液滴吐出ヘッド
【課題】クロストークの発生を防止できる液滴吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】圧力室PC1、PC2、…の配列方向に沿って第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とが配置される。奇数番の圧力室PC1、PC3、…は、個別供給流路を介して第1共通供給流路CS1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…は、個別供給流路を介して第2共通供給流路CS2に連通される。これにより、隣り合う圧力室が異なる共通供給流路に連通され、共通流路を介して近接した圧力室に圧力波が伝播するのを防止できる。
【解決手段】圧力室PC1、PC2、…の配列方向に沿って第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とが配置される。奇数番の圧力室PC1、PC3、…は、個別供給流路を介して第1共通供給流路CS1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…は、個別供給流路を介して第2共通供給流路CS2に連通される。これにより、隣り合う圧力室が異なる共通供給流路に連通され、共通流路を介して近接した圧力室に圧力波が伝播するのを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに係り、特に共通流路から各圧力室に液体が供給される液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
共通流路から各圧力室に液体を供給する構成の液滴吐出ヘッドでは、ノズルを高密度に配置すると、圧力室の圧力波が、共通流路を介して近接した圧力室に伝播し、インクの吐出が不安定になるという問題がある(クロストーク)。
【0003】
このようなクロストークの発生を抑制する技術として、特許文献1には、圧力室と共通流路との断面形状を三角形状とし、水平方向に対して互いに倒置させる配置とすることが記載されている。また、特許文献2には、共通流路の容積を圧力室の容積の総和の2倍以上に設定することにより、クロストークの発生を防止する技術が記載されている。さらに、特許文献3、4には、共通流路にエアダンパや圧力吸収体などの圧力緩衝手段を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−370351号公報
【特許文献2】特開昭56−75863号公報
【特許文献3】特開昭52−49034号公報
【特許文献4】特開平9−141864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された技術は、圧力室及び共通流路の形状を最適化したものに過ぎず、根本的なクロストークの問題の解決には至っていない。
【0006】
一方、特許文献3、4に記載された技術は、部品点数が増加するとともに、構造が複雑になるという欠点がある。
【0007】
この他、共通流路から各圧力室に液体を導入する個別流路を最適化することも考えられるが、クロストークの発生を抑制するために、個別流路を最適化すると、リフィル性能(ノズル先端にインクを再充填する性能)が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、クロストークの発生を防止できる液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路が配置され、該共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給される液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッドを提供する。
【0010】
本発明によれば、圧力室の配列方向に沿って複数の共通供給流路が配置され、隣り合う圧力室が個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通される。これにより、共通流路を介して近接した圧力室に圧力波が伝播するのを防止でき、クロストークの発生を防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記複数の共通供給流路は、1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0012】
本発明によれば、1つの流路の内部を上下複数の層に分割して、複数の共通供給流路が形成される。これにより、共通供給流路の設置に要するスペースをコンパクト化することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0014】
本発明によれば、1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、一つの流路の内部が上下複数の層に分割されて、複数の共通供給流路が形成される。これにより、簡単に複数の共通供給流路を形成することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記各個別供給流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0016】
本発明によれば、各個別供給流路の容積が同じに形成される。これにより、各ノズル間で吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、より安定した吐出が可能になる。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路と共通回収流路とが配置され、前記共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給されるともに、前記共通回収流路に連通された個別回収流路を介して前記各圧力室内の前記液体が回収されて、前記圧力室に前記液体が循環供給される液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通回収流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別回収流路を介して異なる共通回収流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッドを提供する。
【0018】
本発明によれば、圧力室の配列方向に沿って複数の共通供給流路と複数の共通回収流路が配置され、隣り合う圧力室が、個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されるとともに、個別回収流路を介して異なる共通回収流路に連通される。これにより、共通流路を介して近接した圧力室に圧力波が伝播するのを防止でき、クロストークの発生を防止することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記複数の共通供給流路と前記複数の共通回収流路は、ともに1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0020】
本発明によれば、複数の共通供給流路と複数の共通回収流路とが、ともに1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成される。これにより、共通供給流路及び共通回収流路の設置に要するスペースをコンパクト化することができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0022】
本発明によれば、1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、一つの流路の内部が上下複数の層に分割されて、複数の共通供給流路が形成される。同様に、1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、一つの流路の内部が上下複数の層に分割されて、複数の共通回収流路が形成される。これにより、簡単に複数の共通供給流路、共通回収流路を形成することができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、同じ圧力室に連通される前記個別供給流路と前記個別回収流路は、同じ階層の共通供給流路と共通回収流路に連通されることを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0024】
本発明によれば、同じ圧力室に連通される個別供給流路と個別回収流路とが、同じ階層の共通供給流路と共通回収流路に連通される。これにより、水頭差の拡大を回避でき、各ノズルで吐出性能にバラツキが生じるのを防止できる。
【0025】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成するために、前記各個別供給流路の容積が同じに形成されるとともに、前記各個別回収流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0026】
本発明によれば、各個別供給流路の容積が同じに形成されるとともに、各個別回収流路の容積が同じに形成される。これにより、各ノズル間で吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、より安定した吐出が可能になる。
【0027】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するために、所定の配列方向に沿って一定ピッチで複数配置された前記圧力室の列が、一定方向に一定ピッチで複数配列されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0028】
本発明によれば、圧力室がマトリクス状に配置される。これにより、ノズルの高密度化を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、クロストークの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1の実施の形態の底面図
【図2】図1の2−2断面図
【図3】図1の3−3断面図
【図4】図2、図3の4−4断面図
【図5】図2、図3の5−5断面図
【図6】図2、図3の6−6断面図
【図7】第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図
【図8】本発明に係る液滴吐出ヘッドの他の実施の形態の断面図
【図9】図8に示した他の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図
【図10】本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2の実施の形態の底面図
【図11】図10の11−11断面図
【図12】図10の12−12断面図
【図13】第2の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路及び共通回収流路との連通関係を示す概念図
【図14】本発明に係る液滴吐出ヘッドの第3の実施の形態の底面図
【図15】第3の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路及び共通回収流路との連通関係を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明に係る液滴吐出ヘッドの好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
《第1の実施の形態》
[構成]
図1は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1の実施の形態の底面図である。
【0033】
同図に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10は、矩形状に形成され、その底面部にはノズル面10Aが形成される。ノズル面10Aには、その長手方向に沿って一定ピッチで多数のノズルN1、N2、…が形成されている。
【0034】
各ノズルN1、N2、…、Nn(nは2の倍数)は、それぞれノズル流路NC1、NC2、…、NCn(図2、図3参照)を介して圧力室PC1、PC2、…に連通され、この圧力室PC1、PC2、…、PCnの容積を圧電素子PZ1、PZ2、…、PZn(図2、図3参照)で膨張・収縮させることにより、各ノズルN1、N2、…から液滴が吐出される。
【0035】
各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、それぞれ個別供給流路IS1、IS2、…、ISnを介して第1共通供給流路CS1又は第2共通供給流路CS2に連通されている(奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が第1共通供給流路CS1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが第2共通供給流路CS2に連通されている。)。各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、この第1共通供給流路CS1又は第2共通供給流路CS2から個別供給流路IS1、IS2、…、ISnを介して液体が供給される。
【0036】
この第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、圧力室PC1、PC2、…、PCnの配列方向(ヘッドの長手方向)に沿って配置され、上下に階層的に配置される(第1共通供給流路CS1が下段、第2共通供給流路CS2が上段に配置される。)。
【0037】
また、この第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、それぞれ一端(図1の上端)が、共通供給部Sに連通され、この共通供給部Sで互いに連通される。共通供給部Sには、ヘッド外部に連通された供給口SPが連通され、この供給口SPから共通供給部Sへと液体が供給される。そして、この共通供給部Sに供給された液体が、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2に分岐して供給される。
【0038】
図2、図3は、それぞれ図1の2−2断面図、3−3断面図である。また、図4、図5、図6は、それぞれ、図2、図3の4−4断面図、5−5断面図、6−6断面図である。
【0039】
同図に示すように、液滴吐出ヘッド10は、主として、ノズルN1、N2、…Nnが形成されたノズルプレート12と、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnが形成されたノズル流路プレート14と、圧力室PC1、PC2、…PCnが形成された圧力室プレート16と、第1共通供給流路CS1が形成された第1共通供給流路プレート18と、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とを分離する分離プレート20と、圧力室PC1、PC2、…PCnの容積を膨張・収縮させる振動板22と、振動板22を変位させる圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnと、圧力室上部プレート24と、第2共通供給流路CS2が形成された第2共通供給流路プレート26とで構成されている。
【0040】
ノズルプレート12は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、最下層に配置される。このノズルプレート12には、その長手方向に沿って一定ピッチでノズルN1、N2、…、Nnが多数形成される。ノズルN1、N2、…、Nnは、垂直な貫通穴として形成され、本例ではテーパ状に形成される。
【0041】
ノズル流路プレート14は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、ノズルプレート12の上に配置される。このノズル流路プレート14には、ノズルプレート12に形成された各ノズルN1、N2、…、Nnに対応して、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnが一定ピッチで形成される。
【0042】
ノズル流路NC1、NC2、…、NCnは、垂直な貫通穴として形成され、ノズル流路プレート14をノズルプレート12の上に接合すると、各ノズルN1、N2、…、Nnに連通される。
【0043】
圧力室プレート16は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、第1共通供給流路プレート18と並列してノズル流路プレート14の上に配置される。この圧力室プレート16には、ノズル流路プレート14に形成された各ノズル流路NC1、NC2、…、NCnに対応して、圧力室PC1、PC2、…、PCnが一定ピッチで形成される。
【0044】
圧力室PC1、PC2、…、PCnは、直方体状の空間として形成され、上面部及び右側面部が開口して形成される。また、下面部には、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnの連結位置に対応して、連通穴が形成される。この連通穴は、圧力室プレート16をノズル流路プレート14の上に接合すると、ノズル流路プレート14に形成された各ノズル流路NC1、NC2、…、NCnに連通される。
【0045】
