説明

液晶表示素子

【課題】 静電容量方式のタッチパネルとしての機能を併有しながら、高表示品位と低コスト化との双方を図るようにする。
【構成】 液晶表示セル10と、液晶表示セル10の光学特性を改善するために液晶表示セル10に対向配置された補償セル20とを備え、補償セル20を静電容量方式のタッチパネルとしても機能させるために補償セル20の補償ガラス21、22にタッチパネルの少なくとも透明電極群28を作成するようにした。補償セル20は、補償ガラス21と補償ガラス22との間に液晶26が封入され、透明電極群28が補償ガラス21、22の内側対向面に各々配設された構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶モジュールとタッチパネルとしての機能を併有した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例として、表示用液晶パネルと、表示用液晶パネルに対向配置された色調補正用液晶パネルとを備え、色調補正用液晶パネルが抵抗膜方式のタッチパネルを兼ねているものがある。
【0003】
色調補正用液晶パネルについては、2枚のガラスがスペーサ材を挟んで対向配置され、両ガラス間に液晶が封入されている。両ガラスの内側対向面にはタッチパネルの可動電極及び固定電極となる透明な導電性フィルムが各々貼り付けられている。
【0004】
即ち、色調補正用液晶パネルの表面上が指で押されると、その圧力によりガラスが変形するとともに可動電極と固定電極とが部分的に接触し、この際の両電極の抵抗による分圧比を測定することで、色調補正用液晶パネルの表面上において押された位置が検出可能になっている(例えば、特許文献1等)。
【0005】
【特許文献1】特開平3−11514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、色調補正用液晶パネルの表面上を指で押さえた際にガラスがスペーサ材とともに変形してガラスの厚みが部分的に薄くなり、この結果、色調補正用液晶パネルによる光学的な補償関係が崩れ、表示品位が極端に低下するという本質的な欠点がある。また、両ガラスのギャップ長については数μm程度であるのが一般的であり、これを維持するためのスペーサ材が経時変化により永久変形し易く耐久性が低いという別の欠点もある。これらの問題が解消されない限り、その実用化については困難というのが現状である。
【0007】
もっとも、液晶モジュールと静電容量方式のタッチパネルとを組み合わせると、上記問題については一応解消されるものの、双方が別々に設計されていることから、相性の問題や品質の問題が発生し易いだけでなく、大幅なコストアップが避けられないという問題がある。
【0008】
本発明は上記した背景の下で創作されたものであって、その目的とするところは、静電容量方式のタッチパネルとしての機能を併有しながら、高表示品位と低コスト化との双方を図ることが可能な液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液晶表示素子は上記課題を解消するために、液晶表示セルと、液晶表示セルの光学特性を改善するために同液晶表示セルに対向配置された補償セルとを備え、補償セルを静電容量方式のタッチパネルとしても機能させるために補償セルの透明板にタッチパネルの少なくとも透明電極群を作成した。
【0010】
この発明によると、補償セルの透明板の面上を指で触れられると、指との間でコンデンサが形成され、その静電容量の変化が透明電極群を通じて出力され、その結果、指が触られた位置を検出することが可能になる。よって、補償セルが液晶表示セルの光学特性を改善するためだけでなくタッチパネルとしての機能を兼ねることから、液晶表示素子の高表示品位と低コスト化との双方を図ることが可能になる。
【0011】
補償セルについては、例えば、上側透明板と下側透明板との間に液晶が封入され、前記透明電極群が同上側/下側透明板の内側対向面に各々配設されたものを用いると良い。
【0012】
上記補償セルを用いた場合には、液晶に4級アミンその他の帯電防止剤を1%以下含有することが好ましい。
【0013】
この発明によると、補償セル内の液晶に帯電防止剤が含まれているので液晶の比抵抗が低くなり、補償セルの透明板に静電気が帯電しても液晶によりリークされる。その結果、液晶が静電気により誤動作することが殆どなくなる。しかも帯電防止剤の含有量から液晶の粘度や劣化等の悪影響を与えることもない。よって、この面で液晶表示素子の高表示品位を一層図ることが可能になる。
【0014】
上記補償セルを用いた場合には、上側/下側透明板に液晶の分子配向を一定にするためのラビング処理を各々施すことが好ましい。
【0015】
