説明

液晶モジュールのフォトセンサ回路及び光電流の測定方法

【課題】薄膜トランジスタの照度を測定するためのフォトセンサを利用する場合に、長期間に渡る経時変化を1%以下に抑え、小型高精度かつフォトセンサの出力の調整が出来るフォトセンサ回路及び液晶モジュールを提供する。
【解決手段】フォトセンサ1のソース電極に交流電圧を印加して、ソース電極からドレイン電極に向かって流れる電荷と、薄膜トランジスタのドレイン電極からソース電極に向かって流れる電荷が、ほぼ等しくなるように駆動するようにした。また、それに伴い薄膜トランジスタが有する光感度及び光応答性の個体差の修正をする機構を加えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器などに用いられる液晶ディスプレイの輝度を調節するための光応答性を有する薄膜トランジスタを光検出素子として利用するフォトセンサに係るフォトセンサ回路及び前記回路を有する液晶モジュールに関するものである。さらに詳細には、薄膜トラジスタの経時変化を長期間に渡って抑えるフォトセンサに関したものである。一般に、薄膜トランジスタは、半導体材料としてa−Si(アモルファスシリコン)やpoly−Si(多結晶シリコン)が用いられ、ゲート絶縁膜としてプラズマCVD成膜のSiNやSiO2が用いられる。この薄膜トランジスタは、ゲート電極にバイアスストレスが印加された状態で長期間駆動することで、ゲート絶縁膜、あるいはゲート絶縁膜と半導体膜の界面へのキャリアの注入が生じ、Vth(閾値電圧)のシフトが生じることが知られており、これが経時変化を引き起こす。他にも、前記薄膜トランジスタには光感度及び光応答性の個体差を有していることが知られている。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の経時変化を抑制する技術としては、特開2004−147102にある、薄膜トランジスタのゲート電極に電圧を印加して、薄膜トランジスタをオン状態あるいはオフ状態に駆動する駆動手段を備え、任意の期間、ゲート電極に対して、薄膜トランジスタをオフ状態にする電圧の平均の極性とは逆極性の電圧を印加することにより、短時間(10数分)内での経時変化を10%以内に抑えられるとしている。
【特許文献1】特開2004−147102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような技術ではゲート電極に印加されるバイアスストレスを抑制することは出来ても、バイアスストレス自体を解消することは出来ない。つまり、数ヶ月以上に渡る長期間の経時変化には対応できない。したがってトランジスタ、主に薄膜トランジスタを用いて照度を測定するフォトセンサのような高精度の品質と長期間の安定した性能を求められる場合、精度が低いのと長期利用に適さないという課題がある。
【0004】
本発明は、上記課題であるゲート電圧に印加されるバイアスストレスを抑制するのではなく、解消するものである。本発明を利用することによりトランジスタ、主に薄膜トランジスタを用いて照度を測定するフォトセンサのように高精度を求められる場合において、長期間に渡る経時変化を1%以下に抑え、光感度及び光応答性の個体差を調整できる小型高精度のフォトセンサ回路及び液晶モジュールを提供することが可能となる。また、それに伴い薄膜トランジスタが有する光感度及び光応答性の個体差の修正をする機構を加えることで、より良いフォトセンサ回路及び液晶モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を講じた。
(1)光検出素子として利用する薄膜トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間と、前記薄膜トランジスタの一方の電極の電位が他方の電極より低電位の期間とを、周期的に切り替える駆動回路を備えた。
【0006】
(2)前記駆動回路は前記薄膜トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間に一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流と、他方の電極の電位が一方の電極の電位より低電位の期間に他方の電極から一方の電極に向かって流れる電流が、ほぼ等しくなるように駆動するようにした。以後この駆動を交流駆動と呼ぶ。
【0007】
