説明

液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置

【課題】フレキシブル基板を取付部材に取付けた状態でOLB接続を行う場合において、実装時にOLB接続部における位置精度を容易に確認とすることで、信頼性の高いOLB接続を行うことのできる、液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】第1基板22と、第1基板22上に設けられた駆動素子と、第1基板22の駆動素子側に設けられた第2基板25と、駆動回路部26が実装されたフレキシブル基板27と、外面に取付けられたフレキシブル基板27を第2基板25の開口部60に配置して、開口部60内に露出している駆動素子の端子部と駆動回路部26とを電気的に接続させる取付部材120と、を備える液滴吐出ヘッド1である。取付部材120には、フレキシブル基板27の駆動素子に対する接続部27bの少なくとも一部を観察可能とする観察手段121が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロデバイスを製造する方法の一つとして液滴吐出法(インクジェット法)が提案されている。この液滴吐出法は、デバイスを形成するための材料を含む機能液を液滴状にして、液滴吐出ヘッドより吐出する方法である。下記特許文献1には、液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)に関する技術の一例が開示されている。この特許文献1に開示されている液滴吐出ヘッドでは、駆動素子(圧電素子)が、駆動デバイス(ドライバIC)にワイヤボンディングで接続された構造となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、液滴吐出法に基づいてマイクロデバイスを製造する際、マイクロデバイスの更なる微細化の要求に応えるために、液滴吐出ヘッドに設けられたノズル開口部同士の間の距離(ノズルピッチ)をできるだけ小さく(狭く)することが望まれている。駆動素子はノズル開口部に対応して複数設けられるため、ノズルピッチを小さくすると、そのノズルピッチに対応して駆動素子同士の間の距離も小さく(短く)する必要がある。
【0004】
しかしながら、駆動素子同士の間隔を狭くすると、これら複数の駆動素子のそれぞれとドライバICとをワイヤボンディングによって接続する際に、ワイヤの本数が大量であるため、隣接するワイヤ(配線)間で短絡が生じ易くなることからワイヤボンディングを行うためには配線(実装)が非常に難しくなり、作業性が著しく低下してしまう。また、このようなワイヤボンディング実装では接続部の強度が弱く、歩留まりが向上しないという問題がある。また、ワイヤの本数が大量であるため、ワイヤボンディング実装に長時間を要することになる。
【0005】
そこで、このようなワイヤボンディングによる接続に起因する問題を解消するため、アウターリードとして機能する配線パターンを予め形成したフレキシブル基板(可撓性基板)を用いて、アウターリードボンディング(OLB:Outer Lead Bonding)接続を行うことでワイヤ同士の短絡等の不都合を生じさせることなく、駆動素子(圧電素子)と駆動デバイス(ドライバIC)との間の電気的接続を行うことが考えられている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−296616号公報
【特許文献2】特開2000−68989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、OLB接続を行う際、フレキシブル基板のOLB部(接続部)と、シリコン基板に形成された開口部内に存在する駆動素子の端子部とを位置合わせし、その状態を維持しながらフレキシブル基板に実装された駆動回路部をシリコン基板上に固定する。この場合において、フレキシブル基板を貼り付けた取付部材を上記開口部内に挿入することでOLB接続を行うことが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述のような支持部材を用いる場合、実装時におけるフレキシブル基板のOLB部と駆動素子の端子部との実装部が隠れてしまうため、これらの実装位置が適正であるか否かを確認することが困難とされ、ヘッド駆動を駆動させた際に初めて導通不良等の問題が発覚するおそれもあり、OLB接続の信頼性を低下させる要因の一つとなってしまう。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、フレキシブル基板を取付部材に取付けた状態でOLB接続を行う場合において、実装時にOLB接続部における位置精度を容易に確認とすることで、信頼性の高いOLB接続を行うことのできる、液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出ヘッドは、第1基板と、該第1基板上に設けられた駆動素子と、前記第1基板の前記駆動素子側に設けられた第2基板と、
駆動回路部が実装されたフレキシブル基板と、外面に取付けられた前記フレキシブル基板を前記第2基板の開口部に配置して、前記開口部内に露出している前記駆動素子の端子部と前記駆動回路部とを電気的に接続させる取付部材と、を備え、前記取付部材には、前記フレキシブル基板の前記駆動素子に対する接続部の少なくとも一部を観察可能とする観察手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の液滴吐出ヘッドによれば、液滴吐出ヘッドを製造する際、観察手段によりフレキシブル基板における接続部の接続状態が観察可能とされるので、接続部と端子部との実装部における位置精度の検査を簡便且つ確実に行うが可能となる。よって、フレキシブル基板の実装時にOLB接続部の位置精度を確認できるので、OLB接続部における接続不良を事前に判別することが可能とされ、液滴吐出ヘッドにおけるOLB接続部の信頼性を向上させることができる。
【0011】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記取付部材の一部が透明部材からなり、前記観察手段が前記透明部材から構成されるのが好ましい。
この構成によれば、透明部材によりフレキシブル基板の接続部における状態を容易に確認することが可能とされる。
【0012】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記観察手段は、前記取付部材に形成された切欠であるのが好ましい。
この構成によれば、切欠を介してフレキシブル基板の接続部における状態を容易に確認することが可能とされる。
