説明

液晶装置の製造方法、液晶装置の製造装置

【課題】 基板間に充填された余剰な液晶が基板圧着時に外側に流れ出してシール材が侵食されるのを防ぐ。
【解決手段】 まず、前面側マザー基板101aと背面側マザー基板101bを仮止めした仮止めパネル7′を複数作製する。対向するマザー基板101a,101bの間には滴下注入法によって充填された液晶が配置されている。次に、これらのパネル7′を、その表示領域部分に開口部を有する緩衝材603を介して積層し、積層されたこれらのパネル7′を一対の緩衝材603によって挟んで圧着装置600に設置する。そして、緩衝材603を介して前記複数のパネル7′を圧着装置600の一対の加圧面601a,602aの間で加圧し、各パネル7′のマザー基板101a,101bを一括して貼り合わせる。そして最後に、貼り合わされた一対のマザー基板101a,101bを切断して個々の液晶装置に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造方法、液晶装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置の製造方法においては、液晶の注入方法としてこれまで真空注入法が広く用いられてきたが、最近では、これに代わるものとして滴下注入法と呼ばれる方法が採用され始めてきている。この方法では、まず、液晶装置の対をなす基板の一方の周縁部に閉環状のシール材を形成し、このシール材に囲まれた領域内にシリンジ等によって所定量の液晶材料を塗布する。そして、減圧下でこれらの基板を貼り合わせ、紫外線照射等によってシール材を硬化する。
ところで、従来の液晶装置の製造方法においては、基板間のギャップ制御を行なうために、貼り合わせた2枚の基板を平坦な一対の加圧面の間で加圧し、最適なギャップがでるまで十分にシール材をつぶすことが行なわれている。例えば先の例では、減圧下で貼り合わせた2枚の基板を一旦仮止め材等で仮止めし、仮止め状態のパネル(仮止めパネル)を作製する。そして、このような仮止めパネルを複数作製した後、これらを加圧面上に積層し、対向する加圧面との間で一括して加圧することによって各パネルのギャップだしを行なう(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−202534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
滴下注入法においては、基板間のギャップは液晶の塗布量と塗布面積(即ち、シール枠内の面積)によって規定されるが、液晶の塗布量やシール材の塗布位置には若干のばらつきがあるため、これに対応して基板間のギャップにもばらつきが生じることがある。例えば液晶の塗布面積(シール材に囲まれた領域の面積)に比べて液晶の塗布量が相対的に多い場合には、余剰な液晶によって基板中央部が膨らんだ状態になり、塗布量が相対的に少ない場合には、逆に基板中央部が凹んだ状態になる。このようなばらつきの大きさはギャップ自体の大きさに比べて十分に小さいので、これ自体が表示に影響することはない。しかし、このような基板を前述の加圧面によって加圧すると、例えば液晶の塗布量が多い場合には、膨らんだパネル中央部が押されて液晶が流れ出し、外側のシール材を侵食することがあった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基板圧着時に余剰な液晶が外側に流れ出すことによってシール材が侵食されることを防止することのできる液晶装置の製造方法及び液晶装置の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶装置の製造方法であって、前記一対の基板の少なくとも一方の基板に枠状のシール材を形成する工程と、前記一対の基板の前記一方若しくは他方の基板に対して、前記シール材に囲まれた領域に対応する部分に前記液晶を配置する工程と、前記一対の基板を対向させた状態で仮止めする工程と、前記仮止めした一対の基板を複数作製し、各仮止めされた一対の基板の前記シール材が形成された領域に重なる緩衝材を介して、前記複数の仮止めされた一対の基板を積層する工程と、積層された前記複数の仮止めされた一対の基板を一対の前記緩衝材の間に挟み、該緩衝材を介して前記複数の仮止めされた一対の基板を一対の加圧面の間で加圧することによって、各仮止めされた一対の基板を一括して貼り合わせる工程とを備え、前記緩衝材が、各仮止めされた一対の基板のそれぞれの前記シール材に囲まれた領域に対向する部分に当該緩衝材が設けられていない領域を有することを特徴とする。