説明

液晶表示装置

【課題】消費電力を低減させるとともに表示品位の劣化を防止する液晶表示装置および液晶表示装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】第1基板101は、第1電極PEに補助容量信号Vcsを重畳する補助容量Cstと、表示画素PXが配列する行に沿って配置され、補助容量Cstに補助容量信号Vcsを供給する補助容量線Csと、を備え、補助容量線Csが延びる方向に並んだ隣合う表示画素PXの補助容量Cstは、互いに異なる補助容量線Csにより補助容量信号Vcsを供給され、駆動手段121、122は、補助容量線Cstに第1電圧Vcs(+)と第1電圧よりも小さい第2電圧Vcscと、第2電圧Vcscよりも小さい第3電圧Vcs(−)とを供給する補助容量線駆動手段を備え、第1電圧Vcs(+)と第2電圧Vcscとの差は第2電圧Vcscと第3電圧Vcs(−)との差よりも小さい液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関し、特に、アクティブマトリクス型の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶表示パネルと、液晶表示パネルを制御する制御回路とを有している。液晶表示パネルは、互いに対向する一対の基板と、この一対の基板間に挟持された液晶層と、マトリクス状に配置された複数の表示画素からなる表示部110とを有している。
【0003】
表示部110には、表示画素が配列する行に沿って延びる走査線と、表示画素が配列する列に沿って延びる信号線とが配置されている。それぞれの表示画素には、画素電極と、画素電極と信号線と間を導通させる画素スイッチが配置されている。
【0004】
一般に、液晶表示装置では交番電界駆動を実施しており、フリッカ対策のため走査ライン毎に液晶印加電圧の極性を反転させている。走査線毎の極性反転、または、信号線毎の極性反転のいずれか一方だけでは、走査線が延びる方向または信号線が延びる方向に沿ってフリッカが見えることがあり、高画質液晶表示装置では、走査線毎と信号線毎との両方で極性反転するドット反転駆動を採用することがある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
一方、信号電圧振幅を低減する方法として、容量結合駆動(CC駆動)が提案されている。容量結合駆動では、補助容量を通して、補助容量信号を画素電極に重畳することで所定の電圧に到達させる。容量結合駆動を採用すると、補助容量と画素容量とを略等しくする場合、信号電圧振幅を概略半減できる。ドット反転駆動で容量結合駆動を行う、容量結合ドット反転駆動(CCDI駆動)も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、液晶表示装置では、動画を表示させた場合の表示ボケを防止するために、黒表示に対応する信号を供給する駆動方法(黒挿入駆動方法)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−280036号公報
【特許文献2】特開2005−49849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
信号電圧振幅を小さくするためにCCDI駆動を採用し、さらに黒挿入駆動を行う場合、各走査線に対し、1垂直期間内で黒挿入駆動と映像信号との書き込みのために2回の走査をする必要があるが、走査期間終了後に画素電極に重畳する補助容量信号は、画素電極に書込んだ信号と同一極性側に電位が変化する必要がある。画素電極に書込んだ信号に対して補助容量信号が逆極性に変化する場合には、1垂直期間毎の交番電界駆動が出来なくなる。
【0009】
また、容量結合駆動を行う場合、補助容量信号の重畳により、画素電極電位がスイッチング素子のオフ電圧を超える場合があり、スイッチング素子からの電流リーク(オフリーク)により、液晶印加電圧が低下して表示画像の品位が低下することがあった。
【0010】
