説明

液滴吐出装置

【課題】
基板の大きさや種類・工程の多様化に伴い必要データ量の増大,所要演算時間・通信時間の増加、ひいては装置コストの増大が生じる。
【解決手段】
基本データを複数の単位パターンと繰り返し回数で表現する。その基本データに対してビットマスクやビットシフトなど演算負荷のほとんど生じない処理で様々な塗布方法に対応するデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶媒と微小粒体を混合した液体を液滴として吐出するヘッドおよびその制御手段と、塗布対象である液晶パネル基板のヘッドに対する相対位置を制御するステージからなり、主にスペーサ形成を目的とした液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の製造を目的とした液滴吐出装置の例として、例えば特許文献1に示される“描画パターンデータ生成方法,描画パターンデータ生成装置並びにこれを備えた機能液滴吐出装置,液晶表示装置の製造方法,有機EL装置の製造方法,電子放出装置の製造方法,PDP装置の製造方法,電気泳動表示装置の製造方法,カラーフィルタの製造方法,有機ELの製造方法,スペーサ形成方法,金属配線形成方法,レンズ形成方法,レジスト形成方法および光拡散体形成方法”がある。ここでは、画像データに基づいて、描画パターンデータの配列領域を確保し、描画イメージ情報を配列領域に書き込むことで、パターンデータを生成し、パターンデータをバイナリ出力することで機能液滴吐出ヘッドからワークに機能液滴を選択的に吐出して描画するための描画パターンデータを生成する描画パターンデータ生成装置、並びにこれを備えた機能液滴吐出装置、等が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−233476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレビや各種ディスプレイなど、液晶パネル等表示装置に対しては、さらなる大型化や、画素の高密度化が求められている。これに加えてまた、製造に際しては一基板からの多面・多種塗布,多数ヘッドによる多ライン同時走査などによってスループット向上を図ろうとしている。これらのことにより、塗布に必要な走査ステップ数ひいてはパターンデータ容量が増大傾向であることは明らかである。容量の増大は演算装置におけるデータ生成の演算時間,データ保持のための必要メモリ量,データ生成手段とヘッド制御手段の間の通信時間に影響し、性能実現のためにより高速・大容量のリソースが必要となることから、装置コストの上昇につながる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明の液滴吐出装置においては、複数の画素小片を互いに直交する行方向および列方向に配列した領域をその面内に1つ以上有する基板に対して、1種類以上の溶媒と微小粒体の混合からなる機能液滴を吐出し、基板表面に対して平行配置された平面に1つ以上の吐出穴を有する液滴吐出手段と、該液滴吐出手段の各穴の吐出制御を吐出指令情報に基づいて行う吐出制御手段と、前記液滴吐出手段と基板表面の経由すべき平面内相対位置姿勢の情報を示す位置姿勢指令情報、およびこれに対応した前記吐出指令情報を生成する吐出指令情報生成手段と、前記液滴吐出手段に溶媒と微小粉体の混合物を供給する供給手段と、前記液滴吐出手段と基板表面の平面内相対位置姿勢を、動作指令情報生成手段が生成した位置姿勢指令情報に基づいて制御する吐出位置制御手段と、前記吐出指令情報生成手段・吐出位置制御手段・吐出制御手段および供給手段の間で情報の授受を調停すると共に各手段に対する動作を指令する全体制御手段を有し、前記吐出指令情報生成手段は吐出指令情報を一つ以上の手段分指令情報とその繰り返し回数で表現することを特徴とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パターンデータのうちの中間部分データを大幅に圧縮することで、パターンデータ全体を小さくすることができる。これにより、演算装置におけるデータ生成の演算時間、データ保持のための必要メモリ量、データ生成手段−ヘッド制御手段間の通信時間増大を抑えることができるため、性能実現のために高速・大容量のリソースを必要とせず、スループット向上や装置コスト低減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
【0008】
図1に、本発明に係る液滴吐出装置の構成を示す。
【0009】
全体制御手段1はまず吐出指令情報生成手段3に吐出指令情報生成命令15を発する。
これを受けた吐出指令情報生成手段3は命令中に含まれるパラメータに基づいて演算を行い、吐出位置制御手段2の動作指令情報7のもとになる、液滴吐出手段4と基板との相対位置姿勢指令情報10と、これに対応した吐出パターンであるところの吐出指令情報11を生成する。相対位置姿勢指令情報10は全体制御手段1に送られ、吐出位置制御手段2の動作指令情報7に変換される。吐出指令情報1は吐出制御手段6に送られその中で保持される。
【0010】
全体制御手段1は、次に、吐出制御手段6に吐出開始までの液滴吐出手段4の助走距離を知らせる。距離情報およびその伝達に必要な手順を実現するための各種信号は吐出制御・吐出状態情報9に含まれている。全体制御手段1は同時に供給手段5に供給動作指令
13を送る。供給手段5は適切な配合比に調整された溶媒に粒体を混合した機能液体(以下溶媒・粒体混合液14と称する)を液滴吐出手段4に供給する。
【0011】
以上のように吐出に必要なデータと液の供給状態が整ったら、全体制御手段1は吐出位置制御手段2に動作指令情報7を送る。これを受けた吐出位置制御手段2は、液滴吐出手段6と基板との時変な相対位置姿勢関係を保つべく位置姿勢情報8を吐出制御手段6に送信する。これを受けた吐出制御手段6は、先ほどの助走距離と位置姿勢情報8を比較し、液滴吐出手段4を所定の距離だけ助走させる。また、吐出制御手段6は、助走終了と判断した後は、液滴吐出手段4を事前に設定された量だけ移動させる毎に、吐出指令情報11に従い、液滴吐出手段4の各吐出穴から吐出するように駆動信号12を送信する。
【0012】
図2は図1の具体的な装置構成例を示したものである。なお、図示しないが、移動変位量はエンコーダ等の検出手段で検出され、コントローラ等に取り込まれているものとする。
【0013】
ステージ土台208上には基板212を吸着保持するx軸テーブルがx方向に移動可能なx方向移動機構209上に設けてある。また、基板212上方に間隔を開けて配置されたy軸テーブルをy方向に移動するためのy方向移動機構210が同じくステージ土台
208上に設けてある。y軸テーブルには、機能液滴吐出ヘッド204(以下吐出ヘッドと略称する)と、混合液供給用壜205と、ヘッド吐出動作コントローラ207及びヘッド角度決め機構211を搭載している。ステージ土台208の下部には、x方向移動機構に負圧を供給するための真空ポンプ203や、ステージ等動作制御盤、及び供給液圧制御用ポンプ206が設けてある。さらに、ステージ土台208の近傍には全体制御用計算機201が設けてあり装置全体の制御を統括している。全体制御用計算機201内に先に説明した全体制御手段1等の制御プログラムが格納されている。
【0014】
全体制御用計算機201の中では全体制御を行うプログラム群に加えて吐出データの生成を行うプログラムが格納され実行される。生成データのうちステージ等制御に関するものはステージ等動作制御盤202に、吐出データに関するものはヘッド吐出動作コントローラ207に、それぞれ送られる。全体制御用計算機201から塗布命令が発せられるとステージ等動作制御盤202とヘッド吐出動作コントローラ207は助走距離などのデータや各種ステータス信号を交換することによって、基板212上の所定位置で所定のパターンに従いながら液滴を吐出する。基板吸着用真空ポンプ203,供給液圧制御用ポンプ206,x方向移動機構209,y方向移動機構210,ヘッド角度決め機構211は全体制御用計算機201からの命令を受けたステージ等動作制御盤202が制御する。x方向移動機構209は基板212を表面に吸着したままのx軸テーブルを紙面と平行かつ水平の方向(図2のX方向)に移動させる。y方向移動機構210はx軸テーブルの移動方向と直交し、かつ水平な方向すなわち紙面と垂直な方向に吐出ヘッド204,混合液供給用壜205,ヘッド吐出動作コントローラ207,ヘッド角度決め機構211を乗せたy軸テーブルを移動させる。y方向移動機構210はステージ土台208に対して固定され門型形状になっており、y軸テーブルはx方向移動機構209とは独立に動く。吐出ヘッド自身の並進運動はy方向のみであり、基板212を乗せたx軸テーブルがx方向に移動することで、吐出ヘッド204とx軸テーブルのx方向相対位置を制御している。吐出ヘッド204にはx軸テーブルおよび基板212の対向面に等間隔で吐出穴(ノズル)が設けてある。このノズルの間隔を吐出パターンのy方向ピッチに合わせるために、ヘッド角度決め機構211は紙面と平行かつ基板212と垂直な軸周りにヘッドを回転させ、x方向と任意の角度を取ることができる。
【0015】
位置姿勢指令情報10と吐出指令情報11を適切に生成し対応させることで、いかなる走査(液滴吐出手段を基板上に相対運動させる)によっても所望のパターンを塗布するよう吐出制御することは可能である。以下に一例として、吐出指令情報生成手段3が、基板に形成もしくは仮想形成されている矩形格子点への液滴吐出を直線走査中に行い、直線と直角方向にオフセットを加えながら片道もしくは往復走査を繰り返すことで基板全体への吐出を行う場合の位置姿勢指令情報10と吐出指令情報11とを生成する生成手順を説明する。
【0016】
図3は1枚の基板212に1面の塗布領域がある場合にx軸テーブルを基準として上から眺めた、走査領域と走査開始位置を示す。この、1枚の基板に1面の塗布領域(H×W)がある場合に、これを片道(一方向)走査で塗布するためのデータを基本データと称する。なお、以降の文中においては、塗布領域は矩形であることを前提とする。
【0017】
基板212上の塗布領域302は矩形でありその縦横は吐出ヘッド204の主走査方向(x方向),副走査方向(y方向)と平行になるように配置される。配置の方法は特に規定しないが、常套的には基板212上に基準点(図示せず)を数箇所設け、それらを基準に平面上の位置姿勢を微調整することで行う。ここでは配置手順の詳細は省略する。なお本実施例では、1回の走査では平行四辺形の領域305と矩形領域302の重なった縦長の長方形部分に塗布される。また、図中黒丸が主走査方向への走査開始座標位置306を示している。図中の記号Wは塗布幅(副走査方向長さ)およびHは塗布長さ(主走査方向長さ)、wsは吐出ヘッド204の一走査の幅を表す。主走査方向,副走査方向は基板
212と吐出ヘッド204の相対位置姿勢を制御する機構の動作方向によって規定される。前述のように通常の構成ではこれら2方向は直交する。吐出ヘッド204はy方向の液滴着弾目標位置の間隔(ドットピッチ)にノズル間隔が一致するように、ある傾き角を持って塗布領域を走査する。よって吐出ヘッド204の一走査の領域は平行四辺形になる。走査開始座標位置306は傾けた吐出ヘッド204の最先端ノズルが、塗布領域上端の液滴着弾目標位置に来たときの位置と定める。図中ではそれぞれの走査領域の走査開始座標位置を黒点で表している。走査番号2以降の開始座標位置は最初すなわち走査番号1の開始座標位置(=塗布領域の原点座標位置)と各種パラメータを用いて表すことができる。これについては後述する。
【0018】
