液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置
【課題】清掃効果の高い液滴吐出ヘッドの清掃装置を提供する。
【解決手段】洗浄液供給機構を備えた洗浄ノズルに洗浄液排出口を設けた液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【解決手段】洗浄液供給機構を備えた洗浄ノズルに洗浄液排出口を設けた液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置に係り、特に固体微粒子を混合、分散した塗布液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式はオリフィスから必要なときに液滴を吐出できることから、任意のパターンを容易に形成でき、しかも無駄に排出される溶液が少ないため環境面からも有利である。
【0003】
このインクジェット方式による液滴吐出装置の応用例として、液晶表示装置のカラーフィルタ製造技術がある。このカラーフィルタは一般には、現像、露光、エッチングなどの多くのフォトリソグラフィ工程をR,G,Bの3色毎に繰返すことによって製造していたため、多くのプロセスが必要であった。これに対してインクジェット方式でカラーフィルタを製造する場合、R,G,Bの3色のインクを各インクジェットヘッドに充填し、必要な位置に必要な量だけインクを吐出して、硬化させるだけで製造できる。
【0004】
また液晶表示装置では、2枚の液晶基板の間隔を一定に維持するため、微粒子状のスペーサを液晶基板の間に配置している。従来はスプレー式散布装置などを用いてスペーサを液晶基板上に散布していたが、この方法はスペーサが不均一に散布され易く、液晶基板の間隔を一定に維持できず、表示品質の低下を招く。
【0005】
このような欠点を解消するため、インクジェット方式による液滴吐出装置でスペーサを含有した塗布液を液晶基板上に吐出して、スペーサを付着することが行なわれている。この液滴吐出装置によれば、所定の位置にスペーサを配置することができ、また多数のオリフィスを有する吐出ヘッドを用いれば、多数の指定位置に同時にスペーサを着弾することができ、生産効率が良好である。
【0006】
このインクジェット方式にはオンデマンドインクジェット方式とコンティニアンスインクジェット方式とがあり、前者は液滴を高精細に着弾することができ、システムが簡単であるなどの特長を有している。前記オンデマンドインクジェット方式では、オリフィスの近辺を清掃する吐出ヘッドの清掃装置が必要である。この清掃装置により、乾燥などによって高粘度化した塗布液や、変質した塗布液や、あるいはオリフィスの近辺に付着した異物などを除去して、液滴吐出の安定性を確保する必要がある。
【0007】
このような吐出ヘッドの清掃装置では、吐出ヘッドのオリフィスが形成されている外面に対して吸引ノズルの先端開口部を若干の隙間をおいて配置する。そして負圧発生源から吸引ノズルを通して空気を吸引することにより、吸引ノズルの先端開口部付近に吸引気流を形成して、この吸引気流によりオリフィス内のインクを吸引、排出する機構になっている。そして前記吸引ノズルは、その吸引開口部の周囲に洗浄液吐出開口部を設け、負圧発生源で前記吸引ノズルの吸引開口部から吸引することで前記洗浄液吐出開口部から洗浄液を引き出し、その引き出した洗浄液をオリフィスの周辺に接触させて、接触洗浄液を吸引ノズルから吸引回収する機構になっている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2006−112289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで前記特許文献1記載の清掃装置では、洗浄ノズルが内管と外管の二重管構造になっており、その内管と外管の隙間から洗浄液を供給する構造となっている。この構造では、増粘したインクの成分、あるいは凝集した固体微粒子が内管と外管の底部に堆積し最終的に隙間を塞いでしまい十分に洗浄液が供給されず、液滴吐出ヘッドのオリフィス面を綺麗に清掃できなくなってしまう不具合があった。
【0009】
本発明の目的は、清掃効果の高い液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明は、洗浄ノズルと、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄ノズルの内部の廃液流通空間を吸引する吸引手段とを備え、液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面に対して前記洗浄ノズルの先端開口部を対向させ、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に前記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しながら、前記吸引手段により前記洗浄ノズルの廃液流通空間を吸引して、前記液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面を清掃し、廃液を前記廃液流通空間を通して排出する液滴吐出ヘッドの清掃装置を対象とするものである。
【0011】
そして、本発明の第1の手段は、前記洗浄ノズルが内管と外管の二重管構造になっており、前記内管と外管の間に洗浄液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間に前記洗浄液供給手段が接続され、前記内管の内側に前記廃液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間の外管の底部外側面に洗浄液排出口が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の手段は、前記第1の手段において、前記洗浄ノズルの先端が液滴吐出ヘッドにオリフィス面に対し非接触であり、その間隔が0.01〜0.05mmの範囲、前記吸引手段による洗浄ノズル内の吸引圧力が−9kPa〜−10kPaの範囲、前記洗浄液供給量が0.15ml/min〜1.6ml/minの範囲、にそれぞれ規制されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第3の手段は、前記第1または第2の手段において、前記液滴吐出ヘッドが、固体微粒子を混合分散した液滴を吐出する液滴吐出ヘッドであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第4の手段は、