説明

液晶表示装置用基板の製造方法

【課題】液晶表示装置の色視野角を改善させる液晶表示装置用基板を簡便に製造する方法の提供。
【解決手段】液晶表示装置用基板の製造方法であって、下記[1]〜[3]を含む方法:
[1]光学異方性層形成用材料層を有する基板を用意すること
[2]前記の光学異方性層形成用材料層に互いに露光条件の異なる2種以上のパターン露光を行うこと、及び
[3]前記露光後の基板に80℃〜400℃での熱処理を行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用基板の製造方法に関し、特にパターン状のレターデーションを有する光学異方性層を含む液晶表示装置用基板の製造方法に関する。本発明はまた該製造方法により得られる液晶表示装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ワードプロセッサやノートパソコン、パソコン用モニターなどのOA機器、携帯端末、テレビなどに用いられる表示装置としては、CRT(Cathode Ray Tube)がこれまで主に使用されてきた。近年、液晶表示装置が、薄型、軽量、且つ消費電力が小さいことからCRTの代わりに広く使用されてきている。液晶表示装置(LCD)は、液晶セル及び偏光板を有する。偏光板は保護フィルムと偏光膜とからなり、ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる。例えば、透過型液晶表示装置では、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには一枚以上の光学補償シートを配置することもある。一方、反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚以上の光学補償シート、及び偏光板の順に配置する。液晶セルは、液晶分子、それを封入するための二枚の基板及び液晶分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過型、反射型及び半透過型のいずれにも適用でき、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、IPS(In−Plane Switching)、FFS(Fringe Field Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、STN(Super Twisted Nematic)、のような表示モードが提案されている。しかしながら、従来の液晶表示装置で表示し得る色やコントラストは、LCDを見る時の角度によって変化する。そのため、液晶表示装置の視野角特性は、CRTの性能を越えるまでには至っていない。
【0003】
この視野角特性を改良するために、視野角補償用の光学補償フィルムが適用されてきた。これまでに上述の様々の表示モードに対して種々の光学特性を有する光学補償フィルムを用いることにより、優れたコントラスト視野角特性を有するLCDが提案されている。特にOCB、VA、IPSの3つのモードは広視野角モードとして全方位に渡り広いコントラスト視野角特性を有するようになり、近年では、30インチを超える大サイズディスプレイもテレビ用途として既に家庭に普及し始めている。
【0004】
VAモードは、正面から見た場合の表示特性がTNモードと同様に優れているのみならず、視野角補償用光学補償フィルムを適用することで広い視野角特性を発現することもあり、現在最も普及しているLCDモードとなっている。VAモードでは、フィルム面の方向に正の屈折率異方性を有する一軸配向性位相差板(正のa−plate)とフィルム面に垂直な方向に光学軸を有する負の一軸性位相差板(負のc−plate)を用いることでより広い視野角特性を実現できる(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、光学補償フィルムによる方法はコントラスト視野角特性を有効に改良できるが、色視野角特性に対しては改良効果が十分ではなく、色視野角特性改良はLCDの重要な課題となっている。LCDの色視野角特性は、R、G、Bの代表的な3つの色において波長が異なるため、同じ位相差でも偏光の位相差による変化が異なってしまうことに由来する。これを最適化するには、光学異方性材料の複屈折の波長依存性、すなわち複屈折波長分散をR、G、Bに対して最適化してやることである。現在のLCDではON、OFF表示に用いられる液晶分子の複屈折波長分散や光学補償フィルムの複屈折波長分散が容易に制御できないため、未だ色視野角特性を十分改良するに至っていない。
【0006】
色視野角特性を改善するためには、主に液晶セル内にカラーフィルタなどと一緒にパターニングする方法などを用いることによって、光学補償をR、G、Bの3色に対して独立に補償する方式(特許文献2参照)が提案されている。これらを反射型液晶表示装置におけるλ/4板や、各モードのLCDに適用することにより、色視野角特性を改善することができる。しかしながら、液晶セル内にパターニング可能な材料で、R、G、Bに対してパターニングされたカラーフィルタの上に位置を合わせながら、尚且つ光学的に均一な位相差特性を有する光学異方性層を形成することは非常に困難である。
【0007】
現在、液晶セル内に光学異方性層をR、G、Bのカラーフィルタごとにパターニングする方式として、フォトリソグラフィーなどによりRGBの光学異方性層をそれぞれ3回にわたって形成する方式(特許文献3参照)が提案されているが、工程数アップに起因するコストアップが大きな問題とされている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−153802号公報(第12−13頁、図54)
【特許文献2】特開2004−37837号公報
【特許文献3】特開2004−240102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液晶表示装置の色視野角を改善させる液晶表示装置用基板を簡便に製造する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記(1)〜(20)を提供するものである。
(1)光学異方性層を含む液晶表示装置用基板の製造方法であって、下記[1]〜[3]を含む方法により光学異方性層を形成することを含む製造方法:
[1]光学異方性層形成用材料層を有する基板を用意すること
[2]前記の光学異方性層形成用材料層に互いに露光条件の異なる2種以上のパターン露光を行うこと、及び
[3]前記露光後の基板に80℃〜400℃での熱処理を行うこと。
(2)[1]が光学異方性層形成用材料層を転写材料から基板に転写することにより行われる(1)に記載の方法。
【0011】
(3)光学異方性層形成用材料層と基板との間に、粘着層、又は感光性、感圧性もしくは感熱性の樹脂層が存在する(2)に記載の製造方法。
(4)光学異方性層形成用材料層が、基板上に、直接形成されている(1)に記載の製造方法。
(5)光学異方性層形成用材料層が、基板上に形成した配向層をラビングした上に直接形成されている(1)に記載の製造方法。
【0012】
(6)光学異方性層形成用材料層の面内レターデーションが40〜550nmである(1)〜(5)のいずれか一項に記載の製造方法。
(7)光学異方性層形成用材料が高分子を含む(1)〜(6)のいずれか1項に記載の製造方法。
(8)前記高分子が、アクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの重合性基を有する(7)に記載の製造方法。
【0013】
(9)光学異方性層形成用材料層が、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を、塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して固化した層である(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(10)前記液晶性化合物が、ラジカル重合反応性基を少なくとも1つ、及びカチオン重合反応性基を少なくとも1つ有している(9)に記載の製造方法。
(11)ラジカル重合反応性基がアクリル基又はメタクリル基であり、かつカチオン重合反応性基がビニルエーテル基、オキセタン基、又はエポキシ基である(10)に記載の製造方法。
(12)前記液晶性化合物が、棒状液晶性化合物である(9)〜(11)のいずれか1項に記載の製造方法。
【0014】
(13)光学異方性層形成用材料層が、少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む延伸フィルムである(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(14)延伸フィルムが、直接もしくは他の層を介して、粘着剤により基板と貼り合わされている(13)に記載の製造方法。
(15)基板がカラーフィルタ層を有する(1)〜(14)のいずれか1項に記載の製造方法。
(16)(1)〜(15)のいずれか1項に記載の方法により製造された、互いに異なる3つ以上のレターデーションをパターン状に有する光学異方性層を有する液晶表示装置用基板。
【0015】
(17)カラーフィルタ層を有し、かつ前記レターデーションのパターンがカラーフィルタ層が示す色に対応している(16)に記載の液晶表示装置用基板。
(18)(16)又は(17)に記載の液晶表示装置用基板を有する液晶表示装置。
(19)前記液晶層の配向モードがTNモード、または、VAモード、または、IPSモード、または、FFSモード、または、OCBモードであることを特徴とする(18)に記載の液晶表示装置。
(20)レターデーションが互いに異なる2つ以上の領域を有する光学異方性層の形成方法であって、下記[1]及び[2]を含む方法:
[1]フィルム状の光学異方性層形成用材料に互いに露光条件の異なる2種以上のパターン露光を行うこと、及び
