説明

液晶表示装置

【課題】 高精度なガンマ補正を効率良く実施する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 温度センサ10によって検知される周囲の温度に応じて薄膜トランジスタ79のゲート電圧を可変とする。これにより、薄膜トランジスタ79のドレイン電流が変化するため、ガンマカーブを調整することができるようになる。すなわち、ゲート電圧を制御するという簡便かつ安価な方法により、温度変動によるガンマカーブのずれをリニアに補正することができるようになり、意図するガンマカーブのガンマ値を想定される温度範囲で維持することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルを用いて画像を表示する液晶表示装置に係り、さらに詳細には、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置では、輝度と階調特性との関係が線形ではないことが知られている。このような特性は、「ガンマ特性」と呼ばれており、輝度と階調との関係を示す2次元曲線は、「ガンマカーブ」と呼ばれている。また、ガンマカーブの非線形性の度合いを示す指標は、ガンマ値と呼ばれており、このガンマ値が高ければ高いほど輝度と階調との間の非線形性は強くなる。
【0003】
カラーの液晶表示装置では、ガンマ特性がRGBの各色で異なっており(すなわちガンマ値が異なっており)、これを、そのままとすると、色再現性が低下する。そこで、各色のガンマ特性をそれぞれ補正して、正確な色再現性を得ることができる液晶表示装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の液晶表示装置では、液晶セルの前面や後面に設けられた位相差補償板やバックライトのRGBの各色光の輝度を調整する。これにより、RGBの各色のガンマカーブ(液晶の輝度階調特性を示す曲線)を、少なくとも2点で一致させることができるようになる。さらに、この液晶表示装置では、この2点以外でのRGBの各色光のガンマカーブのずれを補正するための補正テーブルが設けられている。そして、この液晶表示装置では、その補正テーブルを用いて、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクスのソース電圧を補正して、RGBの各色のガンマカーブを一致させることにより、正確な色再現性が実現されている。
【特許文献1】特開2005−114791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載の液晶表示装置のように、ある温度条件下でRGBの各色間でガンマカーブを一致させたとしても、液晶の応答速度には温度依存性が存在するため、周囲の温度が変動すればガンマカーブ自体が変化してしまう。そこで、液晶表示装置では、代表的な複数の異なる温度条件(例えば10℃刻み)で、上記補正テーブルを持つようにし、現在の温度条件に近い温度条件のテーブルを適宜選択し、選択されたテーブルを用いてソース電圧の補正が行われている。
【0005】
しかしながら、現在の温度条件に合致するテーブルがない場合には、近傍の温度条件でのテーブルのデータを用いた補間演算を行って、現在の温度でのソース電圧の補正値を求める必要があるため、補間演算による演算誤差が生じるおそれがある。この演算誤差をできるだけ小さくするためには、テーブルを設ける温度条件の刻みをより小さくして、さらに多数のテーブルを設ける必要があるが、それでは、テーブルを格納するために必要なメモリ容量が膨大となり、装置コストが増大してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、温度変化に伴うガンマ特性の変化に関らず、高精度なガンマ補正を効率良く行うことができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、各画素のトランジスタのゲートに印加される電圧を変化させれば、ガンマカーブのガンマ値が変化する(すなわちガンマカーブがずれる)という知見を得た。そこで、本発明においては上記の課題を解決するために、以下の手段を講じた。
【0008】
