説明

液滴吐出方法、液滴吐出装置及び液晶パネルの製造方法

【課題】液状体の偏在を抑制してより均等なセルギャップを設定することができる液滴吐
出方法、液滴吐出装置及び液晶パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッドから液晶Fの液滴Fbを、所定の傾斜角度θを有して相対移
動しながら貼合される一対のマザーガラス基板100,200の一方のマザーガラス基板
100に吐出して液晶Fを配置する。液晶Fを、傾斜角度θに応じてマザーガラス基板1
00,200の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が大きくなる側よりも低密度にな
るように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法、液滴吐出装置及び液晶パネルの製造方法に関するものである

【背景技術】
【0002】
従来、注入法で液晶パネルを製造する場合、まず2枚の基板を貼り合せた後、その内部
を真空雰囲気にして液晶を充填する。この方法は、例えば20インチパネルで液晶の注入
時間が20時間以上必要になるなど、1枚の液晶パネルを製造する時間が長くなるという
問題を有している。
【0003】
そこで、近年は、液滴吐出装置により、2枚の基板を貼り合せる前に、一方の基板に必
要量の液晶を予め供給し、その後、他方の基板と貼り合わせる方法が提案されている(例
えば特許文献1など)。
【特許文献1】特開2004−344704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液滴吐出装置による方法では、図8に示されるように、一方の基板91に形
成したループ状のシール材92の内側に必要量の液晶93を均等に供給し、その後、例え
ば真空中で対向する他方の基板94と貼り合わせる。ここで、吐出された液晶93の液滴
93aの高さは、シール材92の高さ(例えば10〜100μm程度)よりも高くなる。
つまり、2枚の基板91,94を貼合する際、基板94は、シール材92に接触するより
も先に液晶93に接することになる。
【0005】
このとき、両基板91,94を貼合するためにこれらを位置決め・保持する上下定盤の
平坦度合いや互いの平行度合い等の影響で液晶93の一側(図8の左側)に基板94が先
に接すると、先に接した側に液晶93が流れてしまう。従って、このように液晶93が偏
在する状態で2枚の基板91,94を貼合すると、セルギャップの不均等な液晶パネルが
製造されてしまう。特に、上下定盤間を加圧しシール材92を一定量だけつぶして基板9
1,94を貼合する場合にこのセルギャップの不均等は顕著に現れる。このセルギャップ
の不均等は、液晶パネルの表示品質悪化の要因となるものである。
【0006】
本発明の目的は、液状体の偏在を抑制してより均等なセルギャップを設定することがで
きる液滴吐出方法、液滴吐出装置及び液晶パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出方法は、上記課題を解決するため、所定の傾斜角度を有して相対移動
しながら貼合される一対の基板の一方の該基板に、吐出手段から液状体の液滴を吐出して
前記液状体を配置する液滴吐出方法であって、前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基
板の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が大きくなる側よりも低密度になるように前
記液状体を配置する。
【0008】
本発明の液滴吐出方法によれば、前記一対の基板を貼合する際、前記所定の傾斜角度に
応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さくなる側の前記一方の基板に配置された液状
体に、該一対の基板の他方の基板が先に接することになり、該液状体は、前記一対の基板
の貼合時の隙間が大きくなる側から該隙間が小さくなる側、即ち前記液状体が低密度にな
る側に流れる。このため、前記液状体の偏在を全体として抑制した状態で、前記一対の基
板を貼合することができ、より均等なセルギャップを設定することができる。
【0009】