前記第1ないし第3の手段において、前記洗浄液をオリフィス形成面の清掃時以外に、連続的あるいは定期的に供給することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第5の手段は、液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を着弾する被着体と前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動する移動手段と、前記液滴吐出ヘッドの待機位置に設けられた清掃装置とを備えた液滴吐出装置において、前記清掃装置が前記第1ないし第4の手段の清掃装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、洗浄液流通空間の外管の底部外側面に洗浄液排出口をもうけることで増粘したインクの成分、あるいは凝集した固体微粒子が洗浄液流通空間の底部に堆積しない為、定期清掃等のメンテナンスをする必要がなく常に安定的に洗浄液の供給が可能であり、清掃効果の高い液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図と共に説明する。図9は本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体の概略構成図、図10はその装置に搭載する吐出ヘッドの一部拡大断面図である。 液滴吐出装置は図9に示すように、マザー基板1を保持する基板ホルダー2がY方向に往復移動可能に設置され、マザー基板1の上方に吐出ヘッド3がZ方向に往復移動可能に設置されている。
【0018】
吐出ヘッド3はZ方向の移動ガイド5を介してX方向の移動ガイド4に支持されているとともに、フレキシブルな溶液供給パイプ6を介して溶液タンク(図示せず)に接続されている。吐出ヘッド3の待機位置にヘッド清掃装置7が設けられている。
【0019】
吐出ヘッド3は図10に示すような断面構造を有している。図中の11はオリフィス、12は加圧室、13は振動板、14は圧電素子、15a,15bは信号入力端子、16は圧電素子固定板、17は共通塗布液供給管18と加圧室12に連通して加圧室12への塗布液の流入を制御するリストリクタ、18は共通塗布液供給管、19はフィルタ、20は振動板13と圧電素子14を接着する接着剤、21はリストリクタプレート、22は加圧室プレート、23はオリフィスプレート、24は振動板13を補強する支持板、25はハウジング、26はフィルタプレートである。
【0020】
スペーサ微粒子を混合分散した塗布液は吐出ヘッド3の上流側から下流側へ向かって流れ、共通塗布液供給管18の途中で、フィルタ19を通過して、リストリクタ17、加圧室12、オリフィス11の順に流れる。圧電素子14は信号入力端子15a,15b間に電圧が印加れたときに伸縮し、電圧を印加しないと元の状態に戻る。この圧電素子14の変形により加圧室12内の塗布液に圧力が加わり、オリフィス11からスペーサ微粒子を含有した液滴が吐出する。
【0021】
吐出ヘッド3は図9に示すようにX方向移動ガイド4ならびにZ方向移動ガイド5に沿ってX方向ならびにZ方向に移動でき、さらに基板ホルダー2上のマザー基板1はY方向に移動できるから、ヘッド駆動制御部(図示せず)からの信号に基いてマザー基板1上の任意の位置にスペーサ微粒子を含有した塗布液を吐出することができる。吐出ヘッド3のX方向とZ方向の移動ならびにマザー基板1のY方向の移動は、それぞれエンコーダ付きのモータ(図示せず)によってなされる。
【0022】
図11は、吐出ヘッド3とスペーサを付着する液晶用カラーフィルタ基板27との関係を示す平面図である。この基板27は、ガラス板からなる大きなマザー基板1(図9参照)上に所定の間隔をおいて複数区画形成されている。同図に示すように基板27の表面にはR,G,Bの画素セル28が規則正しく成形されている。各画素セル28を分割するように網目状に遮光膜29が形成され、遮光膜29の交叉部分に複数個(例えば3〜5個)のスペーサ微粒子からなるスペーサ集合体30が付着している。
【0023】
吐出ヘッド3上に多数のオリフィス11がP1のピッチで一直線上に形成されているのに対して、基板27上に付着されるスペーサ集合体30のピッチP2は液晶表示装置の種類などによって、オリフィス11のピッチP1と異なることがある。その場合吐出ヘッド3の傾斜角度θを調整して、スペーサ集合体30のピッチP2に合わせている。
【0024】
図1は、前記ヘッド清掃装置7の概略構成図である。ヘッド清掃装置7は、洗浄ノズル31と、イソプロピールアルコールなどの有機溶剤からなる洗浄液32を収容する洗浄液タンク33と、洗浄液32を洗浄液タンク33から洗浄ノズル31へ供給する洗浄液ポンプ34と、洗浄ノズル31から回収された廃液を収容する廃液タンク33と、前記洗浄ノズル31を吸引する吸引手段36と、前記廃液タンク33の内圧を測定する圧力センサからなる内圧測定手段37と、吐出ヘッド3に対する洗浄ノズル31の離間距離を調整する離間距離調整手段38と、洗浄ノズル31を吐出ヘッド3に沿って水平方向に移動するノズル移動手段39と、前記離間距離調整手段38ならびにノズル移動手段39の動作を制御する制御手段40とを備えている。
【0025】
図中の41は塗布液を収容して吐出ヘッド3に接続された塗布液タンク、42はその塗布液タンク41の内圧を調整する内圧調整手段である。
【0026】
前記洗浄ノズル31は内管43と外管44の二重管構造になっており、内管43と外管44の間に洗浄液流通空間45が形成され、内管43の内側に廃液流通空間46が形成されている。
【0027】
図2は、洗浄ノズル31の先端部を示す拡大平面図である。同図に示すように、内管43の外周から内側の廃液流通空間46に向けて複数本の溝47が内管43の周方向に沿って等間隔に形成されている。この溝47は洗浄ノズル31の外周から中心Oに向けて径方向に延びているのではなく、内管43の外周部の起点Aから中心Oに向けて延びる仮想線に対して角度αだけ傾斜するように延びている。すなわち、前記各溝47は、内管43の中方向に対して一定方向に傾斜して設けられている。角度αを例えば10度〜30度に範囲内で設定することにより、溝47は内管43の内周面に対してほぼ接線方向に延びることになる。
【0028】
なおこの図では、内管43と外管44の肉厚部分を洗浄液流通空間45、廃液流通空間46ならびに溝47と視覚上区別するために、内管43と外管44の肉厚部分に斜線を付している。
【0029】
