説明

液晶スペーサ及びその製造方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント並びに液晶表示装置

【課題】液晶表示装置の表示品質の更なる改善を可能とする液晶スペーサを提供すること。
【解決手段】平面状の底面11と、底面11の垂線に沿って底面11から離れる方向に向けて隆起した山形の凸部12とを有する液晶スペーサ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶スペーサ及びその製造方法、感光性樹脂組成物、感光性エレメント並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置としては、液晶カラーテレビ、液晶カラー表示のコンピューター等が挙げられる。これらの液晶表示装置は、通常、電極を設けた対向する2つの基板と、基板間に封入された液晶からなる液晶層とを備える。液晶表示装置は、電極間に電圧を印加することにより液晶層の液晶を配向させて画像を表示する。液晶層の厚さが一定でないと、表示ムラやコントラスト異常が生じやすくなるため、一般に、液晶層の厚さを一定に保つための液晶スペーサが用いられる。
【0003】
液晶スペーサとしては、例えば、均一な粒径分布を有する球状のガラスビーズ又は樹脂ビーズが用いられている。しかしながら、これらのビーズは、液晶層内に散布されているだけで、基板に対して固定されていないため、分布にバラツキが生じることにより表示ムラを生じやすかった。また、液晶表示装置が振動すると、これらのビーズも移動するため、配向異常領域が大きくなる、配向膜面にダメージを与える等の問題を生じる場合があった。
【0004】
一方、特許文献1〜4には、基板上に感光性樹脂組成物の層を形成した後、露光及び現像を行うことで、柱状スペーサ又は感光性スペーサと呼ばれる、基板に固定された液晶スペーサを形成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平3−89320号公報
【特許文献2】特開平10−168134号公報
【特許文献3】特開平11−133600号公報
【特許文献4】特開平11−174461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感光性樹脂組成物を用いて形成される液晶スペーサを形成する方法によれば、基板上の所定の位置に固定された液晶スペーサを高精度で形成できることから、液晶スペーサの分布のバラツキは少ない。しかしながら、実際には、感光性樹脂組成物を用いる従来の方法では表示ムラの発生が十分に抑制されず、表示品質の点で更なる改善が必要であった。従来の方法では、感光性樹脂組成物を基板に塗布する際の膜厚ムラ等に起因して液晶スペーサの高さにバラツキが生じ、その結果表示ムラを生じやすいと考えられる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、液晶表示装置の表示品質の更なる改善を可能とする液晶スペーサを提供することにある。また、本発明は係る液晶スペーサを形成するために用いられる感光性樹脂組成物及び感光性エレメント、更には、係る液晶スペーサを備え、表示品質の改善された液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液晶スペーサは、平面状の底面と、底面の垂線に沿って底面から離れる方向に向けて隆起した山形の凸部とを有する。
【0008】
上記本発明に係る液晶スペーサによれば、液晶表示装置の表示品質の更なる改善が可能である。係る液晶スペーサの山形の凸部の断面積は底面から離れる方向に向けて徐々に小さくなることから、凸部の先端近傍における剛性は、底面近傍と比較して相対的に小さい。そのため、液晶スペーサを液晶層が封入される基板間に配置する際、相対的に大きな高さを有する液晶スペーサの凸部の圧縮変形により液晶スペーサの高さバラツキが解消され易いと考えられる。更に、液晶スペーサの底面を一方の基板表面に固着させることにより、分布バラツキも抑制される。
【0009】
液晶スペーサの底面の垂線に沿う高さをhとしたときに、底面からの距離がh×0.95である位置における底面に平行な断面の面積S0.95と、底面からの距離がh×0.8である位置における底面に平行な断面の面積S0.8とが、S0.95/S0.8<0.5を満たすことが好ましい。これにより本発明による効果がより顕著に奏される。
【0010】
本発明に係る液晶スペーサは、凸部を複数有することが好ましい。これにより、底面の面積をより大きく維持しながら、表示品質改善の効果を奏することが可能になる。底面の面積が大きいと、底面側の基板との接触面積が大きくなって、液晶スペーサの基板に対する密着性が向上する。
【0011】
本発明に係る液晶スペーサは、感光性樹脂組成物によって形成されていることが好ましい。感光性樹脂組成物を用いることにより、山形の凸部を有する液晶スペーサを高い位置精度で基板上に形成することが可能になる。
【0012】
別の側面において、本発明は液晶スペーサの製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、感光性樹脂組成物からなる感光層を第1の基板上に形成する工程と、感光層から間隔を空けて配置されたフォトマスクを介して感光層に活性光線を照射する工程と、活性光線が照射された感光層を現像して、平面状の底面と底面の垂線に沿って底面から離れる方向に向けて隆起した山形の凸部とを有する液晶スペーサを形成する工程とを備える。
【0013】
上記本発明に係る製造方法によれば、底面及び凸部を有する液晶スペーサを高精細なパターンで容易に製造することができる。
【0014】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(a)光重合性不飽和基を有するアクリル系ポリマ、(b)光重合性不飽和モノマー、及び(c)光重合開始剤を含有する。本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記本発明に係る液晶スペーサを形成するために用いられるものである。
【0015】