【0013】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記切欠は、前記取付部材の厚み方向に貫通した状態に形成されるのが好ましい。
この構成によれば、例えば取付部材が第2基板の開口部内に挿入された状態で配置される場合であっても、取付部材の厚み方向上側からフレキシブル基板における接続部の状態を容易に確認することができる。
【0014】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記接続部には、ダミーパターンを含む配線パターンが形成されており、前記切欠は、前記ダミーパターンに対応する位置に形成されているのが好ましい。
取付部材における切欠が形成された開口領域は、切欠が形成されていない非開口領域に比べて、低い荷重が付与された状態で第1基板上に実装されたものとなっている。そのため、切欠形成領域においては非形成領域に比べて、接続部における端子部と駆動素子の端子部との間における導通信頼性が僅かに低下するおそれもあるが、本発明によれば、開口部が電気的な接続に寄与しないダミーパターンに対応する領域に形成されているため、上述のような導通信頼性の低下といった問題が生じることが無い。
【0015】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記取付部材の前記接続部の取付面に絶縁処理が施されてなるのが好ましい。
この構成によれば、例えば取付部材が導電性部材から構成されている場合においても、接続部近傍において電気的な短絡が生じるのを防止することができる。
【0016】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記第2基板の前記第1基板と反対側に配置されるケース部材を備え、前記駆動回路が放熱性樹脂を介して前記ケース部材に固定されているのが好ましい。
この構成によれば、ヘッドの駆動時に駆動回路部から発生した熱を、放熱性樹脂およびケース部材を介して放熱させることが可能となるので、より高い放熱特性を得ることができる。
【0017】
また、上記液滴吐出ヘッドにおいては、前記取付部に複数の前記フレキシブル基板が取付けられており、前記視認手段は前記各フレキシブル基板における前記接続部の各々に対応して設けられるのが好ましい。
この構成によれば、例えば液滴吐出ヘッドを製造する際、各フレキシブル基板における接続部の接続状態がそれぞれ観察可能とされるので、実装部における位置精度の検査を簡便且つ確実に行うが可能とされる。よって、信頼性の高いOLB接続部を備えた液滴吐出ヘッドとなる。また、取付部材に複数のフレキシブル基板が取付けられた状態となるので、製造時のフレキシブル基板の取り扱いが容易となり、製造プロセスを簡略化できる。
【0018】
本発明の液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の液滴吐出装置によれば、上述のような信頼性の高いOLB接続部を有した液滴吐出ヘッドを備えているので、この液滴吐出装置自体も、長期に亘る信頼性が確保されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、液滴吐出ヘッドの短手方向(ノズルの配列方向)をX軸方向、液滴吐出ヘッドの長手方向(X軸方向と直交する方向)をY軸方向、液滴吐出ヘッドの厚さ方向(すなわちX軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向)をZ軸方向とする。
【0021】
<液滴吐出ヘッド>
本発明の液滴吐出ヘッドの第1実施形態について、図1〜図7を参照しながら説明する。図1は液滴吐出ヘッドの一実施形態に係る構成を示す外観斜視図、図2は液滴吐出ヘッドの分解斜視図、図3は液滴吐出ヘッドをノズル開口側から見た斜視図の一部破断図、図4は図1のA−A線矢視断面図、図5はOLB接続部の要部を拡大して示す図であり、図6はフレキシブル基板を支持する取付部材の構成を示す斜視図であり、図7はフレキシブル基板の平面図である。
【0022】
液滴吐出ヘッド1は、ノズル基板21と、ノズル基板21の上面に設けられた流路形成基板22(第1基板)と、流路形成基板22の上面に設けられて圧電素子(駆動素子)23の駆動により変位する振動板24と、振動板24の上面に設けられたリザーバ形成基板25(第2基板)と、リザーバ形成基板25の上面側に設けられる取付部材(ケース部材)101と、圧電素子23とドライバIC(駆動回路部)26とを電気的に接続するフレキシブル基板27とを備えた基体1Aを主体に構成されている。なお、本実施形態においては、一つの基体1Aにより液滴吐出ヘッドを構成しているが、複数の基体1Aをユニット化することで液滴吐出ヘッドを構成するようにしてもよい。
【0023】
ケース部材101は、ステンレスによって構成されている。このケース部材101は、液滴吐出ヘッド1を後述するような液滴吐出装置に搭載する際の取付け部材として利用されるものである。
【0024】
本実施形態に係る液滴吐出ヘッド1は、図1、2及び図4に示すように、フレキシブル基板27が取付部材120に取付けられた状態となっている。取付部材120は、例えばステンレスから構成され、フレキシブル基板27上に実装されているドライバIC26の放熱部材として機能するものである。
【0025】
本実施形態では、2つのフレキシブル基板27が、取付部材120の底面(下面)120aから、底面120aを挟んで対向配置されるニ側面のそれぞれに沿って折り曲げられた状態に取付けられている(図5、6参照)。また、取付部材120は、ケース部材101及びリザーバ形成基板25に形成された開口部102、60内に底面120a側が挿入された状態とされている。
【0026】
図3に示されるように、ノズル基板21は、例えばステンレスやガラスセラミックスによって構成されており、ノズル基板21を貫通する貫通孔であって機能液の液滴を吐出するノズル開口31が複数形成されている。そして、Y軸方向に複数並んで形成されたノズル開口31によって、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dが構成されている。ここで、第1ノズル開口群31Aと第2ノズル開口群31BとはX軸方向に関して対向配置され、第3ノズル開口群31Cと第4ノズル開口群31DとはX軸方向に関して対向配置されている。また、第3ノズル開口群31Cは第1ノズル開口群31Aに対してY軸方向で隣り合うように形成され、第4ノズル開口群31Dは第2ノズル開口群31Bに対してY軸方向で隣り合うように形成されている。