第1共通供給流路プレート18は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、圧力室プレート16と並列してノズル流路プレート14の上に配置される。この第1共通供給流路プレート18には、上面部に第1共通供給流路CS1と、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の一部(水平部)と、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの一部(垂直部)が形成される。
【0046】
第1共通供給流路CS1は、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。
【0047】
奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1は、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1は、水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aと、垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bとで構成され、水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aが、第1共通供給流路プレート18に形成される。
【0048】
また、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnは、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnは、水平部IS2a、IS4a、…、ISnaと、垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbとで構成され、垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbが、第1共通供給流路プレート18に形成される。
【0049】
この奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1と、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnは、すべて容積が同じになるように形成される。このため、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1に垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bが形成される。このように、すべての個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの容積を同じにすることにより、吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、各ノズルN1、N2、…、Nnから安定した液滴の吐出が可能になる。
【0050】
奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は、第1共通供給流路CS1に連通され、他端(左端)は、第1共通供給流路プレート18の左側面に開口して形成される。
【0051】
偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は閉塞され、他端(左端)は、第1共通供給流路プレート18の左側面に開口して形成される。
【0052】
以上の構成の第1共通供給流路プレート18を圧力室プレート16に並列させて、ノズル流路プレート14の上に配置すると、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1が連通される(奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aが連通される。)。また、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnが連通される(偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbが連通される。)。また、各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、第1共通供給流路プレート18の左側面によって、開口した右側面が閉塞される。
【0053】
分離プレート20は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、並列して配置された圧力室プレート16と第1共通供給流路プレート18の上に配置される。この分離プレート20には、図5に示すように、各圧力室PC1、PC2、…、PCnに対応して圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anが形成されとともに、各個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの垂直部IS1b、IS2b、…、ISnbに対応して、個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnが形成される。また、共通供給部Sに対応して開口部が形成される(図示せず)。
【0054】
なお、本例では、圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anと個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnとが一体化されて形成されている。
【0055】
圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anは、圧力室PC1、PC2、…、PCnの断面形状(平面の断面形状)に対応して形成され、個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnは、個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの垂直部IS1b、IS2b、…、ISnbの断面形状(平面の断面形状)に対応して形成されている。
【0056】
以上の構成の分離プレート20が、圧力室プレート16と第1共通供給流路プレート18の上に配置されると、第1共通供給流路CS1の上面部が閉塞される(ただし、共通供給部Sに相当する部分は除く)。また、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の上面部が閉塞される(ただし、垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bとの連結部に相当する部分は除く)。これにより、第1共通供給流路CS1が形成されるとともに、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aと、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbが形成される。
【0057】
なお、圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anは、圧力室PC1、PC2、…、PCnの一部を構成し、個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnは、個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの垂直部IS1b、IS2b、…、ISnbの一部を構成する。
【0058】
振動板22は、所定厚さを有する矩形の薄板状に形成され、分離プレート20の上に配置される。この振動板22は、圧力室プレート16の平面形状に対応して形成され、圧力室プレート16の配置位置の上方に配置される。圧力室PC1、PC2、…、PCnは、この振動板22が配置されることにより、上面部が閉塞される。すなわち、振動板22は、圧力室プレート16に形成された各圧力室PC1、PC2、…、PCnの上面を構成する。
【0059】
圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnは、各圧力室PC1、PC2、…、PCnに対応して、振動板22の上に配置される。各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、この圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnを駆動することにより、上面部が変位し、容積を膨張・収縮する。
【0060】
圧力室上部プレート24は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、振動板22の上に配置される。この圧力室上部プレート24は、振動板22の平面形状に対応して形成され、その下面部には、圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnに対応して矩形の凹部24A1、24A2、…、24Anが形成される。
【0061】
以上の構成の圧力室上部プレート24が、振動板22の上に配置されると、凹部24A1、24A2、…、24Anの内側に各圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnが収容される。これにより、各圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnが変位可能に取り付けられる。
【0062】
第2共通供給流路プレート26は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、圧力室上部プレート24と並列して分離プレート20の上に配置される。この第2共通供給流路プレート26は、第1共通供給流路プレート18の平面形状に対応して形成され、その下面部には、第2共通供給流路CS2と、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaと、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bとが形成される。また、その上面部には、共通供給部Sに対応して、供給口SP(図示せず)が第2共通供給流路CS2に貫通して形成される。
【0063】
第2共通供給流路CS2は、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。なお、この第2共通供給流路CS2は、第1共通供給流路CS1と同じ幅、同じ深さで形成され、第2共通供給流路プレート26を分離プレート20の上に配置すると、第1共通供給流路CS1の上に配置される。
【0064】
偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaは、第1共通供給流路プレート18に形成された偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この水平部IS2a、IS4a、…、ISnaは、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は、第2共通供給流路CS2に連通され、他端(左端)は、第2共通供給流路プレート26の左側面に開口して形成される。
【0065】
奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bは、第1共通供給流路プレート18に形成された奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bは、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は閉塞され、他端(左端)は、第2共通供給流路プレート26の左側面に開口して形成される。
【0066】
以上の構成の第2共通供給流路プレート26を圧力室上部プレート24に並列させて、分離プレート20の上に配置すると、第2共通供給流路CS2の下面部が閉塞される(ただし、共通供給部Sに相当する部分は除く)。また、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの下面部が閉塞される(ただし、垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbとの連結部は除く)。これにより、第2共通供給流路CS2が形成されるとともに、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaと、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bが形成される。
【0067】
そして、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bが、分離プレート20に形成された奇数番の個別供給流路開口部20B1、20B3、…、20Bn−1を介して、第1共通供給流路プレート18に形成された奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aに連通される。
【0068】
また、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaが、分離プレート20に形成された偶数番の個別供給流路開口部20B2、20B4、…、20Bnを介して、第2共通供給流路プレート26に形成された偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbに連通される。
【0069】
図7は、各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は第1共通供給流路CS1と各圧力室との連通関係を示しており、同図(b)は第2共通供給流路CS2と各圧力室との連通関係を示している。
【0070】
同図(a)に示すように、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して第1共通供給流路CS1に連通される。また、同図(b)に示すように、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して第2共通供給流路CS2に連通される。これにより、隣り合う圧力室が、異なる共通供給流路に連通される。
【0071】
なお、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、分離プレート20の共通供給部Sに相当する部分に形成された開口部(図示せず)を介して、互いに連通される。
【0072】
[作用]
以上のように構成された本実施の形態の液滴吐出ヘッド10の作用は次のとおりである。
【0073】
ノズルN1、N2、…、Nnから吐出させる液体は、図示しない液体タンクから図示しない供給ラインを介して供給口SPに供給される。
【0074】
供給口SPから供給された液体は、共通供給部Sを介して第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2に供給される。
【0075】
上記のように、第1共通供給流路CS1には、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が連通されている(図7(a)参照)。また、第2共通供給流路CS2には、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが連通されている(図7(b)参照)。
【0076】
したがって、第1共通供給流路CS1に供給された液体は、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に供給される。また、第2共通供給流路CS2に供給された液体は、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに供給される。
【0077】
このように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、隣り合う圧力室が、異なる共通供給流路に連通されて、吐出する液体が供給される。
【0078】
これにより、隣接する圧力室の圧力波の影響を物理的に分離でき、クロストークの発生を防止することができる。また、これにより各個別供給流路の設計の自由度も高くなるので、リフィル性能の向上も図ることができる。
【0079】
また、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2を形成する際、1つの流路を上下に二分し、分離プレート20を介在させて、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とを形成しているので、簡単に複数の共通供給流路を形成することができる。
【0080】
また、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、各個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの容積を同じにしているので、各ノズル間で吐出性能にバラツキがなく、安定した吐出を行うことができる。
【0081】
