説明

液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源

【課題】本発明は、打ち抜き加工時のバリ発生や埃の付着防止、枚葉にしたときの取り扱い性、オリゴマー析出防止性などに優れた液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源を提供するものである。
【解決手段】本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源は、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体を含む帯電防止層を有し、かつ該帯電防止層表面の表面比抵抗が1×1013Ω/□以下であり、さらに表面における波長560nmの光の反射率が95%以上、全光線透過率が10%以下、180℃において30分間加熱処理した後の帯電防止層側表面におけるオリゴマー量が3.0mg/m以下であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表される2軸配向ポリエステルフィルムは、良好な機械強度、熱的特性、湿度特性およびその他多くの優れた特性から、工業材料、磁気記録材料および包装材料など広い分野において使用されている。
【0003】
ノートパソコンやカーナビおよびテレビなどの表示装置として、液晶を利用したディスプレイが広く普及し始めているが、これらの反射板として白色ポリエステルフィルムが一般に用いられている。これら液晶ディスプレイは、それ自体は発光しないため裏側にバックライトユニットと呼称される面光源を設置して、それから液晶画面側に光照射することによりディスプレイの機能を発現している。バックライトユニットからの光照射方法としては、光源である冷陰極管をディスプレイの真下に配置する直下型、また冷陰極管をディスプレイの横に配置して導光板と呼称される板のエッジから光を均一に照射するサイドライト型という方法が広く用いられている。反射板とは、これらの光を効率的に利用するために、直下型やサイドライト型のバックライトユニットの最背面に設置されるシート部材であり、背面側に漏れてきた光を液晶画面側に反射し、液晶画面の輝度をより向上させる機能が付与されている。
【0004】
近年は反射板に対する機能的要求も高まってきており、例えばより高級感を与える目的で白色度を高め、また同時に反射率を高めるために無機粒子顔料と非相溶樹脂を併用添加した白色ポリエステルフィルム(特許文献1および2参照)、薄膜化と高反射率を同時に達成した白色ポリエステルフィルム(特許文献3参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、最近は、反射率や白色度などの光学特性のみならず、加工効率の向上や取り扱い性の面での改良も求められている。例えば、ロール状製品をディスプレイの大きさに合わせて打ち抜き加工をする時に、反射板が静電気を帯びるとバリが発生したり、また埃が付着するなどし、トラブルの原因となる。また打ち抜きにより枚葉状になった反射板を重ねて保管する時などに静電気を帯びていると、搬送時などの取り扱い性が低下する。さらにディスプレイとして使用する際には熱が発生するため、長期使用するとフィルム表面からPETオリゴマーが析出し、輝度の低下や故障の原因となる懸念がある。
【特許文献1】特開平4−153232号公報
【特許文献2】特開平6−322153号公報
【特許文献3】特開2004−330727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況に鑑み、本発明は、このような欠点を一挙に改良し、打ち抜き加工時のバリ発生や埃の付着防止、枚葉にしたときの取り扱い性、オリゴマー析出防止性などに優れた液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源は下記の構成からなるものである。すなわち、本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源は、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体を含む帯電防止層を有し、かつ該帯電防止層表面の表面比抵抗が1×1013Ω/□以下であり、さらに表面における波長560nmの光の反射率が95%以上、全光線透過率が10%以下、180℃において30分間加熱処理した後の帯電防止層側表面におけるオリゴマー量が3.0mg/m以下である液晶反射板用白色ポリエステルフィルムである。
【0008】
そして、本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源は、次の好ましい態様を有するものである。
【0009】
(a)前記の帯電防止層が、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体を含み、かつ該帯電防止層表面の表面比抵抗が1×1010Ω/□以下であること
(b)前記の帯電防止層が、少なくとも一方向に延伸された塗膜層であること
(c)前記のポリエステルフィルム中に該ポリエステルとは非相溶な熱可塑性樹脂を含有し、かつ、内部に微細な気泡を含有すること
(d)見かけ密度が、0.9g/cm〜0.6g/cmであること
(e)前記のポリエステルフィルムを構成するポリエステルの重合触媒として、チタン系化合物が使用されてなること
(f)前記のポリエステルフィルムが同時2軸延伸フィルムであること
(g)前記の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムを用いてなる面光源であること
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打ち抜き加工時のバリ発生や埃の付着防止、枚葉にしたときの取り扱い性、オリゴマー析出防止性などに優れた液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源についてさらに詳細に説明する。本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムの基材であるポリエステルフィルムは、基本的にポリエステルで構成される。
【0012】
