説明

液晶素子用感圧接着剤組成物

【課題】ガラス基板と偏光板の接着、又は偏光板と位相差板との積層板との接着に適した感圧接着剤の提供。
【解決手段】(A)アクリル系ポリマーと、(B)下記平均組成式:YSi(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2・・・(1)(式中、Yは一部がエノール化していてもよいβ-ケトエステル基含有有機基、Rはメルカプト基、エポキシ基などの官能基を含み又は含まない炭素原子数1〜18の一価炭化水素基、Rは官能基を含まず、且つRとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基、R3は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基、a,b,c,d,及びeは、それぞれ0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1で示される数であって、且つ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。)で表されるオルガノポリシロキサン化合物からなる接着性改質剤とを含有する液晶素子用感圧接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な接着性改質剤を用いた液晶表示装置用の感圧接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、液晶表示装置の製造時には剥離可能であるが、経時で接着性が高くなり、高温高湿条件下で使用される際には優れた耐久性を示す液晶素子用の感圧接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶と接する面に透明電極が配置された二枚のガラス基板と、この二枚のガラス基板間に充填された液晶材料と、この二枚のガラス基板の外側面に配置された偏光板または偏光板と位相差板との積層板とからなっている。
【0003】
このような液晶素子において、偏光板または偏光板と位相差板との積層板は、例えばガラス基板の表面にアクリル樹脂系の感圧接着剤を用いて貼着されている。
【0004】
こうした感圧接着剤を用いた液晶素子の製造工程において、偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板のガラス基板との貼り合わせに不具合が発生した場合に、偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板をガラス基板から剥離し、新たな偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板をガラス基板に貼着し直すことができれば、高価な液晶材料およびこの液晶材料が充填されているセル自体を廃棄することなく、良好な液晶性能を示す液晶素子を製造するができる。このような観点から、感圧接着剤は、偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板のガラス基板との貼り合わせの段階で不具合が発生した際には、容易に剥がれやすいことが望ましい。
【0005】
一方、近年、液晶素子は、パーソナルコンピューター、車載液晶モニター、テレビジョンの画面など、その使用範囲が著しく広範囲におよんでおり、各種用途が広がるに従って液晶素子の使用環境も非常に過酷になってきている。従って、こうした使用条件に耐えるように偏光板または偏光板と位相差板との積層板とガラス基板との接着強度はより高いことが望ましく、かつ、この高い接着強度が長期間変動しないことが求められる。
【0006】
このように液晶素子のガラス基板に偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板を貼着するのに使用される感圧接着剤には、製造工程における不具合発生時には、剥離しようとすると液晶素子に損傷を与えることなく容易に基板から偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板を剥離でき、一方、液晶素子が各種用途に実際に供され使用されるに到った後には、安定した接着強度が長期に渡って維持されるという、相反する特性が要求される。
【0007】
従来から、分子内にβ-ケトエステル構造を有する有機珪素化合物を接着性改質剤として用いたアクリル樹脂系感圧接着剤は、製造段階での不具合発生時には、剥離しようとすると液晶素子に損傷を与えることなく容易に基板から偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板を剥離でき、液晶素子が各種用途において実際に使用されるに到った後には、安定した接着強度が長期間維持されることは、例えば、特許文献1等で知られている。しかし、このような従来知られているβ-ケトエステル構造を有する有機珪素化合物を用いても、近年要求されている過酷な環境下では、接着強度の長期間に渡る安定性は未だ不十分であり、改良が求められている。
【0008】
【特許文献1】特許第3533446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ガラス基板と偏光板、または、ガラス基板と、偏光板と位相差板との積層板との接着に特に適した感圧接着剤組成物を提供することを課題としている。
【0010】
さらに詳しくは、本発明の課題は、液晶素子を構成するガラス基板に偏光板または偏光板と位相差板との積層板を適度な強度で確実に接着することができると共に、製造工程においてこの偏光板または偏光板と位相差板との積層板を剥離する必要性が生じた場合には、ガラス基板などの液晶セルに損傷を与えることなく剥離することができ、しかもこのガラス基板上に接着剤が残留しにくく、さらに液晶素子を各種用途での実際の使用に供した後には安定した強固な接着強度を長期間維持できる液晶素子用感圧接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記の課題が、
(A)アクリル系ポリマーと、
(B)下記平均組成式(1):
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2
・・・(1)
(式中、
Yは少なくとも一部がエノール化していてもよいβ-ケトエステル基を含有する有機基であり、
はメルカプト基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アルケニル基、アミノ基、ハロゲン原子、及び、エノール化したβ−ケトエステル基が分子内又は分子間で式ORで表されるヒドロカルビルオキシ基と反応して生成する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含み又は含まない炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
は官能基を含まず、かつ、Rとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
3は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基であり、
a,b,c,d,及びeは、それぞれ、0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1で示される数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。)
で表される、β-ケトエステル基含有有機基とヒドロカルビルオキシ基とを一分子内に含有するオルガノポリシロキサン化合物からなる接着性改質剤と、
【0012】
を含有し、(A)成分のアクリル系ポリマー100質量部に対して、(B)成分の接着性改質剤は0.001〜10質量部の割合である液晶素子用感圧接着剤組成物により解決することができることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶素子用感圧接着剤組成物は、液晶素子の製造工程において、ガラス基板と、偏光板または偏光板と位相差板との積層板とを必要かつ充分な接着強度で接着することができる。この接着強度は該製造工程においては接着組成物が加熱などに付されても過度に高くならず適度なレベルに保持される。そのため、製造工程で接着に不具合が生じた場合には偏光板あるいは偏光板と位相差板との積層板をガラス基板から容易に剥離することができ、しかもその場合に基板上に接着剤は残存し難いし、剥離の際にガラス基板又は液晶セルに損傷を与えることが稀である。
【0014】