本発明に係る感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明に係る感光性樹脂組成物からなる感光層とを備える。感光性エレメントは、液晶スペーサ形成の作業性に優れ、かつコスト低減に寄与し得る。
【0016】
本発明に係る液晶表示装置は、対向配置された第1の基板及び第2の基板と、第1の基板及び第2の基板の間に設けられた、液晶層及び上記本発明に係る液晶スペーサと、を備える。液晶スペーサの底面は、第1の基板の表面に固着している。
【0017】
上記本発明に係る液晶表示装置は、本発明に係る液晶スペーサを用いていることにより、表示ムラが少ない優れた表示品質を有する。また、製造の歩留まりも良好である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液晶表示装置の表示品質の更なる改善が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1は液晶表示装置の一実施形態を示す断面図である。図1に示す液晶表示装置100は、対向配置された第1の基板3及び第2の基板5と、第1の基板3及び第2の基板5の間に設けられた液晶層2及び液晶スペーサ1とを備える。
【0021】
第1の基板3は、バックライト38、偏光板37、ガラス基板35、カラーフィルタ61、保護膜33、ITO膜32、及び配向膜31を有しており、これらがこの順で積層された積層構造を有する。カラーフィルタ61同士の間にはブラックマトリックス62が設けられている。本実施形態のようにガラス基板を用いることに代えて、セラミック板又はプラスチック板を用いてもよい。第2の基板5は、偏光板57、位相差板56、ガラス基板55、TFT65、保護膜53及び配向膜51を有しており、これらがこの順で積層された積層構造を有する。更に、TFT65に接続された画素電極66がガラス基板55上に設けられている。第1の基板3及び第2の基板5は、それぞれの配向膜側を内側に向けて対向配置されている。
【0022】
液晶スペーサ1によって、第1の基板3と第2の基板5との間隔、すなわち液晶層2の厚さが一定に保たれている。なお、液晶層2の厚さは温度に応じて変動するため、液晶層2の厚さを一定に保つということは、所定の温度での使用を想定して設計された液晶層2の厚さが、液晶表示装置100の表示画面内で均一に保たれることを意味する。
【0023】
図2は液晶スペーサの一実施形態を示す断面図である。図2に示す液晶スペーサ1は、平面状の底面11を有しており、底面11は第1の基板3の表面に固着している。液晶スペーサ1は、底面11側から柱状に延びる柱状部13と、柱状部13の底面11とは反対側に形成された凸部12とを有する。柱状部13の底面11と平行な断面の面積は底面11の垂線方向(液晶スペーサ1の高さ方向)において実質的に一定であるのに対して、凸部12の底面11と平行な断面の面積は底面11から離れる方向に向けて徐々に小さくなっている。言い換えると、凸部12は、底面11から離れる方向に向けて隆起した、1つの頂点を有する山形の形状を有する。
【0024】
液晶スペーサ1の高さ方向における圧縮応力に対する凸部12の剛性は、柱状部13の剛性よりも小さい。そのため、複数の液晶スペーサ1間の高さの微小なばらつきがあったときに、凸部12が圧縮変形することによりそのばらつきを吸収することができる。球状の液晶スペーサでも同様の作用が期待され得るが、球状の液晶スペーサは基板間を移動し易いため、高い位置精度を得ることが困難である。これに対して本実施形態に係る液晶スペーサ1は、平面状の底面11を第1の基板3の表面に対して固着していることから、基板間の移動は非常に起こり難い。
【0025】
より具体的には、液晶スペーサの底面11の垂線に沿う高さをhとしたときに、底面からの距離がh×0.95である位置H2における底面11に平行な断面の面積S0.95と、底面からの距離がh×0.8である位置H1における底面11に平行な断面の面積S0.8とが、S0.95/S0.8<0.5を満たすことが好ましい。S0.95/S0.8は出来るだけ小さいことが好ましいが、その下限は通常0.001程度である。表示ムラ防止の観点から、S0.95/S0.8<0.3であることがより好ましく、S0.95/S0.8<0.2であることが更に好ましく、S0.95/S0.8<0.1であることがより一層好ましい。このように小さなS0.95/S0.8を実現するためには、S0.95を小さくするか、又はS0.8を大きくすることが有効である。
【0026】
山形の凸部を有する液晶スペーサ、例えばS0.95/S0.8<0.5を満たす液晶スペーサに対して微小硬度計の平面圧子により高さ方向の圧縮荷重を加えたとき、得られる荷重−変位曲線は、小さい変位量の領域において小さな傾きを示し、変極点を経てより大きな傾きを示す場合が多い。小さな傾き、すなわち小さな剛性を示す領域における微小な変形によって、液晶スペーサの高さばらつきが吸収され得る。その結果、高さばらつきに起因する表示ムラが抑制される。
【0027】
本実施形態に係る液晶スペーサ1は、例えば、感光性樹脂組成物からなる感光層を第1の基板3上に形成する工程と、感光層から間隔を空けて配置されたフォトマスクを介して感光層に活性光線を照射する工程と、活性光線が照射された感光層を現像して、平面状の底面と底面の垂線に沿って底面から離れる方向に向けて隆起した山形の凸部とを有する液晶スペーサを形成する工程とを備える方法により形成することができる。
【0028】
フォトマスクを感光層から間隔を空けて配置することにより、フォトマスクの開口部を通過した活性光線が開口部直下の部分の周囲に拡散して、相対的に光硬化の進行の程度が低い領域生じる。その結果、現像後に山形の凸部が形成される。フォトマスクと感光層の間隔を大きくすれば、形成される液晶スペーサ1のS0.95がS0.5に対して相対的に小さくなる傾向がある。また、フォトマスクの開口部を大きくすればS0.8が大きくなる傾向がある。また、当業者には理解されるように、活性光線照射量や現像条件等を適宜調整することによっても凸部の形状等を制御することができる。
【0029】