本発明で用いられるポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物であり、ジカルボン酸とジオールの重縮合によって得ることができる。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸等の多官能酸等を挙げることができる。一方、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびトリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSなどの芳香族グリコール、ジエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。
【0013】
ポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、有機および無機の粒子、顔料、染料、充填剤、蛍光増白剤、帯電防止剤および核剤などが、本発明の効果を損なわない範囲で添加されていてもよい。
【0014】
また、ポリエステルの重合触媒として、チタン系触媒を用いると、凝集物が少なくなりより好ましい様態である。チタン系重合触媒の種類としては、例えば、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシド、主たる金属元素がチタンおよびケイ素からなる複合酸化物やチタン錯体などを、得られたポリエステルに対してチタン原子換算で0.0005〜0.15重量%用いることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが耐水性、耐久性、耐薬品性等の点で優れているため好ましい。
【0016】
本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムの総厚みは、本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるため特に限定されないが、高反射性、ハンドリング性および生産性などの点から、好ましくは30〜500μmであり、最も好ましくは75〜300μmである。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムは、反射性を付与するために白色である必要がある。白色とするためには、無機粒子、有機微粒子などをポリエステル中に添加することが好ましい。上記の成分は単独でも2種以上を併用しても良い。このうち無機微粒子としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、二酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、雲母チタン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、カオリンなどを用いることができる。これらの中で400〜700nmの可視光域において吸収の少ない炭酸カルシウム、硫酸バリウム(沈降性硫酸バリウム)を用いることが特に好ましい。 可視光域で吸収があると反射率が低下するなどの問題が発生することがある。有機微粒子の場合には、溶融押出によって溶融しないものが好ましく、架橋スチレン、架橋アクリルなどの架橋微粒子が特に好ましい。上記の微粒子は単独でも2種以上を併用しても良い。
【0018】
さらに白色度を高め、高反射性を付与するためには、ポリエステルと非相溶な熱可塑性樹脂をポリエステル中に添加することが最も好ましい。ポリエステルとは非相溶の樹脂を含有することによりフィルム中に微細な気泡が多数発生し、この気泡によって光が散乱して白色化される。これにより高い反射性を付与することができる。この微細な気泡を形成させるためには、フィルム母体であるポリエステル中に高融点の非相溶樹脂を細かく分散させ、それを延伸することによって達成される。延伸に際して、非相溶樹脂周りに気泡が形成され、これが光に散乱作用を発揮するため、白色化され、高反射率を得ることが可能となる。該非相溶樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂などが好適に用いられる。これらは単独重合体であっても共重合体であってもよく、2種以上を併用してもよい。特にポリエステルとの臨界表面張力差が大きく、延伸後の熱処理によって変形しにくい樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、中でもポリメチルペンテンが特に好ましい。
【0019】
該非相溶樹脂の添加量としては、母体であるポリエステルに対して5重量%以上30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上25重量%以下である。これより少ないと白色化の効果が薄れ、高反射性が得られなくなり好ましくない。また、これより多いと、フィルム自体の強度等機械特性が低くなり、好ましくない。
【0020】
該非相溶樹脂はその分散状態が均一であるほど好ましい。均一に分散されることにより、フィルム内部に均一に気泡が形成され、白色化の度合いが増し、ひいては反射率が均一になる。非相溶樹脂を均一に分散させるには、低密度化剤を分散助剤として添加することが有効である。低密度化剤とは、ポリエステルと非相溶樹脂の双方に対して親和性を持つことにより非相溶樹脂の分散性を向上させ、密度を小さくする効果を持つ化合物のことであり、特定の化合物にその効果が認められる。例えば、ポリエステルに対しては、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、エチレノキサイド/プロピレノキサイド共重合体、さらにはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホネートナトリウム塩、グリセリンモノステアレート、テトラブチルホスホニウムパラアミノベンゼンスルホネートなどで代表されるものである。本発明フィルムの場合、ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエーテル共重合体が特に好ましい。添加量としては、母体であるポリエステルに対して0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5重量%以上4重量%以下である。添加量がこれより少ないと分散性向上の効果が小さく好ましくない。またこれより多いと製膜安定性が低下することがある。このような低密度化剤は、あらかじめフィルム母体ポリマー中に添加してマスターチップとして調整可能である。
【0021】
本発明における液晶反射板用白色ポリエステルフィルムの見かけ密度は、0.9g/cm〜0.6g/cmが好ましく、さらに好ましくは0.8g/cm〜0.7g/cmである。見かけ密度が0.9g/cmより大きい場合は、フィルム中の気泡の形成が不十分である場合であり、反射率が低くなり好ましくない。見かけ密度が0.6g/cmより小さい場合は、フィルム中の気泡が過剰に形成されている場合であり、製膜安定性が低下し好ましくない。見かけ密度を上記の範囲にする方法としては、母体であるポリエステルフィルムに対して上記の非相溶樹脂を5重量%以上30重量%添加する方法を好ましく挙げることができるが、これに限定されない。