さらに、本発明の感圧接着剤組成物は、液晶素子の製造工程においては上記のように適度の接着性と剥離性を示す一方で、完成した液晶素子が各種用途に実際に供され、たとえ高温高湿のような過酷な条件にさらされても必要かつ十分な接着強度を長期にわたって安定に維持し、偏光板または偏光板と位相差板との積層板に膨れや剥がれなどの接着不良が発生しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の液晶素子用感圧接着剤組成物について具体的に説明する。
【0016】
本発明の液晶素子用感圧接着剤組成物は、主成分であるアクリル系ポリマーと、接着性改質剤として特定の新規なβ-ケトエステル構造を有するオルガノポリシロキサン化合物を含有している。以下、順次説明する。
【0017】
−(A)アクリル系ポリマー−
(A)成分のアクリル系ポリマーは、本発明の組成物に感圧接着性を付与する作用を有する。
【0018】
本発明において、「アクリル系ポリマー」とは、アクリル系モノマーの重合体(即ち、単独重合体及び共重合体)である。アクリル系モノマーには、アクリル酸系モノマー及びメタクル酸系モノマーが包含される。
【0019】
アクリル酸系モノマーとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミドが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0020】
メタクリル酸系モノマーとしては、例えばメタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミドが挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」などの用語は、それぞれ、アクリル酸とメタクリル酸の総括概念、アクリレートとメタクリレートとの総括概念などとして用いる。
【0022】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーは、上記のモノマーの一種単独の重合体でも二種以上のモノマーの共重合体でもよい。中でも、官能基を有しないアクリル系モノマーと官能基を有するアクリル系モノマーを含む共重合体が好ましい。ここで、官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、アミド基等が挙げられる。
【0023】
官能基を有しないアクリル系モノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレートおよびエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは一種単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0024】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、好ましくは、上記の官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位を60〜99質量%、より好ましくは80〜98質量%有している。
【0025】
また、官能基を有するアクリル系モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の官能基置換アルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN-エチロール(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。これらは一種単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0026】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、好ましくは、上記官能基含有アクリル系モノマーから誘導される繰り返し単位を、通常は1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%の量で有している。
【0027】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、上記の官能基を有しないアクリル系モノマーおよび官能基を有するアクリル系モノマー以外の単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよく、これらの例としては、スチレン系モノマーから誘導される繰り返し単位およびビニル系モノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0028】
具体的にはスチレン系モノマーの例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレンおよびヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等を挙げることができる。
【0029】
また、ビニル系モノマーの例としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、酢酸ビニルおよびアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレン等の共役ジエンモノマー;塩化ビニルおよび臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン等を挙げることができる。
【0030】
これらのモノマーは、一種単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。本発明で使用されるアクリル系ポリマー中には、上記他のモノマーから誘導される繰り返し単位は、通常は0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%の量で含有されている。
【0031】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、公知の方法により、例えば、上記のようなモノマーを反応溶媒に投入して、反応系内の空気を窒素ガス等の不活性ガスで置換した後、必要により反応開始剤の存在下に、加熱攪拌して重合反応させることにより製造することができる。
【0032】
反応溶媒の使用は任意であり、通常は有機溶媒が使用され、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。
【0033】
また、反応開始剤を使用する場合には、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等を使用することができる。
【0034】
上記の重合反応の反応温度は50〜90℃程度でよく、反応時間は2〜20時間程度であり、好ましくは4〜12時間である。上記のような反応において、モノマーは、得ようとするアクリル系ポリマー中における各繰り返し単位の量に対応して仕込まれる。また、反応溶媒は用いる場合にはモノマーの合計量100質量部に対して50〜300質量部の量で使用される。さらに、反応開始剤は、通常は0.01〜10質量部の量で使用される。
【0035】
こうして反応させることにより本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、反応溶媒に(共)重合体が25〜70質量%の量で含有される溶液または分散液として得られる。本発明では上記のようにして得られた反応溶媒を除去することなく、この反応溶媒に分散させた状態でアクリル系ポリマーと他の成分とを混合すればよい。
【0036】
本発明で使用されるアクリル系ポリマーは、通常100000〜1500000、好ましくは300000〜800000の重量平均分子量を有している。なお、このアクリル系ポリマーには、本発明の目的を損なわない範囲内で、無機フィラー等の他の成分を配合してもよい。
【0037】
−(B)接着性改質剤−
本発明で用いられるオルガノポリシロキサン化合物は、上述したように平均組成式(1):
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2 (1)
で表される。該オルガノポリシロキサン化合物は、反応性基としてβ−ケトエステル基とヒドロカルビルオキシ基を一分子内に含有する化合物である。β−ケトエステル基はその少なくとも一部がエノール化(即ち、互変異性化してエノール体を形成)していてもよいが、以下の説明では単に「β−ケトエステル基」とも称する。
【0038】
上記式(1)において、Yはβ−ケトエステル基含有有機基を示し、例えば、一般式:
−Q−Z
(式中、Zはβ−ケトエステル基であり、Qは2価の炭化水素基である。)
で表される。
【0039】
ここで、Zとしては、式:
【0040】
【化1】

