説明

液晶表示装置

【課題】1フレームを輝度の異なる2つのフィールドで形成して動画ぼやけを改善する表示方式において、階調による色度の変化を抑制する。
【解決手段】1フレームを輝度の大きな明フィールドと、画像の階調が190以上の場合に画像を表示する、輝度の小さな暗フィールドに分割することによって動画特性を改善する駆動方法においては、暗フィールドにおいて色度の変化が大きい。これを改善するために、暗フィールドにおいてのみ、青の階調特性を補正する。必要な階調においてのみ、また、色度に対して効果の大きい1色の階調特性を変化させるので、階調−輝度特性への影響を小さくおさえつつ色度特性を改善することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度階調によって色度が変化することを抑制した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は画素電極、薄膜トランジスタ(TFT)がマトリクス状に形成されたTFT基板と、カラーフィルタ等が形成されたカラーフィルタ基板との間に液晶層が挟持された液晶表示パネルから構成されている。各画素電極に供給される映像信号によって液晶分子を制御し、バックライト等からの光を制御することによって画像を形成する。そしてカラーフィルタ基板には各画素電極に対応したカラーフィルタを設置することによってカラー画像を形成する。
【0003】
輝度階調は液晶に印加する電圧を階調毎に設定することによって行う。各色毎の輝度は白色をどの程度の色温度に設定するか等によって決める。しかし、カラーフィルタの透過特性等によって、色毎に電圧と輝度の関係が異なってくる。そうすると、輝度によって色調が異なる現象を生ずる。このような、輝度によって色調が異なる現象を対策したものとして、「特許文献1」、「特許文献2」等が挙げられる。
【0004】
ところで、表示装置にはインパルス応答型とホールド応答型とがあるが、液晶表示装置はホールド応答型デスプレイに分類される。ホールド応答型デスプレイの特徴としては、静止画の場合はちらつきのない良好な表示品質を得ることができるが、動画の場合には移動する物体の周囲がぼやけて見える、いわゆる動画ぼやけが発生し、表示品質が低下するという問題がある。この動画ぼやけの発生要因は、物体の移動に伴い、視線を移動する際、輝度のホールドされた表示画像に対して移動前後の表示イメージを観測者が補間する、いわゆる網膜残像に起因するため、表示デスプレイの応答速度をどれだけ向上させても動画ぼやけは完全には解消しない。
【0005】
これを解決する手法として、黒フレームなどの挿入によって、いったん網膜残像をキャンセルすることにより、インパルス応答型デスプレイに近づける方法が有効である。このような黒フレームの挿入について開示したものとして「特許文献3」が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−248467号公報
【特許文献2】特開2004−212981号公報
【特許文献3】特開2003−280599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶表示装置における動画特性を改善する方法としての黒フレームの挿入は画面輝度を低下させるという問題点がある。黒フレームを挿入する手法を改善したものとして、1フレームを暗フィールドと明フィールドの、2つのフィールドで形成することによって輝度低下をおさえつつ、黒挿入をおこなう手法がある。
【0008】
すなわち、2つのフィールドメモリを用意し、2つのフィールドの画像データを入力信号の2倍の周波数で液晶デスプレイに書きこむことによって、2つのフィールドによって一つのフレーム画面を形成する方法である。
【0009】
この方法は明フィールドと暗フィールドの2つのフィールドによって1フレームを構成するので、階調と輝度の関係、あるいは、階調と色度の関係が通常の動作方法と大きく異なる。明フィールドと暗フィールドの2つのフィールドによって1フレームを構成する方式では、従来は、階調が高い範囲、すなわち、画面が明るい領域で色度の変化が生じていた。
【0010】
本発明の課題は、動画特性を改善するために、明フィールドと暗フィールドの2つのフィールドによって1フレームを構成する液晶表示装置の駆動において、階調による色度の変化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、1フレームを明フィールドと暗フィールドの2つのフィールドで形成することにより動画ぼやけを対策する駆動方式において、各フィールド毎に、あるいは、階調の領域毎に、そして、各色毎に階調と電圧の関係を調整することによって、色度の変化を防止する。また、補正に特に効果のある色の階調を調整することによって、階調と輝度の関係であるγ特性を大きく変化させることなく、色度の変化を防止することが出来る。具体的な手段は下記の通りである。
【0012】
(1)1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、前記第1のフィールドにおける階調と電圧の関係は赤、緑、青について同じであり、前記第2のフィールドは赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることを特徴とする液晶表示装置。