(1)2次元配列された複数の画素電極と前記各画素電極にドレインが接続された複数のトランジスタとが形成された基板と、前記各画素電極に対応する共通電極が形成された基板とに挟持された液晶層を有する液晶表示素子と、前記各トランジスタをオンするためにそのゲートに電圧を供給するとともに、前記液晶表示素子のガンマ特性に従って、所望の輝度に対応する電圧を、当該トランジスタのソースに供給することにより、前記液晶表示素子を駆動する駆動装置と、周囲の温度を検知する温度センサと、前記温度センサによって検知された温度に応じて前記各トランジスタのゲートに印加する電圧を制御する制御装置と、を備える液晶表示装置とした。
【0009】
(2)前記制御装置は、前記液晶表示素子のガンマ特性が一定に保たれるように、前記温度センサによって検知された温度に応じて前記各トランジスタのゲートに印加する電圧を制御することとした。
【0010】
(3)前記制御装置は、前記ゲートに印加される電圧対温度の対応テーブルを有し、前記温度センサによって検知された温度に応じて、前記テーブルを参照して、前記ゲートに印加する電圧を制御することとした。
【発明の効果】
【0011】
上記液晶表示装置によれば、温度センサによって検知される温度に応じて各画素のトランジスタのゲートに印加する電圧を制御する。この電圧を制御すれば、トランジスタのドレイン電流を調整して、ガンマ特性を調整することができるようになる。すなわち、本発明によれば、ゲート電圧を制御するという簡便かつ安価な方法で、温度変動によるガンマカーブのずれをリニアに補正することができるようになる。これにより、ガンマ補正を行うための補間演算を行わずに済むので、その演算誤差を考慮する必要がなくなるうえ、温度ごとに補正テーブルを持つ必要がなくなるため、メモリ容量の増大を防止して、装置コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置は、いわゆるTFTアクティブマトリクス方式の液晶表示装置である。図1には、本実施形態に係る液晶表示装置100の概略構成が示されている。図1に示されるように、本実施形態に係る液晶表示装置100は、バックライトBLと、液晶パネルLCDと、ゲートドライバGDと、ソースドライバSDと、温度センサ10と、バックライト駆動部12と、液晶コントローラ20とを備えている。
【0014】
バックライトBLは、液晶パネルLCDの背面(−Z側)に配置されている。図1では、図面の錯綜を避けるべく、バックライトBLと液晶パネルLCDとが離間して図示されているが、実際には、バックライトBLは、液晶パネルLCDと近接して設けられている。バックライトBLは、発光源と乱反射板と(いずれも不図示)を備えている。発光源は、赤色発光ダイオードと、緑色発光ダイオードと、青色発光ダイオードと(いずれも不図示)を有している。発光源から発せられる各色の光は、乱反射板に導入されて乱反射され、液晶パネルLCDの背面のほぼ全体を均一に照明する。なお、バックライトBLとしては、有機EL(Electro Luminessence)発光素子等を用いることも可能である。
【0015】
液晶パネルLCDでは、図1では、+Z側が表側(すなわち表示画面側)となっており、−Z側が裏側となっている。図2には、液晶パネルLCDの構造を示す断面図が示されている。図2に示されるように、液晶パネルLCDにおいては、下(−Z側)から順に、偏光板40と、ガラス等の透明の基板42と、液晶層46と、ガラス等の透明の基板50と、偏光板52とが積層されている。言い換えれば、液晶パネルLCDの液晶層46は、2枚の基板42、50に挟持されており、それらが、さらに偏光板40、52に挟持されている。
【0016】
液晶層46には、液晶材が規則的に配向された状態で充填されている。なお、液晶表示装置100が、反射型や反射透過折衷型の液晶ディスプレイである場合には、基板42、50の少なくとも一方は、透明でなくてもよい。
【0017】
基板42における液晶層側の表面(内表面)には、複数の画素電極44が形成されている。また、基板50における液晶層46側の内表面には、画素間で共通の共通電極48が形成されている。この画素電極44と共通電極48との間に印加される電圧の大きさによって、その画素における液晶層46の液晶材の配向状態が変化する。また、偏光板40、52は、通過する光の偏光方向をXY平面内の一方向に制限する。本実施形態では、液晶パネルLCDは、ノーマリーホワイトモードの液晶パネルとなっており、偏光板40、52は、互いにクロスニコルにセットされている。しかしながら、液晶パネルLCDはノーマリーブラックモードで構成されていてもよい。
【0018】
