説明

液晶表示素子及び画像投射装置

【課題】液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着膜に吸着させるだけでなく、吸着されたイオン性不純物の光や熱による拡散や液晶の分解を回避する。
【解決手段】液晶表示素子50は、照明系102を有する画像投射装置100に用いられる。該液晶表示素子は、一対の基板51,56間に配置された液晶層55と、該一対の基板のうち光入射側基板51から離れて配置され、照明系から液晶層の画像表示領域11に向かう照明光ILが通過する開口部20aを有するとともに画像表示領域よりも外側の領域に向かう照明光IL′を遮る遮光部材20と、該一対の基板のうち少なくとも一方の基板と液晶層との間に配置され、液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着する吸着膜12とを有する。吸着膜は、画像表示領域よりも外側であって、かつ開口部の内周縁よりも外側の領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(液晶表示素子)及びこれを用いたプロジェクタ等の画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子には、透明電極(共通電極)を有する第1の透明基板と、画素を形成する透明電極(画素電極)や配線、スイッチング素子等を有する第2の透明基板との間に誘電異方性が正であるネマチック液晶を封入したものがある。この液晶表示素子は、液晶分子長軸を2枚のガラス基板間で連続的に90°ねじった、いわゆるTN(Twisted Nematic)液晶表示素子と称され、透過型の液晶表示素子として用いられている。また、上記第2の透明基板に代えて、反射鏡、配線及びスイッチング素子等を有する回路基板を用いたものもある。この液晶表示素子は、液晶分子長軸を2枚の基板に対してほぼ垂直にモメオトロピック配向させた、いわゆるVAN(Vertical Arrangement Nematic)液晶表示素子と称され、反射型液晶表示素子として用いられている。
【0003】
これらの液晶表示素子では、一般に、ECB(Electrically Controlled Birefringence)効果を利用し、液晶層を通過する光波動にリタデーションを与える作用を制御して画像を形成(表示)する。
【0004】
このようなECB効果を用いて光強度を変調する液晶表示素子においては、液晶層に電界を印加することによって、該液晶層内に存在するイオン性物質が移動する。液晶層に直流電界を与え続けると、イオン性物質が対向する2つの電極のどちらかに引き寄せられる。これにより、電極に与えられる電圧が一定であっても、液晶層に与えられる電界がイオンの電荷によって相殺され、実質的に液晶層へ印加される電界が減衰する。
【0005】
このような現象を回避するために、一般に、配列画素のラインごとに、印加する電界の正負極性を反転し、かつ該極性を60ヘルツ等の所定周期で切り換えるライン反転ドライブ方法が採用される。また、配列画素の全てに印加する電界の正負極性を所定周期で反転するフィールド反転ドライブ方法も用いられる。これらのドライブ方法により、液晶層にかかる電界が一定の極性にならないようにし、イオンの偏りを防止することができる。
【0006】
このことは、液晶層に対する実効電界を、電極に印加される電圧に対して常に同じ値となるようにすることに相当する。
【0007】
ところが、液晶層に印加される実効電界が変動する要因は、上述したイオン性物質の移動だけではない。他の要因として、絶縁体で構成されている液晶配向膜や反射増強膜や金属溶出防止用の無機パッシベーション膜等の非導電性膜において、電子やホールの電荷そのものがトラッピングされることがある。このトラッピングによって、膜の界面がチャージアップを引き起こし、この静電帯電によって液晶層への実効電界が経時変化する。
【0008】
この帯電現象は、透過型液晶表示素子においても形状要因で発生するが、対向電極が異材質(ミラー金属とインジウム錫酸化膜〈ITO膜〉)である反射型液晶表示素子において特に顕著に発生する。
【0009】
また、特に液晶表示素子に対して入射する光量が多いプロジェクタ等の画像投射装置において、このような帯電現象が発生し易い。そして、画像投射装置では、電源投入の直後から徐々に液晶層内にてイオン性不純物が偏在する。
【0010】