この発明によると、上側/下側透明板に対してラビング処理が施されているので、液晶の分子軸の方向が統一され、補償セルの透明板に静電気が帯電しても液晶が静電気により誤動作することが殆どなくなる。この面で液晶表示素子の高表示品位を一層図ることが可能になる。
【0016】
透明電極群については、例えば、上側透明電極群と、同上側透明電極群の周辺に作成され且つ同上側透明電極群に接続された上側引き回し配線群と、下側透明電極群と、同下側透明電極群の周辺に作成され且つ同下側透明電極群に接続された下側引き回し配線群とを有したものを用いると良い。
【0017】
上記透明電極群を用いた場合、上側引き回し配線群及び/又は下側引き回し配線群は、各配線群を構成する引き回し配線の抵抗値を当該引き回し配線の長さに関係なく他の引き回し配線と同程度になるように調整することが好ましい。
【0018】
この発明によると、上側引き回し配線群及び/又は下側引き回し配線群の引き回し状況に関係なく各配線群の抵抗値を一定にすることが可能になる。よって、各配線群の全ての抵抗値が一定となり、これに伴って指の位置検出精度のバラツキも解消される。また、上側/下側引き回し配線群のパターンのレイアウト設計の自由度が高まることから、液晶表示セルの表示電極との重なるのを避けることができ、透過率を高めることも可能になる。
【0019】
上記透明電極群については、透明板に作成された透明導電膜とし、上側/下側引き回し配線群の部分にのみ当該透明導電膜に比べて低抵抗の金属膜が重ねられたものとすることが好ましい。
【0020】
この発明によると、上側/下側引き回し配線群の部分の透明導電膜と金属膜とは並列接続の形となり、上側/下側引き回し配線群の抵抗値が当該透明導電膜に比べて低くなる。即ち、透明電極群の各抵抗値が低くなり、これに伴って指の位置検出精度が透明電極の抵抗値を要因として悪化することが無くなる。よって、この面で液晶表示素子の高性能化を図ることが可能になる。
【0021】
液晶表示セルの表示電極群が格子状に配列されている場合、上側/下側透明電極群については、例えば、ストライプ状に配列された構造とし、上側透明電極群と下側透明電極群とは互いに直交して配置されたものを用いると良い。
【0022】
上記した上側/下側透明電極群を用いた場合には、上側/下側透明電極群には四角形状を有した上側/下側電極を設けることが好ましい。上側/下側電極については、下側/上側透明電極群に応じた個数で且つ下側/上側透明電極群に応じた間隔だけ互いに離れた位置に各々配設されている。上側検出電極及び下側検出電極の対角線が上側透明電極群又は下側透明電極群の方向に一致しており、上側検出電極及び下側検出電極の寸法が互いに重なり合わない程度に設定されている。
【0023】
この発明によると、上側/下側透明電極群に上側/下側検出電極を形成したことから、上記コンデンサの電極面積が大きくなり、これに伴って、上記コンデンサの静電容量が大きくなる。よって、指の位置検出精度が高くなり、この面で液晶表示素子の高性能化を図ることが可能になる。
【0024】
上記した上側/下側透明電極群を用いた場合、上側透明電極群及び下側透明電極群を液晶表示セルの表示電極に対して平行ではなく傾斜した位置関係となるように配置することが好ましい。
【0025】
この発明によると、液晶表示セルの画素については格子状に配列されている一方、補償セルの上側/下側透明電極群についても格子状に配列されているが、液晶表示セルの表示電極群と補償セルの上側/下側透明電極群とが傾斜した位置関係になっていることから、双方間に光が通過する際の回折等の干渉が小さく、この面で液晶表示素子の高表示品位を一層図ることが可能になる。
【0026】
透明電極については格子状の形状にすることが好ましい。
【0027】
この発明によると、隣り合う透明電極の隙間を光が通過することから、光透過性が高く、透明電極群が目立たなくなり、この面で液晶表示素子の高表示品位を一層図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の液晶表示素子の実施の形態を図面を参照して説明する。図1(A)は液晶表示素子1の模式的断面図である。なお、液晶表示素子1の各構成部と特許請求の範囲の発明特定事項との対応関係で明らかでないものについては、符号の説明の欄に併せて示している。
【0029】
ここに例として掲げる液晶表示素子1は、DSTN式(Double Layer 2層式)のものであって、液晶表示セル10と、液晶表示セル10の通過光の位相ずれを補正するために液晶表示セル10に対向配置された補償セル20とを備えている。補償セル20については、上記の通り液晶表示セル10の光学特性を改善するだけでなく静電容量方式のタッチパネルとしての機能を有している。以下、各構成部の詳細について説明する。
【0030】