以上のような構造を有する液晶パネルLCDでは、その画素ごとに、画素電極44と共通電極48との間に印加される電圧を制御することにより、液晶層46の液晶材の配向状態を変化させ、バックライトBLから照射される光の液晶パネルLCDの透過率を画素ごとに変更できるようになっている。
【0019】
図3には、液晶パネルLCDを駆動するための回路図が示されている。図3に示されるように、液晶パネルLCDには、9個の薄膜トランジスタ79が、液晶パネルLCDの各画素にそれぞれ対応して3×3のマトリクス状に配設されている。なお、本実施形態では、説明を簡略化するために、液晶パネルLCDの画素数を3×3=9としているが、実際には、さらに多数の画素(例えば、1024×768)が形成されている。
【0020】
また、ゲートドライバGDから液晶パネルLCDに向かって、3本の信号線、すなわち走査電極G1〜G3がX軸方向に延設されている。各走査電極G1〜G3は、それぞれ対応する行の薄膜トランジスタ79のゲートと接続されている。ゲートドライバGDは、走査電極G1〜G3を介して、順番に、線順次走査を行うための電圧を各薄膜トランジスタ79のゲートに供給している。以下では、この電圧をゲート電圧と呼ぶ。ゲート電圧の大きさは、後述するように、周囲の温度によらず、ガンマカーブを常に一定に保つためにゲートドライバGDによって制御される。
【0021】
さらに、ソースドライバSDから液晶パネルLCDに向かって、3本の信号線、すなわち信号電極S1〜S3がY軸方向に延設されている。各信号電極S1〜S3は、それぞれ対応する列の薄膜トランジスタ79のソースと接続されている。ソースドライバSDは、信号電極S1〜S3を介して、各画素での所望の輝度に対応する階調に相当する電圧を供給している。以下では、この電圧をソース電圧と呼ぶ。ソース電圧の大きさは、後述するように、ガンマ補正のために、ソースドライバSDによって制御される。
【0022】
さらに、薄膜トランジスタ79のドレインには、画素電極44とコンデンサ77とが並列に接続されている。また、共通電極48の電位は、所定の電圧Vcomとなっている。これを以下では、コモン電圧と呼ぶ。
【0023】
ゲートドライバGDが、ある走査電極(例えばG1)に対してゲート電圧を印加すると、その走査電極にゲートが接続された薄膜トランジスタ79がオンする。それとほぼ同時に、ソースドライバSDが、信号電極S1〜S3を介して、ソース電圧を印加すると、オンしている薄膜トランジスタ79にドレイン電流が流れ、ソース電圧に対応する電荷がその薄膜トランジスタ79のドレインに接続されたコンデンサ77に溜まり、画素電極44と、共通電極48(電圧Vcom)との間に電位差が発生するようになる。この電位差によって各液晶層46中の液晶材の配向状態が制御され、液晶パネルLCDの各画素における透過率が変化する。
【0024】
図4(A)には、この電位差と液晶パネルLCDの透過率との関係、すなわち電圧−透過率特性を示すグラフが示されている。図4(A)においては、横軸は画素電極と共通電極との間の電圧(V)であり、縦軸は透過率(%)である。図4(A)に示されるように、この液晶パネルLCDは、ノーマリーホワイト型であるため、電圧が0の状態では、透過率は、ほぼ100%(白レベル)となっており、電圧が大きくなるについて、透過率が低下するようになっている。この電圧と透過率との関係は、厳密に言えば線形ではなく、非線形で曲線を描くようになる。この曲線を、以下ではV−Tカーブとも呼ぶ。V−Tカーブは、バックライトBLから射出されたR(赤),G(緑),B(青)の各色光で若干の違いが出る。すなわち、画素電極44と共通電極48との間に生じる電位差が同じであっても、各色の視認性違いなどから、透過率に違いが生じる。図4(A)に示されるグラフでは、同じ電圧では、青の透過率が最も高く、続いて、赤、緑の順に透過率が低くなっている。
【0025】
各色のV−Tカーブは、バックライトBLから射出される各色の強度を色ごとに変更すれば、ある程度調整することができる。本実施形態では、バックライトBLから射出される各色光の発光強度を色ごとに変え、各色のV−Tカーブを、例えば透過率100%の白レベル上の一点で一致させる。
【0026】
バックライト駆動部12は、液晶コントローラ20の制御の下、R駆動信号、B駆動信号、G駆動信号をバックライトBLに順次入力することにより、バックライトBLを、赤→緑→青→赤→緑→青・・・の順で繰り返し発光させる。図5(A)〜図5(C)には、フィールドシーケンシャル方式でのバックライトBLの動作を示すタイミングチャートが示されている。図5(A)には、1つの画像が表示される期間T(例えば1/60秒)が示されている。また、図5(B)に示されるように、この期間T内において、バックライトBLにより、赤→緑→青の発光が、(1/3)T(例えば1/180秒)ごとに行われている。
