枠(セル)を形成し、(4)空のセル内に適量の液晶を注入した後、液晶の注入口を封止することにより液晶表示パネルを製造する方法である。
【0005】
液晶注入工法では、従来から加熱によって液晶シール剤を硬化させる。今までに、当該液晶注入工法に適した液晶シール剤として、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂を原料とする樹脂組成物が提案されている。ところが、液晶表示パネルの需要増大に伴って、液晶注入工法は、液晶シール剤の硬化に120〜150℃の温度で数時間の加熱処理が必要であること、また液晶の注入に時間がかかることなどの理由から、生産性の低さが問題視されている。
【0006】
これに対して、最近では、生産性の向上が見込まれる液晶表示パネルの製造方法として液晶滴下工法が検討されている。液晶滴下工法は、(1)透明な基板の上に液晶シール剤を塗布して液晶を充填するための枠を形成し、(2)前記枠内に微小の液晶を滴下し、(3)液晶シール剤が未硬化状態のままで2枚の基板を高真空下で重ね合わせた後、(4)液晶シール剤を硬化させてパネルを製造する方法である。また、通常、液晶滴下工法では、例えば、特許文献2に記載されているように、光および熱硬化性の液晶シール剤を使用し、上記(3)の工程で、液晶シール剤に紫外線などの光を照射する仮硬化を行った後、加熱による後硬化が行われている。
【0007】
ところで、携帯電話などに利用される小型の液晶表示パネルでは、金属配線が複雑化し、金属配線やブラックマトリックスと液晶シール剤で作られたシールパターンとが重なり合うことが多い。光が照射されない遮光部分では、未硬化状態の液晶シール剤が液晶中に溶け出して、液晶が汚染される可能性が高い。液晶が汚染されると、液晶表示パネルの表示性を著しく低下させるため大きな問題となる。そこで、遮光部分での液晶汚染を防止するため、例えば、特許文献3には、熱のみで硬化する液晶シール剤として、1分子内に水素結合官能基と2以上の(メタ)アクリル基とを有し、当該水素結合官能基量が3.5×10−3以上である硬化性樹脂100重量部に対して、熱硬化剤3〜40重量部を含む液晶表示素子用硬化性樹脂組成物が提案されている。
【特許文献1】国際公開第2004/039885号パンフレット
【特許文献2】特開2002−214626号公報
【特許文献3】特許第3955038号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の液晶シール剤は、原料とする樹脂の粘度が加熱によって低下するため、シールパターンが部分的に変形したり、液晶がシールパターンを突き破って漏洩するという問題が残されている。特許文献3には、硬化性を向上させて液晶の汚染を防止し得る液晶シール剤が記載されているが、液晶のリークに関する対策は記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、耐リーク性に優れる液晶シール用硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。なお、本発明では、シールパターンが部分的に変形したり、液晶がシールパターンを突き破って漏洩することを併せて「液晶がリークする」ともいい、また液晶のリークが低減されることを「耐リーク性に優れる」ともいう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、液晶シール剤用樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量を最適化することによって上記課題が解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、上記課題は、以下の[1]〜[6]に関する本発明の液晶シール用硬化性樹脂組成物によって解決される。
[1] (1a)アクリル樹脂または、(1b)分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂と、(2)熱ラジカル重合開始剤と、(3)フィラーと、を含む液晶シール用硬化性樹脂組成物であって、前記(3)のフィラーを除く樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量は、0.002mol/g以上0.006mol/g未満である、液晶シール用硬化性樹脂組成物。
[2] 前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、前記(2)の熱ラジカル重合開始剤の含有量は、0.01〜3.0質量部である、[1]に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
[3] 前記(1a)のアクリル樹脂は、下記の一般式(1)で表されるアクリル基含有多環芳香族化合物である、[1]または[2]に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【化1】

前記一般式(1)中の、
mは2〜8の整数を表し、
nは1〜4の数を表し、
は炭素数2〜6の炭化水素基を表し、
は水素またはメチル基を表し、
Aは多環芳香族炭化水素基を表わす。
[4] 前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、3〜30質量部の(4)エポキシ硬化剤をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
[5] 前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、1〜30質量部の(5)エポキシ樹脂をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
[6] 前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、0.3〜5.0質量部の(6)光ラジカル重合開始剤をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【0012】
また、上記課題は、以下の[7]に関する本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤によって解決される。
[7] 上記[1]〜[6]に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物を含む、液晶滴下工法用液晶シール剤。
【0013】
さらに、上記課題は、以下の[8]に関する本発明の液晶表示パネルの製造方法によって解決される。
[8] (a)上記[1]〜[6]に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物によって画素配列領域が包囲されるように形成された枠状のシールパターンを有する1枚以上の基板を準備する工程と、(b)未硬化状態の前記シールパターン内、またはもう一方の基板上に液晶を滴下する工程と、(c)前記液晶が滴下された基板と、もう一方の基板とを減圧下にて重ね合わせる工程と、(d)前記基板の間に挟まれた液晶滴下工法用液晶シール剤を加熱によって硬化させる工程と、を含む、液晶表示パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、耐リーク性に優れる液晶シール用硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、当該樹脂組成物を応用して得られる液晶滴下工法用液晶シール剤は、耐リーク性に優れているため、高画質の液晶表示パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を具体的に説明する。また、本発明において記号「〜」は、その両端の数値を含む。
【0016】
本発明では、液晶をシールするために使用することを「液晶シール用」とし、液晶をある空間に封入することを「液晶をシールする」という。また、本発明の「液晶シール用硬化性樹脂組成物」とは、一般的に「液晶シール剤」と呼ばれるものと同義である。ここで、一般的に「液晶シール剤」と呼ばれるものは、液晶表示パネルの構成部材であり、液晶を封入するとともに、2枚の基板を一定の間隔を設けて貼り合わせる接着剤として使用される樹脂組成物のことをいう。そして、本発明では、液晶シール剤のうち、液晶滴下工法に使用される液晶シール剤のことを「液晶滴下工法用液晶シール剤」という。
【0017】
1.液晶シール用硬化性樹脂組成物
本発明の液晶シール用硬化性樹脂組成物(単に、「樹脂組成物」ともいう)は、(1a)アクリル樹脂および/または、(1b)分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂と、(2)熱ラジカル重合開始剤と、(3)フィラーと、を含む液晶シール用硬化性樹脂組成物であって、前記(3)のフィラーを除く樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量は、0.002mol/g以上0.006mol/g未満である。