【0013】
(2)前記1色は青であることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0014】
(3)1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、前記第1のフィールドにおける階調と電圧の関係は赤、緑、青について同じであり、前記第2のフィールドは赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることによって、前記第2のフィールドの白色の色度値xおよび色度値yを小さくすることを特徴とする液晶表示装置。
【0015】
(4)前記1色は青であることを特徴とする(3)に記載の液晶表示装置。
【0016】
(5)1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、前記第1のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであり、前記第2のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することを特徴とする液晶表示装置。
【0017】
(6)前記1色は青であることを特徴とする(5)に記載の液晶表示装置。
【0018】
(7)1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、前記第1のフィールドを階調ゼロから階調T2と、T2を超える階調から階調T1に分割したとき、前記第1のフィールドにおける階調ゼロから階調T2までの階調と電圧の関係は、赤、緑、青について同じであり、前記第1のフィールドのT2を超える階調から階調T1までは、赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なり、前記第2のフィールドにおける、赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることを特徴とする液晶表示装置。
【0019】
(8)前記1色は青であることを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0020】
(9)1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、前記第1のフィールドを階調ゼロから階調T2と、T2を超える階調から階調T1に分割したとき、前記第1のフィールドにおける階調ゼロから階調T2までの階調と電圧の関係は、赤、緑、青について同じであり、前記第1のフィールドのT2を超える階調から階調T1までは、赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることによって、白色の色度値xおよび色度値yを大きくし、前記第2のフィールドは赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることによって、白色の色度値xおよび色度値yを小さくすることを特徴とする液晶表示装置。
【0021】
(10)前記1色は青であることを特徴とする(9)に記載の液晶表示装置。
【0022】
(11)1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、前記第1のフィールドを階調ゼロから階調T2と、T2を超える階調から階調T1に分割したとき、前記第1のフィールドにおける階調ゼロから階調T2までの、階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであり、前記第1のフィールドにおけるT2を超える階調から階調T1までの、階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照し、前記第2のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することを特徴とする液晶表示装置。
【0023】
(12)前記1色は青であることを特徴とする(11)に記載の液晶表示装置。
【0024】
(13)前記第1のフィールドにおけるT2を超える階調から階調T1までの、階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することによって、T2を超える階調から階調T1までの白色の色度値xおよび色度値yを大きくし、前記第2のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することによって、前記第2のフィールドにおける白色の色度値xおよび色度値yを小さくすることを特徴とする(11)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、1フレームを明フィールドと暗フィールドで形成する駆動方式において、色度の変化の激しい暗フィールドのみの色度を補正するので、明フィールドと暗フィールドの両方を補正する場合に比較して補正の規模を小さくすることができ、その分、製造コストを低下させることができる。