【0041】
(式中、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有し若しくは有しないフェニル基を示し、特にメチル基が好ましい)
で表されるβ−ケトエステル基が好ましい。Rで表されるアルキル基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6、さらには1〜4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、メチル基が特に好ましい。
【0042】
で表される置換フェニル基としては、塩素、臭素等のハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基等で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0043】
Qの2価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6のものが好ましく、特に、アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基が好ましく、特にプロピレン基が好ましい。
【0044】
は、炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8の炭化水素基であり、場合によっては少なくとも1種の前記特定官能基で置換されていてもよい。炭素原子数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。特にプロピル基が好ましい。本発明で用いられるオルガノポリシロキサン化合物にβ−ケトエステル基含有有機基(Y)の特性のみが期待される場合には特定官能基は含まれていなくてもよい。しかし、β−ケトエステル基含有有機基の特性に加え更に他の特性を付与させる場合には、前記特定官能基を分子内に含ませることができる。特定官能基は、該オルガノポリシロキサンに付与させたい特性に応じて選択される。特にメルカプト基及び/又はエポキシ基を含んでいることが好ましい。
【0045】
上記において、「エノール化したβ−ケトエステル基が該オルガノポリシロキサン化合物の分子内又は分子間でヒドロカルビルオキシ基と反応して生成する基」は、分子内又は分子間での交換反応により形成された架橋構造を意味している。
【0046】
は官能基を含まず、かつ、Rとは異なる炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8の一価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。特にメチル基が好ましい。
【0047】
は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基が挙げられる。この中で、特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0048】
a,b,c,d,及びeはそれぞれ0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1の数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。
【0049】
ここで、aは該オルガノポリシロキサン化合物において、ケイ素原子数に対するβ−ケトエステル基含有有機基(Y)数の比を表す数値である。このaが0.01より小さいと、本オルガノポリシロキサン化合物の使用時に、所望のβ−ケトエステル基含有有機基の反応性による特性が発揮されない。一方、aを1より大きくすることは合成法上やコスト面から困難である。そのためaは0.01≦a≦1の範囲とすることが必要であり、好ましくは0.1≦a≦1の範囲、より好ましくは0.1≦a≦0.8の範囲である。
【0050】
また、bは、該オルガノポリシロキサン化合物において、ケイ素原子数に対する特定官能基を含んでいてもよい炭素原子数1〜18の一価炭化水素基(R)数の比を表す数値であり、これが0あるいは比較的小さい場合は相対的にアルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基(OR)の含有量が増加して加水分解反応やシリル化反応が起こり易くなるし、場合によってはオルガノポリシロキサンの水に対する親和性が向上する。
【0051】
一方、このbが比較的大きい場合には、Rが前記特定官能基を有するときは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の有機系樹脂との反応性が向上するし、また該特定官能基を有しないときには、該一価炭化水素基(R)の種類によっては、該オルガノポリシロキサン化合物に疎水性が付与され(Rが例えばアルキル基である場合)、また、該オルガノポリシロキサン化合物の有機化合物や有機系樹脂との親和性ないしは相溶性が向上する(Rが例えばフェニル基である場合)などの効果が発揮される。しかし、この場合、相対的にアルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基の含有量が減少するため、ヒドロカルビルオキシシリル基等の反応性は低下する。従って、bの値は該オルガノポリシロキサンの使用目的に応じて0≦b<1の範囲内で選択する必要であり、好ましくは0≦b≦0.8の範囲、より好ましくは0≦b≦0.5の範囲である。