【0018】
本発明において、「(3)のフィラーを除く樹脂組成物」とは、例えば、(1a)の樹脂、(1b)の樹脂、(2)の熱ラジカル重合開始剤、および(3)のフィラーを使用して樹脂組成物を調製する場合、(3)のフィラー(有機フィラーも含む)以外の原料、すなわち(1a)の樹脂と(1b)の樹脂と(2)の熱ラジカル重合開始剤のみからなる樹脂組成物をいう。本発明の樹脂組成物は、上記原料のほかに後述の(4)エポキシ硬化剤、(5)エポキシ樹脂、(6)光ラジカル重合開始剤、あるいは(7)熱可塑性ポリマーをさらに含んでいてもよいが、当該樹脂組成物についても同様に、「(3)のフィラーを除く樹脂組成物」は、(3)のフィラー以外の原料のみを総和した樹脂組成物をいう。また、本発明では、樹脂組成物の硬化に寄与する上記(1a)の樹脂および(1b)の樹脂をそれぞれ「硬化性樹脂」と称し、さらにこれらの樹脂を合わせて、「樹脂ユニット」と呼ぶことがある。
【0019】
本発明の樹脂組成物の特徴は、a)原料として(1a)の樹脂または(1b)の樹脂の少なくとも1つの硬化性樹脂を使用すること、b)これらの樹脂と熱ラジカル重合開始剤とを併用すること、c)樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量を所定の範囲内とすることにある。
【0020】
前述の通り、液晶シール剤には、耐リーク性に優れることが求められる。液晶のリークは、液晶シール剤の硬化が遅く、また硬化物中に未硬化部分が多く残るほど生じやすい。光で液晶シール剤を硬化させる場合、シールパターンに遮光部分が多くあるほど液晶のリークは顕著になる。したがって、耐リーク性を向上させるため、熱のみで素早く十分に硬化し得るような液晶シール剤が好ましい。
【0021】
ただし、前述の通り、従来の液晶シール剤は、原料となる樹脂の粘度が加熱によって低下するため、熱のみで硬化させた場合にもシールパターンが変形するなどして液晶のリークが起こり得る。加熱時での樹脂粘度の低下を防ぐためには、その粘度が低下する前に素早く硬化し得る硬化速度の向上が有効である。その点、本発明の樹脂組成物は、前述b)のように、ラジカルにより反応し得る(メタ)アクリル基含有の樹脂と(2)熱ラジカル重合開始剤とを併用し、かつ前述c)のように、フィラーを除く樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.002〜0.006mol/gという高い範囲で設計されている。これにより、当該樹脂組成物は、近接する炭素−炭素二重結合同士が速やかに反応するので、樹脂組成物の硬化速度はより速くなるから、結果として、耐リーク性に優れる。
【0022】
ただし、樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.006mol/gを超えると、硬化速度は速まるが、硬化物中の架橋密度が高くなるので、液晶表示パネルを構成する基板と硬化物との接着強度が低くなることがある。一方で、当該炭素−炭素二重結合量が0.002mol/g未満であると、硬化速度が低くなる。よって、炭素−炭素二重結合量が上記範囲を満たす樹脂組成物は、硬化性および基板との接着性のバランスに優れる。中でも、樹脂組成物の硬化性および基板との接着性とのバランスを優れたものとする観点から、上記炭素−炭素二重結合量は、0.002mol/g以上0.003mol/g以下が好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、(1a)の樹脂と(1b)の樹脂とを適宜選択して配合することにより、炭素−炭素二重結合量が前述の適正な範囲に調整される。例えば、(1a)の樹脂と(1b)の樹脂とを併用して作られる樹脂組成物の炭素−炭素二重結合量は、以下の式で求められる。
【数1】

ここで、aは(3)のフィラーを除く樹脂組成物中の(1a)の樹脂の配合比率(質量%)、Naは(1a)の樹脂の炭素−炭素二重結合量(mol/g)、bは(3)のフィラーを除く樹脂組成物中の(1b)の樹脂の配合比率(質量%)、Nbは(1b)の樹脂の炭素−炭素二重結合量を表す。
【0024】
このように、本発明では、複数の硬化性樹脂を組み合わせた樹脂組成物の炭素−炭素二重結合量は、使用する硬化性樹脂の重さを(3)のフィラーを除く樹脂組成物の重さで除した数に、当該硬化性樹脂の持つ炭素−炭素二重結合量をかけて得た値とする。したがって、複数種の(1a)樹脂、または複数種(1b)の樹脂を使用する樹脂組成物の炭素−炭素二重結合量も、上記と同様に求めればよい。
【0025】
硬化性樹脂の炭素−炭素二重結合量は、分子内の炭素−炭素二重結合の数を樹脂の分子量で除すことによって求められ、その単位はmol/gである。各硬化性樹脂の分子量は、GPCによってポリスチレンを標準として測定することが好ましい。この場合、数平均分子量と重量平均分子量とが算出されるが、炭素−炭素二重結合量は数平均分子量により算出されることが好ましい。
【0026】
次に、硬化性樹脂である前記(1a)の樹脂および(1b)の樹脂について説明する。
【0027】
(1a)の樹脂
(1a)のアクリル樹脂は、分子内に炭素−炭素二重結合を有するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルモノマー、またはこれらのオリゴマーをいう。当該アクリル樹脂は、(1a−1)多環芳香族化合物に(メタ)アクリル基を含む置換基が2〜8個導入された化合物と、(1a−2)これ以外の化合物に大別される。
【0028】
(1a−1)多環芳香族化合物に2〜8個の置換基が導入された化合物
上記(1a−1)の化合物は、2個以上の芳香環で構成された化合物(多環芳香族化合物)に(メタ)アクリル基を含む基が2〜8個導入された化合物をいう。上記(1a−1)の化合物としては、樹脂組成物の硬化速度を速める観点から、下記の一般式(1)で表されるアクリル基含有多環芳香族化合物が好ましい。
【0029】
【化2】

前記一般式(1)中の、
mは、2〜8の整数を表し、
nは、1〜4の数を表し、
は、炭素数2〜6の炭化水素基を表し、
は、水素またはメチル基を表し、
Aは、多環芳香族炭化水素基を表わす。
【0030】
前記一般式(1)中のAは多環芳香族炭化水素基を表す。すなわち、前記一般式(1)の化合物は、多環芳香族炭化水素化合物に、mでくくられた(メタ)アクリル基を含有する置換基(「二重結合含有基」ともいう)が任意の位置に2〜8個導入された化合物である。すなわち、Aは2〜8価の基である。
【0031】
前記Aで表される多環芳香族炭化水素基の例には、ナフタレン、フルオレン、アントラセン骨格のように2個以上の芳香環が連結した縮合環構造を有する化合物から誘導される基;2個以上の芳香環が縮合せずにアルキレン基などを介して結合した、またはビフェニルのように芳香環同士が単結合している非縮合環構造の化合物から誘導される基、が含まれる。
【0032】
上記非縮合環構造を有する多環芳香族炭化水素基の例には、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリフェノールメタン型、トリフェノールエタン型、トリスフェノール型、ジフェニルエーテル型、ビフェニル型の化合物から誘導される基が含まれる。これらの多環芳香族炭化水素基は、2個以上の芳香環が直鎖状に結合した非縮合環構造でもよいし、側鎖状に結合した構造でもよい。
【0033】
前記一般式(1)中のmでくくられる二重結合含有基は、Aと結合する基であり、本発明では便宜上「Aの置換基」ともいう。また、mは、二重結合として炭素−炭素二重結合を含有する置換基の数であり、2〜8の整数を表す。
【0034】
前記一般式(1)中のnは1〜4の数を表す。前記一般式(1)で表される多環芳香族化合物は、後述する樹脂に環状のエーテルを付加させて得られることが好ましい。この場合、一定しないことがあるため、当該nは平均値であってもよい。
【0035】
前記一般式(1)中のRは炭素数が2〜6の炭化水素基であるが、当該炭化水素基の具体例には、直鎖状または分岐状のアルキレン基が含まれる。中でも、Rは炭素数が2〜5の炭化水素基が好ましい。また、前記一般式(1)中のRは水素またはメチル基を表すが、Rはいずれの基であってもよい。
【0036】
上記アクリル基含有多環芳香族化合物の炭素−炭素二重結合量は、Aで表される多環芳香族炭化水素基に、mでくくられる二重結合含有基を適宜選択しながら結合させることにより、適宜調整することができる。
【0037】
前記アクリル基含有多環芳香族化合物の好ましい例には、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる、エポキシ樹脂中のエポキシ基が完全に(メタ)アクリル化された、すなわちエポキシ基を含有していない樹脂が含まれる。上記エポキシ樹脂の例には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が含まれる。
【0038】
