説明

液晶パネル用水系洗浄剤組成物

【課題】すすぎ性が良好で、環境性や安全性に優れ、かつ、洗浄性が良好で液安定性に優れた液晶パネル用水系洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】本発明の液晶パネル用水系洗浄剤組成物は、α-オレフィン系炭化水素(A成分)と、ジアルキルスルホコハク酸塩(B成分)と、直鎖型及び分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤(C成分)と、ジメチルスルホキシド(D成分)と、式1で表される短鎖グリコールエーテル(E成分)と、水(F成分)とを含む液晶パネル用水系洗浄剤組成物であって、前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における、前記A成分が20質量%〜40質量%であり、前記B成分が10質量%〜30質量%であり、前記C成分が1質量%〜5質量%であり、前記D成分が5質量%〜20質量%であり、前記E成分が10質量%〜30質量%であり、前記F成分が10質量%〜30質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ幅の狭い液晶パネルの洗浄に用いられる液晶パネル用水系洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、消費電力が少ないという利点を有する上、近年、高コントラスト化等の技術改良が進んだ結果、多様な画像表示が可能となり、コンピュータ端末表示部、テレビのディスプレイ、携帯電話等の小型パネルなどの幅広い分野に用いられ、その重要性が増している。
【0003】
この液晶パネルは、10μm以下の所定間隔離して対向・保持させた2枚のガラス基板の周囲を、内部に中空部が形成されるように接着剤で貼り合わせた後、該中空部内に液晶を封入して製造される。
この場合、前記2枚のガラス基板内部には、透明導電膜で構成された文字、画像表示用電極が設けられ、この電極に制御用電気信号を印加することで、文字、画像が表示される構成となっている。
【0004】
前記液晶パネルを製造する際、2枚のガラス基板の接着部の外側にミクロンオーダーの空隙部が生じることは避けられない。このため、前記2枚のガラス基板で形成された前記中空部に液晶材料を注入する際、毛細管現象により、空隙部にも液晶材料が侵入してしまう。
しかし、この空隙部には透明電極に電気信号を印加するための電極端子が各々絶縁性を保って高密度に形成されていることから、前記空隙部に侵入した液晶材料をそのまま放置しておくと、この液晶材料が大気中の汚染物質を溶解し、その結果、絶縁不良を起こす場合がある。このため、前記空隙部に侵入した液晶材料を洗浄、除去する必要がある。
【0005】
例えば、図1は、このような液晶パネル1の状態を示すものであり、液晶パネル1は、対向する2枚のガラス板2A、2Bを備えている。該液晶パネル1は、シール部4の外側に生じる空隙部3Aとシール部4の内側の表示部5とを有し、空隙部3Aは、該液晶パネル1の長手方向に延在される。
該対向する2枚のガラス板2A、2B間に形成される中空部3Bには、表示部5側から液晶材料が浸漬、注入されるが、この際、空隙部3Aの厚み方向の幅であるギャップ幅Wが狭小であるため、毛細管現象によって空隙部3A側にも液晶材料が侵入する。
この空隙部3Aに詰まった余分な液晶材料は、該液晶パネル1の外側部3Cに配設される電極(不図示)に接触すると、電蝕(コロージョン)により通電不良を生じさせるため、洗浄、除去することが重要となる。
【0006】
このような液晶パネル1を洗浄する液晶パネル用洗浄剤としては、溶剤系(炭化水素、アルコール等、例えば、特許文献1参照)、準水系洗浄剤及び水系洗浄剤が知られている。
しかしながら、前記溶剤系のものは、引火性、揮発性などを有するため、環境性や人体への安全性に問題がある。そのため、法的規制の対象となっており、使用における管理が煩雑であるという問題がある。
また、準水系洗浄剤は、引火性を回避した組成であるものの、溶剤が連続相となるW/Oエマルションの組成であるため、すすぎ性に難があるという問題がある。
他方、水系洗浄剤は、水が連続相となるO/Wエマルションであるため、すすぎ性がよく、環境性や安全性にも優れる(例えば、特許文献2、3参照)。
【0007】
ところで、液晶パネル1における前記空隙部3Aの間隔が非常に狭いと、従来の洗浄剤では侵入した液晶材料を完全に除去することが困難であるため、洗浄に用いる洗浄剤には、より高度な洗浄能力が必要とされる。特に、近年では、液晶パネルの薄型化により、前記ギャップ幅Wが3μm程度と極めて狭くなり、また、前記空隙部3Aの長手方向の間隔も狭いことから、従来の水系洗浄剤の組成では、洗浄性が不十分となってきた。
とりわけ、前記ギャップ幅Wが狭小なSTN(Super−twisted nematic display)系液晶やTFT(Thin Film Transistor)系液晶などに対する洗浄性の向上が要望されるようになってきた。
しかしながら、十分な洗浄性を有する水系洗浄剤は、未だ提供されていないという問題がある。
また、洗浄剤組成物は、液晶パネルの様々な製造環境下にあっても安定に使用できるものでなければならない。
【0008】
【特許文献1】特開2005−177694号公報
【特許文献2】特開2004−2691号公報