【0052】
cは、該オルガノポリシロキサン化合物において、ケイ素原子数に対する、官能基を含まずかつRとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基(R2)数の比を表す数値である。cが0あるいは比較的小さい場合は相対的にアルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基(OR)の含有量が増加して加水分解反応やシリル化反応が起こり易くなり、場合によっては該オルガノポリシロキサン化合物の水に対する親和性が向上する。一方、このcが比較的大きい場合、該オルガノポリシロキサン化合物に疎水性が付与されたり、該オルガノポリシロキサン化合物の硬化物に柔軟性や離型性が付与されるなどの効果が得られる。しかし、この場合には、相対的にヒドロカルビルオキシ基の含有量が減少するときには、ヒドロカルビルオキシシリル基等の反応性は低下する。従って、cの数値は、使用目的に応じて0≦c<2の範囲内で選択することが必要であり、好ましくは0≦c≦1の範囲、より好ましくは0≦c≦0.8の範囲である。
【0053】
dは、該オルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子数に対するヒドロカルビルオキシ基(OR)数の比を表す数値であり、使用目的に応じて適切に設定することができる。その範囲は0≦d≦2であって、この数値が0又は0に近い場合には、該オルガノポリシロキサンの無機材料に対する反応性が低くなり、2に近ければ逆に無機材料への反応性を高くなる。好ましくは、0≦d≦1.8の範囲である。
【0054】
eは、該オルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子数に対する水酸基(OH)数の比、換言するとシラノール基の含有率を表す数値である。このシラノール基はシリル化反応や縮合反応にあずかることができ、該オルガノポリシロキサン化合物に親水性を付与する作用を有する。しかし、該オルガノポリシロキサン化合物の保存安定性を良好に保つという観点からはできるだけ少なくすることが好ましい。従って、0≦e≦1の範囲とすることが必要であり、好ましくは0≦e≦0.5の範囲、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲である。
【0055】
a+b+c+d+eの合計は、上記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物の縮合度を表す〔4−(a+b+c+d+e)〕/2を決定する数値であり、2≦a+b+c+d+e≦3の範囲とすることが必要である。
【0056】
また、該オルガノポリシロキサン化合物の個々の分子の重合度は、2〜数100の範囲とすることができる。即ち、ケイ素原子2個のダイマーからケイ素原子数百個程度のポリマーまであり得る。しかし、平均重合度が2の場合は該オルガノポリシロキサン化合物中のモノマー含有量が多くなって、シリコーンヒドロカルビルオキシオリゴマー本来の使用目的(即ち、低揮発性)が損なわれる。一方、平均重合度が大きすぎると該オルガノポリシロキサン化合物は高粘度状態、ペースト状、又は固体状となって取り扱いが困難となる。そのため、平均重合度を3〜100の範囲とすることが好ましく、さらには3〜50の範囲、特には6〜20とすることがより好ましい。この様な観点から、上記した(a+b+c+d+e)の数値は、好ましくは2.02≦a+b+c+d+e≦2.67の範囲、より好ましくは2.04≦a+b+c+d+e≦2.67の範囲である。
【0057】
本発明で用いられるオルガノポリシロキサン化合物の分子構造は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、これらが組み合わさった構造を持っていてもよい。該オルガノポリシロキサン化合物は通常単一構造ではなく、種々の構造を有する分子の混合物である。
【0058】
<製造方法>
本発明で用いられるオルガノポリシロキサン化合物は従来公知の各種の方法によって得ることができる。代表的な製造方法として上述した製造方法1及び製造方法2を挙げられ、以下詳しく説明する。
【0059】
−製造方法1−
該方法は、(a)下記一般式(2)で表される少なくとも一種のβ−ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせを単独で部分加水分解及び重縮合する方法である。
【0060】
−製造方法2−
この方法は、(a)下記一般式(2)で表される少なくとも一種のβ−ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせと、
(b)下記一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、下記一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを、部分共加水分解及び重縮合する方法である。
【0061】
YR2Si(OR33−m ・・・(2)
12nSi(OR33−n ・・・(3)
2pSi(OR34−p ・・・(4)
(式中、Y、R、R、R3はそれぞれ上記と同様な意味を有し、mは0〜2の整数、nは0〜2の整数、pは0〜3の整数を示す。)
【0062】
式(2)で表される化合物としては以下のものが例示される。
【0063】
【化2】