液晶層内にイオン性不純物が偏在すると、焼き付きといった残像現象や、輝度むら、さらには表示不良といった画質劣化を発生させる。このため、液晶表示素子においては、イオン性不純物を吸着する吸着膜を形成することにより、液晶層内のイオン性不純物の偏在を抑制することが多い。
【0011】
ただし、液晶表示素子における画像表示領域内に吸着膜を形成すると、その吸着膜に吸着されたイオン性不純物の影響によって、画像表示領域内の液晶分子の配向状態に乱れが生じたり、吸着膜に吸着したイオン性不純物による電界の分布が発生したりする。これにより、画質の劣化が生じる。
【0012】
このため、特許文献1には、画像表示領域外に電極パターンを設け、該電極パターンに電界を印加することで、イオン性不純物を吸着させる液晶表示素子が開示されている。
【0013】
また、その他、吸着膜を画像表示領域外に配置した液晶表示素子が特許文献2に、吸着膜を画像表示領域外の周辺に設けられた遮光部材上に形成した液晶表示素子が特許文献3にそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特許第3497098号公報
【特許文献2】特開2000−338505号公報
【特許文献3】特開2001−201734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1にて開示された液晶表示素子では、電極パターンへの電界印加を停止した場合(電源を遮断した場合)に、イオン性不純物が液晶層に拡散してしまう。このため、画質の劣化が発生する。
【0015】
また、特許文献2にて開示された液晶表示素子では、非画像表示領域に設けられた吸着膜にも光が照射される。吸着膜に吸着されたイオン性不純物に光が照射されると、これが活性化され、液晶層にイオン性不純物が拡散する。特に、イオン性不純物の濃度が高い領域に光が照射されると、液晶分子を分解する可能性も生じ、これが画質の劣化につながる。
【0016】
さらに、特許文献3にて開示された液晶表示素子では、光が照射された遮光部材が該光を吸収して熱を発生する。このため、遮光部材上に形成された吸着膜に吸着されたイオン性不純物が熱による拡散作用によって液晶層内に拡散してしまう。
【0017】
本発明は、液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着膜に吸着させるだけでなく、吸着されたイオン性不純物の光や熱による拡散や液晶の分解を回避できるようにした液晶表示素子及びこれを用いた画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一側面としての液晶表示素子は、照明系を有する画像投射装置に用いられる。該液晶表示素子は、一対の基板間に配置された液晶層と、該一対の基板のうち光入射側基板から離れて配置され、照明系から液晶層の画像表示領域に向かう照明光が通過する開口部を有するとともに画像表示領域よりも外側の領域に向かう照明光を遮る遮光部材と、該一対の基板のうち少なくとも一方の基板と液晶層との間に配置され、液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着する吸着膜とを有する。そして、吸着膜は、画像表示領域よりも外側であって、かつ開口部の内周縁よりも外側の領域に配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他の側面としての液晶表示素子は、照明系を有する画像投射装置に用いられる。該液晶表示素子は、一対の基板間に配置された液晶層と、該一対の基板のうち光入射側基板から離れて配置され、照明系から液晶層の画像表示領域に向かう照明光が通過する開口部を有するとともに画像表示領域よりも外側の領域に向かう照明光を遮る遮光部材と、該一対の基板のうち少なくとも一方の基板と液晶層との間に配置され、液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着する吸着膜とを有する。そして、吸着膜は、画像表示領域よりも外側の領域のうち上記開口部を通過した照明光が到達する領域よりも外側に退避した領域に配置されていることを特徴とする。
【0020】