本発明の液滴吐出方法の一態様では、前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼
合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が大きくなる側よりも低密度になるように分布密度
に傾斜を持たせて前記液状体を配置する。
【0010】
本発明の液滴吐出方法によれば、前記一対の基板の貼合時の隙間が大きくなる側から該
隙間が小さくなる側へと前記液状体が流れる際、該液状体を、その傾斜する分布密度に応
じて高密度になる側から低密度になる側へと円滑に流すことができる。このため、前記液
状体の偏在を全体として更に抑制した状態で、前記一対の基板を貼合することができ、更
に均等なセルギャップを設定することができる。
【0011】
本発明の液滴吐出方法の他の一態様では、前記一対の基板は、それぞれ互いに同等に区
画形成された複数の領域からなり、
前記領域ごとに、前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さく
なる側が、該隙間が大きくなる側よりも低密度になるように前記液状体を配置する。
【0012】
本発明の液滴吐出方法によれば、前記一対の基板の一方の該基板の前記複数の領域に前
記液状体の液滴をそれぞれ吐出する場合においても、前記領域ごとに、より均等なセルギ
ャップを設定することができる。
【0013】
本発明の液滴吐出装置は、所定の傾斜角度を有して相対移動しながら貼合される一対の
基板の一方の該基板に、吐出手段から液状体の液滴を吐出して前記液状体を配置する液滴
吐出装置であって、前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さく
なる側が、該隙間が大きくなる側よりも低密度になるように前記液状体を配置する。
【0014】
本発明の液滴吐出装置によれば、前記一対の基板を貼合する際、前記所定の傾斜角度に
応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さくなる側の前記一方の基板に配置された液状
体に、該一対の基板の他方の基板が先に接することになり、該液状体は、前記一対の基板
の貼合時の隙間が大きくなる側から該隙間が小さくなる側、即ち前記液状体が低密度にな
る側に流れる。このため、前記液状体の偏在を全体として抑制した状態で、前記一対の基
板を貼合することができ、より均等なセルギャップを設定することができる。
【0015】
本発明の液晶パネルの製造方法は、液晶の液滴を吐出手段にて吐出して、第1基板に前
記液晶を配置し、その後、第2基板を前記第1基板に対し所定の傾斜角度を有して相対移
動させながら該第1基板と貼合する液晶パネルの製造方法であって、前記所定の傾斜角度
に応じて前記第1及び第2基板の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が大きくなる側
よりも低密度になるように前記液晶を配置する。
【0016】
本発明の液晶パネルの製造方法によれば、前記第1及び第2基板を貼合する際、前記所
定の傾斜角度に応じて前記第1及び第2基板の貼合時の隙間が小さくなる側の前記第1基
板に配置された液晶に、前記第2基板が先に接することになり、該液晶は、前記第1及び
第2基板の貼合時の隙間が大きくなる側から該隙間が小さくなる側、即ち前記液晶が低密
度になる側に流れる。このため、前記液晶の偏在を全体として抑制した状態で、前記第1
及び第2基板を貼合することができ、より均等なセルギャップを有する液晶パネルを製造
することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した液滴吐出装置について説明する。
図1は、液滴吐出装置10を説明するための全体斜視図を示す。図1において、液滴吐
出装置10は、直方体形状に形成された基台11を有している。基台11の上面には、そ
の長手方向(Y矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝12が形成されている。案内溝1
2の上方には、案内溝12に沿って主走査方向(Y矢印方向及び反Y矢印方向)に移動す
るステージ13が備えられている。ステージ13の上面には、載置部14が形成されて、