【特許文献3】特開平9−157691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、すすぎ性が良好で、環境性や安全性に優れ、かつ、洗浄性が良好で液安定性に優れた液晶パネル用水系洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> α-オレフィン系炭化水素(A成分)と、ジアルキルスルホコハク酸塩(B成分)と、直鎖型及び分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤(C成分)と、ジメチルスルホキシド(D成分)と、下記式1で表される短鎖グリコールエーテル(E成分)と、水(F成分)とを含む液晶パネル用水系洗浄剤組成物であって、前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における、前記A成分が20質量%〜40質量%であり、前記B成分が10質量%〜30質量%であり、前記C成分が1質量%〜5質量%であり、前記D成分が5質量%〜20質量%であり、前記E成分が10質量%〜30質量%であり、前記F成分が10質量%〜30質量%であることを特徴とする液晶パネル用水系洗浄剤組成物である。
<2> ギャップ幅が3μmであるSTN液晶パネルの洗浄に用いられる前記<1>に記載の液晶パネル用水系洗浄剤組成物である。
【化2】

(式1において、Rは、炭素数4〜8の炭化水素、AOは、オキシエチレン、オキシプロピレン、及びこれらの混合物のいずれか、nは、1〜4の整数を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、本発明は、すすぎ性が良好で、環境性や安全性に優れ、かつ、洗浄性が良好で液安定性に優れた液晶パネル用水系洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(液晶パネル用洗浄剤組成物)
本発明の液晶パネル用洗浄剤組成物は、α−オレフィン系炭化水素(A成分)と、ジアルキルスルホコハク酸塩(B成分)と、アニオン界面活性剤(C成分)と、ジメチルスルホキシド(D成分)と、短鎖グリコールエーテル(E成分)と、水(F成分)とを含み、必要に応じて、他の成分を含む。
【0013】
−α−オレフィン系炭化水素(A成分)−
前記α−オレフィン系炭化水素は、α位に二重結合を有するアルケンであり、液晶材料を溶解させる。
このようなα−オレフィン系炭化水素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、n−デセン、n−ドデセン、n−テトラデセンなどが挙げられる。
前記α−オレフィン系炭化水素の炭素数としては、10〜15であることが好ましい。前記α−オレフィン系炭化水素の炭素数が10に満たないと、引火しやすく、15を超えると、液晶の溶解度が低下し、洗浄性が低下する。
中でも、前記α−オレフィン系炭化水素の炭素数が12〜14であることが好ましい。前記α−オレフィン系炭化水素の炭素数が12〜14であると、比較的高い沸点を有するため引火しにくく、可溶化力に優れる。
なお、これらは、1種単独で用いてもよく、炭素数が異なる2種以上の混合物を用いてもよい。
前記α−オレフィン系炭化水素の炭素数が12〜14であるものの具体的な商品としては、商品名リニアレン12(炭素数12のα−オレフィン系炭化水素、出光興産製)、商品名リニアレン124(炭素数12及び14のα−オレフィン系炭化水素の混合物出光興産製)が挙げられる。
【0014】
前記α−オレフィン系炭化水素(A成分)の前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における含有量としては、20質量%〜40質量%であり、25質量%〜35質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。
前記含有量が20質量%に満たないと、液晶の溶解度の低下により洗浄性が低下し、40質量%を超えると、液安定性が低下する。
【0015】
−ジアルキルスルホコハク酸塩(B成分)−
ジアルキルスルホコハク酸塩は、液晶の洗浄性及びリンス性と、液晶パネル用水系洗浄剤組成物の液安定化のための可溶化剤として用いられる。
前記ジアルキルスルホコハク酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアルキルスルホコハク酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられるが、中でも、ジアルキルスルホコハク酸のアンモニウム塩が好ましい。
前記ジアルキルスルホコハク酸のアンモニウム塩を用いると、金属イオンを含有しないため、電蝕不良のリスクを小さく抑えることができる。
中でも、安価で入手しやすいジオクチルスルホコハク酸アンモニウム塩をより好ましく用いることができる。
前記ジオクチルスルホコハク酸アンモニウム塩の具体的な商品としては、商品名リカサーフG−600(新日本理化製)が挙げられる。
【0016】
前記ジアルキルスルホコハク酸塩(B成分)おける含有量としては、10質量%〜30質量%であり、10質量%〜20質量%が好ましく、10質量%〜15質量%がより好ましい。
前記含有量が10質量%に満たないと、液安定性と洗浄性が低下し、30質量%を超えると、前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物が増粘し、液性が悪くなるおそれがある。
