説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示パネルのバックライト部の輝度がフィードバック制御される液晶表示装置において、ユーザが蛍光ランプの交換等のメンテナンスを余裕をもって行えるようにする。
【解決手段】制御部は、初期点灯時のバックライト部の輝度(初期検出輝度)を記憶し(S1)、通常稼働時に、初期検出輝度と輝度センサからの検出値との差(輝度差)を算出し、算出した輝度差に基づいてバックライト部の輝度を初期点灯時の輝度と同等になるように制御する(S2)。制御部は、輝度差が40%に到達したと判定したときに(S3でYES)、液晶表示パネルにバックライト部の劣化の程度を示すメッセージ文「明るさの補正幅が40%になりました」を表示し(S4)、輝度差が50%に到達したと判定したときに(S5でYES)、蛍光ランプの交換が必要である旨のメッセージ文「明るさの補正幅が50%になりましたのでランプを交換してください」を表示する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の液晶表示パネルは、液晶表示パネル自体では発光機能を有さないために、通常、背面側に照明用のバックライトを備えているが、バックライトの光源である蛍光ランプは、経年劣化により輝度が低下する。
【0003】
そこで、蛍光ランプの輝度が経年劣化により低下したときに、蛍光ランプに供給する電気量を増加すること(PWM制御におけるオンデューティの割合を上げること)によって、蛍光ランプの輝度を目標輝度に近づける液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他に、液晶プロジェクタ装置の光源ランプの輝度が経年劣化により低下したときに、光源ランプに供給する電流を増加することによって、光源ランプの輝度を一定に維持するものが知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−305195号公報
【特許文献2】特開2000−28988号公報
【特許文献3】特開平9−200662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のように、バックライトの輝度が、蛍光ランプの寿命の末期に近づくまで一定に保たれる場合には、ユーザが液晶表示画面の見た目の明るさに基づいて感覚的に蛍光ランプの交換時期を判断することが難しくなるという別の問題が生じる。そこで、特許文献1に記載の液晶表示装置では、使用時間が1万時間を超えた以降において、蛍光ランプの制御用PWM値が、使用開始時の制御用PWM値の2倍以上になったと判断される時点において、液晶表示画面に蛍光ランプの交換を促す映像を表示するように構成されている。
【0006】
上記特許文献1に記載の液晶表示装置では、液晶表示画面に蛍光ランプの交換を促す映像が表示されることによって、ユーザは確実に蛍光ランプの寿命が末期に到達したことを知ることができるが、ユーザ側の観点からすれば、なお次のような不便な点がある。
【0007】
すなわち、液晶表示画面の明るさは、常時一定に維持されているので、ユーザは普段メンテナンスの必要性を感じることがなく、突然に表示される蛍光ランプの交換を促す映像によって、ユーザは唐突にランプ交換のための行動を要請されることになり、例えば、サービスセンタや製造メーカへ修理の手配をするといった対処行動を忙しい日常の中で急に行わなければならないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、液晶表示パネルのバックライト部が、該バックライト部の輝度センサからの検出値に基づいてフィードバック制御される液晶表示装置において、ユーザがバックライト部の劣化の程度を適時に知ることができて、バックライト部のランプの交換等のメンテナンスに余裕をもって対処できる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルを照明するバックライト部と、前記バックライト部の輝度を制御する制御部と、前記バックライト部の輝度を検出し、検出した輝度値(以下、検出輝度という)を前記制御部へ出力する輝度センサと、を備える液晶表示装置において、前記制御部は、前記バックライト部の組立て調整後の最初の点灯時に前記輝度センサから出力される検出輝度(以下、初期検出輝度という)を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された初期検出輝度と通常稼働時の検出輝度との差(以下、輝度差という)を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された輝度差に基づいて前記バックライト部の輝度の制御量を調整し、通常稼働時のバックライト部の輝度が前記初期検出輝度と同等になるようにする調整手段と、前記算出手段によって算出された輝度差が所定の基準値に到達したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記輝度差が所定の基準値に到達したと判定された場合に、前記液晶表示パネルに、前記バックライト部の劣化の程度を表示するメッセージ表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の液晶表示装置において、前記メッセージ表示手段は、前記算出手段によって算出された輝度差を、前記バックライト部の劣化の程度を示すメッセージ文として表示することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1、又は2の液晶表示装置において、前記判定手段は、前記所定の基準値を複数有することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3の液晶表示装置において、前記メッセージ表示手段は、前記判定手段によって、前記輝度差が、複数の基準値のうち最も大きい基準値に到達したと判定される場合に、バックライト部のランプの交換が必要である旨をメッセージ文として表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、バックライト部の輝度が初期の輝度と同等に保持されるので、液晶表示画面の明るさがユーザにとって見易い状態が維持される上に、バックライト部の劣化の程度が適時に表示されるので、ユーザがバックライト部の劣化状態を把握でき、ランプの交換のための準備等を余裕をもって行うことができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、バックライト部の劣化の程度がメッセージ文として表示されるので、ユーザがバックライト部の劣化状態を容易に把握できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、ユーザがバックライト部の劣化の程度を段階的に把握することができるので、さらに余裕をもってランプの交換のための準備等に対処することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、ユーザがランプの交換時期を的確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置について、図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の液晶表示装置1は、液晶テレビジョン受像機として構成され、図1に示されるように、液晶表示パネル2と、液晶表示パネル2を背面から照明するバックライト部3と、バックライト部3のドライバ4に対して制御信号aを出力してバックライト部3の輝度を制御する制御部5(記憶手段、算出手段、調整手段、判定手段、メッセージ表示手段)と、バックライト部3の背面に設けられバックライト部3の輝度を検出する輝度センサ6と、を備える。
【0018】
輝度センサ6はフォトダイオードから構成され、アノード側に電源回路7が接続され、カソード側がA/D変換器8を介して制御部5に接続されており、バックライト部3の輝度に応じて変動するカソード側の電流値がバックライト部3の輝度(検出輝度)として制御部5に入力される。制御部5は、マイクロプロセッサから構成されている。
【0019】
液晶表示パネル2にはデータドライバ11、及びゲートドライバ12が接続され、信号処理部13から出力される映像信号がテレビジョン方式で液晶表示パネル2に画像として表示される。信号処理部13には、通常、受信回路(不図示)からの映像信号が入力されるが、後に説明するタイミングでキャラクタ発生部16からのキャラクタ信号が入力される。
【0020】
バックライト部3は、U字状の蛍光ランプ14と、蛍光ランプ14の点灯用器具15とを備え、ドライバ4から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号bによって蛍光ランプ14の輝度が調光制御される。具体的には、蛍光ランプ14の輝度(光出力)が、ドライバ4が出力するPWM信号bのオンデューティ(デューティ比)に比例する場合には、例えば、ドライバ4からオンデューティ100%のPWM信号bが出力されるときに、蛍光ランプ14は光出力100%で動作し、ドライバ4からオンデューティX%のPWM信号bが出力されるときに、蛍光ランプ14は光出力X%で動作する。
【0021】
ここで、蛍光ランプ14の経年劣化について、図2を参照して説明する。図2の縦軸は蛍光ランプ14の輝度(光出力)、横軸は時間であり、一定のオンデューティのPWM信号bによって駆動される蛍光ランプ14は、時間経過に従って輝度(光出力)が徐々に低下し、平均的には約5万時間経過後に低下の速度が急激に増加する。いま、使用開始時(t0)に蛍光ランプ14にオンデューティX%のPWM信号bが入力され、このときの輝度を100%であるとすると、約5万時間経過時(t1)には、輝度が80%に低下し、比較的短時間後に50%に低下する(t2)。
【0022】
上記のように、一定のオンデューティのPWM信号bが入力されている限りは、蛍光ランプ14の輝度は、図2に示される経過を辿って低下するが、この低下を補うように、入力するPWM信号bのオンデューティを徐々に増加することによって、蛍光ランプ14の輝度をほぼ一定(100%)に維持することができる。例えば、使用開始時(t0)のPWM信号bがX%のオンデューティである場合に、PWM信号bを(X+δx(t1))%のオンデューティにすることによってt1時点における輝度を使用開始時(t0)の輝度と同等にすることができる。
【0023】
一方、上記のような制御を行うためには、時間経過後の輝度の低下を補うためのPWM信号bのオンデューティの増加しうる幅(δx(t))が必要であり、そのためには使用開始時(t0)におけるPWM信号bのオンデューティを100%よりも相当に低い値にしなければならない。このことから、PWM信号bのオンデューティを増加させることによって蛍光ランプ14の輝度の低下を補うことができる範囲には限界があり、一般的には輝度が50%程度に低下した時点でPWM信号bのオンデューティを増加させることによる補正の限界がある。
【0024】
次に、バックライト部3が経年劣化するときの制御部5による輝度補正処理手順について、図3のフローチャートを参照して説明する。制御部5は、まず、本液晶表示装置1の組立て調整後の、バックライト部3の最初の点灯時(図2におけるt0時点に相当)に、輝度センサ6からの出力値(初期検出輝度)を制御部5内のメモリ5aに保存する(S1)。このt0時点における、ドライバ4がバックライト部3に対して出力するPWM信号bのオンデューティをX%とする。
【0025】
次に、制御部5は、本液晶表示装置1がユーザによって操作されて通常稼働を開始するときに、輝度センサ6が出力する値(検出輝度)と、メモリ5aに保存された初期検出輝度とを比較して両者の差(輝度差)を算出し、算出した輝度差に基づいてドライバ4へ制御信号aを出力し、ドライバ4から所定のオンデューティ((X+δx(t))%)のPWM信号bを出力させて、バックライト部3の輝度が最初の点灯時の輝度と同等になるようにフィードバック制御する(S2)。例えば、図2におけるt1の時点では輝度差が20%であるので、制御部5は、ドライバ4がオンデューティ(X+20)%のPWM信号bを出力するように制御信号aを出力する。
【0026】
なお、上記の例は、蛍光ランプ14の輝度が、ドライバ4が出力するPWM信号bのオンデューティにリニアに比例する場合についての説明であるので、Y%の輝度差に対してドライバ4が出力するPWM信号bのオンデューティをY%増加させたが、蛍光ランプ14の輝度が、ドライバ4が出力するPWM信号bのオンデューティにリニアに比例せず、他の関連性(例えば、指数関数)に基づいて変化する場合には、当該関連性に基づいてPWM信号bのオンデューティを変化させる。