また、黒挿入駆動を行う場合、補助容量信号の重畳電圧と映像信号時の補助容量信号の重畳電圧とを異なる値にすることは可能であるが、黒表示に対応する信号を書込む際の液晶印加電圧中心と、映像信号を書込む際の液晶印加電圧中心とがずれた場合、液晶層に直流(DC)成分が印加されることになり、表示パターン残り(焼き付き)や表示ムラなどの発生に繋がる場合があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであって、消費電力を低減させるとともに表示品位の劣化を防止する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置は、第1基板と、前記第1基板と対向するように配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、マトリクス状に配置された複数の表示画素からなる表示部と、前記複数の表示画素を駆動する駆動手段と、を備え、前記第1基板は、前記複数の表示画素のそれぞれに配置された第1電極と、前記第1電極に補助容量信号を重畳する補助容量と、前記表示画素が配列する行に沿って配置され、前記補助容量に前記補助容量信号を供給する補助容量線と、を備え、前記第2基板は、複数の前記第1電極と対向した第2電極を備え、前記補助容量線が延びる方向に並んだ隣合う表示画素の前記補助容量は、互いに異なる補助容量線により前記補助容量信号を供給され、前記駆動手段は、前記補助容量線に第1電圧と前記第1電圧よりも小さい第2電圧と、前記第2電圧よりも小さい第3電圧とを供給する補助容量線駆動手段を備え、前記第1電圧と前記第2電圧との差は前記第2電圧と前記第3電圧との差よりも小さい液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、消費電力を低減させるとともに表示品位の劣化を防止する液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の一構成例を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す液晶表示装置の表示部の一構成例を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の駆動方法の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】図3に示す駆動方法の映像信号書き込み期間の動作の一例を説明するための図である。
【図5】比較例に係る液晶表示装置の映像信号書き込み期間の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置および液晶表示装置の駆動方法について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置は、互いに対向するように配置された一対の基板、すなわちアレイ基板101と対向基板102と、アレイ基板(第1基板)101と対向基板(第2基板)102との間に挟持された液晶層(図示せず)と、マトリクス状に配置された複数の表示画素PXからなる表示部110とを有している。アレイ基板101の表示部110の周囲の領域には、表示画素PXを駆動する駆動手段として、走査線駆動回路121と信号線駆動回路122とが配置されている。
【0016】
表示部110には、表示画素PXの配列した行に沿って延びる複数の走査線G(G(1)、G(2)、…)と、表示画素PXの配列した列に沿って延びる複数の信号線S(S(1)、S(2)、…)とが配置されている。
【0017】
走査線Gは、走査線駆動回路121に接続されている。信号線Sは信号線駆動回路122に接続されている。走査線駆動回路121と信号線駆動回路122とは、制御部(図示せず)によってその動作を制御される。制御部は、例えばフレキシブル基板等によってアレイ基板101に接続される。
【0018】
図2に示すように、アレイ基板101は、表示画素PXのそれぞれに配置された画素電極(第1電極)PEと、画素電極PEと信号線Sとの接続を切り替える画素スイッチSWとを有している。画素スイッチSWは、スイッチング素子として例えば薄膜トランジスタ(TFT)を有している。
【0019】
画素スイッチSWのゲート電極は、対応する走査線Gに接続されている。画素スイッチSWのソース−ドレインパスは信号線Sと画素電極PEとに接続されている。走査線Gに画素スイッチSWのオン電圧が印加されると、画素スイッチSWのソース−ドレイン間が導通し、信号線Sから画素電極PEに画像信号が供給される。