【0017】
−アニオン界面活性剤(C成分)−
前記アニオン界面活性剤は、直鎖型及び分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤(以下、「アニオン界面活性剤」という)である。前記アニオン界面活性剤は、狭ギャップパネルの洗浄性と液安定性を向上させる。
前記アニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
前記アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩及びジエターノールアミン塩が挙げられるが、中でも、アルキルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩が好ましい。
前記アルキルベンゼンスルホン酸塩のジエタノールアミン塩を用いると、金属イオンを含有しないため、電蝕不良のリスクを小さく抑えることができる。
【0018】
また、前記アルキルベンゼンスルホン酸塩の構造としては、分岐型であっても、直鎖型であってもよく、中でも、分岐型アルキルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩(以下、分岐型ABS−DEA塩と略記する)が好ましく、直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩(以下、直鎖型ABS−DEA塩と略記する)がより好ましい。
分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩を用いると、生分解性が低いため、廃棄コストが嵩むことがある。
前記直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩の具体的な商品としては、商品名ライポンLH−200(ライオン製)を挙げることができる。
また、前記分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩の具体的な商品としては、商品名ライポンLH−900(ライオン製)が挙げられる。
【0019】
前記アニオン界面活性剤(C成分)の前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における含有量としては、1質量%〜5質量%であり、1質量%〜2質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。
前記含有量が1質量%に満たないと、狭ギャップパネルの洗浄性が低下する傾向になり、また、液安定性も低下する。5質量%を超えると、他の成分が減量し、洗浄性の低下に繋がる。
また、前記含有量が、1質量%〜2質量%であると、液安定化の効果が大きくなる。
【0020】
−ジメチルスルホキシド(D成分)−
前記ジメチルスルホキシドは、液晶を拡散させ、洗浄性を向上させる。
前記ジメチルスルホキシドの具体的な商品としては、商品名DMSO(東レ・ファインケミカル製)が挙げられる。
【0021】
前記ジメチルスルホキシド(D成分)の前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における含有量としては、5質量%〜20質量%であり、10質量%〜20質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。
前記含有量が5質量%に満たないと、洗浄性が低下し、20質量%を超えると、液安定性が悪くなる。
【0022】
−短鎖グリコールエーテル(E成分)−
前記短鎖グリコールエーテルは、短鎖アルキル(アルケニル)−一価アルコールのアルキレンオキシド付加体であり、下記式1で表される短鎖グリコールエーテル(以下、「短鎖グリコールエーテル」という)である。前記短鎖グリコールエーテルは、各成分を可溶化させる。
【0023】
【化3】

式1において、Rは、炭素数4〜8の炭化水素、AOは、オキシエチレン、オキシプロピレン、及びこれらの混合物のいずれか、nは、1〜4の整数を示す。
【0024】
前記短鎖グリコールエーテルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールn−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn−ヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、エチレングリコールn−2−エチル−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn−2−エチル−ヘキシルエーテル(2−エチル−ヘキシルジグリコール)が挙げられる。
中でも、液安定性の効果が大きいヘキシルジグリコール、2−エチル−ヘキシルジグリコールが好ましい。
前記ヘキシルジグリコールと、前記2−エチル−ヘキシルジグリコールとの具体的な商品としては、日本乳化剤製のものを用いることができる。
【0025】
前記短鎖グリコールエーテル(E成分)の前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における含有量としては、10質量%〜30質量%である。