図3は片道走査の場合を示しており走査開始座標位置はすべて矩形の上端部に置かれる。図中上部の走査番号はその真下にある走査領域の走査順を示す。その下のパターングループ番号はその真下にある走査領域の走査時に用いるパターンデータのグループ番号を示している。グループと称するのは一走査領域中の吐出パターンを複数種類のデータで表現するからである。これについても後ほど詳述する。
【0019】
片道走査における必要パターングループ数は図3に示すように高々2つである。塗布領域の幅Wが一走査幅wsの整数倍であれば1つで、そうでなければ右端とそれ以外の2つとなる。各走査領域の走査順すなわち走査番号の割り付けは任意である。ここでは一例として左から順番に並べてある。一方、パターングループ番号はその走査領域の位置に固有である。よって例えば、図中右端の走査領域をN番目でなく何番目に走査してもかまわないが、走査に用いるパターングループ番号は2でなければならない。一走査(一つの平行四辺形領域を通過すること)が終了したら、任意の経路を通って次の走査番号の塗布開始位置にヘッドを移動し、次の走査を開始する。片道走査の場合は常に同じ方向に走査を行う。図中においては矢印方向がxの正方向で、この方向に吐出ヘッドが移動する。これを走査番号1からNまで繰り返す。走査番号の最大値Nは走査幅wsと塗布領域の幅Wとの関係で決まる。これについては後述する。なおここで「吐出ヘッドを移動」と書いているが、実際には吐出ヘッド204が基板212上の所定位置に至るように、基板212をx方向に、吐出ヘッド204をy方向に移動させるため、それぞれの移動機構を動作させることを意味する。
【0020】
図4に走査時のピッチの合わせ方を示す。図のように吐出ヘッド204には、複数のノズル307が設けてあり、塗布領域305には黒丸で示すように吐出液滴の着弾目標位置308が複数設定してある。また図中の記号xdはx方向ドットピッチ(着弾目標位置のx方向間隔)、ydはy方向ドットピッチ(着弾目標位置のy方向間隔)、Npはノズル間ピッチ、θはヘッド傾き角を表す。この吐出ヘッド204にはNn個のノズル307が等間隔で開いているものとする。一般にy方向ドットピッチydとノズル間ピッチNpは異なるので、Npのy方向への射影長さがydに一致するように吐出ヘッド204を傾ける。その傾き角θは
θ=arccos(yd/Np) …(数1)で求められる。これによってノズル307と着弾目標位置308はy方向に関しては機構的に一致する。
【0021】
次に、図5と図37を用いて、x方向に関して走査時の移動距離と各ノズルのON(吐出)/OFFの関係を計算し表現する方法の一例を述べる。この吐出ヘッドにはNn個のノズル307が設けてあるものとする。
【0022】
図5はパターンデータ生成時の吐出ヘッド位置と吐出パターン(各ノズル1〜Nnの
ON/OFF状態)の関係を示している。すなわち、(a)ステップ0には吐出ヘッドの先端部(先頭)のノズル(ノズル番号1のノズル)が着弾目標位置上に来たときの状態を示している。(b)ステップjには先端部のノズルが着弾目標位置からずれた位置に進んだ状態を示している。さらにステップKには先端から2番のノズルが着弾目標位置に到達した状態を示している。
【0023】
図37には一走査領域のパターンデータを生成する手順のフローチャートを示す。ここで前提として、x方向に関しては吐出できる距離の単位間隔xsがx方向位置分解能xeのn倍(n≧1の整数)であるとする。これは、走査開始後は吐出ヘッドの応答特性によって吐出できる移動量のピッチが規定される場合があるためである。
【0024】
また塗布領域の左上角の座標をこの塗布領域の原点(x0,y0)とする。これは一般化のための表現であり、1枚の基板に塗布領域が1面であれば(x0,y0)=(0,0)としておくのが簡単である。原点など各位置座標を基板内基準点からの相対値で記述しているのは、吐出位置制御手段を提供する装置の変更や、吐出位置制御手段における基板配置位置などの各種パラメータ変更に対して影響されないようにすることで、位置情報の再利用を容易にするためである。
【0025】
計算は以下の処理手順で行う。
(1)塗布領域(W,H)とドットピッチ(xd,yd)を指定する(ステップ401)。
(2)図5(a)のように、先頭ノズル(斜めにした状態で塗布領域にもっとも近いノズルであり、これをノズル1とする)を塗布領域上端の格子点(着弾目標位置)直上に正対(平面的に一致)するように吐出ヘッドを移動すると考える(ステップ402)。この格子点位置は今回計算しようとしている走査パターンの走査開始座標位置である。この時点までは吐出はしていないのでx,y方向共にステージの位置分解能で位置決めでき、正確に走査開始座標位置から走査を開始できる。走査開始後は吐出ヘッドの応答特性によって吐出できる移動量のピッチが規定される。これについては後ほど説明する。
【0026】
以下、図3のように左から順に走査番号を割り振った場合の、m回目走査での計算例とする。
(3)アドレスj=0として、この状態から走査開始とする(ステップ403)。
(4)iにつき1からNn(ノズル数)まで以下を行う(ステップ404〜409)
(4−1)ノズルiの位置を計算する(ステップ404)
a)ノズル1のy座標
yN(1)=y(m) …(数2) ただし、y(m)はm回目走査における、走査開始位置でのノズル1のy座標であり、 y(m)=yd*Nn*(m−1)+y0 …(数3) b)ノズルiのy座標
yN(i)=yN(1)+yd*(i−1) …(数4) c)ノズル1のx座標
xN(1)=x(m) …(数5) ただし、x(m)はm回目走査におけるノズル1のx座標であり、
x(m)=x(1)=x0 …(数6) d)ノズルiのx座標
xN(i)=xN(1)−px*(i−1) …(数7)ただし、
px=sqrt(Np*Np−yd*yd) …(数8)であり関数sqrt(x)はxの正の平方根を表す。
【0027】
(4−2)ノズルiが塗布領域内にあるかどうかチェックする(ステップ405)。
【0028】
a)x0≦xN(i)≦x0+H …(数9) b)y0≦yN(i)≦y0+W …(数10) 上記a)b)が共に真の場合(4−3)へ、それ以外はアドレスjにおいてノズルiが吐出しないというデータを記録(ステップ408)し、(4−5)へ進む。
【0029】
(4−3)ノズルiがドットピッチの格子点最近傍にいるかどうかチェックする(ステップ406)。
【0030】
ただし、y方向は機構的にピッチを合わせてあるので、x方向のみ調べる。すなわち
stp_x=xN(i)−x(m)(ノズルiの、基板原点からの距離)として、まずa)をチェックする。
【0031】
図8はノズルが格子点の近傍にある場合の2通りの位置関係を示したものである。図中白丸が着弾目標位置候補、黒丸が格子点を表す。
【0032】
(a)図8における拡大図のa)のような位置関係にある場合、すなわち
δxb=ceil(stp_x/xd)*xd−stp_x …(数11)としたとき
0≦δxb≦xs/2 …(数12)が真なら(4−4)へ進み、偽なら次項(b)をチェックする。
【0033】
(b)図8における拡大図b)のような位置関係にある場合、すなわち
δxf=stp_x−floor(stp_x)*xd …(数13)としたとき、
0<δxf<xs/2 …(数14)が真なら(4−4)へ、それ以外はアドレスjにおいてノズルiが吐出しないというデータを記録(ステップ408)し、(4−5)へ進む。
【0034】
ただしceil(x),floor(x)は実数xに最も近い整数に切り上げ/切り下げする関数である。なおxdがxsの倍数とは限らないことと、ヘッドが傾いていることから、一般には着弾目標位置がドットピッチの格子点に一致しないため、最近傍(真値から±xs/2の範囲内)で吐出するようにしている。これは格子点の手前にも後ろにもなりうる。等距離の場合は原則手前で吐出するようにする。これはテーブルの動きを考慮したことによる。
【0035】
(4−4)アドレスjでのノズルiは吐出するというデータを記録する(ステップ407)。
【0036】
データの形はON/OFFが判断できる形式ならどのようなものでもよいが、ここでは簡単な実装の一例として図6に示すようなビット列で表す。アドレスの1ステップに対してceil(Nn/8)バイトのメモリを割り当て、アドレスjでのヘッド全体の吐出パターンをビット列で表現する。例えば図5(a)〜(c)の状態における吐出パターンが図6中のアドレス0,j,kのビット列で表現されている。
【0037】
(4−5)i<Nnであればi=i+1として(4−1)へ、そうでなければ(5)へ進む(ステップ409)。
(5)x方向に送りピッチxsだけ移動する(ステップ410)。
【0038】
xN(1)=xN(1)+xs …(数15)(6)次ステップでx方向に関してノズルNnが領域を出るかチェックする(ステップ
411)。
【0039】
xN(Nn)≧x(m)+H−xs/2 …(数16) これが真ならば終了(ステップ411)、そうでなければj=j+1として(4)へ戻る。
【0040】
上記(1)〜(6)の処理手順で図3におけるパターングループ番号1で示される走査領域の吐出パターンデータが得られる。生成した吐出パターンデータの例を一部ビットマップ表示したものを図7に示す。これは吐出ヘッドのノズル部が塗布領域に入りつつあるときのパターンデータである。また(数3)と(数6)が走査番号m(m=1…N)の走査領域における走査開始位置座標を示している。
【0041】
図3に示すように、1基板から1面塗布でかつ片道走査の場合は、走査番号1〜N−1までは同一のパターングループデータが使える。言うまでもなく、走査番号2〜N−1までのパターングループデータを生成するための計算を行う必要はなく、またそれらのデータを保持する必要もない。一方、図3の塗布領域右端の部分は塗布される領域の幅が他と比べて短いため、異なるパターングループのデータとなる。これをパターングループ2とする。これは上記の方法でパターングループ1と同様に計算することもできるが、パターングループ1のデータがすでに生成されているのであれば、パターングループ2のデータはパターングループ1のデータのうち、各アドレスの1〜Nj(1≦Nj<Nn)番目までのビット列をコピーすることで得られる。なおここでノズル番号Njは
Nj=ceil((W−ws *(Ns−1))/yd) …(数17)で求められる。wsは1走査の幅であり、
ws=yd*Nn …(数18) Nsは必要走査回数であり、
Ns=ceil(W/ws) …(数19) ただし、Wがwsで割り切れるときは、パターングループは1だけになるので上記処理は必要ない。走査開始位置座標についてはパターングループ1と同様に求めることができる。ここではパターングループ2の走査番号は左から順に数えてN番目であるので、(数3)(数6)(数18)より、走査開始位置座標(x(N),y(N))=(x0,ws*(N−1)+y0)となる。
【0042】
基本的には上記手順で生成されたデータで塗布が可能である。
【0043】
ここでx,yの両方向に関して、液滴吐出時の最小位置分解能を考える。一連の塗布動作は、ヘッド角度決め機構211による角度決めの後、y方向移動機構210によるヘッドy方向位置決め→x方向移動機構209によるヘッドx方向相対移動の繰り返しで行われる。吐出はx方向移動中に行われるが、テーブル(x方向)送り速度と吐出の最高応答周波数からx方向の単位送り距離(以下送りピッチと称する)xsが規定される。すなわち液滴をxsより細かい間隔で吐出することはできない。その一方で、ドットピッチの値の設定にはそういった制約がない。従って前記のようにxs≧xeの前提があるとすると、前述の処理手順(1)〜(6)で計算される着弾目標位置は、x方向に関して、真の目標位置であるドットピッチ格子点に一致させられるとは限らず、次善の策として着弾可能な最近傍位置を目標とせざるを得ないため、その値は±xs/2以内の誤差を含むことになる。この誤差がランダムなものであれば、一走査中の全アドレスにおけるデータを生成・保持しまたヘッド吐出動作コントローラへ転送する必要があり、基板がx方向に長くなるほど演算速度もしくは演算時間、データ保持に必要な一次・二次記憶容量、転送のための通信時間などに関する要求仕様は厳しいものになる。なお吐出の最中にはy方向移動は起こらないため、y方向の位置分解能は移動機構自身の分解能に等しい。