なお、上記液晶表示素子を用いた画像投射装置も本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸着膜を、画像表示領域よりも外側であって遮光部材の開口部の内周縁よりも外側の領域又は開口部を通過した照明光が到達する領域よりも外側に退避した領域に配置したので、吸着膜への光照射を回避できる。このため、吸着膜に光が照射されてそこに吸着されたイオン性不純物が液晶層内に拡散することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0023】
図1には、本発明の実施例1である液晶表示素子50の断面を示している。図1は、後述する液晶層の面内方向に対して直交する断面である。また、図2には、液晶表示素子50を光入射側から見た図であって、後述する遮光部材を取り除いた状態を示している。さらに、図3は、液晶表示素子50を光入射側から見た図であって、遮光部材を取り付けた状態を示している。
【0024】
液晶表示素子50は、光源(照明系)から射出された光(照明光)ILを反射するとともに画像変調する機能を有する反射型液晶表示素子である。
【0025】
図1に示すように、液晶表示素子50は、その本体において、光入射側から順に、光入射側基板としての透過基板51と、液晶層55と、駆動基板56とを有する。液晶層55は、透過基板51と駆動基板56との間(一対の基板間)に配置されている。透過基板51と駆動基板56により一対の基板が構成される。
【0026】
透過基板51は、ガラス基板52と、該ガラス基板52の液晶層側の面に形成された透明電極53と、該透明電極53と液晶層55との間に配置される配向膜54とを有する。
【0027】
ガラス基板52は、光源からの光ILを透過して、後述するSi基板59と共同して液晶層55を形成する液晶材料を閉じ込める。
【0028】
透明電極53は、ここに電流が流されることによって、液晶層55の液晶分子に電界を印加する機能を有する。透明電極53は、インジウムとスズの酸化物であるインジウム・ティン・オキサイド(ITO)の薄膜であり、ガラス基板52の表面に塗布される。また、透明電極53の表面には、配向膜54が形成される。
【0029】
配向膜54は、液晶分子を一定の方向に向かせる機能を有する。配向膜54は、透明電極53の表面にコーティングされた薄膜であり、SiO等の無機物を基板表面に斜めに蒸着することで形成された傾斜柱状構造を有する。この傾斜柱状構造により、液晶分子を一定方向に向けて並ばせることができる。
【0030】
液晶分子は、液晶層55に印加された電界に応じてその向きを変える。電界が画像信号に応じて変化することで、液晶層55に該画像信号に対応する画像(後述するプロジェクタにおける原画)を形成することができる。液晶層55に画像が形成されることにより、ここに入射した光が画像変調される。
【0031】
液晶材料は、液体と固体の中間状態にあり、コレステリック液晶、スメクティック液晶及びネマティック液晶等の種類がある。本実施例では、液晶材料としてネマティック液晶を使用する。
【0032】
ネマティック液晶は、液晶分子が、全体に一定方向に向いており、それ以外の規則性が少ない並び方をしている。液晶層55は、配向膜54と後述する配向膜57との間に配置されている。
【0033】
駆動基板56は、配向膜57と、画素電極58と、Si基板59とを有する。配向膜57は、前述した配向膜54と同様に、液晶分子を一定の方向に向かわせる機能を有する。配向膜57は、Si基板59の表面にコーティングされた薄膜であり、配向膜54と同様に、SiO等の無機物を基板表面に斜めに蒸着することで形成された傾斜柱状構造を有する。
【0034】
画素電極58は、Si基板59上に設けられた複数の電極であり、透明電極53との間に配置された液晶層55に画素ごとに電界を印加する機能を有する。画素ごとに電界がコントロールされることで、前述したように液晶層55に画像を形成することができる。
【0035】
Si基板59は、シリコン(Si)により形成され、その液晶層側の面には、図示しないミラーが形成されている。なお、Si基板59に代えて、プラスチック基板等の遮光性を有する基板を使用することもできる。
【0036】
また、液晶表示素子50は、光入射側基板である透過基板51から光ILが入射してくる方向(光源の方向)に離れて配置された遮光部材20を有する。遮光部材20は、液晶層55のうち上述の画像が形成される矩形の画像表示領域11に向かう光ILが通過する矩形の開口部20aを有し(図1参照)、開口部20aの外側の枠部分によって画像表示領域11よりも外側の領域に向かう光IL′を遮る機能を有する。
