説明

液晶素子の製造方法

【課題】複数の液晶層を有する液晶素子を容易に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】マザー積層体30を複数に分断し、少なくともひとつの内部空間16b、20b、25bを有する複数の積層体片31,32を作製する第1の分断工程を行う。各積層体片31,32の内部空間16b、20b、25bに注入口16a、20a、25aから液晶を注入し、封止することにより液晶層35a〜35cを形成する注入工程を行う。中間マザーガラス板14,19を複数のマザーガラス板片14a、14b、19a、19bにより構成する。第1の分断工程において、マザー積層体30を、面方向に隣り合うマザーガラス板片14a、14b、19a、19bの間において切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶分子の配向状態を変化させることにより光学特性を変化させることができる液晶レンズ等の液晶素子が知られている。例えば液晶レンズにおいて高いレンズパワーを得るためには、液晶層の厚みを厚くする必要がある。しかしながら、液晶層の厚みを厚くすると、電圧印加に対する液晶レンズの応答速度が遅くなるという問題がある。
【0003】
これに鑑み、例えば特許文献1には、液晶層内に薄いガラス板を介在させ、液晶層を複数の薄い液晶層に分割することにより、電圧印加に対する液晶レンズの応答速度を高めることが提案されている。このような液晶レンズでは、一対の外ガラス板の間に液晶層を分割するための中間ガラス板が配されるため、ガラス板が3枚以上積層されることとなる。
【0004】
例えば、中間ガラス板を有さない場合は、液晶レンズを構成する領域を複数有するマザー積層体を作製し、両側の外ガラス板にスクライブクラックを形成することにより、マザー積層体を複数の液晶レンズに容易に分断することができる。
【0005】
しかしながら、液晶レンズから露出していない中間ガラス板が設けられている場合は、中間ガラス板にスクライブクラックを形成することが困難である。このため、中間ガラス板の切断が困難である。よって、中間ガラス板を有する液晶レンズは、マザー積層体を作製した後に分断する方式では製造が困難である。これに鑑み、特許文献1では、少なくとも一方の外ガラス板にスクライブクラックを形成し、外ガラス板の一部を除去することにより中間ガラス板を露出させ、その後、中間ガラス板にスクライブクラックを形成することにより中間ガラス板を切断することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−114721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液晶素子の製造方法では、スクライブクラックを形成する工程が2度必要となり、さらにその2度のスクライブクラック形成工程の間に、外ガラス板の一部を除去する工程も必要となる。従って、液晶素子の製造工程が煩雑になる。
【0008】
本発明は、複数の液晶層を有する液晶素子を容易に製造し得る方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液晶素子の製造方法は、第1の外ガラス板と、第1の外ガラス板に対向して配された第2の外ガラス板と、第1の外ガラス板と第2の外ガラス板との間に配された少なくとも一枚の中間ガラス板と、厚み方向に隣り合うガラス板の間に配されている複数の液晶層とを備える液晶素子を製造するための方法である。本発明に係る液晶素子の製造方法は、積層体作製工程と、第1の分断工程と、注入工程とを備えている。積層体作製工程では、第1の外ガラス板を構成するための第1の外マザーガラス板と、少なくとも一枚の中間ガラス板を構成するための少なくとも一枚の中間マザーガラス板と、第2の外ガラス板を構成するための第2の外マザーガラス板とを、各マザーガラス板間に壁部材を介在させて積層することにより、厚み方向に隣り合うマザーガラス板と壁部材とにより、注入口を有する内部空間が複数区画形成されたマザー積層体を作製する。第1の分断工程では、マザー積層体を複数に分断し、少なくともひとつの内部空間を有する複数の積層体片を作製する。注入工程では、各積層体片の内部空間に注入口から液晶を注入し、封止することにより液晶層を形成する。中間マザーガラス板を複数のマザーガラス板片により構成する。第1の分断工程において、マザー積層体を、面方向に隣り合うマザーガラス板片の間において切断する。
【0010】