(3)前記交流駆動は前記薄膜トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間と、前記薄膜トランジスタの他方の電極が一方の電極の電位より低電位の期間とを、ほぼ同じ長さになるように駆動するようにした。以後この駆動を50%デュティー駆動と呼ぶ。
【0008】
(4)前記交流駆動の周期は、0.1Hzから100Hzの周期で駆動するようにした。
【0009】
(5)前記薄膜トランジスタの出力電流をI/V変換するオペアンプを備える。そして前記I/V変換された信号をA/D変換できるよう、前記オペアンプの他方の入力にリファレンス電圧を入力した。
【0010】
(6)
前記A/D変換器は、前記I/V変換された電圧波形が立ち上がった後にA/D変換し、ソース電極とドレイン電極に流れる電流値の絶対値和を検出値とするようにした。
【0011】
(7)前記薄膜トランジスタのゲート電位を調整するD/A変換器を備え、前記D/A変換器は前記薄膜トランジスタの光感度および光応答性の個体差を調整する電位を出力するようにした。
【0012】
また、本発明において実施したフォトセンサは薄膜トランジスタであったが、薄膜でない通常のトランジスタでも良いことはいうまでもない。
【発明の効果】
【0013】
上記フォトセンサ回路によれば、薄膜トランジスタに流れる入射する光の量(照度)に応じた電流である光電流を交流駆動し、ゲート電極にかかる相対電位が変化する。するとゲート電極に印加されたバイアスストレスが解消され、ゲート絶縁膜やゲート絶縁膜と半導体膜の界面へのキャリアの注入により発生するVth(閾値電圧)のシフトの影響を抑えられる。それにより長期間に渡る経時変化を1%以下に抑え、薄膜トランジスタの光感度及び光応答性の個体差が修正可能な小型高精度のフォトセンサ回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るフォトセンサ回路の構成及び液晶モジュールを示すブロック図である。ここで、本実施例の説明を兼ねて図1の構成を説明する。図1(a)において、液晶モジュール31は、フォトセンサ1とフォトセンサ回路30、バックライト21に液晶ディスプレイ2を具備する。図1(a)の構成は一例であり、前記フォトセンサ回路30に液晶駆動制御を行なわせず、別途液晶駆動用回路などを備えても良い。 図1(b)において、外部の光はフォトセンサ1により入力される。前記フォトセンサはゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を有しており、そのうちソース電極とドレイン電極はフォトセンサ電極22とフォトセンサ電極23に相当する。ただし、ソース電極とドレイン電極という呼び名は、二つの電極の電位差により決定されるものであるため、フォトセンサ電極22およびフォトセンサ電極23はソース電極、ドレイン電極のどちらにもなり得る。前記フォトセンサ1を駆動するため、前記フォトセンサ1のフォトセンサ電極22が交流駆動波形回路3に接続されている。前記交流駆動波形回路3はCPU6により制御されている。前記フォトセンサ1のゲート電極はD/Aコンバータ5に接続されており、前記D/Aコンバータ5はCPU6により所定の範囲内の電位に制御され、前記CPU6から出るデジタル信号が前記D/Aコンバータ5によりアナログ電位となり、前記アナログ電位が前記フォトセンサ1のゲート電位に印加される。前記フォトセンサ1のフォトセンサ電極23はオペアンプ8の−端子に接続されており、前記フォトセンサ1より出力された電流信号を前記オペアンプ8へと伝える。前記オペアンプ8の−端子と前記オペアンプ8の出力端子にはコンデンサ9と固定抵抗10が並列に接続されており、これにより前記フォトセンサ1より出力された電流信号を電圧信号へと変換する。前記オペアンプ8の+端子には定電圧電源Vref7が接続され、前記フォトセンサ1のフォトセンサ電極23が前記定電圧電源Vref7の定電圧になるようにされている。前記コンデンサ9、前記固定抵抗10、前記オペアンプ8をまとめて電流電圧変換回路32と呼ぶ。前記オペアンプ8から出力された電圧信号はA/Dコンバータ4によりデジタル信号へと変化する。変化した前記デジタル信号はCPU6へと接続され、前期CPU6において入力信号を演算し、照度を算出する。演算により得られた照度からバックライトの発光信号を出力し、D/Aコンバータ33によりアナログ信号へ変換される。また、前記回路構成でフォトセンサ1を除いた構成をフォトセンサ回路30と呼ぶ。図1(b)のフォトセンサ回路30に具備されるCPU6は前記D/Aコンバータ33を経由し液晶モジュール31上に構成されるバックライト21に接続され、前記アナログ信号がバックライト31へ伝わりバックライト21を駆動させる。バックライト31を駆動させることにより、液晶モジュール31上のバックライト21の上面に層状に形成されている液晶ディスプレイ2の輝度を調節する。