【0044】
実際には目標位置x方向の誤差はxsとxdの関係で周期的に変化する。この性質を利用すると主に中間部分のデータを単位長さのデータと繰り返し回数で表現できる。従って同じドットピッチxd,ydの基板に関しては、x方向に基板が長くなっても中間部分のデータは同じサイズであり、繰り返し回数のみが異なる。これについて以下に説明する。
なおxsとxdの値の最小単位長さはテーブル位置決めの分解能以下にはなりえず、かつ共通である。以下の説明では最小単位を1として、xsとxdは自然数すなわち最小単位の倍数で表すものとする。
【0045】
吐出ヘッドの全ノズルのx方向位置が塗布領域のx方向の範囲内にあるときを考える。
あるステップにおいて先頭ノズルのx方向位置がドットピッチ格子点と一致した場合、最悪そこから送りピッチとドットピッチの公倍数すなわちxs*xdの距離だけ移動すればノズルと格子点はふたたび一致する。これを1ステップの距離xsで割ってステップ数はxdとなる。すなわち前記の走査パターンデータはxdステップ毎の単位繰り返しパターンとその回数で表すことができる。xsとxdに1以外の公約数があれば単位繰り返しパターンの長さはさらに短くなり、最大公約数をMとすればステップ数はxdからxd′=xd/Mになり繰り返しの回数はもとのM倍になる。実装上はワーストケースを考える必要があるのでxsとxdが互いに素であると考えて記憶容量や演算時間,通信時間を見積もっておいたほうがよい。従って以下の説明では単位繰り返しパターン長さxd*xs、ステップ数xdとする。xsとxdにある値以上の公約数が常に存在し得る場合はxdをxd′と読み換えてやればよい。
【0046】
なお吐出ヘッドが塗布領域の上底もしくは下底から出入りしている最中はこの限りではなく、繰り返しでデータを表現できない。そういった場合のデータはそれぞれ独立に扱う必要がある。
【0047】
以上のことから、1回の走査に必要なパターンデータは先頭・中間・末尾パターンのグループで表され、それぞれのパターンデータ本体とその繰り返し回数で表現できる。図9を用いてこれを説明する。図中、901は塗布領域、平行四辺形902は先頭パターン領域Bs、903は中間パターン領域Bm、904は末尾パターン領域Beを表す。すなわち、先頭パターン領域Bsでは、先頭ノズルから順次吐出ノズルが増加する領域であり、中間パターン領域では全吐出ノズルが吐出する領域であり、末尾パターン領域Beは先頭ノズルから順次吐出を停止する領域である。ここで、各領域のx方向長さおよびステップ数は以下のようになる。まず先頭パターン領域の長さは次のようになる。
【0048】
吐出ヘッドのノズル間ピッチがNp、y方向ドットピッチがydであるとき(数1)より必要なヘッド傾き角θが求まる。吐出ヘッドの先頭ノズルが塗布領域の上辺にあるドットピッチ格子点に一致してから末尾ノズルのx方向位置が領域内に入りきるまでに必要な距離をLs′とすると、(数8)のpxを用いて、
Ls′=px*(Nn−1) …(数20)と表せる。アドレス1ステップは送りピッチxsだけの移動に対応するから、Ls′を超えるように移動するステップ数Ssは、
Ss=ceil(Ls′/xs) …(数21)で求められる。
【0049】
前述のように走査開始位置ではノズル1の位置が上辺の格子点に一致している。よって中間パターンをノズル1が格子点に一致するところから始めるためには、吐出ヘッドがx方向領域範囲内に入ってからさらに繰り返しステップ数の倍数になるアドレスまで移動しなければならない。この移動部分のパターンを分けて扱うこともできるが、ここではこれを先頭パターンに含めて考える。よって先頭パターンのx方向長さLsは、
Ls=ceil(Ls′/Lc)*Lc …(数22)ただし、中間パターン領域長さはLc=xs*xdである。
【0050】
ステップ数ΣsはLsを送りピッチxsで割って
Σs=Ls/xs=ceil(Ls′/Lc)*xd …(数23)となる。データ生成の際には図37に示した手順においてx(1)=x0とし、Σsステップ計算すればよい。
【0051】
中間パターンデータのステップ数Σmは前出の通りΣm=xd、領域長さLcは前述の通りxs*xdである。よって先頭と同様に前出の手順においてx(1)=x0+Lsとし、jに関してΣmステップだけ計算すればよい。また繰り返し回数はこれをNmとすると次のように求められる。
【0052】
Nm=floor(H/Lc)−ceil(Ls′/Lc) …(数24) 末尾パターン領域の長さLeは
Le=ceil((H+Ls′)/xs)*xs−floor(H/Lc)*Lc
…(数25) すなわちノズルNnがx方向に関して塗布領域を超える最初のステップの位置から中間パターンの繰り返しが終了した位置を引いたものである。
【0053】
ステップ数Σeはこれをxsで割って
Σe=Le/xs …(数26)よって前出の手順において
x(1)=floor(H/Lc)*Lc+x0 …(数27)として、jに関してΣeステップ計算すればよい。
【0054】
なお図10に示すように、領域の端部を走査する場合は、吐出モードだが全ノズルが
OFFになっている1001,1002のような省略可能領域が生じる。1001は塗布幅Wがwsの整数倍でないときに右端の走査領域の下部に現れる。1002は一面のみを塗布する場合には現れないが、後述の一基板多面塗布の際に塗布領域間のy方向配置が不揃いな場合に生じる。これらを拡大したのが図11(a)(b)である。図11(a)においては末尾パターン領域が、同(b)では先頭パターン領域が省略可能領域である。省略可能領域1001,1002の長さLe″,Ls″およびBeの終端およびBsの先頭部分で省略可能なステップ数Σe″,Σs″は以下のように計算できる。
【0055】
w′=yso(j,n)+ws−(W+yeo(j)) …(数28) Le″=w′*tanθ …(数29) Σe″=ceil(Le″/xs) …(数30) w″=yso(k,m)+ws−yeo(k) …(数31) Ls″=w″*tanθ …(数32) Σs″=floor(Ls″/xs) …(数33) ただしyeo(j):塗布領域Ejの原点y座標、yeo(k):同、Ekの原点y座標、yso(j,n):Ejのn回目走査領域の原点y座標、yso(k,m):同、
Ekのm回目走査領域の原点y座標であるとする。添字j,k,n,mに意味はなく任意の一塗布領域の右端もしくは左端を吐出ヘッドのノズルの一部分を用いて走査していることを示しているにすぎない。また、これによって(a)における走査終了位置x座標、
(b)における走査開始位置x座標がそれぞれLe″,Ls″だけ変化する。特に走査開始位置はステージ制御に用いるためその部分のデータ修正が必要となる。すなわちxso(k,m)をEkのm回目走査領域(省略可能領域1002を含む)の原点x座標とし、x′so(k,m)をEkのm回目走査領域(省略可能領域1002を含まない)の原点x座標とすると、x′so(k,m)=xso(k,m)+Ls″とする必要がある。
【0056】
図10,図11を使って説明した領域省略は使用する記憶容量の削減や計算時間の短縮をもたらす。よって組み込みシステムのように演算パワーやメモリ等、リソースに関する制限が厳しい場合にはパフォーマンス向上に寄与すると考えられる。一方で、末尾パターン領域Be又は先頭パターン領域Bsのサイズや、走査開始位置の座標が他の走査領域と違ってしまうことで、パターングループデータを統一されたデータ構造で扱うことが困難になる。また、走査開始位置を塗布領域原点からの計算で求めるのではなく、各走査領域について開始座標位置データを持たなければならない、などのデメリットも考えられる。
【0057】
なお図9に示す塗布長さHが短い場合には、図12に示すようなレアケースが生じる。
図12(a)は通常と同じように繰り返しの手前までの長さの先頭パターン領域Bsを取れるが、中間パターン領域を取ろうとするとヘッドが下辺から出てしまう場合、すなわち、
Ls=ceil(Ls′/Lc)*Lc≦H且つLs+Lc≧H …(数34)となる場合である。このときにはBsの後ろに末尾パターン領域Beを置き、中間パターン領域Bmは省略する。データの表現としては任意の中間パターンデータに対して繰り返し0回とする。
【0058】
図12(b)は吐出ヘッドを領域内に入れることはできるが先頭パターン領域の長さをLsまで取ろうとすると、吐出ヘッドが下辺から出てしまう場合であり、
Ls′≦H、且つ、Ls=ceil(Ls′/Lc)*Lc≧H …(数35)となる場合である。このときも中間パターンは繰り返し0回という表現で省略する。特にこのとき末尾パターン領域Beの長さはHとする。図12(c)は吐出ヘッドが領域内に入ることがない場合である。このときは、
Ls′≧H …(数36)であるため、パターンは先頭もしくは末尾の1種類とする。表現としては左記の1種類のパターンの繰り返し回数を1回、それ以外を0回とすることで表す。
【0059】
以上説明してきたように、一走査に必要な吐出パターンのデータは、先頭・中間・末尾パターンデータとそれらの繰り返し回数という形で表現できる。これらをまとめてパターングループデータと称する。
【0060】
次にy方向ドットピッチydとノズル間ピッチNpとの関係で走査方法が変化する場合について説明する。まずydがNpに対して狭いときに複数通りの走査方法が考えられることを示す。図13はy方向ドットピッチydが、
yd<Np/2 …(数37)のときに、通常のヘッド傾き角θ1に対して、異なる走査手順を踏むことで同じydに対応できるθ1より小さい傾き角θ2がありうることを示している。図中吐出ヘッド204aは通常の傾き角θ1で傾けた状態、吐出ヘッド204bは傾き角θ2(<θ1)でノズルがy方向ピッチに合うように傾けた状態、吐出ヘッド204cは水平にした状態、白丸307はノズルの位置、黒点308はドットピッチ格子点、315はy方向ドットピッチを示すライン、をそれぞれ表す。通常の場合は各ノズル307の位置をライン315上のドットピッチ格子点308に合わせるため、吐出ヘッド204aのようにθ1傾ける。これに対して、吐出ヘッド204bではドットピッチ格子点308に対して1ドットおきに吐出させるために、吐出ヘッドの傾き角θ2とした場合である。図14に示すように、傾き角θ2で走査する場合の処理手順は次のようになる。
(1)同じW,H,xdでy方向ピッチを2ydとしたパターングループデータを生成
(2)走査領域原点から開始して1回目を走査
(3)1回目走査開始位置からy方向にydずらした位置を開始位置とする
(4)同じパターングループデータで2回目を走査
これは言わば櫛状走査(塗布ヘッドを所定の傾き(例えばθ2)を持たせて主走査方向(x方向)に移動させた後に、次の開始位置をy方向にydずらして塗布することをいう)を組み合わせ、2yd*Nnの幅を2回で走査する手順である。ここにおいて1回目の走査開始座標位置を(x1,y1)、2回目の走査開始目標位置を(x2,y2)とすると、x2=x1,y2=y1+ydとなる。
【0061】
一方通常の方式では1回にyd*Nnの幅を走査するから、同じだけの幅を走査するには2回を要する。塗布領域全体の走査回数を考えると、通常の方式で必要総走査回数が奇数回になる場合のみ、言い換えれば