第1の分断工程において、第1の外マザーガラス板と第2の外マザーガラス板とのそれぞれの外側主面にスクライブクラックを形成してマザー積層体を複数に分断することが好ましい。
【0011】
第1の分断工程において、複数の内部空間を有する積層体片を作製し、注入工程の後に積層体片を複数に分断することにより液晶素子を複数作製する第2の分断工程を行ってもよい。その場合、第2の分断工程においては、積層体片をダイシングにより切断することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の液晶層を有する液晶素子を容易に製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における、壁部材等が主面上に形成された第1の外ガラス板の略図的平面図である。
【図2】図1のII−II部分の略図的断面図である。
【図3】第1の実施形態における第1の電極の略図的平面図である。
【図4】第1の実施形態におけるマザー積層体の略図的斜視図である。
【図5】図4の線V−V部分の略図的断面図である。
【図6】図5の線VI−VI部分の略図的断面図である。
【図7】第1の実施形態における一の積層体片の略図的斜視図である。
【図8】第1の実施形態における他の積層体片の略図的斜視図である。
【図9】第1の実施形態における液晶素子の略図的断面図である。
【図10】第2の実施形態におけるマザー積層体の略図的平面図である。
【図11】図10の線XI−XIにおける略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0015】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図9に示す液晶素子1の製造方法の一例について、図1〜図9を参照しながら説明する。本実施形態に係る液晶素子1は、具体的には液晶レンズを構成している。
【0017】
(積層体作製工程)
まず、図1及び図2に示す第1の外マザーガラス板10を用意する。第1の外マザーガラス板10の厚みは、液晶素子1の厚みを小さくする観点からは、薄いことが好ましい。第1の外マザーガラス板10の厚みは、例えば、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることよりが好ましい。但し、第1の外マザーガラス板10が薄すぎると、液晶素子1の剛性が低くなりすぎる場合がある。従って、第1の外マザーガラス板10の厚みは、例えば、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。後述の第2の外マザーガラス板22の好ましい厚みの範囲は、第1の外マザーガラス板10の上記好ましい厚みの範囲と同様である。
【0018】
次に、第1の外マザーガラス板10の主面10aの上に、第1の電極11を形成する。第1の電極11の形成は、例えば、スパッタリング法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法や、導電性ペーストを塗布し、乾燥させる方法等により形成することができる。なお、第1の電極11の形状は、特に限定されないが、本実施形態では、図3に示すように、第1の電極11は、円形の第1の部分11aと、第1の部分11aを包囲する第2の部分11bとを有する。
【0019】
次に、図2に示すように、第1の外マザーガラス板10の主面10aの上に、第1の電極11を覆うように、配向膜12を形成する。配向膜12は、例えば、ポリイミド膜を形成し、ポリイミド膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。
【0020】
次に、第1の外マザーガラス板10の上に、壁部材13を形成する。壁部材13は、液晶を封入するための内部空間を区画形成する部材である。壁部材13は、例えば、第1の電極11の第1の部分11aが設けられた領域を含む主面10aの一部の領域を露出させると共に、その露出領域を一部を除いて包囲するように形成される。本実施形態では、具体的には、y方向に沿って配列された、内部空間を構成するための複数の凹部13aからなる凹部列13bがx方向に沿って複数配列されるように壁部材13を形成する。
【0021】
壁部材13は、例えば、スペーサを含む樹脂により構成することができる。具体的には、壁部材13は、例えば、スペーサを含む紫外線硬化型樹脂を塗布することにより形成することができる。
【0022】
壁部材13の厚みは、形成しようとする液晶層の厚みに応じて適宜設定することができる。壁部材13及び下記の壁部材17,21のそれぞれの厚みは、例えば、2μm〜100μmとすることができる。