【0020】
画像信号は、映像信号書き込み走査により画素電極PEに供給される映像信号Vsと、非映像信号書き込み走査により画素電極PEに供給される非映像信号Vbとを含んでいる。なお、非映像信号Vbは、黒表示に対応する信号である。
【0021】
本実施形態に係る液晶表示装置では、制御部は、信号線駆動回路122を制御して、信号線Sに印加する映像信号Vsおよび非映像信号Vbの極性を1水平期間毎に反転させる極性反転制御部(図示せず)を有している。
【0022】
映像信号Vsを書込むための映像信号書き込み走査において、1水平期間毎に、順次、複数の表示画素PXに行単位で映像信号Vsが書込まれる。このとき、例えば、1水平期間に信号線S(m)に正極性の映像信号Vsが印加された場合、次の1水平期間では信号線S(m)に負極性の映像信号Vsが印加される。
【0023】
非映像信号Vbを書込むための非映像信号書き込み走査において、1水平期間毎に、順次、複数の表示画素PXの行単位で非映像信号Vbが書込まれる。このとき、例えば、1水平期間に信号線S(m)に正極性の非映像信号Vsが印加された場合、次の1水平期間では信号線S(m)に負極性の非映像信号Vbが印加される。
【0024】
本実施形態に係る液晶表示装置では、隣合う表示画素PXの画素スイッチSW、例えば、信号線Sが延びる方向に並んだ隣合う表示画素PXの画素スイッチSWは、ソース電極が互いに共通の信号線Sに接続されている。
【0025】
例えば、表示画素PXAに着目すると、表示画素PXAの画素スイッチSWは、信号線Sが延びる方向に並んだ隣合う表示画素PXBの画素スイッチSWと共通の信号線S(m)に接続されている。同様に、表示画素PXCの画素スイッチSWは、信号線Sが延びる方向に並んだ隣合う表示画素PXDの画素スイッチSWと共通の信号線S(m+1)に接続されている。
【0026】
表示画素PXAに配置された画素電極PEには、表示画素PXAの画素スイッチSWがオンされたタイミングで信号線S(m)から正極性の映像信号Vsが供給される。表示画素PXAの画素スイッチSWがオンされた1水平期間において表示画素PXCの画素スイッチがオンされ、表示画素PXCに配置された画素電極PEには信号線S(m+1)から負極性の映像信号Vsが供給される。
【0027】
次の1水平期間において表示画素PXBの画素スイッチSWがオンされ、表示画素PXBに配置された画素電極PEに信号線S(m)から負極性の映像信号Vsが供給される。表示画素PXBの画素スイッチSWがオンされた1水平期間において表示画素PXDの画素スイッチSWがオンされ、表示画素PXDに配置された画素電極PEに信号線S(m+1)から正極性の映像信号Vsが供給される。
【0028】
本実施形態に係る液晶表示装置では、1垂直期間に映像信号書き込みと非映像信号書き込みとを行っている。非映像信号書き込みの際も映像信号書き込みの場合と同様に、表示画素PXAに配置された画素電極PEには、表示画素PXAの画素スイッチSWがオンされたタイミングで信号線S(m)から正極性の非映像信号Vbが供給される。表示画素PXAの画素スイッチSWがオンされた1水平期間において表示画素PXCの画素スイッチがオンされ、表示画素PXCに配置された画素電極PEには信号線S(m+1)から負極性の非映像信号Vbが供給される。
【0029】
次の1水平期間において表示画素PXBの画素スイッチSWがオンされ、表示画素PXBに配置された画素電極PEに信号線S(m)から負極性の非映像信号Vbが供給される。表示画素PXBの画素スイッチSWがオンされた1水平期間において表示画素PXDの画素スイッチSWがオンされ、表示画素PXDに配置された画素電極PEに信号線S(m+1)から正極性の非映像信号Vbが供給される。
【0030】
次の垂直期間において、表示画素PXA、PXB、PXC、PXDの画素電極PEに供給される映像信号Vsおよび非映像信号Vbの極性は反転される。
【0031】
複数の表示画素PXのそれぞれは、画素電極PEと対向電極(図示せず)とに印加される電圧により生じる画素容量Clcと、この画素容量Clcに結合する補助容量Cstとを有している。表示部110には、走査線Gと略平行に延びるとともに、補助容量Cstに補助容量電圧Vcsを供給する補助容量線Csが配置されている。補助容量線Csは、補助容量線駆動回路(図示せず)に接続されている。補助容量線駆動回路は、制御部によって動作を制御される。
