説明

液晶ディスプレイパネル

【課題】液晶層の劣化を防止する機能を長期に亘って維持し易く、組み付けコストも低下させ易い液晶ディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】板面を互いに対向させて配置してある一対のガラス基板1,2の間に液晶層3を設け、液晶層の外周部を封止するシール材4を一対のガラス基板の間に設けてある液晶ディスプレイパネルであって、一対のガラス基板のうちの少なくともバックライト側に配置されるバックライト側ガラス基板1を、紫外線透過能と熱膨張率とが低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板面を互いに対向させて配置してある一対のガラス基板の間に液晶層を設け、前記液晶層の外周部を封止するシール材を前記一対のガラス基板の間に設けてある液晶ディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記液晶ディスプレイパネルでは、紫外線による液晶層の劣化を防止するために、従来、例えばトリアセテートなどで形成してある樹脂フィルムに紫外線吸収剤を添加しておいて、その樹脂フィルムを紫外線カットフィルタとしてガラス基板の外面に付設してある(例えば、特許文献1参照)ものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開平9−90340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線による液晶層の劣化を防止するために、紫外線吸収剤を添加してある樹脂フィルムを紫外線カットフィルタとしてガラス基板の外面に付設してあるので、紫外線カットフィルタを構成している樹脂がバックライトなどの熱で劣化し易く、液晶層の劣化を防止する機能を長期に亘って維持し難い欠点があるとともに、液晶ディスプレイパネルの組み付けにあたって、紫外線カットフィルタを取り付ける手間が必要で、組み付けコストが高くなり易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、紫外線による液晶層の劣化を防止するにあたって、液晶層の劣化を防止する機能を長期に亘って維持し易く、組み付けコストも低下させ易い液晶ディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、板面を互いに対向させて配置してある一対のガラス基板の間に液晶層を設け、前記液晶層の外周部を封止するシール材を前記一対のガラス基板の間に設けてある液晶ディスプレイパネルであって、前記一対のガラス基板のうちの少なくともバックライト側に配置されるバックライト側ガラス基板を、紫外線透過能と熱膨張率とが低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
経年変化し難いガラス基板に着目して、従来のような紫外線カットフィルタを別途設けることなく、紫外線による液晶層の劣化を防止できるように、一対のガラス基板のうちの少なくともバックライト側に配置されるバックライト側ガラス基板を、紫外線透過能が低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成してあるので、少なくともバックライトからの紫外線による液晶層の劣化を防止する機能を長期に亘って維持し易いとともに、従来のような紫外線カットフィルタを取り付ける手間が不要で、組み付けコストも低下させ易い。
その上、少なくともバックライト側ガラス基板を、紫外線透過能だけでなく、熱膨張率も低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成してあるので、バックライトなどの熱によるガラス基板の反りなどの歪みや、ガラス基板上にTFT回路等を形成する時の加熱が原因で発生する寸法変化による加工精度の低下も生じ難い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記一対のガラス基板のうちのバックライト側に配置されない外側ガラス基板を、前記バックライト側ガラス基板よりも紫外線透過能が高いガラス基板で構成し、前記シール材を紫外線硬化型材料で構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
一対のガラス基板のうちのバックライト側に配置されない外側ガラス基板を、バックライト側ガラス基板よりも紫外線透過能が高いガラス基板で構成し、シール材を紫外線硬化型材料で構成してあるので、バックライト側ガラス基板の紫外線透過能を低くして、バックライトからの紫外線による液晶層の劣化を防止しながら、一対のガラス基板の間に設けてある未硬化のシール材を硬化させる際に、そのシール材に外側ガラス基板側から紫外線を照射することによって、シール材を短い時間で能率良く硬化させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記外側ガラス基板を、前記シール材の近傍部分を残して、紫外線透過能低下材料層で覆ってある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
紫外線硬化型材料で構成してあるシール材を短い時間で能率良く硬化させることができるようにしながら、外側ガラス基板側からの室内照明光や太陽光の紫外線による液晶層の劣化も防止することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記組成中には、酸化セリウム(CeO2)を含み、かつ、アルカリ金属の酸化物を含まないように選択してある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
紫外線透過能と熱膨張率とが低下するようにガラス基板の組成を選択するにあたって、酸化セリウム(CeO2)を含み、かつ、アルカリ金属の酸化物を含まないように選択してあるので、例えば鉄(Fe)や酸化チタン(TiO2)などを含み、かつ、アルカリ金属の酸化物を含むように選択してある場合に比べて、ガラス基板自体の発色が少なく、可視光の高い透過率を維持できるとともに、熱膨張率も低下させることができる。
従って、液晶ディスプレイパネルとして必要なガラス基板の光透過性を確保し易いとともに、ガラス基板への薄膜トランジスタ(TFT)の形成時に、加熱工程におけるガラス基板の熱膨張を抑制して、薄膜トランジスタを精度良く形成できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記組成からなるガラス基板は、酸化セリウム(CeO2)が3.0重量%以上で、かつ、酸化鉄(Fe23又はFe34)が0.1重量%以下の無アルカリガラスである点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
ガラス基板の組成は、酸化セリウム(CeO2)が3.0重量%以上で、かつ、酸化鉄(Fe23又はFe34)が0.1重量%以下の無アルカリガラスであるので、酸化セリウムを含まないガラス基板に比べて、紫外線透過率を半分以下に維持して液晶層の寿命を二倍以上に延長できるとともに、可視光の透過率を80%程度以上に維持し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による液晶ディスプレイパネルを示し、板面を互いに対向させて配置してある一対のガラス基板1,2の間に液晶層3を設け、その液晶層3の外周部を封止するシール材4を一対のガラス基板1,2の間に設け、一方のガラス基板1側にバックライト(図示せず)を設けてある。
【0016】
前記ガラス基板1,2の夫々は、液晶層側の内向きガラス面に透明電極5と配向膜6とを備え、外向きガラス面に偏光板7を備え、バックライト(図示せず)側に配置されるバックライト側ガラス基板1を、紫外線透過能と熱膨張率とが低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成して、バックライトからの紫外線による液晶層3の劣化を防止できるようにしてある。
【0017】
以下に、バックライト側ガラス基板1の組成を重量%で示す。
SiO2:55.0〜65.0wt%
Al23:13.0〜18.0wt%
23:0〜15.0wt%
MgO:0〜3.0wt%
CaO:3.0〜8.0wt%
SrO:0〜5.0wt%
BaO:0〜10.0wt%
MgO+CaO+SrO+BaO:10〜28wt%
As23:0〜1.5wt%
Sb23:0〜2.0wt%
SnO2:0〜0.1wt%
CeO2:3.0wt%以上
酸化鉄(Fe23又はFe34):0〜0.1wt%
TiO2:0〜0.1wt%
その他:1wt%以下
【0018】
前記シール材4はエポキシ樹脂などの紫外線硬化型材料で構成してあり、バックライト側に配置されない外側ガラス基板2を、バックライト側ガラス基板1よりも紫外線透過能が高いガラス基板で構成して、未硬化のシール材4を硬化させる際に、そのシール材4に外側ガラス基板2側から紫外線を照射することによって、シール材4を短い時間で能率良く硬化させることができるようにしてある。
【0019】
また、外側ガラス基板2側、つまり、外側ガラス基板2側の偏光板7に、シール材4の近傍部分を残して、酸化チタン薄膜などの紫外線透過能低下材料層8を設けて、シール材4を短い時間で能率良く硬化させることができるようにしながら、外側ガラス基板2側からの室内照明光や太陽光の紫外線による液晶層3の劣化も防止できるようにしてある。
【0020】
酸化セリウム(CeO2)の混合比率が異なる複数のガラス基板用混合原料を調合して、各混合原料毎に白金坩堝に入れ、電気炉で1600℃に加熱して溶解し、ガラス化したものの紫外線透過率(ISO9050-2003)を測定した。
ガラス基板用混合原料の三つの試料の組成を[表1]に重量%で示す。
【0021】
【表1】