本発明の液晶装置の製造方法においては、前記シール材の形成工程が、複数の液晶装置に対応するように前記一方の基板に前記シール材を複数形成する工程を備え、前記液晶の配置工程が、前記シール材に囲まれた領域に対応する部分にそれぞれ前記液晶を配置する工程を備え、前記貼り合わせ工程の後、貼り合わされた前記一対の基板を切断して個々の液晶装置に分離する工程を更に備えたものとすることができる。また、本発明の液晶装置の製造方法においては、前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の外形が矩形状であり、前記仮止めされた一対の基板の積層工程が、少なくとも一方の前記加圧面に設けられた位置決め部材によって、前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の少なくとも3つの角部を位置決めした状態で行なわれるものとすることができる。また、本発明の液晶装置の製造方法においては、前記枠状のシール材が閉環状に形成されているものとすることができる。
【0005】
この方法によれば、加圧面からの圧力を仮止めされた一対の基板のシール部分にのみ効率的に加えることができる。また、この方法ではパネルの中央部(即ち、シール材によって囲まれた表示領域部分)が加圧されないので、この部分に余剰な液晶の逃げ道をつくることができる。このため、液晶の量が多い場合であっても、液晶が外側に広がってシール材を侵食するようなことは起こらない。
【0006】
本発明の液晶装置の製造装置は、枠状に形成されたシール材を介して対向する一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶装置の製造装置であって、前記一対の基板を対向させた状態で仮止めした複数の仮止めされた一対の基板を挟み込む一対の加圧面と、前記複数の仮止めされた一対の基板と前記加圧面との間に介在させる複数の緩衝材とを備え、前記緩衝材が、前記複数の仮止めされた一対の基板のそれぞれの前記シール材が形成された領域に重なり、且つ前記シール材に囲まれた領域に対向する部分に緩衝材が設けられていない領域を有する形状を備えたことを特徴とする。この製造装置においては、前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の外形が矩形状であり、前記一対の加圧面のうち少なくとも一方の加圧面に、前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の少なくとも3つの角部を位置決めするための位置決め部材が設けられている構成を採用することができる。
【0007】
この構成によれば、加圧面からの圧力を仮止めされた一対の基板のシール部分にのみ効率的に加えることができる。また、パネルの中央部(即ち、シール材によって囲まれた表示領域部分)が加圧されないので、この部分に余剰な液晶の逃げ道をつくることができる。このため、液晶の量が多い場合であっても、液晶が外側に広がってシール材を侵食するようなことは起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0009】
[液晶装置]
図1は、本発明の一実施の形態に係る液晶装置の概略構成を示す平面図(図1(a))及び断面図(図1(b))である。なお、図1(b)において図示下側が観察側(前面側)であり、図1(a)は観察側とは反対側(背面側)から液晶装置を見た状態を示している。
【0010】
液晶装置12は、液晶Lを挟んで対向する前面側基板(第1の基板)1aと背面側基板(第2の基板)1bとを、これら2枚の基板の周縁部に閉環状に設けたシール材6aによって接着一体化したものである。観察側に配置された前面側基板1aには、透光性材料からなる基板本体2aの液晶層側の面に、透光性の前面側電極3aや配向膜4a等からなる液晶配向制御層が形成されており、観察側とは反対側に配置された背面側基板1bには、透光性材料からなる基板本体2bの液晶層側の面に、透光性の背面側電極3bや配向膜4b等からなる液晶配向制御層が形成されている。2枚の基板1a,1bのギャップは、スペーサ10aによって均一に保持されている。この液晶装置12は、パッシブマトリクス型又はアクティブマトリクス型のいずれであってもよく、液晶の配向形態も、TN型、VAN型、STN型、強誘電型、反強誘電型等の種々の公知の形態を採り得る。また、いずれかの基板にカラーフィルタを配置してカラー表示を行なわせることも可能である。また、背面側基板1bに反射膜を形成して反射型の液晶表示装置を構成してもよく、更に、この反射膜に開口部やスリット等の透光部を形成して、半透過反射型の液晶表示装置を構成することも可能である。本実施形態では、液晶装置12は単純マトリクス型の液晶装置とされており、前面側基板1a及び背面側基板1bの各電極3a,3bは、それぞれ図1(a)において図示左右方向及び図示上下方向に延在するストライプ状の電極として形成されている。図1(a)において、前面側電極3aと背面側電極3bとの各交差領域がそれぞれ1つのドットを構成し、これらドットの集まりによって表示領域が形成されている。