図3は、オリフィス11の近辺を清掃する状態を示す図である。同図に示すように吐出ヘッド3内には、塗布液供給手段(塗布液タンク41、内圧調整手段42、溶液供給パイプ6などで構成)により塗布液8が充填されている。この塗布液8には、スペーサ微粒子(ビーズ)などの固体微粒子9が混合、分散されている。
【0030】
固体微粒子9の粒径は例えばVA方式やTN方式のように液晶表示装置の種類などによって異なるが、通常、2μm〜5μm程度のものが用いられる。この固体微粒子9は、有機液体、水あるいは有機液体と水との混合液などからなる分散液に、例えば0.5重量%〜20重量%程度の濃度で分散される。必要に応じて固体微粒子9の分散性を良好に維持するための分散剤、あるいは固体微粒子9を基板表面に接着する接着剤などを添加することもできる。
【0031】
本実施形態では、水とエチレングリコールを混合して安定吐出が可能なように粘度を10mPa・s程度に調整した分散液を用い、これに直径が3.5μmのプラスチックビーズを1.2重量%分散させたものを塗布液8として用いた。
【0032】
前述の吐出ヘッド3内への塗布液8の充填により図1ならびに図3に示すように、吐出ヘッド3の外表面に塗布液8が液滴となって付着することがあり、この付着液滴10などを清掃装置によって除去する。
【0033】
この清掃動作は、まず、多数のオリフィス11を列設したオリフィスプレート23の外表面に洗浄ノズル31の先端部を近づけ、前記離間距離調整手段38によりオリフィスプレート23と洗浄ノズル31との距離を調整する。この離間距離調整手段38は、例えばステッピングモータおよび移動ガイドなどから構成され、内圧測定手段37によって検出した廃液タンク33内の圧力値を本発明における適正な圧力範囲へフィードバックすべく、洗浄ノズル31が装着された移動ガイドを駆動することによりってオリフィスプレート23と洗浄ノズル31との距離を調整することができる。両者の離間距離については、後で説明する。
【0034】
そして洗浄液ポンプ34を駆動して洗浄液32を洗浄液流通空間45に供給するとともに、吸引手段36を動作させて廃液流通空間46を吸引する。この吸引で廃液流通空間46内が負圧になり、洗浄液32は洗浄液排出口50から排出することなく洗浄液流通空間45の開口部から引き出され、洗浄液流48(図3参照)となってオリフィス11やその周辺を強力に洗浄することができる。洗浄後の洗浄液は廃液となって即座に廃液流通空間46を通り、廃液タンク35に導入される。また、清掃動作が終了し、オリフィスプレート23から洗浄ノズル31が離れると吸引抵抗がなくなり廃液流通空間46内の負圧が弱まることで洗浄液流48が減少し、洗浄液流通空間45内に滞留した塗布液8と洗浄液32が洗浄液流通空間45の底部に停滞することなく洗浄液排出口50から排出される。これにより塗布液8に混合されている固体微粒子9などが沈降して洗浄液供給口49を塞いでしまう等の不具合を防止することが出来る。また、清掃動作時以外にも連続的に洗浄液32を供給すれば、詰り防止にはより効果的であるが、洗浄液32を節約する為に、定期的、例えば数分間あるいは数時間毎に数回程度の割合で少量の洗浄液32を供給することでも良い。
【0035】
洗浄ノズル31の先端部には複数本の溝47(図2参照)が形成されているため、洗浄液流48は主に溝47に集中するとともに、その溝47は洗浄ノズル31の中心方向に対して一定角度(α)傾斜しているから、図2に示すように前記廃液は廃液流通空間46内で旋回エネルギーが付与されて渦流が形成される。この洗浄液流48の集中と渦流の形成で、オリフィスプレート23の表面に付着している液滴10はもちろんのこと、オリフィスプレート23の表面に付着している固形物の剥離が促進され、しかも液中に含まれている固体微粒子9は転がりながら吸引、除去される。
【0036】
洗浄ノズル31はノズル移動手段39によってオリフィスプレート23上を移動するから、洗浄ノズル31の先端開口部がオリフィス11と対向した位置に到達すると、オリフィス11内で乾燥により高粘度化した塗布液8が固体微粒子9と共に吸い出されて除去され、パージ動作も同時に行なわれる。
【0037】
図4は、洗浄液であるイソプロピールアルコール(IPA)の供給流量を種々変えた場合の吸引圧力(負圧)と固形物付着率との関係を示す特性図である。固形物付着率は、ヘッド表面のオリフィス中央付近をキーエンス製マイクロスコープVH−5910で取り込み、その画像を1200dpiに変更した後、白色部分(固形物付着部分)を2値化して抽出し、その画素をカウントして固形物付着画素数を求める。そしては、前述のようにして取り込んだ画像の画素数に対する前記固形物付着画素数の割合を固形物付着率として求めたものである。
【0038】
この図から明らかなように、吸引圧力が−9kPaよりも低くてもまた−10kPaよりも高くても固形物付着率は高く、しかもIPA供給流量によって固形物付着率が違っている。これに対して吸引圧力を−9kPa〜−10kPaの範囲、好ましくは−9kPa〜−9.5kPaの範囲に規制すれば、いずれのIPA供給流量のものでも固形物付着率が低いことが分かる。
【0039】
図5は、オリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離Dと固形物付着率との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、離間距離Dが0.06mm以上になると、いずれのIPA供給流量のものでも固形物付着率が高い。これに対して離間距離Dを0.01mm〜0.05mmの範囲、好ましくは0.02mm〜0.05mmの範囲に規制したものは固形物付着率が低い。その中でもIPA供給流量が1.6ml/min未満のもの、すなわちIPA供給流量が0.2ml/min〜1.0ml/minの範囲に規制されたものは特に固形物付着率が低い。
【0040】
図6は、各IPA供給流量におけるオリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離Dと吸引圧力との関係を示す特性図で、前記離間距離Dに対して最適な吸引圧力がプロットされている。この図から明らかなように、各IPA供給流量において前記離間距離Dと吸引圧力との間には相関関係があることが分かる。
【0041】
図7は、IPAを供給しない場合(IPA供給流量=0ml/min 黒菱形印)を併記した吸引圧力と固形物付着率との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、IPAを供給しない場合は固形物付着率が2%〜10%と高く、洗浄剤を併用する効果が顕著に現れている。
【0042】