【0032】
本実施形態に係る液晶表示装置では、隣合う表示画素PXの補助容量Cstは、互いに異なる補助容量線Csに接続されている。例えば、表示画素PXAの補助容量Cstに注目すると、走査線Gが延びる方向に並んだ隣合う表示画素PXCの補助容量Cstとは異なる補助容量線Csに接続されている。すなわち、表示画素PXAの補助容量Cstは補助容量線Cs(n+1)に接続され、表示画素PXCの補助容量Cstは補助容量線Cs(n)に接続されている。
【0033】
上記のように、隣合う表示画素PXの補助容量Cstが互いに異なる補助容量線Csに接続されていることによって、隣合う表示画素PXの補助容量Cstに供給される補助容量電圧Vcsを互いに異なる極性とすることができる。
【0034】
次に、上記液晶表示装置の駆動方法について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置では、1垂直期間(1V)において、非映像信号Vbの書き込みと映像信号Vsの書き込みとを行うとともに、1水平期間(1H)毎に信号線Sに印加する映像信号Vsおよび非映像信号Vbの極性を反転させて、ドット反転駆動を行っている。1垂直期間(1V)で書込まれる非映像信号Vbと映像信号Vsとは同じ極性の信号である。
【0035】
すなわち、走査線駆動回路121は、走査線Gを順次駆動する。例えば、1水平期間(1H)において、走査線G(n)に画素スイッチSWのオン電圧Vghが印加されると、走査線G(n)に接続された画素スイッチSWのソース−ドレイン間が導通する。
【0036】
信号線Sに供給される映像信号Vsおよび非映像信号Vbは、映像センタ電圧Vscを中心に負極性から正極性まで変化する図3に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置では、隣合う信号線Sには互いに異なる極性の映像信号Vsあるいは非映像信号Vbが供給されている。
【0037】
例えば、信号線S(m)に印加されている映像信号Vs(m)は正極性であるタイミングでは、信号線S(m+1)に印加されている映像信号Vs(m+1)は負極性となっている。したがって、表示画素PXAの画素電極PEには正極性の映像信号Vs(m)が印加されるタイミングでは、表示画素PXCの画素電極PEには負極性の映像信号Vs(m+1)が印加される。
【0038】
補助容量線Csには、3種類の補助容量電圧値が印加される。図3および図4に示すように、補助容量線Csには、センタ電圧Vcscと、センタ電圧Vcscに対して正極側の補助容量電圧Vcs(+)と、センタ電圧Vcscに対して負極側の補助容量電圧Vcs(−)とが供給される。
【0039】
本実施形態に係る液晶表示装置では、1垂直期間(1V)内で、1つの表示画素PXについて、非映像信号書込み走査時の補助容量信号Vcsと、映像信号書込み走査時の補助容量信号Vcsとは同じ電圧である。
【0040】
例えば、1垂直期間(1V)において、まず走査線G(n)に画素スイッチSWのオン電圧Vghが印加されると、走査線G(n)に接続された画素スイッチSWのソース−ドレイン間が導通する。この画素スイッチSWを介して、対応する画素電極PEに非映像信号Vbが供給される。例えば表示画素PXAの画素電極PEには信号線S(m)から正極性の非映像信号Vbが供給され、表示画素PXCの画素電極PEには信号線S(m+1)から負極性の非映像信号Vbが供給される。
【0041】
このとき、表示画素PXAの補助容量Cstには、補助容量線Cs(n+1)から負極性の補助容量信号Vcs(−)が供給される。表示画素PXCの補助容量Cstには、補助容量線Cs(n)から正極性の補助容量信号Vcs(+)が供給される。
【0042】
同じ1垂直期間(1V)内において、再び走査線G(n)に画素スイッチSWのオン電圧Vghが印加されると、走査線G(n)に接続された画素スイッチSWのソース−ドレイン間が導通する。この画素スイッチSWを介して、対応する画素電極PEに映像信号Vsが供給される。例えば表示画素PXAの画素電極PEには信号線S(m)から正極性の映像信号Vsが供給され、表示画素PXCの画素電極PEには信号線S(m+1)から負極性の映像信号Vsが供給される。
【0043】