【0023】
次に、図4〜図6に示すように、壁部材13の上に、中間マザーガラス板14を載置する。中間マザーガラス板14の両主面の少なくとも壁部材13が設けられていない領域に位置する部分の上には、配向膜15a、15bが形成されている。配向膜15a、15bは、例えば、ポリイミド膜を形成し、ポリイミド膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。
【0024】
本実施形態では、中間マザーガラス板14を、複数のマザーガラス板片14a、14bにより構成する。複数のマザーガラス板片14a、14bのそれぞれは、長手方向がy方向に沿う細長形状を有する。複数のマザーガラス板片14a、14bのそれぞれは、図6に示すように、ひとつの凹部列13bを被覆するように設けられている。マザーガラス板片14aとマザーガラス板片14bとは、凹部列13bの配列方向であるx方向に沿って相互に間隔をおいて配される。
【0025】
中間マザーガラス板14の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm〜400μmであることが好ましく、20μm〜200μmであることがより好ましい。下記の中間マザーガラス板19の好ましい厚みの範囲は、上記中間マザーガラス板19の好ましい厚みの範囲と同様である。
【0026】
上記壁部材13は、スペーサを含む紫外線硬化型樹脂を塗布することにより形成された樹脂層の上にマザーガラス板片14a、14bを配し、その後に、マザーガラス板片14a、14bと第1の外マザーガラス板10とをプレスしながら上記樹脂層に紫外線を照射して硬化させることにより形成することができる。
【0027】
以上のように、第1の外マザーガラス板10の上に、壁部材13を介在させて中間マザーガラス板14を載置することにより、第1の外マザーガラス板10、壁部材13及び中間マザーガラス板14とにより、注入口16aを有する内部空間16bを、x方向及びy方向に沿ってマトリクス状に複数形成する。
【0028】
同様に、中間マザーガラス板14の上に、壁部材17を形成する。その後、中間マザーガラス板14の上に、壁部材17を介在させて、両主面に配向膜18a、18bが形成された中間マザーガラス板19を載置することにより、中間マザーガラス板14、壁部材17及び中間マザーガラス板19とにより、注入口20aを有する内部空間20bを、x方向及びy方向に沿ってマトリクス状に複数形成する。
【0029】
上記壁部材17は、スペーサを含む紫外線硬化型樹脂接着剤を塗布することにより形成された樹脂層の上にマザーガラス板片19a、19bを配し、その後に、マザーガラス板片19a、19bと、マザーガラス板片14a、14bを積層した第1の外マザーガラス板10とをプレスしながら上記樹脂層に紫外線を照射して硬化させることにより形成することができる。
【0030】
中間マザーガラス板19も、中間マザーガラス板14と同様に、複数のマザーガラス板片19a、19bにより構成する。複数のマザーガラス板片19a、19bのそれぞれは、長手方向がy方向に沿う細長形状を有する。マザーガラス板片19aとマザーガラス板片19bとは、x方向に沿って相互に間隔をおいて配される。マザーガラス板片19aは、マザーガラス板片14aと実質的に同様の形状寸法を有しており、マザーガラス板片14aの上に載置する。マザーガラス板片19bは、マザーガラス板片14bと実質的に同様の形状寸法を有しており、マザーガラス板片14bの上に載置する。
【0031】
さらに、中間マザーガラス板19の上に、壁部材21を形成する。その後、中間マザーガラス板19の上に、壁部材21を介在させて、第2の外マザーガラス板22を載置する。これにより、中間マザーガラス板19、壁部材21及び第2の外マザーガラス板22とにより、注入口25aを有する内部空間25bを、x方向及びy方向に沿ってマトリクス状に複数形成する。
【0032】
上記壁部材21は、スペーサを含む紫外線硬化型樹脂接着剤を塗布することにより形成された樹脂層の上に第2の外マザーガラス板22を配し、その後に、第2の外マザーガラス板22と、マザーガラス板片14a、14b、19a、19bを積層した第1の外マザーガラス板10とをプレスしながら上記樹脂層に紫外線を照射して硬化させることにより形成することができる。
【0033】
第2の外マザーガラス板22は、第1の外マザーガラス板10と実質的に同様の形状寸法を有する。第2の外マザーガラス板22を、平面視において(x方向から視た際に)、第1の外マザーガラス板10と重なる位置に配置する。