【0027】
また、図5(C)に示されるように、その際の発光強度は、青、赤、緑の順で強くなっている。この強度の差により、図4(B)に示されるように、各色のV−Tカーブが、例えば白レベル上の1点で一致するようになる。
【0028】
なお、各色のV−Tカーブの黒レベルについては、液晶パネルLCD内に組み込まれた不図示の位相差補償板等によって一致させることができる。この補正方法については、例えば、特開2003−345305号明細書に開示されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】
なお、本実施形態では、各色のV−Tカーブについて、白レベルの1点と、黒レベルの1点とを一致させるようにしたが、これに限らず、V−Tカーブ上の少なくとも1点が一致するようになっているだけでもよい。
【0030】
ところで、液晶表示装置100の輝度と階調との間には、非線形性、すなわちいわゆるガンマ特性がある。図6には、このガンマ特性の一例が示されている。図6のグラフでは、横軸は階調を示しており、縦軸は輝度(cd/m2)を示している。階調をXとし、輝度をYとすると、このガンマ特性による非線形の曲線カーブを、Y=Xγと表すことができ、これをガンマカーブと呼んでいる。この数式のγがガンマ値である。図6に示されるガンマカーブは、周囲の温度が25℃(常温)で、ゲート電圧を12Vとし、ソース電圧を3.5Vとし、コモン電圧Vcomを5Vとしたときのものであり、この場合、ガンマ値は2.2となっている。
【0031】
各色のV−Tカーブを2点で一致させたとしても、その他の点では、依然としてR,G,Bの色間でずれが残留しているため、ガンマカーブも、色ごとに異なっている(すなわち、ガンマ値が異なっている)。
【0032】
このようなずれを解消すべく、ソースドライバSDは、ガンマカーブを補正するための各色の補正テーブル(図8参照)を有している。この補正テーブルを用いて、ソース電圧を補正すれば、ガンマカーブは、どの色を発光する際にも実質的に一致するようになる。
【0033】
ところで、このガンマカーブは、周囲の温度によっても変化する。図7には、15℃、25℃、35℃におけるガンマカーブの一例が示されている。図7に示されるように、周囲の温度が高くなればなるほど、ガンマカーブのガンマ値が大きくなっている。
【0034】
以下、このような温度の変化に対応するための仕組みについて説明する。
【0035】
本実施形態では、25℃を基準の温度とし、ソースドライバSDには、15℃や、35℃でのガンマカーブに対応するテーブルを記憶することなく、25℃におけるガンマカーブのみを記憶しておく。そして、ソースドライバSDでは、常に、25℃のガンマカーブに従って、ガンマ補正を行うものとする。なお、25℃のガンマカーブのガンマ値は例えば、2.2となっている。
【0036】
図1に戻り、本実施形態に係る液晶表示装置100には、温度センサ10が設けられている。温度センサ10は、液晶表示装置100の周囲の温度を検知し、その検知された温度データを、ゲートドライバGDに出力している。
【0037】
ゲートドライバGDには、温度とゲート電圧との関係を示すテーブルが予め記憶されている。このテーブルを、以下では、温度補正テーブル(図8参照)と呼ぶ。温度補正テーブルは、ガンマカーブが一定に維持される温度とゲート電圧との関係を示すものであり、温度センサ10によって検知された温度データと、その温度のときにゲート電圧として設定されるべき電圧データとが対応付けされて、ゲートドライバGDのメモリに格納されている。このテーブルの温度データと電圧データとしては、実測等により予め実測されたものを用いることができる。ゲートドライバGDは、温度センサ10の出力を入力し、検知された温度に応じて、このテーブルを参照して、ゲート電圧を決定し、決定されたゲート電圧を、走査電極G1〜G3を介して薄膜トランジスタ79のゲートに印加する。これにより、ガンマ特性は、周囲の温度によらず、常に一定に保たれるようになり、ソースドライバSDは、25℃のガンマカーブを参照するだけで、ガンマ補正を行うことができるようになる。
【0038】