一対の基板の一方の基板(第1基板)としてのマザーガラス基板100が載置される。マ
ザーガラス基板100は、載置部14において位置決め固定されてY矢印方向及び反Y矢
印方向に搬送される。
【0018】
マザーガラス基板100は、図2に示すように、大判のガラス基板であって、2点鎖線
で示すように、薄膜トランジスタ、走査線、データ線等が形成された液晶表示装置の素子
基板を形成するセル101が、マトリクス状に多数区画形成されている。マザーガラス基
板100に区画形成された各セル101には、例えば印刷装置又はディスペンサーにて描
画された四角枠状のシール材102が所定の位置に形成され、そのシール材102で囲ま
れた範囲(以下、配置領域Zという)に液滴吐出装置10によって液晶F(図5参照)が
配置される。各セル101には、必要な所定量の液晶Fが配置されるようになっている。
【0019】
なお、各セル101に液晶Fが配置されたマザーガラス基板100は、その後の工程で
一対の基板の他方の基板(第2基板)としてのマザーガラス基板200(図5参照)と貼
り合わされる。マザーガラス基板200は、大判のガラス基板であって、共通電極が形成
された液晶表示装置の対向基板を形成するセル201が、マトリクス状に多数区画形成さ
れている。これらマザーガラス基板100,200は、真空チャンバ内で貼合装置(重ね
合わせ装置)の上下定盤にそれぞれセットされ、対応するセル101,201同士が相対
向するように貼り合わされる。そして、貼り合わされたマザーガラス基板100,200
をセル101,201ごとにカットすることによって、素子基板と対向基板の間にシール
材102を介して液晶Fを封入した液晶表示装置の液晶パネルが多数製造される。
【0020】
以下、説明の便宜上、マザーガラス基板100の縦方向をY矢印方向とし、マザーガラ
ス基板100の横方向をX矢印方向とする。
図1において、基台11には、主走査方向と直交する副走査方向(X矢印方向及び反X
矢印方向)に跨ぐ門型のガイド部材15が架設されている。ガイド部材15の上側には、
X矢印方向に延びるタンク16が配設され、そのタンク16には液晶Fが収納されている

【0021】
タンク16に収容された液晶Fは、該タンク16に接続された供給チューブT(図4参
照)を介して吐出手段としての液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという。)20に
所定の圧力で供給されるようになっている。そして、吐出ヘッド20に供給された液晶F
は、該吐出ヘッド20から液滴Fb(図4参照)となって載置部14に載置されたマザー
ガラス基板100に向かって吐出されるようになっている。
【0022】
ガイド部材15には、そのX矢印方向略全幅にわたって、X矢印方向に延びる上下一対
のガイドレール18が形成されている。上下一対のガイドレール18には、キャリッジ1
9が取り付けられている。キャリッジ19は、ガイドレール18に案内されてX矢印方向
及び反X矢印方向に移動する。キャリッジ19には、吐出ヘッド20が搭載されている。
【0023】
図3は、吐出ヘッド20をマザーガラス基板100側(下側)から見た図である。吐出
ヘッド20のノズルプレート25は、一対のノズル列NLを備えている。一対のノズル列
NLでは、X矢印方向から見て、一方のノズル列NLの各ノズルNが、他方のノズル列N
Lの各ノズルNの間を補間する。すなわち、吐出ヘッド20は、X矢印方向に、1インチ
当りに180個×2=360個のノズルNを有する(最大解像度が360dpiである)

【0024】
図4は、吐出ヘッド20の内部構成を説明するための要部断面図である。
図4において、吐出ヘッド20の上側には、供給チューブTが連結されている。供給チ
ューブTは、タンク16の液晶Fを吐出ヘッド20に供給する。
【0025】
ノズルプレート25の各ノズルNの上側には、供給チューブTに連通するキャビティ2
6が形成されている。キャビティ26は、供給チューブTからの液晶Fを収容して、対応
するノズルNに液晶Fを供給する。キャビティ26の上側には、上下方向に振動してキャ
ビティ26内の容積を拡大及び縮小する振動板27が貼り付けられている。振動板27の
上側には、ノズルNに対応する圧電素子PZが配設されている。圧電素子PZは、上下方