【0034】
なお、第2の外マザーガラス板22の主面22aの上には、第2の電極23と、配向膜24とをこの順番で予め形成しておく。
【0035】
以上のように、第1の外マザーガラス板10と、少なくとも一枚の中間マザーガラス板14,19と、第2の外マザーガラス板22とを、各マザーガラス板10,14,19,22の間に壁部材13,17,21を介在させて積層することにより、厚み方向に隣り合うマザーガラス板10,14,19,22と壁部材13,17,21とにより、注入口16a、20a、25aを有する内部空間16b、20b、25bが複数区画形成されたマザー積層体30を作製する。
【0036】
マザー積層体30のx方向における中央部には、第1及び第2の外マザーガラス板10,22が位置する一方、中間マザーガラス板14,19が位置していない領域がy方向の一方側端部から他方側端部にわたって直線状に設けられている。
【0037】
(第1の分断工程)
次に、マザー積層体30を複数に分断し、内部空間16b、20b、25bのユニットを少なくともひとつ有する複数の積層体片31,32(図7及び図8を参照)を作製する。具体的には、本実施形態では、図4及び図6に示すカッティングラインL1に沿ってマザー積層体30を2つの積層体片31,32に分断する。カッティングラインL1は、x方向において隣り合うマザーガラス板片14a、19aとマザーガラス板片14b、19bとの間において、y方向に沿って延びている。換言すれば、カッティングラインL1は、マザー積層体30の、第1及び第2の外マザーガラス板10,22が位置する一方、中間マザーガラス板14,19が位置していない線状の領域に位置している。即ち、中間マザーガラス板14,19が存在していない部分で、マザー積層体30を分断する。
【0038】
各積層体片31,32は、y方向に沿って配列された内部空間16b、20b、25bのユニットを複数有している。内部空間16b、20b、25bに接続されている注入口16a、20a、25aは、いずれの積層体片31,32においても、側面に開口している。また、積層体片31は、第1の外マザーガラス板10の分断片10Aと、第2の外マザーガラス板22の分断片22Aと、中間マザーガラス板14a、19aとを有する。積層体片32は、第1の外マザーガラス板10の分断片10Bと、第2の外マザーガラス板22の分断片22Bと、中間マザーガラス板14b、19bとを有する。
【0039】
本実施形態では、詳細には、以下の要領でマザー積層体30を分断する。即ち、第1の外マザーガラス板10の外側主面10bと、第2の外マザーガラス板22の外側主面22bとのそれぞれに、カッティングラインL1に沿ったスクライブクラックを形成する。そして、そのスクライブクラックに沿ってマザー積層体30を折り割ることにより、複数の積層体片31,32に分断する。第1の分断工程においては、カッティングラインL1上に存在しない中間マザーガラス板14,19を切断する必要はない。
【0040】
(注入工程)
次に、各積層体片31,32の内部空間16b、20b、25bに注入口16a、20a、25aから液晶を注入する。液晶の注入は、例えば、内部空間16b、20b、25bを減圧した状態で注入口16a、20a、25aに液晶を接触させることにより行うことができる。その後、例えば、紫外線硬化型樹脂等を用いて注入口16a、20a、25aを封止する。これにより、内部空間16b、20b、25bのそれぞれに液晶層35a、35b、35c(図9を参照)を形成する。
【0041】
(第2の分断工程)
注入工程の後に、積層体片31,32を複数に分断する。これにより、図9に示す液晶素子1を複数完成させることができる。具体的には、第2の分断工程においては、図5に示す複数のカッティングラインL2に沿って積層体片31,32を分断する。カッティングラインL2は、y方向において隣り合う内部空間16b、20b、25bの組の間をx方向に沿って延びている。即ち、カッティングラインL2は、y方向において隣り合う液晶層35a、35b、35cの間をx方向に沿って延びている。従って、複数の液晶層35a、35b、35cを有する積層体片31,32は、カッティングラインL2に沿って切断されることにより、液晶層35a、35b、35cを各ひとつ有する複数の液晶素子1に分断される。
【0042】