なお、液晶表示素子1は透過型であり、液晶表示セル10の背面側に配置されている冷陰極管等の光源については図示省略されている。
【0031】
図1(B)は液晶表示セル10の模式的断面図である。液晶表示セル10は、図1(B)に示すように表示ガラス11と表示ガラス12との間に液晶18が封入された構造であって、表示ガラス11、12の内側対向面には液晶18に電圧を印加するための表示電極群15が作成されている。表示電極群15については、インジウムスズ酸化物 (ITO:Indium-tin-oxide) 等の透明電極膜を格子状に配列した構造となっている。
【0032】
なお、図1(A)中13は接着剤、14はビーズのギャップ剤を示している一方、図1(B)中16は配向膜、17は偏光板を示している。
【0033】
図2は液晶表示セル10に作成された表示電極群15の模式的平面図である。表示電極群15において、一方向に配列されたものを15X、他方向に配列されたものを15Yとして各々示している。但し、図2中の表示電極群15の本数や引き回し等については正確に図示されていない。
【0034】
補償セル20は、図1(A)に示すように補償ガラス21と補償ガラス22との間に液晶26が封入され、透明電極群28が補償ガラス21、22の内側対向面に各々配設された構造となっており、粘着接着剤30を用いて液晶表示セル10の正面側に接着されている。
【0035】
液晶26としてはメルク社製ZLI-4431等の一般的な液晶素材を使用している。そして、タッチパネル操作時の静電気による誤動作を防止するために、液晶26には比抵抗を低下させるための4級アミン等の帯電防止剤27が含有されている。
【0036】
液晶26に対する帯電防止剤27の含有率については、補償ガラス21の表面に帯電する静電気を問題にならない程度にリークさせる一方、液晶26自体の粘度や劣化等の悪影響を与えないために約10ppm〜1%以下にすると良い。液晶26の素材の種類は多種多様であるが、その基本構造は類似しているため約1%以下の含有率で十分である。
【0037】
補償ガラス21、22の外表面にはポリイミド配向膜29を各々塗布している。そして、ポリイミド配向膜29の表面をベルベット等の布で一定方向に擦り、これによりラビング処理を施こしている。液晶26の分子配向を統一し、タッチパネル操作時の静電気による液晶26の乱れを防止するためである。
【0038】
なお、図1(A)中23、24は補償ガラス21、22を互いに固定するとともに液晶26等をシールするための接着剤である。また、図1(A)中25は補償ガラス21と補償ガラス22との間のギャップを規制するためのビーズ等のギャップ剤である。
【0039】
図3は補償ガラス21、22に作成された透明電極群28の一部を示す模式的平面図、図4は透明電極群28を構成する透明電極の詳細を示す平面図である。なお、図3中には透明電極群28のうち互いに隣り合う5つの透明電極のみが図示されている。図4中の透明電極の引き回し等については正確に図示されていない。
【0040】
透明電極群28を構成する透明電極については図2に示すように格子状の形状を有し、図4に示すような配線パターンで構成されている。これらが補償ガラス21、22上において図3に示すように格子状に配置されている。
【0041】
具体的には、透明電極群28は、図4に示すように補償ガラス21の下面に作成された上側透明電極群281Xと、上側透明電極群281Xの周辺に作成され且つ上側透明電極群281Xに接続された上側引き回し配線群282Xと、補償ガラス22の上面に作成された下側透明電極群281Yと、下側透明電極群281Yの周辺に作成され且つ下側透明電極群281Yに接続された下側引き回し配線群282Yとを有している。
【0042】
上側透明電極群281X及び下側透明電極群281Yは何れも間隔t(本実施形態では表示電極群15のピッチ間隔の10倍)でストライプ状に配列された構造を有し、上側透明電極群281Xと下側透明電極群281Yとは互いに直交して配置されている。
【0043】
液晶表示セル10の表示電極群15についても格子状に配列されているのは上記した通りであり、補償セル20の上側透明電極群281X及び下側透明電極群281Yとの位置関係については図2に示す通りとなっている。
【0044】
即ち、補償セル20の上側透明電極群281X及び下側透明電極群281Yが液晶表示セル10の表示電極群15に対して平行ではなく傾斜した位置関係となるように配置している。
【0045】
もし、液晶表示セル10の表示電極群15と補償セル20の上側透明電極群281X及び下側透明電極群281Yとが同一の位置関係となるように設計した場合、液晶表示セル10と補償セル20との貼り合わせズレ等があったときは、光が補償セル20を通過する際の回折等の干渉が生じる結果となる。この問題を解消するために、補償セル20の上側透明電極群281X等については上記したような位置関係となるように設計している。液晶表示セル10の表示電極群15との位置関係が同一とならないようにすれば足りるので、両電極群の傾斜角度については任意である。