【0027】
次に、制御部5は、S2において算出した輝度差が40%(基準値)に到達したか否かを判定し(S3)、到達している場合には(S3でYES)、キャラクタ発生部16へ所定のメッセージ文を表示させる信号を出力し、信号処理部13、データドライバ11、ゲートドライバ12を介して液晶表示パネル2にバックライト部3の劣化が進行している旨を表わすメッセージ文(例えば、「明るさの補正幅が40%になりました」)を表示する(S4)。なお、バックライト部3の輝度は、実際にはフィードバック制御によって最初の点灯時の輝度と同等になるように調整されているので、ユーザに対する表現としては、「輝度差が40%になりました」よりも「補正幅が40%になりました」といった表現とする。
【0028】
ここで、ユーザは、液晶表示パネル2に表示されたメッセージ文を見ることによって、バックライト部3の劣化が進行し、蛍光ランプ14の交換時期が近づいていることを明確に認識する。なお、S4において制御部5が表示するメッセージは、メッセージ文以外の形式のものであってもよい。例えば、バックライト部3の初期時の輝度に対して40%の輝度差が生じたことを示すグラフG(図4参照)であってもよい。
【0029】
さらに、制御部5は、S2において算出した輝度差が50%(基準値)に到達したか否かを判定し(S5)、到達している場合には(S5でYES)、キャラクタ発生部16へ所定のメッセージ文を表示させる信号を出力し、液晶表示パネル2にバックライト部3の劣化が補正できる限界に到達し、蛍光ランプ14の交換が必要である旨を表わすメッセージ文(例えば、「明るさの補正幅が50%になりましたのでランプを交換してください」)を表示する(S6)。
【0030】
ここで、ユーザは、蛍光ランプ14の交換が必要であることを認識するが、S4において蛍光ランプ14の交換時期が近づいていることを事前に認識させられているので、修理の手配等に余裕をもって対処できる。
【0031】
なお、本実施形態では、制御部5は、輝度差が40%に到達した時点で最初のメッセージ文を表示したが、輝度差が40%よりも小さい時点で最初のメッセージ文を表示するようにしてもよい。具体的には、輝度差が30%に到達した時点で最初のメッセージ文(例えば、「明るさの補正幅が30%になりました。蛍光ランプの劣化が始まりました。」)を表示し、輝度差が40%に到達した時点で2回目のメッセージ文を表示し、輝度差が50%に到達した時点で蛍光ランプ14の交換が必要である旨のメッセージ文を表示するようにしてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、制御部5は、図3のS2において算出した輝度差自体をバックライト部3の劣化の程度として表示したが、算出した輝度差を、図2に示される蛍光ランプ14の一般的な劣化履歴に当てはめたときの、交換時期までの残り時間に換算して表現するようにしてもよい。具体的には、輝度差が40%に到達したときのメッセージ文として、例えば「あと約100時間で蛍光ランプの交換が必要になります」等を表示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置のブロック図。
【図2】同液晶表示装置におけるバックライト部の輝度の経年劣化履歴を示す図。
【図3】同液晶表示装置における輝度補正処理手順を示すフローチャート。
【図4】同液晶表示装置においてバックライト部の劣化程度がグラフ形式で表示された液晶表示パネルの画面を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1 液晶表示装置
2 液晶表示パネル
3 バックライト部
5 制御部(記憶手段、算出手段、調整手段、判定手段、メッセージ表示手段)
6 輝度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを照明するバックライト部と、
前記バックライト部の輝度を制御する制御部と、
前記バックライト部の輝度を検出し、検出した輝度値(以下、検出輝度という)を前記制御部へ出力する輝度センサと、を備える液晶表示装置において、
前記制御部は、
前記バックライト部の組立て調整後の最初の点灯時に前記輝度センサから出力される検出輝度(以下、初期検出輝度という)を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された初期検出輝度と通常稼働時の検出輝度との差(以下、輝度差という)を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された輝度差に基づいて前記バックライト部の輝度の制御量を調整し、通常稼働時のバックライト部の輝度が前記初期検出輝度と同等になるようにする調整手段と、
前記算出手段によって算出された輝度差が所定の基準値に到達したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記輝度差が所定の基準値に到達したと判定された場合に、前記液晶表示パネルに、前記バックライト部の劣化の程度を表示するメッセージ表示手段と、を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記メッセージ表示手段は、前記算出手段によって算出された輝度差を、前記バックライト部の劣化の程度を示すメッセージ文として表示することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記所定の基準値を複数有することを特徴とする請求項1、又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記メッセージ表示手段は、前記判定手段によって、前記輝度差が、複数の基準値のうち最も大きい基準値に到達したと判定される場合に、バックライト部のランプの交換が必要である旨をメッセージ文として表示することを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−93098(P2009−93098A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266001(P2007−266001)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】