【0037】
透過基板51と遮光部材20との間の離間距離は、透過基板51の厚み(例えば、1000μm)の0.5倍から2倍程度(0.5倍以上2.0倍以下、好ましくは0.8倍以上1.5倍以下)である。このように遮光部材20を透過基板51からある程度大きく離すことで、光IL′を吸収して発熱した遮光部材20からの熱が透過基板51や液晶層55に伝わりにくくすることができる。
【0038】
つまり、遮光部材20は、液晶表示素子50の本体(透過基板51や液晶層55等)に対して熱的に接触しないように間接的に保持されている。
【0039】
また、遮光部材20は、アルミニウム、鉄、銅等の金属板により形成されている。また、その表面には、光吸収材料(反射防止材料)として、カーボンやクロム等の蒸着膜が形成されている。
【0040】
さらに、液晶表示素子50は、液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着する吸着膜12を有する。吸着膜12は、駆動基板(一対の基板のうち一方の基板)56と液晶層55との間、または配向膜57と液晶層55との間に配置されている。吸着膜12としては、例えば、アルミナ薄膜を使用できる。アルミナ薄膜は多孔質であるため、イオン性不純物を効果的に吸着できる。
【0041】
また、吸着膜12として、アルミナ薄膜以外の材料、例えば、イオン性不純物を吸着可能な金属や金属化合物を用いることもできる。また、吸着膜12を、多孔質材料以外の材料、例えば、微粒子状材料やカラム状分子塊で形成してもよい。また、吸着膜12は、ポリイミドやポリアミド等の有機化合物で形成してもよい。
【0042】
なお、本実施例では、吸着膜12を駆動基板56と液晶層55との間に配置した場合について説明するが、吸着膜12を透過基板51と液晶層55との間に配置してもよいし、両基板51,56と液晶層55との間の2箇所に配置してもよい。
【0043】
ここで、吸着膜12は、図1及び図3に示すように、画像表示領域11よりも外側であって、かつ開口部20aの内周縁20bよりも外側の領域に配置されている。言い換えれば、吸着膜は、画像表示領域11よりも外側の領域のうち遮光部材20の開口部20aを通過した光が到達する領域よりも外側に退避した領域に配置されている。以下、この理由を説明する。
【0044】
まず、吸着膜12を、画像表示領域11よりも外側の領域に配置すべき理由は、背景技術の欄で説明した通りである。
【0045】
次に、吸着膜12を、開口部20aの内周縁20bよりも外側の領域又は遮光部材20の開口部20aを通過した光が到達する領域よりも外側に退避した領域に配置すべき理由について説明する。
【0046】
第1に、遮光部材20の開口部20aは、液晶表示素子50の本体と遮光部材20との配置公差を考慮して、画像表示領域11よりも大きな開口を有するように形成される。このため、吸着膜12は、その公差を含む開口部20aを考慮して、開口部20aを通過した光ILが確実に照射されない領域に形成する必要がある。
【0047】
第2に、後述するプロジェクタにおいて、光源(照明系)から液晶表示素子50に入射してくる光(照明光)ILは、基本的には平行光束であることが望ましいが、実際には若干の拡がりを有する。このため、吸着膜12の内端12aを、画像表示領域11よりも外側の領域ではあるが、開口部20aの内周縁20bと同じ位置に配置すると、開口部20aを通過した光ILの一部が吸着膜12に照射される可能性がある。このため、吸着膜12に吸着されたイオン性不純物が液晶層55内に拡散するおそれがある。
【0048】
特に、本実施例のように、遮光部材20が透過基板51からある程度大きく離れている場合に光ILが拡がりを有していると、開口部20aを通過した光ILの一部が画像表示領域11から外側にある程度離れた(奥まった)領域まで到達してしまう。
【0049】
以上の理由により、本実施例では、前述したように、吸着膜12を、画像表示領域11よりも外側であって、かつ開口部20aの内周縁20bよりも外側の領域又は遮光部材20の開口部20aを通過した光が到達する領域よりも外側に退避した領域に配置している。
【0050】
なお、上記「開口部20aの内周縁20bと同じ位置」とは、図1においては後述する基準線Rが通る位置であり、図1においては開口部20aの内周縁20bと重なる位置である。また、「開口部20aの内周縁20bよりも外側の領域」又は「開口部20aを通過した光が到達する領域よりも外側に退避した領域」とは、上記基準線R又は開口部20aの内周縁20bと重なる位置よりも外側に位置する領域という意味である。