【0016】
現在この種の携帯機器に採用される表示素子やフォトセンサ回路、液晶モジュールは薄膜トランジスタ(TFT)で構成された物が多い。それらはパネルの一角に光応答性を有するTFTを構成し、これをフォトセンサ1としている。
【0017】
フォトセンサ1には、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23の電位より高電位の期間と、フォトセンサ電極22の電極がフォトセンサ電極23の電位よりも低電位の期間とを、ほぼ同じ長さの矩形波が交流駆動波形回路3から印加されている。前記矩形波はフォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23の電位より高電位の期間にフォトセンサ電極22からフォトセンサ電極23に向かって流れる電荷と、前記フォトセンサ電極22の電極がフォトセンサ電極23の電位よりも低電位の期間にフォトセンサ電極23からフォトセンサ電極22に向かって流れる電荷が、ほぼ等しくなるように調整された波形をCPU6が制御して出力する。このフォトセンサ1のフォトセンサ電極22とフォトセンサ電極23に流れる電流が交流駆動になると、一方の電流がフォトセンサ1に流れゲート電極にバイアスストレスが印加されても、次に逆方向の電流が流れるため、ゲート電極に印加されるバイアスストレスが逆の方向に働く。それによりバイアスストレスが相殺され、バイアスストレスがより蓄積されにくくなる。その結果、ゲート絶縁膜、あるいは半導体膜の界面へのキャリア注入により発生する悪影響をキャンセルすることができ、長期間に渡る経時変化を1%以下に抑えられる。
【0018】
また、交流駆動波形回路3により電位が入力されているフォトセンサ1のフォトセンサ電極22とフォトセンサ電極23において、フォトセンサ電極22からフォトセンサ電極23へ流れる時の電荷と、フォトセンサ電極23からフォトセンサ電極23へ流れる時の電荷がほぼ等しくなるように交流駆動波形回路の出力電圧を調整することで、ゲート電極に印加されるバイアスストレスをより解消することが出来る。
【0019】
さらに、CPU6から前記交流駆動波形回路3へ出力する際に、フォトセンサ電極22の電位よりもフォトセンサ電極23の電位のほうが高い状態における交流駆動波形回路3の出力電位の期間とフォトセンサ電極22の電極よりもフォトセンサ電極23の電位のほうが低い状態における交流駆動波形回路3の出力電位の期間がほぼ等しくなるように設定することでもゲート電極に印加されるバイアスストレスを解消することが見込まれる。また、フォトセンサ1に流れる双方向の電荷の量と期間が共に等しい状態がもっとも良い状態となるが、必ずしも等しく設定する必要性はない。
【0020】
フォトセンサ1は入射する光の量(照度)に応じた交流の光電流を出力し、オペアンプ8でI/V変換される。オペアンプ8は後述するA/D変換器で処理できるよう交流信号をオフセット出力するためのリファレンス電圧7を備える。このリファレンス電圧7の値は交流信号の電位変化の範囲である、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23の電位よりも高電位の期間に印加される電位と、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23の電位よりも低電位の期間に印加される電位との間に収まるような値をとる。オペアンプ8の増幅率は固定抵抗10で規定される。コンデンサ9は液晶ディスプレイ2から放射されるノイズ除去用に付けられており、出力波形の立ち上がりが十分飽和するよう交流駆動周波数との兼ね合いで容量が決定される。
【0021】
前記交流駆動の周波数は前記表示素子の交流化反転周波数および前記A/D変換器4の変換速度との兼ね合いから0.1Hzから100Hzの周波数が最適である。
【0022】
一般に薄膜トランジスタをフォトセンサとして使用する場合、光感度および光応答性の個体差が存在し、本発明では前記フォトセンサ1のゲート電極の電位をD/A変換器5の出力により調整するようにした。この調整は量産時に前記測定値をモニタしCPU6に調整した値を格納することにより行う。
【実施例】
【0023】
図2を元に実際の動作についての説明を行なう。図2は本発明のフォトセンサ1、オペアンプ8およびリファレンス電圧7の電位関係を示す回路図と各タイミングでのフォトセンサへ流れる電流の方向を示しており、実際の動作を説明するための一例である。