向に収縮及び伸張して振動板27を上下方向に振動させる。上下方向に振動する振動板2
7は、液晶Fを所定サイズの液滴Fbにして対応するノズルNから吐出させる。吐出され
た液滴Fbは、対応するノズルNの反Z矢印方向に飛行して、直下を通過するマザーガラ
ス基板100の吐出面100aに対して着弾するようになっている。
【0026】
つまり、吐出ヘッド20の直下を主走査方向にマザーガラス基板100が移動するとき
、マザーガラス基板100の各セル101のシール材102で囲まれた配置領域Zに対し
て順番に、吐出ヘッド20から液滴Fbが吐出される。これにより、マザーガラス基板1
00の各セル101に液晶Fが所定量だけ配置される。
【0027】
図5は、吐出ヘッド20が、マザーガラス基板100(セル101)に、液滴Fbを吐
出して形成する液晶Fの配置パターンを示す図であり、便宜的に該マザーガラス基板10
0に貼合されつつあるマザーガラス基板200(セル201)を併せて図示している。こ
こで、マザーガラス基板100,200は、これらを位置決め・保持する上下定盤の平坦
度合いや互いの平行度合い等の影響で所定の傾斜角度θを有して上下方向(Z矢印方向又
は反Z矢印方向)に相対移動させながら貼合されるとする。この傾斜角度θは、使用する
貼合装置(重ね合わせ装置)が備える上下定盤に対して予め実験や試験で把握されたそれ
ら上下定盤の相対傾斜角度である。なお、このように上下定盤の相対傾斜角度を予め把握
するのは、初期調整等で上下定盤を完全な平行状態にすること、即ち傾斜角度θをゼロに
することが困難であるためである。
【0028】
図5では、マザーガラス基板100(セル101)の反Y矢印方向側に先鋭となる傾斜
角度θの例を示している。本実施形態では、マザーガラス基板100に配置される液晶F
の配置パターンは、傾斜角度θに応じてマザーガラス基板100,200の貼合時の隙間
(Z矢印方向の距離)が小さくなる側(図5の左側)が、該隙間が大きくなる側(図5の
右側)よりも低密度になっている。具体的には、傾斜角度θに応じてマザーガラス基板1
00,200の貼合時の隙間が小さくなる側(図5の左側)が、該隙間が大きくなる側(
図5の右側)よりも低密度になるように分布密度に傾斜を持たせて液晶Fを配置している
。このとき、マザーガラス基板100に吐出される液滴Fbの高さは、シール材102の
高さよりも高くなることはいうまでもない。
【0029】
図6は、液晶Fの配置されたマザーガラス基板100にマザーガラス基板200を貼合
するときの状態を示す図である。図6に示すように、マザーガラス基板100,200を
貼合すると、傾斜角度θに応じてマザーガラス基板100,200の貼合時の隙間が小さ
くなる側(図6の左側)の液晶Fに、マザーガラス基板200が先に接することになり、
該液晶Fは、マザーガラス基板100,200の貼合時の隙間が大きくなる側(図6の右
側)から該隙間が小さくなる側、即ち前記液晶Fが低密度になる側に流れる。これにより
、マザーガラス基板100(セル101)に配置された液晶Fは、均等に広がってその偏
在が解消される。なお、傾斜角度θ、即ち貼合時の液晶Fの流れを考慮した液晶Fの図5
に示した配置パターンは、予め実験や試験によって求めている。
【0030】
図4において、吐出ヘッド20のY矢印側の側面には、ラバーヒータHが取着され、キ
ャビティ26に収容された液晶Fを予め定めた目標温度に加熱する。ここで、目標温度と
は、吐出ヘッド20が液滴Fbとして吐出することができる粘性になる液晶Fの温度であ
って、本実施形態では、70℃としている。吐出ヘッド20の反Y矢印側の側面には、温
度検出センサSEが取着され、吐出ヘッド20を介してキャビティ26に収容された液晶
Fの温度を検出するようになっている。
【0031】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成を図7に従って説明する。
図7において、制御装置50は、CPU50A、ROM50B、RAM50C等を有し
ている。制御装置50は、格納された各種データ及び各種制御プログラムに従って、ステ
ージ13の搬送処理、キャリッジ19の搬送処理、吐出ヘッド20の液滴吐出処理を実行
する。また、制御装置50は、同様に、ラバーヒータHの駆動制御を実行する。
【0032】