【0022】
本発明で基材として用いられるポリエステルフィルムは、単層または多層構成のいずれでもよいが、多層構成とすれば、内層と外層で異なるポリエステル処方をとることができ、フィルムの表面設計上好ましい。中でもA層/B層/A層の3層構成が最も好ましい様態である。ここでA層は、複数の層からなっていても良く、また、B層を挟んで存在する両面のA層は、80モル%以上のポリマーの基本骨格が同じであれば、本発明の効果を損なわない範囲で異なる組成、粒子添加量を有していても良い。つまり、A層/B層/A´層のような3層構成でも良い。この場合、B層が気泡を含有した層であり、A層が前述の無機/有機粒子などを含有した層である。このような構成とすれば、B層で高反射性を得ると同時に、A層で機械的強度の向上、反射率のさらなる向上、表面設計の自由度向上、などの効果を得ることができる。
【0023】
本発明における液晶反射板用白色ポリエステルフィルムの表面における波長560nmの光の反射率は、95%以上であることが好ましく、さらに好ましくは98%以上である。反射率が95%より低いと、液晶反射板として使用する際の反射率が不足し、液晶画面の明るさ(輝度)が不十分となるため好ましくない。また反射率の上限は特に限定されるものではないが、反射率が高すぎる状態は気泡が過剰に形成されている状態であり、製膜安定性の点から、110%以下であることが好ましい。反射率を上記の範囲とする方法は特に限定されないが、既に述べたようにポリエステルと非相溶な熱可塑性樹脂、気泡を形成させる無機微粒子をポリエステル中に添加し、延伸工程で気泡を発生させることで好ましく達成できる。ここでいう反射率とは硫酸バリウム標準板を基準として測定した560nmの可視光における入射角8°での相対反射率である。例えば、フィルムサンプルを25mm×50mm(長軸方向とフィルムの長手方向を合わせる)にカットして(株)島津製作所製分光光度計UV−2450に、60mmφ積分球ユニットISR−2200を装着した状態で、硫酸バリウム(株式会社島津製作所指定部品:200−53627)を標準板として、560nmの可視光で入射角8°における反射率を測定する。
【0024】
本発明における液晶反射板用白色ポリエステルフィルムの全光線透過率は10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは7%以下、最も好ましくは5%以下である。全光線透過率が10%より大きいと反射板からの光漏れの量が多くなり、液晶画面の明るさ(輝度)が不十分となるため好ましくない。また全光線透過率の下限は特に限定されるものではないが、透過率が低すぎる状態は気泡が過剰に形成されているかまたはフィルム厚みが厚すぎる状態であり、製膜安定性の点から、1%以上であることが好ましい。全光線透過率を上記の範囲とする方法は特に限定されないが、ポリエステルフィルム中に有機/無機粒子、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂などを含有させ、フィルム厚みを75〜250μm程度にすることで好ましく達成できる。ここでいう全光線透過率とは、積分球式光線透過率測定装置によりフィルムに波長550nmの平行光線をあて、入射光に対してフィルムを透過した光の割合のことである。フィルムサンプルを25mm×50mm(長軸方向とフィルムの長手方向を合わせる)にカットして、スガ試験機(株)製ヘイズコンピューターHZ−2を用いて日本工業規格(JIS)K−7105に従い全光線透過率を測定する。
【0025】
本発明において、少なくとも片面に、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体を含む帯電防止層を有していることが本発明の目的達成のために必要である。すなわち、帯電防止層を有することにより、静電気の発生を抑えることができるので、打ち抜き加工時のバリ発生や埃の付着防止、枚葉にしたときの取り扱い性などを向上させる効果があり、飛躍的な歩留まり向上が期待できる。さらに帯電防止層は、フィルム製造時における環境汚染防止や防爆性、製造コストなどの点から、水性塗液を塗布後少なくとも一方向に延伸されて形成される塗膜層であることが好ましく、ポリエステルフィルムを二軸配向する製造工程内で形成されることが好ましい。水性塗布を可能とするためには、水分散性の高い成分により帯電防止剤を形成させることが必須である。ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体は極めて水分散性・延伸追従性が高く、本発明の帯電防止剤の成分として好ましい様態である。該延伸のタイミングは特に限定されないが、水性塗液を塗布した後に二軸延伸する方法、あるいは、縦(フィルムの長手方向)延伸後に水性塗液を塗布しさらに横延伸する方法が好ましく用いられる。該水性塗液の塗布方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法およびスプレーコート法などを好ましく用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明に用いられるポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体の分子量は特に限定されないが、塗剤の安定性や導電性の点で、その重量平均分子量は1000〜1000000が好ましく、より好ましくは5000〜150000である。
【0027】
また、本発明における帯電防止層の厚さは、通常は10〜1000nmが好ましく、より好ましくは15〜200nmであり、最も好ましくは30〜100nmである。帯電防止層の厚さが薄すぎると、帯電防止性機能が不良となる。また、帯電防止層の厚さが厚すぎると、外観が劣ったり、帯電防止層が製造工程などで脱落したり、フィルムの製造コストが高くなり好ましくない。
【0028】
また、本発明における帯電防止層中には、本発明の効果が損なわれない範囲内で、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、耐電防止剤、および核剤などを配合しても良い。易滑剤や微粒子については、フィルムのすべり性を向上させ、取り扱いを容易にする効果がある。易滑剤や微粒子の平均粒径は、帯電防止層厚みの50%〜500%の大きさのものが好ましい。その平均粒径が50%未満では易滑効果が不十分であり、500%を超えると易滑剤や微粒子が脱落しやすい。また、配合されるポリエステル樹脂は、基材ポリエステルフィルムとの密着性を高める効果が期待される。
