説明

液晶配向膜用真空蒸着装置およびその成膜方法

【課題】蒸着対象が大型基板であっても単純な構成で無機配向膜を効率よく形成する液晶配向膜用真空蒸着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】排気手段を有する真空槽及び真空槽内部の蒸着源を備えた液晶配向膜用真空蒸着装置において、蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリットであって蒸着材料が通過するための複数の開口が放射状に設けられたスリット、およびスリットを介して蒸着源に対向する位置に配置され鉛直線を中心として基板を円周上に配列して保持する基板保持手段であって基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整可能な基板保持手段を備え、鉛直線を中心に基板およびスリットが相対的に回転可能であり、スリットを通過した蒸着材料によって基板が斜方蒸着されて配向膜が形成されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜方蒸着法にて配向膜を作製するための装置および方法に関する。また、真空蒸着装置において蒸着源に対する基板角度を調整するための機構および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型液晶プロジェクター等の普及に伴い、配向膜を作製する方法は有機膜のラビング法から無機配向膜を形成しプレチルト角を確保する手法に移行しつつある。無機配向膜は真空槽内に配置した基板に斜方蒸着することにより形成されることが多く、蒸着角度を制御することによりプレチルト角が確保される。例えば、蒸発源と基板との間にスリットを設けることにより蒸着角度を制御し、スリット上で基板を移動させることにより基板全面に均一な無機配向膜を形成すればよい。
【0003】
無機配向膜を始めとする液晶エンジン部分は様々な工程を経て形成されるため、生産性を確保する為にもウエハ形状のままハンドリングし各種工程を経ることが望ましい。8インチまたは12インチ相当の大型ウエハに無機配向膜を形成する為には、装置を大型化せざるを得ず真空槽内に複雑な搬送機構を設ける必要がある。この様な真空槽内部構造により処理されるウエハは少なくなってしまいコスト削減の妨げおよび生産性低下の要因となっていた。
【0004】
生産性を確保するために多数枚の基板を同時処理する方法は、例えば特許文献1に開示される。特許文献1は液晶表示装置の製造方法であって、基板を蒸着物の入射方向に対し斜めに配置し、基板と蒸着源との間にスリットを設置し、基板を移動するとともにスリットを通して蒸着物を一定方向に付着させるものである。同文献の第4図には、大量生産を目的に、数多くの基板に同時に斜方蒸着を行う実施例が記載されている。実施例は、円筒状ですきまを多数有したスリットを用い、その周囲に基板を多数配置するものである。基板は蒸着物の入射方向に対して斜めに配置し、蒸着源を支点に一定速度で基板を回転することにより一回の蒸着で複数枚の基板を同時に成膜できる。
【特許文献1】特開昭51−27948号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6を参照に斜方蒸着における入射角を説明する。図において、40は蒸着源、41は基板を示す。破線Tは基板41の中心位置における垂線を示し、実線Uは基板41と蒸着源40とを結ぶ基板蒸着源間距離を示している。D点およびE点は基板41の端面を示し、D点と蒸着源40を結ぶ直線を直線Vとし、E点と蒸着源40を結ぶ直線を直線Wとする。
【0006】
斜方蒸着は蒸着源に対して基板を傾斜させて配置するものであり、入射角は基板面に対する蒸着材料の入射方向と基板垂線とのなす角により表す。基板中心位置における入射角θは直線Uと垂線Tとのなす角である。D点における入射角θ1は直線Vと垂線Tとのなす角であるため、入射角はθ+Δθ1で表すことができる。E点における入射角θ2は直線Wと垂線Tのなす角であるため、入射角はθ−Δθ2で表すことができる。蒸着材料の入射方向は基板の各点において異なるため、入射角は同一基板面内であってもばらつきがある。同一基板面内における入射角のばらつきは、DE間距離が大きい程、即ち基板が大型化する程大きくなるが、入射角ばらつきの許容範囲は通常±3°以内に抑えることが一般的である。入射角のばらつきとなるΔθ1およびΔθ2は蒸着源距離に依存するため、大型基板においてこの許容範囲を確保しようとすると、蒸着源距離を長くとらざるを得ない。
【0007】
特許文献1記載の方法で大型基板を処理しようとすると、十分な蒸着源距離を確保するためには筒状スリットを巨大化し高さを稼がなくてはならず、現実的ではないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、8インチ相当以上のウエハのような大型基板であっても、単純な構成で無機配向膜を効率よく形成することを目的とする。
【0009】
ところで、上記においては、基板の入射角の差異による成膜のばらつきを問題としているが、入射角そのものを調整する際、基板角度を調整する基板角度調整機構を設けて、それを電気的制御により駆動することが成膜工程の効率化や成膜精度の向上及び再現性の観点から望ましい。従って、基板角度調整時には基板角度可変機構に給電することが必要となる。一方、この基板角度可変機構は基板近辺に、即ち、成膜中は所定数で公転動作される公転機構に搭載されるため、給電用の電気配線を基板角度可変機構と公転機構以外の機構との間で接続したままではその配線が拠れるなどして回転(公転)の妨げとなることが想定される。
【0010】
そこで、本発明は、成膜前は公転機構に搭載された基板角度調可変構に電気的に導通し、かつ、成膜中は公転機構の公転動作を妨げないような機構及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面は、排気手段を有する真空槽及び真空槽内部の蒸着源を備えた液晶配向膜用真空蒸着装置において、蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリットであって蒸着材料が通過するための複数の開口が放射状に設けられたスリット、およびスリットを介して蒸着源に対向する位置に配置され鉛直線を中心として基板を円周上に配列して保持する基板保持手段であって基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整可能な基板保持手段を備え、鉛直線を中心に基板およびスリットが相対的に回転可能であり、スリットを通過した蒸着材料によって基板が斜方蒸着されて配向膜が形成されるように構成された液晶配向膜用真空蒸着装置である。