【0011】
前面側基板1aには、背面側基板1bの外周側に張り出した張り出し部1cが設けられている。この張り出し部1cは実装端子形成領域として使用するものである。前面側基板1aの前面側電極3aは張り出し部1cに向けて伸び、端子13の一部を構成している。また、背面側基板1bの背面側電極3bは、シール材6aに混入された導通材14を介して前面側基板1aの配線16に導電接続されており、配線16は張り出し部1cの端子13に接続されている。端子13は、張り出し部1cに実装される液晶駆動用IC(図示略)との間の電気的な接続をとるための配線パターンであり、本実施形態では、この端子13に液晶駆動用ICがFPC実装されるようになっている。なお、実装形態としてはCOG実装等の他の形態を採用することも可能である。
このように構成された液晶装置12の上下の面(即ち、液晶装置12の前面側基板1aの観察側の面、及び液晶装置12の背面側基板1bの観察側とは反対側の面)には、それぞれ前面側偏光板17a及び背面側偏光板17bが配置されている。
【0012】
[液晶装置の製造方法]
次に、本実施形態の液晶装置12の製造方法について説明する。
図2は、液晶装置12の製造工程を示すフローである。本実施形態では、大面積のマザー基板を用いて複数の液晶装置を一括して形成し、切断によって個々の液晶装置12に分離する方法を採用する。図2に示す液晶装置の製造方法においては、工程P1から工程P4に至る一連の工程によって図3に示す大判の前面側マザー基板(第1のマザー基板)101aが形成され、工程P11から工程P13に至る一連の工程によって図4に示す大判の背面側マザー基板(第2のマザー基板)101bが形成される。なお、前面側マザー基板101aは、前面側基板1aとなる複数の矩形の基板領域(図3においてスクライブ線G1,G4によって囲まれる領域)を含む大判の基板であり、背面側マザー基板101bは、背面側基板1bとなる複数の矩形の基板領域(図4においてスクライブ線G2,G3,G4によって囲まれる領域)を含む大判の基板である。
【0013】
まず、図3を用いて前面側マザー基板101aの形成工程(工程P1〜工程P4)について説明する。
ここでは、まず、工程P1において、ガラスやプラスチック等の透光性材料からなる大判の第1基材102aの表面に液晶装置複数分の前面側電極3a及び配線16等を形成する。前面側電極3a及び配線16は、第1基材102aの表面全体にITO等の透光性導電膜をスパッタし、これをエッチングすることによって、各基板領域に対して一括的に形成することができる。次に、工程P2において、第1基材102aの各基板領域に配向膜4aを形成し、さらに工程P3において、配向膜4aに対してラビング処理を実行する。配向膜4aは例えばポリイミドを塗布又は印刷することによって形成することができる。次に、工程P4において、各基板領域の周縁部にディスペンサ等を用いてエポキシ樹脂等からなるシール材6aを矩形枠状に形成する。本実施形態では、シール材6aに液晶注入口を形成しないので、シール材6aは切れ目のない閉環状の形状とされる。なお、シール材6aには、第2基材102bの背面側電極3bを第1基材102aの配線16に導通させるための導通材14(金属微粒子等)を練り込んでおく。
以上により、液晶装置複数分のパターンが形成された大判の前面側マザー基板101aが作製される。なお、前面側マザー基板101a上には、必要に応じて、前面側電極3a,配線16,配向膜4a以外の光学的要素が形成されることもあるが、図3ではそれら付加的な光学的要素は省略してある。
【0014】
次に、図4を用いて背面側マザー基板101bの形成工程(工程P11〜P13)について説明する。
ここでは、まず、工程P11において、ガラスやプラスチック等の透光性材料からなる大判の第2基材102bの表面に液晶装置複数分の背面側電極3bを形成する。背面側電極3bは、第2基材102bの表面全体にITO等の透光性導電膜をスパッタし、これをエッチングすることによって、各基板領域に対して一括的に形成することができる。なお、図4では、第2基材102bを通して背面側電極3bを見た状態を示しており、さらに、第2基材102bは鎖線で仮想的に示してある。次に、工程P12において、各基板領域内に配向膜4bを形成し、さらに工程P13において、配向膜4bに対してラビング処理を実行する。
以上により、液晶装置複数分のパターンが形成された大判の背面側マザー基板101bが作製される。なお、背面側マザー基板101b上には、必要に応じて、背面側電極3b及び配向膜4b以外の光学的要素が形成されることもあるが、図4ではそれら付加的な光学的要素は省略してある。