図8は、洗浄ノズル31の先端部の変形例を示す拡大平面図である。図2に示す洗浄ノズル31と相違する点は、外管44の外周から内管43を通り内側の廃液流通空間46に向けて複数本の溝47が形成されている点である。
【0043】
本構成によれば、外管44の外部から廃液流通空間46内に外気を吸引することとなり、この外気が気流となって内管43内に入って行くため、内管43内の渦流の力が増し、オリフィスプレート23の洗浄効率が向上する。但し、管内を負圧にするためには吸引手段36の負荷が大きくなる。
【0044】
実施形態では洗浄液としてイソプロピールアルコールを使用したが、その他例えばメタノール、エタノールなどの液体を洗浄液として用いることもできる。
【0045】
実施形態では固体微粒子を混合分散した塗布液を吐出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固体微粒子を含有しない塗布液を吐出する場合にも適用可能である。
【0046】
また前記実施形態では液晶表示装置の製造の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばエレクトロルミネッセンスの製造など他の技術分野においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るヘッド清掃装置の概略構成図である。
【図2】そのヘッド清掃装置における洗浄ノズルの先端部を示す拡大平面図である。
【図3】そのヘッド清掃装置でオリフィスの近辺を清掃する状態を示す図である。
【図4】IPAの供給流量を種々変えた場合の吸引圧力と固形物付着率との関係を示す特性図である。
【図5】オリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離と固形物付着率との関係を示す特性図である。
【図6】各IPA供給流量におけるオリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離と吸引圧力との関係を示す特性図である。
【図7】IPAを供給しない場合を併記した吸引圧力と固形物付着率との関係を示す特性図である。
【図8】洗浄ノズルの先端部の変形例を示す拡大平面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体の概略構成図である。
【図10】その液滴吐出装置に搭載する吐出ヘッドの一部拡大断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る吐出ヘッドとスペーサを付着する液晶用カラーフィルタ基板との関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:マザー基板、2:基板ホルダー、3:吐出ヘッド、4:X方向移動ガイド、5:Z
方向移動ガイド、6:溶液供給パイプ、7:ヘッド清掃装置、8:塗布液、9:固体微粒
子、10:付着液滴、11:オリフィス、12:加圧室、13:振動板、14:圧電素子
、15:信号入力端子、16:圧電素子固定板、17:リストリクタ、18:共通塗布液
供給管、19:フィルタ、20:接着剤、21:リストリクタプレート、22:加圧室プ
レート、23:オリフィスプレート、24:支持板、25:ハウジング、26:フィルタ
プレート、27:液晶用カラーフィルタ基板、28:画素セル、29:遮光膜、30:ス
ペーサ集合体、31:洗浄ノズル、32:洗浄液、33:洗浄液タンク、34:洗浄液ポ
ンプ、35:廃液タンク、36:吸引手段、37:内圧測定手段、38:里間距離調整手
段、39:ノズル移動手段、40:制御手段、41:塗布液タンク、42:内圧調整手段
、43:内管、44:外管、45:洗浄液流通空間、46:廃液流通空間、47:溝、4
8:洗浄液流、49:洗浄液供給口、50:洗浄液排出口、O:洗浄ノズルの中心、A:溝の外周部起点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置に係り、特に固体微粒子を混合、分散した塗布液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドの清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式はオリフィスから必要なときに液滴を吐出できることから、任意のパターンを容易に形成でき、しかも無駄に排出される溶液が少ないため環境面からも有利である。
【0003】
このインクジェット方式による液滴吐出装置の応用例として、液晶表示装置のカラーフィルタ製造技術がある。このカラーフィルタは一般には、現像、露光、エッチングなどの多くのフォトリソグラフィ工程をR,G,Bの3色毎に繰返すことによって製造していたため、多くのプロセスが必要であった。これに対してインクジェット方式でカラーフィルタを製造する場合、R,G,Bの3色のインクを各インクジェットヘッドに充填し、必要な位置に必要な量だけインクを吐出して、硬化させるだけで製造できる。
【0004】
また液晶表示装置では、2枚の液晶基板の間隔を一定に維持するため、微粒子状のスペーサを液晶基板の間に配置している。従来はスプレー式散布装置などを用いてスペーサを液晶基板上に散布していたが、この方法はスペーサが不均一に散布され易く、液晶基板の間隔を一定に維持できず、表示品質の低下を招く。
【0005】
このような欠点を解消するため、インクジェット方式による液滴吐出装置でスペーサを含有した塗布液を液晶基板上に吐出して、スペーサを付着することが行なわれている。この液滴吐出装置によれば、所定の位置にスペーサを配置することができ、また多数のオリフィスを有する吐出ヘッドを用いれば、多数の指定位置に同時にスペーサを着弾することができ、生産効率が良好である。
【0006】
このインクジェット方式にはオンデマンドインクジェット方式とコンティニアンスインクジェット方式とがあり、前者は液滴を高精細に着弾することができ、システムが簡単であるなどの特長を有している。前記オンデマンドインクジェット方式では、オリフィスの近辺を清掃する吐出ヘッドの清掃装置が必要である。この清掃装置により、乾燥などによって高粘度化した塗布液や、変質した塗布液や、あるいはオリフィスの近辺に付着した異物などを除去して、液滴吐出の安定性を確保する必要がある。
【0007】