カッティングラインL2の上には、分断片10A,22A,10B,22Bと、中間マザーガラス板14,19とのすべてが位置している。このため、第2の分断工程においては、積層体片31,32をダイシングにより切断することが好ましい。但し、積層体片31,32の切断方法は特に限定されない。積層体片31,32を、例えば、レーザー等を用いて切断したり、ウォータージェットにより切断したりしてもよい。
【0043】
図9に、本実施形態において製造された液晶素子1の略図的断面図を示す。図9に示すように、液晶素子1は、第1の外ガラス板41と、第2の外ガラス板42とを有する。第1の外ガラス板41は、第1の外マザーガラス板10が複数に分断されることにより構成されたものである。第2の外ガラス板42は、第2の外マザーガラス板22が複数に分断されることにより構成されたものである。第1の外ガラス板41の表面41aの上には、第1の電極11と配向膜12とがこの順番で形成されている。第2の外ガラス板42の表面42aの上には、第2の電極23と、配向膜24とがこの順番で形成されている。第1の外ガラス板41と第2の外ガラス板42との間には、少なくとも一枚の中間ガラス板43,44が配されている。詳細には、本実施形態では、第1の外ガラス板41と第2の外ガラス板42との間には、複数の中間ガラス板43,44が配されている。中間ガラス板43,44の両表面の上には、配向膜15a、15b、18a、18bが形成されている。z方向(積層方向)において隣り合うガラス板41〜44の間には、壁部材13,17,21が配されている。壁部材13,17,21と、隣り合うガラス板41〜44によって区画形成された内部空間16b、20b、25bのそれぞれに液晶層35a、35b、35cが形成されている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、液晶を注入する注入工程の前に行われる第1の分断工程において、マザー積層体30をスクライブクラックを形成することにより分断する。このため、マザー積層体をダイシング等の水等の溶媒を必要とする切断法により分断する場合とは異なり、内部空間16b、20b、25bに液体や異物等が混入しにくい。従って、液晶層35a〜35cへの異物等の混入が抑制された高品位な液晶素子1を製造することができる。なお、第2の分断工程においてはダイシングを用いるが、第2の分断工程は注入工程を行った後に行うため、第2の分断工程は、液晶層35a〜35cへの異物混入の原因とはならない。
【0045】
また、本実施形態では、第1の分断工程において、面方向に隣り合うマザーガラス板片14a、14b、19a、19bの間においてマザー積層体30を切断する。即ち、カッティングラインL1上には、マザー積層体30から表面が露出した第1及び第2の外マザーガラス板10,22が存在するのみで、マザー積層体30から主面が露出していない中間マザーガラス板14,19は存在しない。このため、マザー積層体30は、スクライブクラックを形成することにより容易に分断することができる。
【0046】
即ち、第1の分断工程において、面方向に隣り合うマザーガラス板片14a、14b、19a、19bの間においてマザー積層体30を切断することにより、液晶層35a〜35cへの異物等の混入が抑制された高品位な液晶素子1を容易に製造することが可能となる。
【0047】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0048】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態におけるマザー積層体の略図的平面図である。図11は、図10の線XI−XIにおける略図的断面図である。
【0049】
第1の実施形態では、中間マザーガラス板14,19のそれぞれを、2枚のマザーガラス板片14a、14b、19a、19bにより構成する例について説明した。このため、第1の実施形態では、各マザーガラス板片14a、14b、19a、19bから複数の中間ガラス板43,44が形成される。
【0050】
それに対して第2の実施形態では、中間マザーガラス板14,19のそれぞれを、それぞれがひとつの中間ガラス板43,44を構成している複数のマザーガラス板片51により構成する。このようにすることによって、カッティングラインL1とカッティングラインL2とのいずれの上にも、マザー積層体30に主面が露出していない中間マザーガラス板14,19が配されないこととなる。従って、第1及び第2の分断工程の両方をスクライブクラックを形成することにより行うことが可能となる。その結果、例えば、第1の分断工程と第2の分断工程とを行った後に注入工程を行うことも可能となる。但し、第2の実施形態では、中間マザーガラス板14,19の配置工程が第1の実施形態よりも煩雑になる。このため、中間マザーガラス板14,19の配置工程を簡略化する観点からは、第1の実施形態のように、各マザーガラス板片14a、14b、19a、19bから複数の中間ガラス板43,44が形成されるようにすることが好ましい。