【0026】
また、暗フィールドのみを補正する場合も、色度の補正に効果的で、かつ、そのときの輝度の変化の小さい1色のみを補正することによって、色度の補正に伴う輝度変化を抑制することが出来る。そして、1色のみの補正なので、補正の規模をさらに小さくすることが出来る。
【0027】
本発明の他の面によれば、暗フィールドの色度の補正に加えて、明フィールドの特定の領域の階調に対して色度の補正を加えることで、より完全な色度の補正が可能になる。この場合、暗フィールドの補正の方向と、明フィールドの特定の領域の色度の補正とは、補正の方向が異なる。このように、本発明では、明フィールドを補正する場合も明フィールド全体を補正するのではなく、明フィールドの1部の領域のみを補正するので、補正の規模を小さくすることが出来る。
【0028】
この場合も、補正に特に効果のある色のみを補正することによって、補正の規模をさらに小さくすることが出来る。また、色度補正に伴う輝度の変化を抑制することが出来る。
【0029】
このように、本発明によれば、輝度の変化を抑制しつつ、色度の階調による変化を防止することが出来る。また、本発明によれば、色度の補正のための、階調補正は小さな規模で済むために液晶表示装置の製造コストの上昇を抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
実施例にしたがって、本発明の詳細な内容を開示する。
【実施例1】
【0031】
図1は液晶表示装置の構成を示す図である。本装置はR、G、B各色256階調で、計1677万色の表示に対応したものである。101はRGB各8ビットで計24ビットで構成される入力表示データ、102は入力信号群である。入力信号群102は、1フレーム期間(1画面を表示する期間)を規定する垂直同期信号Vsync、1水平期間(1ライン文を表示する期間)を規定する水平動機信号Hsync、表示データの有効期間を規定するディスプレイタイミング信号DISP、および、表示データと同期した基準クロック信号DCLKで構成されるものとする。
【0032】
103は駆動選択信号である。この駆動選択信号103に基づき、従来の駆動方式か動画ぼやけを改善した駆動方式かの選択をおこなう。入力表示データ101、入力信号群102、駆動選択信号103は外部システム(例えばTV本体やPV本体、携帯電話本体)から転送される。
【0033】
104はタイミング信号生成回路、105はメモリ制御信号群、106はテーブルイニシャライズ信号、107はデータ選択信号、108はデータドライバ制御信号群、109は走査ドライバ制御信号群である。データドライバ制御信号群108は表示データに基づく階調電圧の出力タイミングを規定する出力信号CL1とソース電圧の極性を決定する交流化信号M、表示データと同期したクロック信号PCLKで構成され、走査ドライバ制御信号群109は1ラインの走査期間を規定するシフト信号CL3、先頭ラインの走査開始を規定する垂直スタート信号FLMで構成されるものとする。
【0034】
110は少なくとも表示データの1フレーム分の容量を有するフレームメモリであり、メモリ信号群105に基づき表示データのリード、ライト処理をおこなう。111はメモリ制御信号群105に基づき、フレームメモリ110から読み出されたメモリリードデータ、112はテーブルイニシャライズ信号に基づき、内部に格納されたデータを出力するROM(Read Only Memory)、113はROMから出力されるテーブルデータ、114は第1フィールド変換テーブル、115は第2フィールド変換テーブル、116は第3フィールド変換テーブルである。
【0035】
各テーブルの値は電源投入時にテーブルデータ113に基づく設定がなされるとともに、読み出されたメモリリードデータ111は各々のテーブルに設定された値に基づき変換がなされる。明フィールド変換テーブル114は明フィールドのためのデータ変換回路の機能を有し、暗フィールド変換テーブル115は暗フィールドのためのデータ変換回路の機能を有する。
【0036】
116は明フィールド変換テーブル114で変換された明フィールド表示データ、117は暗フィールド変換テーブル115で変換された暗フィールド表示データである。118は表示データ選択回路であり、データ選択信号107に基づき、明フィールド表示データ116、若しくは暗フィールド表示データ117の何れかを選択し出力する。119は選択されたフィールド表示データである。
【0037】
120は階調電圧生成回路、121は階調電圧である。122はデータドライバであり、データドライバ122は、階調電圧121から正極性、負極性各々2(2の8乗)=256レベル、合計512レベルの電位を生成するとともに、各色8ビットのフィールド表示データ119と極性信号Mに対応した1レベルの電位を選択し、液晶表示パネル126へのデータ電圧として印加する。
【0038】
123はデータドライバ122にて生成されたデータ電圧である。124は走査ドライバ、125は走査ライン選択信号である。走査ドライバ124は走査ドライバ制御信号群109に基づき走査ライン選択信号125を生成し、液晶表示パネルの走査ラインへ出力する。