【0015】
前面側マザー基板101a及び背面側マザー基板101bが形成されたら、図2の工程P21において、前面側マザー基板101aの各基板領域のシール枠内の領域に液晶を塗布する。図5(a)は、液晶の塗布方法の一例を示す図である。本実施形態では、インクジェットヘッド500を用いて液晶Lを液滴状にして吐出し、これを基板表面に連続的に多数配置することによって所定の広さを持った液膜を形成する。本工程では、このような液膜を各基板領域に順次形成していく。なお、液晶Lはディスペンサ等の他の塗布手段を用いて塗布してもよい。
【0016】
液膜が形成されたら、工程P22において、両基板101a,101bをシール材6aによって貼り合わせ、図5(b)に示す液晶装置複数分の大判のパネル構造体7を形成する。図6は、この貼り合わせ工程の一例を示す模式図である。本実施形態では、図6に示すような圧着装置(液晶装置の製造装置)600を用いて複数のパネルの貼り合わせを一括して行なう。圧着装置600は、パネルを設置するための基台601とこれに対向する圧着ヘッド602とを備えている。圧着ヘッド602は基台601に対して接離する方向に駆動されるようになっており、この圧着ヘッド602の加圧面(第1の加圧面)602aと基台601の基板設置面(第2の加圧面)との間に2枚の基板を挟み込み、圧着ヘッド602を基台側に駆動することによって、これらの基板を圧着(貼り合わせ)できるようになっている。
【0017】
本実施形態では、貼り合わせ工程を行なうに当たって、まず、前記一対のマザー基板101a,101bを対向させた状態で仮止めした複数の仮止めパネル7′を作製する。そして、これらの仮止めパネル7′を紙や布等の柔軟な材料からなる矩形の緩衝材603を介して積層し、更に、積層されたこれらの仮止めパネル7′を一対の緩衝材603の間に挟んだ状態で基台601に設置する。具体的には、まず、基板設置面601aに設けられた第1の位置決め部材603b(図7参照)を使って、基板設置面601aに緩衝材603を配置する。この第1の位置決め部材603bは例えば位置決めピンからなり、緩衝材603の3つの角部に対応して3箇所に設けられている。次に、基板設置面601aに設けられた図示略の第2の位置決め部材を使って、この緩衝材603の上に仮止めパネル7′を配置する。この第2の位置決め部材は例えば位置決めピンからなり、仮止めパネル7′の3つの角部に対応して3箇所に設けられている。第2の位置決め部材は第1の位置決め部材603bと別に設けることもできるが、第1の位置決め部材603bを第2の位置決め部材として流用することもできる。そして、これらの手順を繰り返すことによって、基台601上に複数の仮止めパネル7′及び緩衝材603を順次積層していく。そして、最後に積層された仮止めパネル7′の上に前述の手順で緩衝材603を積層した後、圧着ヘッド602によってこれら複数の仮止めパネル7′を加圧する。そして、最適なギャップがでるまで十分にシール材6aをつぶしてから、これらの仮止めパネル7′をオーブンに入れ、高温雰囲気下でシール材6aを硬化させる。なお、仮止めパネルは20枚程度を同時に圧着するが、図6では便宜上4枚の仮止めパネル7′を同時に圧着する構成としている。
【0018】
ここで、本実施形態の緩衝材603には、図7に示すように、マザー基板の各基板領域に対応して複数の開口部(緩衝材の形成されない領域)603aが形成されている。この開口部603aは、各基板領域の表示領域Dの外縁部近傍、好ましくは、外縁部よりも僅かに外側であって且つ前記閉環状に形成されたシール材6aの内側に開口縁を備えており、仮止めパネル7′はこのような開口部603aを備えた緩衝材603によって表示領域D以外の領域が被覆された状態になっている。このような緩衝材603を使って圧着を行なった場合、緩衝材603が仮止めパネル7′の周縁部のみに配置されるので、加圧面からの圧力を仮止めパネル7′のシール部分にのみ効率的に加えることができる。また、パネルの中央部(即ち、シール材6aの内側の領域)が加圧されないので、工程P21において滴下した液晶の量が多い場合には、パネル中央部が膨らむことによってこのパネル中央部に液晶の逃げ道ができる。このため、従来のように逃げ道のなくなった液晶が外側に広がってシール材を侵食し、シール強度が低下する等の事態は生じない。
【0019】