液晶スペーサの凸部の形状は図1に示す実施形態のような半球状に限られるものではなく、円柱、三角柱若しくは四角柱のような角柱、円錐、角錐、又はカルデラ状などの他の形状であってもよい。これらの形状が混在していてもよい。また、柱状部が存在せず、液晶スペーサ全体が山形の凸部を形成していてもよい。
【0030】
図2は、液晶スペーサの他の実施形態を示す断面図である。図2に示す液晶スペーサ1は2つの凸部12を有する。このように、液晶スペーサが複数の凸部を有していることにより、底面11の面積又はS0.5を極力大きくして高い密着性を確保しつつ、それぞれの凸部の断面積を小さくすることができる。なお、位置H2において複数の凸部が形成されている場合、上記S0.95はそれぞれの凸部の断面積の合計を意味する。一般に、カラーフィルター上に液晶スペーサを形成できる場所は対向する基板のTFTと重なる位置などに限定されることが多く、その場合、狭い幅のストライプ状のスペース内に液晶スペーサを設ける必要がある。そのため、例えば、比較的小さな断面積を有する凸部をストライプ状スペースの長手方向に沿って2つ以上連なるように形成する方法が、凸部を1つだけ形成する方法と比較して限られたスペースを最大限に利用できる点で有利である。また、凸部を1つだけ形成する場合、フォトマスクと感光層との間隔を大きくすれば小さなS0.95が達成され得るが、その場合、液晶スペーサの高さが低くなり易いため、安定した高さを確保し難くなる傾向がある。さらには、S0.95が小さいと、現像の際に十分な密着性が確保できず、液晶スペーサの形成自体が困難になる場合がある。これらの点を考慮しても、2以上の凸部が形成されることが好ましい。
【0031】
液晶スペーサが3つ以上の凸部を有する場合、それらの配列や場所は任意であり、例えば直線状、くの字型又はV字型に3つ以上の凸部が配列していてもよい。
【0032】
フォトマスクのパターン形状及びパターン位置を適宜描画することにより、2つ以上の凸部を有する液晶スペーサを形成させることができる。2つ以上の凸部を形成させるとき、フォトマスクの開口部の大きさと開口部同士の位置関係を調整することが特に有効である。
【0033】
液晶スペーサ1を形成するために用いられる感光性樹脂組成物は、(a)アクリル系ポリマ、(b)光重合性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含有する。係るネガ型の感光性樹脂組成物を用いることにより、液晶層2の厚さを一定に保つために必要な強度及び硬度を有する液晶スペーサ1を形成することができる。
【0034】
(a)成分のアクリル系ポリマは、光重合性不飽和基を1又は2以上有していればよく、その組成や合成方法に特に制限はない。例えば、側鎖にエチレン性不飽和基を有する共重合体を(a)成分として使用することができる。係るアクリル系重合体は、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環及び酸無水物基から選ばれる官能基を有するビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基及びカルボキシル基から選ばれる官能基とを有する化合物を付加反応させる方法により得られる。
【0035】
上記ビニル共重合体は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環及び酸無水物基から選ばれる官能基を有するビニル単量体を用いて製造される。係るビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、イソシアン酸エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0036】
このような、側鎖にエチレン性不飽和基を有する共重合体の製造の際、必要に応じて、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキシラン環及び酸無水物基から選ばれる官能基を有するビニル単量体以外のビニル単量体を共重合させることができる。その具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、メタクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、アクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−フルオロエチル、メタクリル酸2−フルオロエチル、スチレン、α−メチルスチレン、シクロヘキシルマレイミド、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0037】
側鎖にエチレン性不飽和基を有する共重合体のエチレン性不飽和基濃度は、1.0×10-4〜6.0×10-3モル/gであることが好ましく、2.0×10-4〜5.0×10-3モル/gであることがより好ましく、3×10-4〜4.0×10-3モル/gであることが特に好ましい。このエチレン性不飽和基濃度が1.0×10-4モル/g未満であると、形成される液晶スペーサの硬度が低下して、表示品質の確保が困難になる傾向がある。エチレン性不飽和基濃度が6.0×10-3モル/gを超えると、側鎖にエチレン性不飽和基を有する共重合体を製造する際にゲル化を起こし易い傾向がある。
【0038】
アクリル系ポリマの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン換算した値)は、耐熱性、塗布性、後述する液晶スペーサ用感光性エレメントとした場合のフィルム性(フィルム状の形態を保持する特性)、溶媒への溶解性及び後述する現像工程における現像液への溶解性等の観点から、1000〜300000であることが好ましく、5000〜150000であることがより好ましい。
【0039】
光重合性不飽和基を有するアクリル系ポリマは、公知の各種現像液に対する感光性樹脂組成物の現像性を確保するために、所定の酸価を有することが好ましい。
【0040】