【0027】
なお、図3では、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dがそれぞれ6個のノズル開口31によって構成されているように示されているが、実際には、例えば720個程度のノズル開口31が形成されている。
【0028】
流路形成基板22は、例えば剛体であるシリコン単結晶によって形成されており、複数の隔壁35は、流路形成基板22の母材であるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
また、流路形成基板22の下面には例えば接着剤や熱溶着フィルムなどを介してノズル基板21が固定されている一方、流路形成基板22の上面には振動板24が設けられている。
【0029】
そして、複数の隔壁35を有する流路形成基板22と、ノズル基板21と、振動板24とで囲まれた空間によって、ノズル開口31より吐出される機能液が配置される圧力発生室36が形成されている。この圧力発生室36は、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dのそれぞれを構成する複数のノズル開口31に対応するようにして、Y軸方向に複数並んで形成されている。
【0030】
そして、第1ノズル開口群31Aに対応して形成された複数の圧力発生室36によって第1圧力発生室群36Aが構成される。同様に、第2ノズル開口群31Bに対応する複数の圧力発生室36によって第2圧力発生室群36Bが構成され、第3ノズル開口群31Cに対応する複数の圧力発生室36によって第3圧力発生室群36Cが構成され、第4ノズル開口群31Dに対応する複数の圧力発生室36によって第4圧力発生室群36Dが構成されている。第1圧力発生室群36Aと第2圧力発生室群36BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置され、第3圧力発生室群36Cと第4圧力発生室群36DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。
【0031】
第1圧力発生室群36Aを構成する複数の圧力発生室36の一方の端部は、リザーバ37の一部を構成する供給路38を介して連通部39により互いに連通されている。連通部39は、流路形成基板22に形成された貫通孔であって、後述するリザーバ部51に接続されている。
同様に、第2から第4の圧力発生室群36B〜36Dを構成する圧力発生室36の端部も、それぞれ供給路38を介して連通部39によって互いに連通されている。
【0032】
流路形成基板22とリザーバ形成基板25との間に配置された振動板24は、流路形成基板22の上面を覆うように設けられた弾性膜41と、弾性膜41の上面に設けられた下電極膜42とを備えている。弾性膜41は、例えば厚さ1〜2μm程度の二酸化シリコンによって形成されており、下電極膜42は、例えば厚さ0.2μm程度の白金などによって形成されている。なお、本実施形態において、下電極膜42は、複数の圧電素子23に共通する電極となっている。
【0033】
振動板24を変位させるための圧電素子23、すなわち駆動素子は、下電極膜42の上面に設けられた圧電体膜45と、圧電体膜45の上面に設けられた上電極膜46と、上電極膜46の引出配線であるリード電極47(端子部)とを備えている。
【0034】
圧電体膜45は、例えば厚さ1μm程度の金属酸化物によって構成されている。また、上電極膜46は、例えば厚さ0.1μm程度の白金などによって構成され、リード電極47は、例えば厚さ0.1μm程度の金などによって構成されている。なお、リード電極47と下電極膜42との間には、絶縁膜(図示略)が設けられている。
【0035】
圧電素子23は、複数のノズル開口31及び圧力発生室36のそれぞれに対応するように複数設けられている。すなわち、圧電素子23は、ノズル開口31ごと(圧力発生室36ごと)に設けられている。そして、上述のように、下電極膜42が複数の圧電素子23の共通電極として機能し、上電極膜46及びリード電極47が複数の圧電素子23の個別電極として機能する。
【0036】
また、第1ノズル開口群31Aを構成する各ノズル開口31と対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23により、第1圧電素子群23Aが形成される。同様に、第2ノズル開口群31Bと対応する第2圧電素子群23Bが形成され、第3ノズル開口群31Cと対応する第3圧電素子群(図示略)が形成され、第4ノズル開口群31Dと対応する第4圧電素子群(図示略)が形成されている。これら第1圧電素子群23Aと第2圧電素子群23Bとは、X軸方向において互いに対向するように配置されている。また、第3圧電素子群と第4圧電素子群とは、X軸方向において互いに対向するように配置されている。
【0037】
なお、圧電素子23は、圧電体膜45、上電極膜46及びリード電極47に加えて下電極膜42を含むものであってもよい。すなわち、本実施形態における下電極膜42は、圧電素子23としての機能と振動板24としての機能とを兼ね備える構成としてもよい。また、本実施形態では、弾性膜41及び下電極膜42によって振動板24が構成されているが、弾性膜41を省略して下電極膜42が弾性膜41の機能を兼ね備える構成としてもよい。
【0038】
リザーバ形成基板25は、例えば流路形成基板22と同一材料であるシリコン単結晶をエッチングすることで形成されている。また、リザーバ形成基板25は、例えば熱酸化により表面に絶縁膜が形成された状態となっている。なお、リザーバ形成基板25としては、流路形成基板22の熱膨張率とほぼ同一の熱膨張率を有する材料によって形成されていることが好ましく、例えばガラスやセラミックス材料などを用いてもよい。
【0039】
リザーバ形成基板25には、図4に示すように、連通部39のそれぞれと対応するリザーバ部51がY軸方向に延びるように形成されている。このリザーバ部51と上述した連通部39とによってリザーバ37が構成される。
また、リザーバ形成基板25には、各連通部39の側壁に接続されて各連通部39に機能液を導入する導入路52が形成されている。
【0040】
また、リザーバ形成基板25の上面には、コンプライアンス基板53が接合されている。このコンプライアンス基板53は、封止膜54及び固定板55を有する。
封止膜54は、例えば厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルムのような剛性が低く可撓性を有する材料によって形成されている。そして、封止膜54によってリザーバ部51の上部が封止されている。