次に、工程P23において、図3に示すスクライブ線G1,G4に沿って第1基材102a上にスクライブ用の溝を形成し、さらに図4に示すスクライブ線G2,G3,G4に沿って第2基材102b上にスクライブ用の溝を形成する。そして、これらの溝に従ってパネル構造体を切断し、個々のパネルに分離する。そして、工程P24において、各パネルの洗浄を行ない、工程P25において、各パネルの前面側基板1a及び背面側基板1bの外側表面に偏光板17a,17b(図1(b)参照)を貼着する。続いて、工程P26において、前面側基板1aの張出し部1cに形成した端子13に、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)等を介して液晶駆動用ICを実装する。
以上により、液晶装置12が完成する。
【0020】
以上説明したように、本実施形態では表示領域部分が開口した一対の緩衝材603によって仮止めパネル7′を挟んだ状態で圧着を行なっているため、加圧面601a,602aからの圧力を仮止めパネル7′のシール部分にのみ効率的に加えることができる。また、パネルの中央部(即ち、シール材6aの内側に領域)が加圧されないので、液晶の量が多い場合には、パネルの中央部に液晶の逃げ道ができ、液晶がシール材を侵食することはない。
【0021】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、前記実施形態ではシール材6aと液晶Lの双方を前面側マザー基板101a上に配置したが、シール材6aと液晶Lは背面側マザー基板101bに配置してもよいし、これらを別々のマザー基板に配置しても良い。また、シール材6aは前記実施形態のように一方のマザー基板にのみ形成してもよいし、両方のマザー基板に形成してもよい。さらに、前記実施形態ではシール材6aを閉環状に形成したが、一部を開口して開環状に形成してもよい。この場合、シール材の開口部は基板を圧着した後に封止材で封止されることになる。
【0022】
また、前記実施形態では、前記緩衝材の開口部603aを表示領域Dの外縁部近傍若しくはそれよりも外側に開口縁を有する形状としたが、開口部603aを図8のように表示領域Dの内側に設け、表示領域の外周部分が緩衝材603によって一部覆われるようにしてもよい。この場合、基板圧着時の液晶の逃げ道(各基板領域において緩衝材603の開口部603aに対向する位置)は少なくなるが、緩衝材603を仮止めパネル7′に積層する際の位置ずれの影響が少なくなるため、製造は容易になる。また、前記実施形態では前記シール材6aを閉環状に形成したため緩衝材の形成されない部分の形状を穴形状としたが、シール材6aを開環状に形成した場合には必ずしも緩衝材の非形成領域を穴形状とする必要はない。
また、前記実施形態では第1の位置決め部材及び第2の位置決め部材を位置決めピンとしたが、これらの位置決め部材はL字状の保持部材等であってもよい。また、第1の位置決め部材及び第2の位置決め部材の数を3つとしたが、この数は4つ以上であってもよい。ただし、位置決め部材を3つの角部に配置した場合には、緩衝材や仮止めパネルを位置決め部材のない角部の方向から挿入できるので、緩衝材等の積層工程が容易になる。例えば位置決め部材を4つの角部全てに配置した場合、緩衝材や仮止めパネルは一旦位置決め部材よりも上に持ち上げてから、これらの位置決め部材によって囲まれた領域内に設置することになるため、手間がかかる。
【0023】
また、前記実施形態では液晶装置12を大判のマザー基板を用いて多面取りで形成する方法を示したが、液晶装置12は枚葉の基板を用いて形成することもできる。この場合でも、前述したのと同様の方法で製造することができる。すなわち、この場合にはまず、液晶パネルを構成する一対の基板(即ち、前面側基板1aと背面側基板1b)の少なくとも一方の基板の周縁部に枠状のシール材を形成し、続いて、これら一対の基板の前記一方若しくは他方の基板に対して前記シール材に囲まれた領域に対応する部分に液晶を配置する。次に、前記一対の基板を対向させた状態で仮止めし、前記仮止めした一対の基板を複数作製する。そして、これら複数の仮止めされた一対の基板を、前記一対の基板の前記シール材が形成された部分を被覆し且つ前記シール材に囲まれた領域に対向する部分に開口部を有する緩衝材を介して積層する(即ち、各仮止めされた一対の基板の前記シール材が形成された領域に重なる緩衝材であって各仮止めされた一対の基板のそれぞれの前記シール材に囲まれた領域に対向する部分に緩衝材が設けられない領域を有する緩衝材を介して、前記複数の仮止めされた一対の基板を積層する)。そして、積層された前記複数の仮止めされた一対の基板を一対の前記緩衝材の間に挟み、該緩衝材を介して前記複数の仮止めされた一対の基板を一対の加圧面の間で加圧することによって、各仮止めされた一対の基板を一括して貼り合わせる。この場合にも、前述したのと同様の効果が得られる。
【0024】
また、前記実施形態では、本発明を単純マトリクス型の液晶装置に適用したが、本発明は、その他の任意の構造の液晶装置、例えばTFD素子等の二端子型非線形素子或いはTFT素子等の三端子型非線形素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図及び断面図。