例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、アクリル系ポリマの酸価は40〜260mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が、40mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性(現像により除去されずにパターンとなる部分が、現像液によって侵されない性質)が低下する傾向がある。
【0041】
水又はアルカリ水溶液と1種以上の界面活性剤とからなるアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、アクリル系ポリマの酸価は15〜260mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が、15mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性が低下する傾向がある。
【0042】
液晶スペーサを形成するための感光性樹脂組成物は、光重合性不飽和基を有するアクリル系ポリマに加えて、必要に応じて、光重合性不飽和基を有しない、いわゆるバインダーポリマを含有することができる。バインダーポリマとしては、例えば上述のビニル単量体を共重合して得られるビニル共重合体が挙げられる。
【0043】
(b)成分の光重合性不飽和モノマーは、光重合性官能基を有し、(a)成分とは異なる化合物が用いられる。光重合性不飽和モノマーは少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有することが好ましい。光重合性不飽和モノマーとしては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタンモノマー、ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0044】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
上記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸が拳げられる。
【0046】
上記2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)が挙げられる。
【0047】
上記グリシジル基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニルが拳げられる。
【0048】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、エチレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド,プロピレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
(c)成分の光重合開始剤は、活性光線により遊離ラジカルを生成する。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア−369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア−907)等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールに置換した置換基は同一でも相違していてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。また、フォトリソグラフィ工程における密着性及び感度の観点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体が好ましく、液晶スペーサとした場合の可視光線透過率の観点から2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンがより好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
(a)成分の光重合性不飽和基を有するアクリル系ポリマの量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して好ましくは10〜80質量部、より好ましくは20〜75質量部、更に好ましくは25〜73質量部、より一層好ましくは30〜70質量部である。(a)成分の量が10質量部未満では、塗布性や感光性エレメントを形成したときのフィルム形成性が低下する傾向があり、80質量部を超えると、光硬化性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0052】
(b)成分の光重合性不飽和モノマーの量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは20〜75質量部、更に好ましくは25〜73質量部、より一層好ましくは30〜70質量部である。(b)成分の量が10質量部未満では、光硬化性や耐熱性が低下する傾向があり、80質量部を超えると、塗膜性や感光性エレメントを形成したときのフィルム形成性が低下する傾向がある。
【0053】
(c)成分の光重合開始剤のは、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.15〜10質量部である。(c)成分の量が0.05質量部未満では、十分な光硬化が困難となる傾向があり、20質量部を超えると、後述する(II)感光層に活性光線を像的に照射する工程において、感光層表面での活性光線の吸収が増大して、感光層内部の十分な光硬化が困難となる傾向がある。
【0054】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着性付与剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、重合禁止剤等を更に含有していてもよい。これらの量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度であってもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0055】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、支持体と、該支持体上に形成された感光性樹脂組成物からなる感光層とを備える感光性エレメントの形態で用いることができる。