【0041】
また、固定板55は、例えば厚さ30μm程度のステンレス鋼のような金属などの硬質の材料によって形成されている。この固定板55のうち、リザーバ部51に対応する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部56となっている。したがって、リザーバ部51の上部は、可撓性を有する封止膜54のみによって封止されたものとなっており、したがって、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部57となっている。また、コンプライアンス基板53上には、上記ケース部材101が設けられている。
【0042】
また、リザーバ部51の外側のコンプライアンス基板53及びケース部材101には、導入路52に連通してリザーバ部51に機能液を供給するための機能液導入口58が形成されている。通常、機能液導入口58からリザーバ部51に機能液が供給されると、例えば圧電素子23の駆動時の機能液の流れや周囲の熱などによってリザーバ部51内に圧力変化が生じる。しかしながら、上述のように、リザーバ部51の上部が封止膜54のみによって封止された可撓部57となっているので、この可撓部57が撓み変形してその圧力変化を吸収する。したがって、リザーバ部51内は一定の圧力に保持される。なお、他の部分は固定板55によって十分な強度に保持されている。また、ケース部材101は、可撓部57の変形状態を損なわないように可撓部57に非接触状態で設けられている。
【0043】
リザーバ形成基板25のX軸方向における中央部には、図2に示されるようにY軸方向に延びる溝状の開口部60が2つ形成されている。開口部60におけるX軸方向外側の領域には、第1から第4圧電素子群23A〜23Dを振動板24との間で封止する第1および第2封止部61A,61Bと、第3および第4封止部とが形成されている。より詳しくは、第1封止部61Aは、第1圧力発生室群36Aに対応する第1圧電素子群23Aを振動板24との間で封止し、第2封止部61Bは第2圧電素子群23Bを封止している。第3封止部および第4封止部は、図4には記載されていないが、第3および第4圧電素子群を封止している。
【0044】
リザーバ形成基板25のうち、圧電素子23と対向する領域には、圧電素子23の運動を阻害しない程度の空間が確保されており、この空間を密封可能な圧電素子保持部62が形成されている。圧電素子保持部62は、第1および第2封止部61A,61Bと、第3および第4封止部のそれぞれに形成されており、第1から第4の圧電素子群23A〜23Dを覆う大きさで形成されている。また、圧電素子23のうち、少なくとも圧電体膜45は、この圧電素子保持部62内に密封されている。
【0045】
このように、リザーバ形成基板25は、圧電素子23を外部環境から遮断し、圧電素子23を封止するための封止部材としての機能を有している。リザーバ形成基板25で圧電素子23を封止することにより、水分などの外部環境による圧電素子23の破壊を防止することができる。なお、本実施形態では、圧電素子保持部62の内部を密封した状態としただけであるが、例えば圧電素子保持部62内の空間を真空や、窒素またはアルゴン雰囲気などとすることで圧電素子保持部62内を低湿度に保持することができ、圧電素子23の破壊をより確実に防止することができる。
【0046】
また、第1封止部61Aの圧電素子保持部62によって封止されている圧電素子23のうち、リード電極47の一方の端部は、第1封止部61Aの外側まで延びており、開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。
同様に、第2封止部61Bの圧電素子保持部62によって封止される圧電素子23のうち、リード電極47の他方の端部は、第2封止部61Bの外側まで延びており、開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。また、第3及び第4封止部の圧電素子保持部62によって封止される圧電素子23のうち、リード電極47の一部が、第3及び第4封止部の外側まで延びており、第3及び第4封止部同士の間に設けられた開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。
【0047】
また、ケース部材101のX軸方向における中央部には、Y軸方向に沿って形成される開口部102が形成されている。この開口部102は、少なくとも上記リザーバ形成基板25に形成された上記開口部60の開口領域を含む大きさとされており、図1、2に示されるようにドライバIC26の保持領域103が切欠状に形成されている。
【0048】
ドライバIC26は、例えば回路基板や駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を有するドライバICであり、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dに応じて4つ設けられている。各ドライバIC26は、4つのフレキシブル基板27A〜27Dの一方の面の所定領域(実装領域)にそれぞれフリップチップ実装されている。そして、ケース部材101に形成された上記開口部102の保持領域103の側壁面102aに放熱性樹脂65によってモールドされている。
【0049】
フレキシブル基板27は、可撓性を有したフレキシブル回路基板からなるもので、その他方の面(ドライバIC26の実装面とは反対面)側が取付部材120に接着剤等を介して取付けられた(貼り付けられた)ものとなっている。本実施形態では、2つのフレキシブル基板27が、取付部材120の底面120aから、底面120aを挟んで対向配置されるニ側面のそれぞれに沿って折り曲げられた状態に取付けられている。具体的には、フレキシブル基板27A,27Bが第1の取付部材120Aに取付けられており、フレキシブル基板27C,27Dが第2の取付部材120Bに取付けられている。
【0050】
各フレキシブル基板27A〜27Dは、図5に示すように、フィルム基材71と、フィルム基材71の一面に形成された第1配線パターン72、第2配線パターン74、グランド配線76、圧電素子23と接触して接続される端子部73をそれぞれ備えている。各フレキシブル基板27A〜27Dの端子部73側であって、上記取付部材120の底面120aに取付けられた部分は、圧電素子23のリード電極47と接続する接続部27bとなっている。すなわち、取付部材120の底面120aは接続部27bの取付面を構成している。
【0051】