【0051】
さらに、吸着膜12を設ける領域を、図1に示す液晶層55の面内方向に対して直交する断面においてより具体的に説明する。
【0052】
図1において、開口部20aの内周縁20bを通り液晶層55の厚み方向に延ばした線を基準線Rとする。また、該基準線Rに対する遮光部材20の開口部20aを通過する光ILの拡がり角をθとする。また、遮光部材20から吸着膜12が配置された駆動基板56までの基準線Rに沿った距離をHとする。さらに、基準線Rから吸着膜12の内端12aまでの基準線Rに直交する方向での距離Lをする。このとき、以下の条件を満足することが好ましい。
【0053】
1.5×H×tanθ≦L …(1)
条件(1)は、吸着膜12に対して開口部20aを通過した光が到達しない(照射されない)領域を数値的に限定するものである。
【0054】
より好ましくは、
2.0×H×tanθ≦L …(2)
を満足するとよい。
【0055】
なお、距離Lの上限については、液晶表示素子50のサイズにもよるが、プロジェクタ用の液晶表示素子では、(1)式では5mm、(2)式では3mmが好ましい。すなわち、吸着膜として、イオン性不純物を十分に吸着できる程度の大きさ(幅)を確保する必要がある。
【0056】
上限値まで加えると、(1)及び(2)式は、以下のようになる。
【0057】
1.5×H×tanθ≦L≦5mm …(1)′
2.0×H×tanθ≦L≦3mm …(2)′
このような領域に吸着膜12を配置することにより、光や画像表示領域11等で発生した熱が吸着膜12に供給されない。したがって、吸着膜12に吸着したイオン性不純物が、光により活性化されたり熱の影響を受けたりして液晶層55に拡散されることを防止できる。また、特に吸着膜12のうちイオン性不純物の吸着濃度が高い領域に光が照射されることによって液晶分子が分解されることも回避できる。
【0058】
したがって、液晶表示素子50の焼き付き、輝度むら、表示不良等、画質劣化の原因となる現象の発生を抑え、画質を向上させることができる。
【実施例2】
【0059】
図4には、実施例1で説明した液晶表示素子50を用いた反射型液晶プロジェクタ(画像投射装置)の構成を示している。
【0060】
液晶プロジェクタ100において、101は液晶ドライバであり、液晶表示素子50を駆動する。液晶ドライバ101は、パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、テレビチューナー等の画像供給装置200から供給される画像信号に応じた駆動信号を液晶表示素子50に出力する。画像供給装置200と液晶プロジェクタ100により、画像表示システムが構成される。
【0061】
なお、図4には、1つの液晶表示素子50しか示していないが、実際は、赤(R)、緑(G)、青(B)用の3つの液晶表示素子が設けられる。
【0062】
102は照明系(照明光学系ともいう)であり、光源ランプ103、リフレクタ104、第1及び第2フライアイレンズ105,106、偏光変換素子107、コンデンサーレンズ108を含む。照明系102は、偏光方向が揃った直線偏光(P偏光)としての照明光ILを射出する。
【0063】
また、109は偏光ビームスプリッタであり、照明系102から射出したP偏光としての照明光ILを透過して液晶表示素子50に入射させる。この意味で、液晶表示素子50よりも前段までの偏光ビームスプリッタ109を照明系に含めてもよい。
【0064】
また、偏光ビームスプリッタ109は、液晶表示素子50にて画像変調され、かつ反射された画像光(S偏光)を反射して投射レンズ110に導く。投射レンズ110は、入射した光を不図示の被投射面に拡大投射する。これにより、液晶表示素子50に形成された原画の拡大像が被投射面に投影される。液晶表示素子50よりも後段からの偏光ビームスプリッタ109と投射レンズ110により投射系が構成される。
【0065】
なお、上記のように3つの液晶表示素子が設けられている場合は、偏光ビームスプリッタ109の位置に、いわゆる色分解合成光学系が配置される。色分解合成光学系には、公知の様々な構成があるので、ここでの説明は省略する。
【0066】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0067】