このような吐出ヘッドの清掃装置では、吐出ヘッドのオリフィスが形成されている外面に対して吸引ノズルの先端開口部を若干の隙間をおいて配置する。そして負圧発生源から吸引ノズルを通して空気を吸引することにより、吸引ノズルの先端開口部付近に吸引気流を形成して、この吸引気流によりオリフィス内のインクを吸引、排出する機構になっている。そして前記吸引ノズルは、その吸引開口部の周囲に洗浄液吐出開口部を設け、負圧発生源で前記吸引ノズルの吸引開口部から吸引することで前記洗浄液吐出開口部から洗浄液を引き出し、その引き出した洗浄液をオリフィスの周辺に接触させて、接触洗浄液を吸引ノズルから吸引回収する機構になっている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2006−112289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで前記特許文献1記載の清掃装置では、洗浄ノズルが内管と外管の二重管構造になっており、その内管と外管の隙間から洗浄液を供給する構造となっている。この構造では、増粘したインクの成分、あるいは凝集した固体微粒子が内管と外管の底部に堆積し最終的に隙間を塞いでしまい十分に洗浄液が供給されず、液滴吐出ヘッドのオリフィス面を綺麗に清掃できなくなってしまう不具合があった。
【0009】
本発明の目的は、清掃効果の高い液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明は、洗浄ノズルと、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄ノズルの内部の廃液流通空間を吸引する吸引手段とを備え、液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面に対して前記洗浄ノズルの先端開口部を対向させ、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に前記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しながら、前記吸引手段により前記洗浄ノズルの廃液流通空間を吸引して、前記液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面を清掃し、廃液を前記廃液流通空間を通して排出する液滴吐出ヘッドの清掃装置を対象とするものである。
【0011】
そして、本発明の第1の手段は、前記洗浄ノズルが内管と外管の二重管構造になっており、前記内管と外管の間に洗浄液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間に前記洗浄液供給手段が接続され、前記内管の内側に前記廃液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間の外管の底部外側面に洗浄液排出口が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の手段は、前記第1の手段において、前記洗浄ノズルの先端が液滴吐出ヘッドにオリフィス面に対し非接触であり、その間隔が0.01〜0.05mmの範囲、前記吸引手段による洗浄ノズル内の吸引圧力が−9kPa〜−10kPaの範囲、前記洗浄液供給量が0.15ml/min〜1.6ml/minの範囲、にそれぞれ規制されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第3の手段は、前記第1または第2の手段において、前記液滴吐出ヘッドが、固体微粒子を混合分散した液滴を吐出する液滴吐出ヘッドであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第4の手段は、前記第1ないし第3の手段において、前記洗浄液をオリフィス形成面の清掃時以外に、連続的あるいは定期的に供給することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第5の手段は、液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を着弾する被着体と前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動する移動手段と、前記液滴吐出ヘッドの待機位置に設けられた清掃装置とを備えた液滴吐出装置において、前記清掃装置が前記第1ないし第4の手段の清掃装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、洗浄液流通空間の外管の底部外側面に洗浄液排出口をもうけることで増粘したインクの成分、あるいは凝集した固体微粒子が洗浄液流通空間の底部に堆積しない為、定期清掃等のメンテナンスをする必要がなく常に安定的に洗浄液の供給が可能であり、清掃効果の高い液滴吐出ヘッドの清掃装置ならびにそれを備えた液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図と共に説明する。図9は本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体の概略構成図、図10はその装置に搭載する吐出ヘッドの一部拡大断面図である。 液滴吐出装置は図9に示すように、マザー基板1を保持する基板ホルダー2がY方向に往復移動可能に設置され、マザー基板1の上方に吐出ヘッド3がZ方向に往復移動可能に設置されている。
【0018】
吐出ヘッド3はZ方向の移動ガイド5を介してX方向の移動ガイド4に支持されているとともに、フレキシブルな溶液供給パイプ6を介して溶液タンク(図示せず)に接続されている。吐出ヘッド3の待機位置にヘッド清掃装置7が設けられている。
【0019】
吐出ヘッド3は図10に示すような断面構造を有している。図中の11はオリフィス、12は加圧室、13は振動板、14は圧電素子、15a,15bは信号入力端子、16は圧電素子固定板、17は共通塗布液供給管18と加圧室12に連通して加圧室12への塗布液の流入を制御するリストリクタ、18は共通塗布液供給管、19はフィルタ、20は振動板13と圧電素子14を接着する接着剤、21はリストリクタプレート、22は加圧室プレート、23はオリフィスプレート、24は振動板13を補強する支持板、25はハウジング、26はフィルタプレートである。
【0020】
スペーサ微粒子を混合分散した塗布液は吐出ヘッド3の上流側から下流側へ向かって流れ、共通塗布液供給管18の途中で、フィルタ19を通過して、リストリクタ17、加圧室12、オリフィス11の順に流れる。圧電素子14は信号入力端子15a,15b間に電圧が印加れたときに伸縮し、電圧を印加しないと元の状態に戻る。この圧電素子14の変形により加圧室12内の塗布液に圧力が加わり、オリフィス11からスペーサ微粒子を含有した液滴が吐出する。
【0021】