【0046】
透明電極群28の内部構造について説明する。図5(A)は補償ガラス21の図2中A部分の模式的断面図である。即ち、上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xは、補償ガラス21に作成された透明導電膜281aをベースとしており、上側引き回し配線群282Xの部分にのみ透明導電膜281aに比べて低抵抗の金属膜281bが重ねられている。但し、他の上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xについても全く同様である。
【0047】
本実施形態では、透明導電膜281aの材質としてインジウムスズ酸化物(ITO)を使用している。ITOのシート抵抗については100Ω程度であることから、金属膜281bについてはITOに比べて低抵抗のNi、Ag、Al、Mo/Cr等の材質を使用している。なお、ITOとしてシート抵抗の低いものを使用すると、その厚みの影響で透明性が顕著に低下することから、ITOの上に無機膜をコーティングするのが効果的である。この場合には無機膜も考慮してITOのシート抵抗を適宜設定すれば良い。
【0048】
具体的な製造方法については、例えば、上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xの部分に透明導電膜281aを作成した後、上側引き回し配線群282Xの部分に無電解Niメッキや銀ペースト印刷等により金属膜281bを作成すると良い。また、上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xの部分に透明導電膜281a及び金属膜281bを順次作成した後、上側引き回し配線群282Xの部分を選択的にエッチングしても良い。
【0049】
図5(B)は上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xの等価抵抗回路を示している。R1は上側透明電極群281Xの部分の透明導電膜281aの抵抗である。R2、R3は上側引き回し配線群282Xの部分の透明導電膜281a、金属膜281bの各抵抗であり、R2>R3の関係が成立するのは上記した通りである。よって、上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xの抵抗値は材質が透明導電膜281aだけであるときに比べて小さい。
【0050】
なお、他の上側透明電極群281X及び上側引き回し配線群282Xについては上側引き回し配線群282Xの長さが異なるだけで上記と全く同様である。また、下側透明電極群281Y及び下側引き回し配線群282Yについても上側透明電極群281X等と全く同様である。
【0051】
このように透明電極群28は導電材料の中では抵抗値が高い部類に入る透明導電膜281aをベースとした材質であるものの、金属膜281bが一部に重ねられていることから、ITOに比べて全体として低抵抗となっている。このように改良したのは、静電容量方式のタッチパネルの場合、配線抵抗が高いと、指の位置の検出精度が悪くなる傾向があることからである。また、上側/下側引き回し配線群282X、282Yにのみ金属膜281bを作成したのは、補償セル20の透過率を透明電極群28により低下させないためである。
【0052】
また、上側透明電極群281Xには図4に示すように四角形状の上側検出電極2811Xが等間隔で形成されている。下側透明電極群281Yについても上側検出電極2811Xと同様に下側検出電極2811Yが形成されている。上側検出電極2811Xは、下側透明電極群281Yに応じた個数(図示例では10個)で且つ下側透明電極群281Yに応じた間隔tだけ互いに離れた位置に各々配設されている。下側透明電極群281Yについても上側検出電極2811Xと全く同様に下側検出電極2811Yが形成されている。
【0053】
上側/下側検出電極2811X、2811Yの対角線については、下側/上側透明電極群281Y、281Xの方向に一致している。上側/下側検出電極2811X、2811Yの各寸法(対角線の長さ)については、互いに重なり合わない程度に設定されている。
【0054】
このように上側/下側透明電極群281X、281Yに上側/下側検出電極2811X、2811Yを形成したことから、コンデンサの電極面積が大きくなり、これに伴って、指の位置検出精度が高くなった。
【0055】