floor(W/ws) mod2=0 …(数38)のとき、右端の走査領域においては通常1回の走査で済むところ2回必要となるため、総走査回数が1回だけ多くなる。なお通常方式走査における右端の走査領域を考えた場合、残りの走査幅Hl=W−floor(W/ws)*wsがy方向ピッチを示すラインを奇数本含むとき、すなわち
2m*yd≦Hl<(2m+1)*yd(mは任意の自然数) …(数39)のときはこの領域用に生成されたデータを上記4)でそのまま使用すると、上記2)で領域内最右端に打たれたものが4)では領域外に出てしまうので、2回目のデータは1回目のデータの領域内最右端に対応するビットをマスク(0にセット)して用いる必要がある。
【0062】
(数34)の条件が成り立つようなydの範囲では、通常方式での傾きが非常に大きくなり、傾き角θ1が90[deg]に近づくため、傾き角θ1の角度誤差に対するノズル位置y方向誤差の感度が大きくなる。言い換えると傾き角θ1に対する要求精度が非常に高くなるため、装置コストの上昇や、角度微調整の手間や時間が増すことによるスループット低下などが懸念される。よって角度の選択は以上に述べたような得失を考慮した上でなされる。
【0063】
さらにydが狭く
Np/(K+1)<yd<Np/K(K=3,4,…) …(数40)となる場合を考えると、図15に示すように、塗布領域のドットピッチydとノズル間ピッチから、吐出するノズルの間隔を変えることで、吐出ヘッド傾きをθ1〜θKのK通りの角度を選択できる。図14と同様、吐出ヘッドは図16のようにydずつy方向に移動して同じデータで櫛状走査を繰り返す。K通りの角度のうち、j(j=1,2,…,K−1)ライン飛び越してノズルがy方向ピッチラインに合う角度をθ(j+1)とする。処理手順は前記傾き角θ2の場合の処理手順(1)〜(4)とほぼ同様に
(1)同じW,H,xdでy方向ピッチを(j+1)*ydとしたパターングループデータを生成
(2)通常と同じところから開始してi=1回目を走査
(3)前回の走査開始位置からy方向にydずらした位置を開始位置とする
(4)同じパターングループデータで走査
(5)i=i+1とし、i<j+1なら3)へ進む
となる。ここにおいて、1回目の走査開始座標位置の座標を(x1,y1)(既知),i回目の走査開始座標位置を(xi,yi)(i=2…j)とすると、(xi,yi)=
(x1,y1+(i−1)*yd)となる。
【0064】
同じ領域を(a)通常走査(θ1)と、(b)櫛状走査の組み合わせ(θ(j+1))で走査する場合とがある。(a)の通常走査では吐出ヘッドを立てて(吐出ヘッドの傾きθを大きくして)走査しこれを重ならないように繰り返している。(b)の櫛状走査ではヘッドを寝かせ、y方向ピッチydずつずらして櫛状走査し、それらの重なりが走査領域全体を遍く覆っている。幅Wの領域を通常の方式(角度θ1)で走査した場合、走査回数はceil(W/ws)回となる。これを角度θ(j+1)で櫛状走査すると走査回数はceil(W/((j+1)*ws))*(j+1)回となる。走査回数は通常方式の方が少なく
ceil(W/ws)≦ceil(W/((j+1)*ws))*(j+1)
…(数41)
となる。等号はWがj+1で割り切れるときのみである。
【0065】
櫛状走査の組み合わせで走査する場合は走査幅ws′=(j+1)*wsをまとめて扱う。Wをws′ずつ走査すると右端の走査領域幅Hlは
Hl=W−floor(W/ws′)*ws′≦ws′ …(数42)である。これを櫛状走査におけるy方向ピッチyd′=(j+1)*ydで割ったときの余りに応じて、ydずつ、ずらして走査していく際に、何回目の走査から領域内最右端ノズルのON/OFFデータとなるビットをマスクするかが定まる。Hlをyd′で割った余りhlは
hl=Hl−floor(Hl/yd′)*yd′ …(数43)表される。このhlの値の範囲が
k*yd≦hl<(k+1)yd …(数44)(但しk=0…j−1の整数)のとき、生成したパターンデータは(k+2)回目から右端がはみ出るので、最右端ビットをマスクしてデータ修正→ydずらして走査を(k+2),(k+3),…(j+1)回目の計(j−k)回繰り返す。走査位置はydずつシフトしているので、領域内最右端ビットは1回毎に左へ移動する。また一度マスクしたビットは0のままである。このように処理することで、端部の走査を櫛状走査の組み合わせで行う場合にも、領域外へ液滴を吐出してしまうことなく続けることができる。
【0066】
次に、以上とは逆に、y方向ドットピッチydがノズル間ピッチNpより広い場合すなわちNp<ydの場合の走査方法について説明する。図17はNp<yd<2Npの場合である。吐出ヘッドを傾けた上でノズルを一つおきに使うことで必要なy方向ドットピッチydを実現している。ノズルは1つおきに使用されるので吐出パターンは奇数または偶数番目のビットのみ意味を持つ。各ノズルのON/OFFを定める計算は既述のアルゴリズムにおいてNp→2*Npとしノズル番号の増分を1から2に修正することで対応できる。具体的には(数1)を
θ=arccos(yd/(2*Np)) …(数45)に変更し、(数8)を
px=sqrt(2*Np*2*Np−yd*yd) …(数46)に変更する。さらに、
図37のステップ409におけるi=i+1をi=i+2に変更する。
【0067】
このとき一走査の幅ws=yd*ceil(Nn/2)(Nn奇数,使用ノズル番号奇数の場合)若しくはws=yd*floor(Nn/2)(その他の場合)であり,このwsを用いると,i番目走査(i>1)の開始時の座標は(xi,yi)=(x1,y1+ws*(i−1))と表せる。
【0068】
図17を一般化したのが図18である。ノズル間隔NpのノズルをJ個(0≦J≦126まであり得る)飛ばしで使用することでより広いy方向ドットピッチに対応する。ノズル番号1から使用する場合は以下J+2,2*J+3,…m*(J+1)+1,…(mは自然数)となる。ノズル番号の最大値はNnであるからmの最大値をMとおくと
Nn≧M*(J+1)+1 …(数47)
よりMが整数であることを考慮して
M=floor((Nn−1)/(J+1)) …(数48) アルゴリズムの修正点は(数式42)(数式43)中の2をJ+1で置き換え、図37のステップ409でのノズル番号の増分をi=i+(J+1)とすることで対応できる。
このとき1走査幅wsは
ws=ceil(Nn/(J+1))*yd …(数49)であり、このwsを用いると、i番目走査(i>1)の開始座標位置は(xi,yi)=(x1,y1+ws*(i−1))と表せる。
【0069】
次に、ヘッドを部分的に使用することを考えた場合に、再計算することなしに基本パターングループデータに単純な処理を加えるだけでこれを利用できることを示した例を4通り説明する。
【0070】
図29は吐出ヘッドの前半分のノズルのみ使用して元の走査領域を分割走査する場合の説明図である。図中(a)は元の走査領域形状(全ノズルを用いて走査領域全体を塗布するときの領域形状)を示している。このときの走査開始座標位置は(xj,yj)であるとする。この一走査領域を(b),(c)に示すように2回走査する。1回目の走査に使用するデータは図中下段中央に示すように、元のパターングループに含まれる各パターンデータのビットマップの右半分のデータをマスクしたものになる。言い換えると、データの各アドレスにおけるビット列の1〜NnビットのうちNn/2+1〜Nnビットを0にする。このとき走査開始座標位置は元の走査時と同じである。2回目の走査に使用するデータは1回目でマスクした部分を左半分にシフトしたものを用いる。すなわち元のパターンデータの各アドレスのNn/2+1〜Nnビットを1〜Nn/2ビットに移動して上書きする(図中下段右)。もとの走査がj番目であり開始座標位置が(xj,yj)であったとすると、2回目の走査開始座標位置の座標は(xj−δx,yj+δy)と表せる。ただし
δy=yd*Nn/2 …(数50) δx=δy*tanθ …(数51)
となる。なお上記の説明においてNnが偶数であることを暗黙の前提にしているが、奇数でもほぼ同様に処理可能であることは言うまでもない。同様に吐出ヘッドの後半分を使用して分割走査する場合も図29に示す吐出ヘッド部前半部を後半部に置き換えればよい。
1回目は図29の中下段中央の右半分を左半分に置き換えたデータをマスクしたものを用いる。走査開始座標位置は(数50)(数51)のδx,δyを用いて(xj+δx,
yj−δy)と表せる。2回目は左半分データを右半分にシフトしたパターンを用いる。走査開始座標位置はもとの走査開始座標位置と同じ(xj,yj)である。
【0071】
図30では奇数番目のノズルを使用して1つ飛ばしの櫛状走査を2回行い、元の走査領域を走査する場合である。1回目に使用するパターンデータは元のデータの奇数ビットのみ残したものである。走査開始座標位置は元の走査と同じ(xj,yj)である。2回目のパターンデータは元のデータの偶数ビットのみ取り出し左(番号の小さい側)に1ビットシフトしたものを用いる。そのときの走査開始座標位置は(xj−yd*tanθ ,yj+yd)となる。同様に、偶数番目のノズルを使用する場合も図30と同じようになる。
すなわち、1回目の走査時には元のパターンデータの奇数ビットのみ取り出し、右に1ビットシフトしたものを用いる。そのときの走査開始座標位置は(xj+yd*tanθ ,
yj−yd)となる。2回目のパターンデータは元データの偶数ビットのみ取り出したものを用いる。走査開始座標位置は元の走査開始座標位置と同じ(xj,yj)である。
【0072】
吐出ヘッドは、駆動回路の不調や液中への空気の混入,微小粒体の詰まりなどの理由で、吐出しないノズルが生じてしまうことがある。しかし吐出ヘッドは液滴吐出装置の心臓部であり、取り付け精度の高さや長時間の電気的機械的調整などを要するため、簡単に交換できるようなものではない。そのようなときに、上記のような手順で吐出ヘッドを部分的に使用することにより、吐出しないノズルを使わずに塗布を行うことができる場合もある。無論その場合走査回数は増えるが、部分的なノズルの不調による工程の停止を回避できる次善の策と言える。ビットシフトやビットマスクは前述のデータ生成演算に比べればほとんど時間を要しない。よって事前に基本パターンデータが生成されていれば、上記手順の際に必要なデータをごく短時間で得ることができる。
【0073】
なお以上に示した吐出ヘッドのノズルの部分使用は一走査領域を分割走査する手順であるので、前の方で説明した、狭ドットピッチパターンを櫛状走査の組み合わせで塗布する場合などを含め、すべての走査に適用可能であることは言うまでもない。
【0074】
ここまでの説明は片道走査を前提にしており、その場合図3に示すようにパターングループは高々2つであることはすでに示した。図3における走査を図31のように往復で行う場合は往路・復路・端部(走査方向はWとwsに依存)の3通りに対するパターングループデータが必要である。この3通りのデータの処理と、走査番号i(i=1…N)に対するパターングループデータの対応を以下のような手順で行う(図34参照)。
【0075】
まず片道走査のパターングループデータ1を往復走査のパターングループデータ1にコピーする(ステップ501)。
【0076】
次に往復走査パターングループデータ2にも同じものをコピーし(ステップ502)、これを反転しておく(ステップ503)。端部以外の復路では基板上での塗布パターンとしてみた場合片道とまったく同じものであるので、反転は図21に示すように片道走査のパターングループデータ2をアドレスに関して逆順にすればよい。すなわち片道走査のデータがある限り、復路データは計算して生成する必要がないためほとんど計算負荷が生じない。図22は先頭パターンデータ、およびその逆順データのビットマップ表示が示されている。ビットマップ表示では、逆順データは上下反転して描画されているにすぎない。