【0056】
支持体としては、公知のフィルムを使用することができるが、基板上に感光性エレメントを貼り合わせる際の作業性及び感光層からの剥離性が良好であるものが好ましい。係る観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエーテルサルフォンのフィルムが好適に用いられる。支持体の厚さは、特に制限はないが、5〜150μm程度が好ましい。
【0057】
感光層の厚さは、液晶表示装置における電気的特性や液晶の配向特性を考慮して、0.5〜20μmであることが好ましく、1.0〜10μmであることがより好ましく、1.5〜7μmであることが更に好ましい。
【0058】
感光層の粘度は、30℃において、15〜100MPa・sであることが好ましく、20〜90MPa・sであることがより好ましく、25〜80MPa・sであることが更に好ましい。感光層が係る粘度を有することにより、感光性エレメントをロール状に巻いたときに、感光性エレメントの端面から感光性樹脂組成物がしみ出すことを1カ月以上防止すること、及び感光性エレメントを切断する際に、感光性樹脂組成物の破片が基板に付着して引き起こされる露光不良や現像残り等を防止することができる。
【0059】
上記粘度は、直径7mm、厚さ2mmの感光性樹脂組成物の試料の厚さ方向に、30℃及び80℃で1.96×10-2Nの荷重を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して粘度に換算して求められる値である。
【0060】
感光性エレメントは、感光層上に積層されたカバーフィルムを更に備えていてもよい。カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる厚さ5〜150μm程度のフィルムが挙げられる。
【0061】
感光性エレメントは、例えば、感光性樹脂組成物を溶媒に均一に溶解又は分散した溶液を支持体フィルム上に塗布する工程と、塗布された溶液を乾燥して感光層を形成する工程とを有する方法により得ることができる。
【0062】
感光性樹脂組成物の溶液を支持体上に塗布する方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法が挙げられる。
【0063】
得られる液晶スペーサ用の感光性エレメントは、ロール状に巻いて保管し、あるいは使用できる。
【0064】
第1の基板3上に感光層を形成する方法としては、感光性樹脂組成物を含有する溶液を第1の基板3上に塗付し、塗布された溶液を乾燥する方法が挙げられる。この場合の塗布方法としては、感光性エレメントを製造する際の感光性樹脂組成物を塗布する方法と同様の方法を採用することができる。乾燥温度は60〜130℃が好ましく、乾燥時間は1分〜1時間が好ましい。
【0065】
あるいは、上述の感光性エレメントをその感光層が第1の基板3に接するように第1の基板3上に積層する方法によって感光層を形成することもできる。感光性エレメントがカバーフィルムを有しているときは、そのカバーフィルムを除去した後、感光性エレメントを圧着ロールで圧着させる。
【0066】
圧着ロールは、加熱圧着できるように加熱手段を備えたものであってもよく、加熱圧着する場合の加熱温度は、10〜180℃が好ましく、20〜160℃がより好ましく、30〜150℃が特に好ましい。この加熱温度が、10℃未満では、感光層と第1の基板との密着性が低下する傾向があり、180℃を超えると、感光層の構成成分が熱硬化又は熱分解する傾向がある。加熱圧着時の圧着圧力は、線圧で50〜1×105N/mが好ましく、2.5×102〜5×104N/mがより好ましく、5×102〜4×104N/mが特に好ましい。この圧着圧力が、50N/m未満では、感光層と基板との密着性が低下する傾向があり、1×105N/mを超えると、基板が破壊され易くなる傾向がある。
【0067】
感光性エレメントを上記のように加熱すれば、第1の基板3を予熱処理することは必要ではないが、感光層と第1の基板3との密着性をさらに向上させる点から、第1の基板3を予熱処理することが好ましい。この時の予熱温度は、30〜180℃が好ましい。
【0068】
感光層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性及び液晶の配向特性を考慮して、0.1〜20μmであることが好ましく、0.3〜15μmであることがより好ましく、0.5〜10μmであることが特に好ましい。
【0069】
第1の基板3上に形成された感光層に対して、感光層から所定の間隔を空けて配置されたフォトマスクを介して活性光線が像的に照射される。感光性エレメントを用いる場合、支持体を介して活性光線を照射してもよいし、支持体を除去してから活性光線を照射してもよい。凸部12を有する形状の液晶スペーサ1を確実に形成させるため、感光層とフォトマスクとの間隔は50〜500μmであることが好ましい。
【0070】
活性光線としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプが挙げられ、紫外線を有効に放射するものであれば特に制限されない。
【0071】
活性光線が照射された感光層を現像する方法としては、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶剤等の公知の現像液を用いて、スプレー、シャワー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像を行い、不要部を除去する方法が挙げられる。中でも、環境、安全性の観点からアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
【0072】