このとき、表示画素PXAの補助容量Cstには、補助容量線Cs(n+1)から負極性の補助容量信号Vcs(−)が供給される。表示画素PXCの補助容量Cstには、補助容量線Cs(n)から正極性の補助容量信号Vcs(+)が供給される。
【0044】
補助容量線Csには、隣接して配置された走査線Gにオン電圧Vghが供給される水平期間以外の期間は、センタ電圧Vcscが供給されている。例えば、補助容量線Cs(n)に隣接して配置された走査線G(n−1)と走査線G(n)とにオン電圧Vghが供給されている水平期間では、補助容量線Cs(n)は、正極性の補助容量信号Vcs(+)あるいは負極性の補助容量信号Vcs(−)のいずれかの電圧に保持される。
【0045】
補助容量線Cs(n)に隣接して配置された走査線G(n−1)と走査線G(n)とにオフ電圧Vglが供給されている期間では、補助容量線Cs(n)はセンタ電圧Vcscに保持される。
【0046】
すなわち、画素電極PEに負極性の映像信号Vsあるいは非映像信号Vbが供給される水平期間では、正極性の補助容量信号Vcs(+)が補助容量線Csに供給される。画素電極PEに画素電極PEに負極性の映像信号Vsあるいは非映像信号Vbが供給された後、補助容量線Csに供給される補助容量信号Vcsが正極性の補助容量信号Vcs(+)からセンタ電圧Vcscに変化する。補助容量信号Vcsが負極側に変更すると同時に、画素電位Vdに負極側の電位Δ1が重畳される。
【0047】
画素電極PEに正極性の映像信号Vsあるいは非映像信号Vbが供給される水平期間では、負極性の補助容量信号Vcs(−)が補助容量線Csに供給される。画素電極PEに画素電極PEに正極性の映像信号Vsあるいは非映像信号Vbが供給された後、補助容量線Csに供給される補助容量信号Vcsが負極性の補助容量信号Vcs(−)からセンタ電圧Vcscに変化する。補助容量信号Vcsが正極側に変更すると同時に、画素電位Vdに負極側の電位Δ2が重畳される。
【0048】
このように、補助容量信号を変化させると、1垂直期間(1V)内で同じ極性の信号を複数回書込む場合であっても、ドット反転駆動と組合わせることが可能である。
【0049】
ドット反転駆動を行うことにより、補助容量Cstを通して、映像信号Vsおよび非映像信号Vbと同じ極性の補助容量信号Vcsを画素電極PEに重畳し、画素電圧Vdを所定の電圧に到達させている。そのため、本実施形態に係る液晶表示装置では、映像信号Vsおよび非映像信号Vbの振幅を小さくすることができる。図4に示す場合では、信号線Sに供給する電圧の振幅Vsppは略5.8Vである。
【0050】
さらに、映像信号Vsおよび非映像信号Vbの振幅が小さくなることで、走査線Gに供給する電圧の振幅も小さくすることが可能であって、低電圧で液晶表示装置を駆動するこが可能となり、消費電力を低減することができる。図4に示す場合では、走査線Gに供給する電圧の振幅は略15Vである。
【0051】
なお、図4に示す映像信号の最小値(Min)は白表示に対応する電圧であって、映像信号の最大値(Max)は黒表示に対応する信号である。図4に示す場合では、映像センタ電圧Vscは3.0Vであって、最小値(Min)は0.1Vであって、最大値(Max)は5.9Vである。
【0052】
補助容量Cstを用いないで表示画素PXを駆動する場合には、映像信号Vsおよび非映像信号Vbの振幅が大きくなるが、本実施形態に係る液晶表示装置によれば、図4に示すように、映像信号Vsおよび非映像信号Vbの振幅を小さくすることができる。図4に示す場合では、映像信号Vsおよび非映像信号Vbの振幅は5.8Vである。
【0053】
上記のように、本実施形態に係る液晶表示装置では、映像信号Vsおよび非映像信号Vbの振幅を小さくできるため、画素電極PEの充電時間を短縮することが可能であり、高速駆動が可能となるとともに充電不足を改善することができる。
【0054】
また、対向電極電圧Vcomは一定値とし、対向電極電圧Vcomと映像信号Vsおよび非映像信号Vbの映像センタ電圧Vscとを同じ電圧に設定している。図4に示す場合では、対向電極電圧Vcomと映像センタ電圧Vscは略3.0Vである。
【0055】
さらに、補助容量電圧Vcs(+)とセンタ電圧Vcscとの差は、センタ電圧Vcscと補助容量電圧Vcs(−)との差よりも小さくなるように設定されている。すなわち、センタ電圧Vcscは、補助容量電圧Vcs(+)と補助容量電圧Vcs(−)との中央値よりも、ΔV3だけ正極側の電圧である。