復路での走査では、1つのパターングループデータの各パターンデータを反転し、末尾パターンの逆順データ→中間パターンの逆順データ×繰り返し回数→先頭パターンの逆順データの順に用いる。
【0077】
さらに一方向走査パターングループデータ2を往復走査パターングループデータ3にコピーする(ステップ504)。
【0078】
各パターングループデータが準備できたらパターングループの走査番号に対する対応づけと、必要であればデータの再処理を行う。走査番号i=1とし(ステップ505)、iがNに等しいか否か判定する(ステップ506)。i<Nの場合は走査番号iのパターングループを1とし(ステップ507)、その中でiが偶数か否かを判定する(ステップ
508)、偶数の場合は走査番号iのパターングループを2とする(ステップ509)。その後iを1増やす(ステップ510)。ステップ508で、iが偶数で無い場合はステップ510に移動しiを1増やす。その後ステップ506に戻る。
【0079】
ステップ506においてi=Nとなった場合は、Nが偶数か否か判定する(ステップ
511)。偶数の場合は、右端の走査領域は復路で走査されることになるので、パターングループデータ3をステップ503と同様の方法で反転(ステップ512)し、その後処理を終了する。ステップ511でNが奇数と判定された場合は、そのまま終了とする。
【0080】
以上の手順によって往復走査に必要なパターングループデータと、走査番号と各パターングループとの対応関係が得られる。
【0081】
またこのとき各走査領域の走査開始座標は次のようになる。
【0082】
(xj,yj)=(x1+Δx(j),y1+Δy(j))(j=1…N)
…(数52)
ただし基本走査パターン(図3のような片道左詰め)で左端から順に走査する場合は
Δx(j)=(xs*ceil(H/xs)+Ls)*((j+1)mod2)
…(数53) Δy(j)=(j−1)*ws …(数54) ここでLs=ws*tanθ,ws=Nn*yd
さらに、これまで説明してきた例は片道走査を前提としているが、これらはすべて往復走査に修正することができる。その際には前記の手順で偶数番目の走査に用いるパターングループの各パターンデータを反転して用いる。
【0083】
狭ドットピッチパターンをJライン飛ばしの櫛状走査の組み合わせで塗布する場合は
Δx(j)は同じで
Δy(j)=floor(j/(J+1))*((J+1)*ws)
+(j−floor(j/(J+1))*(J+1))*yd…(数55)ヘッドを部分使用する場合のうち前半分のノズルを使用する場合は
Δx(j)=(xs*ceil(H/xs)+Ls)*((j+1)mod2)
−(ws/2)*tanθ*((j+1)mod2) …(数56) Δy(j)=(j−1)*ws/2 …(数57)
後半分を使用する場合は
Δx(j)=(xs*ceil(H/xs)+Ls)*((j+1)mod2)
+(ws/2)*tanθ*(jmod2) …(数58)
Δy(j)=(j−2)*ws/2 …(数59)
奇数番ノズルを使用する場合は
Δx(j)=−yd*tanθ*(j+1)mod2) …(数60)
Δy(j)=ws*((j−1)div2)+yd*((j+1)mod2)
…(数61)偶数番ノズル使用の場合は
Δx(j)=yd*tanθ*(jmod2) …(数62)
Δy(j)=ws*((j−1)div2)−yd*(jmod2) …(数63)
となる。以上に示したように、片道で左から順に走査する場合の各パターンデータに対する列単位の並べ替えと、各走査開始座標位置の修正といった、演算負荷のほとんど生じない手順によって、これまでに片道走査の前提で説明してきた塗布動作のバリエーションを往復走査で行うように変換した際の、復路に必要なパターンデータ、および走査開始座標位置データを得ることができる。
【0084】
なお、ここまで説明してきた走査開始座標位置データは図32に示すようなデータ構造で記述・保持される。実際には図中の記号部分(W,H,xd,yd,θ,x1…x(N),y1…y(N)、等)には数値が入る。データの受け渡しはこの形の構造体を通信手段でそのまま遣り取りするか、ファイルなどの形で二次記憶を介して行ってもよい。
【0085】
次に、複数の走査領域に複数の吐出ヘッドを割り当て、同時に走査する場合にも、これまで説明した基本となるパターングループデータおよび開始位置座標データを修正することで必要なデータを得られることを示す。第一の例として図23に示すような、ノズルのなす列が一直線になるように、かつ1つ分の間隔を空けて複数(ここではNh個)のヘッドを並べたものを考える。ここで図中Whはノズル番号1とノズル番号Nnの間の距離であり、これをヘッド幅と称する。Wgはヘッド間幅でありちょうど吐出ヘッド1個の走査幅だけ間隔を空けてある。図24はヘッド部分を拡大したものである。上記Wh,Wgは次のように表される。
【0086】
Wh=Np*(Nn−1) …(数64) Wg=Np*(Nn+1) …(数65)
これらNh個のヘッドは前述のようにノズル列が一直線かつ吐出ヘッド間幅がWgになるように組みつけられ、紙面に垂直な軸まわりに一体となって回転する自由度を有するものとする。この吐出ヘッド群を用いると走査幅単位の櫛状走査が可能になり、2回の走査を組み合わせて2*Nh回分の領域を走査することができる。
【0087】
図19を用いてこれを説明する。図中左上は1回目走査の領域、右上は2回目走査の領域を示す。図中下段は同じ領域を1ヘッドで走査する場合の各走査領域とそれに対応するパターングループ番号を示す。番号は左端の走査領域から順にP1,P2,…と割り付けられている。この領域を吐出ヘッド群で走査する場合は、1回目(左上)ではヘッド番号1の用いるデータのパターングループはP1,番号2がP3,…,番号NhがP(2*
Nh−1)となり、2回目(右上)では番号1がP2,…,番号NhがP(2*Nh)となる。以下、n(1≦n≦ceil(W/(2*Nh*ws))*2)回目走査でヘッドm(m=1…Nh)の用いるパターングループ番号をP(hpg(n,m))と表すとそのインデックスは
hpg(n,m)=((n−1)div2)*Nh*2+(2*m−(n mod2))
…(数66)
ただし、hpg(n,m)が1吐出ヘッド走査の場合のパターングループ番号の最大インデックスNを超えた場合はn回目の吐出ヘッドmに割り当てるパターングループデータはなく、データが割り当てられない吐出ヘッドは塗布を行わない。
【0088】
走査開始座標位置はヘッド番号1のノズル1が塗布領域の上辺と一致したときの座標とする。よって1回目の走査開始座標位置は下段のパターングループ番号P1を走査するときの走査開始座標位置に等しく、2回目はP2の走査開始座標位置に等しい。1回目の走査開始座標位置を(x1,y1)とすると、2回目は(x2,y2)=(x1,y1+
ws)(但しws=Nn*yd)である。以下、n回目の走査開始座標位置は
x(n)=x1 …(数67)
y(n)=y1+((n−1)div2)*ws+((n−1)mod2)*ws
…(数68)
以上の説明では一般化のために1ヘッド走査における各走査領域のパターングループ番号を左から順番にP(n)(n=1…N)で表したが、実際はP(1)=P(2)=…
P(N−1)=1,P(N)=2でありほとんど同じデータである。この吐出ヘッド群で往復走査を行う場合は、1ヘッド走査のときと同様に、偶数回目の走査に用いる全パターングループ中のパターンデータを反転して用いる。これももっとも基本的な1ヘッド1面塗布片道走査の場合は右端の走査領域を除いて全て同じデータであり、かつそのデータはグループ番号P1で指し示されるデータを反転したものである。よって、基本となる1ヘッド片道走査でのパターングループデータを生成しておけば、これを利用することでほとんど計算負荷なくパターンデータを用意することができる。
【0089】
ここで問題となるのはヘッド群が一体となって傾くために生じる、各吐出ヘッドの走査開始タイミングのずれである。図20は走査時における吐出ヘッド1と吐出ヘッドnh
(1≦nh≦Nh)の位置関係を示している。図20(a)は1回目走査、図20(b)は2回目走査の場合である。吐出ヘッド1が走査開始座標位置にあるとき、吐出ヘッド
nhはLh(nh)だけ後ろにある。ここで
Lh(nh)=y(nh)*tanθ …(数69) y(nh)=ws*(nh−1)*2 …(数70)よって吐出ヘッドnhは距離Lh(nh)(空走1)だけ空走した後で走査開始しなければならない。これを付加する方法の例としては、
(1)各吐出ヘッドの走査開始タイミング(吐出ヘッド1の走行開始座標位置から他の吐出ヘッドの走査開始座標位置までの距離)を個別に設定できるようにする
(2)各吐出ヘッドのパターングループデータの先頭に全ノズルOFFとなるパターンデータを付加するといったものが挙げられる。特に後者(2)の方法を用いる場合は
|Lh(nh)−ceil(Lh(nh)/xs)*xs|>|Lh(nh)
−floor(Lh(nh)/xs)*xs| …(数71)のときfloor(Lh(nh)/xs)、そうでないときにはceil(Lh(nh)/xs)をステップ数とする。これはすなわち単位送り距離xsずつ近づいて走査開始位置の最近傍に達するまでのステップ数である。方法(1)と方法(2)を比べると、(1)は走査開始まではステージの分解能xeで精度を出すことができるのに対して、(2)は走査領域とみなすがゆえに送りステップxsの分解能しか持ち得ない。また後者においてはパターングループ先頭に吐出ヘッド毎に異なる長さのパターンデータを付加することになるため、基本となるパターンデータをまったくそのまま使うことはできず、データの構造や長さなどを可変なものとして扱わなければならないため、処理がやや煩雑になる。
【0090】
また一方で、吐出ヘッド群は最後のヘッドNhが領域から出るまで移動しなければならない(空走2)が、そのときの距離Lt(nh)は
Lt(nh)=Lh(Nh)−Lh(nh) …(数72)で表される。各吐出ヘッドは走査のためのパターンデータを順次参照し終わった時点で塗布モードを終えるものとする。空走1を方法(1)で付加した場合は、右端の吐出ヘッドNhにおける走査が終わる(末尾パターンデータを最後まで参照し終わる)まで吐出ヘッド群を動かしていれば、各吐出ヘッドには空走2で示す区間が自動的に付け加わることになる。空走2を方法(2)で付加する場合は上記距離をステップ数に変換してceil
(Lt(nh)/xs)ステップのパターンデータを付加する。これも吐出ヘッド毎に長さが異なるので扱いが煩雑になる。以上を考慮すると方法(1)(2)いずれによる実現も可能であるが、方法(1)の方が付加的な処理が少なくなるという点でより適切であると考える。
【0091】