なお、上記実施の形態では、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1に垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bを形成することにより、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の容積を偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの容積と同じにしているが、たとえば、図8に示すように、第1共通供給流路CS1を横方向にシフトして配置することにより、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部の流路長を延ばして、各個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの容積を同じにしてもよい。
【0082】
なお、このように第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、必ずしも上下同じ位置に重ねて配置する必要はない。ただし、上記実施の形態のように、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とを上下同じ位置に重ねて配置することにより、省スペース化を図ることができる。
【0083】
また、上記実施の形態では、2つの共通供給流路を設けているが、さらに複数の共通供給流路を形成することもできる。これにより、クロストークの発生を防止できる。
【0084】
図8は、共通供給流路を4つ設けた液滴吐出ヘッドの一例を示す断面図である。
【0085】
同図に示す例では、4つの共通供給流路CS1〜CS4が、4段に積み重ねられて、階層的に配置された構成とされている。
【0086】
上記実施の形態と同様に、第1共通供給流路CS1は、第1共通供給流路プレート18に形成され、その上段に分離プレート(第1分離プレート)20が配置されている。
【0087】
第1分離プレート20の上段には、第2共通供給流路プレート26が配置され、この第2共通供給流路プレート26に第2共通供給流路CS2が形成される。
【0088】
第2共通供給流路プレート26の上段には、第2分離プレート32が配置され、その上段に第3共通供給流路プレート34が配置される。第3共通供給流路CS3は、この第3共通供給流路プレート34に形成される。
【0089】
第3共通供給流路プレート34の上段には、第3分離プレート36が配置され、その上段に第4共通供給流路プレート38が配置される。第4共通供給流路CS4は、この第4共通供給流路プレート38に形成される。
【0090】
第1共通供給流路CS1は、第1分離プレート20を介して第2共通供給流路CS2と分離され、第2共通供給流路CS2は、第2分離プレート32を介して第3共通供給流路CS3と分離される。また、第3共通供給流路CS3は、第3分離プレート36を介して第4共通供給流路CS4と分離される。
【0091】
また、各共通供給流路CS1〜CS4は、それぞれ一端が、共通供給部に連通され、この共通供給部で互いに連通される。
【0092】
図9は、各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は第1共通供給流路CS1と各圧力室との連通関係、同図(b)は第2共通供給流路CS2と各圧力室との連通関係、同図(c)は第3共通供給流路CS3と各圧力室との連通関係、同図(d)は第4共通供給流路CS4と各圧力室との連通関係を示している。
【0093】
同図に示すように、各共通供給流路CS1〜CS4には、3つ飛ばしの間隔で並列して配置された圧力室が連通される。
【0094】
すなわち、同図(a)に示すように、第1共通供給流路CS1には、第1、第5、第9、…、第n−3番目の圧力室PC1、PC5、PC9、…、PCn−3が連通される(nは4の倍数)。
【0095】
また、同図(b)に示すように、第2共通供給流路CS2には、第2、第6、第10、…、第n−2番目の圧力室PC2、PC6、PC10、…、PCn−2が連通される。
【0096】
また、同図(c)に示すように、第3共通供給流路CS3には、第3、第7、第11、…、第n−1番目の圧力室PC3、PC7、PC11、…、PCn−1が連通される。
【0097】
また、同図(d)に示すように、第4共通供給流路CS4には、第4、第8、第12、…、第n番目の圧力室PC4、PC8、PC12、…、PCnが連通される。
【0098】
各圧力室は、個別供給流路を介して、対応する共通供給流路に連通される。すなわち、図9(a)に示すように、第1、第5、第9、…、第n−3番目の圧力室PC1、PC5、PC9、…、PCn−3は、第1、第5、第9、…、第n−3番目の個別供給流路IS1、IS5、IS9、…、ISn−3を介して第1共通供給流路CS1に連通される。
【0099】
また、図9(b)に示すように、第2、第6、第10、…、第n−2番目の圧力室PC2、PC6、PC10、…、PCn−2は、第2、第6、第10、…、第n−2番目の個別供給流路IS2、IS6、IS10、…、ISn−2を介して第2共通供給流路CS2に連通される。
【0100】
また、図9(c)に示すように、第3、第7、第11、…、第n−1番目の圧力室PC3、PC7、PC11、…、PCn−1は、第3、第7、第11、…、第n−1番目の個別供給流路IS3、IS7、IS11、…、ISn−1を介して第3共通供給流路CS3に連通される。
【0101】
また、図9(d)に示すように、第4、第8、第12、…、第n番目の圧力室PC4、PC9、PC12、…、PCnは、第4、第8、第12、…、第n番目の個別供給流路IS4、IS8、IS12、…、ISnを介して第4共通供給流路CS4に連通される。
【0102】
このように、さらに複数の共通供給流路を形成することにより、隣接する圧力室の圧力波の影響を低減でき、さらに効率よくクロストークの発生を防止できる。
【0103】
《第2の実施の形態》
[構成]
図10は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2の実施の形態の底面図である。また、図11、図12は、それぞれ図10の11−11断面図、12−12断面図である。
【0104】
同図に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50は、共通回収流路CC1、CC2を備えており、液体が圧力室PC1、PC2、…、PCnに循環供給される。
【0105】
なお、共通回収流路CC1、CC2を有する点以外は、上述した第1の実施の形態の液滴吐出ヘッド10の構成と同じなので、ここでは、共通回収流路CC1、CC2の構成についてのみ説明する。
【0106】
図10〜図12に示すように、各圧力室PC1、PC2、…、PCnに連通されたノズル流路NC1、NC2、…、NCnには、それぞれ個別回収流路IC1、IC2、…、ICnが連通され、この個別回収流路IC1、IC2、…、ICnを介して第1共通回収流路CC1又は第2共通回収流路CC2に連通されている(奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が第1共通回収流路CC1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが第2共通回収流路CC2に連通されている。)。各圧力室PC1、PC2、…、PCnの液体は、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnから個別回収流路IC1、IC2、…、ICnを介して第1共通回収流路CC1又は第2共通回収流路CC2に回収される。
【0107】
この第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、圧力室PC1、PC2、…、PCnの配列方向(ヘッドの長手方向)に沿って配置され、上下に階層的に配置される(第1共通回収流路CC1が下段、第2共通回収流路CC2が上段に配置される。)。
【0108】
また、この第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、それぞれ一端(図10の下端)が、共通回収部Cに連通され、この共通回収部Cで互いに連通される。共通回収部Cには、ヘッド外部に連通された回収口CPが連通され、この回収口CPから外部に液体が回収される。
【0109】
図11、図12に示すように、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、ノズル流路プレート14に並列して配置された共通回収流路プレート52に形成されている。この共通回収流路プレート52は、第1共通回収流路プレート54と、回収流路分離プレート56と、第2共通回収流路プレート58とで構成されている。
【0110】
第1共通回収流路プレート54は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、ノズル流路プレート14と並列してノズルプレート12の上に配置される。この第1共通回収流路プレート54には、上面部に第1共通回収流路CC1と、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の一部(水平部)と、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの一部(第2水平部)が形成される。
【0111】
第1共通回収流路CC1は、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。
【0112】
奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1は、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1は、水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aと、垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bとで構成され、水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aが、第1共通回収流路プレート54に形成される。
【0113】
また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnは、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ISnは、第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaと、第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbとで構成され、第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbが、第1共通回収流路プレート54に形成される。
【0114】
この奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1と、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnは、すべて容積が同じになるように形成される。このため、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1に垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bが形成される。このように、すべての個別回収流路IC1、IC2、…、ICnの容積を同じにすることにより、吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、各ノズルN1、N2、…、Nnから安定した液滴の吐出が可能になる。
【0115】
奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(左端)は、第1共通回収流路CC1に連通され、他端(右端)は、第1共通回収流路プレート54の右側面に開口して形成される。
【0116】
偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(左端)は閉塞され、他端(右端)は、第1共通回収流路プレート54の右側面に開口して形成される。
【0117】
第1共通回収流路プレート54に並列して配置されるノズル流路プレート14には、各ノズル流路NC1、NC2、…、NCnに対応して連通穴14A1、14A2、…、14Anが形成されている。各連通穴14A1、14A2、…、14Anは、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnの形成間隔と同じ間隔で形成されており、一端(左端)がノズル流路プレート14の左側面に開口して形成されるとともに、他端(右端)がノズル流路NC1、NC2、…、NCnに連通して形成されている。
【0118】
第1共通回収流路プレート54をノズル流路プレート14に並列させて、ノズルプレート12の上に配置すると、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aが、奇数番の連通穴14A1、14A3、…、14An−1に連通される。また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbが、偶数番の連通穴14A2、14A4、…、14Anに連通される。
【0119】
回収流路分離プレート56は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、第1共通回収流路プレート54の上に配置される。この回収流路分離プレート56には、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bの一部を構成する個別回収流路開口部56A1、56A3、…、56An−1が形成されるとともに、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaと第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbとを連通する個別回収流路開口部56A2、56A4、…、56Anが形成される。
【0120】
以上の構成の回収流路分離プレート56が、第1共通回収流路プレート54の上に配置されると、第1共通回収流路CC1の上面部が閉塞される(ただし、共通回収部Cに相当する部分は除く)。また、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の上面部が閉塞される(ただし、垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bとの連結部に相当する部分は除く)。また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbの上面部が閉塞される(ただし、第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaとの連結部に相当する部分は除く)。これにより、第1共通回収流路CC1が形成されるとともに、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aと、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbが形成される。
【0121】
第2共通回収流路プレート58は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、回収流路分離プレート56の上に配置される。この第2共通回収流路プレート58の下面部には、第2共通回収流路CC2と、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaと、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bとが形成される。また、その上面部には、共通回収部Cに対応して、回収口CP(図示せず)が第2共通回収流路CC2に貫通して形成される(圧力室プレート16、分離プレート20、振動板22、及び、圧力室上部プレート24にも同様に回収口CPが形成される。)。
【0122】
第2共通回収流路CC2は、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。なお、この第2共通回収流路CC2は、第1共通回収流路CC1と同じ幅、同じ深さで形成され、第2共通回収流路プレート58を分離プレート20の上に配置すると、第1共通回収流路CC1の上に配置される。
【0123】
偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaは、第1共通回収流路プレート54に形成された偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaは、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(左端)は、第2共通回収流路CC2に連通され、他端(右端)は閉塞される。
【0124】
奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bは、第1共通回収流路プレート54に形成された奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bは、水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aの断面と同じ断面を有する凹部として所定深さをもって第2共通回収流路プレート58の下面部に形成される。
【0125】
以上の構成の第2共通回収流路プレート58を回収流路分離プレート56の上に配置すると、第2共通回収流路CC2の下面部が閉塞される(ただし、共通回収部Cに相当する部分は除く)。これにより、第2共通回収流路CC2が形成される。