制御装置50には、各種操作スイッチとディスプレイを有した入出力装置51が接続さ
れている。入出力装置51は、液滴吐出装置10が実行する各種処理の処理状況を表示す
る。入出力装置51は、マザーガラス基板100上に液滴Fbでパターンを形成するため
のビットマップデータBDを生成し、そのビットマップデータBDを制御装置50に入力
する。
【0033】
ビットマップデータBDは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて各圧電素子PZの
オンあるいはオフを規定したデータである。ビットマップデータBDは、吐出ヘッド20
(各ノズルN)の通過する各セル101のシール材102で囲まれた配置領域Zの各位置
に、液滴Fbを吐出するか否かを規定したデータである。すなわち、ビットマップデータ
BDは、セル101ごとに、シール材102で囲まれた配置領域Zに予め定めた配置パタ
ーンを形成させるための目標形成位置に液滴Fbを吐出させるためのデータである。
【0034】
詳述すると、本実施形態のビットマップデータBDは、図5に示すように、傾斜角度θ
に応じてマザーガラス基板100,200の貼合時の隙間が小さくなる側が該隙間が大き
くなる側よりも低密度になるように、分布密度に傾斜を持たせて液晶Fを配置するように
液滴Fbを吐出させるためのデータである。ビットマップデータBDが、予め実験や試験
によって求めた、傾斜角度θ、即ち貼合時の液晶Fの流れを考慮した液晶Fの配置パター
ンから作成されることはいうまでもない。
【0035】
制御装置50には、X軸モータ駆動回路52が接続されている。制御装置50は、駆動
制御信号をX軸モータ駆動回路52に出力する。X軸モータ駆動回路52は、制御装置5
0からの駆動制御信号に応答して、キャリッジ19を移動させるためのX軸モータMXを
正転又は逆転させる。制御装置50には、Y軸モータ駆動回路53が接続されている。制
御装置50は、駆動制御信号をY軸モータ駆動回路53に出力する。Y軸モータ駆動回路
53は、制御装置50からの駆動制御信号に応答して、ステージ13を移動させるための
Y軸モータMYを正転又は逆転させる。
【0036】
制御装置50には、ヘッド駆動回路54が接続されている。制御装置50は、所定の吐
出周波数に同期させた吐出タイミング信号LTaをヘッド駆動回路54に出力する。制御
装置50は、各圧電素子PZを駆動するための駆動電圧COMaを吐出周波数に同期させ
てヘッド駆動回路54に出力する。
【0037】
制御装置50は、ビットマップデータBDを利用して所定の周波数に同期したパターン
形成用制御信号SIaを生成し、パターン形成用制御信号SIaをヘッド駆動回路54に
シリアル転送する。ヘッド駆動回路54は、制御装置50からのパターン形成用制御信号
SIaを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。ヘッド駆動回路
54は、制御装置50からの吐出タイミング信号LTaを受けるたびに、シリアル/パラ
レル変換したパターン形成用制御信号SIaをラッチし、パターン形成用制御信号SIa
によって選択される圧電素子PZにそれぞれ駆動電圧COMaを供給する。
【0038】
制御装置50には、ラバーヒータ駆動回路55が接続されている。制御装置50は、ラ
バーヒータ駆動回路55に駆動制御信号を出力する。ラバーヒータ駆動回路55は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答して、ラバーヒータHを駆動制御する。そして、吐出
ヘッド20に取着したラバーヒータHは、吐出ヘッド20内の液晶Fを予め定めた目標温
度にまで加熱する。すなわち、ラバーヒータHによって、吐出ヘッド20に供給された液
晶Fは、予め定めた目標温度(本実施形態では70℃)に加熱されるようになっている。
【0039】
制御装置50には、温度検出センサSEが接続されている。制御装置50は、温度検出
センサSEからの検出信号を入力して、その時々の吐出ヘッド20内の液晶Fの温度を求
めるようになっている。制御装置50は、求めた液晶Fの温度と前記予め設定した目標温
度と比較し、液晶Fの温度が目標温度になるように、ラバーヒータ駆動回路55を介して
ラバーヒータHを駆動制御するようになっている。
【0040】