【0029】
帯電防止層表面の表面比抵抗は、好ましくは1×1013Ω/□以下であり、さらに好ましくは1×1010Ω/□以下であり、最も好ましくは1×10Ω/□以下である。表面比抵抗が1×1013Ω/□を超えると、帯電防止性能が劣り、加工工程でのトラブルを改善することが難しい。表面比抵抗の下限値は特に限定されるものではないが、製造コストや製膜安定性の観点から1×10Ω/□以上であることが好ましい。ここでいう表面比抵抗とは、フィルム表面に電気を流した時の電気抵抗値(Ω/□)である。例えば、フィルムサンプルを測定条件(温度25℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用い、印可電圧100Vで10秒間印可後測定を行う。
【0030】
本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムにおいては、その帯電防止層にポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体に加えて、さらに共役電子導電体であるポリアニリン系導電剤、酸化スズ系導電剤、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン系誘導体を含むことがより好ましい。共役電子導電体は、その電子導電メカニズムが空気中の水分に依らないため、湿度による帯電防止性能の変化量が非常に小さく、これらを添加することにより、さらに高い帯電防止性を付与させることができ好適である。特にポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体は、加えて塗膜の透明性や基材ポリエステルフィルムとの密着性および塗布外観に優れており特に好ましい様態である。
【0031】
ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体は単体では水分散が非常に困難であり、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体の存在下で重合することにより水分散あるいは水性化しやすくなる。さらに、酸としての機能がポリチオフェン系化合物のドーピング剤としての機能も果たすと考えられる。
【0032】
共役電子導電体であるポリチオフェンおよびポリチオフェン誘導体は、例えば、下記の一般式(1)または下記の一般式(2)で示される化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合することによって得ることができる。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
上記の一般式(1)において、R1とR2は、それぞれ独立に、水素元素、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基をあらわし、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシレン基およびフェニル基などである。また、上記の一般式(2)では、nは1〜4の整数である。
【0036】
本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムにおいては、上記の一般式(2)で示される構造式からなるポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体を用いることが好ましく、例えば、一般式(2)で、n=1(メチレン基)、n=2(エチレン基)およびn=3(プロピレン基)の化合物が好ましい。中でも特に好ましいのは、n=2のエチレン基の化合物、すなわち、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンである。ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体としては、例えば、チオフェン環の3位と4位の位置に官能基が結合した化合物が例示される。上記のとおり、3位と4位の炭素原子に酸素原子が結合した化合物が好ましい。該炭素原子に直接炭素原子あるいは水素原子が結合した構造を有する化合物については、塗液の水性化が容易でない場合がある。
【0037】
本発明において、好ましい態様として、ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体に対して、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体は、固形分重量比で過剰に存在させた方が導電性の点で好ましく、ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体が1重量部に対し、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体は1重量部から5重量部が好ましく、より好ましくは1重量部から3重量部である。
【0038】
また、上記ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体からなる組成物は、例えば、特開平6−295016号公報、特開平7−292081号公報、特開平1−313521号公報、特開2000−6324号公報、ヨーロッパ特許第602713号明細書および米国特許第5391472号明細書などに記載の方法により製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
【0039】
例を挙げると、3,4−ジヒドロキシチオフェン−2,5−ジカルボキシエステルのアルカリ金属塩を出発物質として、3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た後、ポリスチレンスルホン酸水溶液にペルオキソ二硫酸カリウムと硫酸鉄と、先に得た3,4―エチレンジオキシチオフェンを導入し、反応させ、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェンに、ポリスチレンスルホン酸などのポリ陰イオン化合物が複合体化した上記の組成物を得る。
【0040】