【0039】
126は液晶表示パネル、127は液晶表示パネル126の1画素の模式図である。画素127は2本の走査線128と2本のデータ信号線129によって囲まれた領域に形成される。液晶パネル126の1画素は、ソース電極、ゲート電極、ドレイン電極からなるTFT(Thin Film Transistor)と、液晶層、対向電極、から構成される。走査信号をゲート電極に印加することでTFTのスイッチング動作を行い、TFTが開状態ではデータ電圧がドレイン電極を介して液晶層の一方と接続したソース電極に書き込まれ、閉状態ではソース電極に書き込まれた電圧が保持される。ソース電極の電圧は実際の液晶層を駆動する画素電極である透明電極ITOの電圧と同じである。この画素電極の電圧をVpとし、対向電極電圧をVcomとする。液晶層は、画素電極電圧Vpと対向電極電圧Vcomの電位差に基づき偏光方向を変えるとともに、液晶層の上下に配置された偏光板を介することで、裏面に配置されたバックライトからの透過光量が変化し、階調表示を行う。
【0040】
図2に2つのフィールドの階調と輝度の関係を示す。図2では256階調のグレイスケールを表示するものとしている。図2において、縦軸は相対輝度、横軸は階調である。図2において、曲線Aは第1のフィールドの階調−輝度特性を示し、曲線Bは第2のフィールドの階調−輝度特性を示す。そして、曲線Cが表示すべき画像の階調−輝度特性である。
【0041】
第1のフィールドは階調が190以下の輝度の場合を受け持つ。輝度が階調190以下であれば、第2のフィールドからの出力はゼロでよい。すなわち、画像の輝度が階調190以下であれば、輝度低下を伴わずに黒挿入をすることが出来る。
【0042】
階調が190を超える場合、例えば、図2に示す階調が200の場合は、第2のフィールドからも画像データは出力されるが、輝度は第1フィールドに比して小さいため、動画ぼやけは軽減することができる。
【0043】
なお、本明細書においては、第1フィールドは画像の輝度に係わらず、常に画像表示するので、明フィールドと呼ぶ。第2フィールドは画像の階調が190を越えるときに初めて画像を表示するため、通常は暗いフィールドなので暗フィールドと呼ぶ。
【0044】
このように、1フレームを明フィールドと暗フィールドによって形成する方法(以後FBI(Flexible Black Data Insertion)と称する)は、輝度の低下を伴わずに黒挿入と同様な効果を得ることができるという点で優れた方法ではあるが、階調と色度の関係が明フィールドと暗フィールドとで大きく異なるという問題がある。
【0045】
図3および図4は、階調毎に白表示を行った場合の色度の変化をプロットしたものである。図3および図4は通常の駆動方法(図3および図4では60Hzで示す)とFBI駆動方法の両方について色度の変化を示している。また、図3および図4は、赤、緑、青とも階調と電圧の関係は同じ変換テーブルを使用している。
【0046】
図3は色度座標のうち、x座標の変化を階調毎に示したものである。図3において、横軸は階調、縦軸はx座標である。図3において、60Hz駆動は比較的広範囲においてフラットな特性を示しているのに対し、FBI駆動では、階調180付近から急激な変化が見られる。すなわち、FBI駆動では暗フィールドにおいて、色度の変化が大きい。
【0047】
図4は色度座標のうち、y座標の変化を階調毎に示したものである。図4において、横軸は階調、縦軸はy座標である。図4においては、60Hz駆動では、色度値yは若干凸の特性を示しているが、急激な変化は無く、比較的広範囲においてフラットな特性を示している。しかし、FBI駆動では、階調190付近から急激な変化が見られる。すなわち、色度値yも、FBI駆動では暗フィールドにおいて、色度の変化が大きい。いずれにせよ、FBI駆動においては、従来の60Hz駆動における色度の変化が異なる。
【0048】
図5はFBI駆動の場合の色度値xの測定値に対して、色度値が変化しない理想値を線Aで示したものである。図5においては、x値は階調190付近から理想値よりも上にずれ始めることがわかる。
【0049】
図6はFBI駆動の場合の色度値yの測定値に対して、色度値が変化しない理想値を線Bで示したものである。図6においては、y値は階調190付近から理想値よりも上にずれ始めることがわかる。
【0050】
図5および図6からわかるように、暗フィールドにおいて、x値、y値ともに、理想値よりも数値が大きくなっている。したがって、暗フィールドにおいてx値、y値とも値が小さくなるような補正を行えば、画像全体として色度の変化を小さくすることが出来る。
【0051】
色度を変化させる場合は、階調を変化させるが、これに伴って輝度も変化する。しかし、輝度の変化は極力小さく抑える必要がある。色度を変化させるには、各色毎に、階調と画素に加わる電圧の関係を変化させる、すなわち、補正をする必要がある。一方、各色の内、1色を変化させても白色の色度を変化させることが出来る。
【0052】
図7〜図9は、各色によって、色度を補正した場合、色度の補正量によって輝度がどの程度変化するかを赤、緑、青について評価したものである。図7〜図9におけるs1、s2、s3は色度の補正量を表す。