[2]前記露光後の材料に80℃〜400℃での熱処理を行うこと。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法により、簡素な工程と工程数削減によってコストを抑えながらも液晶表示装置の色視野角を改善させる液晶表示装置用基板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0018】
本明細書において、Reは面内のレターデーションを表す。波長λnmにおけるReであるRe(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0019】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、Reが実質的に0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0020】
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板は、パターン状のレターデーションを有する液晶表示装置用基板であり、基板と、少なくとも一層のパターン状のレターデーションを有する光学異方性層とを有する。本明細書において「パターン状のレターデーションを有する光学異方性層」又は「レターデーションをパターン状に有する光学異方性層」とは「レターデーションが異なる領域をパターン状に有する光学異方性層」を意味する。なお、本明細書において特に言及しない場合は、「液晶表示装置用基板」と「基板」は区別して用いられる。
【0021】
[転写材料およびパターン形成前の液晶表示装置用基板]
図1(d)にパターン形成前の液晶表示装置用基板の一例の概略断面図を示す。図1(d)の液晶表示装置用基板においては、基板14上に配向層16を介して、光学異方性形成材料層15が形成されている。
図1(c)に転写材料を用いて形成したパターン形成前の液晶表示装置用基板の一例の概略断面図を示す。図1(a)、(b)は、光学異方性層形成用材料層が転写材料から基板に転写することにより形成される場合に用いられる転写材料の一例の概略断面図である。図1(a)の転写材料11は、仮支持体13上に配向層16を介して、光学異方性形成材料層15および転写用接着層17がこの順に形成されている。転写用接着層17を介して基板14に転写材料11をラミネート転写することによって、図1(c)のパターン形成前の液晶表示装置用基板12が作製できる。基板14としては透明であれば特に限定はないが、複屈折が小さい支持体が望ましく、ガラスや低複屈折性ポリマー等が用いられる。
【0022】
転写用接着層17としては、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感光性樹脂層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、耐熱性が必要な場合は感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。また、図1(b)の例は、(a)の仮支持体13と配向層16の間に力学特性制御層18が形成された転写材料である。良好な転写性を持たせるために、光学異方性形成材料層15と配向層16の間の剥離性が高いことが望ましく、転写工程における気泡混入防止や液晶表示装置用基板上の凹凸吸収のために力学特性制御層18を有することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましい。転写後剥離される仮支持体13のほか、図1(a)では配向層16が、図1(b)では配向層16および力学特性制御層18が、液晶表示装置用基板においては通常不要であり、熱や光による劣化等によって光学特性に影響を及ぼす場合には除去する必要がある。一般的には液処理による処理が好ましく、弱アルカリ液による処理がより好ましい。また、仮支持体剥離時に仮支持体に配向層16等の不要層を密着させることも、液処理による工程が削減されるため好ましい。
【0023】
[レターデーションをパターン状に有する光学異方性層を有する液晶表示装置用基板]
本発明の製造方法により液晶表示装置用基板は、2つ以上の異なるレターデーションをパターン状に有するパターニング光学異方性層が少なくとも一層形成されている。図2にパターニング光学異方性層を有する液晶表示装置用基板の製造工程の一例の概略断面図を示す。図2(a)に示すように、パターン形成前の液晶表示装置用基板12に対し、異なる3種の露光条件A、露光条件B、露光条件Cで露光した後に熱処理を行う。すると、図2(b)に示すようなそれぞれの露光条件に対応する15A、15B、15Cの領域を有するパターニング光学異方性基板19が形成され、それぞれのレターデーションReA、ReB、ReCとして実質的に異なる値を得ることができる。露光条件は、後述のように露光量を変化させることなどによって、異なる条件を設定すればよく、3回以上のパターン露光を行う場合は複数の露光条件のうちの1つが露光を行わない(未露光)ことであってもよい。なお、パターン露光とは、一部の領域の露光であり、例えば「光学異方性層形成用材料層にパターン露光を行う」というとき、光学異方性層形成用材料層の一部の領域に露光を行うことを意味する。該領域は層の法線方向と平行な面により分割される領域であればよく、個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。
【0024】
パターン露光方法としては、必要とする解像度があれば、市販のレーザ描画装置などによる直接露光でもよいし、フォトマスクを介した露光でもよい。このように得られるパターニング光学異方性層は液晶表示装置のセルの光学補償に寄与し、即ち、コントラスト視野角を拡大し、液晶表示装置の画像着色を解消するのに寄与する。なお、本発明の製造方法は、液晶表示装置の構成部材である液晶表示装置用基板を製造することに適しているが、本製造方法は液晶表示装置用基板の製造以外の、光学異方性層を有する物品の製造にも応用することができる。
【0025】
[カラーフィルタ層を有する液晶表示装置用基板]
上記の露光条件の最適化を行うことにより、必要なレターデーションをパターン状に有する光学異方性層が作製できる。このような光学異方性層を有する液晶表示装置用基板により、液晶セル内の各色のカラーフィルタに対して異なる光学補償を達成することができる。図3(a)、(b)、(c)に本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用基板の一例の概略断面図を示す。まず図3(a)の例について説明すると、液晶表示装置用基板19は基板14上に、ブラックマトリクス22、カラーフィルタ層21、転写用接着層17、パターニング光学異方性層15がこの順で形成されている。カラーフィルタ層21は少なくとも赤色の21R、緑色の21G、青色の21Bのパターンを有していればよい。また、さらに白色(W)のパターンを有するカラーフィルタ層を用いてもよい。パターニング光学異方性層15は各21R、21G、21Bに対して、それぞれ最適なレターデーションを有する15r、15g、15bのパターンを有している。カラーフィルタ層に21Wに該当するパターンが存在する場合は、パターニング光学異方性層において21Wに対して最適なレターデーションを有する15wのパターンが、21Wに対応する位置に存在していればよい。光学異方性層をカラーフィルタ層の色ごとにパターニングすることにより、最適な光学補償が可能となるため、パターン状のレターデーションを有さない光学異方性層を用いる場合に比べて、視野角を改善することができる。図3(b)はカラーフィルタ層とパターニング光学異方性層の作製順序を逆にして形成した液晶表示装置用基板である。図3(c)は図1(d)に示すパターン形成前の液晶表示装置用基板12を用いて同様に作製される液晶表示装置用基板の例である。
【0026】
本発明の製造方法により得られた液晶表示装置用基板は、液晶セルを形成する2枚の液晶表示装置用基板のどちらに用いられていてもよいが、TFTアレイ工程はシリコン形成に通常300℃以上の高温プロセスを要することから、TFT層を有する側の液晶表示装置用基板に対向する側の液晶表示装置用基板として用いるほうが好ましい。TFT層を有する側の液晶表示装置用基板として用いる場合は、形成後のTFTのシリコン層を有する基板を本発明の製造方法における基板として用いることにより、シリコン層よりも上に光学異方性層を設けることが好ましい。
本発明の製造方法により得られた液晶表示装置用基板によって液晶セル内に光学異方性層を設けることができるため、温湿度で寸度変化しやすい光学異方性フィルムを貼り合わせるのに比べ、ガラス基板に強固に保持されることよってコーナームラが発生しにくい。
【0027】
[液晶表示装置]
図4(a)、(b)、及び(c)は本発明の液晶表示装置用基板を含む液晶表示装置の一例の概略断面図である。図4(a)、(b)、及び(c)の例は、それぞれ図3(a)、(b)、及び(c)に示す液晶表示装置用基板を表示側に用いた液晶表示装置であって、カラーフィルタおよびパターニング光学異方性層を有する液晶表示装置用基板19と、その対向基板であるTFT34を有する液晶表示装置用基板の両基板間に、透明電極層31、配向層32を形成した後、液晶層33を挟んだ液晶セル35を有する液晶表示装置である。液晶セル35の両側には、セルロースアセテートフィルム等の保護フィルム37に挟まれた偏光層36によって形成される偏光板38が、粘着剤を介して液晶セル35に貼り合わされている。上下の透明電極層31の間に印加する電圧を変化させることにより、液晶層の配向状態を変化させて、液晶表示装置をスイッチングする。配向層32は液晶層33における液晶分子の配向を調節するためにラビング処理されるのが一般的である。偏光層を挟む2枚の保護フィルム37のうち、液晶セル側の保護フィルムとして光学補償シートを用いてもよい。さらに、液晶層33のセルギャップをRGBごとに変化させるマルチギャップにすることによって、自由度の高い液晶セル設計が可能となる。この方式は、特にVAモードもしくはIPSモードにおいて優れた視野角特性を達成することができ好ましい。
【0028】