【0024】
まず、リファレンス電圧7を1.5Vに設定する。するとオペアンプ8はフォトセンサ電極23の電位を同じに保持するよう動作するためフォトセンサ電極23の電位も1.5Vに保たれる。ゲート電極の電位はフォトセンサの個体差を調整する電位でここでは−2Vに設定したが、一定の電位であれば他の電位を設定しても構わない。フォトンサにはゲート電極以外に、フォトセンサ電極22とフォトセンサ電極23がある。本発明でのフォトセンサ1に具備するソース電極とドレイン電極の端子は加える電位によって変化する。ソース電極とドレイン電極は電流が流れ込むか流れ出すかにより決定され、フォトセンサ1が具備するフォトセンサ電極22とフォトセンサ電極23はソース電極、ドレイン電極のどちらにもなり得る。図2(b)において、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より高い電位18の時点では電流はフォトセンサ電極22からフォトセンサ電極23の方向へ流れる。このとき、ドレイン電極はフォトセンサ電極23に相当し、ゲート電極対ドレイン電極の電位差はゲート電極の電位−2Vからフォトセンサ電極23の電位1.5Vを引いた値、つまり−3.5Vとなる。一方フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より低い電位19の時点では電流はフォトセンサ電極23からフォトセンサ電極22の方向へ流れる。薄膜トランジスタのドレイン電極とソース電極の関係が逆転し、ドレイン電極はフォトセンサ電極22となる。すると、ゲート電極対ドレイン電極の電位差はゲート電極の電位−2Vからフォトセンサ電極22の電位0.5Vを引いた値、つまり−2.5Vとなる。電流の流れが反転することにより、ゲート電極は一定方向からの印加だけでなく、異なる電極から電荷を交互に印加されることになり、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より高い電位18でゲート電極にバイアスストレスが印加されても、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より低い電位19の状態においてはゲート電極に印加されるバイアスストレスは逆方向に働く。そのため、上述の一連の動作を行なうことでゲート電極に印加されるバイアスストレスは相殺され解消される。これらの過程を得ることで課題であった長期間に渡る経時変化を1%以下に抑えることが可能となる。
【0025】
図3は本発明の信号処理の流れを示すフローチャート11とソース駆動波形12およびオペアンプ出力波形13のタイミングを示す物である。フローチャートに従い処理手順を以下に説明する。
【0026】
まず、フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23の電位よりも高電位の期間の光電流を測定する。交流駆動波形回路3から高電位の出力がフォトセンサ1のフォトセンサ電極22へ入力され、フォトセンサ電極22の駆動波形12が立ち上がりトリガ待ちとなった状態14となる。その後、時間経過と共にフォトセンサ1より出力された電流であるオペアンプの出力波形13は減少していく。所定の計算により算出されたWAIT時間15のタイミングでA/Dサンプリングを行い出力1に格納する。
【0027】
同様にフォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23の電位よりも低電位の期間の光電流を測定する。交流駆動波形回路3から低電位の出力がフォトセンサ1のフォトセンサ電極22へ入力され、フォトセンサ電極22の駆動波形12が立ち下がりトリガ待ちとなった状態16となる。その後、時間経過と共にフォトセンサ1より出力された電流であるオペアンプの出力波形13は減少していく。所定の計算により算出されたWAIT時間17のタイミングでA/Dサンプリングを行い出力2に格納する。なお、オペアンプ8を経由することによりフォトセンサ1より出力された光電流はI/V変換され、電流から電圧へと変化されている。リファレンス電圧7の電位から出力1を引いた値と、出力2からリファレンス電圧の電位を引いた値を絶対値合計することによりフォトセンサに入射する照度に対応した測定値が得られる。
【0028】