フィルム基材71は、例えば厚さ25μm程度のポリイミドからなる絶縁性のフィルムであって、図7に示すように、その下面27aに、銅などの導電性材料からなる上記第1配線パターン72、第2配線パターン74、およびグランド配線76が、プリント方式により電解メッキやエッチングなどの手法によって形成されている。また、下面27aの所定領域には端子部73が形成されており、第1配線パターン72の一端に接続されている。なお、図7においてはフレキシブル基板27A,27Dを図示しているが、フレキシブル基板27B,27Cについては外部信号入力部77の延在方向が反対となる以外の構成については同様である。
【0052】
また、第1配線パターン72は、圧電素子23に対して電気的な接続に寄与しないダミーパターンを含んでいる。ダミーパターン72aとしては、フレキシブル基板27上に実装されるドライバIC26の駆動検査時に用いるものであり、圧電素子23のリード電極47に電気的に接続されることがない。そして、ダミーパターン72aは、圧電素子23に対する駆動検査等を行うための検査用のダミーパターンをなすリード電極47に接続されるようになっている。このようなダミーパターン72aは、第1配線パターン72の配列方向における接続部27bの一端側に形成されている。
【0053】
また、フレキシブル基板27A〜27Dの各下面27aの所定領域には、圧電素子23を駆動するためのドライバIC26(26A〜26D)がそれぞれ設けられており、フレキシブル基板27(27A〜27D)の各下面27aにフリップチップ実装されることにより、対応する第1配線パターン72の他端に接続されている。また、ドライバIC26とフレキシブル基板27との間には、接続強度を高めるための樹脂(接着剤)78が設けられている(図5参照)。
【0054】
フレキシブル基板27とケース部材101との間には、放熱性樹脂65(図4,5)が配置されており、これによってフレキシブル基板27に設けられたドライバIC26がケース部材101の保持領域103の側壁面102aにリザーバ形成基板25の面方向(XY平面)に対して垂直状態で保持されている(図5参照)。
【0055】
また、フレキシブル基板27には、外部コントローラCTと電気的に接続される外部信号入力部77が形成されており、ドライバIC26に接続する第2配線パターン74とグランド配線76によって構成されている。外部信号入力部77から入力された外部信号は、第2配線パターン74を介してドライバIC26へと入力される。
【0056】
上記取付部材120は、図2に示されるようにリザーバ形成基板25における開口部60、及びケース部材101における開口部102内に挿入された状態とされている。これにより、取付部材120の底面120aに設けられたフレキシブル基板27の接続部27bは、開口部60内に配置されることで、開口部60内に配置されているリード電極47と端子部73とが接続されている。
【0057】
フレキシブル基板27は、図5に示すように、接続部27bの下面側に設けられている端子部73と、開口部60の底面に配置されているリード電極47とが、例えば、異方性導電フィルム(ACF: Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(ACP: Anisotropic Conductive Paste)のような異方性導電材料79によって接続されている。
【0058】
ところで、取付部材120は、図2に示すように、一方(ヘッドの中央部側に面する側)の端部に切欠(観察手段)121が厚み方向に貫通した状態に形成されている。切欠121は、フレキシブル基板27における上記接続部27bの一部を露出させ、接続部27bの一部を観察可能としている。これにより、後述するヘッドの製造工程中にて、各フレキシブル基板27における接続部27bの状態を観察可能となっている。
【0059】
図2に示されるように、切欠121はフレキシブル基板27の接続部27bの各々に対応しており、取付部材120には2つの切欠121,121が形成されている。この切欠121,121は、取付部材120の厚み方向に貫通した状態に形成されている。
【0060】
取付部材120に切欠121が形成されていない場合、フレキシブル基板27の実装が終了した後においては、接続部27b(端子部73)とリード電極47との接続状態が取付部材120によって隠れてしまうため、確認できない。このような場合、ヘッドの組み立て終了後において、ヘッドを駆動させるまで上記接続部27bおよびリード電極47が良好に接続されているか否かが分からなかった。そのため、液滴吐出ヘッドの歩留まりを低下させる要因の一つとなっていた。
【0061】
これに対し、本実施形態においては、上述のように取付部材120に形成された切欠121によってフレキシブル基板27の各接続部27bの一部が観察可能とされているので、例えばヘッドの製造時においてフレキシブル基板27を実装した際、それぞれの接続部27bの接続状態を確認することが可能となっている。
【0062】
ここで、接続状態を確認する方法としては、例えば切欠121内に臨まれる接続部27bをCCDカメラにより撮像することにより行われる。本実施形態では、切欠121が、各フレキシブル基板27における各接続部27bの各々に対応して設けられるので、接続部27bにおける実装位置精度の検査を簡便且つ確実に行うが可能とされる。また、取付部材120に二つのフレキシブル基板27,27が取付けられているため、ヘッド製造時におけるフレキシブル基板27の取り扱いを容易なものとすることで製造プロセスが簡略化されたものとなる。
【0063】
フレキシブル基板27,27を構成しているフィルム基材71は、その膜厚が薄いことからCCDカメラの観察面と反対側に形成されている端子部73を透かした状態で確認することが可能となる。よって、端子部73及びリード電極47における平面視した状態での重なり具合(実装位置精度)、異方性導電材料79の排出状況(異方性導電材料79の量、接続部27bに掛けられた荷重の大きさ)等を確認できる。
【0064】
また、切欠121は、図7に示した各フレキシブル基板27、27の接続部27bにおけるダミーパターン72aの各々に対応する領域、すなわちダミーパターン72aに接続される端子部73を開口させる位置に配置される(図6参照)。ところで、フレキシブル基板27を実装する際、上記取付部材120を介して接続部27bとリード電極47との間に所定の圧力が加えられる。そのため、フレキシブル基板27は、取付部材120を介して押圧された状態で実装されており、上記異方性導電材料79中に含まれている導電性粒子が押圧された状態となっている。
【0065】