【0012】
上記第1の側面において、基板保持手段は入射角を0°〜90°の範囲から任意に選択可能である。また、蒸着源の鉛直線を中心に基板保持手段を公転させる公転機構を、あるいは、蒸着源の鉛直線を中心にスリットの開口を自転させる自転機構を設けた。更に、モニタ基板および光学式膜厚計測装置を備え、光学式膜厚計測装置によりモニタ基板の膜厚を測定しながら蒸着膜厚を制御する構成とした。
【0013】
本発明の第2の側面は、排気手段を有する真空槽、真空槽内部の蒸着源、蒸着源に対向する位置に配置された基板を保持する基板保持手段、及び蒸着源と基板の間に介在する開口を有するスリットを備えた液晶配向膜用真空蒸着装置において基板に配向膜を形成する成膜方法であって、基板保持手段において、基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角が所定の角度になるように調整し、スリットにおいて、開口によって蒸着源から基板へ飛散する蒸着材料の入射角を制限する成膜方法である。
【0014】
本発明の第3の側面は、斜方蒸着による配向膜の形成方法であって、蒸着源の鉛直線上に、放射状に複数の開口を設けたスリット、および基板を円周上に配列して保持する基板保持手段を配置し、基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角が所定の角度となるように基板保持手段に基板を配置し、蒸着源の鉛直線を中心に基板およびスリットを相対的に回転させ、スリットの開口を通り抜けて基板面に到達する蒸着材料を斜方蒸着し配向膜を形成する成膜方法である。
【0015】
本発明の第4の側面は、排気手段を有する真空槽、真空槽内部の蒸着源、蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリット、およびスリットを介して蒸着源に対向する位置に配置されるとともに鉛直線を中心として基板を円周上に配列して保持する基板保持手段を備えた液晶配向膜用真空蒸着装置において基板に配向膜を形成する成膜方法であって、基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整し、鉛直線を中心に基板およびスリットを相対的に回転させ、スリットに放射状に設けられた複数の開口を介して蒸着材料を基板に斜方蒸着する成膜方法である。
【0016】
本発明の第5の側面は、排気手段を有する真空槽内に、蒸着源、蒸着される基板を保持する基板保持機構、蒸着源の鉛直線を中心として基板を公転させる公転機構、基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整可能な基板角度可変機構とを備えた真空蒸着装置であって、基板角度可変機構に電力を供給するコンタクトを公転機構に接触可能に設けた真空蒸着装置である。さらに、コンタクトを公転機構から切り離し可能な構成とした。ここで、公転機構の回転時にコンタクトと公転機構とが非接触状態にされる構成とした。
【0017】
また、上記第5の側面において、基板角度可変機構が該基板保持機構を駆動するための第1の駆動源および基板角度確認器を有し、第1の駆動源および基板角度確認器に導通する端子とコンタクトとが接触することにより電力が供給される構成とした。さらに、コンタクトを駆動するための第2の駆動源を備え、第2の駆動源は公転機構の公転動作の影響を受けない位置に配置される構成とした。ここで、第2の駆動源によって、公転機構の回転時にコンタクトと端子とが非接触状態にされるようにした。
【0018】
またさらに、上記第5の側面において、基板角度可変機構の非通電時に基板の角度を保持するブレーキ機構を備える構成とした。ここで、基板角度可変機構は基板の角度調整に使用されるボールねじを有し、ブレーキ機構はボールねじの回転動作をロックおよびロック解除する押圧部を有し、基板角度可変機構の非通電時に押圧部が回転動作をロックする構成とした。
【0019】
本発明の第6の側面は、排気手段を有する真空槽及び真空槽内部の蒸着源を備えた真空蒸着装置であって、蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリットであって、蒸着材料が通過するための複数の開口が放射状に設けられたスリット、開口上方に基板を保持する基板保持手段、およびスリット上に設けられ、スリット各々の開口面積を変更可能なシャッターを備えた真空蒸着装置である。
【0020】
本発明の第7の側面は、排気手段を有する真空槽内に、蒸着源、蒸着される基板を保持する基板保持機構、蒸着源の鉛直線を中心として基板を公転させる公転機構、基板上の任意の点と蒸着源とを結ぶ直線と基板の垂線とのなす入射角を調整可能な基板角度可変機構とを備えた真空蒸着装置における成膜方法であって、公転機構にコンタクトを接触させコンタクトから基板角度可変機構に電力を供給するステップ、基板角度可変機構によって基板角度を所定の角度に調整するステップ、コンタクトを基板角度可変機構から離すステップ、公転機構を公転させるステップ、および蒸着源からの蒸着材料を基板保持機構に保持された基板に斜方蒸着するステップからなる成膜方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明で放射状に複数の開口を配列したスリットを用いることにより、大型基板に対しても単純な構成で入射角を許容範囲内に抑えた成膜を行うことが可能となる。また、蒸着源に交差する直線の円周上に複数の基板を配置することにより、一度の蒸着で処理可能な基板の枚数を増加させ生産性の向上に貢献する。
【0022】
また、基板角度可変機構に電力を供給する手段として真空槽外部から導入するコンタクトを採用することにより、蒸着源に対する基板角度を任意に変更可能としながらも、成膜時に基板を所定の回転数で回転させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施例1.