上側引き回し配線群282X及び下側引き回し配線群282Yについては、補償ガラス21、22の面上の縁部に設けられた図外の検出信号出力端子の位置等の関係上、上側透明電極群281X及び下側透明電極群281Yの各一端から引き出している。
【0056】
このように上側/下側引き回し配線群282X、282Yを上側/下側透明電極群281X、281Xの各一端から引き出した場合、上側/下側引き回し配線群282X、282Yの一部が他のものに比べて大幅に長くなる傾向となり、これらの抵抗値に大きなバラツキが発生し、指の位置検出精度のバラツキの大きな要因となる。
【0057】
そこで上側引き回し配線群282Xについては、これを構成する引き回し配線の抵抗値が当該引き回し配線の長さに関係なく他の引き回し配線と同程度になるように調整している。即ち、全ての引き回し配線の抵抗値が一定になるように調整している。これは上側引き回し配線群282Yについても全く同様である。
【0058】
具体的な上側/下側引き回し配線群282X、282Yの抵抗値の調整方法については、引き回しのパターンを変えて、その長さ自体を配線毎に調整するようにしている。また、透明導電膜281a及び金属膜281b等の材質、幅寸法又は厚みを微調整したり、金属膜181bの長さを微調整しても良い。
【0059】
このように透明電極群28の各抵抗値を上側/下側引き回し配線群282X、282Yの長さに関係なく一定にすることが容易であることから、上側/下側引き回し配線群282X、282Yのパターンのレイアウト設計の自由度が高まり、液晶表示セル10の表示電極群15と重なるのを避けることができ、透過率を高めることも可能になった。また、透明電極群28のうち隣り合う透明電極の隙間を通って光が通過することから、この面でも光透過性が高くなる。なお、透明電極群28を補償ガラス21、22の面上に格子状に配置する限り、図6に示すような形状に設計変更しても同様の効果が得られる。
【0060】
上記した構成の液晶表示素子1については、補償セル20の透明電極群28に図外の静電容量検出回路を接続した状態で、補償セル20の補償ガラス21の面上を指で触れられると、指との間でコンデンサが形成され、その静電容量の変化が透明電極群28を通じて同回路に出力される。その結果、同回路により指が触られた位置を検出することが可能になる。
【0061】
補償セル20については液晶表示セル10の光学特性を改善するためだけでなくタッチパネルとしての機能を兼ねることから、別途タッチパネルを用意する必要がなく、この点で低コスト化を図ることが可能になる。また、指の位置の検知精度や透過率が何れも高く、静電気の影響を受け難いのは上記した通りであることから、高表示品位が維持され、高性能化を図ることも可能になった。
【0062】
なお、本発明に係る液晶表示素子については上記実施形態に限定されず、以下のように設計変更しても良い。
【0063】
液晶表示セルについては、STN式(Super-twisted nematic )やCSTN式(Color Super-Twist Nematic) 等であっても同様に適用可能であり、反射型のものを使用しても良い。
【0064】
補償セルについては、上記液晶表示セルの光学特性を改善するために同液晶表示セルに対向配置されたものである限り、どのような構成のものを使用しても良い。また、タッチパネルだけの機能だけでなく、ヒータとしての機能を付加するようにしても良い。さらに、透明板上に透明電極群だけでなく、タッチパネルに必要な回路等を作成するようにしても良い。
【0065】
補償セルの透明板についてはフィルム基板を使用しても良い。透明電極群の透明導電膜の材質については酸化錫、酸化亜鉛や導電性高分子等を使用しても良い。透明電極群の形状については、検出電極も含めて、スイッチ位置や液晶表示セルの表示電極群の形状等に応じて適宜設計変更すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る液晶表示素子の実施形態を説明するための図であって、(A)は同素子を構成する液晶表示セル及び補償セルの模式的断面図、(B)は同液晶表示セルの模式的断面図である。
【図2】同液晶表示セルに作成された表示電極群と同補償セルに作成された透明電極との位置関係を示す模式的平面図である。
【図3】同補償セルに作成された透明電極群の一部を示す模式的平面図である。
【図4】同透明電極群を構成する透明電極の詳細を示す部分平面図である。
【図5】同透明電極群の内部を説明するための図であって、(A)は図4中A部分の模式的断面図、(B)は上側透明電極群及び上側引き回し配線群の等価抵抗回路図である。
【図6】同透明電極群の変形例を説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 液晶表示素子
10 液晶表示セル