また、取付部材120の上面(底面120aに対向する面)には、実装時に取付部材120を介してフレキシブル基板27に荷重を掛けるための凹部168が形成されている(図1、2,4、5参照)。この凹部168に押圧ピンを当接させ、この押圧ピンを介して取付部材120に荷重を掛けることでフレキシブル基板27の接続部27bとリード電極47との接続が行われる。
【0066】
よって、取付部材120における切欠121が形成された開口領域は、切欠121が形成されていない非開口領域に比べて、低い荷重が付与された状態でフレキシブル基板27がリザーバ形成基板25上に実装されている。そのため、開口領域においては非開口領域に比べて、僅かに、接続部27bにおける端子部73とリード電極47との間における導通信頼性が低下するが、本実施形態に係る構成によれば、上述のように切欠121が圧電素子23への電気的な接続に寄与しないダミーパターン72aに対応する(接続される)端子部73を開口させるように形成されているため、導通信頼性の低下といった問題が生じることが無い。
【0067】
ここで、フレキシブル基板27、27に形成された第1配線パターン72及びリード電極47は、所定のピッチで形成されたものとなっている。よって、ダミーパターン同士の位置決めがなされれば、それ以外の第1配線パターン72及びリード電極47は互いの位置が一致した状態とされる。なお、CCDカメラを切欠121,121内に配し、接続部27bの近傍から撮像を行うようにしてもよい。
【0068】
上述のようにフレキシブル基板27とケース部材101との間に配置された放熱性樹脂65を介してドライバIC26がケース部材101に固定されている。
この構成によれば、液滴吐出ヘッド1の駆動時にドライバIC26で発生した熱を、放熱性樹脂65およびケース部材101を介して放熱させることで高い放熱特性を得ることができ、ドライバIC26を安定的に動作させることができる。
【0069】
また、上述のように取付部材120は、導電性材料(ステンレス)から構成されているため、隣接するフレキシブル基板27の各接続部27b間において電気的な短絡が生じる虞がある。そこで、取付部材120における上記接続部27bの取付面(すなわち、底面120a)には絶縁膜(不図示)が形成されている。このような絶縁膜を形成する方法として、例えばフッ素樹脂処理が用いられる。これにより、隣接するフレキシブル基板27間において電気的な短絡が生じるのを防止することができる。
【0070】
以上のように、接続部27bとリード電極47との実装部における位置精度の検査を簡便且つ確実に行うことが可能となる。よって、実装部における不良を事前に判別することが可能とされ、結果的に液滴吐出ヘッド1の歩留まりが向上し、信頼性の高いものとすることができる。
【0071】
(液滴吐出ヘッドの製造方法)
次に、上述した構成の液滴吐出ヘッド1の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、ドライバIC26と圧電素子23とを接続する手順について主に説明し、液滴吐出ヘッド1のうち、ノズル基板21、流路形成基板22、リザーバ形成基板25、ケース部材101、圧電素子23などの製造及び接続、配置作業はすでに完了しているものとする。また、フレキシブル基板の製造については図7を参照して説明する。
【0072】
まず、フレキシブル基板27を用意する。
図7に示したように、フィルム基材71の表面に、端子部73を含む第1配線パターン72、第2配線パターン74、グランド配線76など、各種配線を形成する。これらは、フィルム基材71上に、プリント方式を用いた電解メッキやエッチングなどの手法を用いて形成する。ここで、端子部73を含む配線パターン72は、ノズル開口31同士の間隔(ノズルピッチ)、すなわち圧電素子23同士の間隔に応じて精度よく形成される。
【0073】
そして、第1から第4のフレキシブル基板27A〜27Dに、第1から第4のドライバIC26A〜26Dをそれぞれ実装する。これは、第1から第4のドライバIC26A〜26Dを、第1から第4のフレキシブル基板27A〜27Dのフィルム基材71の一面(フレキシブル基板27の下面27a)の実装領域(所定領域)にそれぞれフリップチップ実装する。その後、樹脂78によって第1から第4のフレキシブル基板27A〜27Dと第1から第4のドライバIC26A〜26Dとをそれぞれ固定する。そして、各フレキシブル基板27を一点鎖線Oにて折り曲げ加工(例えば、プレス加工)を施す。
【0074】
続いて、ドライバIC26を実装したフレキシブル基板27を、接着材を介して貼り付けることで取付板120の外面に取り付ける。このときフレキシブル基板27は、取付板120の底面120aから、底面120aに隣接するニ側面側に折り曲げた状態で取付ける。具体的には、第1の取付部材120Aにフレキシブル基板27A,27Bを取付け、第2の取付部材120Bにフレキシブル基板27C,27Dを取付ける。
【0075】
続いて、各フレキシブル基板27A〜27Dが取付けられた取付部材120A,120Bの底面120a側をリザーバ形成基板25及びケース部材101の対応する開口部60及び開口部102内に挿入し、フレキシブル基板27に設けられた端子部73を圧電素子23のリード電極47に当接させ、仮接合する。なお、予め、端子部73の下面またはリード電極47の上面には、異方性導電材料79を設けておく。本実施形態では、フレキシブル基板27が取付部材120に固定されているため、実装時におけるフレキシブル基板27の取り扱いが容易となる。
【0076】
実装には、取付部材120に設けられた切欠121を利用する。具体的には、切欠121内に臨まれる接続部27bをCCDカメラで撮像することで端子部73のリード電極47に対する位置合わせを行う。本実施形態においては、取付部材120に形成された切欠121により接続部27bを観察することができるので、一台のCCDカメラによりフレキシブル基板27の位置合わせを行うことが可能となる。なお、フレキシブル基板27の接続部27bとリード電極47が形成されている基板面上にアライメントマーク(不図示)を設ける事で、端子部73とリード電極47との位置合わせを行うことができる。
【0077】
そして、上述の位置合わせを行うとともに接続部27bを押圧して端子部73をリード電極47に当接させる。具体的には、取付部材120の凹部168に押圧ピンを挿入し、この押圧ピンにより取付部材120を押圧することでフレキシブル基板27の接続部27bを押圧して端子部73をリード電極47に当接させる。
【0078】
端子部73とリード電極47との少なくとも一方には異方性導電材料79が予め設けられているので、異方性導電材料79を介在させた状態で取付部材120による押圧及び加熱を行うことで、容易に端子部73とリード電極47との電気的な接続が行われる。また、軟化した異方性導電材料79は、端子部73とリード電極47との隙間を埋めるようにして拡がることから、フレキシブル基板27の接続部27bと圧電素子23のリード電極47とを後述する本接合において強固に接続することが可能となる。