本発明における帯電防止処理層は、上記ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体と架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤およびアクリルアミド系架橋剤などを用いることができる。該架橋剤は、分子量が1000以下の架橋剤であることが好ましく、より好ましくは800以下であり、さらに好ましくは600以下である。特に水溶性かつ分子量1000以下の架橋剤を用いることで、延伸工程での柔軟性や流動性が発現し、積層膜を形成する混合体の乾燥後の延伸追従性を高め、塗膜の亀裂による白化現象を抑制し、透明性が付与される。分子量が大きくなりすぎた場合は、塗布、乾燥後の延伸時において塗膜に亀裂が入るため透明性が低下する傾向がある。また、エポキシ系架橋剤の熱減量率5%となる温度は230℃以上であることが好ましく、より好ましくは250℃以上であり、特に好ましくは270℃以上である。熱減量率5%となる温度が230℃未満の場合、ポリエステルフィルムの製造工程、特に横延伸〜熱処理のオーブン中にエポキシ成分が分散され工程を汚すことがある。
【0041】
上記架橋剤としては、特にエポキシ系架橋剤、特に水溶性エポキシ系架橋剤が特に好ましく、透明性、帯電防止性および塗膜外観に優れた帯電防止層を形成することができる。エポキシ系架橋剤の種類は特に限定はされないが、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系などを用いることができる。例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(登録商標)(EX−611、EX−614、EX−512、EX−521、EX−412、EX−313、EX−810、EX−830,EX−850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR−EG、SR−8EG,SR−GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON” (登録商標)EM−85−75W、あるいはCR−5Lなどを好適に用いることができる。
【0042】
上記、ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体からなる組成物の固形分と、架橋剤の固形分の混合比は、ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体からなる組成物の固形分量と架橋剤の固形分量の和を100重量部としたとき、架橋剤の固形分量は30重量部〜90重量部が好ましく、より好ましくは50重量部〜85重量部である。架橋剤の固形分量が90重量部よりも多い場合は、帯電防止性が発現しにくくなる。また、架橋剤の固形分量が30重量部よりも少ない場合は、帯電防止層にクラックが生じやすく、透明性が劣ったり、帯電防止性が発現しにくくなる。
【0043】
本発明における液晶反射板用白色ポリエステルフィルムは、180℃において30分間加熱処理した後の帯電防止層表面でのオリゴマー量が3.0mg/m以下であり、さらに好ましくは2.0mg/m以下、最も好ましくは1.0mg/m以下である。180℃において30分間加熱処理した後の帯電防止層表面でのオリゴマー量が3.0mg/mを超えると、実際にディスプレイとして長期使用した際に発熱によりフィルム表面にオリゴマーが析出し、輝度の低下や、電子デバイス部へのオリゴマー混入による故障の原因となる懸念があり好ましくない。オリゴマー析出量の下限は特に限定されないが、製造コストや製膜安定性の観点から0.4mg/m以上であることが好ましい。
【0044】
本発明において、オリゴマー析出量とは、ポリエステルフィルムを180℃のオーブン中で30分間熱処理を行い、ポリエステルフィルムの帯電防止処理層側をジメチルホルムアミド溶媒に3分間浸し、ポリエチレンテレフタレートの環状オリゴマー(三量体純度89%)標準溶液を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定し、得られた環状3量体量のことである。測定条件については、後述する。
【0045】
また、オリゴマー析出量を抑える方法としては特に限定されないが、水分散性アクリル樹脂を含む塗膜層を有することが好ましい。アクリル樹脂塗膜層とフィルムとの表面エネルギー差により、オリゴマーの析出がブロックされやすいためである。水分散性アクリル樹脂は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、炭素数が12〜25個のアルキル基を側鎖に持つアルキルアクリレートなどのモノマーの共重合体などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの水分散系アクリル樹脂においては、平均エマルジョン粒径が50〜200nmであることが好ましく、分布がなるべく均一のものを用いることが好ましい。さらに高いオリゴマー析出防止性を付与するためには、塗膜層にオリゴマー析出防止機能を有する成分を添加することが好ましい。オリゴマー析出防止機能を有する成分としては、例えば、長鎖アルキルアクリレート、フッ素アクリレート、シリコーン化合物、ポリオレフィン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの成分は水分散系アクリル樹脂よりフィルムとの表面エネルギー差が大きいため、より高いオリゴマー析出防止性が得られる。
【0046】
本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは、2軸配向されたフィルムであることが好ましい。2軸配向ポリエステルフィルムとは、無延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを、長手方向および幅方向に、いわゆる2軸方向に延伸することによって作られるものであり、広角X線回折で2軸配向のパターンを示すものである。2軸方向へ延伸する方法は、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法のどちらでもよいが、同時2軸延伸の場合は、フィルム表面にキズがつきにくく、また低速でオンラインコートができる等の利点がある。
【0047】
本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムを用いてなる面光源は出射面となる平面から均一に光束を出射するものであれば、いかなる形態でも構わないが、一般にバックライトと呼ばれる面光源が好ましい。
【0048】