以下、本発明の製造方法について、材料、手順等を、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0029】
[基板]
本発明の液晶表示装置用基板の製造に用いられる基板は、透明であれば特に限定はなく、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板でも、ポリマーからなる透明基板でもよい。液晶表示装置用の場合、液晶表示装置用基板作製工程においてカラーフィルタや配向膜のベークのために180℃以上の高温プロセスを要するため、耐熱性を有することが好ましい。そのような耐熱性基板としては、ガラス板もしくはポリイミド、ポリエーテルスルホン、耐熱性ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、特に価格、透明性、耐熱性の観点からガラス板が好ましい。また、基板は、予めカップリング処理を施しておくことにより、転写接着層との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、100〜1200μmが一般的に好ましく、300〜1000μmが特に好ましい。
また、本発明の液晶表示装置用基板の製造に用いられる基板としては、上記のガラス基板上にカラーフィルタ層等の他の層を有する基板を用いてもよい。
【0030】
[カラーフィルタ層]
カラーフィルタ層は特に限定されず、市販のカラーフィルタを用いてもよく、従来公知の任意の方法で作製されたカラーフィルタを用いてもよい。また、後述の感光性樹脂層形成用組成物に下記の着色剤を添加して得られる着色感光性樹脂層形成用組成物を用いて、特開平11−248921号公報、特許3255107号公報に記載の方法で作製してもよい。
【0031】
(4)着色剤
前記着色樹脂組成物には、公知の着色剤(染料、顔料)を添加することができる。該公知の着色剤のうち顔料を用いる場合には、着色樹脂組成物中に均一に分散されていることが望ましく、そのため粒子サイズが0.1μm以下、特には0.08μm以下であることが好ましい。
上記公知の染料ないし顔料としては、特開2004−302015号公報の段落番号[0033]、米国特許第6,790,568号明細書カラム14に記載の顔料等が挙げられる。
【0032】
本発明における着色剤としては、上記の着色剤の中でも、(i)R(レッド)の着色樹
脂組成物においてはC.I.ピグメント・レッド254が、(ii)G(グリーン)の着色
樹脂組成物においてはC.I.ピグメント・グリーン36が、(iii)B(ブルー)の着色樹脂組成物においてはC.I.ピグメント・ブルー15:6が好適なものとして挙げられる。さらに上記顔料は組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明において、併用するのが好ましい上記記載の顔料の組み合わせは、C.I.ピグメント・レッド254では、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド224、C.I.ピグメント・イエロー139、または、C.I.ピグメント・バイオレット23との組み合わせが挙げられ、C.I.ピグメント・グリーン36では、C.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー139、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・イエロー138、または、C.I.ピグメント・イエロー180との組み合わせが挙げられ、C.I.ピグメント・ブルー15:6では、C.I.ピグメント・バイオレット23、または、C.I.ピグメント・ブルー60との組み合わせが挙げられる。
【0034】
このように併用する場合の顔料中のC.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・グリーン36、C.I.ピグメント・ブルー15:6の含有量は、C.I.ピグメント・レッド254は、80質量%以上が好ましく、特に90質量%以上が好ましい。C.I.ピグメント・グリーン36は50質量%以上が好ましく、特に60質量%以上が好ましい。C.I.ピグメント・ブルー15:6は、80質量%以上が好ましく、特に90質量%以上が好ましい。
【0035】
上記顔料は分散液として使用することが望ましい。この分散液は、前記顔料と顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、後述する有機溶媒(またはビヒクル)に添加して分散させることによって調製することができる。前記ビビクルとは、塗料が液体状態にある時に顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダ)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、朝倉邦造著、「顔料の事典」、第一版、朝倉書店、2000年、438項に記載されているニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。さらに該文献310項記載の機械的摩砕により、摩擦力を利用し微粉砕してもよい。
【0036】
本発明で用いる着色剤(顔料)は、数平均粒子サイズ0.001〜0.1μmのものが好ましく、さらに0.01〜0.08μmのものが好ましい。顔料数平均粒子サイズが0.001μm未満であると、粒子表面エネルギーが大きくなり凝集し易くなり、顔料分散が難しくなると共に、分散状態を安定に保つのも難しくなり好ましくない。また、顔料数平均粒子サイズが0.1μmを超えると、顔料による偏光の解消が生じ、コントラストが低下し、好ましくない。なお、本明細書において、「粒子サイズ」とは粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径を意味し、また「数平均粒子サイズ」とは多数の粒子について上記の粒子サイズを求めた100個平均値を意味する。
【0037】
カラーフィルタの製造においては、特開平11−248921号公報、特許3255107号公報に記載のように、カラーフィルタを形成する着色樹脂組成物を重ねることで土台を形成し、その上に透明電極を形成し、更に必要に応じて分割配向用の突起を重ねることでスペーサを形成することが、コストダウンの観点で好ましい。
【0038】
[仮支持体]
光学異方性層形成用材料層が転写材料から基板に転写することにより形成される場合に用いられる転写材料に用いられる仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0039】
[光学異方性層]
光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有していれば特に限定はない。本発明の製造方法によっては、光学異方性層形成用材料層が所定の工程を経ることによって特に、Reが異なる領域を2つ以上有する光学異方性層が形成される。
【0040】
光学異方性層は、上記の様に、液晶セル中に組み込まれることによって、液晶表示装置の視野角を補償する光学異方性層として機能する。光学異方性層単独で充分な光学補償能を有する態様はもちろん、他の層(例えば、液晶セル外に配置される光学異方性層等)との組み合わせで光学補償に必要とされる光学特性を満足する態様も本発明の範囲に含まれる。また、パターン露光前の光学異方性層が、光学補償能に充分な光学特性を満足している必要はなく、例えば、露光工程を通じて、光学特性が発現又は変化して、最終的に光学補償に必要な光学特性を示すものであればよい。
【0041】
[パターン露光前の光学異方性層]
本発明の製造方法における露光の前の光学異方性層は光学異方性を有していても有していなくてもよく、本明細書において、「光学異方性形成材料層」ということがある。光学異方性形成材料層はReが40〜550nmであることが好ましい。
【0042】
[光学異方性層形成用材料]
光学異方性層形成用材料は、塗布又は延伸などにより、フィルム状の層を形成することが可能であり、条件の異なる露光によって異なるReを与えることができる材料であれば、特に限定されない。
光学異方性層形成用材料の1例としては、高分子を含む材料が挙げられる。高分子はアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの重合性基を有することが好ましい。例えば、光学異方性層形成用材料層は少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、直接もしくは他の層を介して、粘着剤により基板と貼り合わされて用いればよい。
さらに、光学異方性層形成用材料の好ましい1例としては、液晶性化合物を含む材料が挙げられる。特に光学異方性層形成用材料層が、液晶性化合物を含む溶液が塗布され、液晶相形成温度で熟成・配向されたあと、その状態のまま熱または電離放射線照射して固化することによって得られた層であることが好ましい。この態様につき、以下に詳しく説明する。
【0043】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0044】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
【0045】
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
【0046】
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基を示す。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。また、液晶性化合物は、アクリル基又はメタクリル基などのラジカル重合反応性基を少なくとも1つ、及びビニルエーテル基、オキセタン基、又はエポキシ基などのカチオン重合反応性基を少なくとも1つ有していることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0047】
【化1】