【0056】
このとき、補助容量線Csに供給される3種類の補助容量信号Vcs(+)、Vcsc、Vcs(−)は、液晶層に印加される電圧Vlcの中心とソース電圧の映像センタ電圧Vscとが一致する電圧とする。液晶層に印加される電圧Vlcは、図4に示すように、画素電位Vdと対向電極電圧Vcomとの差である。
【0057】
具体的には、(Vcsc−(Vcs(+)+Vcs(−))/2)×Cst/Ctot=ΔVg×Cgd/Ctotの関係を持たせる。なお、Cgdは、画素スイッチSWがオフされているときのゲート電極とドレイン電極との間に生じる容量の大きさであって、容量Ctotは、液晶容量Clcと補助容量Cstと、画素スイッチSWのソース電極とドレイン電極との間に生じる容量Csdと、容量Cgdとの和である。ΔVgはオン電圧Vghとオフ電圧Vglとの差である。
【0058】
上記のように、本実施形態に係る液晶表示装置では、上記のように適切な補助容量信号Vcsを設定することで、オフリークを抑え、液晶層に直流(DC)成分が印加されることがなく、表示パターン残り(焼き付き)や表示ムラなどの発生を抑制することが出来る。
【0059】
例えば、図5に示すように、補助容量電圧Vcsのセンタ電圧Vcscを補助容量電圧Vcs(+)と補助容量電圧Vcs(−)との中央値(Vcsc=(Vcs(+)+Vcs(−))/2)に設定すると画素電位Vdの変化電位ΔV1が大きくなり、画素電位Vdと画素スイッチSWのオフ電圧Vglとの差(オフマージン)が小さくなり、走査信号Vgや補助容量信号Vcsの誤差等により画素電位Vdが画素スイッチSWのオフ電圧Vglを下回ることがある。
【0060】
これに対し、本実施形態に係る液晶表示装置では、補助容量電圧Vcs(+)とセンタ電圧Vcscとの差は、センタ電圧Vcscと補助容量電圧Vcs(−)との差よりも小さくなるように設定されているため、補助容量電圧Vcsが正極性側の補助容量電圧Vcs(+)からセンタ電圧Vcscに変化したときの画素電位Vdの変化電位ΔV1((Vcs(+)−Vcsc)×Cst/Ctot)は、図5に示す場合よりも小さくなる。
【0061】
したがって、補助容量Cstにより画素電極PEに電圧が重畳されても、画素スイッチSWからの電流リーク(オフリーク)の発生が抑制され、液晶印加電圧が低下を抑制することができる。
【0062】
さらに、補助容量電圧Vcsの値を、(Vcsc−(Vcs(+)+Vcs(−))/2)×Cst/Ctot=(Vgh−Vgl)×Cgd/Ctotの関係を満たすように設定することにより、液晶層LQに供給される電位である画素電位Vdの中央値(センタ電圧)と対向電圧Vcomとを一致させることができるため、液晶層に直流(DC)成分が印加されることがなく、表示パターン残り(焼き付き)や表示ムラなどの発生を抑制することが出来る。
【0063】
図4に示す場合では、画素電位Vdは最大値が8.8Vであって、最小値が−2.8Vであって、その中央値(センタ電圧)は3.0Vである。この中央値の値は、対向電圧Vcomと一致している。
【0064】
すなわち、本実施形態に係る液晶表示装置によれば、消費電力を低減させるとともに表示品位の劣化を防止する液晶表示装置を提供することができる。
【0065】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。本実施例では、CCDI駆動で説明しているが、CC駆動や、ソース信号を1V時間毎に反転する容量結合カラム反転駆動(CCCI駆動)においても、上記実施形態と同様に補助容量信号の値を設定することにより同様の効果が得られる。
【0066】
また、上記の実施形態において、説明に用いた信号の数値は一例であって、他の数値を適用した場合でも、上記実施形態と同様の関係となるように数値を設定することにより、本実施形態に係る液晶表示装置と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