【0064】
【化3】

【0065】
【化4】

【0066】
【化5】

【0067】
【化6】

【0068】
【化7】

【0069】
【化8】

【0070】
【化9】

【0071】
【化10】

【0072】
一般式(3)で表される化合物について説明する。Rは特定官能基を有し又は有しない炭素原子数1〜18の炭化水素基である。
【0073】
特定官能基を有しない炭素原子数1〜18の炭化水素基の例は上述した通りである。特定官能基を有する炭素原子数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メルカプトメチル基、3−メルカプトプロピル基、6−メルカプトヘキシル基、10−メルカプトデシル基、4−(メルカプトメチル)フェニルエチル基、グリシドキシメチル基、3−グリシドキシプロピル基、5,6−エポキシヘキシル基、9,10−エポキシデシル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、2−(3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル)プロピル基、アクリロイルオキシメチル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、6−アクリロイルオキシヘキシル基、10−アクリロイルオキシデシル基、メタクリロイルオキシメチル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、6−メタクリロイルオキシヘキシル基、10−メタクリロイルオキシデシル基、ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基、3−ビニルオキシプロピル基、p−スチリル基、シクロヘキセニルエチル基、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、6−クロロヘキシル基、10−クロロデシル基、ブロモメチル基、3−ブロモプロピル基、トリフロロプロピル基、ヘプタデカフロロデシル基、アミノメチル基、3−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、N−メチル−3−アミノプロピル基、N,N−ジメチル−3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピル基、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピル基などが挙げられる。
【0074】
一般式(3)で表され、特定官能基を有するアルコキシシランの例としては、上に例示した特定官能基を有する炭素原子数1−8の炭化水素基を有する、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エトキシジメトキシシラン、メトキシジエトキシシランなどが挙げられる。
【0075】
より具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトシシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトシシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフロロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフロロデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトシシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフロロプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフロロデシルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、3−メルカプトプロピルトリメトシシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが好ましい。
【0077】
一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシ基含有シランを例示する。具体的には、一般式(4)においてp=0であるヒドロカルビルオキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシランなどが挙げられる。一般式(4)においてp=であるヒドロカルビルオキシシランとして、Rとしてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェニルエチル基などを有するトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソブトキシシランなどが挙げられる。具体的には、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどである。一般式(4)においてp=2のヒドロカルビルオキシシランとして、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0078】
上述した一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が好ましい。
【0079】
一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン及び一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシランは、おのおの、その部分加水分解物としても用いることができ、部分加水分解物との混合物として用いてもよい。また、これらの化合物は相互に縮合した縮合物としても用いてもよい。さらに、一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン及びその部分加水分解物、ならびに、一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン及び部分加水分解物は、おのおの、一種単独でも複数種の組み合わせとしても使用することができる。
【0080】
製造方法1においては、(a)成分である、一般式(2)で表される少なくとも一種のヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はそれらの組み合わせを加水分解及び縮合に供する。
【0081】
製造方法2において、(a)成分である、一般式(2)で表される少なくとも一種のヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はそれらの組み合わせと、(b)成分である一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを部分共加水分解及び重縮合に供する。
【0082】
製造方法2において、(a)成分と(b)成分との比率は特に限定されない。しかし、β−ケトエステル基含有有機ケイ素化合物である(a)成分の比率が少なすぎると、得られるβ−ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物においてβ−ケトエステル基由来の特性が発揮され難いので、一分子中に少なくとも一個のβ−ケトエステル基を有するものとする必要がある。したがって、(a)成分と、(b)成分との割合は、ケイ素原子換算でモル比が1:99〜99:1の範囲とすることが好ましく、更には10:90〜80:20の範囲とすることがより好ましい。(a)成分及び(b)成分の配合順序、混合方法、ならびに、部分共加水分解及び重縮合を行う方法は特に限定されない。
【0083】
製造方法1及び製造方法2のいずれの方法でも、通常、従来公知の方法に基づき、例えば、(a)成分単独、或いは(a)成分と(b)成分との混合物に、加水分解・縮合反応触媒の存在下、水を加えて部分(共)加水分解及び重縮合反応を行えばよい。この際、必要に応じて適当な有機溶媒を使用することも可能である。
【0084】
使用される加水分解・縮合反応触媒としては、従来公知の種々のものを使用することができる。具体例としては、酢酸、トリフロロ酢酸、酪酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類;フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなどの含フッ素化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジオクチル錫ジラウレート、アルミニウムキレート類などの有機金属化合物類などを挙げることができる。上記触媒は一種単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。触媒の使用量は、原料全体の中に存在するSi原子に対して0.0001〜10モル%の範囲とすることが好ましく、更には0.001〜3モル%の範囲とすることがより好ましい。