【0079】
このとき、CCDカメラにより、フィルム基材71側から接続部27bを透かした状態で観察を行い、端子部73及びリード電極47における平面視した状態での重なり具合(実装位置精度)、或いは異方性導電材料79の排出状況(異方性導電材料79の量、接続部27bに掛けられた荷重の大きさ)を確認する。これにより、接続部27bとリード電極47との位置精度の検査を簡便且つ確実に行うことができる。よって、接続部27bの端子部73とリード電極47との位置合わせを良好に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、フレキシブル基板27の端子部73と圧電素子23のリード電極47との電気的接続を行うのと同時に、フレキシブル基板27に設けられているドライバIC26をケース部材101に固定する。異方性導電材料79と同じように、予めケース部材101の開口部102の側壁面102aに放熱性樹脂65を塗布(配し)し、この放熱性樹脂65にドライバIC26をケース部材101に固定する。そして、取付部材120により加熱することで放熱性樹脂65を軟化させ、ドライバIC26をケース部材101に固定することができ、ドライバIC26における放熱性を良好なものとすることができる。なお、放熱性樹脂65は、フレキシブル基板27の端子部73が圧電素子23のリード電極47に確実に接続されるまでは硬化させないでおく。これによって、端子部73とリード電極47とを良好に接続することができる。
【0081】
このようにしてフレキシブル基板27の端子部73と圧電素子23のリード電極47の仮接合を行うとともにドライバIC26の搭載を行う。その後、所定時間放置することによって接続部27b(端子部73およびリード電極47)の本接合を行う。このようにして、第1から第4のドライバIC26B〜26Dと、対応する圧電素子23とをそれぞれ接続する。このようにして、第1から第4のドライバIC26B〜26Dと、対応する圧電素子23とをそれぞれ接続する。以上のように、液滴吐出ヘッド1を製造する。
【0082】
ところで、取付部材120における切欠121が形成された開口領域に位置する接続部27bは、切欠121が形成されていない非開口領域に位置する接続部27bに比べて、低い荷重が付与された状態でリード電極47に実装されることとなる。本実施形態では、図6に示したように切欠121が圧電素子23への電気的な接続に寄与しないダミーパターン72aに対応する(接続される)端子部73を臨ませるように形成されているため、実装時の荷重の大きさが問題となることが無い。
【0083】
なお、上述の説明では、ドライバIC26をフィルム基材71上に実装してフレキシブル基板27を形成した後、フレキシブル基板27を取付部材120に取付ける工程について説明したが、フィルム基材71を取付部材120に取り付けた後、このフィルム基材71に対してドライバIC26を実装するようにしてもよい。
【0084】
以上述べたような液滴吐出ヘッド1によれば、液滴吐出ヘッド1を製造する際、フレキシブル基板27における接続部27bの接続状態がそれぞれ観察可能とされるので、接続部27bとリード電極47との実装部における位置精度の検査を簡便且つ確実に行うができる。このようにフレキシブル基板27を実装する際に、OLB接続部の実装精度を確認できるので、接続部27bとリード電極47との間(OLB接続部)における導通不良が防止された信頼性の高い液滴吐出ヘッド1を提供できる。
【0085】
<液滴吐出装置>
次に、前述した液滴吐出ヘッド1を備えた本発明の液滴吐出装置IJの一例について、図8を参照しながら説明する。図8は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【0086】
図8において液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、駆動軸4と、ガイド軸5と、外部コントローラCTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ6とを備えている。なお、液滴吐出ヘッド1は、不図示のキャッリッジにケース部材101が固定されることで液滴吐出装置IJに取付けられている。ステージ7は、液滴吐出ヘッド1によって機能液が吐出される基板Pを支持するもので、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えたものである。液滴吐出ヘッド1のノズル開口部からは、ステージ7に支持されている基板Pに対し、機能液が吐出されるようになっている。
【0087】
駆動軸4には駆動モータ2が接続されている。駆動モータ2はステッピングモータ等からなるもので、外部コントローラCTからY軸方向の駆動信号が供給されると、駆動軸4を回転させるようになっている。駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はY軸方向に移動する。ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、駆動モータ3を備えている。駆動モータ3はステッピングモータ等からなるもので、外部コントローラCTからX軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をX軸方向に移動するようになっている。
【0088】
外部コントローラCTは、液滴吐出ヘッド1に対して液滴吐出を制御するための電圧を供給する。さらに、外部コントローラCTは、駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、駆動モータ3に対してステージ7のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0089】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しない駆動モータを備えている。この駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はガイド軸5に沿ってX軸方向に移動する。クリーニング機構8の移動も外部コントローラCTにより制御される。ヒータ6は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行うようになっている。このヒータ6の電源の投入及び遮断も、外部コントローラCTによって制御されるようになっている。