【0053】
図7は赤の階調を変化させることによって色度を一定にしようとした場合に輝度がどの程度変化するかを示したものである。図7において、横軸は入力階調であり、縦軸は輝度変化率である。s1、s3、s5は変化させる色度の量である。また、Refは色度を変化させても輝度の変化が無い場合である。
【0054】
図8は緑の階調を変化させることによって色度を一定にしようとした場合に輝度がどの程度変化するかを示したものである。図8において、横軸は入力階調であり、縦軸は輝度変化率である。s1、s3、s5、およびRefは図7と同様である。
【0055】
図9は青の階調を変化させることによって色度を一定にしようとした場合に輝度がどの程度変化するかを示したものである。図9において、横軸は入力階調であり、縦軸は輝度変化率である。s1、s3、s5、およびRefは図7と同様である。
【0056】
図7〜図9を比較すると、各階調において色度を特定量変化させた場合、青の場合に輝度の変化が最も小さいことがわかる。
【0057】
一方、図10〜図12は、色度を変化させるために、赤、緑、青の各階調を変化させた場合に、色度がどのように変化するかを示したものである。階調の変化とともに、色度が大きく変化する場合が、補正の効率が良いといえる。すなわち、少ない階調の補正で、色度を調節できることになる。
【0058】
図10は赤について、階調補正をした場合に、色度がどの程度変化するかを評価したものである。図10において、1step、2step、3stepは補正量の差を表す。図10(a)は、赤を階調補正した場合に、色度値xがどの程度変化するかを評価したものであり、図10(b)は赤を補正した場合に、色度値yがどの程度変化するかを評価したものである。図10(a)および図10(b)からわかるように、赤の補正は色度値xを効率良く変えることが出来る。
【0059】
図11は緑について、階調補正をした場合に、色度がどの程度変化するかを評価したものである。図11において、1step、2step、3stepは補正量の差を表す。図11(a)は、緑を階調補正した場合に、色度値xがどの程度変化するかを評価したものであり、図11(b)は緑を補正した場合に、色度値yがどの程度変化するかを評価したものである。図11(a)およおび図11(b)からわかるように、緑の補正は色度値yを効率良く変えることが出来る。
【0060】
図12は青について、階調補正をした場合に、色度がどの程度変化するかを評価したものである。図12において、1step、2step、3stepは補正量の差を表す。図12(a)は、青を階調補正した場合に、色度値xがどの程度変化するかを評価したものであり、図12(b)は青を補正した場合に、色度値yがどの程度変化するかを評価したものである。図12(a)および図12(b)からわかるように、青の補正は色度値x、色度値yのいずれについても効率良く変えることが出来る。
【0061】
図7から図12の評価をまとめたものが図13に示す表である。表からわかるように、赤の階調を補正する場合は、色度値xについてのみ効果があり、輝度の変化が大きい。また、緑の階調を変化させる場合は、色度値yについてのみ効果があり、輝度変化は非常に大きい。青の階調を変化させる場合は、色度値x、yいずれについても効果があり、輝度の変化が非常に小さい。この結果から、色度変化を小さくし、かつ、輝度変化を小さくするためには、青の階調テーブルを補正することが最も効率的である。
【0062】
このようにして、暗フィールドにおいて、青階調を変化させた場合の、色度の変化を評価したものが、図14および図15である。図14は色度値xの変化である。図14において、曲線Aは補正前の色度の変化であり、菱形のプロットPは補正後の色度の変化である。補正後の測定値をプロットした結果Pと曲線Aで示す補正前の値を比較すると、補正後の色度値xの変化が小さく、かつなめらかである。
【0063】
同様に、図15は色度値yの変化である。図15において、曲線Aは補正前の色度の変化であり、菱形のプロットPは補正後の色度の変化である。図15において、補正後の測定値をプロットした結果Pと曲線Aで示す補正前の値を比較すると、補正後の色度値yの変化が小さく、かつなめらかである。
【0064】
以上に述べた本実施例の結果をまとめると次のとおりである。すなわち、FBIにおいては、暗フィールドにおいて、色度の変化が大きい。図1に示すように、FBIでは明フィールド変換テーブル、暗フィールド変換テーブルをもっており、このテーブルを参照することによって階調と画素電極に印加される電圧が決められる。
【0065】
本実施例の結果によって、FBI駆動では、明フィールドにおいては、赤、緑、青について、同じ階調テーブルを使用し、暗フィールドにおいては、赤と緑について同じ階調テーブルを使用し、青のみ補正された階調フィールドを使用することが出来る。赤、緑、青について明フィールド、暗フィールド各々テーブルを持つと6個のテーブルが必要になる。これに比べて本発明では3個のテーブルで済むことになり、システムが大幅に単純化される。
【0066】