【0048】
1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0049】
1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
【0050】
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5n−W2
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0051】
1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
【0052】
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0053】
【化2】

【0054】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報に記載の方法で合成することができる。
【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
【化8】

【0061】
液晶性化合物はディスコティック化合物であってもよい。ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0062】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いることが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0063】
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
【0064】
上記ディスコティック化合物の好ましい例を下記に示す。
【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
光学異方性層形成用材料層を、液晶性化合物を含有する組成物から形成する場合、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製することが好ましい。
【0077】
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。水平配向とは円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。
【0078】
光学異方性層は2層以上の層からなっていてもよく、液晶性化合物からなる層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物からなる層と棒状性液晶性化合物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の層を積層してもよい。
【0079】
液晶性化合物を含有する組成物は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液として、後述する所定の配向層の上に塗布されることが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0080】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができる。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0081】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0082】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現した層であってもよい。この偏光照射は、上記配向固定化における光重合プロセスと同時に行ってもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよい。大きな面内レターデーションを得るためには、偏光照射は液晶化合物層塗布、配向後に最初に行うことが好ましい。偏光照射は、酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
偏光照射による光配向によって発生した面内のレターデーションを示す光学異方性層は、特に、VAモードの液晶表示装置の光学補償に適している。
【0083】
[偏光照射後の紫外線照射による後硬化]
前記光学異方性層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良すると共に、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は、不活性ガス置換してもしなくてもよいが、酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0084】
液晶化合物を含む溶液などの光学異方性層形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0085】
【化20】