そして、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。
【0090】
このような液滴吐出装置IJにあっては、前述したように、OLB接続部が切欠121により観察可能とされることで接続部27bとリード電極47との間における導通不良が防止された信頼性の高い液滴吐出ヘッド1を備えているので、長期に亘る信頼性が確保されたものとなる。
【0091】
なお、前述した実施形態において、液滴吐出ヘッド1より吐出される機能液としては、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものとする。これにより、液滴吐出装置IJは、液滴吐出法に基づいて吐出した機能液によって、前記各デバイスを製造することができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
上記実施形態では、取付部材120に複数(二つ)のフレキシブル基板27が取付けられている場合、フレキシブル基板27の各接続部27bにそれぞれ対応する切欠121,121を形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9に示されるようにフレキシブル基板27,27が取付けられる取付部材120において、一つの開口部(切欠)122を形成するようにしてもよい。すなわち、本発明は、複数のフレキシブル基板に対し、開口部を共通に形成することもできる。この開口部122は、フレキシブル基板27、27のそれぞれにおける接続部27bの先端部(ダミーパターン72aに対応する領域)を臨ませる位置に、取付部材120の厚み方向に貫通した状態に形成される。このように開口部122を二つのフレキシブル基板27A,27Bに対応させることで、一台のCCDカメラで二箇所の接続部27bの接続状態を撮像することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、各取付部材120A,120Bにフレキシブル基板をそれぞれ二個取付けた構成について説明したが、取付部材にフレキシブル基板を3個以上取り付けるようにしてもよい。この場合、フレキシブル基板の数に応じて、取付部材の形状、リザーバ形成基板25の形状が適宜変更される。
【0095】
また、上記実施形態では、フレキシブル基板27における接続部27bを観察可能とする観察手段として取付部材120に形成された切欠121を例示したが、切欠121に埋め込まれた透明部材を介して接続部27bを観察するようにしてもよい。すなわち、取付部材120の一部を構成する透明部材を観察手段として用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】液滴吐出ヘッドの一実施形態に係る構成を示す外観斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッドをノズル開口側から見た斜視図の一部破断図である。
【図4】図1のA−A線矢視断面図である。
【図5】OLB接続部の要部を拡大して示す図である。
【図6】フレキシブル基板を支持する取付部材の構成を示す斜視図である。
【図7】フレキシブル基板の平面図である。
【図8】液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図9】液滴吐出装置の変形例に係る構成を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1…液滴吐出ヘッド、22…流路形成基板(第1基板)、23…圧電素子(駆動素子)、25…リザーバ形成基板(第2基板)、26…ドライバIC(駆動回路部)、27…フレキシブル基板、27b…接続部、47…リード電極(端子部)、60…開口部、65…放熱性樹脂、72a…ダミーパターン、72…配線パターン、101…ケース部材、120…取付部材、120a…底面(取付面)、121…切欠(観察手段)、122…開口部(切欠)、IJ…液滴吐出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
該第1基板上に設けられた駆動素子と、
前記第1基板の前記駆動素子側に設けられた第2基板と、
駆動回路部が実装されたフレキシブル基板と、
外面に取付けられた前記フレキシブル基板を前記第2基板の開口部に配置して、前記開口部内に露出している前記駆動素子の端子部と前記駆動回路部とを電気的に接続させる取付部材と、を備え、
前記取付部材には、前記フレキシブル基板の前記駆動素子に対する接続部の少なくとも一部を観察可能とする観察手段が設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記取付部材の一部が透明部材からなり、前記観察手段が前記透明部材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記観察手段は、前記取付部材に形成された切欠であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記切欠は、前記取付部材の厚み方向に貫通した状態に形成されることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記接続部には、ダミーパターンを含む配線パターンが形成されており、
前記切欠は、前記ダミーパターンに対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記取付部材の前記接続部の取付面に絶縁処理が施されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2基板の前記第1基板と反対側に配置されるケース部材を備え、
前記駆動回路が放熱性樹脂を介して前記ケース部材に固定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記取付部材に複数の前記フレキシブル基板が取付けられており、
前記観察手段は前記各フレキシブル基板における前記接続部の各々に対応するように前記取付部材に設けられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−36087(P2010−36087A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200678(P2008−200678)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】