【0085】
前述の通り、該オルガノポリシロキサン化合物の製造においては、部分加水分解及び重縮合に使用する水の量によって平均重合度が決まる。水を過剰に添加するとその分のヒドロカルビルオキシ基が加水分解される結果、分岐構造の多いレジン体となって、目的とするヒドロカルビルオキシ基を含有するシリコーンオリゴマ−が得られなくなるため、加水分解水量は厳密に決定する必要がある。例えば、使用するヒドロカルビルオキシシラン原料が全てケイ素原子1個のモノマーである場合、平均重合度Zのオルガノポリシロキサン化合物を調製するためには、Zモルのヒドロカルビルオキシシラン原料に対して(Z−1)モルの水を使用して部分加水分解、重縮合を行うことが好ましい。
【0086】
この際、必要に応じてアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類などの有機溶媒を使用してもよい。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などを挙げることができる。また、上記溶媒と共に、ヘキサン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒を併用してもよい。特に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を使用することが好ましい。
【0087】
有機溶媒の使用量は、原料となるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物及びそれらの縮合物の合計100質量部に対して、一般に0〜1000質量部の範囲とすればよい。加水分解開始時の反応系の均一性と、添加効果及びポットイールドを考慮すると、10〜500質量部の範囲とすることが好ましく、更に、15〜200質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0088】
部分(共)加水分解、重縮合反応における実際の操作としては、ヒドロカルビルオキシシラン原料、触媒及び有機溶媒からなる混合系に所定量の水あるいは水/有機溶媒の混合溶液を滴下するか、ヒドロカルビルオキシシラン原料及び有機溶媒からなる混合系に所定量の水/触媒の混合溶液あるいは水/触媒/有機溶媒の混合溶液を滴下することが好ましい。この際、加水分解反応性の高いメトキシ基やエトキシ基を有するヒドロカルビルオキシシラン原料と、加水分解反応性の低いプロポキシ基やブトキシ基等の炭素原子数3〜4のアルコキシ基を有するヒドロカルビルオキシシラン原料とを予め別々に部分加水分解した後、両成分を混合して、場合によって更に部分共加水分解を行ってから、重縮合反応を行うことも可能である。
【0089】
各反応は0〜150℃の温度範囲で実施すればよい。一般的には、室温より低い温度では反応の進行が遅くなるため実用的でなく、また高温すぎる場合もβ−ケトエステル基がエノール化した異性化基が他の分子のヒドロカルビルオキシ基と反応し、架橋反応が生じ増粘したり、ゲル状物となったり、エポキシ基、メルカプト基等の熱分解やアクリロイルオキシ基の熱重合など、特定官能基への悪影響が発生するため、20〜130℃の温度範囲とすることが好ましい。反応後、使用した触媒の中和、吸着、濾過等による除去操作や、使用した有機溶媒と副生したアルコール、低沸点物の留去などによる精製工程を行い、目的とする該オルガノポリシロキサン化合物を得ることができる。
【0090】
上記(B)成分の接着性改質剤は、(A)成分のアクリル系ポリマー100質量部に対して通常0.001〜5質量部の量で含有させればよく、さらに0.01〜2質量部の量で含有させることが好ましい。(B)成分の接着性改質剤が多すぎると、初期接着強度が低下し、液晶素子使用環境下において、偏光板または偏光板と位相差板との積層板の膨れや剥がれを生じ易くなる。また、(B)成分の量が少なすぎると、製造工程で加熱を受けたときに接着強度が高くなり過ぎて適度の剥離性が失われるため、接着に不具合を生じても容易に剥離できず、偏光板又は偏光板と位相差板との積層板を基板から剥離すると液晶セルの損傷が起こり易くなるし、接着剤の基板表面へのり残りが発生し易くなる。
【0091】
なお、(A)成分のアクリル系ポリマーと(B)成分の接着性改質剤は、組成物の使用直前に配合することが好ましい。
【0092】
−その他の成分−
本発明の液晶素子用感圧接着剤組成物は、必須成分として上記のアクリル系ポリマーと特定の接着性改質剤とを含有しているが、さらに必要により他の成分を含んでいてもよい。
【0093】
本発明の液晶素子用感圧接着剤組成物に配合することができる他の成分の例としては、タッキファイヤー、可塑剤、架橋剤、染料等を挙げることができる。これらは公知のものを挙げることができる。これらの任意成分は一種単独でも二種以上を組み合わせても配合することができる。
【0094】
本発明の液晶素子用感圧接着剤組成物には、特に架橋剤が配合されていることが好ましい。本発明で使用される架橋剤の例としては、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、金属キレート化合物およびアジリジン系化合物を挙げることができる。
【0095】
架橋剤として用いられるイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニレンメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および、これらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等を挙げることができる。
【0096】
また、エポキシ系化合物の例としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンおよび1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0097】
さらに、アミン系化合物の例としては、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂およびメラミン樹脂等を挙げることができる。
【0098】
またさらに、金属キレート化合物の例としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトンが配位した化合物、前記多価金属にアセト酢酸エチルが配位した化合物等を挙げることができる。
【0099】
さらに、アジリジン系化合物の例としては、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルフォスフィンオキサイド、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、およびテトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等を挙げることができる。
【0100】
これらの架橋剤は一種単独でも二種以上組み合わせても使用することができる。
【0101】
該架橋剤は、本発明の組成物中の樹脂成分100質量部に対して、通常は0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部の量で使用される。なお、これらの架橋剤は本発明の上記の(A)成分及び(B)成分と反応性を有することから、別々に包装し、直前に(A)成分及び(B)成分と混合して使用される。
【実施例】
【0102】
以下に本発明の実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定的に解釈されるべきではない。
【0103】
以下の合成例で得られたオルガノポリシロキサン化合物の分析は下記の方法で実施した。
(1)オルガノポリシロキサン化合物の平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン標準サンプルから作成した検量線を基準として求めた重量平均分子量より算出した。
(2)オルガノポリシロキサン化合物の構造解析は、赤外線吸収スペクトル(IR)分析及びプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)分析により行った。
【0104】
[合成例1]
〔平均組成式(1)においてa=1、b=0、c=0、そしてd=1.33の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、式:
【0105】
【化11】