図1に本発明の一実施形態の真空蒸着装置を示す。
排気系統9を備える真空槽1内底面には蒸着源2が設けられ、蒸着源2には蒸着材料5および電子銃7が備えられる。蒸着材料5は真空槽1底面の中心位置に配置され、電子銃7は蒸着材料5に電子ビーム6を照射する位置に配置される。蒸着源2には開閉自在のシャッター8が設けられ、図示のようにシャッター8を閉じることにより飛散する蒸着材料を遮蔽する。蒸着源2は蒸着材料5を蒸発または昇華させるものであればよく、電子ビームに限らず、抵抗加熱、レーザー等他の加熱手段を用いてもよい。蒸着材料5には所望の成膜材料を用いればよく、図示はしないが複数の蒸着材料を備える蒸着材料供給機構を用いて蒸着源に蒸着材料を自動供給してもよい。
【0024】
破線Oは蒸着材料5の鉛直線を表し、鉛直線O上にはスリット3が配置される。図2にスリット3の概略平面図を示す。スリット3には鉛直線Oを中心とする放射状に複数の開口20が設けられる。スリット3は蒸着材料5の直上に配置されるため、蒸着材料5の蒸気のほとんどはスリット3により遮蔽され、開口20を通り抜けた一部の蒸気のみがスリット3の上面に到達する。開口20を通過する蒸気は蒸着源2から一定範囲内の蒸発角度で飛散する蒸気に限られるため、スリット3は蒸着方向を制限する役割を担っている。開口20の形状は、制限しようとする蒸発角度に合わせて設計すればよい。
【0025】
スリット3の直上には基板4が配置され、基板4面にはスリット3により蒸着方向を制限された蒸気のみが堆積する。図3は基板の概略平面図を示す。基板は蒸着材料の鉛直線Xを中心とする円周上に、基板保持手段である基板固定治具12により所定の角度で配置される。
【0026】
図4(a)に蒸着源2、スリット3、および基板4を模擬的に示す。図において、点Aは基板成膜面の中心位置を表し、中心位置Aにおける垂線を垂線Pとする。垂線Pと鉛直線Oとにより形成される平面を平面Xとし、平面Xと基板成膜面との交差点を点Bおよび点Cとする。また、点Aと蒸着源2を結ぶ直線を直線Q、点Bと蒸着源2を結ぶ直線を直線R、点Cと蒸着源2を結ぶ直線を直線Sとし、スリット開口20の長辺方向距離をd、短辺方向距離をeとする。
【0027】
基板固定治具12は各基板4の中心位置Aが鉛直線Oを中心とする同心円状に配列されるように基板4を保持する。また、基板固定治具12は直線Qが垂線Pとなす角θが図6に示す所望の入射角となるように基板4を傾斜させる。図では基板4の成膜面を鉛直線O側に傾斜させるが、基板4の背面が鉛直線O側を向くように傾斜させてもよい。入射角θは0°〜90°の範囲で任意に選択すればよい。実施例は、点Bおよび点Cにおける入射角が許容範囲内に抑えられるような蒸着源距離(即ち直線Qの距離)が予め確保されている。例えば蒸着源距離は、直線Rと垂線Pとのなす角、および直線Sと垂線Pとのなす角が所定の入射角θの±1°以内に収まるように定めればよい。許容範囲は±1°に限らず適宜選択しこれに合わせて蒸着源距離を定めればよい。
【0028】
スリット開口20の長辺方向は平面Xに平行に配置し、その幅は点Bと点Cを結ぶ直線を蒸着源2からスリット3へ射影した幅よりも大きいものであればよい。スリット3が成膜領域を画定するマスク機能を担う場合は、射影に等しい開口幅とすればよい。実施例は、基板蒸着源間距離により入射角を規制するが、スリット開口20の長辺方向距離dにより入射角を規制してもよい。この場合、スリット開口の長辺方向距離dは入射角の許容範囲により適宜設計すればよい。
【0029】
図4(b)に平面X上に視点をおいた際のスリット3を示す。蒸着材料は平面Xから距離が離れるほど角度をもって飛散するが、±Δψ°以上の角度で飛散する蒸気はスリット3により遮蔽される。スリット3により一定範囲内の蒸発角度で飛散する蒸気のみを蒸着することにより、基板面には所定の入射角を持つ蒸着材料が向きを揃えて蒸着される。開口の短辺方向は基板面内における蒸着材料の向きを確保するためのものであり、短辺方向の開口幅eは角度Δψにより適宜選択すればよい。これにより、入射角確保に必要な物理的配置を備えた真空槽内に入射角を確保する基板保持手段を用いて基板を配置し、蒸発源と基板との間に設けられたスリットにより配向膜に必要な角度依存性を満足させることができる。
【0030】
基板固定治具12には鉛直線Xを中心に基板固定治具を公転させる公転機構13が取付けられる。公転機構は基板を任意の回転速度で回転可能に制御される。図5に蒸着源2、スリット3、基板4の斜視分解図を示す。基板4には、スリット3の開口20を蒸着源2から射影した面にのみ蒸着材料が堆積するが、スリット3に対して基板4を図の矢印30方向に回転させることにより、基板4全面に所定範囲内の入射方向の蒸着材料が向きを揃えて成膜される。実施例は電子銃の特性である全方位蒸発分布の不均一を解消するためにスリット3を固定し基板4を公転させるものとするが、スリット3と基板4は相対的に回転させればよく、基板4を固定しスリット3を自転させてもよい。また、スリットの開口数と基板数は適宜選択すればよい。
【0031】
蒸着材料5の鉛直線X上にはモニタ基板10および光学式膜厚計測装置11が配置される。スリット3の中心位置には開口21が設けられ、蒸着源2に対してモニタ基板10を露呈する。光学式膜厚計測装置11は、モニタ基板10の透過光または反射光の光量を検出し、光電変換された電気信号を演算処理することにより光強度を解析処理して膜厚を計測するものである。光学膜厚に相当する物理量を算出し、実基板上に堆積する膜厚を算出すればよい。水晶膜厚モニタに比して高精度の膜厚制御が可能となるため、成膜の精度を向上させることが可能となる。本実施例はモニタ基板10を蒸着材料5の鉛直線X上に配置するが、モニタ基板10を実基板に等しい円周上に配置してもよい。或いは実基板を測定してもよい。この場合、基板は固定配置しスリットを回転させることが望ましい。