【0086】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0087】
【化21】

【0088】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0089】
【化22】

【0090】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0091】
【化23】

【0092】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638号公報および特開2006−91205号公報に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0093】
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0094】
[配向層]
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に基板もしくは透明仮支持体上又は該基板もしくは透明仮支持体に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0095】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0096】
配向層の形成には、ポリマーを使用することが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0097】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0098】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0099】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0100】
[転写用接着層]
本発明の方法を転写材料を用いて行う場合に用いられる、転写用接着層について説明する。転写用接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、中でも感光性樹脂層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0101】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0102】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0103】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0104】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもできる。転写用接着層として用いられる感光性樹脂層は、本発明の製造方法における露光工程で硬化するため、この露光により基板と光学異方性層を接着させることが可能である。現像は液晶表示装置用基板形成工程における環境上や防爆上の問題から、有機溶剤が5%以下の水系現像であることが好ましく、アルカリ現像であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成することが好ましい。
以下、これら(1)〜(3)の成分について説明する。
【0105】
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜50質量%が一般的であり、25〜45質量%が好ましい。
【0106】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0107】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0108】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0109】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物と混ざり合うものであれば使用可能である。本発明に用いる好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報[0090]〜[0091]、特開2003−177522号公報[0092]〜[0093]、特開2003−177523号公報[0094]〜[0095]、特開2003−177521号公報[0096]〜[0097]、特開2003−177519号公報[0098]〜[0099]、特開2003−177520号公報[0100]〜[0101]、特開平11−133600号公報の[0102]〜[0103]、特開平6−16684号公報の発明として開示されている界面活性剤が好適なものとして挙げられる。より高い効果を得る為にはフッ素系界面活性剤、および/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッソ原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。フッ素系界面活性剤を用いる場合、該界面活性剤分子中のフッ素含有置換基のフッ素原子数は1〜38が好ましく、5〜25がより好ましく、7〜20が最も好ましい。フッ素原子数が多すぎるとフッ素を含まない通常の溶媒に対する溶解性が落ちる点で好ましくない。フッ素原子数が少なすぎると、ムラの改善効果が得られない点で好ましくない。
【0110】
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
【0111】
【化24】

【0112】
式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜18の整数、mは2〜14の整数を示す。p、qは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも同時に0になる場合は含まない。
【0113】
特に好ましい界面活性剤の一般式(a)で表されるモノマーをモノマー(a)、一般式(b)で表されるモノマーをモノマー(b)と記す。一般式(a)に示すCm2m+1は、直鎖でも分岐鎖でもよい。mは2〜14の整数を示し、好ましくは4〜12の整数である。Cm2m+1の含有量は、モノマー(a)に対して20〜70質量%が好ましく、特に好ましくは40〜60質量%である。R1は水素原子またはメチル基を示す。またnは1〜18を示し、中でも2〜10が好ましい。一般式(b)に示すR2およびR3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。pおよびqは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも0は含まない。pおよびqは好ましくは2〜8である。
【0114】
また、特に好ましい界面活性剤1分子中に含まれるモノマー(a)としては、互いに同じ構造のものでも、上記定義範囲で異なる構造のものを用いてもよい。このことは、モノマー(b)についても同様である。
【0115】
特に好ましい界面活性剤の重量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
【0116】
モノマー(a)および(b)以外の共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン等のスチレンおよびその誘導体、置換体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、スチレンスルホン酸無水マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体等が挙げられる。
【0117】
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
【0118】
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させると、表示ムラが改良される点で好ましい。
【0119】
好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2004−163610号公報の段落番号[0054]〜[0063]に記載の化合物が挙げられる。また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。本発明においては、一般式(a)で表されるモノマーを含まないフッ素系界面活性剤である、特開2004−331812号公報の段落番号[0046]〜[0052]に記載の化合物を用いることも好ましい。
【0120】
[その他の層]
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0121】
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0122】
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フィルム材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0123】
光学異方性層、ならびに所望により形成される感光性樹脂層、転写接着層、配向層、熱可塑性樹脂層および中間層の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0124】
[転写材料を基板上に転写する方法]
本発明の製造方法において、転写材料を用いる場合、転写材料を基板上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した本発明の転写材料を、転写接着層面を基板表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。その後、支持体は剥離してもよく、剥離によって露出した光学異方性層表面に、他の層、例えば電極層等を形成してもよい。
【0125】
[2つ以上の異なるレターデーションをパターン状に有する光学異方性層]
レターデーションをパターン状に有する光学異方性層は、パターンごとに露光条件を変更することによって形成された光学異方性層を、80℃以上400℃以下の加熱工程を経ることにより形成することができる。露光条件を変化させる方法としては特に限定されないが、パターンごとにそれぞれ露光量などの露光条件の異なるマスク露光を行う方法や、パターンごとに露光照度や露光量等の露光条件が変更されるマスクを用いる方法があげられる。また、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画することにより、露光条件の異なるパターン露光を行ってもよい。前記露光の光源としては、感光性樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できるものを選択することが好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。露光量としては、通常5〜200mJ/cm2程度であり、好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0126】
2種以上の互いに異なる露光条件でのパターン露光の方法としては、例えば、露光量5〜100mJ/cm2の露光条件の中から、任意の2つ以上の露光量を選択し、それら2つ以上の露光量でパターンごとにマスク露光する方法が考えられる。また、パターン状に光吸収するもしくは光反射するマスクを用いる方法や、露光時の温度や酸素濃度などをパターンごとに変えてマスク露光する方法などがあげられる。
また、例えば図3(b)又は(c)に示す液晶表示用装置の作製の際等においては、上記露光はパターン形成前の光学異方性層上に設けられたカラーフィルタ層の上から行うことも可能である。この場合、カラーフィルタ自身が一種のフォトマスクになって、カラーフィルタが表示する色事の異なる条件の露光が可能となり得る。
【0127】
前記光学異方性層が二軸性を示すと、液晶セル、特にVAモードの液晶セルを正確に光学補償できるので好ましい。液晶性化合物として、反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いる場合、二軸性を発現させるためにはコレステリック配向もしくは傾斜角が厚み方向に徐々に変化しながらねじれたハイブリッドコレステリック配向を、偏光照射によって歪ませることが必要である。偏光照射によって配向を歪ませる方法としては、二色性液晶性重合開始剤を用いる方法(EP1389199 A1)や分子内にシンナモイル基等の光配向性官能基を有する棒状液晶性化合物を用いる方法(特開2002−6138号公報)が挙げられる。本発明においては、いずれも利用できる。
【0128】
前記光学異方性層が正のa−plateの場合、VAモードもしくは半透過型の液晶セルを正確に光学補償できるので好ましい。また、前記光学異方性層が正のc−plateの場合、IPSモードを正確に光学補償できるので好ましい。
VAモード、IPSモードいずれの場合においても、偏光板保護フィルムの一方を光学補償シートとすることが好ましい。VAモードにおいては、偏光板保護フィルムとしての光学異方性層が負のc−plateであることが好ましく、IPSモードに対しては厚み方向の屈折率が最も小さい二軸性であることが好ましい。本発明の転写材料に用いる一軸性の光学異方性層は、一軸性である棒状の液晶性化合物を液晶のダイレクタが一方向に揃うように配向させることにより作製することができる。このような一軸性配向は、ラビング配向層もしくは光配向層上にカイラル性のない液晶層を配向させる方法、磁場もしくは電場で配向させる方法、延伸やせん断のような外力を与えて配向させる方法などによって実現できる。
【実施例】
【0129】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0130】
(熱可塑性樹脂層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、熱可塑性樹脂層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────――――――
熱可塑性樹脂層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────――――――
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 (共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、重量平均分子量=10万、Tg≒70℃) 5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、重量平均分子量=1万、Tg≒100℃) 13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────――――――
【0131】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、中間層/配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────――――
中間層/配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────――――
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────――――
【0132】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は特開2004−123882号公報に記載の方法を基に合成した。
LC−1−2はTetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
──────────────────────────────────――――
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────――――
棒状液晶(LC−1−1) 19.57
水平配向剤(LC−1−2) 0.01
カチオン光重合開始剤(Cyracure UVI6974、ダウ・ケミカル)
0.40
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))
0.02
メチルエチルケトン 80.00
──────────────────────────────────――――
【0133】
【化25】

【0134】
(転写用接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写用接着層(感光性樹脂層)用塗布液AD−1として用いた。

──────────────────────────────────――――――
感光性転写接着/樹脂層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――――――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル =35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────――――――
【0135】
(感光性樹脂層用塗布液PP-Kの調製)
【表1】

【0136】
表1中の組成物は以下の通り。
[K顔料分散物組成]
──────────────────────────────────――────
K顔料分散物組成(%)
──────────────────────────────────――────
カーボンブラック(デグッサ社製、Special Black 250) 13.1
5−[3−オキソ−2−[4−[3,5-ビス(3−ジエチルアミノプロピルアミノカルボニル)フェニル]アミノカルボニル]フェニルアゾ]−ブチロイルアミノベンズイミダゾロン 0.65
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.7万) 6.72
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53
──────────────────────────────────――────
【0137】
[バインダ組成]
──────────────────────────────────――────バインダ組成(%)
──────────────────────────────────――────ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量4万) 27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────――────
【0138】
[DPHA組成]
──────────────────────────────────――────DPHA溶液組成(%)
──────────────────────────────────――────KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 76.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24.0
──────────────────────────────────――────
【0139】
(感光性樹脂層用塗布液PP−Kの調製)
感光性樹脂層用塗布液PP−Kは、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ1、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾール、メガファックF−176PFをはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌することによって得た。
(RGB用感光性樹脂用塗布液の作製)
【0140】
以下に感光性樹脂層用塗布液の作製方法を説明する。表2にそれぞれの感光性樹脂層用塗布液の組成を示す。
【0141】
【表2】

【0142】
表2中の組成物は以下の通り。
[R顔料分散物−1組成]
──────────────────────────────────――
R顔料分散物−1組成(%)
──────────────────────────────────――
C.I.ピグメント・レッド254 8.0
5−[3−オキソ−2−[4−[3,5-ビス(3−ジエチルアミノプロピルアミノカルボニル)フェニル]アミノカルボニル]フェニルアゾ]−ブチロイルアミノベンズイミダゾロン 0.8
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、(重量平均分子量3.7万) 8.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 83.2
──────────────────────────────────――
【0143】
[R顔料分散物−2組成]
──────────────────────────────────――
R顔料分散物−2組成(%)
──────────────────────────────────――
C.I.ピグメント・レッド177 18.0
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、
(重量平均分子量3.7万) 12.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70.0
──────────────────────────────────――
【0144】
[G顔料分散物組成]
──────────────────────────────────――
G顔料分散物組成(%)
──────────────────────────────────――
C.I.ピグメント・グリーン36 18.0
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、
(重量平均分子量3.7万) 12.0
シクロヘキサノン 35.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 35.0
──────────────────────────────────――
【0145】
[バインダ2組成]
──────────────────────────────────――
バインダ2組成(%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート=
38/25/37モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3万)27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────――
【0146】
[バインダ3組成]
──────────────────────────────────――
バインダ3組成(%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート=
36/22/42モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3万)27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────――
【0147】
(感光性樹脂層用塗布液PP−Rの調製)
感光性樹脂層用塗布液PP−Rは、まず表2に記載の量のR顔料分散物−1、R顔料分散物−2、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ2、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のED152をはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm20分間攪拌し、更に、表1に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm30分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0148】
(感光性樹脂層用塗布液PP−Gの調製)
感光性樹脂層用塗布液PP−Gは、まず表2に記載の量のG顔料分散物、CFエローEX3393、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダ1、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm30分間攪拌し、更に、表1に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0149】
(感光性樹脂層用塗布液PP−Bの調製)
感光性樹脂層用塗布液PP−Bは、まず表2に記載の量のCFブルーEX3357、CFブルーEX3383、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ3、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、フェノチアジンをはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌し、更に、表1に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0150】
(実施例1の転写材料の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、熱可塑性樹脂層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いてLC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥し、液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度240mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して、厚さ1.8μmの光学異方性層を形成し、最後に、感光性転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの感光性樹脂層を形成し実施例1の転写材料を作製した。
【0151】
(位相差測定)
ファイバ型分光計を用いた平行ニコル法により、波長λにおける正面レターデーションReおよび遅相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときの590nmにおける斜め40°のレターデーション、斜め−40°のレターデーションを測定した。位相差測定結果を表3に示す。
ここで、斜め40°レターデーションとは、面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として面内の法線方向に対して+40°傾斜した方向から、波長590nmの光を入射させて測定したレターデーションを表す。
【0152】
【表3】