次に、上記液滴吐出装置10を利用してマザーガラス基板100の各セル101に所定
量の液晶Fを配置する方法について説明する。
いま、図1に示すように、吐出ヘッド20は、ステージ13から離間した反X矢印方向
の待機位置で待機している。この待機状態において、制御装置50は、温度検出センサS
Eからの検出信号を入力し、吐出ヘッド20内の液晶Fが目標温度になるように、ラバー
ヒータ駆動回路55を介してラバーヒータHを駆動して、加熱制御している。
【0041】
また、液晶Fの配置パターンを形成するためのビットマップデータBDが入出力装置5
1から制御装置50に入力されている。従って、制御装置50は、入出力装置51からの
ビットマップデータBDを格納している。
【0042】
そして、マザーガラス基板100をステージ13に載置する。このとき、マザーガラス
基板100は、ステージ13の載置部14上の反Y矢印方向側に配置され、入出力装置5
1から、制御装置50へ作業開始の指令信号が出力される。
【0043】
制御装置50は、X軸モータ駆動回路52を介してX軸モータMXを駆動して吐出ヘッ
ド20を待機位置からX矢印方向に移動させる。そして、吐出ヘッド20が、マザーガラ
ス基板100の最も反X矢印方向側にある各セル101(配置領域Z)がその直下をY矢
印方向に通過する位置まで移動すると、制御装置50は、X軸モータ駆動回路52を介し
てX軸モータMXを停止させるとともに、Y軸モータ駆動回路53を介してY軸モータM
Yを駆動して、マザーガラス基板100をY矢印方向移動させる。
【0044】
マザーガラス基板100をY矢印方向に移動させると、制御装置50は、ビットマップ
データBDに基づいてパターン形成用制御信号SIaを生成して、パターン形成用制御信
号SIaと駆動電圧COMaをヘッド駆動回路54に出力する。すなわち、制御装置50
は、ヘッド駆動回路54を介して各圧電素子PZを駆動制御して、各セル101の配置領
域Zが吐出ヘッド20の直下を通過するとき、当該セル101に対応する液晶の配置パタ
ーンを形成するために選択されたノズルNから液滴Fbを吐出させる。
【0045】
これにより、Y矢印方向の各セル101の配置領域Zには、傾斜角度θに応じてマザー
ガラス基板100,200の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が大きくなる側より
も低密度になるように分布密度に傾斜を持たせて液晶Fが配置される。
【0046】
マザーガラス基板100の最も反X矢印方向側にある各セル101(配置領域Z)への
液晶F(液滴Fb)の供給が終了すると、制御装置50は、Y軸モータ駆動回路53を介
してY軸モータMYを停止させるとともに、X軸モータ駆動回路52を介してX軸モータ
MXを駆動して吐出ヘッド20を、マザーガラス基板100の次の反X矢印方向側にある
各セル101(配置領域Z)が、その直下を反Y矢印方向に通過する位置まで、移動(フ
ィード)させる。
【0047】
吐出ヘッド20がフィードされると、制御装置50は、Y軸モータ駆動回路53を介し
てY軸モータMYを駆動して、ステージ13を反Y矢印方向に移動(スキャン)させる。
ステージ13の反Y矢印方向に移動を開始させると、制御装置50は、ビットマップデー
タBDに基づいてパターン形成用制御信号SIaを生成して、パターン形成用制御信号S
Iaと駆動電圧COMaをヘッド駆動回路54に出力する。すなわち、制御装置50は、
ヘッド駆動回路54を介して各圧電素子PZを駆動制御して、各セル101の配置領域Z
が吐出ヘッド20の直下を通過するとき、当該セル101に対応する液晶の配置パターン
を形成するために選択されたノズルNから液滴Fbを吐出させる。
【0048】
以後、同様な動作を繰り返して、マザーガラス基板100の全てのセル101に所定量
の液晶Fを上述した配置パターンに配置して、一つのマザーガラス基板100に対する各
セル101への液晶Fの供給が完了する。
【0049】
そして、各セル101に液晶Fが配置されたマザーガラス基板100は、マザーガラス
基板200との貼り合わせが行われる。このとき、各セル101に配置された液晶Fは、
前記傾斜角度θに応じてマザーガラス基板100,200の貼合時の隙間が大きくなる側
から該隙間が小さくなる側、即ち前記液晶Fが低密度になる側に流れて均等に広がる。