また反射面と出射面の間に光源から出射された光束を導入する手段としては、種々の手段があるが、(A)少なくとも長方形の導光板と、点状、もしくは線状の発光源と、誘発光源から出射された光束を該導光板の一つの入光辺、もしくは互いに対辺の関係にある二つの入光辺から導入する手段を用いた面光源(エッジ型バックライト)、(B)少なくとも、並列した複数の直線状蛍光管と、該蛍光管の背面側に光反射板を配置した構造を有する面光源(直下型バックライト)を用いることが特に好ましい。
【0049】
また、発光源としては、点状もしくは線状光源が好ましい。LEDや蛍光管、有機もしくは無機のエレクトロルミネッセンス等が好ましく使用される。光源色は無彩色に近いことが好ましい。これら光源の数は単一でも複数であっても良く、また異なる種類の光源が混在していても構わない。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は、次のとおりである。
【0050】
(1)表面比抵抗
フィルムサンプルを測定条件(温度25℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用い、印可電圧100Vで10秒間印可後測定を行った。
【0051】
(2)波長560nmの光の反射率
フィルムサンプルを25mm×50mm(長軸方向とフィルムの長手方向を合わせる)にカットして(株)島津製作所製分光光度計UV−2450に、60mmφ積分球ユニットISR−2200を装着した状態で、硫酸バリウム(株式会社島津製作所指定部品:200−53627)を標準板として560nmでの8°傾斜における反射率を測定した。
【0052】
(3)見かけ密度
フィルムサンプルをSD型レバー式試料裁断機SDL−100((株)ダンベル社製)を用いて100mm×100mmの大きさにカットし、10枚準備し、それぞれ電子天秤にて精秤した。次に、校正されたデジタルマイクロメータ(M−30,ソニー・プレシジョン・テクノロジー(株)製)にて1枚につき8点の厚みを測定し、各サンプル毎に平均厚みを算出し、次式により計算した。
見かけ密度(g/cm)=精秤重量(g)÷{平均厚み(μm)×100(mm)×100(mm)÷10}。
【0053】
(4)全光線透過率
フィルムサンプルを25mm×50mm(長軸方向とフィルムの長手方向を合わせる)にカットして、スガ試験機(株)製ヘイズコンピューターHZ−2を用いて日本工業規格(JIS)K−7105に従い全光線透過率を測定した。
【0054】
(5)バリ・ヒゲ発生の評価
SD型レバー式試料裁断機SDL−100((株)ダンベル社製)を用いてフィルムを100mm×100mmの大きさに打ち抜き、検査サンプルを50枚作成する。その端面をハンディ顕微鏡(×50〜×200倍)で確認し、下記の通り判定した。△以上が合格である。不良品の定義は、「0.5mm以上のバリ・ヒゲが検査サンプル1個あたり1つ以上あるもの」とする。
○ 50枚中で不良品が2個以下発生
△ 50枚中で不良品が3個以上5個以下発生
× 50枚中で不良品が6個以上発生。
【0055】
(6)枚葉時の取り扱い性(搬送テスト)
A4サイズに断裁したフィルムサンプルを50枚準備し、巻癖を除去するため45℃のオーブン中に2時間放置した。そのサンプルを室温で1時間養生後、デジタル複合機(松下電送システム社製、Workio DP−4510)に供し、コピーモードを利用して搬送テストを実施した。このテストによって折れ・詰まり等の搬送不良がないか確認し、ポリエステルフィルムの取り扱い性の評価とした。判定は以下に従い、△以上が合格である。
○ 50枚中で搬送不良発生なし
△ 50枚中で搬送不良が1回〜3回発生
× 50枚中で搬送不良が4回以上発生。
【0056】
(7)埃の付着性(アッシュテスト)
A4サイズにカットされた白色ポリエステルフィルムを23℃、50%RHの測定雰囲気下で24時間調湿した。調湿したフィルム表面を摩擦布(ウール100%)で10往復こすった。このフィルムを直ちに70℃で1時間予備乾燥させたタバコの灰1.5gを10cm×10cmの範囲に広げてある机上に徐々に近づけ、接触させた。タバコの灰の付着を目視判定した。△以上が合格である。
○ フィルムを灰に接触させても付着しない
△ フィルムを灰に接触させると付着する
× フィルムを灰に近づけただけで付着する。
【0057】
(8)オリゴマー析出量の定量
ポリエステルフィルムを180℃のオーブン中で30分間熱処理を行った。その後帯電防止処理層を外側にして、50mm×50mm×30mmの直方体アルミ製治具の50mm×50mm面にフィルムを貼り付け、端を治具に沿って折り曲げ固定した。この治具をフィルム面を下にして深さ5mmの位置までジメチルホルムアミド溶媒に3分間浸し、表面析出オリゴマーを抽出した。
【0058】
次に標準溶液として、ポリエチレンテレフタレートの環状オリゴマー(三量体純度89%)11.2mgを100mLメスフラスコに取り1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール/クロロホルム混合溶媒(=1/1)2mLに溶解後、クロロホルムで100mLに希釈したものを標準原液(三量体濃度100μg/mL)とした。この溶液をジメチルホルムアミドで順次希釈し、三量体濃度10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mLの標準溶液を調整した。
上記表面オリゴマー抽出溶媒と標準溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて以下の条件で分析し、環状三量体量を測定し、オリゴマー量とした。
装置 : 島津LC−10A
カラム: Inertsil ODS−3
移動相: アセトニトリル/水=70/30
流速 : 1.5mL/分
検出器: UV242nm
注入量: 10μL
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
押出機(a)と押出機(b)とTダイ複合口金を有する複合製膜装置を用いて、下記のA層とB層からなる三層積層ポリエステルフィルムとした。その積層構成はA/B/Aである。
【0061】
まず、A層を形成する樹脂について説明する。平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウム粒子を50重量%含有する炭酸カルシウム粒子含有PETペレット(CaCO(50))28重量%、蛍光増白剤“OB−1(イーストマン・コダック社製)を5重量%含有する蛍光増白剤マスターPETペレット(OB(5))1重量%、重合触媒としてクエン酸キレートチタン化合物のエチレングリコールスラリーを、得られるポリエステルに対してチタン原子換算で0.01重量%になるように用いたポリエチレンテレフタレートペレット(PET、融点255℃)72重量%の混合物を160℃の温度で5時間真空乾燥した後、押出機(a)側に供給し、280℃の温度で溶融押出後、30μmカットフィルターにより異物濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