また、上記各実施例では、反射型液晶表示素子及びこれを用いた反射型液晶プロジェクタについて説明したが、本発明は、他の実施例として、透過型液晶表示素子及びこれを用いた透過型液晶プロジェクタを含む。つまり、透過型液晶表示素子に、実施例1で説明したように配置される、イオン性不純物を吸着する吸着膜を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1である液晶表示素子の断面図。
【図2】実施例1の液晶表示素子(遮光部材が取り除かれた状態)の平面図。
【図3】実施例1の液晶表示素子(遮光部材が取り付けられた状態)の平面図。
【図4】本発明の実施例2である液晶プロジェクタの構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0069】
11 画像表示領域
12 吸着膜
20 遮光部材
50 液晶表示素子
51 透過基板
52 ガラス基板
53 透明電極
54,57 配向膜
55 液晶層
58 画素電極
59 Si基板
100 液晶プロジェクタ
102 照明系
110 投射レンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明系を有する画像投射装置に用いられる液晶表示素子であって、
一対の基板間に配置された液晶層と、
前記一対の基板のうち光入射側基板から離れて配置され、前記照明系から前記液晶層の画像表示領域に向かう照明光が通過する開口部を有するとともに前記画像表示領域よりも外側の領域に向かう照明光を遮る遮光部材と、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板と前記液晶層との間に配置され、前記液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着する吸着膜とを有し、
前記吸着膜は、前記画像表示領域よりも外側であって、かつ前記開口部の内周縁よりも外側の領域に配置されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
照明系を有する画像投射装置に用いられる液晶表示素子であって、
一対の基板間に配置された液晶層と、
前記一対の基板のうち光入射側基板から離れて配置され、前記照明系から前記液晶層の画像表示領域に向かう照明光が通過する開口部を有するとともに前記画像表示領域よりも外側の領域に向かう照明光を遮る遮光部材と、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板と前記液晶層との間に配置され、前記液晶層内に存在するイオン性不純物を吸着する吸着膜とを有し、
前記吸着膜は、前記画像表示領域よりも外側の領域のうち前記開口部を通過した前記照明光が到達する領域よりも外側に退避した領域に配置されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項3】
前記液晶層の面内方向に対して直交する断面において、
前記開口部の内周縁を通り前記液晶層の厚み方向に延ばした基準線に対する、前記開口部を通過する光の拡がり角をθとし、前記遮光部材から前記吸着膜が配置された前記基板までの前記基準線に沿った距離をHとし、前記基準線から前記吸着膜の内端までの前記基準線に直交する方向での距離Lをするとき、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
1.5×H×tanθ≦L
【請求項4】
該液晶表示素子は、反射型であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の液晶表示素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の液晶表示素子と、
該液晶表示素子を照明する照明光を射出する照明系と、
前記液晶表示素子から射出した光を被投射面に投射する投射系とを有することを特徴とする画像投射装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−3036(P2009−3036A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161917(P2007−161917)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】