【0050】
そして、貼り合わされたマザーガラス基板100,200をセル101,201ごとに
カットすることによって、素子基板と対向基板の間にシール材102を介して液晶Fを封
入した液晶パネルが多数製造される。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記マザーガラス基板100,200を貼合する際、前記所定
の傾斜角度θに応じて前記マザーガラス基板100,200の貼合時の隙間が小さくなる
側の前記マザーガラス基板100に配置された液晶Fに、前記マザーガラス基板200が
先に接することになり、該液晶Fは、前記マザーガラス基板100,200の貼合時の隙
間が大きくなる側から該隙間が小さくなる側、即ち前記液晶Fが低密度になる側に流れる
。このため、前記液晶Fの偏在を全体として抑制した状態で、前記マザーガラス基板10
0,200を貼合することができ、より均等なセルギャップを有する液晶パネルを製造す
ることができる。そして、液晶パネル(液晶表示装置)の表示品質をより安定化して歩留
まりの向上を図ることができる。
【0052】
(2)本実施形態では、前記液晶Fを、前記所定の傾斜角度θに応じて前記マザーガラ
ス基板100,200の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が大きくなる側よりも低
密度になるように分布密度に傾斜を持たせて配置した。従って、前記マザーガラス基板1
00,200の貼合時の隙間が大きくなる側から該隙間が小さくなる側へと前記液晶Fが
流れる際、該液晶Fを、その傾斜する分布密度に応じて高密度になる側から低密度になる
側へと円滑に流すことができる。このため、前記液晶Fの偏在を全体として更に抑制した
状態で、前記マザーガラス基板100,200を貼合することができ、更に均等なセルギ
ャップを有する液晶パネルを製造することができる。
【0053】
(3)本実施形態では、マザーガラス基板100の複数のセル101(配置領域Z)に
前記液晶Fの液滴Fbをそれぞれ吐出する場合においても、前記セル101ごとに、より
均等なセルギャップを設定することができる。そして、貼り合わされたマザーガラス基板
100,200をセル101,201ごとにカットすることによって、より均等なセルギ
ャップを有する液晶パネルを多数製造することができる。
【0054】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形
が可能である。
【0055】
・傾斜角度θは、使用する貼合装置(重ね合わせ装置)が備える上下定盤に対して予め
実験や試験で把握されるものであって、マザーガラス基板100(セル101)の任意の
方向側に先鋭となる傾斜角度でよい。
【0056】
・前記実施形態において、各セル101内を、傾斜角度θに応じて前記マザーガラス基
板100,200の貼合時の隙間が大きくなる側から該隙間が小さくなる側に向かって複
数の範囲に分割し、各隣り合う範囲の液晶Fの分布密度がステップ状に変わるように該液
晶Fを配置してもよい。
【0057】
・前記実施形態において、一対の基板は、1枚の液晶パネルのみを構成する素子基板及
び対向基板の組み合わせであってもよい。
・前記実施形態において、マザーガラス基板100,200を貼り合わせる貼合装置(
重ね合わせ装置)は、例えばシール材102を一定量だけつぶす加圧式であってもよい。
【0058】
・前記実施形態では、吐出ヘッド20を停止させた状態で、ステージ13(マザーガラ
ス基板100)を移動させて、吐出ヘッド20から液滴Fbを吐出させるようにした。こ
れを、ステージ13(マザーガラス基板100)を停止させた状態で、吐出ヘッド20を
移動させて、その吐出ヘッド20から液滴Fbを吐出させるようにしてもよい。
【0059】
・前記実施形態では、素子基板用のマザーガラス基板100の各セル101にシール材
102を形成し、そのシール材102で囲まれた範囲(配置領域Z)に液晶Fを配置した
が、対向基板用のマザーガラス基板200の各セル201にシール材を形成し、そのシー
ル材で囲まれた範囲(配置領域)に液晶Fを配置してもよい。
【0060】
・前記実施形態では、液晶Fの液滴Fbを吐出ヘッド20によって吐出させて該液晶F
を配置するものに具体化したが、これに限定されるものではなく、例えばレジストの形成