エポキシ樹脂中のエポキシ基が完全に(メタ)アクリル化された樹脂(「完全(メタ)アクリル化エポキシ樹脂」ともいう)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートや、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートであってもよい。
【0039】
上記完全(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、公知の合成方法によって合成することができるが、市販品として容易に入手することもできる。完全(メタ)アクリル化エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂変性ジアクリレートは、共栄社化学(株)から「3002A」の製品名で、またダイセル・サイテック(株)から「EB3700」の製品名でそれぞれ市販されている。
【0040】
さらに、前記アクリル基含有多環芳香族化合物の例には、多価フェノール化合物に環状エーテル化合物を開環付加させて得られる変性体を、(メタ)アクリル酸によってエステル化させた化合物でもよい。その具体例には、トリスフェノール型の樹脂をプロピレンオキシド(PO)で変性した後に、(メタ)アクリル酸によってエステル化させたトリスフェノールトリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0041】
また、前記アクリル基含有多環芳香族化合物は、2個以上の芳香環を有する芳香族カルボン酸、または芳香族酸クロライドに水酸基含有のアクリルモノマーを付加させて得られる化合物であってもよい。この場合、前記一般式(1)中のAは、上記芳香族カルボン酸、または芳香族酸クロライドから誘導される基となる。
【0042】
(1a−2)上記(1a−1)以外の化合物
(1a)のアクリル樹脂に該当する(1a−1)以外の化合物としては、以下の化合物が含まれる。
【0043】
ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリアクリレートおよび/またはジまたはトリメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸アクリレートおよび/またはジメタクリレート;ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴアクリレートおよび/またはオリゴメタクリレート。
【0044】
中でも、(1a−2)の化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレートおよび/またはトリメタクリレート、またはそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレートが好ましい。これらの化合物は、被接着対象部材との接着性に優れる樹脂組成物を提供し得るためである。
【0045】
また、(1a−2)の化合物は、水酸基含有のアクリルモノマーで酸無水物を開環させてからフェニルグリシジルエーテルと縮合させて得られる化合物;1個の芳香環を有する芳香族カルボン酸、または芳香族酸クロライドに水酸基含有のアクリルモノマーを付加させて得られる化合物であってもよい。
【0046】
(1a)の樹脂は、多環芳香族化合物またはそれ以外の化合物であるかどうかにかかわらず、その数平均分子量が300〜2000の範囲であり、かつFedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)が10.0〜13.0(cal/cm1/2であるものが好ましい。このような(1a)の樹脂は、液晶に対する溶解性および拡散性が低いため、液晶を汚染しにくい樹脂組成物を与え得ることから、結果として、表示性が良好な液晶表示パネルが得られる。また、当該(1a)の樹脂組成物は、後述する(5)エポキシ樹脂との相溶性にも優れるので、均一な樹脂組成物、および硬化物を与え得る。上記数平均分子量は、例えば、GPCにより、ポリスチレンを標準として測定できる。
【0047】
上記溶解度パラメータ(sp値)の算出方法としては、さまざまな手法や計算方法があるが、本発明の理論溶解度パラメータは、Fedorsが考案した計算法に基づくものが好ましい(日本接着学会誌、vol.22、no.10(1986)(53)(566)など参照)。この計算法では、密度の値を必要としないため、溶解度パラメータを容易に算出することができるためである。上記Fedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)は、以下の式で算出される。ただし、以下の式において、ΣΔel=(ΔH−RT)、ΣΔvl=モル容量の和である。
【数2】

【0048】
溶解度パラメータ(sp値)が上記範囲内にあると、(1a)の樹脂の液晶に対する溶解性が小さくなるため、液晶を汚染しにくい樹脂組成物を与え得ることから、結果として、表示性が良好な液晶表示パネルが得られる。
【0049】
(1a)の樹脂は、前述のアクリル樹脂を数種類組み合わせた混合物であってもよいが、当該混合物の理論溶解度パラメータ(sp値)は、混合される各アクリル酸エステルモノマー、および/またはメタクリル酸エステルモノマー、あるいはこれらのオリゴマーのモル分率の和に基づいて算出することができる。その値もまた、前述の通り、10.0〜13.0(cal/cm1/2での範囲であることが好ましい。
【0050】
数平均分子量が300〜2000で、かつ、Fedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)が10.0〜13.0(cal/cm1/2の範囲内であるような(1a)の樹脂の例には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(数平均分子量:352、sp値12.1)が含まれる。また、液晶シール剤のような電子材料の原料として(1a)の樹脂を使用する場合、(1a)の樹脂は、水洗法などによって高純度化されているものが好ましい。
【0051】
(1b)の樹脂
(1b)の樹脂は、分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とをそれぞれ1個以上有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂(単に、「変性エポキシ樹脂」ともいう)である。本発明の「変性エポキシ樹脂」は、エポキシ樹脂に含まれる複数のエポキシ基の一部が(メタ)アクリル化された樹脂を意味する。
【0052】
当該変性エポキシ樹脂の例には、エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸やフェニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル化合物とを、公知の方法にしたがって、例えば、塩基性触媒の存在下で反応させることによって得られる。
【0053】
変性エポキシ樹脂の原料として使用することができるエポキシ樹脂の例には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が含まれる。また、これらのエポキシ樹脂は、分子蒸留法、洗浄法などで高純度化されていることが好ましい。
【0054】
中でも、変性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のような分子内に2個のエポキシ基を有する二官能性エポキシ樹脂とアクリル酸とを、二官能性エポキシ樹脂のモル数とアクリル酸のモル数とが1:1となる比率で反応させて得られる樹脂が好ましい。当該樹脂を樹脂組成物の原料とすると、被接着対象部材との接着性に優れる樹脂組成物を与え得る。
【0055】
上記エポキシ樹脂と(メタ)アクリル化合物との配合量を適宜変更することにより、任意の(メタ)アクリル化率を有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を得ることができる。(メタ)アクリル化率とは、エポキシ樹脂に含まれる全てのエポキシ基に対して、(メタ)アクリル化されたエポキシ基の割合をいう。当該(メタ)アクリル化率を適宜調整することにより、樹脂組成物の硬化速度や樹脂組成物の硬化収縮率の大きさを自在に制御することができる。
【0056】
当該変性エポキシ樹脂は、分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基とを併せ持っているので、(メタ)アクリル基に起因する炭素−炭素二重結合同士の反応と同時に、付加重合性が高いエポキシ基同士も速やかに反応するから、硬化速度の速い樹脂組成物が得られる。また、当該樹脂組成物は、基板との接着強度の向上に寄与するエポキシ基を有するため、高品質の液晶表示パネルを与える。さらに、変性エポキシ樹脂は、(1a)のアクリル樹脂に対する相溶性が高いので、各樹脂を併用した樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、かつ均一であって基板との接着強度が高い硬化物を与える。