【0062】
次に、B層を形成する樹脂について説明する。ポリメチルペンテン(三井化学(株)製、TPX DX820(以下、PMPと省略する))を20重量%、ポリブチレンテレフタレート/ポリエーテル共重合体(東レデュポン(株)製、ハイトレル7247(以下、Hytrelと省略する))を4.0重量%、分子量4000のポリエチレングリコール(以下PEGと省略する)を0.7重量%それぞれ含有する非相溶樹脂含有PETペレット(PMP(20)−H)75重量%、PETペレット25重量%となるように調整した混合物を180℃の温度で3時間真空乾燥した後、押出機(b)側に供給し、280℃の温度で溶融押出後、30μmカットフィルターにより異物濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
【0063】
次いで、該Tダイ複合口金内で、ポリエステル層(A)がポリエステル層(B)の両表層に積層(A/B/A)されるように合流せしめた後、シート状に共押出し溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度18℃に保たれたドラム上に静電荷法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを常法に従い80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、86℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
【0064】
続いて、得られた一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、表面張力を50mN/m以上とし、下記の組成の帯電防止層塗液をバーコート法により両面同種塗布した。
【0065】
<帯電防止層塗液>
次の帯電防止層塗液A1と帯電防止層塗液B1と帯電防止層塗液C1を有効成分比で20重量部/80重量部/20重量部で混合した水性溶液を使用した。
【0066】
・帯電防止層塗液A1
ポリエチレンジオシキチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体と、ポリエステル樹脂を水に分散させた水性塗液(ナガセケムテックス(株)製“デナトロン”(R)5002RZ)を使用した。
【0067】
・帯電防止層塗液B1
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”(R)EX−512)を水に溶解させた水性溶液を使用した。
【0068】
・帯電防止層塗液C1
下記の共重合組成からなる長鎖アルキルアクリレート10重量%を、イソプロピルアルコール10重量%とブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させた水性溶液を使用した。
(共重合成分)
メタクリル酸 40重量部
ステアリルメタクリレート 60重量部
N−メチロールアクリルアミド 2重量部
アニオン性反応性乳化剤 2重量部
なお、アニオン性反応乳化剤には、“エレミノール”(登録商標)JS−2(三洋化成工業(株)製)を用いた。
【0069】
この両面に塗布を施された一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(横方向)に3.4倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで210℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに200℃の温度で4%横方向に弛緩処理を行った後、更に150℃の温度で1%方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に除冷後、巻き取って、ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)の厚みが15/220/15(μm)のA層/B層/A層の3層複合構成とした厚さ250μmの液晶反射板用白色ポリエステルフィルムを得た。結果を表1、表2に示す。安定した帯電防止性と反射性を示し、成型性も良好であった。オリゴマー析出量も少なかった。
【0070】
(実施例2〜5、比較例1〜6)
下記のA層、B層を構成する樹脂と、帯電防止剤を用い、表1、表2に示された条件を用いたこと以外は、実施例1に従い液晶反射板用白色ポリエステルフィルムを得た。
【0071】
・二酸化チタン粒子含有PETペレットTiO(50)
数平均粒子径0.3μmの二酸化チタン粒子を50重量%含有する二酸化チタン粒子含有PETペレット(TiO(50))を使用した。
【0072】
・非相溶樹脂含有PETペレットPMP(20)−P
PMPを20重量%、PEGを2重量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤“イルガノックス”(登録商標)1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%をそれぞれ含有する非相溶樹脂含有PETペレット(PMP(20)−P)を使用した。
【0073】
・硫酸バリウム−イソフタル酸共重合PETペレットBaSO(50)
数平均粒径1μmの硫酸バリウム粒子を50重量%含有する硫酸バリウム−イソフタル酸共重合PETペレット(BaSO(50))を使用した。
【0074】
・帯電防止層塗液D1
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(平均分子量:約30000)を使用した。
【0075】
・帯電防止層塗液E1
メラミン架橋剤、大日本インキ化学工業(株)製、“ベッカミン”(登録商標)J101を使用した。
【0076】
・帯電防止層塗液C2
下記の共重合組成からなる長鎖アルキルアクリレート10重量%を、イソプロピルアルコール10重量%とブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させた水性溶液を使用した。
(共重合成分)
メタクリル酸 40重量部
ベヘニルメタクリレート 60重量部
N−メチロールアクリルアミド 2重量部
アニオン性反応性乳化剤 2重量部
なお、アニオン性反応乳化剤は、“エレミノール” (登録商標)JS−2(三洋化成工業(株)製)を用いた。