【0106】
で表されるアセトアセテート官能性トリメトキシシラン316.8g(1.2mol)及びメタノール32g(1.0mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を攪拌しながら、0.05N塩酸水溶液18g(1.0mol)とメタノール48g(1.5mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
【0107】
次いで、フッ化カリウムの1質量%メタノール溶液11.2g(KF:1.92×10−3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、常圧下内温120℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:255g、収率:94%)。
【0108】
このオルガノポリシロキサン化合物の25℃における粘度は158mm2/sであり、比重は1.200であり、屈折率は、1.4461であった。このものに核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、ならびに、メトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とメトキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、7366であった。
【0109】
[合成例2]
〔平均組成式(1)においてa=0.5、b=0、c=0.5、そしてd=1.33の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、式:
【0110】
【化12】

【0111】
のアセトアセテート官能性エトキシシラン306g(1.0mol)、メチルトリエトキシシラン178g(1.0mol)及びエタノール45g(1mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を攪拌しながら、0.05N塩酸水溶液30g(1.667mol)とエタノール45g(1mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
【0112】
次いで、フッ化カリウムの1質量%エタノール溶液11.2g(KF:1.92×10−3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、常圧下内温120℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:342g、収率:94%)。
【0113】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、エトキシ基、ならびにメチル基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とアルコキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、6727であった。
【0114】
[合成例3]
〔平均組成式(1)においてa=0.5、b=0、c=0、そしてd=1.83の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、式:
【0115】
【化13】

【0116】
のアセトアセテート官能性エトキシシラン306g(1.0mol)、テトラエトキシシラン208g(1.0mol)及びエタノール45g(1.0mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を攪拌しながら、0.05N塩酸水溶液30g(1.667mol)とエタノール45g(1.0mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
【0117】
次いで、フッ化カリウムの1質量%エタノール溶液11.2g(KF:1.92×10−3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、常圧下内温120℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:342g、収率:94%)。
【0118】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、ならびにエトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とアルコキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、9803であった。
【0119】
[合成例4]
〔平均組成式(1)においてa=0.833、b=0.167、c=0、そしてd=1.33の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
合成例1において用いたアセトアセテート官能性トリメトキシシランを量316.8g(1.2mol)を264.0g(1.0mol)に変更したこと、原料モノマーとして該アセトアセテート官能性トリメトキシシランの他にγ−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン47.2g(0.2mol)を加えたこと以外は、合成例1と同様にして無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:248g、収率:93.5%)。
【0120】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、グリシジル基ならびにメトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とメトキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、10211であった。
【0121】
[合成例5]
〔平均組成式(1)においてa=1.0、b=0、c=0.2、そしてd=1.0の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
合成例1において用いたアセトアセテート官能性トリメトキシシランの量316.8g(1.2mol)を264.0g(1.0mol)に変更し、原料モノマーとして該アセトアセテート官能性トリメトキシシランの他に式:
【0122】
【化14】