【0057】
本発明の樹脂組成物を調整する際、(1a)の樹脂と(1b)の樹脂とは併用してもよいし、それぞれ単独で使用してもよい。これらの樹脂を併用する場合、これらの樹脂の配合比は任意の比率としてよい。当該配合比は、質量比にして(1a)の樹脂:(1b)の樹脂=10〜70:90〜30であることが好ましく、(1a)の樹脂:(1b)の樹脂=20〜50:80〜50であることがより好ましい。これにより、基板との接着強度が高い硬化物を与え得るような樹脂組成物を与え得る。
【0058】
また、各樹脂のうち、どちらか一方を使用する場合、すなわち、例えば、(1b)の樹脂を使用せずに、(1a)の樹脂のみを使用する場合は、耐リーク性が良好な樹脂組成物が得られる。一方で、(1a)の樹脂を使用せずに、(1b)の樹脂のみを使用する場合は、熱のみでも十分に硬化し、かつ基板との接着強度が良好な樹脂組成物が得られる。ただし、このように(1b)の樹脂のみを使用した樹脂組成物は、硬化物の強度が低くなるおそれがあるが、その点、(1b)の樹脂とともに、後述する(4)のエポキシ硬化剤を使用すれば、硬化物の強度を向上させることができる。
【0059】
(2)熱ラジカル重合開始剤
本発明の樹脂組成物は、熱ラジカル重合開始剤を含む。熱ラジカル重合開始剤とは、加熱されてラジカルを発生する化合物すなわち、熱エネルギーを吸収し、分解してラジカル種を発生する化合物をいう。熱ラジカル重合開始剤は、樹脂ユニット100質量部に対して0.01〜3.0質量部とすることが好ましい。ただし、熱ラジカル重合開始剤の含有量が多すぎると粘度安定性が悪くなり、少なすぎると硬化性が悪くなる。ここで、硬化性樹脂として(1a)の樹脂または(1b)の樹脂のいずれか一方のみを使用する場合は、単独で使用する樹脂の100質量部に対して、(2)の熱ラジカル重合開始剤の含有量を上記の範囲とすればよい。
【0060】
本発明の樹脂組成物を液晶シール剤として使用する場合、前述の通り、加熱によって液晶シール剤の粘度が低下しすぎると液晶がリークするため、樹脂組成物は、加熱時の粘度低下ができる限り抑制されていることが好ましい。加熱時の樹脂粘度の低下を抑制するには、前述の通り、樹脂組成物の硬化速度を速め、ゲル化を促進させる観点から、樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量を所定の範囲内で調整することが有用であるが、(2)の熱ラジカル重合開始剤を適正に使用することで、さらに当該樹脂粘度の低下を抑制することができる。
【0061】
樹脂組成物のゲル化は、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度を低くすることで促進される。10時間半減期温度とは、熱ラジカル重合開始剤を不活性ガスの存在下、一定の温度で10時間熱分解反応を行った際に熱ラジカル重合開始剤濃度が元の半分になるときの温度である。当該10時間半減期温度が低いと、比較的低温でもラジカルが発生しやすくなるので、樹脂組成物は低温でも硬化しやすくなるためである。逆に当該温度が高いと、ラジカルが発生しにくくなるので、樹脂組成物の硬化性は低下する。
【0062】
よって、樹脂組成物のゲル化を促進させる観点から、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、40〜80℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。当該10時間半減期温度が80℃以下、さらには70℃以下とすると、上記組成物が硬化される際に(通常硬化温度は80〜150℃)、ラジカルが発生しやすく硬化反応が促進され、加熱硬化時の粘度低下が軽減される。
【0063】
一方で、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が低すぎると、室温でも硬化反応が進行しやすくなり液晶シール剤の安定性が損なわれる。ただし、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、40℃、好ましくは50℃以上とすると、保存時や、基板への塗布工程(通常は室温で行われる)における安定性が良好な樹脂組成物が得られる。
【0064】
上記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、以下のようにして具体的に求められる。
【0065】
先ず、熱分解反応を1次反応式として取り扱うと、以下の式の関係が成り立つ。
【0066】
【数3】

:熱ラジカル重合開始剤の初期濃度
:熱ラジカル重合開始剤のt時間後の濃度
kd:熱分解速度定数
t:反応時間
半減期は熱ラジカル重合開始剤の濃度が半分になる時間、すなわち、C=C/2となる場合である。よってt時間に熱ラジカル重合開始剤が半減期になる場合は以下の式が成り立つ。
【0067】
【数4】

一方、速度定数の温度依存性はアレニウスの式で表されから、以下の式が成立する。
【0068】
【数5】

A:頻度因子
ΔE:活性化エネルギー
R:気体定数(8.314J/mol・K)
T:絶対温度(K)
AおよびΔEの値は、J.Brandrupほか著、「Polymer Hand Book fourth edition volum1、pageII−2〜II−69、John&Wiley、(1999)」に記載されている。以上から、t=10時間とすれば、10時間半減期温度Tが求められる。
【0069】
熱ラジカル重合開始剤の例には、熱ラジカル重合開始剤として公知の化合物が含まれる。中でも、熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物が好ましい。
【0070】
有機過酸化物の例には、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートが含まれる。
【0071】
これらの具体例を以下に示す。各化合物の横に記載したかっこ内の数字は、10時間半減期温度である(和光純薬カタログ、エーピーアイコーポレーションカタログおよび前述のポリマーハンドブック参照)。
【0072】
ケトンパーオキサイド類の例には、メチルエチルケトンパーオキサイド(109℃)、シクロヘキサノパーオキサイド(100℃)が含まれる。
【0073】
パーオキシケタール類の例には、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(87℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(87℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(91℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(103℃)、1,1−(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン(93℃)、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート(105℃)、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(95℃)が含まれる。
【0074】
ハイドロパーオキサイド類の例には、P−メタンハイドロパーオキサイド(128℃)、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド(145℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(153℃)、クメンハイドロパーオキサイド(156℃)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(167℃)が含まれる。
【0075】
ジアルキルパーオキサイドの例には、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(119℃)、ジクミルパーオキサイド(116℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(118℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(120℃)、t−アミルパーオキサイド(123℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(124℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3(129℃)が含まれる。
【0076】