もう一つ別の例として、空走部分の付加を必要としないヘッド群を機構的に構成する方法も考えられる。図25はNh個の吐出ヘッドをパンタグラフ構造で連結することで各吐出ヘッドの傾き角が連動する機構を示している。図中、284aは吐出ヘッド1、284bは吐出ヘッド2、284nは途中の吐出ヘッドnh、284Nは終端吐出ヘッドNh、255は吐出ヘッド1の回転軸、256は吐出ヘッド2の回転軸、257は吐出ヘッドnhの回転軸、258は吐出ヘッドNhの回転軸、259はリンク1、260はリンク2、261はリンクnh、262はリンクNh、263はリニアレール、をそれぞれ表す。吐出ヘッド1〜吐出ヘッドNh(284a〜284N)は回転軸1〜回転軸Nh(255〜258)を介してリンク1〜リンクNh(259〜262)と組み合わさってパンタグラフ構造を形成している。ヘッド284aは回転軸255に固定されており、この回転軸1はリンク259に固定されている。ヘッド284bはリンク260に回転軸256を介して結合されている。また、リンク260はその一方端部に吐出ヘッド284aと、他方端部吐出ヘッド284cの端部に結合されている。リンク259を動作させると、リンク259より回転力が伝達されて、各リンクはリニアレール263に沿って移動し、かつ各吐出ヘッドは回転移動する。リンク1の端部およびリンク2〜リンク(Nh−1)(図示せず)の中心部、リンクNhはまた回転軸1〜回転軸Nhのまわりで回転可能になっている。各リンクおよび吐出ヘッドはまた、その端部において回転ジョイントを介して接続されている。回転軸1はリニアレール263の端部に固定されている。他の回転軸2〜回転軸Nhはリニアレールに拘束され、それ自身はその長手方向に関する並進運動のみ可能である。このとき、回転軸2〜回転軸Nhのうちいずれかの位置をこの機構系の外部から力を加えて制御するか、もしくは回転軸1〜回転軸Nhと一体になった状態で吐出ヘッド2〜吐出ヘッドNhのいずれかを回転せしめるようトルクを加える、等の手段によって、吐出ヘッド1〜吐出ヘッドNhは等間隔を保ちながら同じ傾き角になるように回転および並進する。このときの間隔を図26に示すように常に1ドットピッチ分、すなわちyd=Np*cosθになるようにするには、図27に示すように、パンタグラフの回転ジョイントの軸間距離をヘッド幅よりわずかに大きい(Wh+Np)/2にすればよい。そのように構成された機構では図28に示すように吐出ヘッドnh(1≦nh≦Nh)にパターングループ番号P(nh)のパターングループデータを割り当てることで、幅ws*Nhずつの一斉走査が可能になる。このとき、n(1≦n≦ceil(W/(2*Nh*ws))*2)回目走査で吐出ヘッドm(m=1…Nh)の用いるパターングループ番号をP(hpg(n,m))と表すとそのインデックスは
hpg(n,m)=(n−1)*Nh+m …(数73)ただし先ほどの例と同様に、hpg(n,m)が1ヘッド走査の場合のパターングループ番号の最大インデックスNを超えた場合はn回目の吐出ヘッドmに割り当てるパターングループデータはなく、データが割り当てられない吐出ヘッドによる塗布は行わない。
【0092】
この吐出ヘッド群の走査開始位置座標はヘッド番号1のノズル1が塗布領域の上辺と一致したときの座標とする。よって1回目の走査開始位置座標は下段のパターングループ番号P1を走査するときの走査開始位置座標に等しく、n回目はP((n−1)*Nh+1)の走査開始位置座標に等しい。1回目の走査開始位置座標を(x1,y1)とすると、n回目の走査開始位置座標は
x(n)=x1 …(数74) y(n)=y1+(n−1)*Nh*ws …(数75)となる。
【0093】
以上の説明では一般化のために1ヘッド走査における各走査領域のパターングループ番号を左から順番にP(n)(n=1…N)で表したが、実際はP(1)=P(2)=…
P(N−1)=1,P(N)=2でありほとんど同じデータである。このヘッド群で往復走査を行う場合は、1ヘッド走査のときと同様に、偶数回目(m回目とする)の走査に用いる全パターングループ中のパターンデータP((m−1)*Nh+1)〜P(m*Nh)を反転して用いる。これも基本的な1ヘッド1面塗布片道走査の場合は右端の走査領域を除いて全て同じデータであり、かつそのデータはグループ番号P1で指し示されるデータを反転したものである。よって、基本となる1ヘッド片道走査でのパターングループデータを生成しておけば、これを利用することでほとんど計算負荷なくパターンデータを用意することができる。
【0094】
次に、1枚の基板に複数の塗布領域を設ける、所謂多面塗布の場合について、走査領域の配置、基本パターンデータおよび走査開始位置座標データの修正利用、等の手順を説明する。ここからの説明は、次の各項目を前提とする。
・1枚の基板に塗布条件の異なる1面以上の塗布領域が存在する
・各塗布領域の塗布条件は既知
・塗布条件とは基板上の基準点に対する塗布領域E(j)の原点位置座標(xeo(j),yeo(j)),幅W(j),長さH(j),ドットピッチxd(j),yd(j)
・塗布領域E(j)とE(k)が同じグループに属する条件は
xd(j)=xd(k),yd(j)=yd(k),|yeo(j)−yeo(k)| mod yd(j)=0 …(数76) 3番目の条件はE(j)とE(k)の原点間のy方向距離がドットピッチyd(j)
(=yd(k))の整数倍になっていることを示す。以下、このことを「E(j)と
E(k)がyd−on−pitchで有る」と称する。この条件は同じドットピッチを持つがyd−on−pitchでない位置関係の塗布領域が縦(x方向)に並んでいた場合、これを1走査で処理することはできないので、それを除くために設けている。この条件によれば走査中のヘッドが横に隣り合った複数の塗布領域と同時に重なりを持つ場合にも塗布が可能になる。これは多面塗布のスループット向上のためには必須の前提である。
・同じ塗布条件の塗布領域をグループ化して1塗布工程で扱う
・1枚の基板に複数のグループがある場合は同じ基板にグループの数だけ異なる塗布工程を適用することで対応(図35にはグループ毎に模様を代えて示している)
最初にグループ化と走査領域分割の手順を説明する。
A)グループメンバ抽出(図35)
A−1)基板上から任意の1塗布領域(380)を選ぶ(図35(a))。
A−2)その塗布領域との間に上記のグループ形成条件が成り立つ塗布領域を全て選ぶ
(本図では斜線で示す塗布領域のものを選択した。図35(b))。
B)縦列形成(選択したグループのものから縦列の近接する塗布領域を選択する処理(図36)
B−1)原点y座標位置が基板の左端に一番近い塗布領域(391)を選ぶ。一番近いものが複数あったら、その中で原点x座標位置が基板の上端に一番近いものを選ぶ。選ばれた塗布領域をE(J)とする(図36(a))。
B−2)選んだ領域E(J)の幅W(J)は変えずにx方向に上下とも伸張した矩形
(392)を考え、これと重なりを持つ塗布領域をすべて選び、1列の要素としてまとめる(図36(b))。
B−3),B−2)の列要素である塗布領域をすべて包含する最小の矩形(393)を設定する(図36(c))。この矩形を列boundingbox と称し、その原点(左上角)の座標を(xro(j),yro(j))、右下角座標を(xrc(j),yrc(j))(jは列の番号)と表す。xro(j),yro(j)は列jに含まれる塗布領域の原点x,y座標のうちの最小値、xrc(j),yrc(j)は右下角x,y座標の最大値である。
B−4),B−2)の列要素である塗布領域を除き、残った塗布領域があったらB−1)へ戻って、全ての塗布領域が列に含まれるまでB−1)〜B−3)を繰り返す(図36
(d))。
C)列をまとめてグループ化(図38)
前記の縦列形成ルールで形成された全ての列の列boundingboxを包含する最小の矩形
(451)を設定する。これをグループboundingbox と称し、その原点(左上角)の座標を(xgo(k),ygo(k))、右下角の座標を(xgc(k),ygc(k))
(kはグループの番号)と表す。xgo(k),ygo(k)はグループkに含まれる列boundingbox の原点x,y座標のうちの最小値、xgc(k),ygc(k)は右下角x,y座標の最大値である。図38ではグループ1の中に列1〜列3が含まれている例を示している。また図中には一部の座標を例示している。
D)グループboundingbox を走査領域(短冊状の平行四辺形)に分割(図39では19に分割した)する。この際グループboundingbox を1塗布領域のように考え、走査領域の分割を行う。
【0095】
以上A)〜D)の手順で、1つ塗布領域を走査するのと同様に、1グループの塗布範囲を扱うことができる。その後、図40に示すように各走査領域のパターングループデータを生成し、データに従ってグループboundingbox を走査すればよい。本実施例においては図41の上部に示すように、必要なパターングループの数は13となった。
E)各走査領域のパターンデータを生成し、塗布を実行する。
【0096】
図39のように各走査領域を割り当てた場合に、必要なパターンデータを得るための処理手順を、図40を用いて説明する。まず図中太枠の平行四辺形1〜13におけるパターンデータを計算する。ここで各塗布領域の先頭および末尾パターンは該領域の原点x座標が図中細枠の部分は太枠部分のデータがそのまま使える。2は中間パターンデータであり単位長さは図中領域の整数分の1である。異なる塗布領域で同じパターン2を用いる際にはパターンの繰り返し回数のみ計算する。図中点線枠の、数字の肩に′,″,′′′、およびインデックス(n)(n=4…11)が付いている部分のデータは、太枠内の同じ数字のパターンデータに対して、ビットマスクをかけることで得られる。ある塗布領域iの右端に残った、幅ws=Nn*ydより狭い部分を走査する場合は、その塗布領域の含まれるグループkの原点y座標ygo(k)と、その塗布領域の右下角y座標yec(i)=yeo(i)+W(i)からこの狭い部分の幅ws″(i)を次のように求める。
【0097】
ws″(i)=ceil((yec(i)−ygo(k))/ws)*ws
−(yec(i)−ygo(k)) …(数77) この幅に対応するノズル数Nn″(i)は
Nn″(i)=ws″(i)/yd …(数78)よって元となるパターンデータの各アドレスのビット列のNn″(i)+1〜Nn番目をマスクすればよい。
【0098】
同様に、左端にそういった部分がある場合は、その幅ws′(i)は
ws′(i)=ceil((yeo(i)−ygo(k))/ws)*ws
−(yeo(i)−ygo(k)) …(数79)
この幅に対応するノズル数Nn′(i)は
Nn′(i)=ws′(i)/yd …(数80)となり、この幅だけを走査するには元データの1〜Nn−Nn′(i)番目をマスクすればよい。
【0099】
以上の処理において、ビットマスク演算や繰り返し回数の計算は元となるパターンデータの生成に比べて非常に負荷が小さい。1グループの全パターングループデータを得るための計算時間の大部分は、前記のように元となるパターンデータ1〜13を計算することに使われている。
【0100】
ここでの前提条件として、各塗布領域の原点x座標に関してはまったく規定していない。そのため一般に1走査中に通る塗布領域の上辺に先頭ノズルが差し掛かるとき、吐出タイミングにおいてx方向位置が一致すなわちon−pitchになることはなく、塗布領域ごとに±xs/2の範囲で異なる誤差を有する着弾目標位置から走査をすることになる。先頭における誤差が異なると、それ以降の各着弾目標位置における誤差も異なってくるため、同じアドレスにおける吐出パターンも変わってしまう。そのため、同じグループ内であっても、各塗布領域の先頭や末尾のパターンデータは相互利用することができない。
例えば図40におけるパターン1や3はパターン4や5に置き換えることはできない。
on−pitchになる条件は|xo(j)−xgo(k)|mod(xs*xd)=0すなわち各塗布領域の原点x座標と、グループboundingbox 原点x座標の距離が繰り返しパターン長さの整数倍になることであるが、一般には基板上の各塗布領域をx方向に関してon−pitchで配置することは考慮されない。またこの液滴吐出の前工程における加工誤差や、当該装置の送り機構あるいはその位置検出系の誤差などからも位置ずれが生じ得るため、設計ではon−pitchであったものが現場でずれるといったことも起こりうる。従ってx方向は基本的にon−pitchでないものとして対応しなければならない。