【0022】
図2はその測定結果を示し、ガラス基板の組成を酸化セリウムが3.0重量%以上になり、かつ、酸化鉄(Fe23又はFe34)が0.1重量%以下になるような無アルカリガラスを選択することにより、酸化セリウムを含まないガラス基板に比べて、紫外線透過率を半分以下に維持して液晶層3の寿命を二倍以上に延長できることが分かる。
【0023】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による液晶ディスプレイパネルは、一対のガラス基板の夫々を、紫外線透過能と熱膨張率とが低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成しても良い。
2.本発明による液晶ディスプレイパネルは、紫外線透過能低下材料層を、外側ガラス基板側に接着して設けてあっても、塗布して設けてあっても良いが、必ずしも付設する必要はない。
3.本発明による液晶ディスプレイパネルは、紫外線透過能低下材料層を、外側ガラス基板の液晶層側に設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】液晶ディスプレイパネルの断面図
【図2】酸化セリウムの含有量と紫外線透過率との関係を示す図表
【符号の説明】
【0025】
1 ガラス基板(バックライト側ガラス基板)
2 ガラス基板(外側ガラス基板)
3 液晶層
4 シール材
8 紫外線透過能低下材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面を互いに対向させて配置してある一対のガラス基板の間に液晶層を設け、
前記液晶層の外周部を封止するシール材を前記一対のガラス基板の間に設けてある液晶ディスプレイパネルであって、
前記一対のガラス基板のうちの少なくともバックライト側に配置されるバックライト側ガラス基板を、紫外線透過能と熱膨張率とが低下するように選択した組成からなるガラス基板で構成してある液晶ディスプレイパネル。
【請求項2】
前記一対のガラス基板のうちのバックライト側に配置されない外側ガラス基板を、前記バックライト側ガラス基板よりも紫外線透過能が高いガラス基板で構成し、
前記シール材を紫外線硬化型材料で構成してある請求項1記載の液晶ディスプレイパネル。
【請求項3】
前記外側ガラス基板を、前記シール材の近傍部分を残して、紫外線透過能低下材料層で覆ってある請求項2記載の液晶ディスプレイパネル。
【請求項4】
前記組成中には、酸化セリウム(CeO2)を含み、かつ、アルカリ金属の酸化物を含まないように選択してある請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶ディスプレイパネル。
【請求項5】
前記組成からなるガラス基板は、酸化セリウム(CeO2)が3.0重量%以上で、かつ、酸化鉄(Fe23又はFe34)が0.1重量%以下の無アルカリガラスである請求項4記載の液晶ディスプレイパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−20537(P2008−20537A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190511(P2006−190511)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(598055910)NHテクノグラス株式会社 (81)
【Fターム(参考)】