パーオキシエステル類の例には、クミルパーオキシネオデカノエート(37℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(41℃)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(45℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(46℃)、t−アミルパーオキシネオデカノエート(46℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(55℃)、t−アミルパーオキシピバレート(55℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(65℃)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(66℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(70℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(72℃)、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(75℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(82℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(95℃)、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド(96℃)、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート(96℃)、t−アミルパーオキシイソノナノエート(96℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(97℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(98℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(99℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(99℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(99℃)、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(100℃)、t−アミルパーオキシアセテート(100℃)、t−アミルパーオキシベンゾエート(100℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(102℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(104℃)が含まれる。
【0077】
ジアシルパーオキサイド類の例には、ジイソブチリルパーオキサイド(33℃)、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(60℃)、ジラウロイルパーオキサイド(62℃)、ジスクシニックアシッドパーオキサイド(66℃)、ジベンゾイルパーオキサイド(73℃)が含まれる。
【0078】
パーオキシジカーボネート類の例には、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(40℃)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(41℃)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(41℃)、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(44℃)、t-アミルパーオキシプロピルカーボネート(96℃)、t−アミルパーオキシ2エチルヘキシルカーボネート(99℃)が含まれる。
【0079】
(3)フィラー
本発明の樹脂組成物は(3)フィラーを含む。フィラーとは、樹脂組成物の粘度制御、硬化物の強度向上、線膨張性制御などを目的として添加される充填剤をいう。フィラーを充填することにより樹脂組成物と基板のような被接着対象部材との接着性が向上する。フィラーは、通常電子材料分野で使用されるものであればよく、特に限定されない。当該フィラーの例には、無機フィラーおよび有機フィラーが含まれる。
【0080】
上記無機フィラーの例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素が含まれる。
【0081】
上記有機フィラーの例には、環球法(JACT試験法:RS−2)による軟化点温度が120℃を超えるポリマー粒子が含まれる。ポリマー粒子の例には、ポリスチレンおよびこれと共重合可能なモノマー類を共重合した共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子が含まれる。
【0082】
中でも、フィラーとしては、無機フィラーが好ましく、特に紫外線を透過しにくいため、二酸化ケイ素、タルクが好ましい。樹脂組成物に無機フィラーを含有させることによって、樹脂組成物の線膨張率は低減するため、基板上に塗布した後の樹脂組成物の形状を良好に保持することができる。
【0083】
上記フィラーの形状は特に限定されず、球状、板状、針状のような定形状あるいは非定形状のいずれであってもよい。フィラーは平均一次粒子径が1.5μm以下であることが好ましく、かつその比表面積が1〜500m/gであることが好ましい。フィラーの平均一次粒子径および比表面積が上記範囲内であれば、後述のチキソトロピー指数で表されるチキソトロピー性と粘度のバランスに優れるからである。フィラーの平均一次粒子径は、JIS Z8825−1に記載のレーザー回折法で測定できる。また、比表面積測定は、JIS Z8830に記載のBET法により測定できる。
【0084】
フィラーの充填量は、樹脂ユニット100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。また、(1a)の樹脂または(1b)の樹脂のいずれか一方のみを使用する場合、フィラーの充填量は各樹脂を単独で使用する場合と同様に調整すればよい。このようにフィラーの充填量が調整された樹脂組成物は、チキソトロピー指数([E型粘度計を使用した25℃、0.5rpmでの粘度]/[E型粘度計を使用した25℃、5.0rpmでの粘度])を1.1〜5.0に制御することが容易となるので好ましい。
【0085】
上記チキソトロピー指数は、比較的低いせん断速度で測定した粘度と比較的高いせん断速度で測定した粘度との比を意味する。当該チキソトロピー指数が高い流体は、低せん断速度下では高粘度であるが、高せん断速度下では低粘度としてふるまう。通常、液晶表示パネルを製造する場合において、液晶シール剤を基板に塗布する工程ではシール剤は比較的高いせん断速度の状況下におかれるが、その後、基板を重ね合わせて後硬化する工程では、液晶シール剤は極めて低いせん断速度の状況下におかれる。ここで、液晶シール剤を基板に塗布する工程(高せん断速度領域)では、基板に対する液晶シール剤の塗布性が良好であり、かつ液晶シール剤の脱泡が容易であることが望ましいため、液晶シール剤には低粘度であることが求められる。一方で、液晶シール剤を硬化させる工程では、低せん断速度の状況下におかれるが、液晶をリークさせないため、液晶シール剤には高粘度であることが求められる。その点、チキソトロピー指数が上記範囲内である樹脂組成物は、液晶シール剤として使用する際の基板に対する塗布性、脱泡性、信頼性が良好となる。
【0086】
(4)エポキシ硬化剤
本発明の樹脂組成物はエポキシ硬化剤を含んでいてもよい。エポキシ硬化剤は、潜在性エポキシ硬化剤であることが好ましい。潜在性エポキシ硬化剤とは、エポキシ樹脂に混合されていても、樹脂を通常保存する状態(室温、可視光線下など)ではエポキシ樹脂を硬化させないが、熱や光によりエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤をいう。潜在性エポキシ硬化剤を含む樹脂組成物は、熱硬化性に特に優れる。
【0087】
潜在性エポキシ硬化剤は、公知のものを使用してよいが、粘度安定性に優れるため、融点あるいは環球法による軟化点温度が100℃以上である潜在性エポキシ硬化剤が好ましい。当該潜在性エポキシ硬化剤の例には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾールおよびその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、またはこれらの混合物が含まれる。
【0088】
特に融点または環球法による軟化点温度が100℃以上であるアミン系潜在性硬化剤を使用した樹脂組成物は、室温での粘度安定性に極めて優れる。そのため当該樹脂組成物を応用した液晶シール剤を使用して、液晶表示パネルを製造すると、スクリーン印刷やディスペンサーを使用することができるので好ましい。スクリーン印刷やディスペンサーは、液晶シール剤が装置内に滞留する時間が長いため、液晶シール剤の粘度安定性が十分でないと、ディスペンサーなどの装置内に充填した液晶シール剤を交換する頻度が高くなり、生産性が低下する。