アルカリ水溶液の塩基としては、水酸化アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等)、炭酸アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩若しくは重炭酸塩等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属ピロリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等)、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミンなどが挙げられ、中でも、水酸化テトラメチルアンモニウム等が好ましいものとして挙げられる。
【0073】
現像温度及び時間は、感光層の現像性に合わせて調整することができる。
【0074】
アルカリカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
【0075】
現像後、光硬化した感光層(液晶スペーサ1)の表面に付着したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により酸処理(中和処理)することができる。さらに、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0076】
現像後、パターン化された感光層(液晶スペーサ)を加熱してもよい。加熱の方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられる。加熱温度は、140〜300℃が好ましく、150〜290℃がより好ましく、160〜280℃が特に好ましい。この加熱温度が、140℃未満では、熱硬化の効果が小さくなる傾向があり、300℃を超えると、感光層の構成成分が熱分解する傾向がある。
【0077】
パターン化された感光層(液晶スペーサ)の第1の基板3に対する密着性を向上させること、耐薬品性を向上させること等を目的に、現像の工程の後、パターン化された感光層に対して更に活性光線を照射してもよい。この場合の活性光線の照射量は、通常、1×102〜1×105J/m2であり、照射の際に、加熱を伴うこともできる。この活性光線照射量が、1×102J/m2未満では、光硬化の効果が小さくなる傾向があり、1×105J/m2を超えると、感光層が変色する傾向がある。
【0078】
以上のようにして第1の基板3上に液晶スペーサ1を形成する工程の後、液晶スペーサ1を間に挟んで第1の基板3と第2の基板5とを貼り合わせる工程と、第1の基板3と第2の基板5との間に液晶層2を封入する工程とを経て、液晶表示装置100が得られる。
【0079】
本実施形態に係る液晶スペーサ、感光性樹脂組成物及び感光性エレメントは、液晶表示装置の用途に限定されるものではなく、例えば、エレクトロクロミックディスプレイや電子ペーパー等、対向する基板間に流動性を有する物質の層を構成してなる表示装置等のスペーサ用途にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例1
プレポリマーの溶液(p−1)の調製
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1の(1)に示す材料を表1に示す配合量で仕込み、反応液を調製した。窒素ガス雰囲気下で反応液を80℃まで昇温した。反応液の温度を80℃±2℃に保ちながら、表1の(2)に示す材料を表1に示す配合量で、4時間かけて均一に反応液に滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃±2℃に保ちながら反応液を6時間撹拌し、重量平均分子量が約25000であるプレポリマーの溶液(固形分35質量%)(p−1)を得た。
【0082】
【表1】

【0083】
アクリル系ポリマの溶液(r−1)の調製
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えた別のフラスコに、イソシアン酸エチルメタクリレート12質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート28質量部、乳酸メチル7質量部を仕込み、反応液を調製した。窒素ガス雰囲気下で反応液を70℃まで昇温した。反応液の温度を70℃±2℃に保ちながら、ジブチル錫ジラウリレート0.1質量部と上記プレポリマーの溶液(p−1)との混合物を、2時間かけて均一に反応液に滴下した。滴下後、反応液の温度を70℃±2℃に保ちながら反応液を2時間撹拌し、重量平均分子量が約25000である、光重合性不飽和基を有するアクリル系ポリマの溶液(固形分35質量%)(r−1)を得た。
【0084】
感光性樹脂組成物溶液(V−1)の調製
表2に示す材料を、撹拌機を用いて15分間混合し、液晶スペーサ用感光性樹脂組成物溶液(V−1)を調製した。
【0085】
【表2】

【0086】
感光性エレメント(i)の作製
得られた感光性樹脂組成物溶液(V−1)を、コンマコーターを用いて支持体上に均一に塗布した。支持体としては、50μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。塗布された溶液を、熱風対流式乾燥機を用いて100℃にて3分間乾燥することにより、溶液中の溶剤を除去し、感光層を形成した。形成された感光層の厚さは5μmであった。感光層の支持体とは反対側の面に、カバーフィルムとして25μmの厚さのポリエチレンフィルムを張り合わせて、感光性エレメント(i)を得た。
【0087】
スペーサ形成基板の作製
得られた感光性エレメント(i)からカバーフィルム(ポリエチレンフィルム)を剥がしながら、感光層及び支持体を、表面に透明電極が形成された厚さ1mmのガラス基板上に、感光層がガラス基板に接するようにラミネートした。ラミネートは、ラミネータ(日立化成工業(株)製、商品名HLM−1500型)を用いて行い、ラミネートの条件は、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×105Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmのガラス基板を用いたため、このときの線圧は9.8×103N/m)とした。
【0088】