【0126】
また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaが、回収流路分離プレート56に形成された偶数番の個別回収流路開口部56A2、56A4、…、56Anを介して、第1共通回収流路プレート54に形成された偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbと連通される。これにより、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnが形成される。
【0127】
また、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bが、回収流路分離プレート56に形成された奇数番の個別回収流路開口部56A1、56A3、…、56An−1を介して、第1共通回収流路プレート54に形成された奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aと連通される。これにより、個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1が形成される。
【0128】
なお、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、分離プレート20の共通回収部Cに相当する部分に形成された開口部(図示せず)を介して、互いに連通される。
【0129】
図13は、各圧力室と共通供給流路及び共通回収流路との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は奇数番の圧力室との連通関係を示しており、同図(b)は偶数番の圧力室との連通関係を示している。
【0130】
同図(a)に示すように、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1は、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して第1共通供給流路CS1に連通される。また、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1を介して第1共通回収流路CC1に連通される。
【0131】
一方、同図(b)に示すように、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnは、偶数番の個別共通流路IS2、IS4、…、ISnを介して第2共通供給流路CS2に連通される。また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnを介して第2共通回収流路CC2に連通される。
【0132】
このように、隣り合う圧力室は、異なる共通供給流路に連通されるとともに、異なる共通回収流路に連通される。この際、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1は、下段に位置した第1共通供給流路CS1に連通されるとともに、下段上段に位置した第1共通回収流路CC1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnは、上段に位置した第2共通供給流路CS2に連通されるとともに、上段に位置した第2共通回収流路CC2に連通される。これにより、各圧力室間で水頭差の影響をなくすことができ、各ノズルN1、N2、…、Nnから安定した液滴の吐出が可能になる。
【0133】
[作用]
以上のように構成された本実施の形態の液滴吐出ヘッド50の作用は次のとおりである。
【0134】
液滴吐出ヘッド50に形成された供給口SPには、図示しない供給ラインが接続され、この供給ラインを介して図示しない液体タンクに接続される。一方、回収口CPには、図示しない回収ラインが接続され、この回収ラインを介して図示しない液体タンクに接続される。供給ラインには、図示しない供給ポンプが設けられており、この供給ポンプを駆動することにより、液体タンク内の液体が供給ラインを介して供給口SPに液体が供給される。また、回収ラインには、図示しない回収ポンプが設けられており、この回収ポンプを駆動することにより、液滴吐出ヘッド50内の液体が回収口CPから回収ラインを介して液体タンクに回収される。すなわち、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50において、ノズルから吐出させる液体は、循環供給される。
【0135】
供給口SPに供給された液体は、共通供給部Sを介して第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2に供給される。
【0136】
第1共通供給流路CS1には、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が連通されている(図7(a)参照)。また、第2共通供給流路CS2には、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが連通されている(図7(b)参照)。したがって、第1共通供給流路CS1に供給された液体は、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に供給される。また、第2共通供給流路CS2に供給された液体は、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに供給される。このように、隣り合う圧力室に対して、異なる共通供給流路から液体が供給される。
【0137】
一方、図13(a)に示すように、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1のノズル流路NC1、NC3、…、NCn−1には、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1を介して第1共通回収流路CC1が連通されている。また、図13(b)に示すように、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnのノズル流路NC2、NC4、…、NCnには、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnを介して第2共通回収流路CC2が連通されている。奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1内の液体は、ノズル流路NC1、NC3、…、NCn−1から奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1を介して第1共通回収流路CC1に回収され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCn内の液体は、ノズル流路NC2、NC4、…、NCnから偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnを介して第2共通回収流路CC2に回収される。このように、隣り合う圧力室に対して、異なる共通回収流路から液体が回収される。
【0138】
以上のように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50では、ノズルから吐出させる液体が循環供給される。この際、隣り合う圧力室に対して、異なる共通供給流路から液体が供給されるとともに、隣り合う圧力室に対して、異なる共通回収流路から液体が回収される。これにより、隣接する圧力室の圧力波の影響を物理的に分離でき、クロストークの発生を防止することができる。また、これにより各個別供給流路の設計の自由度も高くなるので、リフィル性能の向上も図ることができる。
【0139】
また、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50では、下段に位置した第1共通供給流路CS1に連通させた圧力室(奇数番の圧力室)は、下段に位置した第1共通回収流路CC1に連通させ、上段に位置した第2共通供給流路CS2に連通させた圧力室(偶数番の圧力室)は、上段に位置した第2共通回収流路CC2に連通させ、各圧力室間で水頭差の影響をなくしているので、各ノズルN1、N2、…、Nn間でバラツキのない安定した液滴の吐出を行うことができる。
【0140】
なお、上記実施の形態では、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2を上下に重ねて同じ位置に配置しているが、必ずしも上下同じ位置に重ねて配置する必要はなく、横方向にずらして配置するようにしてもよい。ただし、上記実施の形態のように、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2とを上下同じ位置に重ねて配置することにより、省スペース化を図ることができる。また、1つの流路を上下に分割し、分離プレートで2分割することにより、簡単に複数の共通回収流を形成することができる。
【0141】
また、上記実施の形態では、2つの共通回収流路を設けているが、さらに複数の共通回収流路を形成することもできる。これにより、クロストークの発生を防止できる。
【0142】
《第3の実施の形態》
図14は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第3の実施の形態の底面図である。
【0143】
同図に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド70は、ノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]が、ノズル面に二次元マトリクス状に配置されている(いわゆるマトリクスヘッド)。ノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]をこのような配置構成とすることにより、ヘッドの長手方向に投影される実質的なノズルN[x,y]の間隔を狭めることができ、ノズルN[x,y]の高密度化を図ることができる。
【0144】
ノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]は、ヘッドの長手方向に対して所定角度傾斜した方向に並列して配置されるノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]の列を一単位とし、このノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]の列が、ヘッドの長手方向に沿って一定間隔で配置される。
【0145】
各ノズルN[x,y]から吐出させる液体を圧力室PC[x,y]に供給する共通供給流路は、共通供給流路本流CSmと、その共通供給流路本流CSmから分岐する複数の共通供給流路支流CSb[x]とで構成される。
【0146】
共通供給流路本流CSmは、ヘッドの長手方向にそって形成され、一端(図13の右端)に供給口が連通される。
【0147】
共通供給流路支流CSb[x]は、圧力室PC[x,y]の列単位で設けられ、各列の圧力室PC[x,y]の配列方向に沿って所定角度傾斜して形成される。そして、一端(図13の上端)が共通供給流路本流CSmに連通される。
【0148】
各共通供給流路支流CSb[x]は、第1共通供給流路支流CSb1[x]と第2共通供給流路支流CSb2[x]とで構成されており、上下に重ねて階層的に配置されている(1つの流路を上下に分断して、分離プレートで上下に分離して形成されている。図2、3参照)。
【0149】
各列の圧力室PC[x,y]は、各列の圧力室PC[x,y]に並列して配置された共通供給流路CSb[x]に個別供給流路IS[x,y]を介して連通され、この個別供給流路[x,y]を介して共通供給流路CSb[x]から液体が供給される。
【0150】
ここで、各列の圧力室PC[x,y]は、奇数行の圧力室PC[x,y]は、第1共通供給流路支流CSb1[x]に連通され、偶数番の圧力室PC[x,y]は、第2共通供給流路支流CSb2[x]に連通される。すなわち、各列において、隣り合う圧力室PC[x,y]が、異なる共通供給流路支流に連通される。
【0151】
図15は、各圧力室PC[x,y]と共通供給流路支流との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は第1共通供給流路支流CSb1[x]と各圧力室との連通関係を示しており、同図(b)は第2共通供給流路支流CSb2[x]と各圧力室との連通関係を示している。
【0152】
同図(a)に示すように、各列の圧力室PC[1,y]、PC[2,y]、…において、奇数行の圧力室PC[1,1]、PC[1,3]、…、PC[2,1]、PC[2,3]、…、PC[3,1]、PC[3,3]、…、…は、それぞれ各列の第1共通供給流路支流CSb1[1]、CSb1[2]、…に連通される。
【0153】
また、同図(b)に示すように、各列の圧力室PC[1,y]、PC[2,y]、…において、偶数行の圧力室PC[1,2]、PC[1,4]、…、PC[2,2]、PC[2,4]、…、PC[3,2]、PC[3,4]、…、…は、それぞれ各列の第2共通供給流路支流CSb2[1]、CSb2[2]、…に連通される。
【0154】
このように、各列において、隣り合う圧力室PC[x,y]が、異なる共通供給流路支流に連通される。
【0155】
以上のように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド70によれば、マトリクスヘッドにおいて、隣り合う圧力室PC[x,y]が、異なる共通供給流路支流に連通されて、液体が供給される。これにより、クロストークの発生を防止できる。
【0156】
なお、このようなマトリクスヘッドにおいて液体を循環供給する場合は、上記第2の実施の形態と同様に共通回収流路を複数形成し、隣り合う圧力室が異なる共通回収流路に連通されるように構成することが好ましい。
【0157】
また、このようなマトリクスヘッドにおいても、共通供給流路支流は、さらに複数段に分けて形成することができる。
【0158】
なお、本発明の液滴吐出ヘッドは、たとえば、インクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置の記録ヘッド(インクジェットヘッド)に適用することができる。
【符号の説明】
【0159】
10、50、70…液滴吐出ヘッド、10A…ノズル面、12…ノズルプレート、14…ノズル流路プレート、16…圧力室プレート、18…第1共通供給流路プレート、20…分離プレート(第1分離プレート)、22…振動板、PZ1、PZ2、…、PZn…圧電素子、26…第2共通供給流路プレート、30…第2分離プレート、34…第3共通供給流路プレート、36…第3分離プレート、38…第4共通供給流路プレート、52…共通回収流路プレート、54…第1共通回収流路プレート、56…回収流路分離プレート、58…第2共通回収流路プレート、N1、N2、…、Nn…ノズル、PC1、PC2、…、PCn…圧力室、CS1…第1共通供給流路、CS2…第2共通供給流路、CS3…第3共通供給流路、CS4…第4共通供給流路、IS1、IS2、…、ISn…個別供給流路、CC1…第1共通回収流路、CC2…第2共通回収流路、IC1、IC2、…、ICn…個別回収流路、N[x,y]…ノズル、PC[x,y]…圧力室、CSm…共通供給流路本流、CSb[x]…共通供給流路支流、CSb1[x]…第1共通供給流路支流、CSb2[x]…第2共通供給流路支流、IS[x,y]…個別供給流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに係り、特に共通流路から各圧力室に液体が供給される液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
共通流路から各圧力室に液体を供給する構成の液滴吐出ヘッドでは、ノズルを高密度に配置すると、圧力室の圧力波が、共通流路を介して近接した圧力室に伝播し、インクの吐出が不安定になるという問題がある(クロストーク)。
【0003】
このようなクロストークの発生を抑制する技術として、特許文献1には、圧力室と共通流路との断面形状を三角形状とし、水平方向に対して互いに倒置させる配置とすることが記載されている。また、特許文献2には、共通流路の容積を圧力室の容積の総和の2倍以上に設定することにより、クロストークの発生を防止する技術が記載されている。さらに、特許文献3、4には、共通流路にエアダンパや圧力吸収体などの圧力緩衝手段を付与することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−370351号公報
【特許文献2】特開昭56−75863号公報
【特許文献3】特開昭52−49034号公報
【特許文献4】特開平9−141864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された技術は、圧力室及び共通流路の形状を最適化したものに過ぎず、根本的なクロストークの問題の解決には至っていない。
【0006】
一方、特許文献3、4に記載された技術は、部品点数が増加するとともに、構造が複雑になるという欠点がある。
【0007】
この他、共通流路から各圧力室に液体を導入する個別流路を最適化することも考えられるが、クロストークの発生を抑制するために、個別流路を最適化すると、リフィル性能(ノズル先端にインクを再充填する性能)が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、クロストークの発生を防止できる液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路が配置され、該共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給される液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッドを提供する。