吐出ヘッド3は図9に示すようにX方向移動ガイド4ならびにZ方向移動ガイド5に沿ってX方向ならびにZ方向に移動でき、さらに基板ホルダー2上のマザー基板1はY方向に移動できるから、ヘッド駆動制御部(図示せず)からの信号に基いてマザー基板1上の任意の位置にスペーサ微粒子を含有した塗布液を吐出することができる。吐出ヘッド3のX方向とZ方向の移動ならびにマザー基板1のY方向の移動は、それぞれエンコーダ付きのモータ(図示せず)によってなされる。
【0022】
図11は、吐出ヘッド3とスペーサを付着する液晶用カラーフィルタ基板27との関係を示す平面図である。この基板27は、ガラス板からなる大きなマザー基板1(図9参照)上に所定の間隔をおいて複数区画形成されている。同図に示すように基板27の表面にはR,G,Bの画素セル28が規則正しく成形されている。各画素セル28を分割するように網目状に遮光膜29が形成され、遮光膜29の交叉部分に複数個(例えば3〜5個)のスペーサ微粒子からなるスペーサ集合体30が付着している。
【0023】
吐出ヘッド3上に多数のオリフィス11がP1のピッチで一直線上に形成されているのに対して、基板27上に付着されるスペーサ集合体30のピッチP2は液晶表示装置の種類などによって、オリフィス11のピッチP1と異なることがある。その場合吐出ヘッド3の傾斜角度θを調整して、スペーサ集合体30のピッチP2に合わせている。
【0024】
図1は、前記ヘッド清掃装置7の概略構成図である。ヘッド清掃装置7は、洗浄ノズル31と、イソプロピールアルコールなどの有機溶剤からなる洗浄液32を収容する洗浄液タンク33と、洗浄液32を洗浄液タンク33から洗浄ノズル31へ供給する洗浄液ポンプ34と、洗浄ノズル31から回収された廃液を収容する廃液タンク33と、前記洗浄ノズル31を吸引する吸引手段36と、前記廃液タンク33の内圧を測定する圧力センサからなる内圧測定手段37と、吐出ヘッド3に対する洗浄ノズル31の離間距離を調整する離間距離調整手段38と、洗浄ノズル31を吐出ヘッド3に沿って水平方向に移動するノズル移動手段39と、前記離間距離調整手段38ならびにノズル移動手段39の動作を制御する制御手段40とを備えている。
【0025】
図中の41は塗布液を収容して吐出ヘッド3に接続された塗布液タンク、42はその塗布液タンク41の内圧を調整する内圧調整手段である。
【0026】
前記洗浄ノズル31は内管43と外管44の二重管構造になっており、内管43と外管44の間に洗浄液流通空間45が形成され、内管43の内側に廃液流通空間46が形成されている。
【0027】
図2は、洗浄ノズル31の先端部を示す拡大平面図である。同図に示すように、内管43の外周から内側の廃液流通空間46に向けて複数本の溝47が内管43の周方向に沿って等間隔に形成されている。この溝47は洗浄ノズル31の外周から中心Oに向けて径方向に延びているのではなく、内管43の外周部の起点Aから中心Oに向けて延びる仮想線に対して角度αだけ傾斜するように延びている。すなわち、前記各溝47は、内管43の中方向に対して一定方向に傾斜して設けられている。角度αを例えば10度〜30度に範囲内で設定することにより、溝47は内管43の内周面に対してほぼ接線方向に延びることになる。
【0028】
なおこの図では、内管43と外管44の肉厚部分を洗浄液流通空間45、廃液流通空間46ならびに溝47と視覚上区別するために、内管43と外管44の肉厚部分に斜線を付している。
【0029】
図3は、オリフィス11の近辺を清掃する状態を示す図である。同図に示すように吐出ヘッド3内には、塗布液供給手段(塗布液タンク41、内圧調整手段42、溶液供給パイプ6などで構成)により塗布液8が充填されている。この塗布液8には、スペーサ微粒子(ビーズ)などの固体微粒子9が混合、分散されている。
【0030】
固体微粒子9の粒径は例えばVA方式やTN方式のように液晶表示装置の種類などによって異なるが、通常、2μm〜5μm程度のものが用いられる。この固体微粒子9は、有機液体、水あるいは有機液体と水との混合液などからなる分散液に、例えば0.5重量%〜20重量%程度の濃度で分散される。必要に応じて固体微粒子9の分散性を良好に維持するための分散剤、あるいは固体微粒子9を基板表面に接着する接着剤などを添加することもできる。
【0031】
本実施形態では、水とエチレングリコールを混合して安定吐出が可能なように粘度を10mPa・s程度に調整した分散液を用い、これに直径が3.5μmのプラスチックビーズを1.2重量%分散させたものを塗布液8として用いた。
【0032】
前述の吐出ヘッド3内への塗布液8の充填により図1ならびに図3に示すように、吐出ヘッド3の外表面に塗布液8が液滴となって付着することがあり、この付着液滴10などを清掃装置によって除去する。
【0033】
この清掃動作は、まず、多数のオリフィス11を列設したオリフィスプレート23の外表面に洗浄ノズル31の先端部を近づけ、前記離間距離調整手段38によりオリフィスプレート23と洗浄ノズル31との距離を調整する。この離間距離調整手段38は、例えばステッピングモータおよび移動ガイドなどから構成され、内圧測定手段37によって検出した廃液タンク33内の圧力値を本発明における適正な圧力範囲へフィードバックすべく、洗浄ノズル31が装着された移動ガイドを駆動することによりってオリフィスプレート23と洗浄ノズル31との距離を調整することができる。両者の離間距離については、後で説明する。
【0034】
そして洗浄液ポンプ34を駆動して洗浄液32を洗浄液流通空間45に供給するとともに、吸引手段36を動作させて廃液流通空間46を吸引する。この吸引で廃液流通空間46内が負圧になり、洗浄液32は洗浄液排出口50から排出することなく洗浄液流通空間45の開口部から引き出され、洗浄液流48(図3参照)となってオリフィス11やその周辺を強力に洗浄することができる。洗浄後の洗浄液は廃液となって即座に廃液流通空間46を通り、廃液タンク35に導入される。また、清掃動作が終了し、オリフィスプレート23から洗浄ノズル31が離れると吸引抵抗がなくなり廃液流通空間46内の負圧が弱まることで洗浄液流48が減少し、洗浄液流通空間45内に滞留した塗布液8と洗浄液32が洗浄液流通空間45の底部に停滞することなく洗浄液排出口50から排出される。これにより塗布液8に混合されている固体微粒子9などが沈降して洗浄液供給口49を塞いでしまう等の不具合を防止することが出来る。また、清掃動作時以外にも連続的に洗浄液32を供給すれば、詰り防止にはより効果的であるが、洗浄液32を節約する為に、定期的、例えば数分間あるいは数時間毎に数回程度の割合で少量の洗浄液32を供給することでも良い。
【0035】