支持体を除去し、感光層表面との垂線方向の距離(ギャップ)が150μmとなるようにフォトマスクを設けた。フォトマスクとしては、活性光線透過部の直径が10μmで、1画素あたり1個所の割合でパターニングされているフォトマスク「タイプA」を用いた。このフォトマスクの感光層とは反対側から紫外線を照射して露光を行った。露光は、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、商品名EXM1201)を用いて、露光量1×103J/m(i線(波長365nm)における測定値)にて行った。
【0089】
露光後、0.5質量%の界面活性剤を含有する0.5質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、30℃にて40秒間スプレー現像することにより、感光層の特定部分を選択的に除去し、液晶スペーサを形成した。このようにして、ガラス基板上に液晶スペーサが形成されたスペーサ形成基板を得た。
【0090】
形成された液晶スペーサのパターンを走査型電子顕微鏡により観察した。液晶スペーサは、ガラス基板から剥れることなく、光硬化した感光性樹脂組成物から形成されており、山形の凸部を有していた。また、液晶スペーサの高さは厚さ5μmであった。
【0091】
さらに、スペーサ形成基板を、ボックス型乾燥機により230℃にて30分間加熱した。その後の液晶スペーサのパターンを同様に観察したところ、図4の電子顕微鏡写真に示されるように、パターン形状は良好に保持されており、その高さは4.2μmであった。
【0092】
レーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、商品名VK−8510)で寸法測定を行った結果から概算したところ、ガラス基板表面からの垂線方向の高さ位置H1(=h×0.8)におけるスペーサの水平断面積S0.8は89.8平方μm、ガラス基板表面からの垂線方向の高さ位置H2(=h×0.95)における水平断面積S0.95は27.8平方μmであった。すなわち、S0.95/S0.8=0.31であった。
【0093】
形成された液晶スペーサについて、微小硬度計(島津製作所製、商品名DUH-201)を用いて平面圧子での荷重−変位測定を実施したところ、図5に示されるように、変極点を有する荷重−変位曲線が得られた。すなわち、荷重が小さいときの変位量は大きく、荷重を大きくするにつれて変位量が小さくなる傾向が認められた。
【0094】
配向膜の形成
スペーサ形成基板の液晶スペーサ側の面に、液晶配向剤をスピンコート法により塗布した。液晶配向剤が塗布された上記基板を、ボックス型乾燥機内で、180℃にて30分間乾燥することにより、スペーサ形成基板の液晶スペーサ側の面に、厚さ0.05μmの液晶配向剤からなる膜(配向膜)を形成した。次いで、ナイロン製の布を巻きつけたロールを有するラビングマシンを用いて、配向膜のラビング処理を行った。
液晶表示装置の作製
【0095】
配向膜を形成したスペーサ形成基板の配向膜面の外縁に、ガラスファイバー入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した。また、ガラス基板上にラビング処理された配向膜が形成された対向基板を用意した。この対向基板を、接着剤が塗布されたスペーサ形成基板と、互いに配向膜面が相対するように、またラビング方向が直交するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。
【0096】
スペーサ形成基板と対向基板との間に、液晶注入口よりネマティック型液晶を充填した後、エポキシ樹脂接着剤で液晶注入口を封止した。スペーサ配向膜形成基板と対向基板それぞれのガラス基板側の面に、偏向方向が各基板の配向膜のラビング方向と一致するように偏光板を貼り合わせ、液晶表示装置を得た。
【0097】
得られた液晶表示装置に電圧を印加し、表示品質を評価したところ、画面の表示ムラは認められず、良好な表示品質であった。
【0098】
実施例2
スペーサ形成基板の作製
フォトマスクとして、活性光線透過部の直径が10μmのパターンが2つ並び、2つのパターンの中心を結ぶ距離が15μmで、1画素あたり1個所の割合でパターニングされているフォトマスク「タイプB」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に液晶スペーサが形成されたスペーサ形成基板を作製した。
【0099】
得られた液晶スペーサを走査型電子顕微鏡で観察した。液晶スペーサは、ガラス基板から剥れることなく、光硬化した感光性樹脂組成物から形成されており、山形の凸部を2つ有していた。また、液晶スペーサの高さは厚さ5μmであった。
【0100】
さらに、スペーサ形成基板を、ボックス型乾燥機により230℃にて30分間加熱した。その後の液晶スペーサを同様に観察したところ、図6の電子顕微鏡写真に示されるように、パターン形状は良好に保持されており、その厚さは4.2μmであった。
【0101】
レーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、商品名VK−8510)で寸法測定を行った結果から概算したところ、液晶スペーサの水平断面積S0.8は74.7平方μm、水平断面積S0.95は20.0平方μmであった。すなわち、S0.95/S0.8=0.27であった。
【0102】
形成された液晶スペーサについて、実施例1と同様にして荷重−変位測定を実施したところ、図7に示されるように、変極点を有する荷重−変位曲線が得られた。すなわち、荷重が小さいときの変位量は大きく、荷重を大きくするにつれて変位量が小さくなる傾向が認められた。
【0103】
液晶表示装置の作製
得られたスペーサ形成基板を用いて、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置に電圧を印加し、表示品質を評価したところ、画面の表示ムラは認められず、良好な表示品質であった。
【0104】
比較例1
スペーサ形成基板の作製