【0077】
・帯電防止用塗液D2
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移点40℃)の粒子状物を、水に分散させた水分散液を使用した。
(共重合成分)
メチルメタクリレート 65重量部
エチルアクリレート 35重量部
アクリル酸 1重量部
N−メチロールアクリルアミド 2重量部
・帯電防止用塗液F1
ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量:10000)を水に溶解した水溶液を使用した。
【0078】
・帯電防止用塗液D3
親水化アクリル樹脂(ガラス転移点40℃)の粒子状物を、水に分散させた水分散液を使用した。
【0079】
・帯電防止用塗液F2
ポリスチレンスルホン酸リチウム塩(重量平均分子量:10000)を水に溶解した水溶液を使用した。
【0080】
・帯電防止用塗液D4
酸性分としてテレフタル酸70モル%、イソフタル酸23モル%および5−ナトリウムスルホイソフタル酸7モル%と、また、ジオール成分としてエチレングリコール70モル%とジエチレングリコール30モル%からなる共重合ポリエステル樹脂(ガラス転移点:55℃)の水性分散剤を用いた。
【0081】
なお、実施例2においては片面のみの塗布とし、実施例4おいては同時2軸延伸法を用いて
延伸した。また比較例1は単層用のTダイ口金を用いて単膜フィルムとした。
【0082】
実施例2:反射率がやや劣るが、使用可能レベルであった。帯電防止性も良好であった。片面のみの塗布であったが、成型性に問題はなかった。かなり高いオリゴマー析出防止性を示した。
【0083】
実施例3:反射率、帯電防止性ともにやや劣るが使用可能レベルであった。ややバリ・ヒゲの発生率が高かったが、許容範囲レベルであった。オリゴマー析出量も問題なかった。
【0084】
実施例4:反射率、帯電防止性ともにやや劣るが使用可能レベルであった。枚葉時の取り扱いも実用上の問題はなかった。密度がやや低いためか製膜時に破れが発生したが、安定製膜可能なレベルであった。オリゴマー析出量はやや高いが許容範囲であった。
【0085】
実施例5:反射率、帯電防止性ともにやや劣るが使用可能レベルであった。B層に無機粒子が多いため密度がやや高いが、反射率に問題はなかった。オリゴマー析出量はやや高いが許容範囲であった。
【0086】
比較例1:透過率の値は適切なものの、反射率、密度、帯電防止性ともに劣っており、所望の機能を発揮するには、そのレベルが未達であった。またオリゴマー析出量も多かった。
【0087】
比較例2:密度の値は適切なものの、反射率、透過率、帯電防止性ともに劣っており、所望の機能を発揮するには、そのレベルが未達であった。
【0088】
比較例3:透過率の値は適切なものの、反射率、密度、帯電防止性ともに劣っており、所望の機能を発揮するには、そのレベルが未達であった。また帯電防止層はポリエステル樹脂であるため、オリゴマー析出量も多かった。
【0089】
比較例4:帯電防止性は優れておりバリの発生等に問題はなかったものの、反射率、透過率、密度ともに劣っており、液晶反射板としては光学特性が不足であった。
【0090】
比較例5:反射率は優れており、透過率、密度の値も適切であったが、帯電防止性が劣っておりバリの発生など成型性に問題があったため、本課題の解決には至らなかった。またオリゴマー析出量も多かった。
【0091】
比較例6:反射率、透過率は優れていたが、密度が小さくフィルム破れが多発し製膜安定性に劣るため、実用化には不適であった。またオリゴマー析出量が少ないものの帯電防止性は未達であった。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムおよびそれを用いた面光源は、なかで
も、高い加工効率性や歩留まりを要求される大型テレビ、ノートパソコンの液晶反射板用
途などにおいては、優れた打ち抜き加工時の成型性、枚葉にしたときの取り扱い性、オリ
ゴマー析出防止性が各工程における問題を改善することができ、生産性や製品の品位を著しく改
善することができ有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に、ポリスチレンスルホン酸および/またはポリスチレンスルホン酸誘導体を含む帯電防止層を有し、
かつ該帯電防止層表面の表面比抵抗が1×1013Ω/□以下であり、
さらに表面における波長560nmの光の反射率が95%以上、
全光線透過率が10%以下、
180℃において30分間加熱処理した後の帯電防止層側表面におけるオリゴマー量が3.0mg/m以下である
液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項2】
帯電防止層が、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体を含み、かつ該帯電防止層表面の表面比抵抗が1×1010Ω/□以下である請求項1記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項3】
帯電防止層が、少なくとも一方向に延伸された塗膜層である請求項1または2記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
白色ポリエステルフィルム中に該ポリエステルとは非相溶な熱可塑性樹脂を含有し、かつ、内部に微細な気泡を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項5】
見かけ密度が、0.9g/cm〜0.6g/cmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項6】
白色ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの重合触媒として、チタン系化合物が使用されてなる請求項1〜5のいずれかに記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項7】
白色ポリエステルフィルムが同時2軸延伸フィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶反射板用白色ポリエステルフィルムを用いてなる面光源。

【公開番号】特開2007−298963(P2007−298963A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83864(P2007−83864)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】