【0089】
上記アミン系潜在性硬化剤の例には、ジシアンジアミド(融点209℃)のようなジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)のような有機酸ジヒドラジド;2,4−ジアミノ―6―[2’−エチルイミダゾール−1’−イル]−エチルトリアジン(融点215℃〜225℃)、2−フェニルイミダゾール(融点137〜147℃)のようなイミダゾール誘導体が含まれる。
【0090】
潜在性エポキシ硬化剤の含有量は、樹脂ユニット100質量部に対して3〜30質量部とすることが好ましい。液晶シール剤の粘度安定性および接着信頼性に優れるからである。また、(1a)の樹脂または(1b)の樹脂を単独で使用する場合、潜在性エポキシ硬化剤の含有量は、各樹脂を単独で使用する上記の範囲内とすればよい。上記潜在性エポキシ硬化剤は、不純物が少ない樹脂組成物を得る観点などから、水洗法、再結晶法などによって高純度化されているものが好ましい。
【0091】
(5)エポキシ樹脂
本発明の樹脂組成物はエポキシ樹脂を含んでいてもよい。本発明においてエポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物をいう(ただし、上記(1b)の変性エポキシ樹脂を除く)。前述の通り、本発明の樹脂組成物は、熱のみでも十分に硬化して硬化物を与え得るが、(メタ)アクリル系の樹脂のみで硬化させた硬化物は強度の低さが懸念される。その点、上記(1a)の樹脂のみを原料として使用する場合、(1a)の樹脂と(5)のエポキシ樹脂とを併用すると、硬化速度の速さに加えて、高強度の硬化物を与え得る樹脂組成物を得ることができる。
【0092】
当該エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールADで代表される芳香族ジオール類、およびそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物が含まれる。以下、例えばビスフェノールAを原料としたものは、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」のように表記する。
【0093】
また、当該エポキシ樹脂の例には、フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂、ポリアルケニルフェノール、またはそのコポリマーなどで代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類が含まれる。
【0094】
中でも、エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂は、これらの混合物でもよい。
【0095】
本発明のエポキシ樹脂は、環球法による軟化点が40℃以上でかつ、重量平均分子量が1000〜10000であることが好ましい。エポキシ樹脂の軟化点や重量平均分子量は、液晶シール剤としたときの粘度に影響を与える。前記範囲の軟化点および重量平均分子量を有する樹脂組成物は、液晶に対する溶解性、拡散性が低いので、表示性に優れる液晶表示パネルを提供し得る。また、当該エポキシ樹脂は、(1a)の樹脂との相溶性にも優れるため、均一な樹脂組成物を与え、結果として、樹脂組成物の硬化物と基板との接着強度が向上する。
【0096】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPCによりポリスチレンを標準として測定できる。これらのエポキシ樹脂としては分子蒸留法などにより高純度化処理されたものが好ましい。
【0097】
(6)光ラジカル重合開始剤
本発明の樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤は、光によってラジカルを発生する化合物をいう。光ラジカル重合開始剤を含む樹脂組成物は、光による仮硬化が可能となるため、硬化時間の短縮や作業性の向上が見込まれる。ただし、本発明の樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤を使用しないでも熱のみで硬化させることができるため、必ずしも光ラジカル重合開始剤を使用する必要はない。
【0098】
光ラジカル重合開始剤としては公知の化合物を使用することができる。光ラジカル重合開始剤の例には、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類が含まれる。
【0099】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、樹脂ユニット100質量部に対して0.3〜5.0質量部である。当該含有量を0.3質量部以上とすることにより、前記樹脂組成物の光照射による硬化性が高く良好となる。当該含有量を5.0質量部以下とすることにより、基板への塗布時の安定性が良好となる。また、硬化性樹脂として(1a)の樹脂または(1b)の樹脂のいずれか一方のみを使用する場合、光ラジカル重合開始剤の含有量は各樹脂を単独で使用する上記範囲と同様に調整すればよい。
【0100】
(7)熱可塑性ポリマー
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性ポリマーを含んでいてもよい。熱可塑性ポリマーとは加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる高分子化合物をいう。また、当該熱可塑性ポリマーは、後述の通り、軟化点温度が120℃未満のポリマーをいい、前記(3)のフィラーに該当する有機フィラー以外のポリマーを意味する。
【0101】
本発明の熱可塑性ポリマーの軟化点温度は、通常50〜120℃未満であり、好ましくは60〜80℃である。軟化点温度が上記範囲内であると、前記樹脂組成物の熱硬化時に熱可塑性ポリマーが樹脂組成物に溶融し、上記(1a)の樹脂、(1b)の樹脂、(5)のエポキシ樹脂と相溶し、加熱時の粘度低下を抑制することができるため、結果として、液晶のリークなどを低減できる。上記軟化点温度は、環球法(JACT試験法:RS−2)により測定することができる。
【0102】
また、当該熱可塑性ポリマーの含有量は、樹脂ユニット100質量部に対して1〜30質量部が好ましい。硬化性樹脂として(1a)の樹脂または(1b)の樹脂のいずれか一方のみを使用する場合、熱可塑性ポリマーの含有量は各樹脂を単独で使用する上記の範囲内と同様に調整すればよい。
【0103】
当該熱可塑性ポリマーの平均粒径は、0.05〜5μmであることが好ましく、0.07〜3μmであることがより好ましい。これにより、相溶性が良好な樹脂組成物を得ることができる。熱可塑性ポリマーとしては公知のポリマーを使用してよい。当該熱可塑性ポリマーの例には、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、当該モノマーと共重合可能なモノマーを50〜99.9質量%:50〜0.1質量%(より好ましくは60〜80質量%:40〜80質量%)で共重合させて得られるコポリマーが含まれる。また、このコポリマーとしては、乳化重合または懸濁重合などによってエマルションの状態で重合されたものが好ましい。
【0104】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーが含まれる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物が好ましい。
【0105】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合可能なモノマーの例には、アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの酸モノマー;スチレン、スチレン誘導体などの芳香族ビニル化合物;1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどの共役ジエン類;ジビニルベンゼン、ジアクリレート類などの多官能モノマー、またはこれらの混合物が含まれる。
【0106】
(8)その他の添加剤
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤などのカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤のような添加剤をさらに含んでいてもよい。また、樹脂組成物にはスペーサーなどが配合されていてもよい。このような樹脂組成物は、液晶表示パネルにおける基板同士の間隔(ギャップ)を適正に調整可能な液晶シール剤となり得る。
【0107】
2.液晶シール用硬化性樹脂組成物の製造方法