洗浄ノズル31の先端部には複数本の溝47(図2参照)が形成されているため、洗浄液流48は主に溝47に集中するとともに、その溝47は洗浄ノズル31の中心方向に対して一定角度(α)傾斜しているから、図2に示すように前記廃液は廃液流通空間46内で旋回エネルギーが付与されて渦流が形成される。この洗浄液流48の集中と渦流の形成で、オリフィスプレート23の表面に付着している液滴10はもちろんのこと、オリフィスプレート23の表面に付着している固形物の剥離が促進され、しかも液中に含まれている固体微粒子9は転がりながら吸引、除去される。
【0036】
洗浄ノズル31はノズル移動手段39によってオリフィスプレート23上を移動するから、洗浄ノズル31の先端開口部がオリフィス11と対向した位置に到達すると、オリフィス11内で乾燥により高粘度化した塗布液8が固体微粒子9と共に吸い出されて除去され、パージ動作も同時に行なわれる。
【0037】
図4は、洗浄液であるイソプロピールアルコール(IPA)の供給流量を種々変えた場合の吸引圧力(負圧)と固形物付着率との関係を示す特性図である。固形物付着率は、ヘッド表面のオリフィス中央付近をキーエンス製マイクロスコープVH−5910で取り込み、その画像を1200dpiに変更した後、白色部分(固形物付着部分)を2値化して抽出し、その画素をカウントして固形物付着画素数を求める。そしては、前述のようにして取り込んだ画像の画素数に対する前記固形物付着画素数の割合を固形物付着率として求めたものである。
【0038】
この図から明らかなように、吸引圧力が−9kPaよりも低くてもまた−10kPaよりも高くても固形物付着率は高く、しかもIPA供給流量によって固形物付着率が違っている。これに対して吸引圧力を−9kPa〜−10kPaの範囲、好ましくは−9kPa〜−9.5kPaの範囲に規制すれば、いずれのIPA供給流量のものでも固形物付着率が低いことが分かる。
【0039】
図5は、オリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離Dと固形物付着率との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、離間距離Dが0.06mm以上になると、いずれのIPA供給流量のものでも固形物付着率が高い。これに対して離間距離Dを0.01mm〜0.05mmの範囲、好ましくは0.02mm〜0.05mmの範囲に規制したものは固形物付着率が低い。その中でもIPA供給流量が1.6ml/min未満のもの、すなわちIPA供給流量が0.2ml/min〜1.0ml/minの範囲に規制されたものは特に固形物付着率が低い。
【0040】
図6は、各IPA供給流量におけるオリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離Dと吸引圧力との関係を示す特性図で、前記離間距離Dに対して最適な吸引圧力がプロットされている。この図から明らかなように、各IPA供給流量において前記離間距離Dと吸引圧力との間には相関関係があることが分かる。
【0041】
図7は、IPAを供給しない場合(IPA供給流量=0ml/min 黒菱形印)を併記した吸引圧力と固形物付着率との関係を示す特性図である。この図から明らかなように、IPAを供給しない場合は固形物付着率が2%〜10%と高く、洗浄剤を併用する効果が顕著に現れている。
【0042】
図8は、洗浄ノズル31の先端部の変形例を示す拡大平面図である。図2に示す洗浄ノズル31と相違する点は、外管44の外周から内管43を通り内側の廃液流通空間46に向けて複数本の溝47が形成されている点である。
【0043】
本構成によれば、外管44の外部から廃液流通空間46内に外気を吸引することとなり、この外気が気流となって内管43内に入って行くため、内管43内の渦流の力が増し、オリフィスプレート23の洗浄効率が向上する。但し、管内を負圧にするためには吸引手段36の負荷が大きくなる。
【0044】
実施形態では洗浄液としてイソプロピールアルコールを使用したが、その他例えばメタノール、エタノールなどの液体を洗浄液として用いることもできる。
【0045】
実施形態では固体微粒子を混合分散した塗布液を吐出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固体微粒子を含有しない塗布液を吐出する場合にも適用可能である。
【0046】
また前記実施形態では液晶表示装置の製造の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばエレクトロルミネッセンスの製造など他の技術分野においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るヘッド清掃装置の概略構成図である。
【図2】そのヘッド清掃装置における洗浄ノズルの先端部を示す拡大平面図である。
【図3】そのヘッド清掃装置でオリフィスの近辺を清掃する状態を示す図である。
【図4】IPAの供給流量を種々変えた場合の吸引圧力と固形物付着率との関係を示す特性図である。
【図5】オリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離と固形物付着率との関係を示す特性図である。
【図6】各IPA供給流量におけるオリフィスプレートの表面と吸引ノズルとの離間距離と吸引圧力との関係を示す特性図である。
【図7】IPAを供給しない場合を併記した吸引圧力と固形物付着率との関係を示す特性図である。
【図8】洗浄ノズルの先端部の変形例を示す拡大平面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の全体の概略構成図である。
【図10】その液滴吐出装置に搭載する吐出ヘッドの一部拡大断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る吐出ヘッドとスペーサを付着する液晶用カラーフィルタ基板との関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:マザー基板、2:基板ホルダー、3:吐出ヘッド、4:X方向移動ガイド、5:Z
方向移動ガイド、6:溶液供給パイプ、7:ヘッド清掃装置、8:塗布液、9:固体微粒
子、10:付着液滴、11:オリフィス、12:加圧室、13:振動板、14:圧電素子
、15:信号入力端子、16:圧電素子固定板、17:リストリクタ、18:共通塗布液
供給管、19:フィルタ、20:接着剤、21:リストリクタプレート、22:加圧室プ
レート、23:オリフィスプレート、24:支持板、25:ハウジング、26:フィルタ