液晶コントローラ20は、液晶表示装置100全体を統括制御する。より具体的には、液晶コントローラ20は、バックライト駆動部12及びゲートドライバGDに対して、タイミング信号(例えば、周期がT又は(1/3)Tであるクロックパルス信号)を供給して、R、G、Bの各色の発光と、オンする薄膜トランジスタ79の切り替え(すなわち線順次走査)などを行うとともに、ソースドライバSDに画素信号を出力する。
【0039】
より具体的には、液晶表示装置100は、バックライト駆動部12を介してバックライトBLをR,G,B…の順に発光させると同時に、外部から入力された原画信号を、Rフィールドの画像信号と、Gフィールドの画像信号、Bフィールドの画像信号とに分割し、ゲートドライバGD及びソースドライバSDを介して、液晶パネルLCDの表示画面上に各フィールドの画像を、バックライトの発光色に対応させた状態で、順番に表示させる。
【0040】
図8には、液晶表示装置における動作の様子が模式的に示されている。図8に示されるように、ソースドライバSDのメモリには、25℃において各色のガンマカーブを一致させるためのテーブル(R補正テーブル71、G補正テーブル72、B補正テーブル73)が格納されている。これらの補正テーブル71、72、73は、周囲の温度条件を25℃としたときに、所定のゲート電圧(例えば12V)を印加したときのものである。ソースドライバSDは、各色の画像(Rフィールド、Gフィールド、Bフィールドの画像)を表示する際には、その色の補正テーブル(R補正テーブル、G補正テーブル、B補正テーブルのいずれか)を参照して、ガンマ補正を行う。これにより、各色のガンマカーブは、すべて、ガンマ値2.2のカーブとなる。
【0041】
一方、ゲートドライバGDは、各色の画像を表示する際には、温度補正テーブル75を参照して、ゲート電圧の調整を行う。この温度補正テーブル75は、ガンマカーブのテーブルが設けられている25℃とその温度でのゲート電圧VG(例えば12V)を基準に構成されている。この温度補正テーブル75では、温度が高くなればなるほど、ゲート電圧が小さくなるように設定されており、ゲート電圧が、このテーブルの関係に従う限り、ガンマカーブのガンマ値は2.2に保たれるようになる。なお、図8では、温度とゲート電圧との関係が線形であるかのように示されているが、これに限らず、温度とゲート電圧との関係は、非線形となっていてもよい。このテーブルのデータとしては、実測により得られたものを用いることができる。
【0042】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る液晶表示装置100によれば、温度センサ10によって検知される温度に応じて液晶パネルLCDの各画素の薄膜トランジスタ79のゲートに印加するゲート電圧を制御とする。このゲート電圧を制御すれば、薄膜トランジスタ79のドレイン電流の大きさが変わり、ガンマカーブのガンマ値を変化させることができるようになる。すなわち、本実施形態によれば、TFTアクティブマトリクスの薄膜トランジスタ79のゲート電圧を制御するという簡便かつ安価な方法で、温度変動によるガンマカーブのずれをリニアに補正することができるようになる。この結果、ガンマ補正を行うための補間演算を行わずにすむので、その演算誤差を考慮する必要がなくなる。また、温度ごとに補正テーブルを持つ必要がなくなるため、メモリ容量の増大を防止して、装置コストを低減することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ガンマ特性が一定に保たれるように、温度センサ10によって検知された温度に応じて各薄膜トランジスタ79のゲートに印加する電圧を制御することとしたので、周囲の温度によらず、ガンマ特性を常に一定に保ち、ガンマ補正を精度良く行うことができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、ソースドライバSDは、温度補正テーブル75を有している。そして、温度センサ10によって検知された温度に応じて、温度補正テーブル75を参照して、薄膜トランジスタ79のゲートに印加する電圧を制御する。このようにすれば、テーブルを参照するだけで、薄膜トランジスタ79のゲート電圧の補正を行うことができるようになるので、その補正が容易となる。
【0045】