本発明の液晶シール用硬化性樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で任意に製造できる。例えば、既に述べた各成分を混合して製造すればよい。その際の混合方法は特に限定されず、例えば、双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機、遊星式撹拌機などの公知の混練機械を使用して混合すればよい。混合物をゲル化させることなく均一に混練するため、ロール温度は25〜35℃に設定されることが好ましい。このようにして得た混合物は、必要に応じてフィルターでろ過され、真空脱泡処理後にガラス瓶やポリ容器に密封充填される。
【0108】
3.液晶表示パネルの製造方法
本発明の液晶表示パネルは、発明の効果を損なわない範囲で任意の製造することができるが、以下好ましい製造方法を具体的に説明する。
【0109】
本発明の液晶表示パネルは、
(a)本発明の液晶シール用硬化性樹脂組成物によって画素配列領域が包囲されるように形成された枠状のシールパターンを有する1枚以上の基板を準備する工程と、
(b)未硬化状態の前記シールパターン内、またはもう一方の基板上に液晶を滴下する工程と、
(c)前記液晶が滴下された基板と、もう一方の基板とを減圧下にて重ね合わせる工程と、
(d)前記基板の間に挟まれた液晶滴下工法用液晶シール剤を加熱によって硬化させる工程と、
を経て製造されることが好ましい。
【0110】
上記方法で使用される基板は、液晶表示パネルの構成部材であり、通常は2枚のガラスのような透明基板である。本発明では、液晶表示パネル用基板と対向する基板上に、配向膜が形成されていてもよい。上記配向膜は特に限定されず、公知の有機配向剤や無機配向剤からなるものを使用してよい。
【0111】
上記(a)工程におけるシールパターンとは、樹脂組成物で描画されたシールの形状を意味する。(b)工程における樹脂組成物が未硬化の状態とは、樹脂組成物の硬化反応がゲル化点まで進行していない状態を意味する。
【0112】
また、上記(d)工程は、光を照射して液晶シール剤を硬化させる工程を含んでいてもよい。光を照射するとは、硬化性樹脂を反応させうるエネルギーを持つ光(好ましくは紫外線)を照射することである。液晶表示パネルの製造工程を簡素化する観点から、加熱のみにて硬化する工程であることが好ましい。
【実施例】
【0113】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下に記載の「%」、「部」とはそれぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。
【0114】
各実施例、比較例で使用した原料は以下の通りである。
【0115】
(1a)アクリル樹脂
7種類のアクリル樹脂を適宜選択し、使用した。また、各樹脂は、トルエンを使用して希釈した後、超純水で洗浄する工程を12回繰り返し、高純度化した樹脂を使用した。
【0116】
アクリル樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂変性ジアクリレート(3002A:共栄社化学製、分子量600、炭素−炭素二重結合量は0.0033mol/g)
アクリル樹脂2:PO変性トリスフェノールトリアクリレート(分子量802、炭素−炭素二重結合量は0.0037mol/g)
アクリル樹脂3:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP−A:共栄社化学製、分子量296、炭素−炭素二重結合量は0.0101mol/g)
アクリル樹脂4:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(M−315:東亞合成化学社製、分子量523、炭素−炭素二重結合量は0.0071mol/g)
【0117】
(1b)変性エポキシ樹脂
以下の合成方法により合成して得られる変性エポキシ樹脂を使用した。
【0118】
[合成例1]
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコにビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポトートYDF−8170C:東都化成社製)160g、アクリル酸36g、トリエタノールアミン0.2gを装入した後、この溶液を、乾燥エア気流下において、110℃、5時間加熱しながら攪拌し、反応させてアクリル変性エポキシ樹脂を得た。得られた樹脂は超純水を使用して12回洗浄した。また、当該合成した変性エポキシ樹脂の炭素−炭素二重結合量は、0.0025mol/gであった。
【0119】
(2)熱ラジカル重合開始剤
t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(ルパゾール575:エーピーアイコーポレーション製、10時間半減期温度75℃)を使用した。
【0120】
(3)フィラー
球状シリカ(シーフォスターS−30:日本触媒製、平均一次粒子径0.3μm、比表面積は11m/g)を使用した。
【0121】
(4)エポキシ硬化剤
1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(アミキュアVDH:味の素社製、融点120℃)を使用した。
【0122】
(5)エポキシ樹脂
o−クレゾールノボラック型固形エポキシ樹脂(EOCN−1020−75:日本化薬社製、環球法による軟化点75℃、エポキシ濃度215g/eq)を使用した。
【0123】
(6)光ラジカル重合開始剤
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)を使用した。
【0124】
(7)熱可塑性ポリマー
メタクリル酸−アルキル共重合体微粒子(F−325:日本ゼオン社製、平均一次粒子径0.5μm)を使用した。
【0125】
[試験方法]
後述する方法で調製した液晶シール剤をサンプルとし、下記の方法にしたがって、i)液晶シール剤の耐リーク性、ii)液晶シール剤の塗布性、iii)接着強度をそれぞれ測定し、評価した。
【0126】
i)液晶シール剤の耐リーク性
透明電極および、配向膜を付した40mm×45mmガラス基板(RT−DM88PIN:EHC社製)上に、ディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング社製)を使用して、5μmのガラスファイバーを1部添加した液晶シール剤を、0.5mmの線幅、50μmの厚みで24mm×24mmのシールパターンと36mm×36mmのシールパターンを描画した。次に、当該基板の24mm×24mmシールパターン内に、ディスペンサーを使用して貼り合わせた後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社製)を精密に滴下した。
【0127】
真空チャンバーを用いて90Paの減圧下で前述のガラス基板と、対向するガラス基板を重ね合わせた。続いて、重ね合わされたガラス基板を大気下に解放し、大気開放下の大気圧差を利用しながら120℃で60分加熱して硬化させた(以下「耐リーク性試験における硬化工程」という)。
【0128】
得られた液晶表示パネルのシールパターンの直線性(シール直線性)を以下の方法で評価した。このシール直線性は、シールパターンの変形具合を表すことから、耐リーク性の指標となる。液晶表示パネルのシール直線性を評価するため、シールの最大値と最小値との比率を算出した。
[シールの最大幅と最小幅の比率](%)=[シールの最小幅]/[シールの最大幅]×100
【0129】
上記算出された比率に基づき、「液晶シール剤の耐リーク性」を以下のように評価した。
上記比率が95%以上のもの:○(優れる)
上記比率が50%以上95%未満であるもの:△(やや優れる)
上記比率が50%未満であるもの:×(劣る)
【0130】
ii)液晶シール剤の塗布性
前記i)で使用した液晶シール剤を針先口径が0.4mmのシリンジに真空下で充填した。次に、当該シリンジをセットしたディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング社製)を使用し、300mm×400mmの液晶表示パネル用ガラス基板(日本電気硝子社製)に、35mm×40mmのシールパターンを50個描画した。このとき、吐出圧力を0.3MPa、塗布速度を100mm/sec.、塗布厚みを20μmとした。
【0131】
描画されたシールパターンのシール形状から、以下のように「液晶シール剤の塗布性」を評価した。
シール切れ、シールかすれが全く発生していないシールパターンが48〜50個:○(優れる)
シール切れ、シールかすれが全く発生していないシールパターンが45〜48個未満:△(やや優れる)
シール切れ、シールかすれが全く発生していないシールパターンが44個未満:×(劣る)
【0132】
iii)接着強度