、層間膜の形成、又は、配線層の形成するための適宜の液状体の液滴を吐出ヘッド20に
よって吐出させて該液状体を配置するものであってもよい。このレジストの形成、層間膜
の形成、配線層の形成する場合、液晶表示装置以外の、例えば有機EL表示装置等その他
の基板に応用してもよいことはいうまでもない。
【0061】
・前記実施形態では、吐出手段を、圧電素子駆動方式の吐出ヘッド20に具体化した。
これに限らず、吐出手段を、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐出ヘッドに具体化してもよ
い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】液滴吐出装置の全体斜視図。
【図2】マザーガラス基板を説明するための平面図。
【図3】液滴吐出ヘッドをマザーガラス基板側から見た下面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの要部側断面図。
【図5】各セルに配置される液晶の配置パターンを示す側面図。
【図6】各セルに配置される液晶の移動を示す側面図。
【図7】液滴吐出装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【図8】各セルに配置される液晶の配置パターン及び貼合時の移動を示す側面図。
【符号の説明】
【0063】
F…液晶、Fb…液滴、PZ…圧電素子、10…液滴吐出装置、13…ステージ、20
…吐出ヘッド、50…制御装置、100,200…マザーガラス基板、101,201…
セル、102…シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の傾斜角度を有して相対移動しながら貼合される一対の基板の一方の該基板に、吐出
手段から液状体の液滴を吐出して前記液状体を配置する液滴吐出方法であって、
前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間
が大きくなる側よりも低密度になるように前記液状体を配置することを特徴とする液滴吐
出方法。
【請求項2】
前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間が
大きくなる側よりも低密度になるように分布密度に傾斜を持たせて前記液状体を配置する
ことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出方法。
【請求項3】
前記一対の基板は、それぞれ互いに同等に区画形成された複数の領域からなり、
前記領域ごとに、前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さく
なる側が、該隙間が大きくなる側よりも低密度になるように前記液状体を配置することを
特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出方法。
【請求項4】
所定の傾斜角度を有して相対移動しながら貼合される一対の基板の一方の該基板に、吐出
手段から液状体の液滴を吐出して前記液状体を配置する液滴吐出装置であって、
前記所定の傾斜角度に応じて前記一対の基板の貼合時の隙間が小さくなる側が、該隙間
が大きくなる側よりも低密度になるように前記液状体を配置することを特徴とする液滴吐
出装置。
【請求項5】
液晶の液滴を吐出手段にて吐出して、第1基板に前記液晶を配置し、その後、第2基板を
前記第1基板に対し所定の傾斜角度を有して相対移動させながら該第1基板と貼合する液
晶パネルの製造方法であって、
前記所定の傾斜角度に応じて前記第1及び第2基板の貼合時の隙間が小さくなる側が、
該隙間が大きくなる側よりも低密度になるように前記液晶を配置することを特徴とする液
晶パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−194601(P2008−194601A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31615(P2007−31615)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】