前述のWAIT時間15とWAIT時間17を決定する方法について説明を加える。固定抵抗10の抵抗Rとコンデンサ9による容量Cを掛け合わせると時定数τが求まる(τ=C×R)。固定抵抗10とコンデンサ9はそれぞれ、前記オペアンプ8の増幅率とノイズの抑制をする働きをする。その固定抵抗10とコンデンサ9の兼ね合いから時定数は光電流の飽和量の約63.5%の時間に相当することが計算により算出できることが知られている。光電流の飽和量が95%になるときに測定する場合、前述の時定数τに1.5を掛け合わせた時間をWAIT時間に設定すればよいことになる。実施例ではWAIT時間は光電流の飽和量の95%に設定したが、ある程度光電流の入力がある状態であれば良いことはいうまでもない。つまり、設定するWAIT時間は光電流が十分に飽和した状態の範囲であれば良い。時定数τが1.4倍以上の範囲(光電流の飽和量の約90%に相当する)であるのが望ましい。ただし、時定数がフォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より高い電位の期間またはフォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より低い電位の期間を超えてしまうと、光電流の飽和が終了してしまい次の期間が開始してしまう。そのため、WAIT時間は前記期間を超えない範囲に設定する必要がある。
【0029】
以上より、WAIT時間は時定数τが1.4倍以上であり、なおかつフォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より高い電位の期間またはフォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より低い電位の期間に収まる範囲に設定することが望まれる。
【0030】
この一連の動作であるフローチャート11を1回行なう毎にバックライト21の輝度の調節に反映させる。1回ごとに行なわなくても、フローチャート11を複数回行い照度の平均をとり、バックライト21の輝度の変化を一定間隔で行うようにしても良い。
【0031】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、フォトセンサを交流駆動しても入射する照度に応じた出力値を得ることができ、長期間駆動させてもゲート電極に一定のバイアスストレスが蓄積されにくくなる。それにより、ゲート絶縁膜あるいはゲート絶縁膜と半導体膜の界面へのキャリアの注入により発生する悪影響をキャンセルでき、長期間に渡る経時変化を1%以下に抑えることが可能となる。また、ゲート電極自体を調整する機構をつけることで入力照度を調整することが出来る。つまり、薄膜トランジスタを高精度の照度を測定し、長期間の使用にも耐えられるフォトセンサ回路及び液晶モジュールとして使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォトセンサ回路及び液晶モジュールの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のフォトセンサ1、オペアンプ8およびリファレンス電圧7の電位関係を示す回路図と各タイミングでのフォトセンサへ流れる電流の方向を示す図である。
【図3】本発明の信号処理の流れを示すフローチャート11とソース駆動波形12およびオペアンプ出力波形13のタイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フォトセンサ
2 液晶ディスプレイ
3 交流駆動波形回路
4 A/Dコンバータ
5 D/Aコンバータ
6 CPU
7 リファレンス電圧
8 オペアンプ
9 コンデンサ
10 固定抵抗
11 フローチャート
12 フォトセンサ電極22の駆動波形
13 オペアンプ出力波形
14 ソース駆動波形立ち上がりトリガ
15 WAIT時間
16 ソース駆動波形立ち下がりトリガ
17 WAIT時間
18 フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より高い電位
19 フォトセンサ電極22の電位がフォトセンサ電極23より低い電位
21 バックライト
30 フォトセンサ回路
31 液晶モジュール
32 電流電圧変換回路
33 D/Aコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光応答性を有するトランジスタを光検出素子として利用するフォトセンサ回路において、
前記フォトセンサ回路は前記トランジスタのソース電極、ドレイン電極及びゲート電極に所定の電圧を印加して、前記トランジスタを駆動する駆動回路を備え、