【0153】
(実施例2の液晶表示装置用基板の作製)
小林駿介編著、カラー液晶ディスプレイ、240頁、産業図書(1994)に記載の一般的な方法で、ガラス基板上にブラックマトリクスおよびRGBの3色のカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板を作製した。その上に、実施例1の転写材料を、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートし、仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、Rパターニング部の露光量が25mJ/cm2、Gパターニング部の露光量が22mJ/cm2、Bパターニング部の露光量が16mJ/cm2となるようにUV露光を行った。次に、230℃のマッフル炉で1時間ベークすることにより、レターデーションのパターンを有する図3(a)の態様の実施例2の液晶表示装置用基板を得た。また、露光量22mJ/cm2で全面露光を行った以外は実施例2と同様にして比較例1の液晶表示装置用基板を得た。
【0154】
液晶表示装置用基板におけるR、G、Bパターンは非常に微細であるため、それぞれのパターン部のReを測定することは非常に困難である。そこで、以下の方法によりそれぞれのパターン部のReを求めた。
上記のRGBの3色のカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板の作製と同様の方法で、ベタのR、G、Bカラーフィルタ基板を作製した。これらのカラーフィルタ基板上に前記と同様の転写方法により実施例1の転写材料をそれぞれ転写したものにつき、実施例2及び比較例1の液晶表示装置用基板作製時に用いた露光条件で露光することにより、実施例2及び比較例1の液晶表示装置用基板におけるR、G、Bパターン部のRe値を求めた。すなわち、実施例2のR、G、Bパターン部のReを求めるため、ベタのR、G、Bカラーフィルタ基板を用いたものについてそれぞれ、露光量25mJ/cm2、22mJ/cm2、16mJ/cm2で露光して作成した液晶表示装置用基板のRe値をそれぞれ測定し、比較例1のR、G、B部のReを求めるため、ベタのR、G、Bカラーフィルタ基板を用いたものについて露光量22mJ/cm2で露光して作製した液晶表示装置用基板のRe値をそれぞれ測定した。結果を表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
(実施例3の液晶表示装置用基板の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。該ガラス基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
上記ガラス基板上に配向層用塗布液AL−2(RN1199A、日産化学工業(株)製)を塗布、乾燥させて220℃1時間で焼成し、配向層を作製した。焼成後の基板の膜厚は60nmであった。
次いで、上記の配向層をラビング処理し、この配向層上に、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布した。これを膜面温度105℃で2分間乾燥し、液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度240mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して、厚さ1.8μmの図1(d)の態様のパターン形成前の液晶表示装置用基板を形成した。
【0157】
得られたパターン形成前の液晶表示装置用基板の上に感光性樹脂組成物PP−Kを塗布、乾燥させて、乾燥膜厚が2.0μmの感光性樹脂層を設け、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量500mJ/cm2でパターン露光した。
炭酸Na系現像液(0.06mol/Lの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム(株)製)と2−プロパノールの混合液を用い、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像しつつ、ポリエステルブラシがけを行い、感光性樹脂層を現像しブラックマトリックスを形成し、ブラックマトリクス基板を作製した。
【0158】
超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、Rパターニング部の露光量が63mJ/cm2、Gパターニング部の露光量が55mJ/cm2、Bパターニング部の露光量が40mJ/cm2となるようにUV露光を行った。最後に、230℃で1時間ベークすることにより、レターデーションのパターンを有する光学異方性層を形成した。
【0159】
その上に、感光性樹脂組成物PP−Rを塗布、乾燥させて、乾燥膜厚が2.0μmの感光性樹脂層を設け、ブラックマトリクスと同様の工程でR画素のパターンを形成した。但し露光量は100mJ/cm2とした。このR画素を形成した基板を予備加熱装置により100℃2分加熱した。次に、感光性樹脂組成物PP−Gを塗布、乾燥させて、乾燥膜厚が2.0μmの感光性樹脂層を設け、R画素と同様の工程でG画素を形成した。さらに、感光性樹脂組成物PP−Bを塗布、乾燥させて、乾燥膜厚が2.0μmの感光性樹脂層を設け、R画素およびG画素と同様の工程でB画素を形成した。このR、G、Bの画像を形成した基板を230℃で1時間ベークすることにより、図3(c)の態様の実施例3の液晶表示装置用基板を得た。また、光学異方性層のRGBパターニング部ごとのパターン露光の代わりに、露光量55mJ/cm2で全面露光を行った以外は実施例3と同様にして比較例2の液晶表示装置用基板を得た。
【0160】
(実施例4の液晶表示装置用基板の作製)
実施例3と同様の方法で作製したブラックマトリクス基板に対して、実施例3における光学異方性層のRGBパターニング部ごとのパターン露光を行わずに、実施例3と同様の方法でカラーフィルタを作製し、図3(c)の態様の実施例4の液晶表示装置用基板を得た。但し各画素の露光量としてはぞれぞれ100mJ/cm2の代わりにR画素に対して212mJ/cm2、G画素に対して155mJ/cm2、B画素に対して107mJ/cm2を用いた。
【0161】
(位相差測定)
上記のパターン形成前の液晶表示装置用基板に対して、実施例3、実施例4及び比較例2の液晶表示装置用基板作製時に用いた露光条件で露光して光学異方性基板を作製する。次いで、該光学異方性基板上に、RGBの3色のカラーフィルタを有するカラーフィルタ基板の作製と同様の方法で、ベタのR、G、Bカラーフィルタ基板を作製することにより、実施例3、実施例4及び比較例2の液晶表示装置用基板におけるR、G、Bパターン部のRe値を求めた。すなわち、実施例3のR、G、B部のReを求めるため、露光量63mJ/cm2、55mJ/cm2、40mJ/cm2でベタ露光して作成した光学異方性基板に対し、それぞれこの順番でベタのR、G、Bカラーフィルタを形成した。また、
比較例2のR、G、B部のReを求めるため、ベタのR、G、Bカラーフィルタ基板を用いたものについて露光量55mJ/cm2でベタ露光して作成した光学異方性基板に対し、それぞれベタのR、G、Bカラーフィルタを形成した。これら液晶表示装置用基板のRe値の測定結果を表5に示す。
【0162】
【表5】