一方、暗フィールドにおいて、よりきめ細かく色度を補正するために、赤、緑、青の各階調を変化させる場合であっても、4個で済むことになり、依然、システムが単純化される効果を得ることが出来る。
【実施例2】
【0067】
実施例1によって、色度の変化は非常に改善される。一方、図5および図6を参照すると、従来例でのFBI駆動では、明フィールにおいても、150階調付近から190階調付近において、線Aおよび線Bで示す理想値よりも、色度が小さな値になっている。色度の変化をより目立たなくするためには、この範囲を理想値に近づけるのが望ましい。
【0068】
図16および図17は、色度値xおよびyを縦軸のスケールを変えて変化をより大きく表示したグラフである。図16および図17において、曲線Aが補正前の色度の変化である。また、図16および図17において、菱形のプロットPが後述する補正を行った後の色度の変化である。補正後の色度の変化が小さく、また、変化の仕方もなだらかである。
【0069】
図17からわかるように、階調150から階調190までにおいて、色度値yが下方に変化している。一方図16に示すように、色度値xは階調150から階調190においてもあまり大きくは変化していない。したがって、明フィールドにおける階調150から階調190までの範囲において、色度値yを上げるように階調を補正すれば良い。
【0070】
図18は階調の補正の1例である。図18において、横軸は階調である。縦軸は、補正前の階調に対して、いくつ前の階調を参照するかを示す。すなわち、縦軸が−1であれば、当初参照する階調よりも1つ下の階調を参照することになる。
【0071】
図18において、階調150から190までは、青は1階調下の値を参照し、緑は1階調上の値を参照している。また、暗フィールドにおいては、青は階調によって異なるが、2階調から6階調上の値を参照している。また、緑は1階調から6階調下の値を参照している。
【0072】
このようにして補正した結果の色度の変化が図16および図17のプロットPである。図16および図17に示すように、図18のような補正方法によって、色度の変化は大幅に緩和されている。
【0073】
図18の補正の仕方によれば、基本的には赤、緑、青とも同じ階調テーブルを使用し、色度の補正が必要な階調のみ、また、必要な色のみ、当初の階調とは別な階調の値を参照するようにすれば良い。したがって、本発明によれば、明フィールド、暗フィールドについて、赤、緑、青の各々についてテーブルを持つ場合に比して、システムの大幅な単純化が可能である。図18の補正は1例であって、本発明の階調補正は図18の方法に限る必要は無い。
【0074】
図19は本発明によって色度値を補正した後のγ特性を示すものである。図19において、横軸は階調であり、縦軸は輝度である。補正後のγ特性が白丸のプロットPである。線Aは補正前のγ特性であるが、γ特性は補正前と補正後で完全に一致している。したがって、本発明によれば、色度の変化を抑えるとともに、輝度の変化、すなわちγ特性の変化も防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】液晶表示装置の構成である。
【図2】FBI駆動の階調−輝度特性である。
【図3】階調と色度値xの関係である。
【図4】階調と色度値yの関係である。
【図5】FBI駆動における階調と色度値xの関係である。
【図6】FBI駆動における階調と色度値yの関係である。
【図7】赤によって白色色度を変化させた場合の輝度変化である。
【図8】緑によって白色色度を変化させた場合の輝度変化である。
【図9】青によって白色色度を変化させた場合の輝度変化である。
【図10】赤の階調を変化させた場合の色度の変化である。
【図11】緑の階調を変化させた場合の色度の変化である。
【図12】青の階調を変化させた場合の色度の変化である。
【図13】各色の階調変化と色度変化の効果の比較表である。
【図14】補正後の色度値xである。
【図15】補正後の色度値yである。
【図16】色度値xの補正前と補正後の比較である。
【図17】色度値yの補正前と補正後の比較である。
【図18】階調補正の例である。
【図19】色度補正前と色度補正後のγ特性である。
【符号の説明】
【0076】
101…入力表示データ、102…制御信号群、 103…駆動選択信号、 104…タイミング信号生成回路、 105…メモリ制御信号群、 106…テーブルイニシャライズ信号、 107…データ選択信号、 108…データドライバ制御信号群、 109…走査ドライバ制御信号群、 110…フレームメモリ、 111…メモリリードデータ、 112…ROM、 113…テーブルデータ、 14…明フィールド変換テーブル、 115…暗フィールド変換テーブル、 116…明フィールド表示データ、 117…暗フィールド表示データ、 118…表示データ選択回路、 119…フィールド表示データ、 120…階調電圧生成回路、121…階調電圧、 122…データドライバ、 123…データ電圧、 124…走査ドライバ、125…走査ライン選択信号、126…液晶表示パネル、 127…液晶表示パネルの1画素の模式図、 128…走査線、 129…データ信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、