【0032】
本実施例は、蒸着材料の鉛直線を中心とする円周上に蒸着源に対して全て等しい角度で基板を配列することにより、各基板に対する蒸着材料の相対的な入射方向を等しく確保することができ、一度の蒸着で処理可能な搭載基板数を増加させ、基板1枚当りの処理時間を短縮し、生産性の向上に貢献する。また、単純な構成により、処理枚数の向上・処理時間の短縮・歩留まりの改善をはかることが可能となるため、省エネルギー・省コストにて無機配向膜を効率良く形成することができる。
【0033】
実施例2.
実施例1においては、基板の角度を可変とするとともにスリットを適切に設計・動作させることで好適な斜方蒸着を行うものを示したが、本実施例においては、さらに、その可変に設計された基板角度を調整するための好適な機構、およびスリット細部についての好適な構成例を示す。なお、実施例1における機構と同様のものには同一の符号を付している。
【0034】
図7(a)は装置の全体構成を示す水平面図であり、成膜室50、仕込室51、取出室52、および、バッファー室53を備えるロードロック式の装置に対応している。仕込室51および取出室52は複数枚の基板4を収納可能であり、バッファー室53には成膜室50に対して基板4のロードおよびアンロードを行うロボット54が備えられる。
【0035】
図7(b)は図7(a)に示す成膜室50の概略垂直面図であり、成膜室50底面には蒸着源2が、天井面には公転機構13が回転自在に配置され、公転機構13には基板角度可変機構55を介して基板ステージ56が取り付けられる。基板角度可変機構55は基板ステージ56を蒸着源2に対して所定の角度に傾斜させるための機構であり、機構を駆動することにより各基板ステージ56に搭載された基板4が任意の入射角に設定される。基板ステージ56は蒸着材料5の鉛直線Oを中心とする円周上に配置され、その内部には基板4が保持される。実施例は成膜室内に4つの基板ステージ56を配置し、4枚の基板4を同時蒸着するものとするが、基板ステージ56の数は同時処理しようとする基板4の枚数に合わせて適宜選択すればよい。図7(b)では説明のため基板ステージ56を2つのみ図示している。また、成膜室50に配される公転機構13、基板角度可変機構55、スリット57、蒸着源2は制御装置58に接続されるものとする。
【0036】
蒸着源2と基板4との間には、基板4に対する蒸着粒子の入射状態を制限するスリット57が配置される。図8(a)にスリット57の概略平面図を示す。スリット57には鉛直線Oを中心とする放射状に複数の開口20が設けられ、蒸着源2から一定範囲内の放出角度で飛散する一部の蒸着粒子のみが開口20を通過して基板4に到達する。成膜時、基板ステージ56を公転機構13により所定の回転数で回転させることにより、基板4全面に所定範囲内の入射方向の蒸着材料が向きを揃えて成膜され、配向膜に必要な角度依存性を満足させることができる。
【0037】
スリット57は開口20の一部を遮蔽可能なシャッター60を具備し、シャッター60を駆動することにより開口面積を任意に変更可能な構成とする。シャッター60は制御装置58に接続し、例えば成膜基板4の面内膜厚分布を測定する図示しない測定装置の測定結果に基づいてシャッター60を制御すればよい。シャッター60は、図示しない駆動源により矢印a方向および矢印b方向に移動可能であり、移動方向および移動距離は制御装置58により制御すればよい。基板4は公転機構13により回転した状態で成膜されるため、スリット57に設けられた複数の開口20のうち一部のみを遮蔽することで基板4に付着する蒸着材料の量を制御することができる。シャッター60の数は適宜選択すればよく、全ての開口20にシャッター60を設けても構わない。図の斜線部はシャッター60による開口20の遮蔽面を示し、例えば基板4の回転中心側の膜厚が外周側の膜厚よりも大きい場合は図示の様に中心部分のみ開口面積を縮小すればよい。
【0038】
図8(a)ではシャッター60を一枚板により構成するが、図8(b)に示すように櫛状のシャッター61を用いてもよい。櫛状に配列した複数枚の板62は独立に駆動可能とし、各板62が矢印a方向に移動することにより開口20の一部を遮蔽する構成とする。図の斜線部はシャッター61による開口20の遮蔽面を示し、矢印a方向への移動距離は各板62毎に任意に設定可能とする。また、膜厚分布精度を向上させるためにスリット57と蒸着源2の間に真空蒸着では一般的な膜厚補正板を設けてもよい。図7(b)には膜厚補正板59を搭載する装置例を図示する。
【0039】
図9(a)に成膜室50の一部のみを図示し、これを参照に基板角度可変機構55を説明する。実施例の基板角度可変機構55は、公転機構13に基板角度可変機構55の駆動源として搭載される真空モータ70、真空モータ70に接続され回転駆動するボールねじ71、ボールねじ71のねじ溝に螺合するスライダ72、スライダ72と基板ステージ56とを連結するアーム73、基板ステージ56に連結し回転の支点となる支軸74、スライダ72の位置を確認するエンコーダ75、および真空モータ70の非通電時にボールねじ71を固定保持するブレーキ76、並びに、公転機構13とは切り離された状態で成膜室の槽壁83に搭載されるコンタクト77、コンタクト77の駆動源78、およびブレーキ76の駆動源84により構成される。公転機構13には真空モータ70およびエンコーダ75に導通する端子79が設けられ、コンタクト77が端子79に接続することにより基板角度可変機構55に電力が供給される。