【0010】
本発明によれば、圧力室の配列方向に沿って複数の共通供給流路が配置され、隣り合う圧力室が個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通される。これにより、共通流路を介して近接した圧力室に圧力波が伝播するのを防止でき、クロストークの発生を防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記複数の共通供給流路は、1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0012】
本発明によれば、1つの流路の内部を上下複数の層に分割して、複数の共通供給流路が形成される。これにより、共通供給流路の設置に要するスペースをコンパクト化することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0014】
本発明によれば、1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、一つの流路の内部が上下複数の層に分割されて、複数の共通供給流路が形成される。これにより、簡単に複数の共通供給流路を形成することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記各個別供給流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0016】
本発明によれば、各個別供給流路の容積が同じに形成される。これにより、各ノズル間で吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、より安定した吐出が可能になる。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路と共通回収流路とが配置され、前記共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給されるともに、前記共通回収流路に連通された個別回収流路を介して前記各圧力室内の前記液体が回収されて、前記圧力室に前記液体が循環供給される液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通回収流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別回収流路を介して異なる共通回収流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッドを提供する。
【0018】
本発明によれば、圧力室の配列方向に沿って複数の共通供給流路と複数の共通回収流路が配置され、隣り合う圧力室が、個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されるとともに、個別回収流路を介して異なる共通回収流路に連通される。これにより、共通流路を介して近接した圧力室に圧力波が伝播するのを防止でき、クロストークの発生を防止することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記複数の共通供給流路と前記複数の共通回収流路は、ともに1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0020】
本発明によれば、複数の共通供給流路と複数の共通回収流路とが、ともに1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成される。これにより、共通供給流路及び共通回収流路の設置に要するスペースをコンパクト化することができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、前記目的を達成するために、前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0022】
本発明によれば、1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、一つの流路の内部が上下複数の層に分割されて、複数の共通供給流路が形成される。同様に、1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、一つの流路の内部が上下複数の層に分割されて、複数の共通回収流路が形成される。これにより、簡単に複数の共通供給流路、共通回収流路を形成することができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、前記目的を達成するために、同じ圧力室に連通される前記個別供給流路と前記個別回収流路は、同じ階層の共通供給流路と共通回収流路に連通されることを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0024】
本発明によれば、同じ圧力室に連通される個別供給流路と個別回収流路とが、同じ階層の共通供給流路と共通回収流路に連通される。これにより、水頭差の拡大を回避でき、各ノズルで吐出性能にバラツキが生じるのを防止できる。
【0025】
請求項9に係る発明は、前記目的を達成するために、前記各個別供給流路の容積が同じに形成されるとともに、前記各個別回収流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0026】
本発明によれば、各個別供給流路の容積が同じに形成されるとともに、各個別回収流路の容積が同じに形成される。これにより、各ノズル間で吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、より安定した吐出が可能になる。
【0027】
請求項10に係る発明は、前記目的を達成するために、所定の配列方向に沿って一定ピッチで複数配置された前記圧力室の列が、一定方向に一定ピッチで複数配列されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを提供する。
【0028】
本発明によれば、圧力室がマトリクス状に配置される。これにより、ノズルの高密度化を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、クロストークの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1の実施の形態の底面図
【図2】図1の2−2断面図
【図3】図1の3−3断面図
【図4】図2、図3の4−4断面図
【図5】図2、図3の5−5断面図
【図6】図2、図3の6−6断面図
【図7】第1の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図
【図8】本発明に係る液滴吐出ヘッドの他の実施の形態の断面図
【図9】図8に示した他の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図
【図10】本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2の実施の形態の底面図
【図11】図10の11−11断面図
【図12】図10の12−12断面図
【図13】第2の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路及び共通回収流路との連通関係を示す概念図
【図14】本発明に係る液滴吐出ヘッドの第3の実施の形態の底面図
【図15】第3の実施の形態の液滴吐出ヘッドにおける各圧力室と共通供給流路及び共通回収流路との連通関係を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明に係る液滴吐出ヘッドの好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
《第1の実施の形態》
[構成]
図1は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第1の実施の形態の底面図である。
【0033】
同図に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10は、矩形状に形成され、その底面部にはノズル面10Aが形成される。ノズル面10Aには、その長手方向に沿って一定ピッチで多数のノズルN1、N2、…が形成されている。
【0034】
各ノズルN1、N2、…、Nn(nは2の倍数)は、それぞれノズル流路NC1、NC2、…、NCn(図2、図3参照)を介して圧力室PC1、PC2、…に連通され、この圧力室PC1、PC2、…、PCnの容積を圧電素子PZ1、PZ2、…、PZn(図2、図3参照)で膨張・収縮させることにより、各ノズルN1、N2、…から液滴が吐出される。
【0035】
各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、それぞれ個別供給流路IS1、IS2、…、ISnを介して第1共通供給流路CS1又は第2共通供給流路CS2に連通されている(奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が第1共通供給流路CS1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが第2共通供給流路CS2に連通されている。)。各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、この第1共通供給流路CS1又は第2共通供給流路CS2から個別供給流路IS1、IS2、…、ISnを介して液体が供給される。
【0036】
この第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、圧力室PC1、PC2、…、PCnの配列方向(ヘッドの長手方向)に沿って配置され、上下に階層的に配置される(第1共通供給流路CS1が下段、第2共通供給流路CS2が上段に配置される。)。
【0037】
また、この第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、それぞれ一端(図1の上端)が、共通供給部Sに連通され、この共通供給部Sで互いに連通される。共通供給部Sには、ヘッド外部に連通された供給口SPが連通され、この供給口SPから共通供給部Sへと液体が供給される。そして、この共通供給部Sに供給された液体が、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2に分岐して供給される。
【0038】
図2、図3は、それぞれ図1の2−2断面図、3−3断面図である。また、図4、図5、図6は、それぞれ、図2、図3の4−4断面図、5−5断面図、6−6断面図である。
【0039】
同図に示すように、液滴吐出ヘッド10は、主として、ノズルN1、N2、…Nnが形成されたノズルプレート12と、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnが形成されたノズル流路プレート14と、圧力室PC1、PC2、…PCnが形成された圧力室プレート16と、第1共通供給流路CS1が形成された第1共通供給流路プレート18と、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とを分離する分離プレート20と、圧力室PC1、PC2、…PCnの容積を膨張・収縮させる振動板22と、振動板22を変位させる圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnと、圧力室上部プレート24と、第2共通供給流路CS2が形成された第2共通供給流路プレート26とで構成されている。
【0040】
ノズルプレート12は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、最下層に配置される。このノズルプレート12には、その長手方向に沿って一定ピッチでノズルN1、N2、…、Nnが多数形成される。ノズルN1、N2、…、Nnは、垂直な貫通穴として形成され、本例ではテーパ状に形成される。
【0041】
ノズル流路プレート14は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、ノズルプレート12の上に配置される。このノズル流路プレート14には、ノズルプレート12に形成された各ノズルN1、N2、…、Nnに対応して、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnが一定ピッチで形成される。
【0042】
ノズル流路NC1、NC2、…、NCnは、垂直な貫通穴として形成され、ノズル流路プレート14をノズルプレート12の上に接合すると、各ノズルN1、N2、…、Nnに連通される。
【0043】
圧力室プレート16は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、第1共通供給流路プレート18と並列してノズル流路プレート14の上に配置される。この圧力室プレート16には、ノズル流路プレート14に形成された各ノズル流路NC1、NC2、…、NCnに対応して、圧力室PC1、PC2、…、PCnが一定ピッチで形成される。
【0044】
圧力室PC1、PC2、…、PCnは、直方体状の空間として形成され、上面部及び右側面部が開口して形成される。また、下面部には、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnの連結位置に対応して、連通穴が形成される。この連通穴は、圧力室プレート16をノズル流路プレート14の上に接合すると、ノズル流路プレート14に形成された各ノズル流路NC1、NC2、…、NCnに連通される。
【0045】
第1共通供給流路プレート18は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、圧力室プレート16と並列してノズル流路プレート14の上に配置される。この第1共通供給流路プレート18には、上面部に第1共通供給流路CS1と、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の一部(水平部)と、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの一部(垂直部)が形成される。
【0046】
第1共通供給流路CS1は、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。
【0047】
奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1は、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1は、水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aと、垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bとで構成され、水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aが、第1共通供給流路プレート18に形成される。
【0048】
また、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnは、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnは、水平部IS2a、IS4a、…、ISnaと、垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbとで構成され、垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbが、第1共通供給流路プレート18に形成される。
【0049】
この奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1と、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnは、すべて容積が同じになるように形成される。このため、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1に垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bが形成される。このように、すべての個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの容積を同じにすることにより、吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、各ノズルN1、N2、…、Nnから安定した液滴の吐出が可能になる。
【0050】
奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は、第1共通供給流路CS1に連通され、他端(左端)は、第1共通供給流路プレート18の左側面に開口して形成される。
【0051】
偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は閉塞され、他端(左端)は、第1共通供給流路プレート18の左側面に開口して形成される。
【0052】