前記第1のフィールドにおける階調と電圧の関係は赤、緑、青について同じであり、前記第2のフィールドは赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記1色は青であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、
前記第1のフィールドにおける階調と電圧の関係は赤、緑、青について同じであり、前記第2のフィールドは赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることによって、前記第2のフィールドの白色の色度値xおよび色度値yを小さくすることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記1色は青であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、
前記第1のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであり、前記第2のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記1色は青であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、
前記第1のフィールドを階調ゼロから階調T2と、T2を超える階調から階調T1に分割したとき、前記第1のフィールドにおける階調ゼロから階調T2までの階調と電圧の関係は、赤、緑、青について同じであり、前記第1のフィールドのT2を超える階調から階調T1までは、赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なり、
前記第2のフィールドにおける、赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記1色は青であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1を越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、
前記第1のフィールドを階調ゼロから階調T2と、T2を超える階調から階調T1に分割したとき、前記第1のフィールドにおける階調ゼロから階調T2までの階調と電圧の関係は、赤、緑、青について同じであり、前記第1のフィールドのT2を超える階調から階調T1までは、赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることによって、白色の色度値xおよび色度値yを大きくし、
前記第2のフィールドは赤、緑、または青のいずれか1色の階調と電圧の関係は、他の2色の階調と電圧の関係とは異なることによって、白色の色度値xおよび色度値yを小さくすることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
前記1色は青であることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
1フレームを2つのフィールドに分割し、第1のフィールドはゼロ階調から階調T1の間の階調を表示し、第2のフィールドは階調T1越える階調を表示する駆動を行い、赤、緑、青のカラー表示が可能な液晶表示装置であって、
前記第1のフィールドを階調ゼロから階調T2と、T2を超える階調から階調T1に分割したとき、
前記第1のフィールドにおける階調ゼロから階調T2までの、階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであり、前記第1のフィールドにおけるT2を超える階調から階調T1までの、階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照し、
前記第2のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
前記1色は青であることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記第1のフィールドにおけるT2を超える階調から階調T1までの、階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することによって、T2を超える階調から階調T1までの白色の色度値xおよび色度値yを大きくし、
前記第2のフィールドにおける階調と輝度を表すテーブルは赤、緑、青について同じであるが、赤、緑、または青のうちの1色は同じ階調に対して、他の2色とは異なる値を参照することによって、前記第2のフィールドにおける白色の色度値xおよび色度値yを小さくすることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−93055(P2009−93055A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265387(P2007−265387)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】