【0040】
コンタクト77は成膜室外部の電源82に導通し、成膜室外部から導入する駆動源78に取り付けられる。駆動源78によりコンタクトを図の矢印方向に直線駆動することによりコンタクト77と端子79の接触が可能となる。駆動源78には、電気、エアー、機械的動力等いずれの方式を採用してもよく、また直線駆動に限られるものではない。駆動源78は、端子79との接続を遠隔操作可能なマニピュレータであればよい。コンタクト77の駆動源78は成膜室50の槽壁83に固定されるため、調整しようとする基板ステージ56をコンタクト77に接続可能な所定の位置に配置させ、基板角度を調整すればよい。実施例は、基板角度の調整時のみ基板角度可変機構55を導通状態とし、調整終了後はコンタクト77を端子79から切り離し基板角度可変機構55を非導通状態とする。
【0041】
基板角度の調整時は、真空モータ70によりボールねじ71を回転させ、ボールねじ71の回転運動をスライダ72の直線運動に変換し、スライダ72と基板ステージ56とを連結するアーム73を連動させることにより基板ステージ56を回転駆動する。アーム73は2つの部材80,81を回転自在に連結するものであり、一方のアーム部材80はスライダ72に、他方のアーム部材81は基板ステージ56に固定される。真空モータ70を駆動することにより一方のアーム部材80の一端を直線移動させると、これに連結する他方のアーム部材81の傾斜角度が変化するため、他方のアーム部材81の一端に固定された基板ステージ56がアーム81と一体になって傾斜する構成となっている。基板ステージ56は支軸74により公転機構13に対して回動自在に支持されるため、スライダ72を直線移動させることにより基板ステージ56には支軸74を支点とする回転動作が誘起される。支軸74は図示しない支持板により公転機構13に支持されるものとする。例えば支持板は、支軸74の一端を支えて公転機構13の下端に略L字を形成してもよいし、支軸74の両端を支えて略コの字を形成してもよい。
【0042】
図9(b)および図9(c)に、スライダ72を移動させた際に基板ステージ56が傾斜する様子を示す。基板ステージ56には基板4が固定されるため、基板ステージ56を所定の傾斜角度に設定することにより、基板4を所定の入射角に設定することが可能となる。基板角度可変機構55は真空槽を開放することなく基板角度を変更することができ、また基板角度は基板毎に自動で設定できるため、所望の配向膜を効率良く生産することが可能となる。
【0043】
図10に基板角度可変機構の他の実施例を示す。同図の基板角度可変機構55’は、ボールねじ71に螺合するスライダ72にアーム90,91を連結し、公転機構13に支持される図示しない支軸を回転の中心として基板ステージ56を傾斜させるものであり、この様子を(a)から(c)に示す。スライダ72に連結するアームの90の一端にカムフォロア92を固定し、基板ステージ56に連結するアーム91にカムフォロア92に係合するカム孔93を設けるものであり、その他の構成は図9(a)に示す機構と同様であるため、図示および説明を省略する。真空モータ70を駆動することによりアーム90の一端をスライダ72と共に直線移動させると、アーム90の他端に設けられたカムフォロア92がカム孔93に案内されてアーム91を傾斜させ、これに連結する基板ステージ56がアーム91と一体になって傾斜する構成となっている。
【0044】
実施例は真空モータ70を駆動源とするボールねじ71にアームを連結するが、基板角度を傾斜させる構成はこれに限られるものではない。例えばボールねじ71にカムフォロアを連結し、カムフォロアをカム孔に沿って移動させることにより回動を誘起してもよい。また、直線動作を回転動作に変換するものに限らず、回転駆動源を用いて基板ステージを直接回動させてもよい。いずれの場合にも基板角度可変機構55の駆動源には公転機構13には搭載されないコンタクトから電力を供給すればよい。実施例は基板角度可変機構55の駆動源を公転機構13に搭載するが、駆動源自体をコンタクト同様に公転機構13から切り離して搭載することも可能である。また、複数の基板角度可変機構55について、各基板角度可変機構55に対して独立した端子79とそれぞれに対応する独立したコンタクト77を設けてもよいし、いくつか或いは全部の基板角度可変機構55の端子79が電気的に接続された構成として必要数だけコンタクト77を設けるようにしてもよい。
【0045】
基板ステージ56の傾斜角度はスライダ72の移動距離に比例し、スライダ72の移動距離は真空モータ70の回転量に比例するため、エンコーダ75により真空モータ70の回転量をカウントすることにより基板ステージ72の傾斜角度を検出することが可能となる。エンコーダ75を用いて真空モータ70の回転量を検出し、所望の傾斜角度となる位置にスライダ72を位置決めすることにより、正確な基板角度制御が可能となる。スライダ72の位置決め制御にはエンコーダ75および真空モータ70に接続する制御装置58を用い、基板ステージ56が所望の傾斜角度となる位置でスライダ72が停止するよう真空モータ70を制御すればよい。基板ステージ58の傾斜角度は制御装置58により自動で設定すればよい。また、エンコーダに限らず他の機器を用いて基板傾斜角度を確認してもよい。
【0046】
真空モータ70はコンタクト77と導通状態にある場合のみ駆動可能であるが、基板角度調整後にコンタクト77を端子79から切り離して真空モータ70を非通電状態とすると、調整した基板角度を保持できなくなってしまう。そこで、制御装置58を用いて所定の基板角度となる位置までスライダ72を移動させた後、角度保持用のブレーキ76を用いてボールねじ71を固定する。