【0101】
y方向に関しても基本的に事情は同じである。しかしながら、各塗布領域がyd−on−pitchで配置されていないと、等間隔で連続走査することができないため、特に複数のヘッドで複数の走査領域を一括走査しようとするときに、遊んでしまう(塗布モードにならず、ただ移動しているだけの)ヘッドが増え、ヘッド数のわりに塗布時間が短くならないといったことが起こる。多ヘッド化はスループット向上のため今後必須となる手法であるため、y方向に関してはそのメリットが最大限に引き出される走査方法が実現できるように各塗布領域が配置されることは期待できる。無論、設計データからの誤差や機構・検出系による誤差はy方向にもありうるが、1走査におけるステップ数がおおよそ10の5〜6乗程度と長いx方向に比べて、ヘッドのノズル数が高々数百個で、1走査領域を移るたびに補正可能なy方向は位置ずれの累積が起こりにくい。よってyd−on−
pitchの前提は妥当であると思われる。
【0102】
なお図40の各走査領域中で、番号の付いた平行四辺形枠で囲まれていない部分は、全ノズルが吐出しない(すべてのビットが0)領域であるので計算の必要はなく、アドレス1列分の空白データ×ステップ数で表現できるためデータ量の増加もほとんど生じない。
これらの部分は各パターングループデータに含んでおいてもよいが、次のように省略を図れば、データ量の削減に加えて、塗布の所要時間短縮にも寄与できる。すなわち、列
boundingbox の外にある吐出なし走査領域(パターングループ番号8と9の間)や、各走査領域における最初のパターン以前の空白部分(パターン6,10の手前など)は、走査開始位置座標の調整によって走査領域から除くことができる。さらに、1回の走査はパターングループデータをすべて参照し終わった時点で終了するので、最後のパターン以後の部分(パターン5,13の後ろ)のデータを生成しなければ走査から省略できる。このようにして図40の走査領域から省略可能な部分を塗りつぶしたものを図41に示す。
【0103】
パターン7と8の間など、塗布領域間の空白距離が長い場合は、これを省略することでさらなる塗布時間の短縮を図るという考え方もあるが、それが常に奏功するかどうかはx方向送り機構の送り速度や加速・減速時間との兼ね合いがあり一概には言えない。厳密な議論ではないが、例えば図41中のパターングループ番号6を使用する1走査領域の本数が十分多い場合、パターン7,8の領域を別々の走査において通過すると考えると、おおむね1つの空白部分に減速(パターン7の後ろ)・加速(パターン8の前)が付加されることになる。空白部分の長さをLv、等速区間でのテーブル送り速度をvtとすると、
Lv移動するのに必要な時間はtv=Lv/vtとなる。一方0←→vtの所要加速時間、減速時間をta,tdとすると、Lvを移動する時間が加減速時間の和より大すなわちtv>ta+tdのとき効果ありと考えられる。しかしながら処理に例外を作ってしまうことになり、手順が複雑になるためデータ生成時の演算時間も増えるなど、本発明の目指すところにそぐわなくなる。塗布時間の短縮は本発明の主目的ではないのでこれ以上詳細な検討はしない。
【0104】
逆に、図40,図41では現れていないが、塗布領域間の空白距離が狭いと、上下の塗布領域にヘッドが跨る状況が生じる。そのような場合には上の塗布領域の末尾から下の塗布領域の先頭までを1つのパターンデータとして扱い、データ生成演算を連続して行う。
その場合はノズルが塗布領域内にあるかどうかの判定条件が増えることになるが、値の大小を調べる演算が2回増える程度であり、演算時間はほとんど変わらない。
【0105】
なお、各走査領域の開始位置座標は1面塗布の場合と同様に、図3や図31において原点位置座標(x1,y1)を(xgo(k),ygo(k)),W=ygc(k)−ygo(k),H=xgc(k)−xgo(k)と置いて求めてやればよい。
【0106】
ここまでの多面塗布に関する説明は極力一般的に表現してきたが、スループットの観点から実際は前記のような不規則な塗布領域の配置を行うことは考えにくい。次はもう少し整った配置の例を説明する。図33は同一のW,H,xd,ydをパラメータとする塗布領域を縦横n×m面並べたものを示している。前提としてはyd−on−pitchであることのほかに、
1)縦(x)方向に並ぶ塗布領域の原点y座標が等しい
2)横(y)方向に並ぶ塗布領域の原点x座標が等しい
3)縦方向に隣り合った塗布領域の間隔はLs′=ws*tanθより狭い
4)横方向に隣り合った塗布領域の間隔はwsより狭い
5)各塗布領域の原点x座標は送りピッチの整数倍(xs−on−pitch)
を挙げる。上記1)2)は配置が縦横とも揃っていること、3)は走査時にはヘッドが縦に隣り合う塗布領域に跨る区間があること、4)は走査時にヘッドが横に隣り合う塗布領域に跨る場合があることを意味している。計算が必要なパターンは先頭Bs,中間Bm,縦に跨る部分B12…B(n−1,n),Beである。手順自体は1面塗布の走査パターングループ1のデータ生成のところですでに示したもの(図5,図37,(数2)〜(数16)参照)とほとんど同様である。以下、多面塗布の場合の手順を簡単に説明する。ここで塗布領域E11の原点を(x1,y1)=(0,0)とする。
a)x=0〜ceil(Ls′/Lc)*Lcの間で領域Bsのパターンデータを計算する。Lcは繰り返し単位長さであり
Lc=xs*xd …(数81)b)x=ceil(Ls′/Lc)*Lc〜ceil(Ls′/Lc)*Lc+Lcの間で繰り返しパターンデータを計算する。また繰り返し回数をm1として
m1=floor(H/Lc)−ceil(Ls′/Lc) …(数82)を計算する。
c)x=floor(H/Lc)*Lc〜ceil((x2+Ls′)/Lc)*Lcで塗布領域E11,E12に跨る部分B12のパターンデータを計算する。x2は塗布領域Ej2(j=1…m)の原点x座標である。x2は繰り返し長さLcに関してはon−
pitchでないので、B12の終端位置は原点x1=0からLcの整数倍のところになければならない。
d)繰り返し回数をm2として
m2=floor((x2+H)/Lc)−ceil((x2+Ls′)/Lc)
…(数83)を計算する。
e)以下、上記c)d)においてx2→x(i)(i=3…n)と置き換え、x=floor((x(i−1)+H)/Lc)*Lc〜ceil((x(i)+Ls′)/Lc)*
Lcで塗布領域E(1,i−1),E(1,i)に跨る部分B(i−1,i)のパターンデータを計算し、繰り返し回数m(i)を
m(i)=floor((x(i)+H)/Lc)−ceil((x(i)
+Ls′)/Lc) …(数84)と計算する。
f)x=floor((x(n)+H)/Lc)*Lc〜x(n)+H+Ls′で終端データBeを計算する。
【0107】
以上a)〜f)で元となるパターングループデータは生成された。大部分の1走査領域はこのデータを用いればよい。走査領域と横方向の塗布領域間隙が共通部分を持つ場合は走査領域中の共通部分の幅がノズル番号のどこからどこまでに対応するかを計算し、データに対してその部分をマスクする処理を行う。すなわち1走査領域が左端から順に割り付けられるという前提で考えると、塗布領域E(j−1,i)(i=1…n)の一番右を走査する領域の走査番号kはk=ceil((y(j−1)+W)/ws)となる。このk番目の走査領域がE(j−1,i)〜E(j,i)の間の間隙と共通部分を有する条件は、
(k−1)*ws≦y(j−1)+W≦k*ws、または、
(k−1)*ws≦y(j)≦k*ws …(数85)
となる。ただし、y(j)はE(j,i)の原点y座標の値である。このとき間隙を走査してしまうノズル番号に対応する、1アドレスのビット列の始まりをsb番目、終わりをse番目とすると、
sb=ceil(((y(j−1)+W)−(k:1)*ws)/yd) …(数86)
se=(y(j)−(k−1)*ws)/yd …(数87)となる。これに従って元となるパターングループの各パターンデータをビットマスク処理すればよい。なお各走査領域の原点は図3や図31で説明した1面塗布のときと同様に求められる。
【0108】
以上に説明したように、複数領域塗布の場合は条件に応じたグループ分けをして、各グループのグループboundingbox に対して1面塗布の場合と同様にデータ生成・塗布を行い、これをグループの数だけ繰り返すことによって対応すればよい。各クループにおけるデータ生成では、中間パターンの繰り返し利用やビットマスクによって、演算すべきパターンデータの量を大幅に減らすことができる。また1面塗布の場合に説明した、ピッチ飛ばし・ノズル飛ばし・ノズルの部分使用などの、走査におけるバリエーションはすべて適用可能であることは言うまでもない。
【0109】
なお、ここまでの説明は塗布パターンが格子点であることを前提にしていた。従って、格子点以外のパターンでも、それが格子点の組み合わせで表現できるものであれば工数次第で須らく塗布可能である。その一例を以下に示す。図42は菱形格子のパターンを塗布する場合の手順を示す。まずドットピッチ2*xd,2*ydの格子点パターンを塗布する(図上左)。次に走査開始店をx方向にxd,y方向にydだけずらして、同じパターンを塗布する。これらが重なるとドットピッチxd,ydで一つおきに着弾している、菱形格子のパターンができあがる。
【0110】
以上のように、本発明によれば、パターンデータのうちの中間部分データを繰り返し用いて大幅に圧縮することで、パターンデータ全体を小さくすることができる。これにより、演算装置におけるデータ生成の演算時間,データ保持のための必要メモリ量,データ生成手段−ヘッド制御手段間の通信時間増大を抑えることができるため、性能実現のために高速・大容量のリソースを必要せず、スループット向上や装置コスト低減が図られる。なお本発明記載の方法を用いているかどうかは、コントローラ間の信号の監視と、ヘッド−基板間の相対運動およびヘッド各ノズルの吐出パターンを時系列に沿って記録,解析することで推測可能である。信号の監視はロジックアナライザ,相対運動は何らかの測距手段,ノズルの吐出パターンはビデオカメラ等で計測でき、これらのデータを同一のタイミングで観察してゆけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係る液滴吐出装置の構成を示す図である。
【図2】図1の具体的な装置構成例の図である。
【図3】基本データ生成時の走査領域と開始位置を示す図である。
【図4】走査時のピッチの合わせ方の説明図である。
【図5】パターンデータ生成時のヘッド位置と吐出パターンの関係を示す図である。
【図6】走査開始位置から始まるステップ毎の吐出パターンデータの一表現例を示した。
【図7】生成された吐出パターンの一部ビットマップ表示例である。
【図8】ノズルが格子点の近傍にある場合の2通りの位置関係を示す図である。
【図9】最も基本となる走査パターンデータの構成例を示す図である。
【図10】省略可能領域を含むケースの説明図である。
【図11】省略可能領域近傍の拡大図である。
【図12】塗布長さが短い場合に生じうるレアケースを示す図である。
【図13】ドットピッチydが狭い場合の2通りのヘッド傾き角を示す図である。
【図14】傾き角θ2を選択した場合の走査方法の説明図である。
【図15】ドットピッチydが狭い場合のK通りのヘッド傾き角を示す図である。
【図16】傾き角θKを選択した場合の走査方法の説明図である。
【図17】ドットピッチNp<yd<2*Npの場合の走査方法の説明図である。
【図18】ドットピッチJ*Np<yd<(J+1)*Npの場合の走査方法の説明図である。
【図19】直線配置ヘッド群の走査時における各ヘッドとパターンの対応を示す図である。