11,12 表示ガラス
13 接着剤
14 キャップ剤
15 表示電極群
16 配向膜
17 偏光板
18 液晶
20 補償セル
21 補償ガラス(上側透明板)
22 補償ガラス(下側透明板)
23,24 接着剤
25 ギャップ剤
26 液晶
27 帯電防止剤
28 透明電極群
281X,281Y 上側/下側透明電極群
2811X,2811Y 上側/下側検出電極
282X,281Y 上/下側引き回し配線群
281a 透明電極膜
281b 金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示セルと、同液晶表示セルの光学特性を改善するために同液晶表示セルに対向配置された補償セルとを備え、同補償セルを静電容量方式のタッチパネルとしても機能させるために同補償セルの透明板に同タッチパネルの少なくとも透明電極群が作成されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示素子において、前記補償セルは、上側透明板と下側透明板との間に液晶が封入され、前記透明電極群が同上側/下側透明板の内側対向面に各々配設されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項3】
請求項2記載の液晶表示素子において、前記液晶に4級アミンその他の帯電防止剤が1%以下含有されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項4】
請求項2記載の液晶表示素子において、前記上側/下側透明板に前記液晶の分子配向を一定にするためのラビング処理が各々施されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項5】
請求項1記載の液晶表示素子において、前記透明電極群は、上側透明電極群と、同上側透明電極群の周辺に作成され且つ同上側透明電極群に接続された上側引き回し配線群と、下側透明電極群と、同下側透明電極群の周辺に作成され且つ同下側透明電極群に接続された下側引き回し配線群とを有することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項6】
請求項5記載の液晶表示素子において、前記上側引き回し配線群及び/又は下側引き回し配線群は、各配線群を構成する引き回し配線の抵抗値が当該引き回し配線の長さに関係なく他の引き回し配線と同程度になるように調整されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項7】
請求項5記載の液晶表示素子において、前記透明電極群は前記透明板に作成された透明導電膜であって、前記上側/下側引き回し配線群の部分にのみ当該透明導電膜に比べて低抵抗の金属膜が重ねられていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項8】
前記液晶表示セルの表示電極群が格子状に配列されている場合の請求項5記載の液晶表示素子において、前記上側/下側透明電極群は何れもストライプ状に配列された構造を有し、同上側透明電極群と下側透明電極群とは互いに直交して配置されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項9】
請求項8記載の液晶表示素子において、前記上側/下側透明電極群には、四角形状を有した上側/下側電極が前記下側/上側透明電極群に応じた個数で且つ前記下側/上側透明電極群に応じた間隔だけ互いに離れた位置に各々配設され、当該上側検出電極及び下側検出電極の対角線が前記上側透明電極群又は下側透明電極群の方向に一致し、当該上側検出電極及び下側検出電極の寸法が互いに重なり合わない程度に設定されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項10】
請求項8記載の液晶表示素子において、前記補償セルの上側透明電極群及び下側透明電極群が前記液晶表示セルの表示電極群に対して平行ではなく傾斜した位置関係となるように配置されていることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項11】
請求項1記載の液晶表示素子において、前記透明電極を格子状の形状にしたこと特徴とする液晶表示素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−186771(P2009−186771A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26762(P2008−26762)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】