前記含有量が10質量%に満たないと、液安定性が低下し、30質量%を超えると、他の成分が減量し、洗浄性の低下に繋がるおそれがある。
【0026】
−水(F成分)−
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製水(蒸留水、イオン交換水)を用いることができる。
中でも、安価に入手することができるイオン交換水を好ましく用いることができる。
【0027】
前記水(F成分)の前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における含有量としては、10質量%〜30質量%であり、10質量%〜20質量%が好ましい。
前記含有量が、10質量%に満たないと、危険物となるおそれがあり、30質量%を超えると、他の成分が減量し、洗浄性が低下するおそれがある。
【0028】
−その他の成分−
前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、他の成分を配合することができる。
前記他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、ハイドロトロープ、防腐剤、及び防錆剤などを挙げることができる。これらのpH調整剤、防腐剤、防錆剤は、液安定性を損なわない程度に配合することができる。
【0029】
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸DEA(ジエタノールアミン)塩を用いることができる。
前記ハイドロトロープは、洗浄剤組成物の粘性をコントロールする作用を有する。
前記ハイドロトロープとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールを用いることができる。
【0030】
前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物の使用にあたっては、前記組成からなる原液を用いるのが好ましいが、液安定性を損なわない程度に水で希釈して用いることができる。
前記希釈に使用する水としては、イオン交換水、蒸留水などを使用することができる。
【0031】
(液晶パネル用水系洗浄剤組成物の洗浄方法)
前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物を用いた液晶パネルの洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬洗浄、噴流洗浄、超音波洗浄などが挙げられる。
また、前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物は、液晶パネル製造工程において、液晶セルに液晶材料を注入した際に、空隙部に侵入した液晶残渣を洗浄するのに好適に用いることができる。
特に、2枚の対向するガラス板で形成されるギャップ幅が狭小(例えば、3μm)であるSTN液晶パネルの洗浄に好適に用いることができる。
本発明の液晶パネル用水系洗浄剤組成物では、汚れ(余分な液晶材料)への浸透力が向上したことにより、ギャップ幅が狭小(例えば、3μm)であるSTN液晶パネルに対する洗浄性が向上したものと推測される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明の思想は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(製造方法)
下記表1に示す各成分を、下記表2に示す組成に従って添加し、実施例1〜5、及び比較例1〜7に係る液晶パネル用水系洗浄剤組成物を調製した(全量100質量%)。
下記表2中の配合量は純分換算量を示す。また、B成分の下記表1におけるリカサーフG−600は、主成分としてのジオクチルスルホコハク酸アンモニウム塩と、プロピレングリコールと、水との混合物であり、該混合物中の各含有量は、60質量%、25質量%、15質量%とした。
なお、下記表1におけるB成分は、前記リカサーフG−600の主成分であるジオクチルスルホコハク酸アンモニウム塩を示している。また、下記表2において、B成分の含有量は、液晶パネル水系洗浄剤組成物におけるジオクチルスルホコハク酸アンモニウム塩の含有量を示し、F成分には、前記リカサーフG−600中の水を含み、その他の成分(G)には、前記リカサーフG−600中のプロピレングリコール乃至別添のプロピレングリコールを含んでいる。
また、各成分の配合順序は任意でよいが、水以外の成分を少量ずつ添加しながら均一透明液体組成物となるように攪拌を伴って調製することが好ましい。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
<評価方法>
前記実施例1〜5及び前記比較例1〜7について、下記(1)〜(3)の評価を行った。それぞれの結果は、上掲の表2に示す通りである。
【0037】
(1)液安定性:所定量配合後、0℃〜40℃の範囲で配合を行い、一度、均一透明な液とした後に、冬場を想定して低温(5℃)で1週間保管し、液状態を確認する。
評価:◎及び○が合格範囲である
◎;均一透明を維持
○;微濁で均一の液体を維持
△;白濁して一部分離する
×;二層分離する
【0038】
(2)洗浄性:薄型液晶パネル(ギャップ幅:3μm)を用意し、STN系液晶をギャップ内に充填し、試験パネルとする。
これら試験パネルを45℃に加温した各洗浄剤組成物に3分間浸漬し、洗浄を行う。