【図20】直線配置ヘッド群の走査時における走査時におけるヘッド1とヘッドnhの位置関係を示す図である。
【図21】片道走査のパターンデータから復路に必要なデータを生成する方法の説明図である。
【図22】パターンを反転したときのビットマップの概観を示した図である。
【図23】直線配置ヘッド群の概観を示した図である。
【図24】直線配置ヘッド群の配置間隔を示す図である。
【図25】傾き角連動配置ヘッド群の概念的機構構成図である。
【図26】傾き角連動配置ヘッド群のノズル位置関係を示す図である。
【図27】傾き連動配置ヘッド群のリンク長の設定を示す図である。
【図28】傾き連動配置ヘッド群の各ヘッドが使用するパターングループデータを示す図である。
【図29】ヘッド前半分で1走査領域を分割走査するときの手順の説明図である。
【図30】ヘッドの奇数番ノズルで1走査領域を分割走査するときの手順の説明図である。
【図31】図3を往復走査にした場合の走査領域と開始位置を示す図である。
【図32】開始位置座標データのデータ構造を示す図である。
【図33】同一塗布条件の整列n×m面塗布領域において必要計算領域を説明する図である。
【図34】片道走査のデータから往復走査に必要な3パターングループデータを生成する手順を説明する図である。
【図35】1枚の基板上から同一条件の塗布領域を選ぶ手順の説明図である。
【図36】同一塗布条件の領域を列にまとめる手順の説明図である。
【図37】一走査領域のパターンデータを生成する手順の説明図である。
【図38】図36の列を1グループにまとめる手順の説明図である。
【図39】1グループの塗布領域を走査領域に分割した状態示す図である。
【図40】図39の走査領域中、図37の手順で計算する必要のある領域を示す図である。
【図41】各走査の開始位置座標・走査ステップ数を調整することで走査を省略可能な領域を示す図である。
【図42】格子点パターンを組み合わせて格子点以外のパターンを塗布する例を示した図である。
【符号の説明】
【0112】
1 全体制御手段
2 吐出位置制御手段
3 吐出指令情報生成手段
4 液滴吐出手段
5 供給手段
6 吐出制御手段
7 動作指令・動作状態情報
8 位置姿勢情報
9 吐出制御情報および吐出状態情報
10 位置姿勢指令情報
11 吐出指令情報
12 駆動信号
13 供給動作指令・動作状態情報
14 溶媒・粒体混合液
15 吐出指令情報生成命令
201 全体制御用計算機
202 ステージ等動作制御盤
203 基板吸着用真空ポンプ
204 吐出ヘッド
205 混合液供給用壜
206 供給液圧制御用ポンプ
207 ヘッド吐出動作コントローラ
208 ステージ土台
209 x方向移動機構
210 y方向移動機構
211 ヘッド角度決め機構
212 基板
302 塗布領域
305 領域
306 走査開始座標位置
307 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素小片を互いに直交する行方向および列方向に配列した対象領域をその面内に1つ以上有する基板に対して、1種類以上の溶媒と微小粒体の混合からなる機能液滴を吐出する液滴吐出装置であり、
基板表面に対して平行配置された平面に1つ以上の吐出穴を有する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段の各穴の吐出制御を吐出指令情報に基づいて行う吐出制御手段と、前記液滴吐出手段と基板表面の経由すべき平面内相対位置姿勢の情報を示す位置姿勢指令情報および、これに対応した前記吐出指令情報を生成する吐出指令情報生成手段と、
前記液滴吐出手段に溶媒と微小粉体の混合物を供給する供給手段と、
前記液滴吐出手段と基板表面の平面内相対位置姿勢を、吐出指令情報生成手段が生成した位置姿勢指令情報に基づいて制御する吐出位置制御手段と、
前記吐出指令情報生成手段・吐出位置制御手段・吐出制御手段および供給手段の間で情報の授受を調停し各手段への動作指令を行う全体制御手段を有し、
前記吐出指令情報生成手段は吐出指令情報を一つ以上の部分指令情報とその繰り返し回数で表現することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記液滴吐出手段は複数の吐出穴が均等間隔で直線配置され、前記直線方向が前記行方向および前記列方向に対して任意角度を有した状態で、液滴吐出手段と基板の相対位置を、吐出位置制御手段によって前記行方向若しくは列方向に移動させながら検出若しくは推定し、前記相対位置に対応した吐出指令情報に基づき各吐出穴からの機能液滴の吐出を制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出装置において、前記機能液滴の吐出制御を、前記相対位置が最小位置分解能の整数倍の距離xsだけ変化する毎に行うことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記吐出指令情報は、前記相対位置が行方向または列方向に距離xsだけ増加または減少した瞬間の、前記液滴吐出手段の各吐出穴からの液滴吐出の有無を表現した列を順番に並べたものであることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置において、1つの吐出穴からの液滴吐出の有無を1ビットで表し、前記液滴吐出手段の用いる吐出指令情報を吐出穴の数だけ並べたビット列で表現することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項3に記載の液滴吐出装置において、前記吐出情報生成手段は、前記液滴吐出手段の吐出穴列の方向が前記行方向および前記列方向に対して任意角度を有した状態で、液滴吐出手段と基板の相対位置を、吐出位置制御手段によって列方向に距離xsずつ移動させたと想定し、移動直後における各吐出穴の想定位置と液滴着弾目標位置との距離を計算してこれが設定された値より小さいときに、その相対位置において液滴吐出手段の当該吐出穴から吐出があることを表現して、これを繰り返し行い集積することにより前記吐出指令情報を生成することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記吐出指令情報は、先頭・中間・末尾の3種類の部分吐出指令情報および各情報の繰り返し使用回数からなることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置において、部分吐出指令情報のうち、中間部分吐出指令情報を1回用いて吐出する距離を、距離xsと、前記行または列方向の液滴着弾目標点間距離xdとの最小公倍数もしくはその整数倍の値とすることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記吐出位置制御手段による、前記吐出指令情報に従った液滴吐出を行っている間の相対位置姿勢制御は、前記列または行方向いずれかに関する並進のみを行うことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記位置姿勢指令情報は,液滴吐出手段の傾き角と、1回以上の並進の開始位置座標と、各回の並進に用いる吐出指令情報の識別子を含んだものであることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、一対象領域もしくは対象領域の集合からなる集合領域に対する吐出工程において、基板に対する液滴吐出手段の相対運動は一方向に沿った往復並進動作の連続であり、且つある並進の終了から次の並進の開始までに並進終了位置から次の並進開始位置に至る移動動作を行い、液滴吐出手段の通過領域が上記対象領域もしくは集合領域を包含するまで往復とその間の移動を繰り返すことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項12】
請求項11記載の液滴吐出装置において、前記吐出工程において、ある回の並進における液滴吐出手段の通過領域と、前記対象領域もしくは集合領域との共通部分の幅が、通過領域自身の幅に足りず、かつその回の並進は吐出を伴う場合に、該共通部分の幅が通過領域自身の幅と等しくなるときの吐出を伴った並進で用いる吐出指令情報に対して、足りない部分の位置と幅に対応したビットをマスクすることによって、その回の並進における吐出指令情報を得ることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
請求項11記載の液滴吐出装置において、前記吐出工程において、往路の吐出指令情報が、相対位置が行方向または列方向に距離xsだけ増加または減少した瞬間の、前記液滴吐出手段の各吐出穴からの液滴吐出の有無を表現した列を順番に並べたものを単位として、逆順に並べ替えることで復路の吐出指令情報を得ることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項14】
請求項1記載の液滴吐出装置において、前記液滴吐出手段の一部の吐出に不調が見られた場合、液滴吐出手段の吐出穴を不調な吐出穴を含む集団と含まない集団に分け、全吐出穴からの吐出が可能な場合に用いられる1単位の吐出制御情報とそれに連携する位置姿勢制御情報から、不調な吐出穴を含まない集団のみを用いた複数単位の吐出制御情報とそれらの吐出制御情報と連携する位置姿勢制御情報に変換したものを用いて吐出を行うことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項15】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、互いの吐出穴が一直線になるよう配置されている複数個同一形状の液滴吐出手段を有し、ある液滴吐出手段の終端吐出穴と、その吐出穴に近い側に配置されたもう一つの液滴吐出手段の先頭吐出穴との距離は、液滴吐出手段の吐出穴の数に1を加え、吐出穴間距離を乗じた長さである液滴吐出装置。
【請求項16】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、各液滴吐出手段はその先頭・中央・末尾で吐出穴の列がなす直線上に回転ジョイントを有し、隣り合う液滴吐出手段1と2は1の中央と2の先頭および1の末尾と2の中央の回転ジョイントを中央ジョイントと末尾ジョイント間の距離と同じ距離になるよう剛体のリンクで結合し、これら隣り合う軸間がすべて前記吐出穴の先頭から末尾までの距離に吐出穴間距離を加えた長さの半分になるよう互いの位置姿勢を拘束することを特徴とした液滴吐出装置。
【請求項17】
請求項1記載の液滴吐出装置において、基板上に設けられている1種類以上の異なる塗布条件の複数塗布領域に対して、同じ塗布条件のすべての塗布領域を包含する最小の矩形領域を設定し、この矩形領域と前記吐出手段との相対位置関係を1面の塗布領域と同様の手順で制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項18】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、開始位置を変えて同一の矩形格子点状吐出指令情報を2回用いることにより菱形格子点状パターンを塗布する液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2008−229563(P2008−229563A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75737(P2007−75737)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】