前記駆動回路は前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間と、前記トランジスタの一方の電極の電位が他方の電極より低電位の期間とを、周期的に切り替えることを特徴とするフォトセンサ回路。
【請求項2】
前記駆動回路は前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間に一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流と、他方の電極の電位が一方の電極の電位より低電位の期間に他方の電極から一方の電極に向かって流れる電流が、ほぼ等しくなるように駆動することを特徴とする請求項1記載のフォトセンサ回路。
【請求項3】
前記駆動回路は前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間と、前記トランジスタの他方の電極が一方の電極の電位より低電位の期間とを、ほぼ同じ長さになるように駆動することを特徴とする請求項1、または2記載のフォトセンサ回路。
【請求項4】
前記駆動回路の前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の期間と、前記トランジスタの他方の電極が一方の電極の電位より低電位の期間とを切り替える周期は、0.1Hzから100Hzであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフォトセンサ回路。
【請求項5】
前記トランジスタの出力電流をI/V変換するオペアンプをさらに備え、
前記オペアンプは、前記I/V変換された電圧をA/D変換できるようオフセット出力するためのリファレンス電圧入力を備え、前記リファレンス電圧入力の値は前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位の電圧と、前記トランジスタの他方の電極が一方の電極の電位より低電位の電圧の範囲に収まることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフォトセンサ回路。
【請求項6】
前記オペアンプの出力に接続されたA/D変換器をさらに備え、前記A/D変換器は前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位となる立ち上がり時から又は、前記トランジスタの他方の電極が一方の電極の電位より低電位となる立下り時から、それぞれ前記オペアンプの増幅率を決める抵抗Rとノイズを抑制するためのコンデンサCにより算出される時定数τの1.4倍以上であるタイミングでA/D変換し、前記トランジスタ両端の電極に流れる電流値の絶対値和を検出値とする請求項5記載のフォトセンサ回路。
【請求項7】
前記トランジスタのゲート電位を調整するD/A変換器を備え、
前記D/A変換器は前記トランジスタの光感度および光応答性の個体差を調整する電位を出力する請求項1ないし6のいずれかに記載のフォトセンサ回路。
【請求項8】
光応答性を有するトランジスタを光検出素子として利用するフォトセンサより得られる光電流を測定する方法において、前記トランジスタのソース電極、ドレイン電極及びゲート電極に所定の電圧を印加して、駆動回路により駆動させ、前記トランジスタが有するソース電極またはドレイン電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極の電位より高電位となる立ち上がり時から又は、前記トランジスタの他方の電極が一方の電極の電位より低電位となる立下り時から、それぞれ前記オペアンプの増幅率を決める抵抗Rとノイズを抑制するためのコンデンサCにより算出される時定数τの1.4倍以上であるタイミングでA/D変換し、前記のタイミングにおいて前記トランジスタ両端の電極に流れる電流値の絶対値和を検出値とする光電流の測定方法。
【請求項9】
液晶ディスプレイと、バックライトを備えた液晶モジュールにおいて、バックライトの輝度を調節する請求項1ないし7のいずれかに記載のフォトセンサ回路を有することを特徴とする液晶モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−114389(P2010−114389A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288087(P2008−288087)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】