フォトマスクとして、活性光線透過部の直径が20μmで、1画素あたり1個所の割合でパターニングされているフォトマスク「タイプC」を用いて、支持体(PETフィルム)を除去することなく、支持体の表面にフォトマスクを直接置いたこと以外は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に液晶スペーサのパターンが形成されたスペーサ形成基板を作製した。
【0105】
得られた液晶スペーサのパターンを走査型電子顕微鏡で観察した。液晶スペーサは、ガラス基板とは反対側に平坦な表面を有する円柱状の形状を有していた。また、液晶スペーサの高さは5μmであった。
【0106】
さらに、スペーサ形成基板をボックス型乾燥機により230℃にて30分間加熱した。その後、液晶スペーサを同様に観察したところ、図8の電子顕微鏡写真に示されるように、パターン形状は良好に保持されており、その厚さは4.2μmであった。
【0107】
レーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、商品名VK−8510)で寸法測定を行った結果から概算したところ、液晶スペーサの水平断面積S0.8は355平方μm、水平断面積S0.95は346平方μmであった。すなわち、S0.95/S0.8=0.97であった。
【0108】
形成された液晶スペーサについて、実施例1と同様にして荷重−変位測定を実施したところ、図9に示すように、変極点を有さない荷重−変位曲線が得られた。すなわち、荷重と変位はほぼ比例の関係となった。
【0109】
液晶表示装置の作製
得られたスペーサ形成基板を用いて実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置に電圧を印加し、表示品質を評価したところ、画面の表示ムラが認められ、表示品質は不十分であった。
【0110】
以上の結果から、液晶スペーサが山形の凸部を有していることにより、液晶表示装置の表示品質の改善が可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】液晶表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】液晶スペーサの一実施形態を示す断面図である。
【図3】液晶スペーサの一実施形態を示す断面図である。
【図4】実施例1で得られた液晶スペーサの電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で得られた液晶スペーサの荷重−変位曲線を示すグラフである。
【図6】実施例2で得られた液晶スペーサの電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例2で得られた液晶スペーサの荷重−変位曲線を示すグラフである。
【図8】比較例1で得られた液晶スペーサの電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例1で得られた液晶スペーサの荷重−変位曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0112】
1…液晶スペーサ、2…液晶層、11…底面、12…凸部、13…柱状部、31…配向膜、32…ITO膜、33…保護膜、35…ガラス基板、37…偏光板、38…バックライト、51…配向膜、53…保護膜、55…ガラス基板、56…位相差板、57…偏光板、61…カラーフィルタ、62…ブラックマトリックス、66…画素電極、100…液晶表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の底面と、前記底面の垂線に沿って前記底面から離れる方向に向けて隆起した山形の凸部と、を有する液晶スペーサ。
【請求項2】
前記底面の垂線に沿う高さをhとしたときに、前記底面からの距離がh×0.95である位置における前記底面に平行な断面の面積S0.95と、前記底面からの距離がh×0.8である位置における前記底面に平行な断面の面積S0.8とが、S0.95/S0.8<0.5を満たす、請求項1記載の液晶スペーサ。
【請求項3】
前記凸部を複数有する、請求項1又は2記載の液晶スペーサ。
【請求項4】
感光性樹脂組成物によって形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶スペーサ。
【請求項5】
感光性樹脂組成物からなる感光層を第1の基板上に形成する工程と、
前記感光層から間隔を空けて配置されたフォトマスクを介して前記感光層に活性光線を照射する工程と、
活性光線が照射された前記感光層を現像して、平面状の底面と前記底面の垂線に沿って前記底面から離れる方向に向けて隆起した山形の凸部とを有する液晶スペーサを形成する工程と、
を備える液晶スペーサの製造方法。
【請求項6】
(a)光重合性不飽和基を有するアクリル系ポリマ、(b)光重合性不飽和モノマー、及び(c)光重合開始剤を含有し、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶スペーサを形成するために用いられる、感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に形成された請求項5記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性エレメント。
【請求項8】
対向配置された第1の基板及び第2の基板と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の間に設けられた、液晶層及び請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶スペーサと、を備え、
前記液晶スペーサの底面が前記第1の基板の表面に固着している、
液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−258374(P2009−258374A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107028(P2008−107028)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】