【0163】
(各実施例のVAモード液晶表示装置の作製)
実施例2、実施例3、実施例4、比較例1、及び比較例2の液晶表示用基板のそれぞれについて、その対向基板となるTFT層を設けたガラス基板に対し、ITOのスパッタリングにより透明電極膜を形成し、その上にポリイミドの配向膜を設けた。カラーフィルタの画素群の周囲に設けられたブラックマトリックスの外枠に相当する位置に、スペーサ粒子を含有するエポキシ樹脂のシール剤を印刷し、それぞれの液晶表示用基板と対向基板とを10kg/cmの圧力で貼り合わせた。次いで、150℃、90分で熱処理し、シール剤を硬化させ、2枚のガラス基板の積層体を得た。このガラス基板積層体を真空下で脱気し、その後大気圧に戻して2枚のガラス基板の間隙に液晶を注入し、VAモード液晶セルを得た。このVAモード液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。カラー液晶表示装置用冷陰極管バックライトとしては、BaMg2Al1627:Eu,Mnと、LaPO4:Ce,Tbとを質量比50:50で混合した蛍光体を緑色(G)、Y23:Euを赤色(R)、BaMgAl1017:Euを青色(B)として、任意の色調を持つ白色の三波長蛍光ランプを作製した。このバックライト上に該偏光板を付与したVAモード液晶セルを設置し、VAモード液晶表示装置とした。
それぞれの液晶表示用基板から得られたVAモード液晶表示装置の目視評価結果を表6に示す。
【0164】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】転写材料から光学異方性層形成用材料層を作製する概略を示した図である。
【図2】本発明の製造方法の概略を示す図である。
【図3】液晶表示装置用基板の例の概略断面図である。
【図4】液晶表示装置の例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0166】
11 転写材料
12 パターン形成前の液晶表示装置用基板
13 仮支持体
14 基板
15 光学異方性層又は光学異方性層形成用材料層
16 光学異方性層用配向層
17 転写用接着層
18 力学特性制御層
19 液晶表示装置用基板
15A 光学異方性層における露光条件Aによって形成される領域
15B 光学異方性層における露光条件Bによって形成される領域
15C 光学異方性層における露光条件Cによって形成される領域
21 カラーフィルタ層
21R 赤色のカラーフィルタ層
21G 緑色のカラーフィルタ層
21B 青色のカラーフィルタ層
15r 赤色に対応する光学異方性層のパターン
15g 緑色に対応する光学異方性層のパターン
15b 青色に対応する光学異方性層のパターン
22 ブラックマトリクス
31 透明電極層
32 液晶層用配向層
33 液晶層
34 TFTアレイ
35 液晶セル
36 偏光層
37 保護フィルム
38 偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性層を含む液晶表示装置用基板の製造方法であって、下記[1]〜[3]を含む方法により光学異方性層を形成することを含む製造方法:
[1]光学異方性層形成用材料層を有する基板を用意すること
[2]前記の光学異方性層形成用材料層に互いに露光条件の異なる2種以上のパターン露光を行うこと、及び
[3]前記露光後の基板に80℃〜400℃での熱処理を行うこと。
【請求項2】
[1]が光学異方性層形成用材料層を転写材料から基板に転写することにより行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光学異方性層形成用材料層と基板との間に、粘着層、又は感光性、感圧性もしくは感熱性の樹脂層が存在する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
光学異方性層形成用材料層が、基板上に、直接形成されている請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
光学異方性層形成用材料層が、基板上に形成した配向層をラビングした上に直接形成されている請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
光学異方性層形成用材料層の面内レターデーションが40〜550nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
光学異方性層形成用材料が高分子を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記高分子が、アクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、オキセタン基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの重合性基を有する請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
光学異方性層形成用材料層が、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を、塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して固化した層である請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記液晶性化合物が、ラジカル重合反応性基を少なくとも1つ、及びカチオン重合反応性基を少なくとも1つ有している請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
ラジカル重合反応性基がアクリル基又はメタクリル基であり、かつカチオン重合反応性基がビニルエーテル基、オキセタン基、又はエポキシ基である請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記液晶性化合物が、棒状液晶性化合物である請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
光学異方性層形成用材料層が、少なくとも1つの反応性基を有する化合物を含む延伸フィルムである請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
延伸フィルムが、直接もしくは他の層を介して、粘着剤により基板と貼り合わされている請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
基板がカラーフィルタ層を有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法により製造された、互いに異なる3つ以上のレターデーションをパターン状に有する光学異方性層を有する液晶表示装置用基板。
【請求項17】
カラーフィルタ層を有し、かつ前記レターデーションのパターンが、カラーフィルタ層が示す色に対応している請求項16に記載の液晶表示装置用基板。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の液晶表示装置用基板を有する液晶表示装置。
【請求項19】
前記液晶層の配向モードがTNモード、または、VAモード、または、IPSモード、または、FFSモード、または、OCBモードであることを特徴とする請求項18に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
レターデーションが互いに異なる2つ以上の領域を有する光学異方性層の形成方法であって、下記[1]及び[2]を含む方法:
[1]フィルム状の光学異方性層形成用材料に互いに露光条件の異なる2種以上のパターン露光を行うこと、及び
[2]前記露光後の材料に80℃〜400℃での熱処理を行うこと。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−281989(P2008−281989A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37519(P2008−37519)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】