以上の構成の第1共通供給流路プレート18を圧力室プレート16に並列させて、ノズル流路プレート14の上に配置すると、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1が連通される(奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aが連通される。)。また、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnが連通される(偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbが連通される。)。また、各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、第1共通供給流路プレート18の左側面によって、開口した右側面が閉塞される。
【0053】
分離プレート20は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、並列して配置された圧力室プレート16と第1共通供給流路プレート18の上に配置される。この分離プレート20には、図5に示すように、各圧力室PC1、PC2、…、PCnに対応して圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anが形成されとともに、各個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの垂直部IS1b、IS2b、…、ISnbに対応して、個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnが形成される。また、共通供給部Sに対応して開口部が形成される(図示せず)。
【0054】
なお、本例では、圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anと個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnとが一体化されて形成されている。
【0055】
圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anは、圧力室PC1、PC2、…、PCnの断面形状(平面の断面形状)に対応して形成され、個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnは、個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの垂直部IS1b、IS2b、…、ISnbの断面形状(平面の断面形状)に対応して形成されている。
【0056】
以上の構成の分離プレート20が、圧力室プレート16と第1共通供給流路プレート18の上に配置されると、第1共通供給流路CS1の上面部が閉塞される(ただし、共通供給部Sに相当する部分は除く)。また、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の上面部が閉塞される(ただし、垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bとの連結部に相当する部分は除く)。これにより、第1共通供給流路CS1が形成されるとともに、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aと、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbが形成される。
【0057】
なお、圧力室開口部20A1、20A2、…、20Anは、圧力室PC1、PC2、…、PCnの一部を構成し、個別供給流路開口部20B1、20B2、…、20Bnは、個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの垂直部IS1b、IS2b、…、ISnbの一部を構成する。
【0058】
振動板22は、所定厚さを有する矩形の薄板状に形成され、分離プレート20の上に配置される。この振動板22は、圧力室プレート16の平面形状に対応して形成され、圧力室プレート16の配置位置の上方に配置される。圧力室PC1、PC2、…、PCnは、この振動板22が配置されることにより、上面部が閉塞される。すなわち、振動板22は、圧力室プレート16に形成された各圧力室PC1、PC2、…、PCnの上面を構成する。
【0059】
圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnは、各圧力室PC1、PC2、…、PCnに対応して、振動板22の上に配置される。各圧力室PC1、PC2、…、PCnは、この圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnを駆動することにより、上面部が変位し、容積を膨張・収縮する。
【0060】
圧力室上部プレート24は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、振動板22の上に配置される。この圧力室上部プレート24は、振動板22の平面形状に対応して形成され、その下面部には、圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnに対応して矩形の凹部24A1、24A2、…、24Anが形成される。
【0061】
以上の構成の圧力室上部プレート24が、振動板22の上に配置されると、凹部24A1、24A2、…、24Anの内側に各圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnが収容される。これにより、各圧電素子PZ1、PZ2、…、PZnが変位可能に取り付けられる。
【0062】
第2共通供給流路プレート26は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、圧力室上部プレート24と並列して分離プレート20の上に配置される。この第2共通供給流路プレート26は、第1共通供給流路プレート18の平面形状に対応して形成され、その下面部には、第2共通供給流路CS2と、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaと、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bとが形成される。また、その上面部には、共通供給部Sに対応して、供給口SP(図示せず)が第2共通供給流路CS2に貫通して形成される。
【0063】
第2共通供給流路CS2は、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。なお、この第2共通供給流路CS2は、第1共通供給流路CS1と同じ幅、同じ深さで形成され、第2共通供給流路プレート26を分離プレート20の上に配置すると、第1共通供給流路CS1の上に配置される。
【0064】
偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaは、第1共通供給流路プレート18に形成された偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この水平部IS2a、IS4a、…、ISnaは、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は、第2共通供給流路CS2に連通され、他端(左端)は、第2共通供給流路プレート26の左側面に開口して形成される。
【0065】
奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bは、第1共通供給流路プレート18に形成された奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bは、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(右端)は閉塞され、他端(左端)は、第2共通供給流路プレート26の左側面に開口して形成される。
【0066】
以上の構成の第2共通供給流路プレート26を圧力室上部プレート24に並列させて、分離プレート20の上に配置すると、第2共通供給流路CS2の下面部が閉塞される(ただし、共通供給部Sに相当する部分は除く)。また、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの下面部が閉塞される(ただし、垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbとの連結部は除く)。これにより、第2共通供給流路CS2が形成されるとともに、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaと、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bが形成される。
【0067】
そして、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bが、分離プレート20に形成された奇数番の個別供給流路開口部20B1、20B3、…、20Bn−1を介して、第1共通供給流路プレート18に形成された奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部IS1a、IS3a、…、ISn−1aに連通される。
【0068】
また、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの水平部IS2a、IS4a、…、ISnaが、分離プレート20に形成された偶数番の個別供給流路開口部20B2、20B4、…、20Bnを介して、第2共通供給流路プレート26に形成された偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの垂直部IS2b、IS4b、…、ISnbに連通される。
【0069】
図7は、各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は第1共通供給流路CS1と各圧力室との連通関係を示しており、同図(b)は第2共通供給流路CS2と各圧力室との連通関係を示している。
【0070】
同図(a)に示すように、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して第1共通供給流路CS1に連通される。また、同図(b)に示すように、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して第2共通供給流路CS2に連通される。これにより、隣り合う圧力室が、異なる共通供給流路に連通される。
【0071】
なお、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、分離プレート20の共通供給部Sに相当する部分に形成された開口部(図示せず)を介して、互いに連通される。
【0072】
[作用]
以上のように構成された本実施の形態の液滴吐出ヘッド10の作用は次のとおりである。
【0073】
ノズルN1、N2、…、Nnから吐出させる液体は、図示しない液体タンクから図示しない供給ラインを介して供給口SPに供給される。
【0074】
供給口SPから供給された液体は、共通供給部Sを介して第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2に供給される。
【0075】
上記のように、第1共通供給流路CS1には、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が連通されている(図7(a)参照)。また、第2共通供給流路CS2には、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが連通されている(図7(b)参照)。
【0076】
したがって、第1共通供給流路CS1に供給された液体は、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に供給される。また、第2共通供給流路CS2に供給された液体は、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに供給される。
【0077】
このように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、隣り合う圧力室が、異なる共通供給流路に連通されて、吐出する液体が供給される。
【0078】
これにより、隣接する圧力室の圧力波の影響を物理的に分離でき、クロストークの発生を防止することができる。また、これにより各個別供給流路の設計の自由度も高くなるので、リフィル性能の向上も図ることができる。
【0079】
また、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2を形成する際、1つの流路を上下に二分し、分離プレート20を介在させて、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とを形成しているので、簡単に複数の共通供給流路を形成することができる。
【0080】
また、本実施の形態の液滴吐出ヘッド10では、各個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの容積を同じにしているので、各ノズル間で吐出性能にバラツキがなく、安定した吐出を行うことができる。
【0081】
なお、上記実施の形態では、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1に垂直部IS1b、IS3b、…、ISn−1bを形成することにより、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の容積を偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnの容積と同じにしているが、たとえば、図8に示すように、第1共通供給流路CS1を横方向にシフトして配置することにより、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1の水平部の流路長を延ばして、各個別供給流路IS1、IS2、…、ISnの容積を同じにしてもよい。
【0082】
なお、このように第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2は、必ずしも上下同じ位置に重ねて配置する必要はない。ただし、上記実施の形態のように、第1共通供給流路CS1と第2共通供給流路CS2とを上下同じ位置に重ねて配置することにより、省スペース化を図ることができる。
【0083】
また、上記実施の形態では、2つの共通供給流路を設けているが、さらに複数の共通供給流路を形成することもできる。これにより、クロストークの発生を防止できる。
【0084】
図8は、共通供給流路を4つ設けた液滴吐出ヘッドの一例を示す断面図である。
【0085】
同図に示す例では、4つの共通供給流路CS1〜CS4が、4段に積み重ねられて、階層的に配置された構成とされている。
【0086】
上記実施の形態と同様に、第1共通供給流路CS1は、第1共通供給流路プレート18に形成され、その上段に分離プレート(第1分離プレート)20が配置されている。
【0087】
第1分離プレート20の上段には、第2共通供給流路プレート26が配置され、この第2共通供給流路プレート26に第2共通供給流路CS2が形成される。
【0088】
第2共通供給流路プレート26の上段には、第2分離プレート32が配置され、その上段に第3共通供給流路プレート34が配置される。第3共通供給流路CS3は、この第3共通供給流路プレート34に形成される。
【0089】
第3共通供給流路プレート34の上段には、第3分離プレート36が配置され、その上段に第4共通供給流路プレート38が配置される。第4共通供給流路CS4は、この第4共通供給流路プレート38に形成される。
【0090】
第1共通供給流路CS1は、第1分離プレート20を介して第2共通供給流路CS2と分離され、第2共通供給流路CS2は、第2分離プレート32を介して第3共通供給流路CS3と分離される。また、第3共通供給流路CS3は、第3分離プレート36を介して第4共通供給流路CS4と分離される。
【0091】
また、各共通供給流路CS1〜CS4は、それぞれ一端が、共通供給部に連通され、この共通供給部で互いに連通される。
【0092】
図9は、各圧力室と共通供給流路との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は第1共通供給流路CS1と各圧力室との連通関係、同図(b)は第2共通供給流路CS2と各圧力室との連通関係、同図(c)は第3共通供給流路CS3と各圧力室との連通関係、同図(d)は第4共通供給流路CS4と各圧力室との連通関係を示している。
【0093】
同図に示すように、各共通供給流路CS1〜CS4には、3つ飛ばしの間隔で並列して配置された圧力室が連通される。
【0094】
すなわち、同図(a)に示すように、第1共通供給流路CS1には、第1、第5、第9、…、第n−3番目の圧力室PC1、PC5、PC9、…、PCn−3が連通される(nは4の倍数)。
【0095】
また、同図(b)に示すように、第2共通供給流路CS2には、第2、第6、第10、…、第n−2番目の圧力室PC2、PC6、PC10、…、PCn−2が連通される。
【0096】
また、同図(c)に示すように、第3共通供給流路CS3には、第3、第7、第11、…、第n−1番目の圧力室PC3、PC7、PC11、…、PCn−1が連通される。