プレート、27:液晶用カラーフィルタ基板、28:画素セル、29:遮光膜、30:ス
ペーサ集合体、31:洗浄ノズル、32:洗浄液、33:洗浄液タンク、34:洗浄液ポ
ンプ、35:廃液タンク、36:吸引手段、37:内圧測定手段、38:里間距離調整手
段、39:ノズル移動手段、40:制御手段、41:塗布液タンク、42:内圧調整手段
、43:内管、44:外管、45:洗浄液流通空間、46:廃液流通空間、47:溝、4
8:洗浄液流、49:洗浄液供給口、50:洗浄液排出口、O:洗浄ノズルの中心、A:溝の外周部起点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ノズルと、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄ノズルの内部の廃液流通空間を吸引する吸引手段とを備え、液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面に対して前記洗浄ノズルの先端開口部を対向させ、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に前記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しながら、前記吸引手段により前記洗浄ノズルの廃液流通空間を吸引して、前記液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面を清掃し、廃液を前記廃液流通空間を通して排出する液滴吐出ヘッドの清掃装置において、
前記洗浄ノズルが内管と外管の二重管構造になっており、前記内管と外管の間に洗浄液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間に前記洗浄液供給手段が接続され、前記内管の内側に前記廃液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間の外管の底部外側面に洗浄液排出口が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルの先端は、液滴吐出ヘッドにオリフィス面に対し非接触であり、その間隔が0.01〜0.05mmの範囲、前記吸引手段による洗浄ノズル内の吸引圧力が−9kPa〜−10kPaの範囲、前記洗浄液供給量が0.15ml/min〜1.6ml/minの範囲、にそれぞれ規制されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドは、固体微粒子を混合分散した液滴を吐出する液滴吐出ヘッドであることを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項4】
前記洗浄液をオリフィス形成面の清掃時以外に、連続的あるいは定期的に供給することを特徴とする請求項1ないし3記載の液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項5】
液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を着弾する被着体と前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動する移動手段と、前記液滴吐出ヘッドの待機位置に設けられた清掃装置とを備えた液滴吐出装置において、
前記清掃装置が請求項1ないし4のいずれか1項記載の清掃装置であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項1】
洗浄ノズルと、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄ノズルの内部の廃液流通空間を吸引する吸引手段とを備え、液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面に対して前記洗浄ノズルの先端開口部を対向させ、その洗浄ノズルの先端開口部の周辺に前記洗浄液供給手段により洗浄液を供給しながら、前記吸引手段により前記洗浄ノズルの廃液流通空間を吸引して、前記液滴吐出ヘッドのオリフィス形成面を清掃し、廃液を前記廃液流通空間を通して排出する液滴吐出ヘッドの清掃装置において、
前記洗浄ノズルが内管と外管の二重管構造になっており、前記内管と外管の間に洗浄液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間に前記洗浄液供給手段が接続され、前記内管の内側に前記廃液流通空間が形成され、その洗浄液流通空間の外管の底部外側面に洗浄液排出口が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルの先端は、液滴吐出ヘッドにオリフィス面に対し非接触であり、その間隔が0.01〜0.05mmの範囲、前記吸引手段による洗浄ノズル内の吸引圧力が−9kPa〜−10kPaの範囲、前記洗浄液供給量が0.15ml/min〜1.6ml/minの範囲、にそれぞれ規制されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドは、固体微粒子を混合分散した液滴を吐出する液滴吐出ヘッドであることを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項4】
前記洗浄液をオリフィス形成面の清掃時以外に、連続的あるいは定期的に供給することを特徴とする請求項1ないし3記載の液滴吐出ヘッドの清掃装置。
【請求項5】
液滴を吐出するオリフィスを形成した液滴吐出ヘッドと、その液滴吐出ヘッドから吐出した液滴を着弾する被着体と前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動する移動手段と、前記液滴吐出ヘッドの待機位置に設けられた清掃装置とを備えた液滴吐出装置において、
前記清掃装置が請求項1ないし4のいずれか1項記載の清掃装置であることを特徴とする液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−178691(P2009−178691A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22224(P2008−22224)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】
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