【0047】
ブレーキ76は公転機構13に搭載されるが、その操作は真空槽外部から導入する駆動源84により行われる。ブレーキ76は成膜室内の所定位置においてのみ駆動源84に接続可能であり、非接続時にボールねじ71を固定保持し、接続駆動時にボールねじ71の固定保持を解除する。ボールねじ71の固定保持を解除することにより、スライダ72が自由に移動可能となりブレーキが解除される。
【0048】
図11にブレーキ76の一例を示す。同図においてブレーキ76は、ボールねじ71の回転軸に接触してボールねじ71を係止する係止部100、係止部100を押止してボールねじ71を固定保持するスプリング101、ボールねじ71の回転軸に接触するすべり軸受102により構成され、図11(a)に示す状態においてボールねじ71にブレーキがかけられた状態を示している。
【0049】
ブレーキ76の解除時には、駆動源84に連結し自在に直線移動する押圧部103をスプリング101を押縮する方向に駆動し、係止部100を押圧してボールねじ71と係止部100を離反させ、ボールねじ71の固定保持を解除する。この時の様子を図11(b)に示す。すべり軸受102は、ボールネジ71の回転動作による負荷と、係止部100の直線動作による負荷を受けるものであればよい。
【0050】
本実施例は、成膜室内の定位置において真空槽外部から導入する駆動源84と接続することにより基板ステージ56の角度固定を解除し、同位置においてコンタクト77と端子79とが接続することにより基板ステージ56を任意の角度に調整することが可能となる。端子79およびブレーキ76は角度調整時以外にはコンタクト77および駆動源84と切り離されているため、真空槽内を自由に公転させることが可能となる。本発明により、成膜室50に設置された各基板ステージ56を、任意の基板角度に傾斜させて入射角を確保し、且つ全ての基板ステージ56を真空槽内にて公転させる事により膜厚の不均一を改善する。コンタクトの駆動源78およびブレーキの駆動源84は端子79およびブレーキ76に接続可能な構成であれば成膜室50のいずれの場所に設けても良く、また、各駆動源78,84の駆動時に複数の基板ステージ56を同時に角度調整させてもよい。
【0051】
以下、図7乃至図11に示す装置を用いた成膜動作を説明する。
まず、仕込室51に格納された未処理基板4をバッファー室53のロボット54が成膜室50に搬入する。成膜室50への基板4の搬出入は真空状態を維持したまま行われるものとし、成膜室50、バッファー室53、仕込室51、および取出室52は図示しない排気系統により所定の真空度に設定されるものとする。基板4の搬出入時は公転機構13を操作し、搬出入を行う基板ステージ56をバッファー室53に対面させる。ロボット54を用いて基板4を基板ステージ56に受渡した後、基板ステージ56に対して基板4を所定の位置に固定すればよい。
【0052】
ロボット54および公転機構13を操作し、全ての基板ステージ56に基板4を取り付けた後、予め制御装置58に入力された成膜条件に基づいて、真空中にて基板角度可変機構55を操作する。基板角度可変機構55操作時は、入射角を変更しようとする基板ステージ56が成膜室50内の所定の位置に配置されるよう公転機構13を回転させ、駆動源84を動作することによりブレーキ76を解除させる。また、端子79にコンタクト77を接続し、真空モータ70を駆動させエンコーダ75により所定の基板角度となる位置でスライダ72が停止するよう制御する。基板ステージ56が所定の角度となった時点で駆動源84をブレーキ76から切り離しボールねじ71を固定すする。次に基板角度を変更させようとする基板ステージ56を所定の位置に配置させ、同様の操作を繰返す。
【0053】
成膜室50内の全ての基板ステージ56を所定の入射角に設定した後、基板公転機構13を操作し、基板ステージ56を公転させる。回転数は成膜条件等に合わせて適宜選択すればよい。基板の回転数、溶かし込み、レート等の諸条件が整った時点で蒸着源2のシャッター8をオープンし成膜を開始する。基板ステージ56を公転させることにより、スリット開口20を通過した蒸着粒子が基板全面に堆積し所定の入射方向の配向膜が形成される。成膜終了後は、処理済基板4を成膜室50から搬出して取出室52に収納する。処理済基板搬出の際は基板ステージ56の角度を水平状態に戻し、搬入時同様にロボット54および公転機構13を操作すればよい。成膜レシピにより上記動作を繰返し行えば、成膜室において所望の配向膜を順次形成処理することが可能である。
【0054】
実施例は、基板角度の調整時のみ基板角度可変機構55を導通状態とするが、基板角度可変機構55は公転機構13の回転時のみ非導通状態であればよく、コンタクト77と端子79との接続は適宜行えばよい。また、上述したように、公転動作中はコンタクト77と端子79とが非接触になるようにするのが装置の信頼性の観点から望ましいが、例えば、駆動源78を省略してコンタクト77を接触位置に保持する構成としても、電気配線の引き回しをなくすという最小限の目的は達成できる。なお、この場合、各コンタクト77と各端子79がそれぞれ独立している場合には両者は公転周期ごとに接触し、どちらかが環形状の場合は接触し続けることになる。もちろん、どちらの場合も接触抵抗、摩擦、磨耗等が充分考慮されなくてはならない。
【0055】