110…表示部、PX…表示画素、PE…第1電極(画素電極)、SW…画素スイッチ、Cst…補助容量、Vcs…補助容量電圧、Cs…補助容量線、101…アレイ基板、102…対向基板、110…アレイ基板、121…走査線駆動回路、122…信号線駆動回路、Vcs(+)…第1電圧、Vcsc…第2電圧(センタ電圧)、Vcs(−)…第3電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向するように配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持された液晶層と、
マトリクス状に配置された複数の表示画素からなる表示部と、
前記複数の表示画素を駆動する駆動手段と、を備え、
前記第1基板は、前記複数の表示画素のそれぞれに配置された第1電極と、前記第1電極に補助容量信号を重畳する補助容量と、前記表示画素が配列する行に沿って配置され、前記補助容量に前記補助容量信号を供給する補助容量線と、を備え、
前記第2基板は、複数の前記第1電極と対向した第2電極を備え、
前記補助容量線が延びる方向において隣合う表示画素の前記補助容量は、互いに異なる補助容量線により前記補助容量信号を供給され、
前記駆動手段は、前記補助容量線に第1電圧と前記第1電圧よりも小さい第2電圧と、前記第2電圧よりも小さい第3電圧とを供給する補助容量線駆動手段を備え、前記第1電圧と前記第2電圧との差は前記第2電圧と前記第3電圧との差よりも小さい液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1基板は、前記複数の表示画素の配列する列に沿って配置された複数の信号線と、前記信号線と前記第1電極との接続を切り替える画素スイッチと、前記複数の表示画素の配列する行に沿って配置され前記画素スイッチを行毎にオン/オフする信号が供給される複数の走査線と、をさらに備え、
前記駆動手段は、前記複数の走査線を順次駆動して行毎に前記画素スイッチをオンする走査線駆動手段と、前記複数の信号線に映像信号あるいは非映像信号を供給する信号線駆動手段と、を備え、
前記走査線駆動手段は、1垂直期間において映像信号書き込み走査と、非映像信号書き込み走査とを行う手段を備え、
前記信号線駆動手段は、前記1垂直期間において前記複数の表示画素のそれぞれに映像信号と、前記映像信号と同じ極性の非映像信号とを供給する手段を備え、
前記補助容量線駆動手段は、前記映像信号書き込み走査、および、前記非映像信号書き込み走査の後に、前記映像信号および前記非映像信号と同じ極性側に前記補助容量信号を変化させる手段を備える請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2電極に供給される電圧と、前記映像信号のセンタ電圧と、前記液晶層に印加される電圧のセンタ電圧とは一致している請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記画素スイッチは、対応する走査線に電気的に接続されたゲート電極と、対応する信号線に電気的に接続されたソース電極と、対応する第1電極に接続されたドレイン電極とを備え、
前記第1電圧をV1、前記第2電圧をV2、前記第3電圧をV3、前記補助容量の大きさをCstとし、前記画素スイッチのオン電圧とオフ電圧との差をΔVgとし、前記第1電極と前記第2電極とに印加される電圧により生じる液晶容量と前記補助容量と前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に生じる容量と前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に生じる容量との和をCtotとしたとき、(V2−(V1+V3)/2)×Cst/Ctot=ΔVg×Cgd/Ctotの関係となる請求項3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記映像信号書き込み時の前記補助容量線に印加される補助容量信号と、前記非映像信号書き込み時の前記補助容量に補助容量信号とは、同じ電圧値である請求項1記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230842(P2010−230842A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76653(P2009−76653)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】