スクリーン版を使用して、前記i)で使用した液晶シール剤を、25mm×45mm×厚さ5mmの無アルカリガラス上に直径1mmの円状のシールパターンを塗布した。次に、対となる同様のガラスを貼り合わせて、固定しながら120℃で1時間加熱し、接着試験片を作製した。得られた接着試験片を、引張試験機(model210:インテスコ社製)を使用して、速度2mm/分でガラス底面に平行な方向に引き剥がし、平面引張強度を測定した。
【0133】
液晶シール剤の硬化物と基板との「接着強度」は、以下のように評価した。
引張強度が10MPa以上:○(優れる)
引張強度が7MPa以上10MPa未満:△(やや優れる)
引張強度が7MPa未満:×(劣る)
【0134】
[実施例1]
エポキシ樹脂を12部、アクリル樹脂2を52部、変性エポキシ樹脂を26部、を加熱溶解させて得た混合物に、エポキシ硬化剤を5部、フィラーを20部、熱可塑性ポリマーを5部、を加え、これらをミキサーで予備混合した。次に、この混合物を3本ロールを使って固体原料が5μm以下になるまで混練した。続いて、当該混練物を、目開き10μmのフィルター(MSP−10−E10S:ADVANTEC社製、)でろ過した後、熱ラジカル重合開始剤を1部添加し、さらにミキサーで混合し、真空脱泡処理することによって液晶シール剤を得た。
【0135】
当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0026mol/gであった。
【0136】
[実施例2]
光ラジカル重合開始剤を1部加えた以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0026mol/gであった。
【0137】
[実施例3]
エポキシ硬化剤を7部、エポキシ樹脂を15部、さらに熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0026mol/gであった。
【0138】
[実施例4]
アクリル樹脂2を90部、エポキシ樹脂を12部、さらに変性エポキシ樹脂および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0033mol/gであった。
【0139】
[実施例5]
アクリル樹脂1を80部、変性エポキシ樹脂を20部、さらに、エポキシ硬化剤、エポキシ樹脂、および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0031mol/gであった。
【0140】
[実施例6]
アクリル樹脂1を60部、アクリル樹脂3を20部、変性エポキシ樹脂を20部、さらに、エポキシ硬化剤、エポキシ樹脂、および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0045mol/gであった。
【0141】
[実施例7]
アクリル樹脂1を100部とし、変性エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、エポキシ樹脂、および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0033mol/gであった。
【0142】
[比較例1]
アクリル樹脂1を58部、エポキシ硬化剤を14部、エポキシ樹脂を28部、さらに変性エポキシ樹脂および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0019mol/gであった。
【0143】
[比較例2]
アクリル樹脂3を100部、さらに変性エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、エポキシ樹脂、および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0101mol/gであった。
【0144】
[比較例3]
アクリル樹脂4を100部、さらに変性エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、エポキシ樹脂、および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0071mol/gであった。
【0145】
[比較例4]
アクリル樹脂4を85部、エポキシ硬化剤を5部、エポキシ樹脂を10部、さらに変性エポキシ樹脂および熱可塑性ポリマーを未使用としたこと以外は、すべて実施例1と同様にして液晶シール剤を調製した。また、当該液晶シール剤について、実施例1と同様の評価を行った。当該液晶シール剤は、フィラー以外の樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が0.0060mol/gであった。
【0146】
各実施例、比較例における液晶シール剤の配合、および評価結果を表1に纏めて示す。
【0147】
【表1】

【0148】
実施例と比較例の比較から、炭素−炭素二重結合量が特定の範囲にある液晶シール剤は、耐リーク性、接着性、塗布性のバランスに優れていることが明らかである。特に実施例と比較例1,4との比較から、硬化性樹脂、熱ラジカル重合開始剤、フィラーを含む液晶シール剤でも、フィラーを除く樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量が当該範囲外の場合は、耐リーク性や接着強度が低下するなど、物性バランスに欠けることが明らかである。また、実施例1〜3の結果から明らかなように、液晶シール剤の物性バランスの良好であるためには、炭素−炭素二重結合量が0.002mol/g以上0.003mol/g以下がより好ましい範囲であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の液晶シール用硬化性樹脂組成物は、液晶シール剤によるシールパターンの変形や、液晶のリークが低減された液晶表示パネルを提供することができるので、液晶表示パネルの構成部材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1a)アクリル樹脂または、(1b)分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを有する(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂と、
(2)熱ラジカル重合開始剤と、
(3)フィラーと、
を含む液晶シール用硬化性樹脂組成物であって、
前記(3)のフィラーを除く樹脂組成物中の炭素−炭素二重結合量は、0.002mol/g以上0.006mol/g未満である、液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、
前記(2)の熱ラジカル重合開始剤の含有量は、0.01〜3.0質量部である、請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(1a)のアクリル樹脂は、下記の一般式(1)で表されるアクリル基含有多環芳香族化合物である、請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【化1】

[前記一般式(1)中の、
mは2〜8の整数を表し、
nは1〜4の数を表し、
は炭素数2〜6の炭化水素基を表し、
は水素またはメチル基を表し、
Aは多環芳香族炭化水素基を表わす]
【請求項4】
前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、3〜30質量部の(4)エポキシ硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、1〜30質量部の(5)エポキシ樹脂をさらに含む、請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(1a)の樹脂と前記(1b)の樹脂とを合わせた樹脂ユニット100質量部に対して、0.3〜5.0質量部の(6)光ラジカル重合開始剤をさらに含む、請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物を含む、液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項8】
(a)請求項1に記載の液晶シール用硬化性樹脂組成物によって画素配列領域が包囲されるように形成された枠状のシールパターンを有する1枚以上の基板を準備する工程と、
(b)未硬化状態の前記シールパターン内、またはもう一方の基板上に液晶を滴下する工程と、
(c)前記液晶が滴下された基板と、もう一方の基板とを減圧下にて重ね合わせる工程と、
(d)前記基板の間に挟まれた液晶滴下工法用液晶シール剤を加熱によって硬化させる工程と、
を含む、液晶表示パネルの製造方法。

【公開番号】特開2009−175180(P2009−175180A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10714(P2008−10714)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】