本発明の機構は制御装置58を用いた自動操作が可能であるため、インライン式の装置において特に有効であるが、本発明を実施可能な装置はこれに限らずロードロックでないインライン式装置やバッチ式装置であってもよい。また、実施例の基板ステージに、基板面に垂直な軸を中心に基板を回転させて基板が配置される平面内で基板の方位角を0〜360°の範囲から任意に選択する基板方位角可変機構を搭載してもよい。この場合、基板方位角可変機構に電力供給用の端子を設けて機構の動作時のみコンタクトに接続すれば、入射角のみならず方位角も制御しながら成膜時には基板を自在に公転させることが可能となる。
また、実施例は液晶配向膜を作製するものであるが、液晶に限らず基板上に斜方蒸着するものであれば本発明を実施可能である。
【0056】
本発明は、基板角度可変機構の電力供給源が基板保持機構の回転機構から切り離され、電気配線の引き回しを不要としているため、基板を任意の入射角に設定した後、真空槽内を基板が自由に公転することが可能となる。結果として、配向膜に必要な基板への入射角の設定と物理膜厚の均一性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明第1の実施例の装置垂直断面図
【図2】スリットの概略平面図
【図3】基板の概略平面図
【図4】蒸着源、スリット、および基板の模式図
【図5】蒸着源、スリット、および基板の斜視分解図
【図6】入射角の模式図
【図7】本発明第2の実施例の装置概略図
【図8】スリットの概略平面図
【図9(a)】基板角度可変機構の概略図
【図9(b)】基板角度可変機構の概略図
【図9(c)】基板角度可変機構の概略図
【図10(a)】基板角度可変機構の概略図
【図10(b)】基板角度可変機構の概略図
【図10(c)】基板角度可変機構の概略図
【図11】ブレーキの概略図
【符号の説明】
【0058】
1 真空槽
2 蒸着源
3 スリット
4 基板
5 蒸着材料
6 電子ビーム
7 電子銃
8 シャッター
9 排気系統
10 モニタ基板
11 光学式膜厚計測装置
12 基板固定治具
13 公転機構
20 開口
21 開口
30 矢印
40 蒸着源
41 基板
50 成膜室
51 仕込室
52 取出室
53 バッファー室
54 ロボット
55 基板角度可変機構
56 基板ステージ
57 スリット
58 制御装置
59 膜厚補正板
60 シャッター
70 真空モータ
71 ボールねじ
72 スライダ
73 アーム
74 支軸
75 エンコーダ
76 ブレーキ
77 コンタクト
78 駆動源
79 端子
80 アーム
81 アーム
82 電源
83 槽壁
84 駆動源
90 アーム
91 アーム
92 カムフォロア
93 カム孔
100 係止部
101 スプリング
102 すべり軸受
103 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気手段を有する真空槽及び該真空槽内部の蒸着源を備えた液晶配向膜用真空蒸着装置であって、
該蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリットであって、蒸着材料が通過するための複数の開口が放射状に設けられたスリット、および
該スリットを介して該蒸着源に対向する位置に配置され、前記鉛直線を中心として基板を円周上に配列して保持する基板保持手段であって、該基板上の任意の点と該蒸着源とを結ぶ直線と該基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整可能な基板保持手段
を備え、
該鉛直線を中心に該基板および該スリットが相対的に回転可能であり、
該スリットを通過した蒸着材料によって該基板が斜方蒸着されて配向膜が形成されるように構成されたことを特徴とする液晶配向膜用真空蒸着装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶配向膜用真空蒸着装置であって、
該基板保持手段が、該入射角を0°〜90°の範囲から任意に選択可能であることを特徴とする液晶配向膜用真空蒸着装置。
【請求項3】
請求項1記載の液晶配向膜用真空蒸着装置であって、
該蒸着源の鉛直線を中心に該基板保持手段を公転させる公転機構を設けたことを特徴とする液晶配向膜用真空蒸着装置。
【請求項4】
請求項1記載の液晶配向膜用真空蒸着装置であって、
該蒸着源の鉛直線を中心に該スリットを自転させる自転機構を設けたことを特徴とする液晶配向膜用真空蒸着装置。
【請求項5】
請求項1記載の液晶配向膜用真空蒸着装置であって、
モニタ基板、および、光学式膜厚計測装置を備え、
該光学式膜厚計測装置により該モニタ基板の膜厚を測定しながら蒸着膜厚を制御することを特徴とする液晶配向膜用真空蒸着装置。
【請求項6】
排気手段を有する真空槽、該真空槽内部の蒸着源、該蒸着源に対向する位置に配置された基板を保持する基板保持手段、及び該蒸着源と該基板の間に介在する開口を有するスリットを備えた液晶配向膜用真空蒸着装置において該基板に配向膜を形成する成膜方法であって、
該基板保持手段において、該基板上の任意の点と該蒸着源とを結ぶ直線と該基板の垂線とのなす入射角が所定の角度になるように調整し、
該スリットにおいて、該開口によって該蒸着源から該基板へ飛散する蒸着材料の入射角を制限する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
斜方蒸着による配向膜の形成方法であって、
蒸着源の鉛直線上に、放射状に複数の開口を設けたスリット、および基板を円周上に配列して保持する基板保持手段を配置し、