【0097】
また、同図(d)に示すように、第4共通供給流路CS4には、第4、第8、第12、…、第n番目の圧力室PC4、PC8、PC12、…、PCnが連通される。
【0098】
各圧力室は、個別供給流路を介して、対応する共通供給流路に連通される。すなわち、図9(a)に示すように、第1、第5、第9、…、第n−3番目の圧力室PC1、PC5、PC9、…、PCn−3は、第1、第5、第9、…、第n−3番目の個別供給流路IS1、IS5、IS9、…、ISn−3を介して第1共通供給流路CS1に連通される。
【0099】
また、図9(b)に示すように、第2、第6、第10、…、第n−2番目の圧力室PC2、PC6、PC10、…、PCn−2は、第2、第6、第10、…、第n−2番目の個別供給流路IS2、IS6、IS10、…、ISn−2を介して第2共通供給流路CS2に連通される。
【0100】
また、図9(c)に示すように、第3、第7、第11、…、第n−1番目の圧力室PC3、PC7、PC11、…、PCn−1は、第3、第7、第11、…、第n−1番目の個別供給流路IS3、IS7、IS11、…、ISn−1を介して第3共通供給流路CS3に連通される。
【0101】
また、図9(d)に示すように、第4、第8、第12、…、第n番目の圧力室PC4、PC9、PC12、…、PCnは、第4、第8、第12、…、第n番目の個別供給流路IS4、IS8、IS12、…、ISnを介して第4共通供給流路CS4に連通される。
【0102】
このように、さらに複数の共通供給流路を形成することにより、隣接する圧力室の圧力波の影響を低減でき、さらに効率よくクロストークの発生を防止できる。
【0103】
《第2の実施の形態》
[構成]
図10は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2の実施の形態の底面図である。また、図11、図12は、それぞれ図10の11−11断面図、12−12断面図である。
【0104】
同図に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50は、共通回収流路CC1、CC2を備えており、液体が圧力室PC1、PC2、…、PCnに循環供給される。
【0105】
なお、共通回収流路CC1、CC2を有する点以外は、上述した第1の実施の形態の液滴吐出ヘッド10の構成と同じなので、ここでは、共通回収流路CC1、CC2の構成についてのみ説明する。
【0106】
図10〜図12に示すように、各圧力室PC1、PC2、…、PCnに連通されたノズル流路NC1、NC2、…、NCnには、それぞれ個別回収流路IC1、IC2、…、ICnが連通され、この個別回収流路IC1、IC2、…、ICnを介して第1共通回収流路CC1又は第2共通回収流路CC2に連通されている(奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が第1共通回収流路CC1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが第2共通回収流路CC2に連通されている。)。各圧力室PC1、PC2、…、PCnの液体は、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnから個別回収流路IC1、IC2、…、ICnを介して第1共通回収流路CC1又は第2共通回収流路CC2に回収される。
【0107】
この第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、圧力室PC1、PC2、…、PCnの配列方向(ヘッドの長手方向)に沿って配置され、上下に階層的に配置される(第1共通回収流路CC1が下段、第2共通回収流路CC2が上段に配置される。)。
【0108】
また、この第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、それぞれ一端(図10の下端)が、共通回収部Cに連通され、この共通回収部Cで互いに連通される。共通回収部Cには、ヘッド外部に連通された回収口CPが連通され、この回収口CPから外部に液体が回収される。
【0109】
図11、図12に示すように、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、ノズル流路プレート14に並列して配置された共通回収流路プレート52に形成されている。この共通回収流路プレート52は、第1共通回収流路プレート54と、回収流路分離プレート56と、第2共通回収流路プレート58とで構成されている。
【0110】
第1共通回収流路プレート54は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、ノズル流路プレート14と並列してノズルプレート12の上に配置される。この第1共通回収流路プレート54には、上面部に第1共通回収流路CC1と、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の一部(水平部)と、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの一部(第2水平部)が形成される。
【0111】
第1共通回収流路CC1は、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。
【0112】
奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1は、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1は、水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aと、垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bとで構成され、水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aが、第1共通回収流路プレート54に形成される。
【0113】
また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnは、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに対応して形成され、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成される。この偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ISnは、第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaと、第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbとで構成され、第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbが、第1共通回収流路プレート54に形成される。
【0114】
この奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1と、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnは、すべて容積が同じになるように形成される。このため、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1に垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bが形成される。このように、すべての個別回収流路IC1、IC2、…、ICnの容積を同じにすることにより、吐出性能にバラツキが生じるのを防止でき、各ノズルN1、N2、…、Nnから安定した液滴の吐出が可能になる。
【0115】
奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(左端)は、第1共通回収流路CC1に連通され、他端(右端)は、第1共通回収流路プレート54の右側面に開口して形成される。
【0116】
偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbは、上部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(左端)は閉塞され、他端(右端)は、第1共通回収流路プレート54の右側面に開口して形成される。
【0117】
第1共通回収流路プレート54に並列して配置されるノズル流路プレート14には、各ノズル流路NC1、NC2、…、NCnに対応して連通穴14A1、14A2、…、14Anが形成されている。各連通穴14A1、14A2、…、14Anは、ノズル流路NC1、NC2、…、NCnの形成間隔と同じ間隔で形成されており、一端(左端)がノズル流路プレート14の左側面に開口して形成されるとともに、他端(右端)がノズル流路NC1、NC2、…、NCnに連通して形成されている。
【0118】
第1共通回収流路プレート54をノズル流路プレート14に並列させて、ノズルプレート12の上に配置すると、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aが、奇数番の連通穴14A1、14A3、…、14An−1に連通される。また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbが、偶数番の連通穴14A2、14A4、…、14Anに連通される。
【0119】
回収流路分離プレート56は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、第1共通回収流路プレート54の上に配置される。この回収流路分離プレート56には、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bの一部を構成する個別回収流路開口部56A1、56A3、…、56An−1が形成されるとともに、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaと第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbとを連通する個別回収流路開口部56A2、56A4、…、56Anが形成される。
【0120】
以上の構成の回収流路分離プレート56が、第1共通回収流路プレート54の上に配置されると、第1共通回収流路CC1の上面部が閉塞される(ただし、共通回収部Cに相当する部分は除く)。また、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の上面部が閉塞される(ただし、垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bとの連結部に相当する部分は除く)。また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbの上面部が閉塞される(ただし、第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaとの連結部に相当する部分は除く)。これにより、第1共通回収流路CC1が形成されるとともに、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aと、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbが形成される。
【0121】
第2共通回収流路プレート58は、所定の厚さを有する矩形の板状に形成され、回収流路分離プレート56の上に配置される。この第2共通回収流路プレート58の下面部には、第2共通回収流路CC2と、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaと、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bとが形成される。また、その上面部には、共通回収部Cに対応して、回収口CP(図示せず)が第2共通回収流路CC2に貫通して形成される(圧力室プレート16、分離プレート20、振動板22、及び、圧力室上部プレート24にも同様に回収口CPが形成される。)。
【0122】
第2共通回収流路CC2は、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもってヘッドの長手方向(ノズル、圧力室の配列方向)に沿って形成される。なお、この第2共通回収流路CC2は、第1共通回収流路CC1と同じ幅、同じ深さで形成され、第2共通回収流路プレート58を分離プレート20の上に配置すると、第1共通回収流路CC1の上に配置される。
【0123】
偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaは、第1共通回収流路プレート54に形成された偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaは、下部が開口した溝状に形成され、所定幅、所定深さをもって、ヘッドの長手方向と直交する方向に形成される。また、その一端(左端)は、第2共通回収流路CC2に連通され、他端(右端)は閉塞される。
【0124】
奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bは、第1共通回収流路プレート54に形成された奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aに対応して形成されており、ヘッドの長手方向に沿って一定ピッチで形成されている。この垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bは、水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aの断面と同じ断面を有する凹部として所定深さをもって第2共通回収流路プレート58の下面部に形成される。
【0125】
以上の構成の第2共通回収流路プレート58を回収流路分離プレート56の上に配置すると、第2共通回収流路CC2の下面部が閉塞される(ただし、共通回収部Cに相当する部分は除く)。これにより、第2共通回収流路CC2が形成される。
【0126】
また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第1水平部IC2a、IC4a、…、ICnaが、回収流路分離プレート56に形成された偶数番の個別回収流路開口部56A2、56A4、…、56Anを介して、第1共通回収流路プレート54に形成された偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnの第2水平部IC2b、IC4b、…、ICnbと連通される。これにより、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnが形成される。
【0127】
また、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の垂直部IC1b、IC3b、…、ICn−1bが、回収流路分離プレート56に形成された奇数番の個別回収流路開口部56A1、56A3、…、56An−1を介して、第1共通回収流路プレート54に形成された奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1の水平部IC1a、IC3a、…、ICn−1aと連通される。これにより、個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1が形成される。
【0128】
なお、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2は、分離プレート20の共通回収部Cに相当する部分に形成された開口部(図示せず)を介して、互いに連通される。
【0129】
図13は、各圧力室と共通供給流路及び共通回収流路との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は奇数番の圧力室との連通関係を示しており、同図(b)は偶数番の圧力室との連通関係を示している。
【0130】
同図(a)に示すように、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1は、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して第1共通供給流路CS1に連通される。また、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1を介して第1共通回収流路CC1に連通される。
【0131】
一方、同図(b)に示すように、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnは、偶数番の個別共通流路IS2、IS4、…、ISnを介して第2共通供給流路CS2に連通される。また、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnを介して第2共通回収流路CC2に連通される。
【0132】
このように、隣り合う圧力室は、異なる共通供給流路に連通されるとともに、異なる共通回収流路に連通される。この際、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1は、下段に位置した第1共通供給流路CS1に連通されるとともに、下段上段に位置した第1共通回収流路CC1に連通され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnは、上段に位置した第2共通供給流路CS2に連通されるとともに、上段に位置した第2共通回収流路CC2に連通される。これにより、各圧力室間で水頭差の影響をなくすことができ、各ノズルN1、N2、…、Nnから安定した液滴の吐出が可能になる。