なお、本実施形態では、ゲートドライバGDにおいて、温度に応じたゲート電圧の制御を行ったが、液晶コントローラ20でゲート電圧の調整を行うようにしてもよい。この場合には、温度補正テーブル75は、液晶コントローラ20に保持され、使用されるようにし、温度センサ10の検知結果は、液晶コントローラ20に入力されるようにする必要がある。
【0046】
なお、ソースドライバSDにおけるガンマ補正と、ゲートドライバGDにおけるゲート電圧の補正のみによって、各色のガンマカーブを一致させることができる場合には、バックライトBLにおける各色の発光強度の制御や、位相差補償板によるV−Tカーブの黒レベルの調整などを、必ずしも行う必要はない。
【0047】
なお、本実施形態では、ゲート電圧の大きさを制御したが、これには限らず、ゲート電圧の大きさを一定とし、ゲートをオンする時間の長さ、すなわちゲート電圧を印加する時間の長さを調整するようにしてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態に係る液晶表示装置100は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置であったが、本発明は、いわゆるマイクロカラーフィルタ方式の液晶表示装置にも適用することができる。また、カラーの液晶表示装置だけでなく、白黒の液晶表示装置のガンマ補正であっても、ガンマカーブには温度依存性があるため、本発明を適用することができる。
【0049】
なお、本発明は、薄膜トランジスタを用いるアクティブマトリクス方式の液晶ディスプレイであれば、透過型、反射型、半透過型等の直視型の液晶ディスプレイや、投射型の液晶ディスプレイにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の液晶表示装置を構成する液晶パネルの断面図である。
【図3】液晶パネルと各ドライバとの間の回路図である。
【図4】図4(A)、図4(B)は、図1の液晶表示装置の電圧−透過率特性グラフである。
【図5】フィールドシーケンシャル方式でのバックライトの動作を説明するための図である。
【図6】RGBの各ガンマ特性を示すグラフである。
【図7】温度とガンマ特性との関係を示すグラフである。
【図8】ドライバの詳細な構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0051】
10 温度センサ
12 バックライト駆動部
20 液晶コントローラ
40 偏光板
42 基板
44 画素電極
46 液晶層
48 共通電極
50 基板
52 偏光板
71 R補正テーブル
72 G補正テーブル
73 B補正テーブル
77 コンデンサ
79 薄膜トランジスタ
100 液晶表示装置
BL バックライト
GD ゲートドライバ
LCD 液晶パネル
SD ソースドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配列された複数の画素電極と前記各画素電極にドレインが接続された複数のトランジスタとが形成された基板と、前記各画素電極に対応する共通電極が形成された基板とに挟持された液晶層を有する液晶表示素子と、
前記各トランジスタをオンするためにそのゲートに電圧を供給するとともに、前記液晶表示素子のガンマ特性に従って、所望の輝度に対応する電圧を、当該トランジスタのソースに供給することにより、前記液晶表示素子を駆動する駆動装置と、
周囲の温度を検知する温度センサと、
前記温度センサによって検知された温度に応じて前記各トランジスタのゲートに印加する電圧を制御する制御装置と、を備える液晶表示装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記液晶表示素子のガンマ特性が一定に保たれるように、前記温度センサによって検知された温度に応じて前記各トランジスタのゲートに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記ゲートに印加される電圧対温度の対応テーブルを有し、
前記温度センサによって検知された温度に応じて、前記テーブルを参照して、前記ゲートに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−185932(P2008−185932A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21320(P2007−21320)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】