該基板上の任意の点と該蒸着源とを結ぶ直線と該基板の垂線とのなす入射角が所定の角度となるように該基板保持手段に該基板を配置し、該蒸着源の鉛直線を中心に該基板および該スリットを相対的に回転させ、該スリットの開口を通り抜けて該基板面に到達する蒸着材料を斜方蒸着し配向膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
排気手段を有する真空槽、該真空槽内部の蒸着源、該蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリット、および該スリットを介して該蒸着源に対向する位置に配置されるとともに前記鉛直線を中心として基板を円周上に配列して保持する基板保持手段を備えた液晶配向膜用真空蒸着装置において該基板に配向膜を形成する成膜方法であって、
該基板上の任意の点と該蒸着源とを結ぶ直線と該基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整し、
該鉛直線を中心に該基板および該スリットを相対的に回転させ、
該スリットに放射状に設けられた複数の開口を介して蒸着材料を該基板に斜方蒸着する
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
排気手段を有する真空槽内に、蒸着源、蒸着される基板を保持する基板保持機構、該蒸着源の鉛直線を中心として該基板を公転させる公転機構、該基板上の任意の点と該蒸着源とを結ぶ直線と該基板の垂線とのなす入射角を所定の角度に調整可能な基板角度可変機構とを備えた真空蒸着装置であって、
該基板角度可変機構に電力を供給するコンタクトを該公転機構に接触可能に設けたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項10】
請求項9記載の真空蒸着装置において、さらに、該コンタクトを該公転機構から切り離し可能にしたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項11】
請求項10に記載の真空蒸着装置において、
該公転機構の回転時に該コンタクトと該公転機構とが非接触状態にされることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項12】
請求項9記載の真空蒸着装置であって、さらに、該基板角度可変機構が該基板保持機構を駆動するための第1の駆動源および基板角度確認器を有し、
該第1の駆動源および該基板角度確認器に導通する端子と該コンタクトとが接触することにより電力が供給されることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項13】
請求項9記載の真空蒸着装置であって、さらに、該コンタクトを駆動するための第2の駆動源を備え、該第2の駆動源は該公転機構の公転動作の影響を受けない位置に配置されたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項14】
請求項13に記載の真空蒸着装置において、
該第2の駆動源によって、該公転機構の回転時に該コンタクトと該端子とが非接触状態にされることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項15】
請求項9から請求項14いずれか一項に記載の真空蒸着装置であって、さらに、
該基板角度可変機構の非通電時に該基板の角度を保持するブレーキ機構を備えたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項16】
請求項15記載の真空蒸着装置において、
該基板角度可変機構は該基板の角度調整に使用されるボールねじを有し、
該ブレーキ機構は該ボールねじの回転動作をロックおよびロック解除する押圧部を有し、
該基板角度可変機構の非通電時に該押圧部が該回転動作をロックすることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項17】
排気手段を有する真空槽及び該真空槽内部の蒸着源を備えた真空蒸着装置であって、
該蒸着源の鉛直線を中心として水平に配置されたスリットであって、蒸着材料が通過するための複数の開口が放射状に設けられたスリット、
該開口上方に基板を保持する基板保持手段、および
該スリット上に設けられ、該スリット各々の開口面積を変更可能なシャッター
を備えたことを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項18】
排気手段を有する真空槽内に、蒸着源、蒸着される基板を保持する基板保持機構、該蒸着源の鉛直線を中心として該基板を公転させる公転機構、該基板上の任意の点と該蒸着源とを結ぶ直線と該基板の垂線とのなす入射角を調整可能な基板角度可変機構とを備えた真空蒸着装置における成膜方法であって、
該公転機構にコンタクトを接触させ該コンタクトから該基板角度可変機構に電力を供給するステップ、
該基板角度可変機構によって該基板角度を所定の角度に調整するステップ、
該コンタクトを該基板角度可変機構から離すステップ、
該公転機構を公転させるステップ、および
該蒸着源からの蒸着材料を該基板保持機構に保持された基板に斜方蒸着するステップ
からなることを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−330656(P2006−330656A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210987(P2005−210987)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】