【0123】
で表されるアセトアセテート官能性メチルジメトキシシラン62.0g(0.25mol)を加えたこと、0.05N塩酸水溶液の量を20.25g(1.125g)に変更したこと以外は、合成例1と同様にして、無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:259g、収率:94.4%)。
【0124】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、ならびに、メチル基及びメトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とメトキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、8211であった。
【0125】
〔実施例1〕
n−ブチルアクリレート43質量部、エチルアクリレート20質量部、2−エチルへキシルアクリレート25質量部、スチレン3質量部、アクリル酸7質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2質量部、酢酸エチル100質量部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ、この反応器内を窒素ガスで置換した後、攪拌下に、窒素雰囲気中で63℃にて2時間反応させた。更に別に調整した酢酸エチル10質量部にアゾビスイソブチロニトリル0.05質量部を溶解させた溶液10質量部を、63℃にて上記反応器に2時間かけて滴下した。
ついで、反応器を72℃に昇温し、上記と同様にして調製したアゾビスイソブチロニトリルの酢酸エチル溶液10質量部を4時間かけて滴下し、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液220質量部を得た。この酢酸エチル溶液中におけるアクリル系ポリマーの濃度は45質量%である。
上記の反応液220質量部(アクリル系ポリマー100質量部に相当)に合成例1にて合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン組成物0.2質量部と、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン(株)製)2質量部とを加えてよく攪拌して本発明の接着剤組成物を得た。
【0126】
=接着剤としての評価=
次のようにして剥離性と実装性を測定、評価した。
【0127】
・剥離性
・・初期接着強度の測定:
上記のようにして得られた接着剤組成物をポリエステル製離型フィルムに塗布した後乾燥させて乾燥後の厚さが25μmの被膜を形成した。次いで、この離型フィルム上の接着剤組成物の被膜を、厚さ0.20mmの偏光板の片面上に転写し、温度23℃、湿度65%の条件で7日間熟成させた。その後、この偏光板の接着剤組成物の被膜側をガラス基板の表面に貼りあわせてサンプルを作製した。このサンプルを温度50℃、圧力5kg/cm2の条件で20分間保持して接着させた。
【0128】
こうして接着した偏光板とガラス基板との接着力について、JIS−Z−0237およびJIS−Z−0238に準じて初期接着強度(23℃で1時間放置した後の接着強度)を測定した。
【0129】
・・加熱エージング後の接着強度の測定:
上記と同様にして作製したサンプルを80℃で15時間放置した後23℃まで放冷し、この温度で1時間放置した後、接着強度を上記と同様にして測定した。
【0130】
・・のり残りの評価:
上記のように初期及び加熱エージング後の接着強度の測定において、ガラス基板から偏光板を剥離した際に、ガラス基板表面に接着剤が残留したか否か(のり残り)を目視で観察して評価した。
【0131】
・実装性
上記と同様にして調製したサンプルを20×30cm2の寸法に裁断したものを、上記条件下で接着させ、100℃、乾燥下で800時間の条件で、また60℃、90%RHで800時間の条件で放置した後、接着組成物被膜内の発泡の有無および偏光板と基板との剥離発生の有無を目視観察して評価した。
【0132】
これらの結果を表1に示す。本実施例で偏光板を基板表面に貼り合わせた液晶素子は良好な特性を示した。
〔実施例2〕
実施例1において、合成例1で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物の代わりに、合成例2で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0133】
〔実施例3〕
実施例1において、合成例1で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物の代わりに、合成例3で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0134】
〔実施例4〕
実施例1において、合成例1で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物の代わりに、合成例4で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0135】
〔実施例5〕
実施例1において、合成例1で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物の代わりに、合成例5で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0136】
〔比較例1〕
実施例1において、合成例1で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物を使用しない以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0137】
〔比較例2〕
実施例1において、合成例1で合成したβ―ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物の代わりに、
【0138】
【化15】

【0139】
で表されるβ―ケトエステル基含有アルコキシシラン0.2質量部を使用した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。該接着剤組成物について実施例1と同様にしてその特性を評価した。結果を表1に示す。
【0140】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル系ポリマーと、
(B)下記平均組成式(1):
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2
・・・(1)
(式中、
Yは少なくとも一部がエノール化していてもよいβ-ケトエステル基を含有する有機基であり、
はメルカプト基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アルケニル基、アミノ基、ハロゲン原子、及び、エノール化したβ−ケトエステル基が分子内又は分子間で式ORで表されるヒドロカルビルオキシ基と反応して生成する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含み又は含まない炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
は官能基を含まず、かつ、Rとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
3は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基であり、
a,b,c,d,及びeは、それぞれ、0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1で示される数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。)
で表される、β-ケトエステル基含有有機基とヒドロカルビルオキシ基とを一分子内に含有するオルガノポリシロキサン化合物からなる接着性改質剤と、
を含有し、(A)成分のアクリル系ポリマー100質量部に対して、(B)成分の接着性改質剤は0.001〜10質量部の割合である液晶素子用感圧接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分のアクリル系ポリマーが、官能基を有しないアクリル系モノマー60〜99質量%、官能基を有するアクリル系モノマー1〜20質量%、およびこれらのモノマーと共重合可能なその他のモノマー0〜20質量%(これら3種のモノマーで100質量%)からなる共重合体である請求項1に係る液晶素子用感圧接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−145622(P2010−145622A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321068(P2008−321068)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】