【図2】同、液晶装置の製造方法の一例を示す工程フロー。
【図3】図2の製造方法で形成された前面側マザー基板の平面模式図。
【図4】図2の製造方法で形成された背面側マザー基板の平面模式図。
【図5】液晶の充填工程の一例を示す図。
【図6】基板の貼り合わせ工程の一例を示す図。
【図7】緩衝材の平面形状を示す模式図。
【図8】緩衝材の他の構成例を示す平面模式図。
【符号の説明】
【0026】
1a…前面側基板、1b…背面側基板、6a…シール材、7′…仮止めパネル、12…液晶装置、101a…前面側マザー基板、101b…背面側マザー基板、600…圧着装置(液晶装置の製造装置)、601a,602a…加圧面、603…緩衝材、603a…開口部、D…表示領域、L…液晶


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶装置の製造方法であって、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板に枠状のシール材を形成する工程と、
前記一対の基板の前記一方若しくは他方の基板に対して、前記シール材に囲まれた領域に対応する部分に前記液晶を配置する工程と、
前記一対の基板を対向させた状態で仮止めする工程と、
前記仮止めした一対の基板を複数作製し、各仮止めされた一対の基板の前記シール材が形成された領域に重なる緩衝材を介して、前記複数の仮止めされた一対の基板を積層する工程と、
積層された前記複数の仮止めされた一対の基板を一対の前記緩衝材の間に挟み、該緩衝材を介して前記複数の仮止めされた一対の基板を一対の加圧面の間で加圧することによって、各仮止めされた一対の基板を一括して貼り合わせる工程とを備え、
前記緩衝材が、各仮止めされた一対の基板のそれぞれの前記シール材に囲まれた領域に対向する部分に当該緩衝材が設けられていない領域を有することを特徴とする、液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記シール材の形成工程が、複数の液晶装置に対応するように前記一方の基板に前記シール材を複数形成する工程を備え、
前記液晶の配置工程が、前記シール材に囲まれた領域に対応する部分にそれぞれ前記液晶を配置する工程を備え、
前記貼り合わせ工程の後、貼り合わされた前記一対の基板を切断して個々の液晶装置に分離する工程を更に備えたことを特徴とする、請求項1記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の外形が矩形状であり、
前記仮止めされた一対の基板の積層工程が、少なくとも一方の前記加圧面に設けられた位置決め部材によって、前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の少なくとも3つの角部を位置決めした状態で行なわれることを特徴とする、請求項1又は2記載の液晶装置の製造方法。
【請求項4】
前記枠状のシール材が閉環状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項5】
枠状に形成されたシール材を介して対向する一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶装置の製造装置であって、
前記一対の基板を対向させた状態で仮止めした複数の仮止めされた一対の基板を挟み込む一対の加圧面と、前記複数の仮止めされた一対の基板と前記加圧面との間に介在させる複数の緩衝材とを備え、
前記緩衝材が、前記複数の仮止めされた一対の基板のそれぞれの前記シール材が形成された領域に重なり、且つ前記シール材に囲まれた領域に対向する部分に緩衝材が設けられていない領域を有する形状を備えたことを特徴とする、液晶装置の製造装置。
【請求項6】
前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の外形が矩形状であり、
前記一対の加圧面のうち少なくとも一方の加圧面に、前記仮止めされた一対の基板及び前記緩衝材の少なくとも3つの角部を位置決めするための位置決め部材が設けられていることを特徴とする、請求項5記載の液晶装置の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−39371(P2006−39371A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221693(P2004−221693)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】