【0133】
[作用]
以上のように構成された本実施の形態の液滴吐出ヘッド50の作用は次のとおりである。
【0134】
液滴吐出ヘッド50に形成された供給口SPには、図示しない供給ラインが接続され、この供給ラインを介して図示しない液体タンクに接続される。一方、回収口CPには、図示しない回収ラインが接続され、この回収ラインを介して図示しない液体タンクに接続される。供給ラインには、図示しない供給ポンプが設けられており、この供給ポンプを駆動することにより、液体タンク内の液体が供給ラインを介して供給口SPに液体が供給される。また、回収ラインには、図示しない回収ポンプが設けられており、この回収ポンプを駆動することにより、液滴吐出ヘッド50内の液体が回収口CPから回収ラインを介して液体タンクに回収される。すなわち、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50において、ノズルから吐出させる液体は、循環供給される。
【0135】
供給口SPに供給された液体は、共通供給部Sを介して第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2に供給される。
【0136】
第1共通供給流路CS1には、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1が連通されている(図7(a)参照)。また、第2共通供給流路CS2には、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnが連通されている(図7(b)参照)。したがって、第1共通供給流路CS1に供給された液体は、奇数番の個別供給流路IS1、IS3、…、ISn−1を介して、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1に供給される。また、第2共通供給流路CS2に供給された液体は、偶数番の個別供給流路IS2、IS4、…、ISnを介して、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnに供給される。このように、隣り合う圧力室に対して、異なる共通供給流路から液体が供給される。
【0137】
一方、図13(a)に示すように、奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1のノズル流路NC1、NC3、…、NCn−1には、奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1を介して第1共通回収流路CC1が連通されている。また、図13(b)に示すように、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCnのノズル流路NC2、NC4、…、NCnには、偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnを介して第2共通回収流路CC2が連通されている。奇数番の圧力室PC1、PC3、…、PCn−1内の液体は、ノズル流路NC1、NC3、…、NCn−1から奇数番の個別回収流路IC1、IC3、…、ICn−1を介して第1共通回収流路CC1に回収され、偶数番の圧力室PC2、PC4、…、PCn内の液体は、ノズル流路NC2、NC4、…、NCnから偶数番の個別回収流路IC2、IC4、…、ICnを介して第2共通回収流路CC2に回収される。このように、隣り合う圧力室に対して、異なる共通回収流路から液体が回収される。
【0138】
以上のように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50では、ノズルから吐出させる液体が循環供給される。この際、隣り合う圧力室に対して、異なる共通供給流路から液体が供給されるとともに、隣り合う圧力室に対して、異なる共通回収流路から液体が回収される。これにより、隣接する圧力室の圧力波の影響を物理的に分離でき、クロストークの発生を防止することができる。また、これにより各個別供給流路の設計の自由度も高くなるので、リフィル性能の向上も図ることができる。
【0139】
また、本実施の形態の液滴吐出ヘッド50では、下段に位置した第1共通供給流路CS1に連通させた圧力室(奇数番の圧力室)は、下段に位置した第1共通回収流路CC1に連通させ、上段に位置した第2共通供給流路CS2に連通させた圧力室(偶数番の圧力室)は、上段に位置した第2共通回収流路CC2に連通させ、各圧力室間で水頭差の影響をなくしているので、各ノズルN1、N2、…、Nn間でバラツキのない安定した液滴の吐出を行うことができる。
【0140】
なお、上記実施の形態では、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2を上下に重ねて同じ位置に配置しているが、必ずしも上下同じ位置に重ねて配置する必要はなく、横方向にずらして配置するようにしてもよい。ただし、上記実施の形態のように、第1共通回収流路CC1と第2共通回収流路CC2とを上下同じ位置に重ねて配置することにより、省スペース化を図ることができる。また、1つの流路を上下に分割し、分離プレートで2分割することにより、簡単に複数の共通回収流を形成することができる。
【0141】
また、上記実施の形態では、2つの共通回収流路を設けているが、さらに複数の共通回収流路を形成することもできる。これにより、クロストークの発生を防止できる。
【0142】
《第3の実施の形態》
図14は、本発明に係る液滴吐出ヘッドの第3の実施の形態の底面図である。
【0143】
同図に示すように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド70は、ノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]が、ノズル面に二次元マトリクス状に配置されている(いわゆるマトリクスヘッド)。ノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]をこのような配置構成とすることにより、ヘッドの長手方向に投影される実質的なノズルN[x,y]の間隔を狭めることができ、ノズルN[x,y]の高密度化を図ることができる。
【0144】
ノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]は、ヘッドの長手方向に対して所定角度傾斜した方向に並列して配置されるノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]の列を一単位とし、このノズルN[x,y]及び圧力室PC[x,y]の列が、ヘッドの長手方向に沿って一定間隔で配置される。
【0145】
各ノズルN[x,y]から吐出させる液体を圧力室PC[x,y]に供給する共通供給流路は、共通供給流路本流CSmと、その共通供給流路本流CSmから分岐する複数の共通供給流路支流CSb[x]とで構成される。
【0146】
共通供給流路本流CSmは、ヘッドの長手方向にそって形成され、一端(図13の右端)に供給口が連通される。
【0147】
共通供給流路支流CSb[x]は、圧力室PC[x,y]の列単位で設けられ、各列の圧力室PC[x,y]の配列方向に沿って所定角度傾斜して形成される。そして、一端(図13の上端)が共通供給流路本流CSmに連通される。
【0148】
各共通供給流路支流CSb[x]は、第1共通供給流路支流CSb1[x]と第2共通供給流路支流CSb2[x]とで構成されており、上下に重ねて階層的に配置されている(1つの流路を上下に分断して、分離プレートで上下に分離して形成されている。図2、3参照)。
【0149】
各列の圧力室PC[x,y]は、各列の圧力室PC[x,y]に並列して配置された共通供給流路CSb[x]に個別供給流路IS[x,y]を介して連通され、この個別供給流路[x,y]を介して共通供給流路CSb[x]から液体が供給される。
【0150】
ここで、各列の圧力室PC[x,y]は、奇数行の圧力室PC[x,y]は、第1共通供給流路支流CSb1[x]に連通され、偶数番の圧力室PC[x,y]は、第2共通供給流路支流CSb2[x]に連通される。すなわち、各列において、隣り合う圧力室PC[x,y]が、異なる共通供給流路支流に連通される。
【0151】
図15は、各圧力室PC[x,y]と共通供給流路支流との連通関係を示す概念図である。なお、同図(a)は第1共通供給流路支流CSb1[x]と各圧力室との連通関係を示しており、同図(b)は第2共通供給流路支流CSb2[x]と各圧力室との連通関係を示している。
【0152】
同図(a)に示すように、各列の圧力室PC[1,y]、PC[2,y]、…において、奇数行の圧力室PC[1,1]、PC[1,3]、…、PC[2,1]、PC[2,3]、…、PC[3,1]、PC[3,3]、…、…は、それぞれ各列の第1共通供給流路支流CSb1[1]、CSb1[2]、…に連通される。
【0153】
また、同図(b)に示すように、各列の圧力室PC[1,y]、PC[2,y]、…において、偶数行の圧力室PC[1,2]、PC[1,4]、…、PC[2,2]、PC[2,4]、…、PC[3,2]、PC[3,4]、…、…は、それぞれ各列の第2共通供給流路支流CSb2[1]、CSb2[2]、…に連通される。
【0154】
このように、各列において、隣り合う圧力室PC[x,y]が、異なる共通供給流路支流に連通される。
【0155】
以上のように、本実施の形態の液滴吐出ヘッド70によれば、マトリクスヘッドにおいて、隣り合う圧力室PC[x,y]が、異なる共通供給流路支流に連通されて、液体が供給される。これにより、クロストークの発生を防止できる。
【0156】
なお、このようなマトリクスヘッドにおいて液体を循環供給する場合は、上記第2の実施の形態と同様に共通回収流路を複数形成し、隣り合う圧力室が異なる共通回収流路に連通されるように構成することが好ましい。
【0157】
また、このようなマトリクスヘッドにおいても、共通供給流路支流は、さらに複数段に分けて形成することができる。
【0158】
なお、本発明の液滴吐出ヘッドは、たとえば、インクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置の記録ヘッド(インクジェットヘッド)に適用することができる。
【符号の説明】
【0159】
10、50、70…液滴吐出ヘッド、10A…ノズル面、12…ノズルプレート、14…ノズル流路プレート、16…圧力室プレート、18…第1共通供給流路プレート、20…分離プレート(第1分離プレート)、22…振動板、PZ1、PZ2、…、PZn…圧電素子、26…第2共通供給流路プレート、30…第2分離プレート、34…第3共通供給流路プレート、36…第3分離プレート、38…第4共通供給流路プレート、52…共通回収流路プレート、54…第1共通回収流路プレート、56…回収流路分離プレート、58…第2共通回収流路プレート、N1、N2、…、Nn…ノズル、PC1、PC2、…、PCn…圧力室、CS1…第1共通供給流路、CS2…第2共通供給流路、CS3…第3共通供給流路、CS4…第4共通供給流路、IS1、IS2、…、ISn…個別供給流路、CC1…第1共通回収流路、CC2…第2共通回収流路、IC1、IC2、…、ICn…個別回収流路、N[x,y]…ノズル、PC[x,y]…圧力室、CSm…共通供給流路本流、CSb[x]…共通供給流路支流、CSb1[x]…第1共通供給流路支流、CSb2[x]…第2共通供給流路支流、IS[x,y]…個別供給流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路が配置され、該共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給される液体吐出ヘッドにおいて、
前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記複数の共通供給流路は、1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記各個別供給流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路と共通回収流路とが配置され、前記共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給されるともに、前記共通回収流路に連通された個別回収流路を介して前記各圧力室内の前記液体が回収されて、前記圧力室に前記液体が循環供給される液体吐出ヘッドにおいて、
前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通回収流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別回収流路を介して異なる共通回収流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数の共通供給流路と前記複数の共通回収流路は、ともに1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
同じ圧力室に連通される前記個別供給流路と前記個別回収流路は、同じ階層の共通供給流路と共通回収流路に連通されることを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記各個別供給流路の容積が同じに形成されるとともに、前記各個別回収流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
所定の配列方向に沿って一定ピッチで複数配置された前記圧力室の列が、一定方向に一定ピッチで複数配列されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項1】
圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路が配置され、該共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給される液体吐出ヘッドにおいて、
前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記複数の共通供給流路は、1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記各個別供給流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
圧力室の容積をアクチュエータで膨張・収縮させて、前記圧力室に連通されたノズルから前記圧力室に貯留された液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドであって、所定の配列方向に沿って前記圧力室が一定ピッチで複数配置されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って共通供給流路と共通回収流路とが配置され、前記共通供給流路に連通された個別供給流路を介して前記各圧力室に前記液体が供給されるともに、前記共通回収流路に連通された個別回収流路を介して前記各圧力室内の前記液体が回収されて、前記圧力室に前記液体が循環供給される液体吐出ヘッドにおいて、
前記圧力室の配列方向に沿って前記共通供給流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別供給流路を介して異なる共通供給流路に連通されるとともに、前記圧力室の配列方向に沿って前記共通回収流路が複数配置され、隣り合う前記圧力室が、前記個別回収流路を介して異なる共通回収流路に連通されることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数の共通供給流路と前記複数の共通回収流路は、ともに1つの流路の内部を上下複数の層に分割して形成されることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記1つの流路を形成する基板を上下に複数分割し、分割した各基板の間に分離プレートを配置することにより、前記一つの流路の内部が上下複数の層に分割されることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
同じ圧力室に連通される前記個別供給流路と前記個別回収流路は、同じ階層の共通供給流路と共通回収流路に連通されることを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記各個別供給流路の容積が同じに形成されるとともに、前記各個別回収流路の容積が同じに形成されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
所定の配列方向に沿って一定ピッチで複数配置された前記圧力室の列が、一定方向に一定ピッチで複数配列されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−177620(P2011−177620A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42508(P2010−42508)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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