【0051】
上記第1及び第2の実施形態では、本発明の実施形態の一例として、液晶レンズの製造方法について説明した。但し、本発明において、液晶素子は、液晶レンズに限定されない。液晶素子には、液晶レンズ、液晶シャッター、液晶表示素子、液晶絞り等が含まれるものとする。
【0052】
上記第1及び第2の実施形態では、中間マザーガラス板を複数配する例について説明した。但し、本発明において、第1の外マザーガラス板と第2の外マザーガラス板との間に配する中間マザーガラス板の数量は特に限定されない。例えば、第1の外マザーガラス板と第2の外マザーガラス板との間に中間マザーガラス板を一枚配してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…液晶素子
10…第1の外マザーガラス板
22…第2の外マザーガラス板
10A,22A,10B,22B…分断片
10a、22a…主面
10b、22b…外側主面
11…第1の電極
11a…第1の部分
11b…第2の部分
12、15a、15b、18a、18b、24…配向膜
13,17,21…壁部材
13a…凹部
13b…凹部列
14,19…中間マザーガラス板
14a、14b、19a、19b…マザーガラス板片
16a、20a、25a…注入口
16b、20b、25b…内部空間
23…第2の電極
30…マザー積層体
31,32…積層体片
35a、35b、35c…液晶層
41…第1の外ガラス板
42…第2の外ガラス板
43,44…中間ガラス板
51…マザーガラス板片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外ガラス板と、前記第1の外ガラス板に対向して配された第2の外ガラス板と、前記第1の外ガラス板と前記第2の外ガラス板との間に配された少なくとも一枚の中間ガラス板と、厚み方向に隣り合う前記ガラス板の間に配されている複数の液晶層とを備える液晶素子の製造方法であって、
前記第1の外ガラス板を構成するための第1の外マザーガラス板と、前記少なくとも一枚の中間ガラス板を構成するための少なくとも一枚の中間マザーガラス板と、前記第2の外ガラス板を構成するための第2の外マザーガラス板とを、各マザーガラス板間に壁部材を介在させて積層することにより、厚み方向に隣り合う前記マザーガラス板と前記壁部材とにより、注入口を有する内部空間が複数区画形成されたマザー積層体を作製する積層体作製工程と、
前記マザー積層体を複数に分断し、少なくともひとつの前記内部空間を有する複数の積層体片を作製する第1の分断工程と、
前記各積層体片の前記内部空間に前記注入口から液晶を注入し、封止することにより前記液晶層を形成する注入工程と、
を備え、
前記中間マザーガラス板を複数のマザーガラス板片により構成し、
前記第1の分断工程において、前記マザー積層体を、前記面方向に隣り合うマザーガラス板片の間において切断する、液晶素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の分断工程において、前記第1の外マザーガラス板と前記第2の外マザーガラス板とのそれぞれの外側主面にスクライブクラックを形成して前記マザー積層体を複数に分断する、請求項1に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の分断工程において、複数の前記内部空間を有する積層体片を作製し、
前記注入工程の後に前記積層体片を複数に分断することにより前記液晶素子を複数作製する第2の分断工程をさらに備え、
前記第2の分断工程においては、前記積層体片をダイシングにより切断する、請求項1または2に記載の液晶素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−64906(P2013−64906A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204119(P2011−204119)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【出願人】(511228300)ニューマンパワーサービス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】