次いで45℃に加温した水に10分間浸漬し、リンスを行う。
リンスを行った試験パネルを100℃の乾燥機で10分間乾燥し、空隙部の液晶残りをシステム金属顕微鏡(ケイエスオリンパス社製(型番:BX60−33MUSP))で確認する。
評価: ◎及び○が合格範囲である
◎;液晶汚れが完全に除去できる (液晶汚れの洗浄率100%)
○;液晶汚れがほぼ除去できる (液晶汚れの洗浄率90%以上)
△;液晶汚れの残り少し見られる (液晶汚れの洗浄率50〜90%)
×;液晶汚れの残りが多く見られる (液晶汚れの洗浄率50%未満)
【0039】
(3)エマルションタイプの判定
O/WエマルションとW/Oエマルションの判別について、次のように同定した。
O/Wエマルション:10ccの純水中に液晶パネル用水系洗浄剤組成物をスポイトで1滴滴下したときに、均一透明のまま可溶化する。
W/Oエマルション:10ccの純水中に液晶パネル用水系洗浄剤組成物をスポイトで1滴滴下したときに、洗浄剤が転相して白濁分離する。
なお、表2中の*印に関し、「−」の記号は、エマルションを形成しなかったことを示す。
【0040】
<評価>
実施例1〜5では、すべてO/Wエマルションを形成し、また、液安定性がすべて◎であり、洗浄性もギャップ幅3μm及び5μmとで、すべて○以上であり、比較例1〜7よりも良好な結果を示している。
特に、実施例1と、実施例1のC−1成分(直鎖ABS−DEA塩)を、C−3成分(比較品:アルキル硫酸トリエタノールアミン塩(AS−TEA))に代えた比較例1とを比較すると、実施例1の方が液安定性と洗浄性(ギャップ幅3μm及び5μm)のそれぞれについて良好な結果が得られている。
また、B成分を用いない比較例2では、O/Wエマルションを形成せず、液安定性と洗浄性(ギャップ幅3μm及び5μm)について、実施例1〜5よりも、劣った結果となっている。
また、C成分を用いない比較例3では、液安定性とギャップ幅3μmの洗浄性について、実施例1〜5よりも、劣った結果となっている。
また、D成分を用いない比較例4では、洗浄性(ギャップ幅3μm及び5μm)について、実施例1〜5よりも、劣った結果となっている。
また、実施例1と、実施例1のE−1成分(2−エチルヘキシルジグリコール)及びE−2成分(ヘキシルジグリコール)を、E−3成分(比較品:2−エチルへキシルオクタグリコール)に代えた比較例5を比較すると、実施例1の方が液安定性と洗浄性(ギャップ幅3μm及び5μm)のそれぞれについて良好な結果が得られている。また、E成分を用いない比較例6では、O/Wエマルションを形成せず、液安定性と洗浄性(ギャップ幅3μm及び5μm)について、実施例1〜5よりも、劣った結果となっている。
また、本発明のA成分の含有量の範囲から外れた組成比からなり、また、D成分を用いない比較例7では、実施例1、3〜5に比べて、洗浄性(ギャップ幅3μm及び5μm)が劣っており、実施例2に比べて、ギャップ幅3μmの洗浄性について劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、O/Wエマルションからなり、洗浄性が高く、液安定性にも優れるので、ギャップ幅が狭い(例えば、3μmの)液晶パネルを洗浄する液晶パネル用水系洗浄剤組成物として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、洗浄剤組成物を用いて液晶パネルを洗浄する状態を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1 液晶パネル
2A、2B ガラス板
3A 空隙部
3B 中空部
3C 外側部
4 シール部
5 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-オレフィン系炭化水素(A成分)と、ジアルキルスルホコハク酸塩(B成分)と、直鎖型及び分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩から選択される少なくとも1種のアニオン界面活性剤(C成分)と、ジメチルスルホキシド(D成分)と、下記式1で表される短鎖グリコールエーテル(E成分)と、水(F成分)とを含む液晶パネル用水系洗浄剤組成物であって、
前記液晶パネル用水系洗浄剤組成物における、前記A成分が20質量%〜40質量%であり、前記B成分が10質量%〜30質量%であり、前記C成分が1質量%〜5質量%であり、前記D成分が5質量%〜20質量%であり、前記E成分が10質量%〜30質量%であり、前記F成分が10質量%〜30質量%であることを特徴とする液晶パネル用水系洗浄剤組成物。
【化1】

(式1において、Rは、炭素数4〜8の炭化水素、AOは、オキシエチレン、オキシプロピレン、及びこれらの混合物のいずれか、nは、1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
ギャップ幅が3μmであるSTN液晶パネルの洗浄に用いられる請求項1に記載の液晶パネル用水系洗浄剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−59328(P2010−59328A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227543(P2008−227543)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】